アバン


闇の奥で見たモノ
それは多分まぼろし、私だけに見えたまぼろし
他の人には存在しないモノかもしれないけど、私にとっては真実
だからこそ、私はそれを追い求めた。

そして変わったこと
少し生きやすくなったこと
少しだけ見方を変えることが出来た
そうしたらパパもちょっぴり好きになれた

私は今の生活に満足できたから・・・
安心して過去に戻ることが出来た。

ああ、これって一応黒プリの続編だったりそうでなかったりしますのでよろしく〜



2215年・アマリリス


あれから後、少し大変だった。
エネルギー切れの私はパパとリョーコさんに引っ張ってもらってアマリリスに帰投した。
けれど私達を待っていたのは鬼より恐い人達だった。

「もう、私達のいない間に旅行なんて酷すぎるんじゃないの!プンプン!」
「ああ〜すっかりシオンちゃんと仲良くなっちゃって、アキトさんったら♪」
「シオン、抜け駆けはダメ」
「まったく失踪したかと思って心配したわよ!」
「ユリカにメグミちゃんにラピスにエリナ、何でこんな所に・・・」
「私もいますけど」
「る、ルリちゃんまで・・・」

パパは私達の帰りを待ち受けていたママ達に囲まれて脂汗を流していた。
相変わらず神出鬼没なママ達だなぁ〜
こんな辺境までどうやってきたの?

「まぁそんな細かいことはどうでも良いじゃないの♪」

いや、その一言で済まさないで欲しいんだけど、ユリカママ

「でも、冗談じゃなく、アキト良いなぁ〜
 なんか、シオンちゃんに甘えてもらって〜
 ほらほら、シオンちゃん♪ユリカママにも甘えて〜♪」

いや、そんなにニッコリ笑って両手を広げられても困る〜

「心配いらないわ♪
 シオンちゃんの大好きなパフパフしてあげるから♪」

なにそれ!もう子供じゃないんだから!

「ユリカさん、嫌われてますねぇ〜」
「そんなことないよ、メグちゃん!私とシオンちゃんは『あら姉妹揃って仲が良いですね♪』って言われたのよ!」
「それって精神年齢が?」
「ラピスちゃん、酷い〜!」
「まったく、そんなことだから子供扱いされるのよ」
「エリナさんまで〜」

ママ達は相変わらずかしましい。
嫌いじゃないけど、やっぱり苦手だ。この人達にいろんな意味で勝てない気がする。

私がユリカママ達の方に気を取られているとルリママとパパが柱の影に隠れた。
なんだろう?と私はママ達の隙を縫ってパパを追いかけた。

パパはルリママと何か深刻な話をしていた。

「アキトさん、ようやくシオンと向き合うつもりになったんですね」
「いや、今回は単にリョーコちゃんに誘われて、それでシオンを一人残して置くわけにもいかないから・・・」
「素直じゃないんですね。
 それで、何か見えましたか?」
「・・・いや、シオンには見えたみたいだが」
「そうですか・・・あの子になら見えるかもしれませんね」

・・・私に見えたって・・・やっぱり本当のママのこと?

「俺は君達ほど強くない。
 タナトスにシオンを連れてくる決心をするのだって10年もかかった。
 とても君達みたいにあの子を鍛える事なんて・・・」
「私達は強くないですよ。
 でもあの子は私達の想いとは関係なく、否応なしに一人で歩いていかなければなりません。その時あの子がどんな困難や絶望にも立ち向かえる力を与えてあげたいんです」
「・・・男親はダメだな。
 力さえなければそんなそんな運命に巻き込まれないとありもしない望みに縋っているんだから」
「そんなはずはないとわかっているからこそ、今日はタナトスに連れてきたんですよね?そしてあの子にアレが見えたのならそれは避けられないということも・・・」
「・・・わかっている。でも認めたくない自分がいる。
 まったくこんな年になっても半端だな、俺は・・・」

パパは苦笑した。
何のことを言っているのかわからないけど・・・
少なくともパパが私に向かい合ってくれなかったのは私が嫌いだからじゃなくて、好きだってこと?

ちょっぴりパパに対する見方が変わった。
いつもしかめっ面だったパパ。
でもほんの少し、見方を変えるとパパは結構可愛かった。

多分、私もパパと向き合っていなかったのだ。
だから私はパパと向き合うことにした。
そして本当のママのことをきっと教えてもらうために・・・

それから7年後、私は何もできなかった子供から少女に成長した。



NadesicoNG(Next Generation)
第11話 Tale of A.D.2222「遺跡に愛されし娘」



2222年・テンカワ家


テンカワ家の朝は早い。
いや、早い人と遅い人の真っ二つに分かれる。
私が起きてくると既に包丁の音が聞こえてくる。

私は大慌てで起き出した。
取るものもとりあえず、私は着替えて大急ぎで階段を下りて台所に向かった。

台所の中ではこの家の当主にして一番早起きのパパが朝の仕込みをしていた。

「パパ、遅れてごめんなさい♪」
「ああ」

パパは相変わらず無口だ。
確かに子供の頃はこの無口さが恐かったけど、今はそうでもない。
段々それがパパのシャイな性格から来るものだって気づいてきたからだ。
私は知っている。
私が起きてくるまでパパがそわそわしていることを。
そして私が遅く起きてきても私がやる分の下拵えを残してくれていることを。

