インターネットによる医療相談は大きな可能性を秘めています。患者さんにとっては医師に直接質問しにくいこともあるでしょうし、事実上24時間営業であること、遠隔地の医師や複数の医師の意見を参照できる、プライバシーは原則として保護される、文書化することで自分の質問が整理できるなど多くの利点が存在します。インターネット医療相談には電子メールによる非公開タイプと掲示板を利用した公開タイプがあるようです。非公開タイプでは質問者・回答者、両者のプライバシーがほぼ完全に保たれますので忌憚ない回答が期待できます。公開タイプでは回答者の責任は重く、うっかりしたことは言えませんから返事は遅れがちですが、複数の医師の意見が期待できます。
「日本医療相談センター」は原則は公開タイプですが、専門医のメールアドレスが公開されていますので、非公開タイプの質問(ただし、この場合回答は必ずしも保証されません)も可能な画期的システムを採用しておりますのでお勧めです。
医師にとってはどうでしょうか?メリットは、はっきり言って余りないかも知れません。自分の勉強にもなるということ、多くの医師と知り合いになれるという位でしょうか。
デメリットはどういうことがあるでしょうか?まず心配なのは、医療法で制限されている不特定多数への広告と判断されないかという問題です。今の所、規制はされておりませんが、将来的な保証はありません。メンバー制や有料化への動きもあるようですが、私個人としては反対です。
良心的な医療相談の回答者は基本的に個人情報を公開しています。少なくとも電子メールの返答には本人の氏名が記載されていることが多い筈です。医師の氏名と専門(すなわち所属学会)が分かれば、住所や勤務先、電話番号くらいは簡単に調べることが可能です。「インターネットであの先生はこう言った」などということを楯に、他の医者を責めたりすることは絶対にしないで下さい。万一その様な事態から訴訟問題などに発展した場合、善意の医療相談は姿を消すことになるでしょう。
お願い
そのような危険を知りながら、善意のボランティアとして回答して下さる医師には、やはりそれなりの礼節を持って相談して頂きたいと存じます。いたずらやけんか腰の質問などはもっての他ですが、質問する方と回答する方、どちらの労力が大きいかもご理解頂きたいと存じます。怒りや不安に任せて質問を連ねるのは簡単です。回答する側は、医学書を調べたり同僚医師に頭を下げて協力して貰ったりして回答をまとめ、相手の立場や理解力(医学知識)を想像し、言葉を選んで返事を出すのです。無料でそこまでして貰って、返答が気に入らないのでしょうか、お礼のメールも出さないなんて「人の道」に外れていると思われませんか?
さらに、実際に診療をうける訳ではない医療相談の限界も理解して下さい。緊急の相談には不適ですし、限られた情報からくる誤診や返答不能などは十分にあり得ることです。
善意による医療相談には、相談に対する回答の絶対的義務はありません。どこの相談用ホームページに相談しても、何日も回答が得られないなんて場合は、「自分の相談方法に問題があるのではないか?」ということも考えてみて下さい。