アバン


全てはアイちゃんが貰ったプレートから始まった。
内通者も
火星の後継者も
アキトさんの城の夢も

そのプレートに何が書いているかよく知りもしないで
私達は群がりました。

だから・・・ナデシコは戦場になりました。

ああ、一応このSSってPrincess of White とDC版The Missionの続編ですので
よろしく



ナデシコB・メグミの自室


「さぁ、おとなしくこちらに振り向いてもらおう」
その女性はアキトに向き直った。
「やはり君が『ユダ』だったか・・・・」
「うふ♪」
彼女は笑った。決して悪びれた様子もなく・・・

「そんな・・・まさか『メグミさん』が内通者だったんですか!?」
「ああ」
ケンは未だに信じられないように呻き、アキトが肯定する。

しかし、とうのメグミは・・・

「見つかっちゃった♪
 てへ♪」

てへ♪じゃねぇだろ!!と心の中でツッこむアキトとケン。
しかし、メグミはほとんど悪びれた様子もなく微笑んだ。
そしていきなり両手を合わせた。

「ごめんなさい!!!
 こんなに大事になるなんて思わなかったの!!!」
「なに?」
「プロデューサーさんにナデシコに潜り込む手助けをしてもらった手前、アキトさんのスクープをリークしないと悪いかな〜〜と思って、いけないと思いつつもプロデューサーさんに連絡したんだけど。
 あ、心配しないで。大したこと漏らしてませんから」

そう、あっけらかんと答えるメグミ。
しかし、それがどこまで真実か測りかねていた。

「メグミちゃん、君は自分が何をしたかわかってるのか?」
「何ってアキトさん・・・・私とあなたの不倫スクープを・・・・」
「は?」
「そうやって外堀を埋めていって奥さん達の意思を挫きつつ、周知の事実にしていった後に晴れてアキトさんの心をゲットするという高度かつ用意周到な計画を立てて・・・
 どうしたんですか?アキトさん?」

メグミの言葉に脱力したアキトにケンは声をかけた。
「テンカワさん、メグミさんは・・・」
「いや、プロデューサーのカザマツリ・サカキは火星の後継者の一味だと思われている。彼女の言葉をそのまま鵜呑みにするのは危険だ。」
「しかし・・・」
ケンはそれでもぐずぐず言う。
だが、アキトはそれを無視してメグミに向き直る。

「メグミちゃん、君をウソ発見器にかける。
 君の言葉が真実か証明させてもらうぞ」
「???
 なぜそこまでするか理由がよくわかりませんけど・・・
 いいですよ。それで信用していただけるなら」
本当に何故かよくわからない表情で頷いた。



ナデシコB・医療室


というわけでメグミはポリグラフ・・・通称ウソ発見器にかけられた。
その結果を持って現れたイネスは開口一番
「特に証言の矛盾はないし、心理的な動揺や乱れもない」
「ということは・・・」
「まぁ、普通に見れば彼女は騙されていたって結論づけられるけど・・・」
イネスの言葉に悩むアキト。

だが、彼の出した結論は・・・。
「しばらくは自室に軟禁だ。
 それよりもメグミちゃんが通信した相手先を調べよう」
「通信はすぐに切られましたが、おおざっぱな場所はわかりました。」
メグミのことが心配でやってきたルリが報告の結果を話す。
「どこだ?」
「火星外周・・・アステロイドベルトの近くです。」
「・・・・・・ユリカ、こっちに来い。相談だ」
『ほ〜〜い!』
ユリカの返事を聞き終わる前にアキトは次のことを考えていた。



ナデシコB・艦長執務室


「まず、最初にこれを渡しておこう。イネスさん」
「はい、みんな手を出して」
雁首並べたユリカやルリはゆうに及ばず、ラピスにハーリー、ケンやリョーコ、サブロウタにヒカル、イズミ、果てはユキナにまでとあるモノがアキトとイネスから配られた。

ユリカ「何これ?」
アキト「何って、ユリカ・・・お前の記憶力はザルか?」
ルリ「いえ、これがCCだってことはみんなわかってます。
 ユリカさんはともかく、なんでこれを私達にも渡されるんですか?」
リョーコ「そうだそうだ!」

確かにA級ジャンパーのユリカであればCCがあればどこへでもボソンジャンプが可能だ。だが、ルリ達B級ジャンパーに渡されてもCCなんて使えやしない。
しかしアキトはこう言う。

