アバン


新プラントの争奪レースが始まりました。
まぁスポーツマンシップに則り正々堂々と競い合うなら何も問題はないのですが、もちろん大人の世界ですからそんなはずもなく。

力押しする人
ボケ倒してかわす人
ひたすらオロオロする人
奸智を駆使する人
のんきに遊ぶ人

まぁ人それぞれなわけですが・・・
いきなり温泉ネタなんてもうネタに詰まったんですか?

ああ、これって一応黒プリの続編だったりそうでなかったりしますのでよろしく〜



ナデシコC・通路


何の因果か、発作的に女性に変身する病気を身につけたアキト。

「好きで身につけたわけじゃないわよ!」

あ、お姉言葉。

「って何で話し方まで女性になるかなぁ〜」

性別が変わるとしゃべり方や考え方も自然と女性っぽくなるのはとっても不思議だった。どうもテンカワ・アキトという人物からアマガワ・アキという人物に変身したと表現する方が正しいみたいだ。

「しかし、こんなところで変身なんて大ボケもいいところね」

幸い誰にも見られていないから良いようなものの、他人に見られたら人生お終いだ。
今度から自発的に変身して発作による強制的な変身は避けないといけない。

「誰かに見つからないうちにどこかで隠れていよう」

しばらくどこかに身を隠せば男に戻るはず。
それまで身を隠せば・・・
しかし、それは少し遅かった。

「あら、シオンちゃん♪」
「ドキ!」

彼女はギギギーという擬音を響かせながらぎこちなく振り返る。
するとそこには見知った顔があった。

「あなたもお風呂?」
「い、いや〜そういうわけじゃ〜」
「風呂桶持って?」
「あ、アハハハ♪」

振り向くとそこにはアマノ・ヒカルとマキ・イズミがいた。
どうも二人は完全に彼女の事をテンカワ・シオンと間違えている。

「私達も大浴場に行くんだけど、一緒にどう?」
「え?いや、私は別に銭湯に行く訳じゃ・・・」
「バスタオルに洗面器を持ってるくせに?」
「銭湯なだけに格納庫・・・ククク♪」

完全に及び腰な彼女を見逃すほど三人娘(−1)は甘くない。

「良いじゃないの、行こう行こう♪」
「え?そ、それは・・・」
「アキト君の話とか色々聞きたいし♪」
「聞きたい、聞きたい、き期待満々」
「え、ちょ、ちょっと〜」

両腕をヒカルとイズミにがっちりホールドされて彼女はずるずると大浴場まで連行されるのであった。



ナデシコC・アキトの部屋の付近


「パパ〜〜どこに行ったの〜〜
 襲わないから出ておいで〜〜」
「シオン様、その探し方では猫だって出てきませんよ」
「そうかな?」
「そうですよ」

ラピに諫められながらも、辺りを探し回るアキトの娘であった。



NadesicoNG(Next Generation)
第14話 撫子温泉湯煙慕情



連行中・ナデシコC通路


アキさんの頭の上ではドナドナの曲が流れながらも、二人は問答無用で引きずっていく。
そんな強引な二人であるが、あることに気づいた。

「そういえばその制服」
「え?」
「男物」
「しま・・・」
「しま?」

しまったと言いそうになってアキは思わず続きを飲み込んだ。

「しまじろう?」
「しまうま?」
「いや〜〜」
「もしかしてしまった?」
「ギク!」

些細な動揺を的確に突っ込んでくるヒカルとイズミ。

「四万十川がこの前決壊したらしいよね〜って言うつもりだったの♪」
「なんだそうだったのか♪」
「納得」
「「「アハハハハ♪」」」
朗らかに笑う三人

・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・

「な〜んて誤魔化されるわけないじゃない♪」
「あ〜!やっぱり〜」
「男物、何故、説明求む」

二人に左右から顔を寄せられてたじろぐアキ。

「い、いやぁ〜〜それは〜〜」
「どう考えてもそれは男物っしょ」
「あ、あたし、スカート苦手で〜〜」
「ブリッジじゃ普通にタイトスカート履いてたじゃない」
「いやぁ〜私常々思うんですけど、どうしてアニメや漫画の女性ってミニスカートとか多いんですかねぇ〜〜絶対動きにくと思うんですけど」
「そう?」
「そうですよ〜RPGに至ってはどうしてビキニ姿で戦うんですか?
 あれで防御力が高いなんて普通おかしいですよ」
「まぁそりゃそうだけど・・・」
「そうなんですよね〜絶対おかしいはずなんですよね〜だから私は・・・」
「そんなのどうでもいいじゃん」

アキが結論を言う前にイズミがあっさりと切り捨てる。

「あ、どうでもいいよね」

説得されかけたヒカルもあっさりとイズミに同調する。

「ということで、どうして男物の制服を着ているの?」
「いやぁ〜それは〜〜」
「もしや!」
「まさか!」
「それ、アキト君の制服でしょ!」
「え!?」

気づかれたか!?
アキは真っ青になった。

「本当にパパっ子なんだから〜♪」
「甘えん坊、甘えん坊」
「は?」

一人で・・・いや二人で勝手に納得するヒカル達。

「でもいくらファザコンだからと言っても、パパの制服着るのは行き過ぎだよ」
「任天堂のゲーム機、そりゃファミコン・・・くくく♪」
「えっと・・・」

まぁこちらの都合のいい方に勘違いしてくれているのであえて誤解を解く必要もなかった。ヒカル達の調子に合わせることにする。

「そうなの♪ちょうど私の制服クリーニングに出しちゃって、パパの借りてるの♪
 サイズもピッタリだし、それにトレーニングとかするのに便利だからこっちの方を着ちゃったの。テヘ♪」