パパとしても料理を娘に教えるのは嬉しいらしい。

「なんだ?ニヤニヤ笑って」

何でもないよ♪

「手がお留守になってるぞ!真面目にしろ」

は〜い

なるべくそういう甘い態度を表に出さないように頑張って我慢している姿が仕草の端々から感じられる。これが結構可愛かったりする♪
子供の頃には気づかなかった。私が見落としていただけなのかな?
たぶん、私がパパの一面しか見ようとしていなかったからかもしれない。

そして私が大きくなるにつれ、パパは台所の半分を私に空けておいてくれる。
些細なことだけど、そんな気遣いをパパがしてくれる度に私はパパが好きになっていった。

そんなこんなで最近では朝食は私の担当になりつつあった。

「こっちはもう良い。朝食を作ったらあいつらを起こしてこい」
「は〜い♪」

ぶっきらぼうでちょっと低めの恐い声だけど、パパが照れ屋さんだって知っているからもう平気だもんね♪

私は大急ぎで朝食を作る。
もちろん和食だ。
トーストにハムエッグなんてお手軽の朝食じゃダメなのだ。
少しでもパパに料理を教わるために手早く、それでいて難しいものにチャレンジ!
今日は味噌汁に卯の花、高野豆腐などなど

準備が出来たので私はママ達を起こしに行く。

・・・だが、これが一番の難関だ。
我が家の女性陣は私を除いてハッキリ言って起きてくるのが遅い。
お寝坊さんやらお化粧やら仕事やらでなかなか部屋から出てこない。

「ムニャ〜アキト〜もう食べられないよ〜♪」
相変わらずパジャマがめくれあがって着ているのか着ていないのかわからないユリカママ。
しかもヨダレを垂らして寝てる。あなたは幼稚園児ですか?と言いたい衝動に毎日かられる。

「ムニャムニャ〜♪アキトは私が好き〜♪」

相変わらずパパ一筋だなぁ〜
というか、いつまでも新妻みたいな初々しさはなんだろう?
もう十何年も夫婦をしているのだから倦怠期を経験しても良さそうなのに・・・

「シオンちゃん〜私が本当のママですよ〜♪」

うぷ!ママ、寝ぼけて抱きつかないで〜〜

「何言ってるのよ〜シオンちゃん、パフパフ好きだったでしょ♪」

それは赤ちゃんの頃の話でしょ!
もう寝ぼけないで!っていうか絶対起きてるでしょ!

「気づいてた?だって最近シオンちゃんとのスキンシップが足りないんだもの♪」

もう良いから早く起きて!
ご飯が片づかないんだから!!!

「は〜い♪」

既に一人で持て余し気味なんだけど、ユリカママは比較的寝起きが良い。
問題はここからだ。

メグミママ〜起きてますか?

・・・ガサゴソガサゴソ
パタパタ

シーーーーン

「あら、シオンちゃん、おはよう♪」

うわぁ、お星様キラキラ
相変わらずメグミママはお化粧バッチリで起きてくる。

「それって私がキレイってことかしら♪」

いや、なんかすっぴんのメグミママの顔をしばらく見てないなぁ〜と思って

「アハハハ♪そんなことないわよ♪」

とか言って、私を睨むのはやめて〜
私がそれ以上追究しないのを確認したのか、メグミママはパタパタと階段を下りて食堂に向かった。

でも私は知っている。メグミママがなぜすっぴんを見せないのか?
まだそばかすが消えていないらしい。
それをお化粧で隠しているのだけど・・・そんなに気にすることかなぁ〜

続いてはエリナママ。
でもエリナママはいつも私が起こしに行く時間には起きているのになかなか部屋から出てこない。何故かというと・・・

「まったく、そのぐらい私に言われなくてもやっておきなさい!
 稟議はアカツキ君に回して・・・また逃げたの?
 あれほどしっかり監視しておきなさいって言ったでしょ!
 もう、わかったわ。出社したら一番でそっちに行くから」

ドアを叩く前にエリナママが出てきた。
相変わらずスーツをビシッと着こなしている。
しかもコミュニケでビジネスニュースなんかを見ていたりする。バリバリのキャリアウーマン(死語?)である。

「シオン、トーストにコーヒーちょうだい」

本日の朝食はライスに味噌汁に卯の花に高野豆腐、それにきんぴらゴボウです。

「え〜なら朝食は外で食べるわ」

ダメ!家族一緒に食べるの!

