アバン


開けちゃいけないパンドラの箱
そこに希望が詰まっているのか、絶望が詰まっているのか知らないけれど
やっぱり取扱説明書ぐらいは読んだ方がいいんじゃないの?

小さなプレートは託した人の意志とは関わりなく、人々の勝手な思いこみと願望を映し出す。たとえそれが1円の価値しかないものでも、それを争う人達によって限りなく吊り上げられていくものだから。

ああ、一応このSSってPrincess of White とDC版The Missionの続編ですので
よろしく



台場付近の喫茶店


「遅い!」
メグミは時計を気にしながら待ちぼうけを食らっていることに腹を立てていた。
ここは台場付近の喫茶店である。業界関係者がよく使う店だ。
そんなところでメグミは人に呼び出されてこうして待っているのだが、頼んだアイスコーヒーはそろそろ底をつき始めている。

カラン、コロン
店の扉が開いて、大慌てで一人の若い男性が入ってきた。

「ご、ごめん!メグちゃん待った?」
「もう、プロデューサーさん、遅いですよ!!!!!」
「ごめんごめん」
そうやって謝りながら入ってきたのは若い、しかもちょっと冴えない男性であった。

「いやぁ〜ちょっと上司に捕まっちゃって。お小言食らってたんだよ」
そういって彼はポリポリ頭をかく。
「ご注文は?」(←ウエイトレス)
「ああ、冷コを。メグちゃんは?」
「もう頼みました。これ以上飲んだらお腹がカポカポになります。」
空になりかけのグラスを揺すって怒るメグミ。
「ああ、ごめんごめん!」
そうするとまた平謝りに謝る。プロデューサーにしてはやけに平身低頭である。

メグミはその姿を見て苦笑した。
彼の名前はカザマツリ・サカキ。
ネルガル系の芸能企画プロダクション「ブルーエンターテイメント」のプロデューサーだ。その冴えない風貌や言動に似合わず結構辣腕プロデューサーである。

普通、プロデューサーといえば大概偉そうで年を食っていて、メグミらタレントから見れば雲の上の存在なのだが、カザマツリ曰く「プロデューサーなんてクライアントやらなにやらに気を使って関係各所に頭を下げ回るのが仕事だから」と苦笑して答えたそうだ。
普段の彼を見ていると納得するのだが、それにしては大きな仕事を結構手がけている。

「いやぁ、メグちゃんのナナコさん、評判良いよ。昨日の試写会の反応も上々だし」
カザマツリは喜々として言う。
彼が言っているのは彼がプロデュースした劇場版ゲキガンガー「ゲキガンガーよ永久に!」のことである。メグミも声優としてナナコ役で参加していたのだ。

え?「あの話って冗談じゃなくってマジだったの?」ですって?
実はマジだったのです(苦笑)

「ヒットするよ!この作品は!!
 これもメグちゃんのおかげだよ♪」
「そんなことありませんよ。これだけのキャストと制作スタッフを集めたプロデューサさんの力ですよ」
「いやいや、僕なんて。ただ人に頭を下げるしかできない男に着いてきてくれたみんなのおかげだよ」
やたらと謙遜しまくるカザマツリ。メグミも不思議に思う。
どうしてもこの人の顔を見ていると断れなくなるのだ。
今更アニメの、しかもゲキガンガーのアフレコなんてしたいとも思っていなかったのだが、この笑顔でぺこぺこ頭を下げられながら頼まれるとつい頼みを聞いてしまうのだ。
人徳なのか、実に摩訶不思議である。

「んで、なんですか?用事って」
「そうだった。」
危うく本題以外のことで時間をつぶしそうになるところをカザマツリは慌てて軌道修正した。

「実はね、映画の宣伝イベントを今をときめくナデシコ艦隊で行いたいって考えてるんだよ。題して『ナナコさんの一日艦長♪』っていうんだ。」
「ええええええ!本当ですか!?」
マジもマジ、このプロデューサーが辣腕なのはこういう奇想天外なイベントを繰り出して話題づくりをすることにある。