テヘ♪はないだろう、とアキは心の中で思う。
自分でも白々しいほどの可愛い子ブリッコ(死語だし存在自体も絶滅危惧種)をする。彼女の頭の中のシオンがそんなイメージなのだが、いささかオーバーリアクションであることは否めない。

案の定、イズミが眉間にしわを寄せてアキの顔を覗き込む。

「あ、あの・・・イズミさん・・・何か?」
「むむむ・・・」
「ですから何か?」

平静を装いながらも恐る恐るイズミに尋ねる。

「むむむ・・・」
「ですから、何かおかしいことでも?」
「・・・つおい?」
「つおいって・・・何?」
「強いでしょ、あなた」
「強いって?」
「ビンビン感じる!」

イズミの目がキラキラ光りだした。
まるで『俺より強い奴に会いに行く!』みたいな顔をしている。

「んじゃ、お風呂に行く前に汗でも流しますか♪」
「え?え?」
「フフフ♪腕試し腕試し♪」

戸惑うアキをホールドしながら行き先変更をするイズミ達であった。



ナデシコC大浴場・男湯


「あ〜〜良い湯だなぁ」
広い湯船一人で浸かっているハーリー君。
まるで貸し切りの様な気分で気持ちが良い。

「はぁ〜〜ビバノンノン♪」

いや、多分その鼻歌は知らない人の方が多いと思う。

「天井からしずくがぽたりと背中に〜♪って防湿処理を施してるから天井からしずくは落ちてこないんだけどね」

なんて昔の歌を気分良く歌いながらハーリーはご機嫌だ。
さっきまではあれだけ傷口を抉られて凹みまくっていたが、それも癒える思いである。

「でも、ちょっとのぼせちゃったかなぁ〜」

ちょっとフラつきながらもハーリーは湯船からあがりかけた。
と、その時である。

「パパ、いる〜?」

ガラガラガラ!

湯船と脱衣所を繋ぐ扉が勢い良く開いた。
何の躊躇いもまったくなく開いた。
ちなみに何故か引き戸である。
まぁそれはともかく、あまりにも勢い良く開いたので湯船からあがりかけたハーリーは呆気にとられて次のアクションを忘れてしまった。

扉の向こうから顔を出したのはシオンであった。

「あれ〜〜やっぱりパパいないのかぁ〜〜
 おかしいなぁ〜先に銭湯に行ってると思ったのに」

シオンは浴場の中を一瞥すると溜息をついて、もうここには用はないと言わんばかりに脱衣所に引き返していった。

ハーリーは真っ赤になりながら再び湯船に浸かった。

『見られたのか!?
 見られたのか!?
 見られたのか!?
 見られたのか!?
 見られたのか!?』

湯船に口元まで浸り、ブクブクさせながらハーリーはそればっかりを考えていた。

『モロ見られたよな。
 でも僕に気づいた様子はないし、
 そうだよ、僕ってアオイ提督並に存在感薄いし・・・
 いや、それも微妙に自分へのダメージを与えているというか・・・
 でもモロ見られるよりは・・・』

浮いたり沈んだり、一喜一憂しながら心の天秤が見られていない方向に傾き始めたその時!

ガラガラガラ!

再び湯船と脱衣所を繋ぐ扉が開いた。

「あ、ハーリーおじさまに言い忘れた」
「え?」

再び扉の向こうから顔を現したのはシオンであった。
シオンはニッコリ笑った後、少し頬を染めてこう言った。

「ポークビッツね♪」

それだけ言うと気が済んだのかシオンはスタスタと銭湯を出ていった。
後に残されたハーリーは顔を真っ赤にして湯船の中に撃沈するのであった。



ナデシコC・トレーニングルーム


軽く汗を流そうということで連れてこられたトレーニングルーム。
そこは和風の道場である。
上座には空手着と柔道着を混ぜたような道着を着込んだイズミが立っていた。色は青色で帯は黒である。
対するシオンに間違われているアキさんは白い道着に白帯である。

「やぁ〜!」
某お笑いコンビのように仰々しく構えたイズミ。
笑いを取りたいのか、どこからでもかかってこいと言いたいのか、よくわからない。

「シオンちゃん、がんばれ〜♪
 イズミ、手加減してあげなよ〜♪」
観戦者モードのヒカルは無責任に煽る。
とはいえ、実力的にシオンは格下に見られているらしい。

『いやぁ〜どうするかなぁ〜』
アキは悩む。勝ってしまうのは簡単だが、あまりに強すぎると勘ぐられかねない。
かといってわざと負けても後でイズミが本物のシオンの動きをみてバレる可能性もある。
つまり大体シオンぐらいの実力で戦わないといけないのだが・・・

『えっとあの子の強さってどのぐらいだっけ・・・』
力加減が難しいとブツブツ言うアキに対し、イズミはおいでおいでという手の動きをする。

「どうしたの、シオンちゃん。緊張してるの?」
「えっと・・・実はそうなんです♪」
可愛い子ぶるアキだが、イズミは当然そんなことで手を抜くつもりはなかった。

「ハァァァァァ!!!」

シュゥゥゥ!

