アバン


まぁ、所詮少数精鋭のナデシコ艦隊が勝とうと考えればハッタリ、イカサマ、ペテンを駆使しなければいけないわけで。
今までならユリカさんのハッタリもそれなりに通用してたんでしょうけれど・・・

次々とハッタリを見破られてどうするんですか?ユリカさん。

ああ、一応このSSってPrincess of White とDC版The Missionの続編ですので
よろしく



戦闘空域


『ヒカルさん、リョーコさん達の援護をお願いします』
「え〜ん。こっちはそれどころじゃないよう〜〜」
戦場に取り残されたリョーコらを助けるべく、ルリはヒカルの部隊に援護を要請したが、ヒカルの答えはそんな情けないものであった。

「助けて欲しいのはこっちの方だよ〜〜」
彼女が率いるライオンズシックル隊もまたバッタの群に囲まれて足止めを食らっていた。数が多い分捌ききれないでいた。

『イズミさんは・・・』
「右に同じ・・・」
ルリは苦笑する。やはりナデシコの周りにもバッタの群が飛び交っている。ユーチャリスから宇宙軍仕様のバッタが飛び出して応戦しているがそれでも限界がある。イズミは味方のバッタをさけつつナデシコに到達してきた敵のバッタを狙撃するのに大忙しだった。



ナデシコC・ブリッジ


「エステバリス隊の損耗率がほとんど限界です!」
ユキナは悲鳴を上げるように報告する。
「ねぇ提督、どうするの?」
ミナトが心細そうにいう。
「困りましたねぇ、これは・・・」
「ここは一か八かシステム掌握をかけるしか・・・」
プロスとゴートが難しい顔をして言う。

一同がルリとユリカを見つめた。
「ユリカさん・・・」
「仕方ないか」
ルリとユリカは溜め息混じりにつぶやいた。



戦闘空域


「ちくしょう!!」
元来猪突猛進、守るより攻める事を好むリョーコがこうもなぶられている状況に耐えられるはずもなかった。だが、精神状態はヘロヘロ、まともな判断力があるはずもなかった。
『スバル中尉、やめなさい!』
「ジャンプ!!」
リョーコのサレナカスタムは短距離ボソンジャンプを行なった。ジャンプアウトした先は敵戦艦のディストーションフィールド内だった。
「これなら守りに徹するもなにもないだろう!!!」

ガッ!!
フィールドランサーごと戦艦に突っ込むリョーコ。
ゴウ!!
戦艦は火を噴き、何とか沈んだ。

「ぐは!!」
ジャンプの反動でリョーコは吐き気をもよおした。
ぎりぎりの精神状態、しかも実戦で慣れないボソンジャンプなどを行えば体にどれだけの反動が来るか想像に難くなかった。
実質上スバル・リョーコの戦闘能力はゼロになったに等しかった。

『中尉!!』
心配するサブロウタの声がウインドウの向こうから聞こえるが、リョーコにはそれどころではなかった。動かない体を鼓舞しながら自分を取り囲むバッタやステルンクーゲルとどう戦おうか、かすれる意識の中で考えていた・・・。



火星の後継者・ヨーロッパ方面軍旗艦・かんなづき


「少数精鋭、それは確かに言葉としては美しい。
 しかし、それは逆に言えば組織に厚みがないと言うことだ。
 戦闘の長期化、あるいは消耗戦においてそれは如実に現れる。
 なぜなら疲れない英雄・・・などというものは存在しないのだから。
 そして英雄に対峙するには100の凡夫で事足りる。」
『しかし、現に我々はナデシコに破れてきましたが』
「まだ、事の本質が見えていないようだな?ヤマウチ中将。」
西條はヤマウチに高説をたれていた。

