アバン


人は歴史を知ることによって過去を知ることが出来る。
人々が何を思い、何を考え、どう行動したか思いを馳せることが出来る。
だからこそ、人は歴史に引き寄せられる。

けれど真実の歴史は誰にもわからない
その時代を生きていた者にしかわからない。
語られぬ歴史は意外な姿をしている。

とっても意外な姿をしている・・・

ああ、これって一応黒プリの続編だったりそうでなかったりしますのでよろしく〜



ナデシコC・ブリーフィングルーム


「まぁ長い回想はさておくとして」
「そういう読者さんにしかわからないことを言わないで下さいよ」

ナデシコCの今後の進路を話し合うために集められたナデシコCの幹部達。
開口一番そう言ったシオンに対してケンは溜息をつく。
地球から抜け出すように飛び立った宇宙軍戦艦ナデシコC。
本艦の抜け駆けのせいで各国の調査団が争うように地球を出発することであろう。
いまさら転進してやっぱり戻って来ちゃいました〜許して下さい♪と言えるはずもなく、ナデシコCはこのまま先に進むより他はない。
で、その作戦目的はというと・・・

「新プラントの確保♪」
「いや、僕たちの目的はあくまでも・・・」
「他国よりも先に確保♪」
「ですから・・・」

シオンさん、なぜあなたが先に断言するんですか?と呟くケン達。
いやいや、それよりもシオンが我が物顔で艦の運営の口を出している光景の方が不思議だ。

「僕たちが急いで行かなくてもどこかの国に任せれば良いじゃないですか?」
「だからハーリーおじさまはルリママに愛想を尽かされるのよ」
ガーン!
「男のくせに、手柄の横取りされて平気なんて、この負け犬!」
グササササ!
「大体、プライドってものがないの!プライドってものが!」
「うう、ぼ、僕は・・・」
「まぁまぁ〜」

やる気のないハーリーを虐めるシオン。
ジュンがハーリーを慰めるがしばらく使い物にならないかもしれない。

「そんなことで良いの!私達は全てをかなぐり捨てて地球を飛び出してきたのよ!
 そのナデシコが各国がハゲ鷹のように遺跡の全てをむしり取った後にのこのこ現れてみなさい!世間様からどんな陰口を叩かれるか!」

シオンは意気消沈している一同を相手にアジテーションを飛ばした。
もちろん、それがみんなの士気を鼓舞するはずもなく・・・

「というか、帰ったら僕たちただじゃ済まないかも知れないしねぇ」
アオイ・ジュンは溜息をつく。
せっかく中佐まで昇進し、一隻とはいえナデシコ艦隊の提督にまでなれたのに。
孫バカな総司令のトチ狂った命令のせいで政治的にも危うい立場に追い込まれている。

「だからこそ、遺跡の重大な秘密を握るの!
 この世は他人の知らない情報を持つ者が勝つように出来ているの!」

そうシオンは力説する。

「まぁ秘密を握るのは良いとしても、本当に僕たちは他の国よりも先に遺跡にたどり着けるのかい?」

ジュンが素朴な疑問を口にする。
そりゃもっともな感想だ。

「いまパブリックゲートは管理公団の管理下にある。
 僕たちナデシコには決してゲートを使わせてくれないよ?
 とするとだねぇ・・・」

ジュンはちょいちょいとコミュニケを操作してパネルに航路図を映し出す。
パブリックゲートはそれこそ毛細血管のように地球圏を埋め尽くしている。
そして地球圏のみならず、月面、火星全域、ひいては木連まで敷かれている。
ここ1年で移動手段は劇的に良くなっている。
だがこのゲートを使わない場合、旧来通りの通常航行になってしまう。

「そうなると木星に行くだけでも既に2ヶ月以上の差が付いてしまうんだよ?」

確かに。
他の各国はパブリックゲートを使えばハブゲートを乗り継いでも1日もかからないだろう。
けれどナデシコCは地道に航行しなければならない。
この挽回はさすがに無理だろう。
ジュンの説明に一同は意気消沈する。
けれど一人イケイケの少女は問題ないって顔をしていた。

「甘いですねぇ」
「甘い?」
「そうです♪」

シオンはウインクする。
彼らは知らない。
彼女のもう一つの姿。
そう、彼女は未来の世界でトレジャーハンターをしていた。
抜け道、裏技などなど、こと遺跡探検に関してはこの中の誰よりも熟知していた。



NadesicoNG(Next Generation)
第12話 舵は東に帆は西に



地球・宇宙軍戦艦ライラック


「しかし困りましたねぇ〜」
地球連合宇宙軍戦艦ライラックの艦長アララギ中佐は溜息をついていた。

「ユリカさん、何とかならないんですか?」
「なんとかって言われても・・・」
「それでも管理公団の理事なの!」

ユリカはルリやラピスに責められるが、ほとんど八つ当たりに近い。

「だいたい一瞬で地球から木連になんて行けるはずがないんだよ?」
「わかってますが、この渋滞はなんとかならないんですか!」

イライラする気持ちは分かるが、ここは少し落ち着かなければ。
同時刻にシオンがニヤリと笑っていた意味、それが現在の地球で顕在化していた。

「ゲートが渋滞するなんて誰も考えた事無かったものねぇ〜」
「確かに」

ユリカの言葉にルリは溜息をつく。

「しかし何でこんなに調査艦隊の戦艦がたくさんいるの?」
「ですから、明日一緒にプラントに旅立つつもりだったからでしょ?」
「あ、そうだっけ」

調査艦隊を招集するとりまとめ役のユリカがこんな寝ぼけた事を言っているのだ。完全な部外者モードのユリカに呆れるルリ。

「でもどうしてこんなに渋滞するの?
 こんなのゲート開設始まって以来じゃないの」
「我先にゲートに押し寄せてますからね。
 順番争いが口喧嘩ならまだしも、それを調整する管理公団職員もパンク寸前。
 下手をしたら戦艦同士が威嚇発砲をしかねない状況にありますし」