「キャァァァ!」
可愛い声を上げてかわすアキ。
イズミはあれ?と首を傾げる。思ったより手応えがなかった。
かなり余裕でかわされた気がする。

「・・・強い」
「え?」
「シオンちゃん強いの?」
「・・・わからない」
「アハハハ、まぐれッスよ、まぐれ♪」

一応謙遜してみせるアキに並々ならぬ実力を感じ始めているイズミ。
もう少しかわすのを遅らせてみるか?

スカ!スカ!スカ!

本人が思っている以上に身体能力が上がっているのか、自分がこうしようと思ったタイミングよりもよほど早いタイミングで避けている。おかげでイズミの攻撃がかすりもしない。

「はぁはぁ・・・反撃していいのよ・・・」

キャァ〜とか言いながらかわしているのでヒカルには多少誤魔化せているかも知れないが、イズミの目は真剣そのものだ。本気で戦うつもりらしい。

『あちゃ〜これは多少なりともこちらから手を出さないと疑われるかな?』

手加減手加減と思いつつ軽く反撃をしてみる。

ハアァァァァ!

イズミの突きを軽く右前に歩み出てかわし、イズミの後頭部に手刀を入れようとする。
しかしその手刀がイズミも反応しきれないほど素早いものであった。
その手刀の速さを誰よりも驚いたのはアキ自身だった。

『待て待て!これじゃイズミちゃんを怪我させちゃうよ!』

アキは必死に自分の繰り出した手刀を引き留めるように腕の力を加えた。
寸前で手刀を止めることに成功したがちょっぴりうなじ辺りを触ってしまった。

ゾゾゾ!

イズミは首筋を押さえて後ずさった。
あわわ〜といういう仕草をして誤魔化すアキをイズミはしばらく眺めた後、溜息をついた。

「このぐらいにしておいてやるぜ」
「アハハハ、やっぱりイズミさんは強いなぁ」
「どちらかというとイズミちゃんの負け惜しみに聞こえるけどなぁ」

確かにイズミの台詞は吉本ギャグを真似ているらしい。
けれどアキはその台詞を真に受けたフリをしてフェードアウトしようとする。

「ってことで私はこれで〜」
「んじゃ、汗を流しに行こう」
「え?」

もちろん彼女を逃がすはずもなく、イズミはアキの肩をしっかりと掴む。

「汗はもうたっぷり流しましたよ〜」
「流すは流すでも洗い流す方よね♪」
「・・・覚えてましたか?」
「もちのろん」
「女同士、裸の付き合いってやつをしましょう♪」

またもドナドナの曲がアキの頭の中に流れて、彼女は二人に引きずられていくのであった。



ナデシコC・食堂


「パパ〜〜いる?」
シオンは食堂を覗き込むと、そこには人っ子一人いなかった。

「ええ、アキト様は来てらっしゃいませんよ」
「え〜〜ここにも来てないの?」
「ええ」
そう、人ではない人工AIであるラピが皿洗いをしながら答える。

「全く、パパってばどこに行ったのかしら。
 そんなに私とお風呂にはいるのが恥ずかしいのかしら」
「まぁ恥ずかしいかもしれませんねぇ」
「なんで、こんなに可愛い娘が背中を流してくれるって、普通は嬉しいものでしょ!」
「まぁそれはそうですけど・・・」

曖昧な言葉でお茶を濁すやけに人間くさいAIであるが、多分このAIと同じ反応をする人は決して少数派ではないだろう。

父親ベッタリの頃をすっ飛ばして反抗期だった為か、揺り戻しで父親に甘えたがりな娘であった。



ナデシコC大浴場・女子脱衣所


アキは大浴場に来るまで自分の力を不思議がっていた。
どうも数ヶ月前のずっとアキだった頃の感覚と違う気がする。

『強くなっている?』

いやいや、身体的には変わっていないはずだから強いって事はないだろうけど、それにしてもイズミちゃんをあんなに簡単にあしらえるなんて。数ヶ月前の常時女性だった状態と発作で変身する今の状態は似て非なるモノなのだろうか?それとも何か意味のある事なのだろうか・・・

「なにそんなところでボ〜っとしてるのよ」
「え?」
「お風呂に入るんでしょ?さっさと制服なんか脱いじゃいなさいよ」

ブッ!