「保険だ。テンクウ・ケンの例もある。
 ひょっとしたらB級ジャンパーも単独ボソンジャンプ出来るかもしれない。
 あるいは大人数でボソンジャンプするには複数のCCが必要だ。
 ジャンパー体質の人間は持っておいて損はない。」
「でも・・・・」
みんな一様に難色を示す。A級ジャンパーならいざしらず、B級ジャンパーの場合、CCを持っていて万が一CCが起動でもしたらどこに飛ばされるかわかったもんじゃない。

それでもアキトは・・・・

「言ったろ?最悪ナデシコが戦場になると。」
ボソンジャンプが出来れば最悪の事態は回避できる。
そういう対策のためにアキトは彼らにCCを手渡したのだ・・・。

そしてそういう覚悟が出来た上でアキトは切り出した。
「メグミちゃんの通信を逆探した結果、敵の居場所がわかった。
 が、罠である可能性も高い。
 最悪は俺一人で偵察に行こうと思うが・・・・どうする?」

「行きましょう」
ユリカは即決した。結局ユーチャリス一隻で行ったとしてもナデシコCが行かなければ彼らを捕縛することは出来ない。たとえ危険でもなし崩し的に戦闘をするくらいなら最初から罠覚悟で艦隊行動をとった方がいい。
そうユリカは結論づけた。

数時間後、ナデシコ艦隊は火星外周の手前にジャンプするのであった。



ネルガル・会長室


「どうしたの?月臣君、そんなに焦って」
大慌てで入ってきた月臣をアカツキはのんきな声で出迎えた。
「会長、実は『フェイスレス』について重要なことがわかりました。
 ナデシコの黒百合に連絡を取りたいんですが・・・」
「残念、今し方火星に飛んで行っちゃった。」
「くそ!!!」
月臣は悔しそうに言う。
もう少し早くアキト達に伝えられていれば・・・

「今からじゃナデシコに間に合わないか・・・」
「そんなことないよ」
「え?」
アカツキは事も無げに言う。

通常航行では地球から火星まで早くても半月はかかる。
ナデシコ艦隊はボソンジャンプをして一瞬で向こうに到着してしまった。
せっかくのヒサゴプランは第二次火星極冠事変の際に南雲の火星の後継者達に飛び先をめちゃくちゃにされてしまい、それ以来使いものにならなくなっている。
A級ジャンパーがいない現状では火星までの長距離ジャンプなど出来ようもない。

「んじゃ、僕も行こう。エリナ君も心配だし。」
「か、会長・・・」
「『フェイスレス』の件は出航準備の合間に聞こう。
 今は時間が惜しいからね。」
そういってウインドウを開くとなにやら平塚のドッグを呼び出す。
「『ロベリア』の準備は出来てる?・・・OK♪」
「『ロベリア』って・・・」
「ユーチャリス二番艦で僕の専用艦さ。もちろんボソンジャンプも出来るよ♪」
「しかし、ナビゲーターが・・・」
戸惑う月臣にかまわずアカツキは部屋を出ようとする。

「僕じゃ不服かい?」
「はい?」
「いやぁ〜♪テンカワ君に負けっ放しってのは癪なんでね。
 金に飽かせてってやつさ。さすがに死にかけたけど」
月臣は絶句した。
不適に笑うアカツキの顔にナノパターンを浮かべながら。

「ちなみに初ジャンプだからそのつもりで♪」
「い、いやじゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
アカツキのお茶目な発言に月臣は心の底から絶叫した。



Nadesico Second Revenge
Chapter31 ナデシコが戦場になる日



火星外周


ナデシコC、ナデシコB、ユーチャリスの三隻は火星の衛星軌道外周にジャンプアウトした後、索敵を行っていた。
「問題らしき艦隊を見つけましたが・・・どうします?」
「しばらく監視しましょう」
ユキナの声にユリカはそう答える。
「ルリちゃん、システム掌握は出来そう?」
「プロテクトは前回と同じモノのようですが・・・変ですね・・・」
「変?」
ユリカは聞き直す。
「いえ、もっと厳重なプロテクトでも敷いてるのかと思いましたが・・・」
ルリの肌にはゾワリとした違和感が張り付く。

何かおかしい。
あまりにも無防備すぎる。
メグミの通信がバレて、自分たちの居場所が気づかれたことは知っているはずだ。
なのに・・・

いつもと勝手が違う相手にルリは違和感を拭いきれないでいた。

「一気にシステム掌握出来そう?」
「あ、はい。
 もう少し調べてみます。ひょっとしたら出来るかもしれません」
自らの不安をかき消すようにルリはユリカの問いに答えた。



火星の後継者旗艦・ゆめみづき


その戦艦は息を潜めて近くの隕石に身を隠していた。
相転移エンジンなど、エネルギー発生源をほとんど落とし、生命維持以外のエネルギー消費を極力落としていた。
当然ディストーションフィールドすら張っていない。
攻撃されればひとたまりもない。

彼らはなぜそんな無防備な状態でそこにいるのか?