せめて整然とゲートを使い始めればまだ混乱は少なかったかもしれない。
けれど目の前の惨状はそれらを遙かに通り越していた。

「しかし、この騒動に巻き込まれた一般の船舶は可哀想だよねぇ」
「ユリカさん、何を他人事のように言ってるんですか。
 一般の船籍を必死に先に通そうとしているのはユリカさんのところの職員さんじゃないですか。ユリカさんが陣頭指揮をしなくて良いんですか?」
「いやぁ〜♪」
「何故そこで照れる」

ラピスにまで突っ込まれたら終わりだろう、ユリカ。
とはいえ、出発が予定よりも早まったのが混乱に輪をかけた。
ちゃんと予定通りの時間には計画通りの艦数の調査艦隊がゲートを使用する為の時間的余裕を確保していたのだが、それも今となっては無駄になってしまった。

しかも一番交通量の多い時間とぶつかってしまってはたまらない。

「でも、そろそろ皆さん気づく頃でしょうね・・・」
「なにに?」
「まったく、ユリカさんったら・・・
 行動し始めている戦艦もありますよ」

ルリは指さす。一部の戦艦はゲートに向かわず反転し始めた。

「別のパブリックゲートに向かうようですね」
「え?でも別のゲートに向かうとしても時間がかかるわよ?」
「この混雑で何時間も足止めを食らうよりは早いでしょう。
 それに・・・」
「それに?」
「頭のいい国は気づき始めてます。
 ハブゲートをどこにするかということを」
「ハブゲート?」
「ハブゲート。いわゆる国境に相当するゲート。
 入国出国の手続きが出来る。逆に言うとこのゲートを使用しない限り、他の国へはいくらパブリックゲートを使用しても行けない」
「あ・・・」

ルリが言った単語をラピスが解説してようやくユリカは気づいた。

理論的にどのゲートから入っても目的のゲートに行けてしまうパブリックゲートであるが、一点だけ不能なことがある。それは越境だ。
これはパブリックゲートというシステムの制約ではなく、我々の社会システムが課した制約だ。
社会システムが地球連合という国家の集合体である以上、国家という枠組みは取り払われない。地上には引かれていない国境線も地図の上では健在だ。

その国境がある以上、他国の人間が勝手に越境してもらっては困るし、その為の面倒な手続きも存在する。たとえ世界の距離がボソンジャンプによって限りなく縮まったとしても面倒な線引きはそれなりに簡素化されたとはいえ依然として存在する。

「でもそれの何が問題なの?」
「わかりませんか?」
「全然」
「・・・」

ルリは呆れる。
元々の調査艦隊に与えられていたゲートの使用許諾は地球から木連本国までである。もちろんその間にある幾つかのハブゲートの使用許諾も含まれている。
これは遺跡管理公団が遺跡調査のために一括で申請したモノだ。

さて、今の状態ではそれが有名無実になっている。

ここで問題になってくるのは各国の権益だ。
管理公団が取りまとめとなったからこそ、各国の利害関係が調整されてゲートの使用許諾が下りている。ではこれが有名無実になったら?

「どうなると思います?ユリカさん」
「んと・・・横やりが入っちゃうかも」
「その通りですよ」

ルリはポチっとTVを付けた。



ニュースワイド


「こんにちわ♪レポーターのメグミ・レイナードです♪
 私はここ横須賀Pゲートから実況生中継でレポートをお送りしております。
 ここでは木星に見つかった新プラントへ向けて出発しようとする調査艦隊でごった返しております。
 既に小競り合いで仲の悪い小国同士が強制退去を受けております」

中継画面のメグミはバックにゲート全景を映しながら笑顔で解説していた。
スタジオのメインキャスターは詳しい状況をメグミに尋ねた。

「はい。合同調査協定は事実上決裂し、現在は各国が独自の調査艦隊を派遣することになった模様です。ここで各国の調査艦隊の様子をお伝えしたいと思います」

メグミの合図で新たなウインドウが開く。

「まず今回のきっかけを作った宇宙軍のナデシコCですが、既に出航して宇宙空間を通常航行中です。目下トップですがこちらはゲートの使用がまず許可されないと思いますので最終的な順位はかなり低いモノと思われます」

おお、我らのナデシコCは下馬評でも最下位のようだ。

「今回の遺跡発掘レースに参加する主要国家は欧州同盟、北米同盟、オセアニア同盟、木連、そして小規模ですが南アジアなどです。他にも企業からの参加がネルガル重工、クリムゾングループが名乗りを上げております」

他にも小国やら有象無象の団体などが参加しているが、艦隊の規模からすれば霞むであろう。

「え?何ですか?
 ・・・失礼しました。本来の調査艦隊の母体だった管理公団と宇宙軍も改めて艦隊を出すそうです」

ウインドウにはユリカとアララギの写真が映し出された。多分お茶の間は大爆笑であろう。

「以上、現場からメグミ・レイナードがお送りしました♪」

そこで画面はスタジオに移った。
キャスターは改めてゲストの解説者を紹介する。

「お久しぶり、初めまして、こんにちわ。
 皆さんの疑問にまるっとお答えしましょう♪
 なぜなにナデシコのお姉さん、イネス・フレサンジュです♪」

いや、なぜなにナデシコじゃないから、おばさん・・・

「お・ね・え・さ・ん♪よ!

