Sorry! Japanese Only

Scince 1997/12/24  Last Up Date 2001/ 1/ 1

−出会い−

10才の頃、僕の前を一台の黒い車が颯爽と駆け抜けた。

乾いたエクゾーストノートを響かせながら、夕刻の朱色の中を走り去っていく。

僕は雷に打たれたように立ち止まり、その車の官能的な後ろ姿を見送った。

それが、通称”ナロー”と呼ばれるポルシェ911だと知ったのはそれからしばらく経ってからだ。

その朱と黒のコントラストがまるで別世界のようで、今でも瞼の裏に焼き付いている。

僕の初恋だった。

 

−再会−

高校三年の夏、免許を取った。初めての車はビートルだった。

ドイツ車、空冷水平対向エンジン、RR、トーションバー、etc...

似て異なるこの車に、ポルシェを意識したわけではない。

ただ、今考えるとそれが911との再会だったのかもしれない。

 

−焦燥−

それから、ハチロクや32Zに乗った。彼女たちはそれなりに楽しかったし、面白かった。

でも、心は別のところにあった。

それは、あたかも封建時代の男達が自分だけの最高の馬を求めるような欲求であり、

自分自身はまだそれを手に入れてないという焦燥だった。

そんなある日、高速道路を南へ向かっていた僕の車のルームミラーに白い物体が映った。

ものすごいスピードの物体は瞬く間に僕の横をパスしていく。

それがタイプ964のカレラだと分かるのに数秒もかからなかった。

急いで後を追ったが、カレラは僕の視界からあっという間に見えなくなった。

 

−成就−

その再会の日から、忘れかけていた初恋がよみがえり、日に日に思いは募っていく。

心は、枯渇しかけた森が水を求めるかのように、激しく彼女を求め続けた。

ついに、僕はその思いに抗うのをやめ、彼女を手に入れようと心に決めた...

タイプ964が生産を終え、タイプ993へと変わる頃、彼女は僕の元にやってきた。

自分だけの最高の馬を手に入れたことも嬉しかったが、それ以上に嬉しかったのは、

彼女は僕が想像していたよりも遙かにいい女だということだった。

車に乗るというよりも、まさに馬に乗っているような感覚が近いだろうか?

体全体で操る感覚...とにかく、DriveではなくRideなのだ!

 

僕の初恋はやっと叶った。


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