「我々がかつて負けたのは単純に兵力差の問題だ。
 通常兵器だけ見れば我々は確かに圧倒的な大兵力だ。
 だが奴らはそれを電脳戦のレベルに引きづりおろした。そうすれは兵力差は1対0だ。奴らが勝ったのは単にそれだけの理由なんだよ。」
『それでは・・・』
「電脳戦に対してちゃんと兵力を用意してやれば事足りる。そうすれば後は通常兵力の差だけが問題になる。そして奴らがいかに一騎当千だろうとそれを上回る戦力を用意していれば奴らを消耗させられるのは自明の理。
 だから機械化によってそれが容易に可能になった現代の戦争において英雄が出現しなくなったのだよ」
ヤマウチは事ここに至って西條という人物評を誤っていたことに気づいた。彼が技術屋あがりの頭でっかちな愚者ではなく、現実に沿ったリアリストであるかということを。



ユーチャリス・格納庫


「放せ、エリナ!」
「落ち着きなさい、アキト!!」
リョーコ達エステバリス隊の苦境を見かねて飛び出したアキトをエリナが必死に押さえていた。

「黙ってみていられるか!」
「今のあなたに何が出来るの。スバル中尉の二の舞になるのがオチよ!」
アキトはナノマシーンのスタンピード直後とあって精神的な疲弊具合で行けばリョーコといい勝負だ。その彼が戦場に出たところで何も出来はしないだろう。

「クソ!!」
ドン!!
何もできない歯がゆさに、壁に拳を打ち付けることしかできなかった。



戦闘空域


「ケン艦長、中尉を!」
『わかってます!』
必死に群がるバッタを蹴散らし、遠巻きに砲撃を加えるだけのステルンクーゲル部隊を牽制しながらサレナカスタムのリョーコ機に近づこうとするテンクウ・ケンとサブロウタであったが、それは敵の部隊の巧妙な連携によって阻まれていった。
ボソンジャンプして近づく・・・という方法もあったが、それを行なえば今度はサブロウタ達が同じように戦闘力を失う。

 リョーコのサレナカスタムは敵の集中放火を浴びていた。何とかサレナの強固なディストーションフィールドにて防いでいたが、精神状態が朦朧としたリョーコにとって避けることもままならないほどであった。こうなれば後は時間の問題だった。
『危険!危険!』
『フィールド負荷限界!』
サレナのコックピットには各機関がレッドゾーンを警告するアラームが鳴りまくっていた。
『中尉、ジャンプで離脱してください!』
サブロウタの叫びがコックピットに響いたが既にリョーコにはそれを受け止めるだけの余裕はなかった。もっとも聞こえていたとしてもジャンプするだけの精神力が残っていたか疑問だったが。

「ああ、ここまでなのかなぁ・・・」
リョーコは不思議とサバサバした気分でいた。うるさいはずのアラームが耳に心地よい。
彼女は自分がおかしくなってしまったのかと思っていた。
なぜならこの期に及んで自分がジタバタしていないからだ。
死を覚悟したからか?
それとも死の感覚が麻痺したからか?
多分どれとも違うかもしれない。

笑われるかもしれないが、彼女はこの期に及んでも自分が助かるんじゃないかと信じていたのだ。
あのユリカとルリが何とかしてくれる。
そう信じていたのだ。

だってほら、白い天使が助けに来てくれたのだから・・・



Nadesico Second Revenge

Chapter15 白百合再び



戦闘空域


 戦場では騒然となっていた。
なぜならサレナカスタムのリョーコ機がいきなり『消えた』のだ。
少し遅れて各オペレータがボース粒子を戦場で検出したのを告げ始めた。
そして戦場のあちこちで火花が巻きあがり始めていた。

「どうした!!」
「わかりません!何者かがボソンジャンプによって強襲してきております!!」
「なに!!」

そう、かつて火星の後継者達が行ったボソンジャンプによるゼロ距離攻撃である。しかも敵は一機のはず。なぜなら火の手が上がるのが同時に一ヶ所しかないからだ。攻撃の瞬間にまたジャンプを行って姿を現さなかった。

しかしこの手法には非常に困難なはずである。ジャンプの精度が必要なのとレーダ範囲外からでないとジャンプアウトポイントを容易に探られてしまうからである。
そしてこんな芸当はB級ジャンパーには出来ようはずもなかった。