そう、その場に元ナデシコクルーがいれば気づいたかもしれない。
かつてナデシコでユリカが秋山の乗艦『かんなづき』によるボソン砲を攻略するために行った戦法であることを。

「目標発見せり。どうしましょう?」
「六人衆は?」
「早く出せと責付いています。」
「待たせろ。奴らをもう少し引きつけてからだ。」
副官風祭の報告にそう命令する東郷。
だが釘を差すことを忘れなかった。

「あいつらに伝えておけ。
 今回の作戦の目的はあくまでも『お姫様』の救出だ。
 黒百合打倒はかまわんが、艦の破壊はするな。
 『お姫様』そのものを吹き飛ばしては元も子もない・・・
 とな。」
「はい!」

東郷の目には既にナデシコ艦隊が罠にかかる前の小鳥に見えた・・・。



綻びの理由


ナデシコ艦隊は確かに最強だった。
しかしそれは通常兵器で覇を競わせてのこと

彼女達はそれ以外の戦い方があるなんて思ってもみなかった。
いや、想像はしていたかもしれない。現にアキトもそう指摘していた。
だが、それが現実に起こるなんて夢にも思っていなかったのだ。

しかしそれは仕方のないことかもしれない。
この時点で彼女達は東郷ら火星の後継者達の真の目的を掴めていなかった。
彼らの目的が『アイちゃんのプレート』だと知っていたら別の対応をとっていたであろう。

でもナデシコはそうとは知らず、囮の艦隊に近づいていった。
近くに隠れていたゆめみづきが持つ『ボソン砲』の射程距離内に入るまで!!



ナデシコB・格納庫


「なんだお前は・・・
 グハァ!!!!!!!」
最初に気づいたのはその場にいた整備員だった。
しかし気づいた瞬間、彼は鉄の棒のようなもので殴り飛ばされた。

シャリン・・・

鉄の棒のように思われていたのは錫杖である。

「クソ!!東郷の奴、艦を壊すなだと!?
 我らに指図していいのは亡き北辰様だけだというのに、思い上がりおって!!!」
六人衆が一人「風穴」は忌々しげに呟いた。
そしてやおら宇宙服を脱ぐとどこからか取り出した編み笠と時代劇めいた外套を羽織る。

「さぁ黒百合よ、出てこい!
 出てこなければ全員血祭りに上げるぞ!!!」
六人衆「風穴」は咆哮を上げた。



ユーチャリス・ブリッジ


「ち!やはり奇襲されたか!!!」
それはナデシコCにいるルリの報告を聞いた直後であった。

ナデシコ艦隊のごく近くにて突然エネルギー反応があったと同時に、ナデシコBの格納庫付近にボソン反応を検出、その直後何者かが艦内に侵入した。

『敵はボソン砲で兵士を直接送り込んでいます!』
いかにルリでもこのクレージーとも思える戦法に困惑していた。

だが、予想できたはずだ。
かつて木連は似たような方法でミサイルに操縦席を付けただけの奇襲兵器を試験的に試したことがある。
着地地点の精度もそれなりにある。
ミサイルや爆弾を送りつけられるのだから、B級ジャンパーぐらいは距離さえ合えば送れるだろう。

無論、その作戦を行う兵士に異常なまでの特攻精神があれば・・・の話であるが。

「くそ!今すぐナデシコBに向かう!!」
アキトはたまらずにCCを握りしめようとした。
『待って下さい、テンカワさん!
 まだこちらに来てはいけません!』
だが、それをナデシコBのケンが制する。

「なぜだ!
 そいつらの狙いは俺だ!!」
『ダメです!
 もしユーチャリスにも兵士を送りつけられたらどうするつもりですか!!』
「・・・」
『テンカワさんがユーチャリスを空けたら、エリナさんやラピスさんを誰が守るんですか!!』