ずっと考え事をしていて声をかけられて我に帰ったアキが初めて見たモノは下着姿のヒカルであった。

「ひ、ヒカルちゃん・・・じゃなかった、ヒカルさん。
 ど、どどどど〜」
「道路工事?」
「ど、どうして下着姿なんですか〜!」
「この子は何言ってるんだか。服着てお風呂に入る人がいますか。
 それともあんたは水着でも持ってきたのかね?」
「い、いや、それはそうなんですが〜」

確かにお風呂に服を着て入るバカはいないが・・・

「あなた、銭湯に先頭で入るべし」
イズミのギャグに転けそうになるが、驚くべきはその姿である。

『でかいなぁ〜負けたか?
 ・・・じゃなくって!!!』

思わず鼻血・・・じゃなかった、お茶を飲んでもいないのに吹き出しそうになるアキ。それほど目の前のイズミは刺激的な姿を晒していた(察して下さい)

「イズミさん!なんて格好をしてるんですか!」
「湯船にタオルを浸けちゃダメ」
「いや、だからって」

普通はバスタオルを巻くだろうと思うのだが、変なこだわりがあるらしい。

「まぁまぁシオンちゃん、女の子同士なんだから別に恥ずかしがらなくても良いじゃない♪」
「いえ、親しい仲にも礼儀ありって言いますし」
「裸の付き合いってのも大事よ」
「ヒカルさん、それって親父っぽい言い方ですよ」

いや、アキさんがその台詞を言われますか(苦笑)

「ひょっとして恥ずかしいの?」
「恥ずかしいというか・・・」

あなた達を直視できないからですとは言えない。

「脱いでもすごくないので〜」
「そんなにスタイル悪くないと思うけど」
「いやぁヒカルさんやイズミさんには勝てないッスよ〜♪」
「どれどれ?」
「ヒャン!?」

ヒカルが気を逸らしている内にイズミが背後に回り込んでアキの胸を鷲掴みにした。

「結構大きい」
「やめて下さい、イズミさん〜!」
「フフフ♪」
「だから〜!」

イズミの何故か勝ち誇った顔。武術では負けてもスタイルで勝っていればイズミ的にはOKらしい。

「案外着やせするんだねぇ〜。私の見立てではもう少し小さいはずなんだけど」
「見立てって・・・」
「私よりやや小さいぐらい」
「ですから〜」

未だに女子高生か、あんたら!という具合にキャピキャピ盛り上がるヒカル達。
女の子同士のあけすけな付き合いってこんなものなのかと改めて思い知らされてドッと疲れるアキであった。



革命学園エルドラドレリルレル


カポーン〜〜

お風呂場はエコーが効いていて風呂桶を置く音も気持ちの良い響きを立てる。

「はぁ〜良い湯♪」
サクラは湯船に浸り、その気持ちよさに頬を薄紅に染める。
と、そこに、

ガラガラガラ〜〜!

お風呂場の入り口が開く音がした。
今日は誰もいないはずなのに、誰!?
サクラは湯船のそばの岩場に隠しておいた佩刀に思わず手を伸ばす。
しかし入ってきた人物は怪しいけど怪しくない人物であった。

「黄薔薇の君」
「あ、あなたは黒百合のお姫様!」

湯気の向こうから現れていたのは決闘広場にしか現れないと思われていた謎の人物が今自分の目の前に現れたのだ。もちろん生まれたままの姿で!

「ど、どうして妾の前に・・・」
「小さくて気高い君、どうか今日のことを忘れないで。
 今日の思い出にこのロザリオを」

『ああ〜〜幸せ〜〜このまま死んでも構わないわ〜〜♪』
サクラは鼻血を流しながら湯船に沈んでいくのであった・・・

『いやいや、ここで沈んだらもったいないですわ!
 ここは精一杯甘えないと!』
と、寸前で踏みとどまり、鼻にティッシュを詰めて何とか再起動を果たした。

「ロザリオ・・・首にかけて良いんだね?」
「お受けします♪」

すると、ここは銭湯のはずなのにどこからか教会の鐘の音がリンゴン♪リンゴン♪と鳴っていた。

「あの〜お姉さま、背中を流していただけますか?」
「ええ、構わなくてよ」

二人は湯煙の中、生まれたままの姿で甘え合うのであった・・・

Fin



戦艦ハルシオン・撮影スタジオ


「こんなシーンあったっけ?」
「さぁ〜〜でも面白いから良いんじゃない♪」
「相手役もいないのに一人二役で気持ち悪いわよ」
「でも気持ちよさそうにやってるじゃない♪邪魔しちゃ悪いわよ♪」

サクラが熱演する中、アクアとシャロンは一人芝居を続けるサクラを生暖かく見守っていた

「ならカメラだけでも止めましょうよ。ハッキリ言ってフィルムの無駄使いよ」
「良いじゃないの♪このまま回し続けましょうよ♪」
「え?このカット使うの!?」
「もちろん傑作NG集にまとめたらダビングしてバラまくの♪」

妄想で湧いているサクラも自業自得だが、この女も面白ければどこまでも非道になれるんだなぁ〜と我が妹ながら敵に回したくないと思う今日この頃であった。



ナデシコC・女性用大浴場


カポ〜〜ン♪

銭湯にはお決まりな音が響き渡る浴場はほとんど三人による貸し切り状態であった。

「いやぁ〜♪極楽極楽♪」
「あ、親父臭い」
「まぁ良いじゃない♪お風呂は心の洗濯ってね♪」
「それも誰かのパクリ」
「良いじゃない、そんなの。ねぇ、シオンちゃん♪」
「え?い、いやぁ〜」
「で、なにそんなに端っこにいるの?」
「あ、あはははは〜♪」

だだっ広い銭湯の真ん中で堂々とお湯に浸かっているヒカルとイズミに対し、アキは銭湯の端っこに背を丸めながら浸かっていた。

「髪の毛をタオルで巻くのはともかく、体までタオルで巻いて湯船につかるのはどうかと思うわよ」
「だ、だって〜」
「湯船を汚さない。ほら取る取る」
「や、やめてよ〜〜」

体に巻いているアキのバスタオルをむしり取ろうとするヒカル達。主にイズミの方が積極的だ。

バシャバシャバシャ!