す、すみません〜〜

イネスは聞かれてもいないのに今回の新プラント争奪チキチキキャノンボールレースの解説を始めた。

「それはともかく、今回のレースのポイントは大きく三つね。
 一つ目は艦隊構成をどうするか。
 二つ目はどのパブリックゲートを乗り継ぐか
 三つ目はどこから通常航行で新プラントを目指すか」

それはどういう事ですか?とキャスターさんが尋ねる。

「まず艦隊構成だけど、基本的に各国の艦隊はハブゲートとはいえ、他国の領域を通過しなければいけないわ。これは他国の大艦隊が自国の領域を通過するだけとはいえ侵入するということはそれなりにプレッシャーとなる。それが犬猿の関係とあれば尚更ね。
 といって小規模の艦隊にしてしまうといざプラントに到着したときの捜索や威嚇などの影響力を行使する事が出来なくなってしまう」

なるほどとキャスターが相づちを打つ。

「もう一つ、これから大艦隊を編成しようと思ったら時間がかかってしまう。そして艦隊行動を取ろうとしたら大規模な分、遅くなってしまう。
 小規模の艦隊なら既に準備は済んでいるからすぐに出発できるし、素早い行軍が行えるわ。
 あと、なるべくプラントに近い国は今横須賀Pゲートにいる艦隊を使わずに自国にある別の艦隊を出発させるという手もあるわね」

なるほどなるほど、それで二つ目は?とキャスターが尋ねた。
イネス節は水を得た魚のようにどんどん加速した。

「二つ目はどのゲートを乗り継ぐか。
 これはそのままどの国を経由していくかに他ならない。
 当然他国の利益は自国の不利益。
 自国の艦隊を優先し、他国の艦隊は足止めしようとする。
 ここで水面下での政治交渉が行われるわね」

なるほどなるほど、ここでまたどの国と手を組むかという政治工作が発生するわけですね?とキャスターがイネスに尋ねた。彼女は満足げに頷く。

「大きくは旧統合軍と宇宙軍の支持母体あるいはクリムゾンとネルガル、主流派と非主流派、地球と月と木連などなど色々な色分けが出来ますが、それぞれがどう手を組もうか水面下での折衝が既に行われているわね。
 もちろん、新プラントの利権配分も計算されているでしょう」

しゃべりだしたらイネスの説明は止まらない。
キャスターは少したじたじに受け答えをし始めていた・・・



地球・宇宙軍戦艦ライラック


ということでイネスの解説が長引きそうなのでルリはTVを切った。
ニュース番組を見てユリカは冷や汗をかいた。

「うわぁ〜すごく政治的な話〜」
「ユリカさんがのんびりしすぎなんですよ」

こうなると何をどうするのか根本から計画の練り直しが必要となる。
さて、管理公団と宇宙軍としてはこれからどういう行動を取るべきか大いに悩むところであった。

「なんか事態が収拾するか不安になってきた〜」
「とりあえずユリカさんは各国に戦闘行為をしたらゲートの使用権を取り上げるとでもお達しを出して下さい」
「そうする」
「それよりも、問題はこれから私達がどうするかですよ」
「どうするかって?」
「ユリカさん、何を寝ぼけてるんですか。
 私達も行くんでしょ?新しく見つかったプラントへ」
「あ、そうだった」
「そうだったじゃないでしょう・・・
 問題はどういうルートを通って行くかですけどね・・・」

ルリは思いっきり頭を悩ませていた。
何せ当方が乗り込んでいる戦艦は連合宇宙軍のライラック。
今回の騒動の発端であるナデシコCと同じ船籍だ。
いくら遺跡管理公団のユリカが乗っているからといって簡単に各国がハブゲートを通してくれるか・・・

考えてみなくても想像がついた。

どの国のハブゲートを経由して到着するのが一番早いか、思案のしどころであるが、下馬評では管理公団&宇宙軍追跡チームも下位グループに位置するらしいので足掻いても無駄のような気もするルリであった。



地球・ネルガル重工


さてここでもTV中継を見ていた。
もちろんこの部屋の主は大きな溜息をついて番組に同調する。

「そうだろう、そうだろう。
 ウチの会社はほとんど人気がないんだ。どうせどこにどう言ったってゲートを通してくれないよ」
「何言ってるのよ、アカツキ君!!!
 古代火星文明のテクノロジーといったら真っ先に出かけて行って占領していたのはどこの誰!」
「だから丸くなったんじゃないか。悪い?」
「良いわけないじゃない!」

バンバンバン!