そう、ユーチャリスにはアキト以外に戦闘が出来るものはいない。

「ち!!!」
『ナデシコBにも戦える者はいます!
 本当に必要なときにはお願いしますから!』
逸るアキトをケンは何とか諫めるのであった。



ナデシコB・格納庫


『ウリバタケさん、そちらの様子はどうですか?』
「どうですもこうですも、敵はどんどん送り込まれてきやがる!!」
ケンは現場に向かいながら戦闘現場の状況を尋ねてきた
格納庫でウリバタケは必死に対応していた。

「今はリリーちゃん三号から十号を繰り出して必死に応戦しているが時間の問題だ。」
ウリバタケは現場を睨みながら報告するが状況は良くない。

リリーちゃんとはウリバタケ謹製のマネキンロボットであるが、このロボットは本来宴会用の爆竹や花火しか装備しておらず、ほとんど虚仮威しである。
単なる時間稼ぎでしかない。
しかし、戦闘要員でもない整備班の面々に六人衆「風穴」や東郷の親衛隊の相手をさせようというのはどだい無理な話だ。

だが・・・

「班長!!四号が!!!」
「なに!?」
班員の報告にそちらを注視するウリバタケ
そこには錫杖の一撃で粉々にされたリリーちゃん四号の無惨な姿が横たわっていた。

「つまらんものを切らせおって!」
風穴は忌々しげに呟く。

そうこうする内に他のリリーちゃんも次々と破壊される。
じりじりと追いつめられる整備班の面々

「おい艦長、まだかよ!」
『すいませんがまだです。もう少し頑張って下さい!!!』
ウリバタケの懇願だがケンもまだ格納庫にはたどり着けないでいる。

「し、仕方あるまい。こんな事もあろうかと・・・」
せっぱ詰まったウリバタケは秘密のツールボックスからなにやら取り出す。
「パワードスーツ剛力君一号だ!!作ったばっかりでまだ試運転もしてないが、背に腹は代えられん!!!」
「は、班長やめて下さい!!!」
パワードスーツとは言いながら、単にボクシングの特大グローブをマジックハンドで操作するだけのような代物を取り出すウリバタケだが、班員達は必死に取り押さえる。
そんなもの役立つはずがないからだ。

しかし・・・

「茶番は終わりだ。」
風穴はすぐそこまで来ていた!!!

危ない!と思った瞬間!

「そういわずにもうちょっとつき合えよ♪」
ウリバタケと風穴の間に立ち塞がったのは・・・

「りょ、リョーコちゃん」
「どもども〜〜♪」
「火星で加勢・・・なんちって♪」
そう立ちふさがったのはリョーコにヒカル、それにイズミの三人娘、それにライオンズシックルのパイロット達であった。

「最近ちょっとヒマしてたんで暴れたい気分なんだよな。」
リョーコ達は腕を鳴らす。
「って大丈夫なんか?あいつら強そうだぞ?」
不安がるウリバタケだが・・・

「こんな奴らに勝てないようじゃテンカワに追いつけないだろ?」
リョーコ達は自信満々で答えた。
「言うわ、小娘が。
 黒百合を血祭りに上げる前に貴様らを殺してくれる!!!」
風穴は凄まじい殺気と共に叫んだ。

リョーコ達と侵入者との戦闘が始まった。



ナデシコC・ブリッジ


ナデシコCにも当然敵が送り込まれていた。

「きゃぁ!!!」
「コラ!!!ミナトさんに何するのよ!!!」
ガシ!!!!!!

ミナトに襲いかかってきた敵兵士に対してユキナは果敢に攻撃した。陸上で鍛えたハードル走が役にたったかに見えたが・・・

グイ!!!

「なめるな!小娘!!」
「ユキナ!!!」
兵士はユキナのケリをあっさりと受け止めた。その光景を見てミナトが悲鳴を上げる
「ミナトさんの赤ちゃんには指一本触れさせないんだから!!!」
それでも恐怖と戦いながらユキナは勇気を振り絞って言った。
こんなところでせっかく手に入れた家族を壊されてたまるか!と。

