アバン


人の今を縛る過去
深き溝はこちら側の人と向こう側の人を隔てる壁
思い出という名の偶像は、過去と現実の境を見えなくしていた。

昔の仲間の苦悩を背負ってやれると思い上がった傲慢を、現実という名のナイフが切り刻む。

だからもう一度考えてみよう。自分の今の立つべき場所を。
その上で出来ることをすればいい。

ああ、一応このSSってPrincess of White とDC版The Missionの続編ですので
よろしく



ナデシコC・提督執務室


「太平洋上空にてナデシコ艦隊は敵火星の後継者と思われる小部隊と遭遇。
 即時戦闘を開始し、エステバリス部隊を投入。しかし隊長スバル・リョーコ中尉、タカスギ・サブロウタ大尉両名を筆頭に精細さを欠き、戦線は膠着状態に陥った。
 テンカワ提督の判断によりマキビ・ハリ少尉によるシステム掌握を実施、敵を拿捕し、本部に引き渡した。
 以上です」
「「はぁ〜〜〜」」
ジュンの読み上げた報告書を聞いてユリカとルリは深くため息をついた。

「済みません。私が軽率でした。」
「気にしないで。」
今回の戦闘にてエステバリス部隊がボロボロだったのは理由がある。
先日のテンカワ・アキトとエステバリスパイロットとの模擬戦でのことだ。5人がかりでアキトに戦いを挑んで、秒殺されて帰ってくればプライドもズタズタになろう。
アキトと自分の能力差に悩むリョーコの為に行ったことであるが、完全に裏目に出た。

申し訳なさそうにうなだれるケンをユリカは気休めにしかならないと知りつつも免罪した。

「先のバッタの待ち伏せ事件の時からエステバリス部隊に何らかのテコ入れが必要なのはわかっていたんです。もっと私たちが早めに行動していればこんな事には・・・」
ルリが恐縮そうにいう。

「ごめんね、アキト。あなたは私の為に一人悪役になってそのことを教えてくれたんだよね!」
一人場違いに盛り上がるユリカ。
『いや、何故そこで自分の為だって言い切れるかなぁ・・・』と一同は心の中でツッこんだ。

ともかく先のバッタ襲撃事件くらいはアキトに頼らず、エステバリス隊だけで排除できなければいけない。
ユーチャリスはその役割上、テンカワ・アキト個人の裁量にて遊撃及び索敵を担当することになる。時には長期間の単独行動をする場合があるし、ユリカ自身そういう作戦を必要とする場合がある。
だが、今のままではアキトはナデシコCの護衛から離れられないのだ。

「ルリちゃん、ちょっと早いけどやる?」
「そうですね。」
ユリカはため息混じりに訪ねた。ルリは苦笑して同意した。
「私はイネスさんの方を当たるわ」
「お願いします。私はサリナさんの方を当たりますね。」
「何をされるんですか?」
ケンが二人に恐る恐る尋ねる。
「アキトにばかり憎まれ役をしてもらうわけにはいきませんので」
二人はちょっと苦笑いしながらもウインクして見せた。



Nadesico Second Revenge

Chapter9 憎まれ役



ナデシコB・医療室


「ちわ〜〜、イネスさんいらっしゃいます?」
「あら提督、珍しい。健康優良児のあなたがケガ?」
愛想をふりまきながら医療室に入ってくるユリカをイネスはイヤミったらしく迎えた。

「あはは、ケガなんかしてませんよ。いやだなぁ、イネスさん・・・」
「そうね。遺跡組織すらあなたには後遺症の一つも負わせられなかったんですから。」
「・・・イネスさん、それって『何とかは風邪を引かない』みたいでうれしくないんですけど・・・」
その方が悲劇のヒロインっぽいのだが、本当に後遺症でもあったら笑い事じゃすまない。

「ま、イヤミの一つも言わせて。そういうニヤけた顔をして私のところに来る時ってあなたはいっつも厄介ごとしか持ってこないのよ。」
「あははは・・・・わかります?」
「伊達にカウンセリングなんかやってないわよ。」
「お見逸れしました・・・・」

少し話しづらくなったユリカはふと何気なくイネスの机を見る。
「何ですか、イネスさん。その机の記号の羅列は?」
「ああ、これ?これの解析データ」
そういってイネスは小さなプレートを取り出した。ユリカには見覚えがあった。
「そのプレートって確か・・・」
「そう、古代火星人が幼いアイちゃんにくれた謎のプレートよ」
「それまだあったんですか?」