剥ぎ取られてしまいました(笑)

「うにゅ〜」
「アハハハ、シオンちゃん可愛い♪いじりがいがある〜♪」
「白い肌・・・悔しい」
「うわぁ〜本当だ」

剥ぎ取ったアキの肌をつんつんとつつくヒカル。
アキはあれ?と思う。
確か男の頃は背中に傷がいっぱいあったはず。もちろん数ヶ月前のアキの背中にも。
でもこのアキは傷がないみたい。
これって一体どういう事なのだろうか・・・

「やっぱり若いって良いわねぇ」
「そんなぁ〜ヒカルさん達だって十分若いじゃないですか」
「いやいや、お肌の曲がり角年齢だからねぇ〜」
「え!もうそんな年齢なんですか!?」
「なに、そんな不思議そうな声を上げて」
「いえ、そんな風に見えないぐらいお若いですから〜」
「そ、そうかなぁ〜♪」

アキのおだてに素で喜ぶヒカル。
しかしイズミは騙されない。

「お世辞に決まってるじゃない」
「え?そうなの!?」
「本当にそう思ってるの!」

掴みかかるヒカルにたじたじのアキ。
ヒカルは調子に乗ってヘッドロックなどを決める。

『うわぁ胸が引っ付いてるって〜!』

健全な男子なら泣いて喜ぶシチュエーションかもしれないが、今の彼女にとっては苦痛でしかない。早く離脱する方法を模索しなければ・・・

「わ、わたし、ちょっとのぼせちゃったので、先にあがらせてもらいます〜」
「あ、逃げた」
「子猫ちゃん、逃がさないわよ♪」

何故か湯船でバシャバシャと鬼ごっこを開始するアキとヒカル達。

「怪しいぞ〜♪」
「怪しくなんかありません〜のぼせただけです〜」
「のぼせただけじゃそんなに走れない」
「だから〜」

グラリ!

アキは立ちくらみがした。
もしかして本当にのぼせたのか・・・
いや、この感覚はもっと悪いものだった。
つい数十分前に体験したはずだ!

『まさか男に戻るのか!?』

その兆候は現れていた。
まずい、まずい、まずすぎる!
今元に戻ったら正体がばれるどころの騒ぎではない。
しかも立ちくらみで足が止まったアキの元にヒカル達の魔の手が襲いかかっていた!!!

「シオンちゃん、捕まえた♪」
「なんの!」

木連式柔、秘奥義!
「ダイダルウェーブ!!!」
「「キャァァァッァァ!」」

ザッパ〜〜ン!

いや、単なるお湯をかけただけなのだが、あまりの勢いのために湯船にバッシャ〜ンと倒れ込んでしまった。

「あ〜ん、私のメガネメガネ〜」
「うう、追いかけなければいけないのに、お約束のギャグに負けてしまう〜」
ヒカルは眼鏡を落とし、イズミは横山やすしの様にメガネを探すヒカルに見惚れていた。

今の隙に!

半分アキが解けかけているアキトは大急ぎで脱衣所に向かった。



ナデシコC大浴場・女子脱衣所


命辛々脱衣所に逃げ帰ってきたアキ改めアキト。
大急ぎで服を着て逃げ出さなければ、彼に明日はない。
ほとんど裸に頭にタオルを巻いた状態で服を着ようとしたその時!!!

「コトネ先輩〜こんな昼間からお風呂に入ってて良いんでしょうか?」
「乙女は時間があれば何回でもお風呂に入ってお肌を磨くのよ。
 あの女に艦長を奪われても良いって言うの?」
「そんなことありませんけど〜」

ワイワイとやってくるのは女子ブリッジクルーの面々。
カザマツリ・コトネやミカ・ハッキネンなどである。
彼女達はおしゃべりしながら大浴場の入り口で談笑していた。しかももうそこまで来ていてまもなく脱衣所に入ってくる!

着替える時間なんてとてもありはしない。
いや、着替える時間があったとしてもぱったり鉢合わせは避けられないであろう。

もう一回浴場に戻るか?

「シオンちゃん♪もう一回お風呂に入ろうよぉ〜♪」

う、浴場からはヒカル達がまもなくやってくる。
まさに前門の虎、後門の狼な状態であった!

どう切り抜ける、テンカワ・アキト!(笑)



ナデシコC・アキトの自室


食堂以外も色々探し回り、結局アキトが見つからずに帰ってきたシオン(本物)

「パパ帰ってきた?」
「いえ、まだですわ」
「そうなのぉ〜本当にどこに行ったのかなぁ」

シオンの質問にあっさりと答えるラピ。
どうしようかと悩んでいるシオンにラピは一つの提案をした。

「シオン様、お風呂に入られてはどうでしょうか?」
「お風呂?」
「ええ、汗もかかれていらっしゃいますでしょ?」
「別に汗なんかかいてないし、パパと一緒に入ろうと思っていたから」
「まぁアキト様とは無理でしょうから」
「でも一人でわざわざシャワーなんて浴びても・・・」
「ナデシコには大浴場があるって聞いておりますわよ♪」
「大浴場?」
「ええ、大きくて気持ちが良いらしいですわよ♪」
「そっか〜大きくて気持ちが良いのか〜」

とりあえず父親探索は諦めて銭湯にでも入りに行こうかと考え直すシオンであった。



ナデシコC大浴場・女子脱衣所


「あ、あなたが・・・なんでここに・・・」
「叫んで良いですか!叫んで良いですか!」
「ちょ、ちょっと、これは・・・」

まさに絶体絶命!