エリナ・キンジョウ・ウォンに目の前の机を叩かれて首をすくめるネルガル重工会長アカツキ・ナガレ。
ひたすらお尻を叩くエリナに気圧されて、逆に昼行灯になりたがるという逆転構造がここにあった。そりゃ、エリナがここまで血気盛んなのがきわめて個人的な理由なのだから無理もないだろう。

夫婦喧嘩は犬も食わぬ。
関わるだけ疲れるというものだ。

「だいたい、新しいテクノロジーが見つかったらどうするつもり?
 クリムゾンが動くって情報も入っているし、そんなところに技術をかっさらわれでもしたら・・・」
「まぁ確かにそれは面白くないんだよねぇ〜」
「でしょ?」

そこはそれ、エリナも私情だけでは動いていない。会社の利益というものも考えている。
けれどアカツキの顔は渋いままだった。

「でも止めよう」
「なんで!?」
「僕らは裏方に徹すればいい。ナデシコCなりユリカ君あたりがそれなりに上手くやるはずさ」
「だからそれが信用できないんでしょ!」
「あ、私情入りまくり」
「違うわよ!」
「テンカワ君の娘さんだっけ?彼女にテンカワ君を取られるのがイヤなだけなんでしょ?」
「殴るわよ!」
「その割には顔が真っ赤だよ♪」
「な!?」

エリナの激昂をアカツキは涼しげにかわす。
所詮は嫉妬の産物である。大関スケコマシのアカツキにとっては嫉妬した女性の扱いなどお手の物である。

とりあえずネルガルは高みの見物をし、誰かが発掘の成果を掴んだところで横からかっさらおう・・・そう計画を立てたのだが、それは脆くも崩れ去った。

バン!

「ナデシコを追いかけるぞ!!!」
「つ、月臣君!?」
「あなた、失踪したんじゃ・・・」

扉を思いっきり蹴破るように入ってきたのはアカツキの秘書まがいをさせられたあげく、忙殺されるほどの仕事量に嫌気がさして失踪した月臣元一朗であった。
ちなみに彼の本当の職業はネルガルシークレットサービスの隊長である。

「ナデシコを追いかけるんだ!」
「君は消えたと思ったらいきなり現れたあげく何を言い出すんだ?」
「ナデシコにはナナコさんがいるんだ!」
「ナナコさん?」
「そうだ!」

月臣が口走る内容がさっぱりわからないアカツキとエリナ。

「ナナコさん、それは我が理想、永遠の幻想、思い出の中の乙女・・・」
「ナナコってあの漫画の?」
「国分寺ナナコでしょうね。確かゲキガンガーのヒロインだったような・・・」

これだから木連人は、と溜息をつくアカツキ達。
しかし月臣は真剣も真剣、大真面目であった。

「ナナコさんとテンカワ・アキトが揃って失踪したんだ!
 なんでもあのナデシコに乗っているらしい」
「え?」
「何ですって?」
「しかもサクラがナナコさんを追っているらしい。
 あいつはクリムゾンに雇われたんだ!」
「え?」
「クリムゾン!?」

月臣の発言はさっぱり要領を得ないが、気になる単語はいっぱい出てきた。

「だがしかし・・・」
「良いから行け!今すぐ行け!すぐさま行け!」
「こ、こら、首を絞めるな!
 え、エリナ君も見てないで助けてくれよ〜」
「なんだかわからないけど、月臣君の意見に賛成」
「そ、そんな〜」

月臣に締め上げられるアカツキであるが、気絶する前にプラントに出発することを確約させられてしまった。



クリムゾン系列の病院・アクアの病室


『というように、木連そのものはあくまでも中立を保っているわ。
 しかも木連のハブゲートはエウロパとガニメデ、カリストの比較的中規模のゲートしかなく、押し寄せる艦隊を裁ききれないという実状があるの。
 従って受け入れられるとしてもかなりの艦数制限をされることでしょう。
 また、地球圏の艦隊は優先順位を下げられることでしょうね』

と、TVの向こうの説明お姉さんのイネス・フレサンジュは得意げに離す。
その解説にシャロンはウンウン頷く。
シャロンは行く気は全くゼロである。

「そうでしょう、そうでしょう。今から新プラントに向かおうなんてどだい無理なのよ」
「しかし、ナデシコにはお姉さまがいらっしゃりますし、なによりロケ地である新プラントに一番乗りしなければ撮影は出来ませんわ」

シャロンの考えに口を挟むサクラ。
当然シャロンは怒る。

「使用人の分際で主人の考えに口を挟むというの!
 出過ぎたマネはやめなさい!」
「妾の雇い主はアクア様です。
 それに口を挟んだのではありません。アクア様のお考えを代弁したまでです」
「それが出過ぎてるっていうのよ!」
「シャロン様こそ単に行きたくないだけなのではないですか?」

叱るシャロンにサクラは一歩も引かない。

「行きたくないとは言ってないわ」
「嘘ですわ。もし新プラントで撮影となったら妾との決闘シーンがありますものね」
「う!」

確かに行きたくない理由その1だ。

「それにクライマックスには黒百合のお姫様との決闘シーンがありますものね」
「う!」

行きたくない理由その2だ。

「そして台本ではラストシーンで薔薇の門を開けるために姉妹の契りとしてロザリオの授受をした後、黒百合のお姫様と接吻を・・・」
「うわわわわ!」

決定的に行きたく理由その3だ。

「わ、私がなぜ女性とキスなんかしなければいけないのよ!」
「あ、今いろんな漫画のファンを敵に回した気がいたしますわ」
「いいのよ、そんなことは!」

シャロンさん、本当に百合な方面に弱いようだ。

「でも、もし紅薔薇様になるつもりがないとおっしゃるのなら、今ここで決闘して差し上げますわ」
「なぬ!?」
「そして私が黒百合のお姫様と新プラントで姉妹の契りを・・・♪」

