アバン


まぁとりあえず、歴史が変わるのか変わらないのかは置いておくとして

思い出、それは大切な思い出
誰に作られたモノでもない、私が私自身で紡ぎ出した物語
だからこそ、その思い出はキラキラと輝きます。

朗らかに、愉快に、スチャラカに
いつもの自分でいられるように

さぁ私達の詩を歌いましょう♪
今度こそこの火星で・・・

ああ、これってSecond Revengeのラストとほんのちょっぴり関係があったりしますのでそのつもりで〜



火星極冠遺跡上空


始まりの人は恐れていた。
自らを滅ぼす存在が近づいてくることに

『何故だ!何故だ!何故だ!何故だ!』

こんなはずはない。
歴史とは普遍であり、自らが滅ぼされるようなことはこの666回も繰り返した歴史の中で存在しなかった。
なのに、何故自分が滅ぼされるのだ?

『歴史は変わらない』

そうだ、変わるはずがない。自分は『時の記述』だ。
全ての歴史を記録してきた。
歴史はなるべき道しか辿らなかった。
だからこそ、決まり切った歴史を元に人々を支配できた。

なのに今、自分を滅ぼす者たちが現れている。
自分の支配から逃れて
それは歴史を変えたという事なのか?

いや、変わっていない!
何も変わっていない!
アイネスは20年前の過去に戻り、イネス・フレサンジュになった。
歴史は何も変わっていない!

なのになぜ自分は滅ぼされるというのか?

『私は滅びない!』

八岐大蛇が咆哮する!!!
ソニックウェーブが周囲を薙ぎ払う!
けれど彼らは怯まない。
大蛇を滅ぼすものは確固たる足取りで近づいてくる。
まるで大蛇の叫びをも切り裂くかのように。
大蛇を滅ぼすために!

「鬼退治に行くわよ!」
「お!!!・・・って私達は猿犬雉か!」

4機の機動兵器が迫ってくるのが大蛇に目に映った。
たった4機の、しかし最強の機動兵器達であった。

アキ「ゲキガンガーが最強だっていうのもなんか納得行かないものがあるけど」
1号「なんだと!」
アキ「っていうか、それテツジンを改造してるんでしょ?なんでそんなに・・・」

アキが続きを言おうとする間にも大蛇からの触手攻撃は続いている。
ブラックサレナやホワイトサレナ、それに不知火が華麗に触手を躱すのは納得できるとしてもゴッドゲキガンガーの巨体が軽やかに躱すのがどうにも納得できない。

1号「もちろん!それは熱血の力だ!!!」
アキ「いや、それは多分手足の人のおかげだと思うぞ・・・」
手のイツキ「○△×□□□△△○○○!」
足の2号「ドンドンカンカンドンカンカン連打!!!」
アキ「・・・手足の人、DDRや太鼓の達人でもしてるのか?」
1号「手足の人などいない!」

そんなゲームでゲキガンガーを操縦されていたらとても恐い(笑)

Snow White「心配しなくてもPink Fairyちゃんが作ったロボットだから♪」
アキ「良かった〜♪こいつらが凄いのかと思っていた♪」
1号「なんだと!俺は本当に強いんだ!!!」
イツキ「そうです!凄いのは私です」
1号「ちょっと待てイツキ、なぜ私達じゃないんだ、私達じゃ」
イツキ「いや、それは・・・」
1号「俺様は凄くないと言うのか!」
イツキ「頭にいるだけで指図しているだけの人に言われたくありませんわ!」
1号「なんだと!」
イツキ「じゃぁ頭と手を交代しますか!」
2号「お前達、ケンカはやめろ〜」

あ、頭と手がケンカし始めた。
けれど近寄ってくる触手を斬りまくっているのは凄い。

2号「済みません。自己主張が激しい連中で(汗)」
アキ「いや、もう慣れたから」

しきりに謝る2号。
あ〜〜この人はやっぱり居場所は変わっても苦労人なんだ・・・と内心で同情はするが関わり合いになりたくないのでアキはそれ以上の言及を避けた(笑)

そしてもっと関わり合いになりたくない奴がいたりする。

北辰「神に入れば神を斬り」

ポン!

どこからか鼓(つづみ)の音が鳴り響く。

北辰「魔に入れば魔を斬る・・・」

ポンポン!

北辰「人の斬れぬものならば斬ってみせよう修羅の道」

ポンポンポンポン!