むぅ〜!!!
私が睨むとエリナママは溜息をついて諦めた。

「わかったわ。まぁ少し遅れて行くくらいの方が部下達ものんびり仕事が出来るでしょう・・・」

まったく、それでなくてもエリナママは忙しそうにしてるんだから。

さて最後は一番大変な二人。
ルリママとラピスママ
この二人は夜遅くまで仕事をしている深夜型の上、低血圧だからなかなか起きてこない。
しかも起きてきたときの姿と言ったら・・・
千年の恋も一発で冷めるというだらしなさ。
良くパパが愛想を尽かさないものだと忍耐力を褒め称えたいくらい。

「シオン、何を勝手なことを言ってるんですか!」

あ、ルリママが起こさなくても起きてきた〜
今日は雨が降るかも〜

「何を勝手なことを言ってるんですか。部屋の前で人の悪口を言われたらイヤでも起きますよ」

でもさぁ、ルリママ
昔は電子の妖精とか言われてファンクラブまであったっていうのに、今その姿をみたらファンの人達悲しむわよ?

「別にそんなこと気にしないですよ」

でも、寝起きではね回った髪にだらしないネグリジェ姿!
ちゃんと着替えてから食堂に降りてきてね!

「わかったわ。その前に濃いめのコーヒーをお願い」

ダ〜メ!お煎茶ならあります。

「ん・・・わかったわ、それで良いからちょうだい」

そういうとルリママは部屋の奥に引っ込んでいった。まぁ二度寝なんかはしないでしょうけど・・・

さて、最後はラピスママだけど、昨日は徹夜だったみたいだし

ドンドンドン!

ラピスママ、朝だよ、起きてご飯食べよ〜
そう言ってからラピスママの部屋に耳をそばだててたけど、部屋の中からはしーんとして何も聞こえなかった。
仕方がない、強行突破を!
と思った矢先、

ガリャリ!

「起きてる・・・」

寝ぼけ眼のラピスママはパジャマ姿でふらりと現れた。
本当に起きてる?

「起きてる・・・」

うそぉ〜
んじゃゲキガンガーの主人公は?

「一文字隼人」

それは仮面ライダー2号だって。

ラピスママは私が言わないのに階段を下りて食堂に向かった。
・・・でた、ラピスママ得意の寝たまま朝食。
多分、ご飯を食べ終わるまで脳味噌の中は寝ているに違いない。

まぁ仕方がないか。それよりも朝の一家団欒♪

手を合わせて♪

「「「「「頂きます!」」」」」
「頂きます」

パパだけワンテンポ遅れるのはいつものこと。
これが我が家の朝の風景。
家族揃って朝食を食べること。
それが7年前から我が家の不文律になっていた。



2222年・通学


んじゃ、行って来ます〜

「行ってらっしゃいませ〜♪」
我が家の専属メイドアンドロイドのラピに見送られて私は学校に登校する。

少し歩くがこれも訓練訓練!
パパは料理は教えてくれるんだけど、相変わらず武術は教えてくれない。
仕方がないので独学で覚えている。
まぁ師匠みたいなのはいるのだけど・・・

「おおおお!!!!ナナコさん〜!!!」

言ったそばからいきなり現れるな!!!

ドゲシィ!

「な、ナナコさん〜〜酷い〜〜」

誰がナナコさんよ!誰が!
っていうかアニメのキャラと一緒にしないで!

「その抉るようなパンチ、日に日にナナコさんに似てくる♪」

まったく・・・
月臣元一朗、愛称元ちゃんは、こんな半分ストーカーじみた人でも一応は武術の達人、元木連中佐で今は木連武術の道場を開いていたりする。
まぁパパのお師匠さんだったりするので渋々通ってみたりしてるんだけど・・・
私にのされるなんて、本当に強いのかな?

「師匠はシオンにだけは甘いからな」

後ろから私に声をかける・・・九十九兄ちゃん!

「どうでもいいけど、ここで師匠に構っていると学校に遅刻するぜ」

無駄に爽やかな彼は九十九・ホーリー。
ゴートさんとミナトさんの息子さんだ。同じ高校に通っている先輩で、元ちゃんの道場では兄弟子にあたる。一応師範代なので強い。
周りからは「お父さんに似なくて良かったね♪」とか「ミナトさん似でよかったわね♪」とは、はたまた「なんかダイゴウジ・ガイに似てるな♪」って言われるのがコンプレックスらしい。

「それよりも母さんが寂しがってたぞ。全然遊びに来てくれないって」

テンカワ家とホーリー家はまるで親戚の様な付き合いをしている。
それはひとえにミナトさんの面倒見の良さのおかげとも言える。
パパ達と一緒に戦っていたこともあるらしく、ルリママの保護者をしていた事もあり、昔はママ達が忙しいときにはたまに子守をしてもらっていたそうだ。小さかったので覚えてないけど。

意外に家庭的で大好き♪
最近は私が忙しくてご無沙汰だけど・・・

うん、そのうち寄るよ。

私は少し曖昧げにそう答えた。

「じゃ、母さんにそう言っておくよ。それよりも学校!」

しまった!遅れる!