やがてその謎の機動兵器は脅しが済んだとばかりに姿を現した。
天使の翼をいただいた白き機動兵器が・・・



ナデシコB周囲


ヒカル「鳥だ!」
イズミ「飛行機だ」
ウリバタケ『ガ○チ○マンだ!!』

『ブブー!違います』
無責任に盛り上がる彼らの前に不思議なウインドウが現れてやんわりと否定した。



火星の後継者・ヨーロッパ方面軍旗艦・かんなづき


「何だ!あの機動兵器は!!」
恐ろしいほどのスピードで白い軌跡を描くその機動兵器が通るところ、激しい爆発が巻き起こった。

「防御できません!うわぁ!!!」
また新たに火の玉がわき上がる。

その機動兵器は恐ろしいまでの機動性、運動性を駆使して敵の間を駆け抜けていった。そして両腕に装備されているハンドカノンを放つとバッタは言うに及ばずステルンクーゲルまでも易々とフィールドごと打ち抜かれていた。
その白き天使には下手な防御など何の役にも立たなかったのだ。

「慌てず防御に徹しろ!それと敵の識別とデータを送れ」
あまり成功しているとは言い難い西條の指示であるが、それ以外にしようがなかった。

そしてあがってきた結果に彼は驚く。
「地球連合宇宙軍所属・・・・ホワイトサレナだと!?」
それが謎の機動兵器の名前だった。



ユーチャリス・ブリッジ


「ルリちゃん!?」
別の可能性の世界で彼女がその機体を愛機にしていた事を知ってるアキトは思わず叫んだ。



ナデシコB・格納庫


「誰だ!誰だ!誰だ〜♪」
「班長、そんな大昔のアニメ主題歌なんて歌ってないで早くリョーコちゃんの機体を回収するの手伝って下さいよ〜〜」
ホワイトサレナを見て浮かれてるウリバタケをよそに整備班の面々はリョーコのサレナカスタムを回収するのに大わらわだった。リョーコ機は先ほどジャンプアウトしたホワイトサレナがナデシコBのデッキにおいていったのだ。

「白い翼の〜♪」
ウリバタケ君、JASRACに許可もらっていないんだからそのぐらいにしておいて下さいね?



戦闘空域


その白い機体はまさに縦横無尽に戦場を駆け回った。
「バカな、信じられん!」
そのつぶやきが示すとおりにその機体は理不尽な機動性と運動性を誇っていた。
ジグザグな飛行パターン、急発進、急停止、トップ加速からの全く勢いを殺さないUターン。
おおよそ有人の機動兵器が行えば搭乗しているパイロットが失神すること請け合いの機動力と運動性であった。

「バカな、あれではパイロットが保たないぞ。Gキャンセラーはまだ機動兵器に組み込めないはず。
 それとも無人機か?いや、あれほど高度な戦闘を行えるほどのAIはまだ実現できないはずだ。それに・・・」
西條は敵機の構造を探るのに躍起になっていた。



ナデシコC・ブリッジ


「ユーチャリスより通信。
 アキトさんです」
ユキナがアキトからの通信を繋げた。

「やっほーアキト!」
ユリカは脳天気にアキトが通信してきたのを喜んでいたが、アキトの形相は憤怒そのものだった。
『おい、誰だ!ルリちゃんをホワイト・サレナに乗せたのは!!』
だが、ブリッジクルーは一同きょとんとした表情をした。
『ホワイトサレナが生身の人間に乗れるような代物じゃないのを知っててルリちゃんを出撃させたのか!』
アキトは以前、ホワイトサレナのテストを行っていたことがある。その時にとてもないが人間に乗れた代物ではないことがわかっていた。
怒るのは無理もない。
しかし・・・

「アキトさん、なにいってるんですか?」
アキトはユキナの意外なリアクションに先ほどの威勢を失った。

『おい、だから・・・』
「私がどうかしましたか?」
『え?ルリちゃん!?』
ルリはオペレータシートから一歩も動かずにブイサインをして見せた。アキトが驚くのも無理はない。

『だって、あれは昔ルリちゃんが乗ってて・・・ええ?
 じゃあの機体には誰が乗ってるんだ!?』
「誰も乗ってませんよ」
『ええ?』
アキトの疑問にルリは事も無げに答えて見せた。



ユーチャリス・格納庫


「はいはい、アキト君の疑問はもっともね。
 それではその疑問に初代お姉さんのイネス・フレサンジュが・・・」
「説明しましょう!」
久々の出番で張り切るイネスを差し置いて、『二代目お姉さん代理』の名札をつけたサリナ・キンジョウ・ウォンがしゃしゃり出てきたのであった!