シャロンがうげぇという顔をするのとは対照的にサクラはうっとりと『革命学園エルドラドレリルレル』の台本を眺めていた。
彼女の妄想世界ではシオン扮する闇のお姫様が自分にロザリオを渡してくれるシーンがリピートで再生されていることだろう。

「アクアからも言ってやってよ!
 新プラントに行くのは無理だって!」
「え?行くわよ、シャロンちゃん」
「はぁ?」

理不尽の代名詞を背負う妹でクリムゾングループの次期当主(予定)アクア・クリムゾンは行くことがさも決定事項と言わんばかりに断言した。

「あなた、TVを見てなかったの!?」
「見てたわよ〜」
「見てたならわかったでしょ!」
「何を〜?」
「だから!」

シャロンは全然わかっていないアクアに対してもう一度TVのニュースで言っていた内容を掻い摘んで話した。なるべくお味噌なアクアにでもわかるぐらい優しく。




・・・数分後



「という事よ、わかった?」

ゼイゼイと熱心に説明しすぎて息切れしたシャロンに対し、

「皆さん、わかりました?」
「「「「「「わかんない♪」」」」」」
「わかりませんわ♪」
「実は私もわからなかったの〜♪」

アクアのみならず、六人衆娘。サクラまでわからなかったようだ。

「アホかあんたらは!」

まぁシャロンがそう吠えたくなるのもわからないではない。

「いまクリムゾングループの名前で行動したところでせいぜいヨーロッパ国内しか自由に移動できないのよ!木連に入国できるかどうかすらわからないのよ!」
「だからそこのところがわからないのよねぇ〜」
「何がよ!」

わかれよ!と心の中で毒づくシャロン。

「でも、別に宇宙に国境線がある訳じゃないでしょ?」
「はぁ?」

シャロンはそれこそクエスチョンマークを飛ばした。

「そりゃ、国境線はないけど、でも・・・」
「私達は〜ナデシコを追いかけるから〜別に国境とかは〜どうでも良いと思うの〜♪」
「いや、追いかけるって言われても・・・」

アクアの発言にシャロンは呆気にとられる。
しかし横で聞いていたサクラも六人衆娘。達もうんうん頷いている。
なんかわかっていないのは私だけか?とシャロンは悩んだ。

いやいや、違うだろう!

「なんでナデシコを追うのよ!」
「だって闇のお姫様役の人をスカウトするため〜♪」
「バカじゃないの!ナデシコは絶対どこのパブリックゲートも通してもらえない。地道に通常航行で新プラントまで行かなければいけないのよ!
 何ヶ月かかると思ってるのよ!!!」

そりゃそうだ。
確かにナデシコを追いかけるならゲート使用の根回しなど不要であろうが、逆にゲートを使えなくなるため通常航行を使わざるを得ない。
そうなれば新プラントに辿り着くなど夢のまた夢だろう。

「確かにシャロンちゃんの言う通りかもしれないけど〜」
「そうでしょ。なら諦めて・・・」
「でも〜私〜勝ち馬に乗る主義なのよねぇ〜♪」
「・・・勝ち馬に・・・乗る?」
「そう♪」

アクアは満面の笑みでそう答える。

勝ち馬?
勝ち馬って何?
まさか・・・

「まさか勝ち馬って・・・」
「そう♪ナデシコに着いて行けば新プラントに一番乗り出来そうだし♪」
「ナデシコが・・・勝ち馬!?」
「だって勝算がなければ単独行動なんてしないでしょ?
 シャロンちゃんが同じ立場なら何の勝算もないのにナデシコと同じ行動をとる?」
「・・・とらないわ」
「でしょ♪サクラちゃんが見込んできた女の子だもの♪」
「でも、具体的にどんな方法で他の国より先に新プラントへ辿り着けると?」
「そんなのアクア、わからない♪」

オイオイ、いくらなんでも予想も付かないウルトラCを期待して勝ち馬に乗ろうなんて、正気の沙汰じゃない。
けれど・・・この姉のこういうカンは良く当たるのだ。
破天荒な姉が今までこうして次期当主の座に納まってるのもこの嗅覚のおかげなのだ。

「しかし、そんなわけのわからない理由じゃ・・・」
「それじゃ、見に行きましょう♪」
「見に行くって?」
「もちろん、闇のお姫様のウルトラC♪」

アクアはパチンと指を鳴らす。
すると・・・

ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!

