アバン


なんだかんだありまして、訳の分からない敵を倒してうやむやの内に戦争が何とか終わりました。遺跡装置が無くなったことや九十九さんの演説のせいもあって、上層部同士は角付き合わせて啀み合いをしているようですが、まぁ私達市民は概ね戦争が終わったことを喜んでいるわけで。

とはいえ、平和になっても色々もめ事はあるもので、今日も今日とて馬鹿ばっかがいっぱい騒いでいたりするわけですが・・・

よりにもよって後日談シリーズのトップバッターがアララギさんってどういうことですか?

ああ、これって黒プリ本編とはひょっとしたら無関係かもしれませんのでそのつもりで〜



木連某所・秘密会議室


「合い言葉は?」
「妖精にはゴスロリ」
「妖精に萌え萌え♪」
「入って良し!」

合い言葉が一致したのか、暗い部屋に招き入れられる来訪者
そう、ここは妖しい雰囲気の漂う秘密の会議室である。
今日も夜な夜なこの妖しい部屋で秘密の会合が行われていた。

その会合とは・・・

アララギ「諸君、よく集まってくれた。
 本日は木連私設妖精愛好倶楽部のオフ会に集まってくれて感謝する。
 私は会員番号1番にして会長のアララギです。
 本日は我らが妖精ホシノ・ルリとラピス・ラズリを精一杯愛でよう」
一同「おーーーー!」

結構な数の聴衆がアララギの声に答えた。

アララギ「それではまず会則の唱和をお願いする」

アララギはみんなを静粛にさせると、会則の唱和を求めた。

アララギ「一つ!妖精は神聖にして不可侵な存在である」
一同「妖精は神聖にして不可侵な存在である!」

アララギ「一つ!妖精にハァハァしない!」
一同「一つ!妖精にハァハァしない!」

アララギ「一つ!我々は妖精の清純を守るナイトである!」
一同「一つ!我々は妖精の清純を守るナイトである!」

アララギ「一つ!我々は妖精を見守る足長おじさんである!」
一同「一つ!我々は妖精を見守る足長おじさんである」

アララギ「一つ!我々は妖精に恥じぬように紳士であること!」
一同「一つ!我々は妖精に恥じぬように紳士であること!」

アララギ「妖精の呼称は次の通り!ホシノ・ルリはルリルリ!」
一同「ルリルリ!」
アララギ「ラピス・ラズリはラピラピ!」
一同「ラピラピ!」
アララギ「妖精万歳!」
一同「妖精万歳!」

会議場は割れんばかりの拍手でいっぱいだった。
これだけ見るとただのアイドルの危ないオフ会である。

と、そこに

ガチャリ

秋山「おい、お前達、もう少し静かにしてくれないか?
 隣でゲキガンガーの上映会をやっているのだ」
アララギ「ああ、済まない。静かにする」

バタン

秋山は彼らの顔が余りにも紳士的だったので不審がらずに会議室を立ち去った。
そう、彼らはその言動とは裏腹に意外と紳士的なのである。

アララギ「では、本日のレジュメを発表する。
 まずは妖精の秘蔵映像鑑賞会。
 次に会費の会計報告、
 続いて倶楽部のマスコット図案の投票、
 最後に本日の討論会に移りたいと思う。
 よろしいかな?」
一同「異議なし!」

まぁ、こういう会合が紳士的というのもある意味恐いものがあるのだが(苦笑)



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
後日談その1 妖精愛好倶楽部



秘蔵映像鑑賞会


ルリ「もう一度〜もう一度〜生まれ変わって出会えたら〜♪」
ラピス「今度はあなたの〜一番になりたい〜♪」

映像はそこで終わる。
真っ暗な画面が続くが、全くの無反応かと思われたその時・・・

「ブラボー!!!」
怒濤の歓声が沸き上がった。

「心が洗われるようだ!」
「まさに清純!まさに可憐!」
「既に絶滅していたと思われていた聖少女達がこんな所にいたとは!」
「ああ、一服の清涼剤が喉を駆けめぐるような爽やかさ!」
「人類が次世代に残すべき至宝だ」
「ああ〜ルリルリ〜僕のこの猛々しいピーーーを慰めて!」
「諸君、彼を抹殺だ」
「え!?ちょ、ちょっとどうして!?」
「一つ、妖精にハァハァしてはいけない!」
「一つ、妖精にハァハァしてはいけない!」
「一つ、妖精にハァハァしてはいけない!」
「一つ、妖精にハァハァしてはいけない!」
「うわぁぁぁぁ!もうしません、助けて・・・・・・」