「だめですよ。今ナデシコを仕切っているルリちゃんがその手のことに対してすっごく堅いガードをかけてて、私も自分がパーソナリティーの番組に一回出てもらうのが精一杯だったんですから!」
メグミは過去の汚点を思い出す。以前、ルリを自分の番組に無理矢理出したら手痛いしっぺ返しを食らってしばらく週刊誌に追いかけられるという復讐を食らったのだ。
「まぁまぁ。宇宙軍も火星の後継者達が雲隠れしたんで戦勝ムードも高いし、付け入る隙もいっぱいあるよ。
 なによりあの電子の妖精とメグちゃんが一緒に艦長業をやってるって構図はすごくウケると思うんだ♪」

ダメだ。カザマツリは自分の考えた企画のすばらしさに陶酔し、それがどれだけ実現困難か想像していない。
メグミとてルリがどんな報復をするか想像もできないというのに・・・

「やっぱり無理と思うんですよ・・・。
 それに・・・」
「なに?メグちゃんはやりたくないの?」
「ええ・・・」
「うん〜〜。無理強いしたくはないんだけど・・・
 でも、どうしてもナデシコに入り込みたいんだけどなぁ〜〜」
「え、どういう事ですか?」
カザマツリは少し考え込んで話そうか話すまいか悩んだフリをする。メグミも少しその歯切れの悪い言葉に興味を持ったみたいだ。
「これは極秘なんだけど・・・どうしようかなぁ・・・」
「いえ、聞いちゃいけないことでしたら聞きませんけど・・・」
「まぁメグちゃんならいいか。
 実はね、本当はナデシコ艦隊でテンカワ・アキトの事を取材したいんだよ」
「アキトさんですか!?」

メグミは意外な単語を聞いて大層驚いたのだった。



Nadesico Second Revenge
Chapter26 メグミの一日艦長<前編>



サセボシティ・映画館


テンクウ・ケンはその日映画館に来ていた。
無論、題名は「劇場版ゲキガンガー「ゲキガンガーよ永久に!」」である。
「なんで僕がアニメなんて・・・」
周りで子供達に混じってむさ苦しい大人がいるが、他人から見れば自分もその一員かと思うとため息が出てくる。

事の起こりはさほど難しくない。
火星の後継者達が雲隠れしたこともあり、ナデシコ艦隊は開店休業状態に陥っていた。
この前の西條戦の疲労もあり、今のうちに休暇を取ろう!ということになったのだが・・・
元来ワーカホリック気味なケンは突然手持ちぶさたになって困っていたりする。
彼自身はこの前の西條とアキトの一件でなんとか立ち直ろうとしており、その意味ではなるべく働いていたかったのだが、休めといわれて何をして良いのかわからなくなっていたのだ。

んでそのときナデシコCでの会議の後、ふと立ち寄った食堂にて、シェフのサユリから
「テンクウ少佐、映画はお好きですか?」
と尋ねられて、『うん』と言ったのが運の尽き。
むりやり手渡されたのが映画のチケットであった。
無論、何のチケットかはいうまでもないだろう。
「お願いです!手元にまだ十枚以上余ってるんです!
 助けると思って貰って下さい!!!」
サユリにそこまでお願いされた以上、彼も受け取らざるを得なかった。

ちなみにサユリはホウメイガールズ達からチケットを半ば強引に配られたらしい。
・・・誰の策謀かは察してください。

まぁ、せっかくのチケットだし暇でやることもない・・・ということで寄港したサセボの映画館にやってきた次第である。

「それにしても・・・・」
周りを見回すと結構知った人間がいる。ほとんどは木連関係者であるが、ナデシコクルーも何人かいるようだ。以前ナデシコでもゲキガンガーブームがあったらしい。
しかし、どう考えても超古典「宇宙戦艦ヤ○ト」のパロディーじゃないかといわんばかりのパンフレットのストーリー解説を読むとケンはため息が止まらなかった。