「な、ナナコさん・・・」

あ、元ちゃん復活しそうだ。
んじゃ放置しても大丈夫そうだね。
元ちゃんバイバイ♪

「じゃ、学校まで競争だ♪
 アハハハ♪」

今時学校まで競争なんて、青春映画の見過ぎじゃあるまいし。
やっぱり九十九兄ちゃんは無駄に爽やかだ。

「な、ナナコさん・・・パタリ」

置き去りにした元ちゃんが息絶えたみたいだけど、まぁ毎朝の事だから問題ないか



2222年・学校


学校は退屈だ。

ルリママやラピスママに教えてもらっているから学校の授業は聞くまでもなくわかる。新鮮味もかけるためか、校舎の外を眺めるのもしばしば。
それでも先生が私を注意したり、わざわざ問題を解かせたりしないのは私が完璧に出来ると知っているからだろう。

だからといってあまり誇る気にもならない。
私の場合、推理小説の答えを前もって教えられている、そんな状態に近いから。
先に教わった、そのことに価値がないとするなら、既に知っている人と知らない人にどれだけの価値があるのだろうか?

こんな事は時間の無駄だと思わなくもない。
けれどママ達は懇願した。
せめて学校には通ってと、ちゃんとした学生生活を送ってと。
たとえそれが時間の浪費に思えたとしても、何年後に振り返ってそれは貴重な時間だったと思える日が必ず来るからと。

そんなこんなで私は学生をやっている。
やってみれば大して難しくはなかった。
まだ子供でみんなの中傷で殻に閉じこもっていた頃と自分を取り巻く環境はあまり変わっていない。偏見はまだある。
けれど多少住み易くなったと感じるのは何故だろう?

多分、それは7年前から
パパとタナトスに行って空っぽの大聖堂を見て、
世界は変わらずそこに存在しているのに、当てる光と見る角度が変われば世界はこんなにも変わるのかもしれないと思ったから、
歩き出してみれば見える景色も変わると知ったから、
世界の在り様を定義しているのは自分の心だと知ったから、

私は世界を知りたくなった。

だから少しだけ生きやすくなった。
私は学生を結構楽しんでやっている。
でも授業は早く終わって欲しかった。

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン♪

やっと授業終わった!

「シオンちゃん、一緒に帰ろう♪」
そう誘ってくれる友達もできた。

「おい、テンカワ。今度バスケの試合があるんだ。
 助っ人頼むわ」
頼りにされている友達もいる。

けれどごめんなさい、今日は用事があるの♪

「ああ、いつものアルバイトね」
「がんばれよ」

私はみんなに愛想を振りまきながら教室を退出する。
そして校庭を横切って校門に向かおうとしたところ、またもやお呼びがかかった。

「こら、シオン!あんたまたさっさと帰るの!
 少しは部活をしなさい!!!」

大声で私を呼び止めるのはユキナさんだ。
アオイ・ユキナさん、体育教師で陸上部の顧問もしている。私はそこの幽霊部員だ。ユキナさんは昔陸上のインターハイにも出た事のあるらしい。
ちなみに既婚で旧姓は白鳥ユキナと言う。ハルカ・ミナトさんと同居していて、その関係で妹のように可愛がってもらっていた。

だって、幽霊部員で良いっていうから入ったのに〜

「何言ってるのさ!その運動神経を今使わないで何に使うのよ!」

いや、まぁいろいろと使ってたりするんですけど・・・

「あんたねぇ、学生なんだからバイトなんかに精を出さないで、もう少し青春ってものを謳歌しなさいよ・・・ってこら逃げるな!」

ユキナさんって熱血なのね。さすがは木連人。
でも今日は野暮用があるから捕まるわけには行かないんだもんね♪

今日はバイトがある。
それがもう一つの私の顔。
女子高生の他にもう一つ、パパ達にも内緒にしている秘密のお仕事・・・



2222年・ウリバタケ工場


「おうシオンちゃん、遅いぞ」

ゴメンゴメン♪
私はウリバタケさんに謝る。

といっても、セイヤおじさまの方にではない。シンゴさんの方である。

「おお、シオンちゃん、遊びに来てくれたのか♪」
「遊びに来たんじゃないって何度言ったら気が済むんだよ。
 シオンちゃんは楽隠居の親父に会いに来たんじゃない。
 俺と探検に行くんだよ」

いつの間にか現れたセイヤおじさまをシンゴさんは威嚇する。

ウリバタケ・シンゴさんはセイヤさんの息子で今は怪しげな工場を受け継いでいる。
セイヤさんが怪しげな発明に精を出していたが、息子のシンゴさんは別の方に興味を示していた。
そう、遺跡探索である。
一時期からすれば下火になったものの、古代火星文明の遺跡発掘ラッシュ以降、トレジャーハンターは子供達が憧れる職業の一つに数えられている。
シンゴさんはそんな遺跡の新たなテクノロジーを発掘するサルベージチーム「サジタリウス」のメンバーだったりする。

「探検?ただのガラクタ集めじゃないのか?」
「親父みたいにガラクタ作るよりかマシだろう」
「なんだと、てめぇ!表に出やがれ!」
「上等だ!このクソ親父!!!」

まぁまぁ二人とも、落ち着いて〜

私はなだめに入るも、この二人の親子喧嘩は長い。
が、しばらくするとオリエおばさまが現れて一喝して終わり。お約束のパターンだけどそれを待つ私も案外ずるいかもしれない。

「アイタタタ〜」
「いつまでも若いつもりでいるからですよ」
オリエおばさまに抱えられて家に戻るセイヤおじさま。
さてさてさて、
これからが本来の来訪の理由なんだけど・・・

「シオンちゃん、今回はどこに行く?
 とりあえず幾つか目星をつけてるんだが、今回こそは難攻不落のプラント『ヒュプノス』にしようかと考えているんだ♪」

ヒュプノスって、特攻野郎Aチームもフォーチューンも無理だったって言うアレ?