「ユキナちゃん!!!」
近くで見ていたユリカとルリも助けに入ろうとしたが、それを阻む者がいた。
「妖精に試験体、逢いたかったぞ。」

六人衆が一人「迅雷」である。迅雷は舌なめずりしてルリ達に近づく。

「いい加減に退場したらどうなんですか?しつこい人は女性に嫌われますよ」
「ちょっと、ルリちゃん、何も敵さんを刺激しなくても・・・」
ユリカが必死に庇おうとする端からどんどん憎まれ口をたたくルリ。
「第一ユリカさんをさらった犯人なんですよ?
 もっと怒ったらどうなんです?」
「それはそうなんだけど・・・」
「威勢がいいわ。それでこそ黒百合を絶望の淵へ叩き落とす良き贄になるというもの。」
迅雷は北辰に似たサディスティックな笑みを浮かべた。

「離しなさいよ!!!」
暴れるユキナを持て余したのか、敵兵士はユキナを突き飛ばした後、持っていた銃で殴りかかろうとした。
「小娘が!!先にお前から殺してくれ・・・」
「させるか!!!」

ゴフ!!!

敵兵士がしゃべり終わる前にそれを阻止するように殴りかかった者がいた。
「俺の家族に何か用か?」
「ゴート!」
「ゴートさん!!」
二人の前に立ちふさがったのはゴート・ホーリーであった。
「待たせたな、ミナト、ユキナ」
「ゴートさん、初めて頼もしく見えた」
「どういう意味だ、ユキナ!(怒)」
場を明るくしたのはゴートだけではなかった。

「ゴートさんだけではありませんので、はい♪」
「ウチの艦長と提督にちょっかい出すのはやめてもらいましょうか?」
遅れて現れたのはプロスペクターとタカスギ・サブロウタであった。

「プロスさんは艦長達をお願いします。俺はあの六人衆の奴を相手にしますんで」
「お任せ下さい。これでも昔は『踊る算盤使い(ソロバンダンサー)』とその筋の方から恐れられておりまして、はい♪」
「・・・・よろしくお願いしますよ。」
何とも言えない表情でルリやユリカをプロスに任せ(?)、サブロウタは迅雷と対峙した。

「ほう、木連を裏切って地球の犬に成り下がった男がよく言う」
「犬で結構。むさい爬虫類の部下よりかは、見目麗しいお姫様の警護の方がまだマシってもんだ!」
「北辰様を愚弄する気か!!」
「ほう、自覚はあるんだ。嫌だよね〜〜モテない男のひがみは〜〜」
「言うわ、 小童!!!!」
「オタクこそ、俺ごときを倒せない様じゃ、テンカワ・アキトを倒すなんて恥ずかしくて言えませんよ」
「ならば殺してくれよう!!!」
なめきったサブロウタの態度に怒り心頭の迅雷。

サブロウタは同じ木連武術の使い手と対峙することによって、自分の行ってきた訓練がテンカワ・アキトに通用するか計ろうとしていた。



ナデシコB・メグミ自室


「なんか外が騒がしいけど、何かあったのかな?」
自室に軟禁されていたメグミであるが、さすがに今の騒動に気が付いたようだ。

「ちょっと〜〜誰かいませんか?
 誰か〜〜」

ドンドン!!!

通路へのドアを叩いても誰の返事もない。
そう、敵の侵入でみんなそれどころの騒ぎではなかった。

「ちょっと〜〜私ってば、ひょっとして閉じこめられたまんま!?」
そう思うと途端に嫌な想像を巡らせるのは人の常。

「もしかしてこのまま火事が起きちゃったりとかしたら・・・私って薫製?」
そう思うともうパニックになる。

「出して出して出して出して出して出して出して〜〜!!!」
ドンドン扉を叩くがそれで開くわけがない。

でも・・・

ガリャリ

「え?」
いきなり扉が開錠され、メグミは扉を叩いた勢いで外に転がり出てしまった。
「・・・・・・ひょっとしてラッキー?」
「そんなわけないじゃないですか♪」
突然扉が開いた幸運を喜ぼうとしたメグミであったが、それを別の声が否定した。
でもこの声は聞き覚えがある・・・。
メグミは声の主の方に振り向いた。

「ぷ、プロデューサーさん・・・」
「メグちゃんおひさ♪」
そう、パタパタ手を振ったのは敏腕プロデューサ、カザマツリ・サカキであった。
しかし何かが違う。
そう・・・

「プロデューサーさん、その格好・・・まるで」
「メグちゃん、ナデシコを引き連れてきてくれてありがとう♪
 君のおかげで助かったよ。」
そう、カザマツリは既にあの憎めないプロデューサーの顔ではなく、火星の後継者「フェイスレス」風祭の顔に戻っていた。