轟音と共に窓の外は急に日陰にでもなったように暗くなった。

シャロンが急いで窓から顔を出して空を見上げるとそこには・・・

「せ、戦艦!?」
「高速巡洋艦ハルシオン。
 地球圏最速の戦艦よ♪」
「これ、うちの最高機密じゃないの!」
「上手くすると火星の手前で追いつけるはずよ♪
 さぁみんな、さっさと乗って♪
 ナデシコを追いかけるわよ♪」

クリムゾンが総力をあげて作り上げた次世代の戦艦を惜しげもなく投入するなんて、空恐ろしい次期当主であった。



ニュースワイド


「というわけで三つ目のポイントね。
 どこから通常航行で新プラントを目指すか」

キャスターさんが辟易気味にも関わらずイネスは全然説明疲れをしていないように見受けられた。番組は既に夕方のニュース番組から3時間スペシャル番組に変わりつつある。

「皆さん、木星に見つかった新プラントだから木連が一番有利・・・なんて思ってらっしゃらないですか?」

違うんですか?と尋ねるキャスターさん。

「違います。木星は木星でも木星の惑星軌道上にあります。
 正確に宇宙図で言えばこの辺り。大体木星よりも30度ほど遅れて木星と同じ軌道を回っています。さて木星の惑星軌道で30度といえばたいしたこと無いように思えますが、そんな事はありません」

イネスはもう一度図示する。
太陽から木星までの平均距離は7億7830万km。
そこから30度遅れた場合の木星との距離は・・・

「さて簡単な数式ですね。1回転で360度だから30度でその12分の1。
 円周は2πrだから・・・およそ4億kmよ」

今ひとつみんなピンと来ないのをほくそ笑むようにイネスは解説を続けた。

「比べる尺度としてあげる太陽から地球までの距離が1億5千万km」

え!?とキャスター達は息をのむ。

「そう、実際には木星から出発したとしても結構遠いのよ。
 だから今回この新プラントが見つかったというのもほとんど偶然に近いの」

ほぉ〜と唸るスタジオ内。
しかしその数字の意味にはまだ本当に気づいていない。

「だから必ずしも木星から出発した方が近いと考えるのは間違っている。
 どうしてかわかる?」

イネスはウインクしてキャスターさんに微笑んだが、その意味がわかる人はほとんどいなかった・・・



ナデシコC・ブリーフィングルーム


その答えを別の場所でシオンが答えた。

「つまりパブリックゲートで木星まで到着したとしても、そこから先の距離はヘタしたら地球から火星よりも遠いって事」

フフフ〜ン♪
とシオンは含み笑いをする。

「つまり、どういう事ですか?」

ケンもいまいちピンと来ていないみたいだ。
この中の全員がわかっていない。

「太陽と火星の平均距離が約2億2千万km・・・つまり火星と新プラントが最接近していたら5億5千万kmってところね」
「確かに船速や木星に着くまでの時間を考えればあながち勝負にならない距離の差じゃないけど・・・」
「けれど、そう都合良く火星と新プラントが最接近してるかなぁ〜」

シオンの言葉はもっともだが、みな計算してみて口々に異論を唱える。
確かに火星と新プラントは最接近していなくもない。
けれどこの話は地球から火星の移動時間はまったく入っていない。

「いやいや、地球と新プラントが最接近していても成り立つんじゃないか?
 だって太陽と地球は約1億5千万kmだろ。この際7千万kmぐらい増えたって」
「いやいや、地球だって新プラントとそれほど接近している訳じゃ・・・」

口々に計算した結果を言い合う。
しかし、どう考えても勝算のある数字は出てこなかった。
それでも含みのある笑みを浮かべるシオン。

「みんな、甘いなぁ〜私の言っている意味を間違えてるよ♪」
「間違えてるって何が?」
「だから私達が火星に着きさえすれば楽勝って事♪」
「楽勝って?」

シオンの発言の意味を理解したのはそれまで沈黙を通していたアキトであった。

「なるほど・・・」
「どういう意味ですか?テンカワさん」
「つまりだ。イネスさんが言っているように木星−新プラント間と火星−新プラント間の距離差を考えるんじゃなく、木星−新プラント間と地球−火星間の距離差を考えろってことさ」
「えっと・・・よくわかりません」

ケンはおろか、全員がクエスチョンマークを飛ばす。
やれやれ頭が固い事だとアキトは溜息をついた。
一人ニヤニヤ顔のシオンを優越感に浸すのは癪だが話が進まないのでさっさと答える事にする。

「火星には新プラントへの抜け道がある・・・こいつはそう言ってるんだ」
「えええ!!!」

そりゃ誰でも驚くだろう。

確かに木星から新プラントへの距離に比べたら地球から火星の距離は大したことはない。けれど火星のどこに新プラントへ行く為の抜け道があるというのか!?

「さて、問題です♪
 今地球圏にいくつチューリップが存在するでしょうか?」
「・・・一応確認されている限りではゼロだけど」
「本当に?」
「本当だよ、ゼロにするのが僕たちの数少ない仕事だから」

ジュンは少し不機嫌気味に答える。
チューリップ、木連では跳躍門と呼ばれていたボソンジャンプのゲートは火星会時にかなりの数が地球に送り込まれた。もちろん、そこから無人兵器を送り込むためだ。
しかし平和になった現在、地球連合と木連の協定の中にこれらの破壊も含まれている。故障するモノも多く、幾つかは誤動作して近くを航行する船舶を吸い込むためだ。
ということで現在放置あるいは破棄されたチューリップに関して、これを探索し破壊するのが宇宙軍の数少ない仕事になっている。