ポイ!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・

と、中にはこうやって場違いな者が粛正されたりする(笑)

アララギ「まったく、最近の新入会員は当会を何かいかがわしい倶楽部と間違えている者がいるが、諸君もたとえ妄想であってもそれが妖精を汚す行為であることを重々理解しておいてもらいたい!」
一同「一つ!我々は妖精に恥じぬように紳士であること!」
一同「一つ!我々は妖精に恥じぬように紳士であること!」
一同「一つ!我々は妖精に恥じぬように紳士であること!」
一同「一つ!我々は妖精に恥じぬように紳士であること!」
一同「一つ!我々は妖精に恥じぬように紳士であること!」
アララギ「よろしい、では次の議案に移ろう」

まぁ真面目なのはわかったけど・・・(苦笑)



会計報告


アララギ「では、今期の会計報告をお願いする」
会計「は!現在までの収支ですが、
 収入は350万円。内、会費200万、グッズ販売150万となります。
 支出ですが、会誌作成費150万、グッズ版権料に200万、会場費20万
 合計20万の赤字となります」
アララギ「版権料に200万か?」
会員「おい!何でそんなにかかるんだ!」
会員「そうだそうだ!我らの血税を何に使っているんだ!」
会員「まさか、私利私欲に使ったわけじゃあるまいな!」

騒然となる会場

アララギ「静粛に!」

アララギの通る声で会場は静まった。

アララギ「この版権料200万という金額の釈明を願おう」
会計「は!今回は完成度の高いマスコット作成のためにプロに図案の作成を依頼しました!」
アララギ「それは何故だね?」
会計「それは以前、アララギ会長以下我が倶楽部員が書いた船外ペイントを妖精に気に入ってもらえなかったためです!」

アララギ以下一同の頬を玉の汗が伝った。

確か、あれは火星でナデシコと共同戦線を張るとなった時のことだ。
ルリとラピスはみなづきに描かれた自分達のペイントを見て烈火のごとく怒り、その場でペイントを消すことを要求された。
アララギら乗員は自らが描いた妖精のペイントを泣く泣くモップでゴシゴシ擦って消すという苦行を与えられた。

アララギ「確かに我らの拙い絵心では妖精も嫌がるであろう」

いや、アララギさん、その認識は根本的に間違っていると思うけど・・・

会計「そこで今回は同人誌即販会大手サークルとして名高い二人にお願いしました!!!」
アララギ「なに!してどなただ!」
会計「熱血と萌え画を描かせたらコミケナンバーワンのアマノ・ヒカル女史と
 これまたあの伝説の綾波シリーズを手がけ、今また妖精シリーズの新作を繰り出そうとされている伝説の原型師!ウリバタケ・セイヤさんです!」
一同「おおおおおお!!!!」

会計の紹介とともに現れたのは彼らがデザインした原画とフィギュアであった。

その輝きは燦然と彼らの前に降り注いだ。

「なんと素晴らしい!」
「あの生き生きとした瞳!」
「あの淡い色使い!」
「一見無造作にも見えるラフ画にも関わらず躍動感のあるライン!」
「見事なペッタンだ!それでこそ妖精!」
「さすがは元ナデシコクルーだけあって微妙な仕草も観察してある!」
「確かにアレに比べれば我らのペイントは子供の落書き!」
「あのフィギュアの小首を傾げた様のいとおかしことか!」
「今にも動き出しそうな造形!」
「今度の会報の付録はアレなのか!?」
「やっぱり年会費1万円を払ってまで会に入って良かった!」
「ルリルリ!ラピラピ!俺達は君達に一生付いていくぜ!」

彼らはスタンディングオベーションでヒカルの原画とウリバタケのフィギュアを褒め称えた。

アララギ「良くやった!君を会員番号3番に繰り上げよう」
会計「は!ありがたき幸せ!」
アララギ「では諸君!妖精をたたえよう!
 妖精万歳!」
一同「妖精万歳!」
アララギ「妖精万歳!」
一同「妖精万歳!」
アララギ「妖精万歳!」
一同「妖精万歳!」

と、そこに・・・

ガチャリ

三郎太「あの、アララギさん、もう少し静かにしてくれませんか?
 隣でPRIDEの生中継を見ているんですから」
アララギ「ああ、済まない。静かにする」

バタン

三郎太もアララギらの顔が紳士的だったのか、何事もないように去っていった。

アララギ「ということで諸君、版権料200万であるが、私はそれだけの価値があるものと考えており、この支出を容認したいと思う。
 反対の者は挙手を願いたい」
一同「シーーーーン」
アララギ「では全会一致でこの会計支出を承認するものとする」

・・・いいのか?それで?