ジリリリリリリ・・・・

開幕のベルが鳴り、劇場が暗くなった。
静かに映画が上映され始めた・・・

ケンは大して期待もせずスクリーンを見つめた。



映画館前


「なんてすばらしい映画だったんだ!!!!!
 特にあのナナコさんのすばらしいこと!!!!!」
木連人の性なのだろうか?
思いっきり感動しまくってケンは劇場から出てきた。

テンクウ・ケン、齢26歳
遅蒔きながらゲキガンガーにハマるのであった・・・(爆)



ナデシコB・事務室


「ありません!」
「こちらも見つかりません!!」
「良く探して下さい!!」
ルリの必死の形相に気圧されてみんなは必死に探していた。
みんな、総出で机の上をひっくり返して「ない!ない!」と繰り返すのをルリは叱咤する。

「あの書類にはナデシコの命運がかかってるんです!!
 絶対に見つけだして破棄します!!」
いつものクールなルリからは決して想像のつかない慌てぶりであった。
「でも・・・一体何の書類なんですか?」
一人が何気なく聞く。

ギロリ!!!!!!!!!!!!!!!

「ひぃぃぃぃぃぃ・・・・・・」
「まずは見つけて下さい!!話はそれからです!!!」
「は、はい・・・・」
そうなのだ。いくら副提督とはいえナデシコC艦長のルリがわざわざナデシコBまで来てこの騒ぎ、普通のルリからは考えられず、みんなもこんな馬鹿馬鹿しいことをしないのだがこの形相で睨まれれば従わざるを得なかった。

「あら、皆さんどうしたんですか?」
そこに帰ってきたのはナデシコBの通信士カザマツリ・コトネであった。
「コトネさん!!!!」
「何ですか、副提督?」
ルリは凄い形相でコトネに近づく。
「あなた書類を知らないですか?テンクウ少佐決済の!!」

コトネは顎に手を当てて少し考える。

・・・・・・・・

「ええ、提督のところに届けましたけど?」
「い、いつ!!」
「えっと〜〜さっき艦長のところにお茶届けにいったら
 『ごめん、これから提督のところに書類を持って行くんだよ』って仰られたので
 『そんな!書類は私が持っていきますので艦長はそこでゆっくりお茶を飲んでいて下さい♪』ってすかさず言ったの♪
 そうしたら艦長は『それは助かるよ、カザマツリ君にはいつも助けられて感謝してるよ』って誉めていただいたので
 私は『そんなことありません』って頬を赤らめて答えたの。
 そしたら艦長は私の手を握って私の瞳をじっと見つめてくれて
 『カザマツリ君は僕の支えだよって』って言ってくれて・・・
 イヤン♪もうなに言わせるんですか、副提督♪
 ・・・・って、副提督?」
一人二役を演じながら身振り手振りついでに身悶えながら言うコトネであったがそこには既にルリの姿はなかった。

「ちぇ・・・・」
もう少し嘘八百を吹聴したかったコトネはちょっと悔しかった。



ナデシコC・提督執務室


「イベントか・・・たまには息抜きも良いでしょう♪
 ハンコ、ハンコっと・・・あった♪
 了承。・・・・もとい承認っと♪」

ポン!

「ユリカさん!!!!それ待った!!!!」
「ほえ?」
いきなり扉を蹴破る勢いで入ってきたのはルリであった。
ルリが部屋の中を見回したときにはFAXの前でルリの登場に唖然とするユリカであった。
ユリカの指先はまさにFAXの送信ボタンを押さんばかりのところで止まっていた。

「それ押しちゃだめです!!!」
「え?」

ポチ!