よって地球圏にチューリップが残っているという事は宇宙軍の怠慢を意味する。

「月圏は?」
「ええ、大体は。まだ幾つか残ってますが、航路からも外れてますのでそう急いで取り除くほどでも」
「火星圏は?」
「あははは・・・ほとんど手つかずです。申し訳ありません、我々のせいで・・・」

ケンが木連人を代表して謝る。確かにチューリップを大量散布したのは木連であり、チューリップが多いということはそのまま戦争の爪痕も大きいということを意味する。

「いやぁ、艦長に謝られても。
 っていうか、謝ってもらうために言った訳じゃないから」
「というと?」
「ハーリー君、今まで見つけたチューリップの位置を図示して」
「既に破壊した奴もですか?」
「ええ。今確認している落下地点全て」

ハーリーは訝しがりながらも、オモイカネを操作した。
結果は程なく現れた。

地球はかなりの分布だがその全てにバッテンマークが打ってある。
月は少ないがやはりそれなりに激戦の跡が伺える。
火星にいたってはunknownな領域がたくさんだ。

「えっと・・・地球には少なくともココとココとココにチューリップが存在している」
「ええ!?」
「そこは一度探してるよ!」
「誰かがサボってたんじゃない?」
「嘘だ!」
「信じられないなら後で探してみれば?」
「そんなハッタリだ!」
「いや、そこは探索部隊の中でも再探索しようって言われている場所で・・・」
「うそ!?」

ジュンやハーリーが口々に反論する。確かに信じられないかも知れない。
しかしケンは何か心当たりがあるのか、そんな表情を見た周りのクルー達は一様に沈黙した。

「何でそんなこと知ってるんですか!」
「それは企業秘密♪もしくは乙女の秘密♪」
「なんですか、それは!」

ハーリーを軽くあしらうシオン。

何故知っているか?
理由は簡単で、そのチューリップが2222年まで現存しているからである。
それはトレジャーハンターの間では公然の秘密であり、ある目的のために秘密裏に利用されているからだ。
もちろん、地球にはもっとチューリップが存在するのだが、それらの全てを過去の人間に教えてあげるほどシオンはお人好しではない。

「えっと・・・つまり何が言いたいのですか?」

ケンは尋ねる。チューリップを地球や火星にたくさん落とした木連を非難したいわけでもなし、さりとてチューリップを全て破棄しきれていない宇宙軍を責めるでもなし。
じゃ、なんだと問いたかった。

でもアキトにだけは何となくその意味が分かったようだ。

「なるほど盲点だな」
「何がですか?」
「門には必ず入り口があり、入り口がある以上出口がある」
「そんなの当たり前ですけど?」
「当時木連はチューリップをくぐった無人兵器がどこに行くか認識していたか?」
「そりゃ、反対側のチューリップですけど?」
「コントロールはしたか?」
「いえ、コントロールできたのはせいぜい100km程度ですから」

ケンがアキトの問いに答えるがさっぱりわかっていない。
が、段々わかり始めてきた人達が出てきたようだ。
シオンはニシシと笑っていた。

「入り口があって出口がある。その行き先は特にコントロールしていなかった。
 なのになぜ木星のチューリップに侵入した無人兵器が火星のチューリップから出現したのか・・・」
「あ、なるほど!」
「え?え?え?」
「つまり、入り口のチューリップと出口のチューリップは一対一って事か」
「ピンポン♪」

パブリックゲートは一つのゲートでどのゲートにも理論上はジャンプできる。
その為にA級ジャンパーが必要だ。
ただし国家の概念があるので都度ハブゲートで国境審査をしなければ行けない。

反対にチューリップゲートは対となるチューリップにしか出現することが出来ない。
その代わりに無人兵器ですら正しく目的地に到着できる。ナビゲーションシステムとB級ジャンパーがいれば生体跳躍も可能である。
ただしそれにはヒサゴプラン並の大規模な施設が必要になりコストパフォーマンスを悪い。ナビゲーションシステムがおかしくてジャンプイメージが不正確な場合は全く別のチューリップに飛ばされたり時間移動したりする危険性もある。

「まぁ時間移動は夢幻城の管制でキャンセルされるけどね」
「チューリップってもう使えないんじゃ・・・」
「使えないわけないじゃない。初めからシステムとして存在していたんだよ?」

そりゃそうだ。古代火星人が残したプラントでチューリップは生産されている。
ということはシステムとしてある程度確立されていたのであろう。

「で、問題です。火星にあるチューリップ。
 このチューリップを入り口にした場合、出口はどこにあるでしょうか♪」

シオンはさも当たり前なように質問をした。
みんな一瞬首を傾げる。

「木星」

ウンザリしたように答えるアキト。

おおお!と歓声が上がるが、この話の流れからすればどう考えても木星だろう。
実際、火星会戦初期は木星から火星に無人兵器を大量に送り込む目的でチューリップが使われたのだし。

「さすが♪」
「お世辞はよせ。それよりもお前の理論だとわざわざ火星まで行って、ボソンジャンプ出来るのは木星・・・とても分のある勝負だと思わないが」
「チ♪チ♪チ♪
 火星会戦当時使用されたチューリップは木連だってその全てを把握していないわ。
 当時は手探りだったみたいだし。
 火星に飛ばしたつもりで明後日の方向に飛んでいったり、
 放置されたモノが木星の重力圏を離れて漂流したり、
 入り口と出口を間違えて打ち出したり♪」
「そのうちの一つが新プラントの近くに?」
「そそ♪」