「それじゃ・・・・」
「君にはもう少しだけ役にたってもらうからね♪」
風祭は憎めない顔でそう笑った。メグミは初めて自分が何をしたかに気が付いた。



ナデシコB・通路


ケンは格納庫に向かって走っていた。
六人衆が相手となれば木連式柔術の心得のある自分がいないと戦いにはならないと思っていたからだ。

もう少しで格納庫というところで通信が入った。
『艦長!』
ウインドウに現れたのはハーリーであった。
「ハーリー君、どうしたんです?
 まさかブリッジに敵が!?」
『違います。
 これを見て下さい』

ハーリーは別のウインドウを表示した。どこかの通路の地図に二つの点。
そしてその一つは

「これは!?」
『ええ、この識別はメグミさんなんです。
 で、もう一つはUnknownなんです』
「ということは・・・・メグミさんが敵と一緒に?」
『そうだと思います。そして向かってる先は・・・』
ハーリーは頷くとその地図の先を示した。。

二つの点はある場所に向かっていた。
そう、ナデシコBの医療室である。

「イネスさん・・・・もしかして遺跡のプレートが目的なのか!?」
ケンはそう気がついた。

寝返ったのか脅されてなのかわからないが、メグミの案内で敵が医療室に向かっているのは確かだ。

まぁ、イネスならいざとなればジャンプして逃げられる。
しかし、もしメグミが人質として連れ回されているとしたら・・・

「リョーコさん、そちらは?」
『ああ、こっちはもうすぐ片が付く。イネスさんのところに行ってやってくれ!』
向こうの様子を聞いたら何とか大丈夫のようだ。

ケンは踵を返して医療室の方へ向かった。



ナデシコB・格納庫


格納庫の方の敵はあと六人衆「風穴」ぐらいであった。
それも相手をしているイズミであれば程なく倒せるであろう。
リョーコは自分の持ち分の兵士を相手にしながらそう思った。

だが、ケンとの通信を切った途端、状況は一変していた!

「きゃぁ!!!!!」
「どうした、イズミ!!!」
リョーコが振り返ると、そこにはイズミを組み敷いた偉丈夫が立っていた。

それは直感だった。
この男は先ほどまで相手にしていた六人衆などとは比べモノにならないぐらいの相手であるという事に・・・。

「筋はいい。
 が、まだまだお遊戯のレベルだ。人殺しの技じゃない。」
「き、貴様は誰だ!!」
「俺の名前か?『火星の後継者』東郷和正と言えばわかるか?」
「な!!!」
リョーコは驚く。
まさか敵の大将自ら特攻を仕掛けてくるなんて思っても見なかったからだ。

「さぁ、時間をやる。早く黒百合を呼ぶといい。
 お前達では役不足だろうからな。」
東郷は威圧感と殺気がたっぷりと混じった闘気をリョーコにぶつける。気を抜けば震え上がり、戦意さえ喪失しかねないその凄まじい闘気に怯えながらも、リョーコは必死に勇気を振り絞った。

『テンカワだってこんな奴らと戦ってきたんだ。こいつと戦えないで何が打倒テンカワだ!!!』
リョーコはそう呟くと東郷に向かってこう言い放った。

「テンカワと戦いたければ、あたいを倒してからにしな!!」
「ははは、そうさせてもらおう。」
東郷は不敵に笑った。



ユーチャリス・ブリッジ


「・・・・」
ブリッジで待機しているアキトをエリナは居たたまれなく見ていた。
アキトの苛立ちが手に取るようにわかる。

幸い、まだユーチャリスには敵は送り込まれていない。
だからといって他の艦が敵に蹂躙されているのをアキトが甘受できるわけがなかった。
きつく握りしめた拳がアキトの精神状態を如実に表していた。

「アキト君・・・」
エリナがそう声をかけようとした瞬間、一枚のウインドウが開いた。
そこに映った光景にエリナも、そしてアキトも驚愕した。

『やぁ、黒百合』
「東郷!!!!」
『どこに隠れてたんだ?おかげでこいつらを無駄にいたぶってしまったではないか』
そういってウインドウの向こうの東郷は右手で捕まえていたモノを目の前にみせた。