ガク!!ずっこけるイネス。

「提督、あのねぇ!」
「あははは、冗談です。でもそれまだ解析されてなかったんですか?」
「ん、まぁ火星の後継者騒ぎのせいで頓挫してたのよ」
「それじゃ、なんでまた解析しようと?」
ユリカが不思議そうに訪ねる。

「そりゃ、自分が何を託されたのか知りたいのもあるけど・・・一番はアキト君かな」
「アキトの?五感がダメになってるってあれですか?」
「ええ、ラピスちゃんのサポートで普通に暮らせてるけど出来れば元に戻したいじゃない?でも、現代のナノマシーン技術だとかなり難しいの。」
「それで古代のプレートを調べればってことですか?」
「早い話がそうね。」
とたんに目を輝き出させるユリカ。

「で!で!どこまで進んでるんですか!もう解析が終わったんですか!?」
「まだまだよ。」
「んじゃ、ルリちゃんとオモイカネにも協力してもらいましょう。あの子たちの力を借りればあっという間に終わりますよ!
 これでアキトの五感が治れば何の憂いもなくアキトは帰ってこれる。
 うん、すぐやりましょう!今すぐやりましょう!
 早速ルリちゃんに連絡をとって・・・」
「止めなさい、提督!!」
一人盛り上がるユリカを慌ててイネスが止めた。

「何故ですか?善は急げっていいますけど・・・」
「あのねぇ、いくらオモイカネを使ったってすぐには解読出来ないわよ。
 今は単語を構成する母音と子音そして文字の要素を丹念に拾上げている所なの。
 どちらかと言えば俳句や和歌を創るぐらいの芸術的センスが必要なのよ。」
「・・・つまり、コンピュータでえいやぁって出来る物じゃないって事ですね?」
「そういうこと。本当はプレートに刻まれている文字情報とおぼしきものだけだと正確さに欠けるので対比する資料として火星極冠遺跡の情報が欲しかったんだけど・・・」
「ああ、南雲さんの反乱のときにイネスさんが火星にいたのはそういう理由だったんですか。」
「早い話がね。でもまぁ、もう少ししたら何とか言語としての体裁がわかりだすから。
 ルリちゃんの出番があったとしてもその後ね。」
イネスの説明を聞いて心底残念そうにするユリカ。

「・・・今すぐってワケにはいかないのか・・・」
「それにこれは私の道楽でやっている事だからあまり公にしないで。特にルリちゃんには」
「なぜですか?」
「期待させといて実は大したモノじゃないとわかったらどうするの?
 『落ち着いて行き先をイメージしましょう』みたいな標語しか書かれていなかったとしたら?。
 がっかりするわよ、ルリちゃん。」
「う、そ、そうですね・・・」
未だ諦めきれないのか物欲しそうに眺めるユリカを見て苦笑するイネス。

「で?本題は何なの?」
「おお、そうでした。実は・・・」
ユリカは事の次第を話し始めた・・・。



数日後・ナデシコB


昼休みが終わって格納庫に戻ってきたウリバタケが目の当たりにしたモノは5つの巨大なコンテナだった。
「なんだ?これ?」
「こら、そこ勝手に触らない!!」
黄色い声がウリバタケを制した。
「ゲ!メカフェチ女・・・」
「ご挨拶ねぇ。ちゃんとサリナって呼んで下さる?」
そう、コンテナと共に現われたのはサリナ・キンジョウ・ウォンであった。

「なんだってアンタがここにいるんだよ。それにこの荷物はなんなんだ?」
「私はホシノ・ルリに頼まれたモノを届けに来ただけよ」
「ルリルリに・・・?」
「そうよ。ったく、人を急かすだけ急かすから。
 それでなくても数少ない初期ロットから一番性能のいい奴5つも奪い取ってきたのよ?
 おかげで他部署からは非難轟々だったわ。
 ま、どうせ全ての苦情は姉さんのところにいくでしょうけど」
「・・・もしもし?」
一方的に話し始めるサリナに戸惑うウリバタケ。

