踊る麻酔科最前線

ペインクリニックとは?

雑誌「ペインクリニック」Vol.18 No.3(1997.4)「巻頭言」における柳田尚先生(帝京大学医学部附属市原病院麻酔科/東京疼痛研究所)のご発言を引用しました。
>以下が私の意見です。


世界疼痛学会(IASP〉の基準によると神経ブロックを主体とする診療形態は針灸などと同列に手技別診療(Moda1ity-oriented Clinic)の中のNerve B1ock Clinicに属しPain Clinicとは言わない.この基準は神経ブロックに対する無知や偏見ではなく,神経ブロックの元祖ともいうべきBonicaや疼痛医療の分野で国際的に活躍している著名な麻酔科医も参加して提出された権威ある基準である.本誌ペインクリニックの投稿規定には「神経ブロックが診療手段の主体をなすことから,痛みのみならず,他の症状,疾患も対象となります」と明記されている.この告示こそはまさにNerve Block Clinicそのものであり,国際的なPain Clinicの基準とは明確に異なる.もし,Pain Chnic=Nerve Blockとする認識が日本に定着しているとすれば,その認識は日本独自の定義であり国際的には通用しない.Pain Clinicとは痛みの集学的診療に対してのみ適用される.集学的という意味は疼痛患者を専門の異なる人々によって多角的,総合的に診療する形態をいう.麻酔専門医が神経ブロック以外の方法も用いる,あるいは他科に依頼することをもって集学的とは言わない.筆者は集学的診療と手技別診療の優劣をここで論じようとは思わない.本稿の主旨は日本にはNerve Block Clinicは存在するがPain Clinicは存在しないという「裸の王様」的な事実を指摘することにある.日本ペインクリニック学会会員の約100%は麻酔科医である.実質的には日本麻酔学会の分科会であり,手技を共にし,その手技を信奉し,謳歌して止まない同志の祭典である.麻酔科以外の医師を特別演者として招待することはあっても,お客さんの域を出ることはない.すなわち,日本ペインクリニック学会は国際基準からするとNerve B1ock学会である.痛みの患者が最も多く訪れる整形外科,痛みと密接に関わる脳神経外科,神経内科,疼痛医療にとって不可欠な精神科,心療内科,東洋医学,看護学,心理学など,これらの人たちの中には,疼痛医療に関する豊富な経験と深い知識を有し,極めて卓越した疼痛医療を日常的に実践している人たちも多い.この人たちが抵抗なく,興味をもって参加できる場であってこそ国際的にも通用する正統なペインクリニック学会であろう.ペインクリニック認定医制度は麻酔指導医にとって資格取得は容易であるが,それ以外の医師にとっては取得意欲を喪失しかねない内容である.痛みの問題は医療全体の根幹に深く関わり,大きく,かつ,裾野は広い.この無限のスケールをもつ痛みの問題を,医療の中の僅か一握りを占めるに過ぎない麻酔指導医が,しかも,己のみが得意とする神経ブロックという手技をPain Clinicの絶対なる基準として一方的に断じ,ペインクリニック認定医という崇高な名称を勝手に標榜しているに過ぎない.IASPが重点的に取り組んでいる乳幼児,高齢者,AIDS患者の疼痛対策などには小児科医,老人科医,血液学専門医,などの集学的アプローチこそが不可欠な分野であって,神経ブロックがこの分野の主体とはなり得ない.国際的な疼痛医療の流れから取り残されないためにも神経ブロック=疼痛専門医と確信して疑わない麻酔専門医の勇気ある意識改革こそが求められている.もし,それを本能的に嫌うのであれば,Nerve Block Clinicとしての旗を堂々と掲げるのが筋であろう.

参考文献)IASP Task Force:Definition of Terms.Pain Treatment Facilities,2-3,1990

 


>いや〜拍手、拍手。この「巻頭言」の掲載を拒否しなかった日本ペインクリニック学会準機関誌「ペインクリニック」は大したものだと思います。さすが「悪魔のささやき医学辞典」の作者の関係者(と想像しています)だと唸ってしまいました。日本のペインクリニックの未来は明るい、とは確信しました。
 ペインクリニックなんて学会や認定医作るほどのものですか?10年も麻酔やってれば、星状神経節ブロック、硬膜外その他主要な手技は誰でもできるようになりませんか?高い金だして学会員になっても、何の見返りもないでしょう?私、まだ学会員だったかなあ?忘れちゃっいました。「ペインクリニック」誌だけは読んでるけど。

 

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