「そうだぜ♪でも今回は絶対に行ける。
 オレ様が今回のために発明したエクサバイザー用新装備!
 タクティカルブーメランユニットだ!!!」

また始まった。シンゴさんの発明。セイヤおじさま譲りでたいていは役に立たない。
せっかく10年ぶりに復刻されたエステバリス系機動兵器エクサバイザーに変な改造ばっかりしてるんだから。

しかも、今回はユニットって・・・

「聞いて驚くな!10段階の変形により、あらゆる場面に対応する無敵の武器だ!」

で、どんなものに変形するの?

「大バサミだろ?扇風機だろ?手裏剣だろ?手斧だろ?ドリルだろ?シールドだろ?それからそれから・・・」

十得ナイフじゃないんだから。
第一いらない。

「なんで!」

今回はエステバリスに乗るから

「エステバリスって・・・あのエステバリスか!?」

そう、あのエステバリス♪

「何考えてるんだ!アレは骨董品だぞ!!!」

アレじゃなければダメなんだよ。パパに勝つために

「勝つ為って言ってもなぁ〜ヒュプノスを攻略するにはいくら何でも力不足だろう」

うんにゃ、ヒュプノスには行かない。

「ヒュプノスに行かないって、んじゃどこに・・・」

タナトス♪

「タナトス!?あんな辺境の何にもない遺跡にか!?」

そう、お願い♪

「ダメだダメだ!うちだって道楽でやってるわけじゃないんだ!
 んな何にもないところに行ったって儲からないどころか、シオンちゃんのバイト代だって払えないぞ!」

料金は私が払うわ。
キャッシュで♪
ほれ、通帳の残高をみれ♪

「う、こんな大金一体いつの間に・・・」

バイト代を少し財テクしました♪

「でもなぁ〜」

良いじゃないの♪第一今までいっぱい稼がせてあげたでしょ?

「そりゃ、シオンちゃんじゃなきゃ突破できなかった遺跡はいっぱいあったけどさぁ」

そう、私が操縦したエクサバイザーはそれまで難攻不落といわれた古代火星遺跡を次々と制覇し下火になったトレジャーハンターブームをまた再燃させたくらいだ。
自分でいうのも何だけど、黒いエクサバイザーとPrincess of Darknessといえばハンター仲間では一目置かれている。

シンゴさんはしばらく考え込んだ。
でも知っている。シンゴさんは美人のお願いに弱い。
セイヤおじさま譲りの性格だ。

「まぁ良いか。ヒュプノスはそう簡単に攻略されたりしないだろう」

やったぁ♪だからシンゴさん大好き♪

こうしてサルベージチーム「サジタリウス」は一路タナトスへ出発した。
私の7年前のリベンジを果たすために。



2215年・アマリリス


多分、変わったのは7年前のあの日から。
私達家族の有り様が変わったのもあの日から・・・

「アレが見れたのならこれを渡す時期ね」

あの日、タナトスの奥で幻影を見た後、迎えに来てくれたママ達からあるものをもらった。
それは蒼い貴石。
なに、これ?
もしかしてCC(チューリップクリスタル)?

「エターナルCC・・・と呼ばれているわ。
 でも誰も使えないの」

誰も使えないCC?

「そうよ。これはあなたが生まれたときに握りしめていたもの。
 だからこれはあなたのものなの。
 あなた専用の、あなただけが使える永遠に帰路を指し示す羅針盤・・・」

私専用?羅針盤?

「これを使えるようになればあなたはどこにでも行ける。
 どこに行っても帰ってこられる。
 そんな願いを込めて作られたもの。
 あなたとともに永遠をあるために作られたもの」

私だけの?
・・・特に何も起きないけど?

「あなたが大きくなれば次第に使い方がわかるようになるわ」

ママ達は意味ありげに微笑む。
なんだかわからないけど、それを手に持つと懐かしい感じがした。
それはあるべき所に帰ってきたようにしっくりと私に馴染んだ。



2222年・宇宙船サジタリウス


なんて、しんみりしながら胸の貴石を眺める。
ママ達からもらったCCをペンダントにしているんだけど・・・
何であんな昔の事を思い出したのだろう?
やっぱり昔の因縁に決着を着ける為に来たからだろうか?
窓の外には何年か前に見たプラントがあった。
あれからも1回か2回はあのプラントに挑戦したけど、ものの見事に失敗して幾年月。

今度こそあの遺跡に挑戦する!