マスコット図案投票


アララギ「それでは今日は我ら妖精愛好倶楽部のマスコットにする為の図案を投票で決めたいと思う。
 それでは試案の提出を」
広報「は!まずA案はチビキャラによるルリルリとラピラピのツーショットです。
 そしてB案は猫耳ルリルリと犬耳ラピラピのじゃれている図案にしようかと考えております」
一同「お〜〜〜〜〜!」
アララギ「ふむ、甲乙着けがたいなぁ〜」
広報「ちなみに絵師にはオリジナルキャラデザインの後藤圭二氏の他、藤島康介氏、林明美氏、鳥山明氏、うのまこと氏、羽音たらく氏、四季童子氏などなど・・・」
アララギ「おお、有名どころではないか!」
広報「他にもカトキハジメ、永野護、大河原邦男氏に・・・」
アララギ「ちょっと待て、それはメカデザイナーだろう!」
広報「の方々に打診してみましたが、断られましたので」
アララギ「・・・まぁ断られるのは致し方がない」
広報「仕方がありませんでしたので、漫☆画太郎氏に」
アララギ「諸君、彼を抹殺だ」
広報「え!?ちょ、ちょっと待って下さい〜〜!!!」

広報をみんなで掴まえた!

一同「妖精は神聖にして不可侵な存在である!」
一同「妖精は神聖にして不可侵な存在である!」
一同「妖精は神聖にして不可侵な存在である!」
一同「妖精は神聖にして不可侵な存在である!」
一同「妖精は神聖にして不可侵な存在である!」
一同「妖精は神聖にして不可侵な存在である!」
一同「妖精は神聖にして不可侵な存在である!」

ポイ!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・

と、こうやって萌えを理解しない者が粛正されたりする(笑)

新広報「えっと今回はこげとんぼ氏に依頼する事になりました。
 A案とB案の図案です」
一同「お〜〜〜!

そこにはでじことぷちこ風なチビキャラルリラピと犬猫ルリラピの図案が提示された。

アララギ「う〜ん、悪くはないがブ○ッコリー系列というのはなぁ〜」
新広報「お気に召しませんか?」
アララギ「もう少し気品というか、媚びがない方が良い気もするが」
新広報「仕方がありませんね。本件は次回までの検討事項としましょうか」
アララギ「そうだな」



第3回討論会


アララギ「ということで、本日の討論会では次の懸案事項をみんなから意見を問いたいと思う」
会員「して、その議題とは?」
アララギ「今日の議題は・・・妖精に一番似合う服装とは何だ!である」
一同「お〜〜!

どよめく一同を静めた後、アララギはスライドを提示する。

アララギ「過去、我ら妖精愛好倶楽部は潜入捜査をし、妖精達の姿を追い続けた。
 そして得られた情報から妖精達の服装を分類してみた」

アララギはスライドを操作する

アララギ「まずは一番オーソドックスな撫子の制服姿だ。
 ルリルリはベストにタイトスカート、そしてタイツ姿である。
 ラピラピはほぼ同じであるが、スカートはフレアとなっておりこの微妙な違いがアクセントになっている」
一同「お〜〜!」

アララギ「次はなぜなにナデシコのネコスーツ姿のルリルリとワンちゃんスーツ姿のラピラピだ」
一同「お〜〜!」
アララギ「ちなみに和平会談一ヶ月前にもこの姿をしていた事がある」
一同「これはこれで萌えだ〜」

アララギ「これは珍しいぞ!晴れ着姿のルリルリとラピラピだ」
一同「わあぉぉぉぉぉ!!!
アララギ「ちなみにこのスライドはレアものだ。後でコピーが必要な者は申し出るように!」
一同「はい!」