「どうしたの、シオンちゃん?」
「襲われた?」
「襲ってません!!!」

イズミの誤解を招く発言に猛反発するコトネ。

コトネに怯えるように小さく縮こまるように脱衣所の隅にうずくまっているのはテンカワ・シオンの偽物アマワガ・アキであった。

え?
変身タイムが切れたテンカワ・アキトじゃないのかって?

『危ない危ない。何とか変身が出来た〜』
アキ、屈辱の自分で変身をやってしまったが、変態の烙印を押される事に比べれば遙かにマシであろう。
それにしても発作に頼らない初めての自発的な変身で、成功するかどうかわからなかったが人間必死になれば何でも出来るものだ。

・・・こんな短時間で再変身したのでリバウンドが恐いが(汗)

「あなた達はなんでこんな所に?」
「銭湯へ戦闘しに来る人はいない」
「・・・さむ」
「#$&%!!!!」

寒いギャグをコトネにばっさりと撫で切りにされて怒り狂うイズミ(笑)

「いやぁ〜イズミちゃんのギャグをそう返すか〜」
「ジェネレーションギャップでも感じますか?」
「そうだね」
アキの指摘にしみじみそう感じるヒカル。

とかなんとか和んでいる場合じゃない!

「んじゃ、私はこれであがりますんで〜」
「あ、シオンちゃん、あがっちゃうの?」
アキはこのドサクサに紛れてそそくさと立ち去ろうとする。
しかしそうは問屋が降ろさなかった。

「あら、シオンさん。一緒にお風呂に入りましょうよ」
「は、入りましょう〜」
「キャ♪シオンさんと一緒ですって♪」
「まぁお美しい♪」

コトネやミカらが誘う。彼女達は結構期待の眼差しでアキを眺める。

「いやぁ〜さっきのぼせちゃったし〜♪」
「そんなこと言わずに」
「でも〜〜」

なかなかみんなアキを離してくれない。

「十分暖まりましたから」
「良いじゃない。もう一度入り直そうよ」
「でも〜」

クシュン!
くしゃみをしたのは他ならぬアキである。

「あ・・・」
「ほら、湯冷めしちゃってるみたいだし、もう一度入ろう♪」
「え、いや〜〜」
「ハイ決定♪」
「あう〜〜」

再びお風呂場に逆戻りのアキであった。



ナデシコC・女性用大浴場


カポ〜〜ン♪

「ん・・・・」
「ん・・・・」
「ん・・・・」

銭湯にはお決まりな音が響き渡る浴場は乙女達で賑わっていた。
一人居所がなさげに落ち着きがない女性が一人。
アキさんはヒカルとコトネに両脇をがっちりと抑えられて逃げられなかった。

「の、のぼせました〜」
「まだ100数えてないじゃない」
「100数えるまでは肩まで浸かる」
「子供じゃないんですから〜」

ヒカルとイズミ、離してくれず。

「1、2、3、しごろひちはくじゅうにじゅうよんじゅうはちじゅう100♪
 ほら、100数えたわよ」
「6が抜けてたわよね」
「7も抜けてましたね」
「っていうか、10以降は盛大に抜けてたわよね」
「そ、そんなことは・・・」
「ズルはいけないわよね」
「いけないと思います」

コトネとミカも離してくれず。

このまま行くとまたタイムアップして元に戻ってしまう。
ここはどうしても脱出しなければ!

「あ、UFO!」
「銭湯に空なんて見えないわよ」
「第一ここ宇宙空間だし」
「ヨン様があんな所に!」
「ヨン様って誰?」
「っていうか、この時代の人は冬ソナなんて見ないし」
「艦長が覗いてる!」
「艦長はそんなことをする人じゃありません!」

注意を逸らす作戦、ことごとく失敗・・・

「っていうか、そんな度胸すらないよねぇ」
「何ですって!度胸がないってどういう意味ですか!」
「人畜無害だって誉めてるんじゃないの!」
「ちっとも誉めてません!」

あ、ヒカルとコトネが喧嘩を始めた。ラッキーかも♪
今の隙に潜水開始!

アキはみんなの視線がケンカをしているヒカルとコトネに集中している隙にこっそりと潜水して逃げた。

10m、9m、8m・・・

徐々に出口までの距離が縮まっていく。
脱出までのあと残りわずか!

3m、2m、1m・・・

『ああ、これで私は自由♪』
アキは湯船から顔を出してそう確信した。

しかし!!!

ガラガラガラ!!!