多分あの日の自分を突破しないと先に進めないと思うから。

「シオンちゃん、エステバリスを整備しておいたぜ」

ありがとう、シンゴさん♪

「でもよぉ、良いのか?
 エクサバイザーなら楽勝で行って帰ってこれるだろうに」

うん、これは自分に対するチャレンジだから。

「そこまでいうなら止めはしないけどなぁ・・・
 生憎、ウチには最深部にまで行って帰ってこれるパイロットはシオンちゃんしかいないんだから、息が続かないと判断したら早めに引き返すんだぞ?」

うん、わかってる。ちゃんと計算して行くから。

「それじゃ、準備は整っているが・・・さっそく行くか?」

もちろん♪



2222年・タナトス内部


タナトスはあの頃と少しも変わっていない。
7年前の光景が今も鮮明によみがえる。

ここは時間の止まった世界。
訪れる者は誰もいない。
変わることを拒んでいる。
バッタ達が今は失われた大切なものを永遠に守り続けている。
思い出と記憶の場所・・・

そう、ここはゆりかごだ・・・

『シオンちゃん、調子はどうだ?』

シンゴさんの通信に意識を引き戻される私。
もう少し感傷に浸っていたかったけど、もうそろそろバッタ達の巣に近づいてきているからそういうわけにも行かない。
うん、まずまず
そっちもこっちの状況はモニターリング出来てるでしょ?

『ああ、確かにバッテリーの予定よりも減ってない。さすがはシオンちゃん』

そうでしょう♪
私はちょっと自慢げに言ってみる。
エステバリスはシンゴさんが整備してくれているとはいえ、基本的にはバッテリーがすぐに干上がる。ペース配分をして綿密に計画を立てていかないと引き返して来れなくなる。しかしここまでは十分上手くいっている。

まぁ行って帰ってくるだけならエクサバイザーでも十分だけど、目標はパパに追いつき追い越せなんだから、エステバリスでやり遂げなければならないんだ!

『そろそろコロニー13が見えるぞ』

了解!
コロニーと呼ばれるバッタの巣は何度かの挑戦で大体の出現位置は記録できている。
たまに位置を変えている事もあるけど、予測は可能だ。
今回は行って帰ってくるのが目的だからなるべく避けて通れるモノは避けていきたい。

・・・コロニー確認
有効範囲は?

『150m半径って所か』

う〜ん、B35通路はぎりぎり範囲に入りそうか・・・
でもここを避けると遠回りしないと行けないからなぁ〜

『面倒でも遠回りした方が良いんじゃないか?』

でもバッテリーは無駄にしたくないから。

『お、おい!』

大丈夫、彼らの索敵範囲からすればB35通路を通ってもギリギリ見つからないはず!うん、そう決めた!

『やめろって〜』

大丈夫だって。シンゴさんも心配性だなぁ〜
今までの私の実績を見てるでしょ?

『そりゃ確かにシオンちゃんは上手くやってたけど、だからって・・・』

大丈夫、進むよ!
こんなの簡単だって。

子供の時はとてもじゃないけど無理だと思っていた。
見上げるパパの背は高かったからパパはすごい事が出来ると思っていた。
でも年を取るにつれ、パパと同じ背の高さになるにつれ、
あまり高さを感じなくなってきた。
人間業じゃないと思ったけど、ちゃんと理論と実践と経験を積めばそうじゃないってわかってきた。

なぜあの時そう思ったのだろう?

見上げることしか出来ない子供だったからだろうか?
それとも大人になって同じ目線になり、右や左を見る余裕が出来たからだろうか?
いや、これまで遺跡探検をしてきた経験が自分を支えているからだ。

大丈夫、これまでも同じようにやってきて、そして成功したんだ!

私は慎重にエステバリスを進めた。

慎重に・・・
慎重に・・・
慎重に・・・

けれど、私は目に映ったモノに動揺した。

ドキィ!
なんでこんなところにバッタが!?

目の前にはバッタが1機だけいた。
その信じられない光景に私は思わず反応してしまった。
エステの右足がギリギリコロニーの索敵範囲内に入ってしまった。

そのために被害はもっと拡大した。

ビーーーーーーー!!!!

『見つかっちまったぜ!』

わかってる!

私は大急ぎでエステバリスを回廊の奥に進めた。
背後からはバッタ達が雲霞のごとく押し寄せてくる!
ほんの一瞬でなんて手回しのいい!
私が精神的に立ち直る時間すら与えてくれなかった。

冷静になれ!
冷静になれ!
冷静になれ!
冷静になれ!
冷静になれ!

自分で自分に言い聞かせるたびにミスをする。
ああ、また機体のコントロールに失敗した!
さっきまでバッテリーメータは私に優越感を与えてくれた。
自分が上手くやっている事を確認させてくれていた。
しかし今は自分の失敗を否が応でも突きつけてくれる。しかもリアルタイムに!

なまじ計算出来る自分が恨めしい。
計算出来なければ操縦に集中出来るのに!
変に小利口に計算出来るからバッテリー使用量を挽回する為にこの次をこうしよう、ああしようと考えてしまう。

その邪念がまた悪い方向に自分を追い詰める!