アララギ「こちらもレアだ。武者姿のルリルリだ。ただし残念ながらラピラピの武者姿はない!」
一同「そんなぁ〜〜」
アララギ「仕方がないのでこちらで西洋の甲冑姿のラピラピの予想図を描いてみた」
一同「おおおお・・・でも少し微妙だなぁ」
アララギ「やはりか・・・済まん」

妖精のスライド(または隠し撮り写真とも言う)はまだまだ続く

アララギ「テニシアン島での水着姿だ!」
一同「おおおおお!萌え萌え!」
アララギ「ルリルリは水玉、ラピラピはピンクのワンピだ!」
一同「ああ、これぞ清純派美少女〜〜」
一同「心が洗われる〜〜」
一同「さすがは妖精〜〜」

アララギ「極秘映像がこれだ!お出かけルック!!!」
一同「おおおおお!!!
アララギ「ルリルリはお姫様チックなフワフワのスカートだ!」
一同「素晴らしい!!!
アララギ「そしてラピラピはゴスロリ風の喪服!!!」
一同「生きてて良かった!!!
一同「ブラボー!!!
一同「ビバ!妖精!!!

会場は最高潮に達した!

「諸君、静粛に!」

アララギは両手を広げて彼らを制した。
そして厳かにこう宣言した。

アララギ「だが、今回諸君に見せるのはこれだけではない!」
一同「なんですと!?まだこの上が存在するのですか!?」
アララギ「ああ、もちろんだ!」
一同「それは一体!?」
アララギ「これは我らが秘密潜入諜報員が決死の覚悟で記録したものだ。
 あの漆黒の戦乙女に見つかれば即地獄行きという過酷な監視体制をかいくぐって撮影されたものだ!
 そのために貴い犠牲を出した・・・
 みんな、犠牲になった諜報員に哀悼の意を込めて黙祷しよう!
 黙祷!」
一同「・・・」←黙祷している




しばしの間、会場は静かに黙祷していた。



アララギ「では発表しよう!
 予め言っておくが、これから見せる映像を見ても会員としての自覚と品格を一時も忘れては行けない」
一同「一つ、妖精にハァハァしてはいけない!」
一同「一つ、妖精は神聖にして不可侵な存在である!」

彼らは会則を改めて繰り返す。それに満足したのか、アララギは静かにスライドを進めるボタンに手をかけた。

アララギ「よろしい!では発表しよう」
一同「おおおおおおおお!

公表された画像に会員達は興奮のるつぼと化した!!!

アララギ「妖精達の寝間着姿だ!」
一同「ハラショー!!!
アララギ「ルリルリはお魚がプリントされた可愛いパジャマ!
 そしてラピラピは同じくピンクの可愛いパジャマだ!」
一同「最高だ!最高だ!最高だ!最高だ!
アララギ「そしてこれは秘中の秘!
 なんと限定レアモノ、あの幻のラピラピのピンクのネグリジェ姿&漆黒の戦乙女パジャマ姿付きバージョンだ!!!」
一同「ハレルヤ♪♪♪♪♪

会員の中には喜びすぎて気絶する者が続出した(爆)

一同「生きていて良かった!」
一同「まさに究極!いや、至高の存在だ!」
一同「まさに天が我らに使わしたもう天使♪」
一同「究極の美はあらゆる猥褻性を排除してくれる♪」
一同「そう、これはまさに妖精という一つの美術品だ!」
アララギ「そうであろう。私も今猛烈に感動している!」

一同は感涙にむせび泣いていた。

だが、彼らの幸福は長くは続かなかった。

『なるほど、そうやって自らの盗撮行為を正当化しようと言うのね・・・』

アララギ「な、何だこの声は!?」

どこからともなく聞こえる女性の声。
しかも聞き覚えのあるような、ないような・・・

『ふふふ、あなた達、マジで命がいらないようね』

アララギ「この声は、ま、まさか!
 確か君は確か未来に帰ったはずじゃ!
 第一この場所をどうして!?」

アララギは姿無き声に問うが、彼女はそんな事お構いなしだった。

『問答無用!天地神明にかけて成敗する!』

一同「か、会長、後ろ!!!」
アララギ「なに!?」

ギラリと暗闇に光る鬼のような瞳!!!
振り返ったアララギが見たモノとは!!!



数分後、秘密会議室


そこには死屍累々と化した妖精愛好倶楽部のメンバー達の屍が転がっていた。

ガチャリ!