「あ!!!!!!!!!!!!!」
「押しちゃった。てへ♪」
「てへ♪・・・じゃないでしょう!!!」
ルリは絶叫しながらFAXの前に駆け寄り必死に中止ボタンを押した。
しかし時既に遅く・・・

ピー
『送信は正常終了しました』

機械から発するその無情な声をルリは脱力して聞いた・・・。



しばし後のナデシコC・提督執務室


「何でこんな書類にハンコを押しちゃったんですか!
 しかも私に相談もなく!!!!」
「ルリちゃん・・・そんなこと言ったって・・・」
仁王立ちのルリの怒りの声をユリカは正座して拝聴していた。どっちが提督でどっちが副提督かわかりゃしない。

「ホシノ中佐、そんなに怒らなくても・・・」
「元はといえばテンクウ少佐のせいでしょう!!」
ユリカをフォローしようとしたケンだが、逆にルリに叱咤された。
ちなみにケンはゴートに文字通り首根っこを捕まれて吊されていた。

「だいたい、何でユリカさんはこんな書類にハンコを押しちゃったんですか!
 しかもわざわざFAXまで入れてあげるなんて手回しの良い事を!!!」
「だって〜〜」
再びユリカを追求するルリ
「だってじゃあリません!よく読んだんですか?この申請書を!!」
「ええっと民間人によるナデシコBでの一日艦長イベントでしょ?」
「わかってて何で押したんですか!!」
「いやぁ、人気アイドルを招いてのイベントだもの。クルーの方々に潤いのある艦隊生活を送ってもらおうと・・・」
「この戦争のまっただ中で!機密が漏洩したらどうするつもりなんですか!!」
「いや、火星の後継者さん達もお休みみたいだし、ちょっとぐらいは息抜きしないとみんな窒息しちゃいそうだし・・・」
どこまでも脳天気なユリカに頭を痛めるルリ。

「だいたいこの時期に大したチェックもせずに民間人を招き入れるなんてどういう神経をしてるんですか!!スパイに紛れ込まれたらどうするつもりなんですか!」
「でもでも、信頼できる人だし・・・」
「ええ、確かにこの人気アイドルさんって方はスパイの疑いはないでしょうけど・・・
 この人だから問題があるんでしょ!!」
「なんで?」
ユリカは何が問題なのか全くわかっていないようだ。

「メグミさんですよ!?一日艦長をされる方は!!!!!!!!!!」
ルリはたまらず声を張り上げて申請書のとあるページをユリカに突きつけた。
そこには一日艦長の名前として『メグミ・レイナード』の文字が疑いようもなくデカデカと書いてあった。

「私が今までどれだけ苦労してメグミさんの企画を握りつぶしてきたことか・・・」
ルリはさも悔しそうに切々と訴えた。

この間から何とかナデシコと接触を持とうとしていたメグミをルリは常に事前に察知し却下を食らわせてきたのだ。
宇宙軍のミスマル・コウイチロウ直々にねじ込んでこようとしたのを、コウイチロウ秘蔵の娘の盗撮コレクションの存在をバラすぞと脅して取りやめさせたり、
ネルガル会長経由で脇から滑り込ませようとしたのを、アカツキの女性に対する会社の金の使い込みをエリナにバラすぞと脅して撃破したり
・・・まぁいろいろ激しい水面下での暗闘を戦いきってきたルリであるがさすがに盲点があった。

艦長決裁・・・・
艦長の草案した平常時の艦内行事は提督の承諾さえあればほとんど何でも行って良いのだ。

メグミはルリを介さないように直接テンクウ・ケンにメールを送って企画をねじ込んだのだ。普段のルリなら艦内の書類にほとんど目を通しており、こういった書類が通常のルートを通ってきたなら確実に発見して排除するのだが、こういうウルトラCを使われるとは思ってもいなかった。

「メグちゃんは仲間だよ。何でそんなに怒るの、ルリちゃん?」
ルリはユリカの脳天気ぶりにほとほと呆れた。
何でかわからない?そんなの決まっている!
メグミがナデシコに来たらアキトのことを調べ出すに決まっている!!
ここまで執着してナデシコに入り込もうとしているのだ。アキト争奪戦に参戦する意欲が満々なのは見なくてもわかる!!