「たまには大きな銭湯も良いかもね♪」
『ゲェェェェ!本物〜〜!』

脱衣所の扉を開けて入ってきたのはもちろん本物のテンカワ・シオンである。
もちろんアキは大急ぎで再潜水である。

「あ、シオンちゃん、いつの間にかお風呂をあがろうとしている〜」
「こら!抜け駆けして一人艦長の所に行こうとしてるでしょ!」
「???何のこと?」
「とぼけるのが上手いんだから」
「逃げるのは無しよ。もう一回一緒にお風呂に入りなさいよ」
「・・・いやぁ、そのつもりだけど」

今来たばかりのシオンにとっては意味不明な批判だが、彼女達にはしらばっくれていると受け取られたようだ。

『アキさん、ピーンチ!』

ひたひたと湯船に近づくシオン。
アキは何とか湯船の底と縁ギリギリまで潜り身を隠しているが、シオンやヒカル達にばれるのは時間の問題であった。
第一そこまで息が続かない。

アキが浮上するのが先か、
シオンが湯船に入ったときに気づかれるのが先か、

『っていうか、さっきの息継ぎが不十分だったから・・・』
さすがにもう息が苦しくなってきた(笑)

『もう息が続かない〜
 っていうか、いくら潜っていても湯船に入られたらさすがに気づくでしょう〜
 ああ〜ピンチピンチピンチ!
 でも一度普通にこの姿でシオンに会ったらどうなるだろう?
 案外、母を訪ねて三千里っぽく感動のシーンで誤魔化せるかな〜
 こんにちわシオン、私がママよ♪ってな感じで・・・
 っていうか私はママですらないし〜!
 と色々ごちゃごちゃ考えても1秒もかかってないじゃない〜
 考え事をして潜水時間を引き延ばそうなんて無理無理無理〜!』
などと妄想で時間を潰すのも限界がある。

「フンフンフン♪」
『あ〜あ、もうダメ〜』

シオンの鼻歌が間近に聞こえるまで近づかれ、息もほとんど続かなくなった絶体絶命のアキに対し、救世主は微笑みかけた。

ガラガラガラ!!!

「シャンプーとリンスを取り替えに来ました〜」
「あ、ラピ」

デッキブラシと掃除道具、それに補充用のシャンプーやリンス、ボディーソープを持って入ってきたのはシオン専属メイド、AI搭載アンドロイドのラピさんである。

「あ、メイド服、しかもビクトリア調か。正統派ね」
「あのメイド、メイドインジャパン?・・・ククク♪」
「ラピったらお風呂場に何しに来たの?」
「ですからシャンプーとリンスとボディーソープをお取り替えに♪
 そろそろ無くなっている頃かと♪」
「そう?」

まぁ確かに量は少なくなっているかもしれないが、別に今すぐ取り替えないといけないほど減っているようには見えないが・・・

「それにお風呂のお掃除もさせていただきますから♪」
「やめてよ。私達お風呂に入ってるんだから終わってからにしてよ〜」
「そういうわけにも行きませんので♪」

ラピは潜水中のアキに後ろでサインを送りながら、シオン達の注意を自分の方に引きつけていた。しかしなかなか湯船から抜け出して脱衣所に脱出するまでには至っていない。

『もう私の息が保たない〜〜』
アキは水中からサインを送るが、ラピはまぁ待ってとサインを送り返す。

「どうしたの?」
「いえ、何でもありません♪
 それよりも某少女風にお仕事をさせていただきますね」
「だから私達があがってから掃除をしてって」
「ということで始めま〜す♪」
「聞いてないな」

ラピはシオン達のツッコミを無視しつつマイペースにお風呂の床掃除を始めた。

「ハーリー君、お湯加減どうですか?」
ラピは塀の向こうの男湯に声をかける。某少女風に。

「え?ルリさん!?」

男湯からはハーリーの声が聞こえる。彼はまだお風呂に入っていたようだ。

「そちらのお湯加減、どうですか?」
「る、ルリさんは、ち、地球で・・・」
「お湯加減どうですか?」
「ええ、気持ち良いですよ♪」
「そうですか。こちらも良いお湯加減です」

ラピは某少女風に言うとハーリーはすっかり騙されて本人と会話しているつもりになっている。いくら姿が見えなくて声がそっくりだとはいえ、本人が乗っていないのは周知の事実のはずだ。
それもわからないのだから舞い上がっているの、文字通り相当のぼせているのかも知れない。
シオンやヒカル達も呆気にとられているのか、それとも興味津々なのか、事の成り行きを見守っていた。

「背中を流してあげましょうか?」
「え、ええ!?」
「この塀を飛び越えてきたら背中を流してあげますよ♪」
「いや、で、でも・・・」

『悩むな!即答で断れ!』
などと外野の少女達はツッコミ半分、ハーリーの反応を楽しんでいたりする。
さて、あの少年が何秒で陥落するか・・・

「そ、そちらは女湯で、僕は男ですし・・・」
「こちらには誰もいませんよ♪」
「え?さっきまで声が・・・」
「たった今あがられましたよ♪」
「でも・・・」
「誰もいませんよね〜♪
 ・・・・
 ほら、誰もいませんよ」
「そ、そうですか・・・」

『いや、誰もいなくてもダメだろう』
と少女達は心の中でハーリーにツッコミを入れるが、誰も声をひそめてラピに協力している所を見ると楽しんでいるようだ。

「大丈夫ですよ、ハーリー君はまだ子供ですし」
「い、いやぁ〜♪」
『喜ぶかい!』
「お風呂からあがったらまた一緒に手を繋いで寝てあげますから」
「ほ、本当ですか!?」
『子供扱いされて嬉しいのか!?』

