ヘリカルフィルタ 2001.12.14 (最終更新2001.12.14)

helical0.jpg

これはヘリカル共振器を使用したBPFです。

トランジスタ技術誌2000年3月号のヘリカルフィルタの記事を見て、作ってみました。
大きさはその記事を参考に、書かれていない部分は記事の写真を定規で測って比率から求めました。
そうして出来たのが冒頭の写真の零号機です。

零号機は0.5mm厚の銅板製で、縦38mm、横38mm、奥行き19mmで、共振器数2、コイルは位置が両端から
各10mm、線材は直径1.6mm錫めっき銅線、内径10mm、巻き数3.5回、タップ位置は底面から10mmです。
2つのコイルの巻き方向は互いに逆になっています。
調整用のネジは真鍮製のニッケルメッキのものです。真鍮ムクのものは入手できませんでした。
これで、中心周波数600MHz、-3dB帯域幅約20MHzに調整できました。
これで、共振周波数はコイル長ではあまり変化せす、巻き数を変えないと大きくは変化しないこと、
ネジによる可変範囲はせいぜい数10MHz程度しかとれないことなど、この構造と大きさの場合の
基本的な特性を体験できましたが、フタを半田付けしてしまったことは大きな間違いでした。
壊さない限り開けることができません(^^;

そこですぐに、フタをネジ止めする構造の1号機を製作、主要な構造は零号機と同じですが、
共振器の結合度調整用のネジを追加、共振器のQを大きくするためにコイルのタップ位置を
底面から9mmとほんの少し小さくしました。
他に、調整ネジのガタを減らす目的で、固定にナットではなくスペーサを使ってみました。
ロックしていない状態では効果はありますが、普通のナットでも調整後にロックしてしまえば
同じだったので以後はやめました。熱容量が大きくて半田付けしにくいので。
この構造で中心周波数600MHz、-3dB帯域幅約9MHz時、挿入損失約2dBに調整できました。

周波数特性の測定はSSG(ANRITSU MG3631A)と電力計(HP436A+HP8484A)で行っています。
周波数特性のグラフで100MHz、150MHz、200MHz、300MHzにあるピークは信号源の高調波が
通過域に入っているために現れているもので、フィルタ自体の特性ではありません。

さらに、材料を0.3mm厚の真鍮板に、大きさを縦40mm、横40mm、奥行き20mmときりのいい値にして
2号機を製作、これは調整ネジのナットを本体の内側に移し(外側のナットはロック用のナット)、
コイルの巻き数を3.25回に、タップ位置を底面から6mmとし、中心周波数を700MHzとしました。
特性は1号機の特性をそのまま100MHz上にシフトしたような特性になりました。
コイルのタップ位置はインサーションロスにはあまり効かないようです。
リターンロスは測定できる機器がないので測定していません。
ちなみに、外見は最もスッキリしていますが、この構造は作るのに結構手間がかかります。
フタをネジ止めする部分を内向きに作るのが難しく、0.3mmという板厚も薄過ぎて強度不足のため、
内側からコイルに使った線材でいろいろ補強を入れてあります。

3号機は材料を0.5mm厚の真鍮板、共振器数を3、大きさを縦40mm、横60mm、奥行き20mmとしました。
コイルは2号機と同一ですが、巻き方向は全て同じです。
これは3共振器タイプの基礎実験用にフタ無しで作ったものでしたが、共振器間の結合が大き過ぎて
調整のしようがなく、目的を達することなく廃棄処分になりました。
今ではコネクタが1つ他に流用されて無残な姿になっています(^^;

4号機は、フタを付け、共振器間に仕切りを入れた以外は3号機と同一です。
仕切りも0.5mm厚の真鍮板で、特性を測定しながら底面(調整ネジの対面)からの高さを30mmから
次第に切り詰めて行き、実験的に20mmと決めました。
中心周波数700MHz、-3dB帯域幅約7.5MHz時、挿入損失約3dBになりました。

調整は、共振器が2つのときは、希望の帯域幅になるよう結合度を調整しつつ中心周波数で挿入損失が
最小になるように調整すれば終わりですが、共振器が3つになると急に難しくなりました。
調整箇所は3本の共振周波数調整用のネジと2本の結合度調整用のネジですが、どのネジを回しても
全ての共振器に影響する上、中央の共振器のネジは回してもはっきりした変化がなく、共振周波数が
よく判らないのです。
中央の共振器がどこに共振していてもそれなりの特性になるので気付くのに時間がかかりましたが、
通過域だけでなく広い範囲を測定すると、不自然なピークかディップが現れるので気付きました。
結局、中央の共振器の共振周波数を確認しながら少しずつ移動させ、全ての共振器を同じ周波数に
合わせると別物のように良好な特性となりました。
周波数特性のグラフで100MHz、140MHz、350MHzにあるピークはやはり信号源の高調波によるもので、
フィルタ自体の特性ではありません。233.3MHzや175MHzにあるはずの3倍や4倍の高調波による応答が
現れていないのは、阻止域は10MHz間隔で測定したからです。

SSGの周波数を少しずつ変えながら電力計で測定する作業を何度も繰り返すのはとても苦痛で、
ネットワークアナライザがすごく欲しくなりますよ(^^)

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1号機

helical1b.jpg
1号機内部

bpf436_1.gif
1号機の周波数特性

bpf436_2.gif
1号機の周波数特性(通過域)

helical2a.jpg
2号機

helical2b.jpg
2号機裏面

helical3.jpg
3号機

helical4a.jpg
4号機

helical4b.jpg
4号機裏面

helical4fc1.gif
4号機の周波数特性

helical4fc2.gif
4号機の周波数特性(通過域)

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