「ちょっとナニよあなた。なぜなにナデシコのお姉さんは私よ!」
「知らないわよ。私はホシノ・ルリから二代目代理を襲名したのよ!」
「なんですって!本当なの?ルリちゃん!!」
怒るイネス。ちょっと怖い。

『・・・私が忙しいのでお願いしました。』
「な・・・」
「それにホワイトサレナといえばこのサリナ様をおいて他にいないでしょ?」
絶句するイネスを余所にサリナはふんぞり返った。
「初代お姉さんがいるのに代理の出る幕じゃないわよ!」
「じゃ、あなたはホワイトサレナのコンセプトを説明できるの?
 設計思想は?
 どう?」
「ぐ・・・」
睨み合いを続ける二人。

『解説するのはかまいませんから仲良くしてください・・・』
ルリがジド目で睨んだので、二人は渋々従ったのだった。



元祖なぜなにナデシコ


皆さん、お久しぶりイネス・フレサンジュです。
火星会戦終了後、ネルガルはエステバリスの量産化の他に極秘裏に二つのプロジェクトを進めておりました。
ひとつは高機動戦フレーム開発で
もう一つはボソンジャンプ戦フレームの開発でした。

高機動戦フレームですが、一旦完成の域に達したゼロG戦フレームが会戦後期にかなり見劣りするようになったために次世代エステバリスとしてもう一度各部のバランスを見直そうという動きが発生しました。クリムゾングループが開発しているステルンクーゲルが思いのほか性能が良かったためです。
ここで思い切った設計思想の変更を加えたのがサリナ・キンジョウ・ウォン嬢で、この時提案されたのが後のホワイトサレナの原形になるのですが、これは諸般の事情により一度頓挫します。
それはより注力しなければいけないプロダクトが浮上してしまったからです。

それがボソンジャンプ戦フレームです。次世代の機動兵器にボソンジャンプの能力が必須となっていた状況では仕方ないでしょう。
この時開発された機体が後のブラックサレナのベース機となるテンカワspcと呼ばれる機体です。結局時間的な制約もあり、この機体を量産型フレームにブラッシュアップしただけでアルストロメリアとしてロールアップすることとなりました。

しかし、皮肉なもので一度は頓挫した高機動戦フレームに対するリクエストは別の所から現われました。テンカワ・アキトの救出と火星の後継者の暗殺部隊が使用する夜天光の暗躍がそれです。
その時点でたとえアルストロメリアが量産されても夜天光に対抗できるだけの性能がないことは明らかになってしまっていました。このためネルガルは極秘裏にエステバリスの戦闘力強化に乗り出します。
ここで2案2機種がコンペに参加します。
一つは従来のエステバリスに追加装甲を施すことで強化するブラックサレナ
もう一つは一度は頓挫し、その後ワンマンオペレーション用に設計指針を変えたホワイトサレナでした。

こういえば聞こえは良いのですが、内情はかなり行き当りばったりのようでした。
ブラックサレナのほうは時間的制約の中にて夜天光と対戦しながら対処療法的に各パーツを強化するしかなく、ホワイトサレナのほうはナデシコフリート構想に組み込むべく無人機仕様となったので徹底的な高機動性を追求した設計に移行していたのです。

結局、先進性はホワイトサレナの方が優位ながらもあまりの高性能と特殊な操縦性によりブラックサレナの方が候補機として採用されました。もっともテストパイロットの黒百合(テンカワ・アキト)がブラックサレナをチョイスしたからというのが実情だったそうですが。(Princess of White Chapter6を参照のこと)
ブラックサレナの商品化が決定したために、ホワイトサレナの開発は一時的に凍結されました。皮肉なことに両者ともサリナ嬢が手がけていたためにです。
その後、ノーマルサレナの量産に目処がついた後に、テンカワ提督とホシノ中佐がホワイトサレナの完成を要求されたのはご承知のとおりです。

『はい3分経過です。次サリナさん、どうぞ。』

え?もう終わりなの!!