外野のツッコミはともかく、意外に自制心が高いのか、何とか持ちこたえてる。

「そうですか。ハーリー君が来ないならさっさとあがりましょうか」
「え?」

あ、悩んでる悩んでる。
こんなチャンス、滅多にないと思い悩んでいるのか・・・

「ルリさん、来ちゃいました♪」

あっさり塀の向こうから顔を出すハーリー。
訂正。彼の場合、自制心が強いのではなく単なる優柔不断なだけである。
もちろん、ハーリーの満面の笑顔がすぐに血の気が引くのは言うまでもない。

「る、ルリさんは・・・どこ?」
「ほうほう、言うことはそれだけですか?お子ちゃま(怒)」
「い、いや〜そ、それは〜」

シオンが仁王立ちで塀の上から女湯を覗くハーリーを睨み付けている。

「ルリさんはいなかったですね・・・それじゃ、僕はこれで〜♪(汗)」
「逃がすか!」

塀の向こう側に戻ろうとするハーリーにシオンは手近な風呂桶をぶつけた!

スコーン!
ヒューーーーンドスン!

見事ストライクで、ハーリーはそのまま女湯の方に落下した。

「イタタタ・・・ひ、酷いですよ〜」
「酷い?毛も生えていないお子ちゃまのくせに!」

結構怒っているシオン。
彼女は『Hなのは良くないと思います!』的な人かもしれない。
その割には男湯に平気で入ったりするのだが、そこに触れてはいけない。

「え?毛が生えてないの!?」
「うん、ポークビッツ」
「うそ〜可愛い♪」
「ほら、ミカも見てみなさいよ♪」
「や、やめて下さい先輩〜!・・・チラ」
「う、うわぁ〜見ないで下さい〜!!!」

みんな素っ裸のハーリーを囲んで鑑賞会を始めた。
その隙にラピはアキにサインを送る。
アキはほとんど酸欠気味でのぼせまくりだったけど、乙女達の視線がハーリー君に集中している隙にラピに支えられて女湯を出ていくのでありました。



しばらく後、ナデシコCアキトの自室


「ラピさん、ありがとう。助かったよ」
「どういたしまして♪」

男に戻ったアキトは命辛々自室に戻ってラピにお礼を言った。

「しかし、どうして助けてくれたの?
 シオンのメイドなんだろ?」
「私はシオン様を見守る存在ですから♪」
「ってことは俺が彼女そっくりに変身するっていうのもそれに関係するのか?」
「さぁ、それはどうでしょう♪」

助けに来てくれたという事は、アキトが変身してしまうという事実を知っていたからだろう。だが、変身する理由まで知っているのだろうか?

「変身した後、なんかすごく能力が上がっている気がしたんだが・・・」
「あら、そうなのですか?」
「偶然なのか、必然なのか、どちらなんだ?」
「さぁ、私はただのAIですから♪」

アキトの疑問にラピは何も答えてはくれなかった。



新プラント・タナトス


そこは星々がくっきり見える宇宙空間。
その中にポツリと漂う城のような建造物。
忘れられた聖地、辺境に漂う城
主が戻ることをただひたすら待ち続ける存在・・・

そんな廃墟に総髪の少年が立っていた。
彼の瞳はルビー、髪は白銀、白いコートを身に纏い、ベートーベンの第九を口ずさむ。

「歌は良いねぇ〜。でも子守歌に第九は少し騒がしいか?」

彼は鼻歌を第九から子守歌に変える。
しかし彼の立つ場所はとても人の生きていられる場所ではない。
いや、宇宙服などそれなりの装備を着込めば可能かもしれないが、彼はそういった人類が文明によって勝ち取った生存圏を広げる為の技術を使わずにその場所に立っていた。

「偶然か必然かだって?
 これは運命だよ。君はキャリアだ。
 マージアンとアーシアンによって育まれた因子を運ぶためのね。
 いずれ遺跡に愛されし乙女に引き継がれ、
 真の火星の後継者が生まれる
 だからこそもう一人の君と一緒に消えてもらっては困るんだよ」

彼は語る。
誰に聞かせるともなく。
ただ神話の詩編でも口ずさむ様に・・・



ポストスプリクト


ということでナデシコNG第14話をお届けしました。

うわぁ〜この話、無かった事にして下さい・・・っていうのは半分冗談ですが、今回つくづく実感しました。こんなむずがゆい話は多分これ以上書けないでしょう。
ってことでこういう話は多分最後です(本当か?)

それはともかく、ギャグばっかりでもこらえ性がないのでなんか謎っぽいのが出てきましたが、ほとんどハッタリだったり、そのうちお話がハッタリに着いてきたりもしますのでなま暖かく見守って下さい(←しかし訳のわからない内容)

まぁ次回は物語はレースに戻ってネルガルvs.クリムゾン辺りになろうかと思います。サクラと月臣対決!だどを考えていたりもしますが、どうでしょうか?

ということでおもしろかったなら感想をお願いします。

では!

Special Thanks!!
・chocaholic様
・龍崎海 様
・戸豚 様