夏の上士幌の研究 第2回
2000年6月に発生した北海道十勝平野の「口蹄疫」を受けて、僕は一人、8月にある上士幌町での大会開催に反対した。
獣医師としての自分と、バルーニストとしての自分とを秤にかけた結果だった。
ところが、出てきたのは、反対意見ばかり。
「何でそんな事を言うのか」「一般の人の不安を煽るような情報を出すな」と、完全に僕は孤立してしまった。
結局、僕の意見は組み入れられこともなく、8月の上士幌は開催された。
その時の僕の気分はと言えば、間違いなく、映画「ジョーズ」のロイ・シャイダーのそれだった。
僕の言いたかったのは一言、「あまりにリスクが高すぎる!!」それだけだったのに。
しかし…
結果から言えば、口蹄疫は広がりを見せる事はなく、大会前に終結宣言が出され、上士幌の大会は無事に終了した。
結局僕は間違っていた訳で、大会の開催は正しかった。
映画のようなドラマチックな展開にはならなず、僕は、一人大騒ぎした変わり者として、疎んじられてしまった。
その後、僕は上士幌の大会に出る事は無くなった。
世の中、そんなモンだなーと、思っていた。
が、昨年、上士幌町に、新たなる伝染病の話が持ち上がった。
センチュウ騒ぎである。
芋をダメにするある種の土の中に住むセンチュウが、上士幌町内の畑に入り込んだ為に、他の芋栽培農家が自分の土地に入るのを恐れているのだ。
つまり気球がその畑に着陸し、土が付着すると、もはや他の畑に着陸できなくなると言うのだ。
ところが昨年の大会中、その事に関するコーションは、一切、参加パイロットにはなかった。
ただ単純に、「ここに着陸しないように」と言ったPZの告知があっただけだった。
大会後にフライトしているパイロットに対し、個人的に「あそこはね…」と言った情報が流されただけ。
この事で、パイロット間で少々もめ事が起こった。
別にこの人達は悪くないのに。
で、そして今年、どうなるのか注目を持ってブリーフィングを聞いていた。
果たして、きちんとセンチュウの話を出すのかどうか?
結果、組織委員会はきちんとセンチュウ被害の話をしていた。
聞いていて、僕は「これは一つの進歩だなー」と思った。
結論 残念だけど僕は、ロイ・シャイダーほど格好良くはなれなかったみたい。