「うわ!なんだ!この有様は!!!」

扉を開けて入ってきたのは月臣であった。
彼は部屋の中に入ってその惨状に改めて驚いた。
まさに死屍累々の有様であった。

月臣「ん?なにやらナナコさんの匂いがするのだが・・・」
アララギ「ど、どうした・・・元一朗・・・」

月臣はボロボロになって床に倒れているアララギを見つけて話しかけた。

月臣「どうした、アララギ。そのズダボロな姿は。まるで暴漢に襲われたようだぞ!?」
アララギ「いや、何でもない・・・」
月臣「お前ほどの使い手がこうまで一方的にやられるとは、ただごとではあるまい!」
アララギ「本当になんでもない。それよりもどうかしたのか?」
月臣「どうかしたのか?はお前だと思うのだが・・・
 まぁいい。公民館の会議室はこれから俺達ナナコさん愛好倶楽部が使用するはずなのだが、なかなか空かないので見に来た」
アララギ「すまん。後30分ぐらい延長したいのだが、かまわないか?」
月臣「まぁ開始を30分ぐらい遅らせるのは全然かまわないが・・・本当に大丈夫か?」
アララギ「大丈夫だ。後は投票するだけだから・・・」
月臣「いや、それを心配しているわけではないのだが・・・」

本人達の懇願で不承不承であるが後30分ほど待つことにして部屋を出ていく月臣。
それを見届けたアララギは力尽きる前に討論会の最後の議題を進めることにした。

アララギ「それでは諸君、本日の議題であるが・・・」

彼らが本来やろうとしていた議論とは・・・



数日後・ナデシコ長屋・アキトの自室


ここはサセボにある旧ナデシコクルー達が抑留されている収容所である。
元々は火星から助けられた難民達が住んでいた場所であるが、なぜ彼らに代わってナデシコクルーらが住んでいるかというと紆余曲折がある。

そもそもの発端はナデシコが地球脱出の際に地球に流していった映像にあった。
その映像には火星での真実が色々バラされていたのであるが、その中にも火星抑留者達のインタビューも混じっていたのである。
それを見た地球の心ある人達は地球連合とネルガルに対して彼らの扱いを抗議し、彼らの待遇改善を約束した。またそれと同時に火星帰りという呼ばれ方もその放送以降では扱いがガラッと変わった。悲劇の生還者として何かと取り上げられたからだ。

まぁそんなこんなで世間の風は冷たいものの、彼らはようやく自立して生活できる目処が立つようになり、晴れてこの抑留地を去ることが出来た。
とはいえ、それでこの抑留地がお役御免のお取りつぶしにならないのが皮肉なもので、代わりにナデシコクルー達が抑留されることになった。

一種の国家反逆罪の持ち主達ばかりだから致し方がないとはいえ、逆にすぐに軍法会議にかけられて処分されないだけマシとも言える。
ネルガルが裏から手を引っ張っているとか、木連和平派が彼らを擁護しているとか、世論が彼らの味方をしているとか色々な理由はある。
とはいえ、あっさり釈放をしてもまずいので、とりあえずは地球連合と木連が和平するまでは抑留しておこう・・・という事になったらしい。

まぁナデシコクルーにとっては抑留生活はナデシコでの生活の延長みたいな雰囲気があるので大して気にも留めていないのであるが。
そんなこんなでこの抑留地を関係者はナデシコ長屋と呼んでいた。

おっと、結構余談でした。

さてさて話を戻して、ここはサセボのナデシコ長屋
テンカワ・アキトの自室である。
だが、そこには小さな来訪者が来ていた。
しかも二人である。

アキト「どうしたんだい?ルリちゃんにラピスちゃん」
ルリ「いえ、実は・・・」
ラピス「こんなモノが届いた」
アキト「え?何が届いたの?」

二人はそれぞれ大きな箱を取り出す。

アキト「なんだろうねぇ。心当たりは?」
ルリ「まったく」
ラピス「あるわけない」
アキト「箱の大きさの割にはそれほど重いモノじゃないようだけど・・・」
ルリ「でも、知らない人からの小包ですから一人で開けるのは恐くて」
ラピス「お願い、開けて」
アキト「俺ッスか!?」