本家なぜなにナデシコ


皆さん、初めまして。サリナ・キンジョウ・ウォンです。
ホワイトサレナの特徴はPrincess of Whiteを読んだ方は知ってると思うから省略するわね?
(同じくPrincess of White Chapter6を参照のこと)

まずコンペに落ちてしまったのは仕方のないことだったわ。
だって無人機用に機体性能を調整していたのに急遽有人機に変更したもんだから、乗れるパイロットがいなかったの。決して性能が悪かったわけじゃないのよ。
結局当初のとおり無人機に仕様変更したわけだけれどそこからが大変だったわ。

無人機をコントロールする方法は2種類あります。
一つは自立式のAIを機体に搭載する方法、
もう一つは遠隔でコントロールする方法です。
さて、前者の方法ですが無人機の代名詞、バッタのAIを見てもこれ以上高性能を求めるのは不可能であり、機体の制動などは出来ても戦場での臨機応変な対応が無理なのはChapter7を見ても明らかなとおりです。
でとてもではないがホワイトサレナのコントローラには選べませんでした。

そして後者の方法ですが、これは外部からコントロールする際に発生するにあまりにも大量の制御データが送受信する帯域の確保が困難であり、さらにどうしてもタイムラグが発生してしまい、コンマ何秒を争う戦場において致命的な欠陥となるかはお分かりでしょう?

それらを一気に解決したのが半自立半遠隔操作を行う手段でした。
具体的にはオモイカネのサブセットを搭載したアサルトピットを使用することにより瞬間的な自立動作をさせ、戦略戦術的な操作は遠隔によりワンマンオペレーション艦のオペレータが行うこととなります。
これにより有人機について回っていた性能的な束縛から離れることになったの。
もちろんアサルトピットを通常のものに変えれば有人でも操縦可能よ。・・・乗りこなせるかどうかは知らないけど。

というようにホワイトサレナは非常にフレキシブルな運用が可能となっているの。将来的には一人のオペレータにより十数機の機動兵器をコントロールできるようになり・・・

『はい3分経過です。サリナさん、ご苦労様。』

うそ、ちょっとまだ話したりないわよ!!



ナデシコC・ブリッジ


「ということで、私がここから遠隔操作してるんですよ。
 んで向こうでホワイトサレナを操縦しているのがオモイカネJrです」
『よろしくお願いします。by.Jr』
ルリの紹介で律儀にオモイカネJrのウインドウがお辞儀(?)した。先ほどから各員の勝手な発言にツッコミを入れていたのは彼だった。
『ちょっと待て、それにしたって無人機がどうやってボソンジャンプを・・・』
「あたしだよん!」
アキトの戸惑いの問いにユリカが脳天気に答えた。
いつの間にかユリカのシートにIFS用のコンソールが生えていた。
「つまりあのホワイトサレナの基本操縦は私が、砲手とジャンプのイメージコントロールをユリカさんが行ってるんですよ。」
『ぐ!』
ルリとユリカは不適に微笑んで見せ、アキトを絶句させた。

「さぁ、ルリちゃんいくよ!後はバッタさん達を片づけるのだぁ!」
「はい!」
ユリカとルリの顔や髪の毛はIFSの活発な働きによりほのかに輝いていた・・・。



戦闘空域


ホワイトサレナのおかげで敵の包囲を脱出できたケンやサブロウタ、それにヒカル達は戦場を翔る白い軌跡をまぶしく眺めていた。
ホワイトサレナはディストーションフィールドを最大出力にし、最大加速を行っていた。

ケン「あれはゲキガン・フレア!?」
『ブブー』
ヒカル「V・M○Xでしょう!」
『ブブー』
イネス「いや超○磁スピンよね」
『ブブー・・・イネスさん、古すぎます』

ウリバタケ「やっぱり科学忍法○の鳥だ!!」
『ブブブブー!!!ウリバタケさん、いい加減にガ○チ○マンから離れて下さい』
それぞれの勘違いをオモイカネJrはウインドウにて律儀に否定していった。