アキ「あ・・・またここに時代劇か任侠映画と勘違いしている奴がいるよ(汗)」
Blue Fairy「っていうか、この太鼓の音はどこから聞こえてくるのでしょうね」
Snow White「あ、最後のポーズ取るみたい」
北辰「この背中の背負った彫りに賭けて!」

見得を切って北辰がみせた背中には入れ墨が彫ってあった。
その背中に彫られていたのは・・・

アキ「あ、あたし!?」

そう、そこにはアキの似顔絵が彫られていたのだ。
しかもベルばら調の様に百合の花を背負っている構図だ(笑)

Snow White「あ、なかなか少女漫画っぽくて良いかも♪」
イツキ「素敵ですわ♪」
2号「アキさんが巻き毛ですか〜しかも黒百合をくわえて〜」
1号「俺様なんかゲキガンガー命だぞ!」
Blue Fairy「良かったです。もし妖精命なんて書かれていたら自殺していたかもしれません」
北辰「ふむ、良いものはやはり人に伝わるものだ」
アキ「っていうか、貴様!誰に断ってそんなふざけた入れ墨入れたぁ!!!」
北辰「照れるな」
アキ「照れてないわよ!!!」

ガクン!

Snow White「アキ、危ない!」
アキ「え・・・う、うわぁ!?」

あまりの精神汚染で一瞬触手に足を取られそうになるブラックサレナ

ズシャァァァァァ!

北辰「どうした、我が伴侶、気を抜くでない」
アキ「うぉっと!」

一瞬早く触手を切り裂いてアキを救ったのは北辰であった。

アキ「あ、ありがとう・・・」
北辰「やはり汝の背中を守るのは我だけだな」
アキ「な!」
Snow White「アキの背中は私が守るんだから!」
Blue Fairy「私達ですよ、私達」
北辰「・・・汝が女色家でも我は全然かまわんぞ?」
アキ「変な想像するな!」
2号「おい、そんな事を言っている間に次が来るぞ」

4機の機動兵器はやいのやいの言いながらも、群がる大蛇の触手を切り裂きながら突き進んでいった



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
最終話 ささやかだけど素敵なRevolution<後編>



再び古代火星遺跡上空


PODではなく、真の翼であるブラックサレナに乗り込んだアキの活躍は凄まじかった。

リョーコ「隊長、どこまで猫かぶってたんだ!?」
アカツキ「っていうか、あの機動兵器のおかげでしょ」
イズミ「弘法筆を選ばず、凡人筆に振り回される」
ヒカル「つまりアカツキ君が乗ったってあの機体の性能は引き出せないって意味?」
イズミ「不出来な凡人には無理」
アカツキ「とほほ・・・」

負け惜しみを言ってみたアカツキであるが、本当に負け惜しみにされてしまった。
空を見上げれば黒い機動兵器達は戦っている。

無数に群がる触手を軽やかに躱す。
半回転し、くの字に向きを変える。
だが次の瞬間わざと重心を崩して襲いかかる触手を半身で躱す。
と同時にハンドカノンを掃射する。

バババババ!

ただまき散らしただけかと思われた弾も、その軌跡は実は複雑だった。
右上奥、右下手前、下、下、下、左後ろ、左前、正面、正面
半身をひねった瞬間にそれだけ照準を付けて撃ち放ったのだ。
そのどれもが後続のゲキガンガーや不知火の援護射撃である。

そして・・・

「グラビティーブラストセット」

彼女のかけ声に反応して一瞬で重力波ブレードが4本全面に展開する。
重力波の収束はすぐだった。
恐るべきジェネレータの出力であり、急激な負荷の増減に対応する回路である。
グラビティーブラストを120mmカノン砲並のレスポンスで扱えればどうなるか・・・それが今示される!

「撃てぃ!!!」

全方位から迫り来る大蛇の触手にかするかかすらないかでグラビティーブラストが発射された。
迷わず前面に!進路に立ちはだかるものを薙ぎ払うために!
ひたすら直進する事だけがこの難局を突破する唯一の方法だという事を知っているかのように!

ゴオゥゥゥゥゥゥ!

八岐大蛇の皮膚を触手ごと抉るようにグラビティーブラストは放たれた!

一瞬のうちに広がる視界!

広がった視界に飛び込む!すると触手達はさっきまで黒い機動兵器がいた空間を虚しく掠める。

彼女の前進を阻むことは誰にも出来ない。
それ程までに黒い機動兵器は軽やかに飛翔していた。
3機の機動兵器とともに!