二人に深々と畳に手を突いてお願いされた手前、アキトは断るに断りきれなかった。

アキト「爆弾じゃない・・・よねぇ」
ルリ「それはさっきイネスさんに頼んで金属反応を調べてもらいました」
アキト「で、中身はわからないの?」
ラピス「うん、わからなかった」

三人は首を傾げる。

ルリ「危険物じゃないらしいんですけど、生温かいモノとかだったらちょっと触りたくないので」
アキト「生温かいって?」
ラピス「カルピスの詰め合わせ」
アキト「いや、それは生暖かくもないし、第一お歳暮だし」
ラピス「生温かいって聞いたのに・・・」
アキト「誰から聞いたの、そんなこと(汗)」
ルリ「それよりもアキトさん、開けて下さい!」
アキト「やっぱり俺が開けるの!?」
ルリ&ラピス「か弱い少女達に開けさせるつもりですか!」
アキト「・・・はいはい」

仕方がないので渋々小包を開けることにしたアキト。

ルリ「頑張って下さい!」
ラピス「頑張って!」
アキト「いや、そんな土間の影に待避した所から応援されても・・・」

彼女達は完全防御で、自分一人で爆弾の前に晒されている気がしていまいち悲しいアキトであるが、恐る恐る小包を開けてみた。

ガサゴソガサゴソ・・・

アキト「ん?これって・・・」
ルリ「安全なモノですか?」
アキト「安全だよ」
ラピス「キモくない?」
アキト「キモいモノじゃないけど・・・」

安全なのがわかって恐る恐る覗きにやってくるルリ達
その時!

ガラガラガラ

ユリカ「やっほ〜〜♪アキト」
ミナト「ルリルリ達がこっちに来てるって遊びに来たの♪」

そこにやってきたのはユリカとミナトであるが、その時彼女が見たモノとは!?

ユリカ「わぁ〜可愛い洋服♪」
ミナト「ゴスロリじゃない♪」

彼女達が見たモノとは、ルリとラピスが黒いドレスを体に当てていたところである。

ミナト「んまぁ可愛い♪可愛い♪早速向こうでお着替えしましょう♪」
ルリ「い、いや、私達は・・・」
ラピス「着たくない・・・」
ミナト「良いじゃない〜似合う♪絶対あなた達に似合うからお着替えしましょう♪」
ルリ&ラピス「でも・・・」
ミナト「お着替えしましょうね♪」
ルリ&ラピス「きゃぁぁぁぁぁ!」

と、ミナトに奥の部屋へ洋服ごと連れ去られるルリとラピスであった。

アキト「ゴスロリって何?」
ユリカ「ああ、ゴシックロリータの略。ああいう黒く昔風のドレスにレースがいっぱいっていうのがそれなの。でもあんな服、アキトが買ったの?」
アキト「俺じゃないよ。これ!」
ユリカ「これ?」

アキトは小包に付いていた手紙を見せた。
手紙の文面とは次のようなモノであった。

『いつも君を影ながら見守っている。
 これは私からの贈り物だ。
 君の足長おじさんより』

ユリカ「・・・ルリちゃん達、ストーカーに狙われてるの?」
アキト「さぁ・・・」

「きゃぁ♪二人とも可愛い♪」

二人は苦笑いをするも、奥で感嘆の声をあげるミナトの声を聞くと複雑な気分になった。



結果報告


「会長、我々の贈り物の結果ですが・・・」
「どうだった?」
「周りの方々には大変好評でした」
「そうか。我らも苦心して選んだかいがあったな」
「そしてこれがその時の写真です」
「これは素晴らしい。次回の会合で発表しよう。
 では次に妖精達に贈り物をする品目を決めないといけないな」

本人達はあくまでも足長おじさんを気取っているつもりであった(笑)



ポストスプリクト


ということで黒プリ後日談その1をお届けしました。

しかしまぁ、自分で書いているくせに破壊力抜群な作品だ事(笑)
先に白状しておくと元ネタはフルバです。
それに色々ごてごてと付けてみましたが・・・
正直、今までの作品の中でいちにを争う問題作かも(苦笑)

ここまでキャラ壊して良いのか?という気がしなくもないですが、まぁ本人達は真面目に足長おじさんをしているつもりなので良いのではないか?と思っております(本当か!?)

ということでおもしろかったなら感想をお願いします。

では!

Special Thanks!!
・龍崎海 様
・白南風 様
・スレイヤー 様