ナデシコC・ブリッジ


「いくぞ!ユリカ・ラブラブ・ストライクを!」
「ユリカさん、名前はルリルリ・エクセレント・ハレーションに決めたはずですよ?」
「え〜〜こっちの方がラブリーだよ?」
「それでは優雅さにかけます。」
『どっちだってセンスないよ・・・』
と一同の心のツッコミを無視してルリとユリカは言い合った。

「「「「「ジーーーーーーー」」」」」
「「とにかくアタックです!!」」
周囲の視線でやっと不毛な言い争いに気がついたのか、二人は何事もなかったかのように攻撃を始めた。



戦闘空域


ホワイトサレナは虹色の光に包まれて戦場を駆けめぐった。戦艦並のディストーションフィールドが超高機動にて移動する。その前に立ちはだかるバッタがどれほど強化されていようともそんなものに何の意味もなかった。
まるでダンプカーがアリを踏みつぶすかのごとく、ホワイトサレナの通った後には何も残らなかった。

この時点で既に勝敗は決した。
火星の後継者側はこれ以上の戦闘維持は無理と判断して戦線の縮小と撤退の準備を始めた。そしてナデシコ艦隊側も結局ホワイトサレナしか稼働できる機動兵器がなかったのでそれ以上の深追いはしなかった。

こうして最初の大規模な正面衝突は両者痛み分けの形で終わる。
ナデシコ側は持久戦の能力不足を露呈したことを、
火星の後継者側はホワイトサレナに対するトラウマを残したことを
どちら側にも大きな課題を残した戦闘であった。
だが、これは第三次火星会戦のほ序盤戦のほんの応酬にしかすぎなかったのだ。



ナデシコC・ブリッジ


「それにしてもどうして一番最初にホワイトサレナを出してくださらなかったんです?
 そうすればあそこまで苦労することはなかったんですよ?」
サブロウタは思わずルリに愚痴をたれる。他のパイロットたちのウインドウも同様にうなずいた。
『それは俺も聞きたいな?』
アキトも同様にユリカとルリを睨み付けた。

「だってアキトを驚かせたかったから!」
「「「「「え?」」」」」
「冗談ですよ。アハハハハハハハ・・・・・」
仰天の一同にあわてて自身の発言を取り消すユリカ。
ルリが咳払いをして彼女の代わりに言い訳を述べた。

「仕方がなかったんですよ。だってホワイトサレナはナデシコ艦隊最大のハッタリだったんですから」
「「「「「ハッタリ!?」」」」」
『それってつまり・・・』
勘のいいアキトはさすがに気がついたようだ。
「その通りです。現状の技術ではホワイトサレナを遠隔操作するのに私ですら処理能力が足りず、ユリカさんの力を借りないと動かせないんです。その間、システム掌握はおろか艦隊の運営すらままならないんです。
 そうですよね、サリナさん?」
『悔しいけれど・・・その通りよ』
サリナは渋々同意する。

「じゃぁホワイトサレナが出撃する時って・・・」
ユキナが恐る恐る聞く。
「ええ、私やユリカさんがシステム掌握や艦隊運営を放棄したと思ってください。」
「「「「「いやぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」
一同は事の次第を理解して絶叫したのはいうまでもない。

See you next chapter...



ポストスプリクト


バトル第一弾はとりあえずこんな感じでした。どうでしょう?
それにしても今回のお話はストーリーの前半と後半でえらくタッチが変わっております。
前半あれだけシリアスに盛り上げておいて後半はアニパロで落とすかお前、ってなかんじで済みません。一応計算ずくでした。
(私信モード:『波動砲』は使えませんでしたが『○の鳥』は先に使わせていただきました > Enopiさん)

一応ホワイトサレナが登場するのは当初の予定通りです。いろいろ前フリをやっていたのですが気づかれましたでしょうか?
特にChapter10でのエステバリスの訓練云々はこの回のお話を前提にしてのものでした。

次回は少しおちゃらけた内容になるかと思います。

では、次回まで

Special Thanks!!
・みゅとす様
・kakikaki 様