ああ、コンマ数秒早かった!
く!噴射をけっちって加速が足りない!
挽回する為に追加で噴射した・・・強すぎた!
バッテリーがまたコンマ数パーセント余計に減った!
計画と結果の違いがじわじわと私を浸食し始める・・・

『シオンちゃん、もういい、引き返せ!』

ダメ!まだまだ頑張れるわ!

頭ではわかっている。この調子では立て直せない事を。
追ってくるバッタを振り切れないでいる。バッテリは既に予定を上回る勢いで減っていっている。

『意地になるな!また今度挑戦すれば良いじゃないか!』

わかってる!
わかってるけど!

ドゥン!!!

きゃぁ!

バッタの放ったミサイルが一発当たった・・・

『右足大破!もう無理だ!引き返せ!』

わかってるわ!
アラームがあちらこちら鳴り響いてるのは!
でも・・・
でも・・・

多分、もう引き返すのは無理・・・

『何を言ってるんだ、シオンちゃん!』

シンゴさんには悪いけど、残弾数もゼロ
ここからのルートだとコロニーを避けて通るのは無理。
通れたとしてもフルスロットルを踏んだらバッテリーが上がっちゃう。

今のバッタ達を振り切る方法といったら・・・

『大聖堂に逃げ込む?』

うん、あそこは何故かバッタ達も近寄らないから

『でもそこまで保つのかよ!』

保たせてみせる・・・

ドォン!

また一発かすった!
でもあともうちょっと、もうちょっとで最深部・・・
7年前、パパに手を引かれなければ辿り着けなかった場所・・・
何とかそこまで自力で・・・

もうちょっと、もうちょっとで大聖堂に続く光の入り口が見える。

もうちょっと・・・

もうちょっと・・・

もうちょ・・・

ドゴワァァァァァン!

あともう少しで・・・あそこに・・・辿り着けたのに・・・

その衝撃で私の意識は暗転した。



2222年・タナトス大聖堂


どれだけ気を失っていたのか。

結局、エステは何とか右足と左腕を吹き飛ばされながらも、爆風が幸いしてかそのまま大聖堂に吹き飛ばされていた。
バッタ達は回れ右してそのまま引き返したみたいだ。

助かった・・・

そう思いたかったけど、そうでもなかった。

バッテリ残量・・・大丈夫、まだ残っている。
けれど重力波推進スラスターは1番出力40%減、2番は・・・ダメね。
脚部の姿勢制御用スラスターもほとんど使えない。

バッテリーは残っていてもこれでは動けない。
いや、移動ぐらいは出来るだろうけど、とてもコロニーのバッタ達をかわしていけるはずがない。

それがすぐに計算出来たから私はすぐさま動作モードを生命維持モードに移行してバッテリーの消費を最小限に抑えた。
これで数時間は持ちこたえられる。
あとは救援が来るまで持ちこたえられれば・・・

わかってる。
こんなことをしても無駄だって。
サジタリウスには私しかパイロットがいない。
こんな辺境だ。近くにサルベージ船がいるとは思えない。
シンゴさんがどこかに救援を要請したとしても通常航行でしか来れないはずだから到着するだけでも数時間、それからタナトスの最深部までとなると・・・

絶望的な数字も計算出来るなんて因果な才能だ。




なぜ一人で生きていけるなんてなんて軽々しく思いこんでしまったのだろう
なぜパパに追いついたなんて自惚れてしまったのだろう



ママ達の教えてくれた事はやがて私の自信になった。
一人でも生きていける自信を私に与えてくれた。
7年前、ここに来た時、パパを越える事が私の目標になった。
この肝試しを制覇出来たらパパは本当のママの事を教えてくれる・・・
教えてもらう資格を持つ事が出来る・・・

そんな風に考えていた。

けれどそれは愚かな自惚れだった。

小さい頃、パパは嫌いだった。
7年前、パパは私のヒーローになった。
そしてついさっきまで私はパパに追いついたと思っていた。

でも、そのどれも間違っていた。
辿り着いたと思っていた場所はゴールではなくて、
余裕そうに見えていたパパも実は必死に戦っていて、
自分は入り口で成功しか見ていなかった。
その証拠にパニックになった私は何も出来なかった。
パパならこんなにパニックにならなかっただろう。
多分パパは私の何倍もトラブルを経験していたのだと思う
私にはそれが無かった。

まったく、こんなになるまで気づかないなんて・・・

バッテリーゲージが徐々に減るのを冷静に見る自分がおかしかった。
死の実感はまだ湧かない。
多分もう少ししたらじわじわ効いてくるのかもしれない。
最後に何も出来なくなってこんなに自分を冷静に分析出来るのだから皮肉なものだ。





あ・・・あれから何時間経過したんだろう・・・




生命維持モードにしているから照明もモニターも温調も必要最小限。
もちろん娯楽で映画を見るなんて事もないし、遭難用に小説なんかも持って来ていない。
頭を使うと悪い事しか考えないので止める事にする。
何か気を引くものとしたらバッテリーゲージに酸素ゲージ・・・今は死へのカウントダウンだけど減っていくのを見るのはマラソンを見ているみたいで何か目を離せない。
ボーッと見ている分には飽きないから不思議だ。