「だいたい、誰のためにこんなに苦労してると思ってるんですか・・・」
ルリは脱力して言う
今のアキトは糸の切れた凧だ。ちょっとでも積極的な女性が現れればそっちになびいてしまうかもしれない。
アキトとユリカの幸せを考えればこそ、アキトに悪い虫が付かないように必死に努力しているというのに、当のユリカが全くの無自覚なのだから呆れるのを通り越して涙が出てくる。
それなのに・・・

「ああ♪ひょっとしてルリちゃん、ヤキモチ焼き?」
「ユリカさん#$%?&@!!!!!!!!!!」
図星をつかれて真っ赤になってパニックになるルリ。
「んで!んで!相手は?アキト?テンクウ少佐?」
「違います!違います!違います!違います!違います!違います!」
真っ赤になって否定するルリだが、そんなものはここにいるメンバーは既に承知のことだ。

「ん?何でですか?」
・・・・訂正。テンクウ・ケンは相変わらず鈍いようだ。

「大体、テンクウ少佐はなんでメグミさんの一日艦長なんて企画を採用したりしたんですか!!!」
恥ずかしさを隠すために怒りの矛先をケンにぶつけるルリ。
しかしケンの口から返ってきた答えは意外なモノであった。
「いやぁ、メグミさんのナナコって良いですよね♪」
「はぁ?」
ルリは文字通り目が点となった・・・。



緊急調査団・テンクウ・ケンの自室


ウリバタケ「こちら、現場のウリバタケ・セイヤと」
サブロウタ「タカスギ・サブロウタがお送りします」
ウリバタケ「・・・・んで本当に艦長の部屋に勝手に入っていいのか?ルリルリ。」
ルリ『かまいません。ガサ入れやっちゃって下さい!!』
脱力するウリバタケらにウインドウの中のルリは有無を言わさず頷いた。

ガチャリ・・・・

扉を開けて入る二人・・・・
そこで彼らの見たモノは・・・・

ウリバタケ「おおおおおおおお!!!これは凄い!!」
ケンの部屋はゲキガンガーのアイテムで埋め尽くされていたのだ(爆)

ウリバタケ「おお、復刻版ゲキガンガーTVのDVDが全27話(全7巻)揃ってるぞ!しかもDVD BOX仕様・・・」
サブロウタ「こっちは劇ガンの声優キャストによるTV版新録音バージョン(初回限定)が全巻揃ってますよ・・・」
ウリバタケ「ゲ・・・こいつTVの初版ビデオまで持ってやがる」
ケン『どうしても7巻だけが見つからないんですよね〜〜』

おそるべしコレクター魂・・・
しかしそれだけではなかった。

ウリバタケ「ゲ!こいつサントラを全部持ってるよ」
サブロウタ「こっちにはドラマCDもあります」
ウリバタケ「・・・・・・メグミちゃんのオリジナルベストまであるぜ」
ケン『今度の新譜がなかなか手に入らないんですよね〜〜』

まだまだ掘り出し物は続く・・・

ウリバタケ「ゲ!こいつトレカの第一期シリーズをコンプリしてるぜ・・・」
サブロウタ「特製バインダー付き・・・どうも箱買いしてたみたいですねぇ。」
ウリバタケ「おいおい、トレカを大人買いしちゃまずかろう・・・」
ケン『あははは・・・店員さんにイヤな顔されましたけど・・・』