「さすがにこの期間で5機を組み上げるのは大変だわ。それにクソ面白くもない作業だし。
 大体、何でマスプロ用にデチューンした機体をわざわざチューンアップしなきゃならないの?
 設計者として、やってて虚しくなるわ。
 んな面倒くさい事しなくても黒い奴を使えばいいのに・・・」
「・・・だからさぁ・・・」
「ああ、一応一通りの動作確認しておいたから、微調整はあなたでやって。
 そんなところまでやってられますか。
 ま、ジャンプ装置も本来はオプションなんだけどオマケで標準装備しておいたわよ。
 ホシノ・ルリのリクエスト通りに。
 後、色は塗ってないから好きなのを塗って。
 ただし黒と白はだめよ。あれ予約色だから」
「・・・人の話を聞いてる?」
「まぁ、唯一彼女に感謝しているのは白い奴の予算を復活してくれた事よね。黒いの量産するよりかよっぽど意義があることだわ。」
「・・・っておい!」
「だから何よ」
まるでイネスの様に説明しまくるサリナをウリバタケはようやく止めた。

「あのコンテナの中身って・・・まさか・・・」
恐る恐る尋ねるウリバタケにサリナは自信満面で答えた。
「そうよ。ボソンジャンプ戦フレーム『サレナ』シリーズ
 そのバリエーションのなかの一つ、追加装甲タイプの試作機『ブラックサレナ』
 そしてその量産型バージョン『ノーマルサレナ』
 まぁ、今回持ってきたのはさしずめ『サレナカスタム』って所かしら?」
「ジャンプ戦っておい・・・」
届け物が5機、誰が使うかを正確に悟ったウリバタケはその意味を理解して絶句した。



ナデシコB・医療室


「なんだよ、ドクター。用って」
「まぁまぁ、慌てないで」
『提督も人を憎まれ役に引き込むんだから・・・』
イネスはリョーコら三人娘を前に少し気が重かったがユリカから頼まれた用件を伝えた。



ナデシコB・格納庫


「ちーっす。あれ?ここにいると思ったのに・・・スバル中尉達は?」
サブロウタがなにげなく立ち寄った格納庫でウリバタケに尋ねた。
「ああ、イネス女史に呼ばれてったぞ。」
「へぇ・・・ってなんです?このでっかいコンテナは?」
「あれだよ。」
ウリバタケはやっと荷解きし終えた一機を指差した。

「・・・あれってまさか」
「そう、そのまさか」
サブロウタはその機体に見覚えがあった。色こそ黒くないもののシルエットといい、大きさといい、細部は異なるがあの見知った機体だった。
「ブラックサレナ!?」
「の量産品。このコンテナ全部がそう。まったく余計な作業増やしやがって。」
「3、4・・・5機も?誰が使うんですが?」
「決まってるだろ?」
ウリバタケは当然のごとくサブロウタを指差す。その後、赤と黄色と緑とそして金色のエステバリスを指差す。

「・・・ひょっとしてこれって・・・」
「ボソンジャンプだろ?出来るさ。
 そう出来るように調整されて送ってきたんだ」
「オレやテンクウ艦長はともかく・・・まさかスバル中尉達が呼ばれた理由って」
「・・・多分な。」
サブロウタはウリバタケの言葉の理由を正確に理解した。
彼女と自分の相違点・・・B級ジャンパーか否か・・・



再びナデシコB・医療室


「ちょっとドクター!どういうつもりなんですか!!」
慌ててサブロウタは医療室にすっ飛んできた。そこには少し唖然としながらもイネスの説明を聞き終えたリョーコとヒカル、イズミらがいた。

「どうしたの?」
「どうしたじゃないでしょう。彼女たちにジャンパー用のDNA手術を施すんでしょ?」
イネスに食ってかかるサブロウタ。

「その意向を伝えただけよ。実行するかは彼女たちの意志次第よ。」
「正気ですか?」
「一応彼女たちのDNAを調べてある。十分DNA手術に耐えられるわ。B級ジャンパーになれる可能性は高いわよ」
「危険過ぎます!!」
尚もサブロウタは訴えた。

DNAを改造してB級ジャンパーになる。
言葉にすれば簡単だが、それは体を一から作り替える事に等しい。それがどれほど危険な事かわかるだろうか?
危険なだけではない。一番怖いのは人々の偏見だ。
優人創出計画が国是だった木連ならいざ知らず、地球連合ではIFSですら抵抗感が強い。
ましてや多くの人々のB級ジャンパーに対する感想はこうだ。
『少佐、改造人間?』
これはルリに対する子供の感想であったが、多くの人々の意識とさほど変わりない。