いけない、じわじわ死の実感って奴がやってきたかも・・・





あとどれぐらい生きていられるのかなぁ・・・




酸素が薄くなったのかなぁ・・・
酸素濃度のアラームがうるさいけど、聞こえづらくなった・・・
そろそろ終わりなのか・・・

ママ達怒ってるかな・・・
パパ、泣いてくれるかなぁ・・・
本当のママに会いたかったなぁ・・・
ちくしょう・・・ここまで来たらもう一度7年前の様に目の前に現れてくれるかと思ったのに、甘かったなぁ・・・





会いたいなぁ・・・




目の前が真っ暗になる前に私は見た。
胸のペンダントがキラキラ光るのを・・・



2203年・ナデシコC


「それで?どうなったんだ?」
「それが目が覚めた時にはウチだったの」
「ウチ?」
「そう、自宅、テンカワ家」
「それじゃ、誰かに救出されたのか?」
「それが違うんだなぁ〜」

シオンの話はいつも要領が得ない。アキトはシオンの回想話の内容が全然見えなかった。

「気が付いたら地球だったの」
「誰にも救出されなかったのにか!?」
「うん、私が目覚めた時にはシンゴさんが血相を変えてパパに連絡を入れている最中だった」
「へぇ・・・ってボソンジャンプしたのか!?」

現在もそうだが、未来の世界でもゲートを介さないボソンジャンプは出来なくなっている。

「うん、不思議なのは私の着けてたコミュニケの時計が6時間以上も進んでたんだよねぇ〜」
「6時間って・・・」

アキトは絶句する。
シオンが地球に現れたのは、ちょうどシオンが遭難した直後、大急ぎで救援を求める為にアキト達に連絡を入れた直後との事だった。
そう、シオンは長時間遭難した後、6時間前の地球の自宅にボソンジャンプしたのだ。

「6時間前って、時間移動じゃないか!?」
「何時間遭難していたのか意識が朦朧としていたからわからないけど、時計の進み具合からいってまず間違いなく」
「それは・・・」

時間移動など現在では封印されているはずだ。

「多分、これのおかげ」
「そのCCは・・・」
「うん、このCCは望む場所にジャンプ出来る。
 多分意識が途切れる前に自分の家を思い描いたからかもしれない」
「・・・」

アキトも絶句している。

「普通のCCは1回使ったら無くなっちゃうけど、これは使っても使っても消えないの。ただ力を失うだけ。そして私の強く望む場所まで連れて行ってくれる。
 だから私はここに来た。真実を知る為に・・・」

シオンは目を細めて永遠と名の付くCCを眺めた。



2222年・テンカワ家


あれからママ達にこっぴどく叱られた。

まぁそれは少し猫を被ってやり過ごした。
だいたいエターナルCCの使い方もわかってきた。
力をチャージすれば良い事、特に遺跡なんかの中だと溜まりやすい事。
過去にでも未来にでもジャンプ出来るけど、強く望まないと叶わない事。

多分それが使えるようになったという事は、どこに行っても良いという啓示かもしれない。

そしてもう、2222年には本当のママの手がかりはないという事も色々調べてわかった。
パパもママ達は何も教えてくれないだろう。

本当のママの事を知る方法が過去に戻るしかないとしたら、
過去の世界でパパがタナトスの大聖堂で何を見たのかを知る方法が過去に戻るしかないとしたら、
そしてそれを実現するだけの力が自分に身に付いたのだとしたら・・・

この世界はだいぶ生きやすくなった。
パパのそばで料理を覚えて、ママ達に色々教えてもらって
元ちゃんや九十九兄さんやシンゴさん達と楽しく生活して
新しい楽園でこのまま暮らすのも悪くないけど・・・



エターナルCCが再び光を取り戻したその日・・・


私はパパ達に事情を話して過去に旅立った。
ラピだけをお供にして。
ママ達は笑って許してくれた。
パパは最後まで視線を合わせてくれなかった。

けれど決めた事だから・・・

私は過去に戻った。
本当のママと自分のルーツを探す為に。



ポストスプリクト


ということでナデシコNG第11話をお届けしました。

2222年編ですが、このお話は当初NNGのプロローグというか開始の部分となるはずでしたがいきなり2203年のプロローグのシーンから始めてしまった為に今の今まで遅れていました(苦笑)

本当は学園ラブコメとかトレジャーハンターとしての活躍なんかをやっても面白いのかなぁ〜とか思いますが、2222年編は外伝なんかでボチボチやる方が面白いかもしれませんね。

ってことで次回からは実際にタナトスの大聖堂に何があったのか!という部分の探索に戻ります。キャノンボールみたいな感じで書けたら良いんだけど、文才のない身でどこまで書ける事やら(苦笑)

ということでおもしろかったなら感想をお願いします。

では!

Special Thanks!!
・あめつち 様
・龍崎海 様
・YSKRB 様