ウリバタケ「超合金ゲキガンガーリミテッドモデルだぜ・・・」
サブロウタ「ナナコさんのフィギュアもありますよ」
ウリバタケ「ああ、その造型師の作品は競争率高いんだよ。ワンフェスにしか出ない貴重品なんだけど・・・どうやって手に入れたんだ?」
ケン『それ、今度ウチにメグミさんが来るって言ったらサインと引き替えにくれるって作者さん直々に送ってもらったんです♪』

ウリバタケ「こいつ・・・HPを開いてるよ・・・ゲキガンガーのナナコサイトを・・・」
サブロウタ「ゲ!いつの間に100万ヒット・・・」
ウリバタケ「・・・・BBSも結構盛況だねぇ・・・」
ケン『ああ、造型師さんとはそこで知り合ったんですよ』



再びナデシコC・提督執務室


『おい、もっと探すかい?』
「もう結構です。これ以上は怖くて聞くに耐えません・・・」
ウリバタケの質問にルリは脱力して答えた。

「確かなんでメグミさんのイベントを許可したかっていうご質問でしたよね?ホシノ中佐。
 それはですねぇ・・・」
「もういいです。理由は何となくわかりました・・・」
ケンが理由を答えようとしたのをルリが遮った。

「一体いつの間に・・・」
「いやぁ、この前映画を見てきたんですけど、これがなかなか良くって♪」
「え?」

やられた!
敵の狙いは最初からテンクウ・ケンへのピンポイント攻撃だったのだ。
木連人がゲキガンガーに弱いのを知っていて劇場版ゲキガンガーのチケットを旧ナデシコ関係者のツテを最大限に利用して送りつけた。
その上でファンになったケンをメグミが狙い撃ちするという・・・
ルリは敵側にかなりの策士が着いていることをヒシヒシと感じた。

「仕方ありません・・・
 こうなったら水際で食い止める以外・・・」
バン!!!!
「艦長!!!!!!!!!!!!!!!」
「か、カザマツリ軍曹!?」
ルリの声を遮ってドアを蹴破って入ってきたのはもちろんカザマツリ・コトネであった。

コトネ「艦長!!!聞きましたよ!!!
 二次元の女性にハマってしまったんですって!!」
唯我独尊、傍若無人、コトネは部屋に入ってきてズンズンとケンに近づいていった。
ケン「な、何のことですか?」
コトネ「どうしたもこうしたも!
 言って下さればいつでもお相手しましたのに♪
 アニメのヒロインなんて肌の温もりも伝わらないような女性に恋せずに
 生身の女性と恋愛を楽しみましょうよ♪」
そう言ってケンの手をギュッと握るコトネ。

ルリ「コトネさん!!ドサクサに紛れてなんて事するんですか!!」
激怒するルリ
コトネ「あら、副提督。いらっしゃったんですか!」
ルリ「いちゃ悪いですか?それよりもコトネさん、誰の許可を得て提督執務室に入って来るんですか!!!!」
コトネ「緊急事態です。艦長を二次元の女性に取られるかどうかの瀬戸際なんですよ?」
ルリ「そんなことは私がしますから、あなたは下がりなさい!」
コトネ「いいえ、お手を煩わすわけにはまいりませんわ。
 副提督はテンカワさんの事でお忙しそうでしょうから。」
ルリ「うぐぅ・・・・」
痛いところを突かれて絶句するルリ

「あの・・・・これってどうなってるんでしょう・・・」
状況が飲み込めないケンはゴートに尋ねる。
なんて鈍い男なのだと呆れるゴートであった。

二人の睨み合いはしばらく続いた・・・



ナデシコB・ブリッジ


「不毛な争いはやめましょう・・・」
「そうですね・・・まずは共通の敵を阻止しましょう」
戦い疲れた二人はとりあえず共同戦線を結んだ。

なぜか一同はナデシコBに移ってきており、ブリッジに作戦本部を設営していた。

「こうなったら水際で阻止します!
 メグミさんはナデシコBには一歩も足を踏み入れさせはしません!!!」
打倒メグミの鉢巻きを締めたルリが断固として宣言する。
「ルリちゃん・・・なにもそこまでしなくても・・・」
「ユリカさんのせいでしょ!!!!!口出ししないで下さい!!!!!」
「あい・・・・」
諫めようとしたユリカを一撃で撃破するルリ。