「承知のうえよ。」
「イネス博士の独断ですか?ホシノ艦長は・・・テンカワ提督はご承知なのですか。」
「承知も何も二人から頼まれたのよ」
「本当ですか!!」
サブロウタはその言葉にショックを受けた。あの二人が仲間にそんなことをするとは思いもしなかったからだ。



ナデシコC・提督室前


「やめろって!サブロウタ!」
「だって中尉!提督から真意を確かめなきゃ!!」
「別に私達は気にしてないんだから」
「そうそう」
怒り心頭で提督室に殴り込みしようとするサブロウタを必死に引きとめようとする三人娘達だが、そこは元優人部隊のサブロウタの事、引きずられるままに提督室まで来てしまった。

サブロウタが扉を開けようとしたその時、提督室から男性の激しい怒鳴り声が聞こえてきた。
『ユリカ、どういうつもりだ!!』
・・・テンカワ・アキトの声だった。
4人は息を潜めてドアに耳をそばだてた・・・。



ナデシコC・提督室


来訪者を喜んで迎えいれようとしたユリカだか、アキトはすげなく頭を叩いた。ルリが傍で見ていてかすかに笑った。
「それよりリョーコちゃん達をジャンパーにするって本当か!」
「あや、アキトその話どこで聞きつけたの?」
「エリナだ。『ノーマルサレナ』の件で愚痴をこぼしていた。
 それより本当なのか?」
「うん、本当だよ」
「お前は自分の言っている意味がわかっているのか!」
「うん」
普通の人なら一発で怯む怒気をユリカは平然と受け流した。

「これからボソンジャンプ可能な機動兵器が続々と登場します。
 そうなった時、リョーコさん達をあの『新人さん』みたいにしない為に必要なんです」
ルリはそう言う。
それは初めてジンタイプとナデシコが戦闘した時、ボソンジャンプに巻き込まれて行方不明になった新入りの女性パイロットの事だ。
外で盗み聞きしていた一同はそのことを思い出した。

「それにボソンジャンプ搭載の機動兵器が大勢を占めた時点でリョーコさん達のパイロットとしての価値はなくなります。」
「その方がいいかもしれん」
「どうして?」
ルリは尋ねる。アキトは呻く様に言う。

「彼女達はオレやユリカを手助けに来た程度のつもりなんだ。
 でもジャンパーにするということは彼女達本来の日常を破壊し、『戦争の寵児』として戦場に縛りつける事に他ならない。
 オレや君達の様にだ!」
アキトもユリカもルリも戦場から離れた日常を手に入れようとした。だが結局はボソンジャンプの呪縛から逃れられなかった。彼らは再び戦場に舞い戻り、未だ逃れられない。

「大丈夫だよ。」
ユリカは確信したように答える
「何が大丈夫だ!
 ジャンパーで何か幸福な事があったか!
 オレも!お前も!ルリちゃんも!!」
アキトは思い出す。火星の後継者に襲われた時の惨劇を。
そしてルリが人々から電子の妖精と誉めそやされながらも一方では改造人間と恐れられているのも。

「だって、ボソンジャンプがあったから私達はここでこうして生きてられるのよ。
 こうして笑ってお話し出来るだけで十分幸福でしょ?」
ユリカは思い出す。アキトが火星で死にそうになった時も、ナデシコが火星から無事戻ってこれたのも、そしてPrincess of Whiteの世界を変えられたのもボソンジャンプの力だ。
全てには功罪があるのだ。

「君達は何もわかっていない!!
 彼女たちを『闇の王子様』にしてしまうんだぞ!!」
アキトは心の中で叫ぶ。
ブラックサレナを乗りこなす為にどれほど血反吐を穿いたか!
あれ程忌み嫌ったボソンジャンプを戦闘の為に使い、その度に後悔に苛まれた事か!
北辰を倒す為に、彼の使った武術を習得する事がどれほど屈辱的だったか!
そうしてボロボロになりながら力を求めていった成れの果てがこのありさまだ!
アキトの顔はボーッと光った。ナノパターンがくっきりと浮かび上がっていた。

「私はアキトが何を恐れているのかわからないけど・・・」
アキトはユリカに図星を突かれて戸惑った。ユリカはその上で諭すように続ける。

「大丈夫、彼女達は闇に囚われたりしないよ。
 だってアキトは彼女達に教えてくれたんでしょう?
 闇に囚われないまま強くなる方法を。」

外にいるリョーコ達はハッとしてアキトの言葉を思い出した。
『部隊としては六連達の方がまだ連携が取れてた。
 『そちら側』にいたければ最低でもあれぐらいのレベルになってからリベンジしに来い。』