それは傷だらけのリョーコ。
既に刃向かう力も残ってないリョーコの頭を鷲掴みにしたまま、大した重さでもないように軽々と前に差し出してみせた。

そしてその後ろには体を動かせないほど痛めつけられたナデシコBのクルーが累々と横たわっていた。

たった一人
その一人にリョーコ達は敗れたのだ。

『来ないのか?死体の一つでも転がそうか?』
そう言いながら東郷が右手で掴んでいたリョーコの頭蓋をギリギリと締めつけ始めた。
『・・・・・』
声も出せないリョーコは苦悶しながらも堪える。

「貴様!!!」
怒りに震えるアキト。
しかし彼の視線の端にはエリナが、ラピスがいる。
もし今この場を離れて敵がユーチャリスに責めてきたら・・・
その葛藤でアキトは揺れていた。

でも・・・

「いいわよ。行って来なさい・・・」
エリナはやさしくそう言った。
「エリナ・・・」
「私達のことはいいから。
 あなたはあなたのやりたいようにやればいい。
 あなたが後悔さえしなければ、私達はあなたにずっと着いて行くから・・・」
「すまん!」
エリナの言葉にきびすを返すとアキトはCCを握りしめた。
次の瞬間、アキトはボソンのキラメキに包まれてその場から姿を消した。

「エリナ・・・・・泣いてるの?」
二人きりになってラピスがポツリとそう言う。
「違うわよ・・・」
口ではそう言ってみせた。
でも・・・

『行かないで・・・って言えなかったわね』
エリナは心の中で自嘲する。

いつも自分はそうだ。
本当はそばにいて欲しい。守って欲しいのにそれを言わずに自分のプライドを守ろうとする。

物わかりのいいフリをしてその実、断られるのが怖いのだ。
都合のいい女のフリをして決定的な言葉を聞きたくないだけなのだ。

でも彼女達は違う。
ユリカやルリはアキトが戻ってくるのをじっと待っている。彼の心の傷が癒えるのを待って。でも、ただ待っているだけではない。
いつアキトが帰ってきてもいいように場所と環境を整える努力をしている。

メグミは傷ついたアキトでも良いと言った。
たとえアキトの心に入り込むことで彼が傷ついてもいい、共に傷ついたとしてもそれによって新たな絆を結ぼうとした。

それなのに自分はただアキトの逃げ場所を作り、そこにアキトが何時までもくすぶっていてくれるのを願っているだけなのだ!!!

「ごめんね、ラピス。私と一緒に貧乏くじ引かせて・・・」
「大丈夫。みんなわかってる。ルリ姉もユリカも」
「そうね・・・」
エリナはラピスの気遣いに感謝した・・・。

しかし事態はそんな感傷すら彼女達に与えてはくれなかった。

ビーーーーー!!!!!!

「ボース粒子反応!!!」
慌ててラピスが叫ぶ。
だがラピスが叫ぶまでもなくエリナは気づいていた。

なぜならボソンのキラメキはエリナ達のすぐ目の前に現れていたからだ!!!

「ち!黒百合と入れ違いになったか!!!」
現れた六人衆「叢雲」が残念そうにそう言った。
「まぁいい。黒百合が戻るまでこいつらをいたぶるか?」
叢雲は殺気のこもった瞳でエリナ達を睨み付けた。

「あ、あなたなんかにやられるもんですか!!!」
エリナは震える手を抑えて懐から拳銃を取り出し叫んだ。
恐怖に身が竦んでしまわないように、ラピスをこの身に代えても守る決意をする為に。

でも叢雲の魔手は否応なく近づいてきた・・・。



終局への序曲


運命の歯車は回り始めた。
誰が弾いた引き金かはわからないが全ての調和を破壊して終局へと転がり始めた。

この狂い始めた歯車がどこに行きつくのか誰にもわからない。
ナデシコにとってそれが勝利へ導くのか、それとも破局に導くのか
それは誰にもわからない。

なぜならまだ選ぶ自由が存在するのだから・・・。

See you next chapter...



ポストスプリクト


ってことでリベ2のChapter31をお送りしました。
さぁクライマックスだ!!燃える展開だ!!って事で(爆)

多くは語りません。ネタバレになるので。
でもひとつだけ。

メグミに対する感想は取り敢えずChapter34辺りまで保留にしてください(汗)
メグミの行動は全て作者の計算づくです。
読者にどう見えるかも含めて。
そのうえでChapter33か34をご覧になったうえでご評価ください(苦笑)

ってことで次回をお楽しみに!
では!

Special Thanks!
・TARO 様
・AKF-11 様
・kakikaki 様