「メインデッキ守備班の方、準備はいいですか?」
『は〜〜い、準備OKで〜〜す』
ババーン!!!!!!!!
メインデッキ担当のウリバタケと整備班の面々はやる気なさそうにモップやパイプなどの棒きれを持ってデッキに集合していた。

「第二デッキの方、準備はいいですか?」
『・・・・・・・・・・・・あいよ。いつでもどうぞ・・・』
ズズーン!!!!!!!!
リョーコとヒカル、イズミそれにライオンズシックルの面々もやる気のなさそうに棒きれを持って集合していた。

「ブリッジ直衛の方たち、準備はいいですか?」
「あい・・・」
でろ〜〜ん!!!!!!!
ジュン、ハーリー、フジタも棒きれを持たされてブリッジに入るドアの前に立って外敵の進入を阻止していた。

「ふふふ・・・準備は万端です!
 これでどこから入ってこようと絶対阻止できます。
 さぁメグミさん!入ってこれるものなら入ってみなさい!!!!!!」
ルリは誇らしげにそう宣言する。

『あの〜〜ルリさん・・・』
そうウインドウを送ってきたのはオモイカネであった。
「なんですか、オモイカネ?」
『非常に言いにくいんだけど・・・多分それ無駄になると思う』
「何を言うんですか!?これだけの鉄壁の構え!
 絶対阻止できますよ!」
『でも・・・・』
オモイカネは口ごもる。
それもそのはず・・・・

「あの〜〜もう入っちゃってるんですけど・・・・」
「そうそう、もう入っちゃって・・・・・・・え!?」
ルリは背後から聞こえるその声に驚いた。

どこかで聞いたことのある声
この鼻に抜けるようなブリッ子のようなこの声は

・・・・・・・・・・・・(汗ダラダラ)

嫌な予感がして振り返りたくないルリだが、意を決して振り返るとそこには予想通りの人物がいた。

ルリ「め、メグミさん!!!!!!!!!!!!」
メグミ「おこんばんわ〜〜♪」
ルリ「い、いつの間に!!!!!!!!!!!!」
メグミ「ずっと前から・・・FAX貰った瞬間に速効乗り込みました・・・」
ルリ「あああ・・・・・」
メグミ「いやぁ、いつ気づいてもらえるかってずっと待ってたんですけど・・・」

ルリが敗北を悟った瞬間であった・・・・・・

「ってことでナデシコB一日艦長メグミ・レイナード、10:00着任しました。
 よろしくお願いします。
 うふ♪」
こうして嵐の一日は始まるのであった。

See you next chapter...



ポストスプリクト


いやぁ、やっと書けましたね、メグミのエピソード(笑)
なんか12話ぐらいからメグミを書く書くと言っておきながらなかなか出ませんでしたが、実はこういう登場をするつもりだったという。
これは激闘編の間に挟めませんよね(爆)

しかも今回は筆が暴走して前後編分けるつもりのない話がメグミの登場だけで前半を使い切ったという・・・・悪のりもいいところやん!

え?前回あれだけ盛り上げといていきなりサービスストーリか!ですって?
いえいえ、このお話は思いっきり本道ですよ。
どう本道かはそのうちおいおいわかってきますよ。
例えばやたらと同じ名前の人が多いなぁ〜とかね(笑)

ってことで後半をお楽しみに!
(って既にネタが尽きかけているのに・・・・・)

※本編に出てくるテンクウ・ケンの部屋に関して実在のモデルはいませんので「オレのことか!!!!」とか「筆者の生活ってそうなのね」とか思わないでくださいね(笑)

では!