火星会戦時に送り出されたチューリップが結構太陽系の各地に散らばっている事は2222年までにトレジャーハンター達により確認されている。そしてその秘密の連絡通路は太陽系に点在する遺跡を探求するのに大いに役立てられているのだ。
トレジャーハンターはチューリップゲートの数を幾つ知っているかというのも能力の一つに数えられている。

もちろん、シオンはその事の全てを話すつもりはない。

「もう一つ言うと、本当は地球にも直接新プラントに乗り込む事が出来るチューリップが存在していたりするのよ♪」
「おい、なら何故最初からそれを使わない!」
「だって、地球でそのチューリップを使ったらみんながマネするでしょ」
「あ・・・」

そりゃそうだ。チューリップゲートは基本的に高出力のディストーションフィールドを持った戦艦にB級ジャンパーが乗っていれば同じ目的地に到着できるのだから。気づいたらマネをしないはずはない。

「これで少なくても他の国々を10日は出し抜けるはずよ♪」

さすがはトレジャーハンター、裏道は知り尽くしていた。



舵は東に帆は西に


TVの向こう側でメグミがレポートしていた。

「さて、各国の動向がおよそ確定したと思います!
 まずは現在トップですが予想順位最下位のナデシコCは現在火星に向けて通常航行で邁進中!。
 続きましてその後を追うように出発したのはクリムゾングループ!
 そのライバルと目されるネルガルは地球から出発せず、月からの出発になると思われます。
 そして一番有力とされる欧州同盟は大艦隊を率いて木連の通行許可を待つとのことです。
 その他、アジア同盟、オセアニア同盟、北アメリカ同盟はそれぞれ独自のコネクションにより月経由で木連を目指す様です。
 ほとんどの国はセオリー通りに木連を目指す様です。
 え?新しいニュースが入ったんですか?
 え・・・
 ビッグニュースです!今回中立を保っていた木連も今回のレースに参加することを表明しました!これは最有力候補となります。
 最後に管理公団+宇宙軍追跡隊ですが、こちらは月を経由して火星から新プラントへ向かう模様です。
 さて私もこのまま管理公団に密着取材したいと思います!
 待て!ユリカさん!抜け駆けは許しませんよ〜」

と、メグミを乗せたTV局の宇宙艇は今まさに飛び立とうとするライラックを追走するのであった。



おまけのなぜなにナデシコ


皆様、こんにちわ、初めまして、また今度。
みんなの説明お姉さん、イネス・フレサンジュ17歳です。

今回は本編の中で少し説明不足かも知れないと思われますので、特別にパブリックゲートとチューリップゲートの違いについて解説したいと思うわ。

さてさて、どちらも同じボソンジャンプが出来るチューリップゲートとパブリックゲートですが、両者の違いは簡単に言えば設置方法にあります。

チューリップゲートは文字通りチューリップを用いるゲートね。平たく言えばヒサゴプランみたいなモノになります。その為にとっても大がかりなシステムが必要になり、比較的大都市にしか設置できません。

対するパブリックゲートはココならジャンプOKという領域を指定するだけなので最小で3m半径、最大でも1km半径の自在な領域で設置できます。3m半径の場所なんか、もうほとんど野ざらしの大地でもOKという気軽さです。

まぁイメージ的に言えばチューリップゲートは鉄道、パブリックゲートは道路っていう感覚でしょうか?

またパブリックゲートは基本的にはCCとA級ジャンパーがいればどこにでも飛んでいけますが、チューリップゲートの場合は高出力ディストーションフィールドを備えた宇宙船とB級ジャンパーが必要となるためやや大がかりになります。
おまけにナビゲーションシステムが必要となるためにパブリックゲートよりも大きなコストが発生します。

現在はそのコストパフォーマンスからヒサゴプランを含むチューリップゲートの設置は完全に忘れ去られ、パブリックゲートの発展が盛んです。

でも、破棄されたと思われているチューリップは太陽系全域に散らばっているため、思わぬ場所にボソンジャンプできるという利点もあります。

とはいえ、良い子のみんなは危ないからチューリップゲートは使わずにパブリックゲートを使いましょうね♪

ということで今週のなぜなにナデシコはここまで!
それじゃ、さようなら〜



ポストスプリクト


ということでナデシコNG第12話をお届けしました。

結局レースが始まらずに全編解説っぽくなっちゃった(苦笑)
ともあれ、ボソンジャンプの存在するナデシコではキャノンボールの様なデッドヒートなレースモノを書くのは難しいのですが、今回いろんなルールを作ってレースっぽくしてみました。

本当は欧州とかその辺りの国で誰か良いキャラがいないかなぁ〜とか思っていたりするのですが、どうもTV本編も劇ナデでもナデシコ関係者、木連、火星の後継者を除くとほとんどキャラクターがいないんですよねぇ〜
オリジナルキャラをあまり量産したくはないのですが、さてどうしましょう・・・

まぁここまで書いておいてあっと言う間に新プラントに到着したりするかもしれませんが・・・その時はその時という事で(汗)

ということでおもしろかったなら感想をお願いします。

では!

Special Thanks!!
・龍崎海 様
・あめつち 様
・YSKRB 様
・kakikaki 様