アキトにはそれしか選択の余地がなかった。
でも彼女達は違う。
力を合せるべき仲間もいる。まだ能力も引き出せる。
全てをやりつくしているわけではないのだ。
その上で堕ちるか堕ちないかは彼女達の心次第だ。

「いいのか、ユリカ、ルリちゃん。君達は恨まれるんだぞ。
 仲間すら駒としてしか扱えない冷血漢として。
 俺達の呪われた運命へ引き込んだ罪に苛まれながら・・・」
アキトは彼女達の覚悟のほどを問うた。

「何を言ってるの?私はテンカワ・アキトの妻よ。
 夫の汚名を二人で濯ぐつもりがないのならトットと離婚してるわよ。」
ユリカはまっすぐな瞳で答えた。

「ネルガルは喜んでるさ。ノーマルサレナのデモンストレーションとデータ収集が出来て。
 たとえそれで不幸になる人が現れようともな。
 でもその矢面に立つのは君達なんだぞ?」
そしてルリも迷いもなく答える。
「それを言えばネルガルがアキトさんの指名手配を解く為に尽力したのも友情の為なんかじゃありませんよ。アキトさんが指名手配のままでいれば、ブラックサレナとユーチャリス、そしてそれらの挙げた戦績を武器に売り込もうとするノーマルサレナを公にできません。
 でもネルガルの思惑がそれを越えるモノでなければ、私達はアキトさんを取り戻す為の手段として利用するだけですよ。」

「ネルガルを利用する?出来るのか、君達に?
 陰謀と誘惑と策略に満ちあふれたこの世界で奴らに取り込まれずに!」
「その覚悟がなければ最初からナデシコ艦隊なんて引き受けませんよ。
 私達は決めたんです。
 私達の居場所を守るために。そしてアキトさんを取り戻すために。
 利用できるモノは全て利用する。
 立ち塞がるモノは全てなぎ倒して。
 でもそれは私らしいままで。
 たとえそのために人から憎まれようとも・・・」
ルリはユリカの手を握るとアキトの質問に迷いもせずに答えた。



ナデシコC・提督室前


「ユリカ・・・ルリ・・・」
二人の決意を聞いてリョーコはなぜか迷いが晴れたような気がした。
「で、どうするの?あなた達。」
「げ!イネスさん!?」
いつの間にか彼女たちの背後にイネスが立っていた。

「あら、もう決心したって目ね。」
「ああ、頼むわ。」
イネスの言葉にリョーコは迷いもせずに答えた。
「じゃ、あたしも〜〜〜」
「おつきあい、おつきあい」
ヒカルとイズミも了解した。

「中尉・・・」
「心配するな、サブ。あたい達はあたい達らしいまま強くなってやるんだ。
 アキトの鼻をあかすためにな!」
それが彼女たちの出した結論だった・・・。



ナデシコC・提督室


しばし無言の後、ため息をついたアキトは吐き捨てるように言った。
「わかった。見せてもらおう、君達のやり方を。
 だが覚えておけ。
 君達が誰かの傀儡に成り下がったとき、オレが君達を滅ぼすということを。」
そういって振り向くとアキトは部屋を出ていった。

後に取り残されたユリカ達は緊張から解放されてクタクタだったが、不思議とうれしそうだった。
「ユリカさん?」
「なに?ルリちゃん。」
「アキトさん相変わらず優しかったですね。」
「そうだね。本人は闇の王子様のつもりなんだろうけど、リョーコちゃんの為に怒鳴り込んでくるあたり・・・どう考えても昔の熱血のままよね。」
彼女達は最初から全て見通しだった・・・。

See you next chapter...



ポストスプリクト


取り敢えず祝11000ヒット!多謝です。
なぜ11000ヒットかは・・・1割は自分で踏んでるから(爆)

それは置いておくとして、どうでしたでしょか?今回のお話しは。

帰ってこないアキトを思って泣き崩れたり、遺跡に取り込まれて死んだりって、ストーリー的には面白いんでしょうけど私には書けませんでした。
私の頭の中のユリカとルリってこういう人達ですので、はい。

ってことで、次回はどうしましょう?
いきなりアキトの秘密に行った方がいいんかしら?
それともワンクッション明るめのお話しを入れた方がいいんかしら?
悩んでます。

では、次回まで。

Special Thanks!!
・みゅとす様