Yナデシコブリッジ


ナデシコのブリッジはさながら野球かサッカー観戦の場と化していた。

ホウメイ「フレー!フレー!ア〜キ!」
整備班員「フレーフレーアキ!フレーフレーアキ!オーーーーー!!!」

ウリバタケコレクション、大学応援団の姿で応援を行うホウメイとウリバタケら整備班。
団旗持ちはもちろんナデシコ一の怪力、ゴート・ホーリーである。

ミカコ「ホウメイさん、カッコイイ♪」
サユリ「私達も負けてられないわよ!」
ハルミ「ファイト〜ナデシコ!」

ホウメイガールズは隣でチアリーダー姿で応援している。

メグミ「ほらほら、エリナさんもしましょうよ♪」
エリナ「え?ちょっと待って・・・」
エリ「そうそう、手持ち無沙汰でしょ♪」

二人に引っ張られてチアリーダーの扮装をさせられそうになるエリナ(笑)

エリナ「ちょっと待って!私にそんなこと無理よ!」
メグミ「大丈夫♪ジュンさんだってあんなに似合ってるんだから♪」
エリナ「え!?」

慌てて振り向くと、そこには女性もののチアリーダーの制服を着せられたナデシコ副長アオイ・ジュンの姿があった。

エリ「似合ってる似合ってる♪」
ジュンコ「まるで女の子みたい♪」
ジュン「そんなこと言われても嬉しくないよ〜!!!」

あ、走って逃げた(苦笑)

エリナ「・・・」
メグミ「さぁさぁ♪」
エリナ「嫌に決まってるでしょ〜!!!」
ユリカ「まぁ可愛いのが似合う年じゃありませんしね」

ヒキィ

ユリカの悪気はないが、致命的な一言が確かにエリナの堪忍袋の緒を切った。

エリナ「あんたに言われたくないわよ、この年齢詐称艦長が!!!」
ユリカ「詐称なんかしてません!私は本当にピチピチです!」
エリナ「どこがピチピチなのよ。ただロリっぽい服着て若作りしているだけじゃないのよ!」
ユリカ「若作りなんかしてません!イネスさんと一緒にしないで下さい!」
イネス「何ですって!私は若作りなんかしなくても若いわよ!」
ユリカ「ならチアリーダーの衣装を着れますか?」
イネス「着れるわよ!」

バサァ!

白衣を脱ぐとイネスはチアガール姿になった。
しかもアイちゃん風ツインテール(爆)

イネス「どう♪」
ユリカ「い、いや、なんと言って良いのか(汗)」
エリナ「似合わないわ・・・」
イネス「何ですって!!!」

『いや、いくら心が若くてもその年じゃ無理でしょう・・・』
誰もが冷や汗を流しながら心の中でエリナの意見に同意した。

とまぁわいわい騒いでいるところに・・・

仕事をして下さい!!!byルリ』

とバカでっかいウインドウが開いて彼らを戒めた。

ルリ「まったく。仕事をして下さい、艦長」
ユリカ「ごめんなさい、ごめんなさい〜」
ルリ「確かにこちらが優勢になってますけど、油断できないんですよ。
 お願いしますから撃てる限りのグラビティーブラストを撃つように指示して下さい!」
ユリカ「はい〜わかりました〜ゴメンね、ルリちゃん〜」

平謝りでウインドウボールの中のルリに謝るユリカ
まぁ確かにまだ戦闘中なので浮かれるには早すぎるが。

「小学生にペコペコ謝るなんて大人のくせに」
ユキナは空騒ぎしている大人達を少し侮蔑の目で見ていた。

「そう思うでしょ?ミナトさ・・・」
そういってミナトの同意を得ようとユキナは彼女の方を振り向くと・・・

「ミナトさん・・・どうしたの?」
「・・・」
「泣いて・・・るの?」
「泣いてる?誰が?」
「いや、ミナトさんが・・・」

ミナトは自分でも知らずに涙を流していた。
悲しいわけじゃない。
なのに何故自分は泣いているのだろう?

涙が出てくるのはあの光景に魅せられたから
黒い機動兵器と白い機動兵器、そしてゲキガンガーらが戦っている光景。
けれどなぜあの光景を見て泣くのだろう

ミナトはその疑問の答えを見つけることは出来なかった。
ただ胸が奥からこみ上げてくる温かいものを抑えきれなかった・・・



古代火星遺跡上空




『何故だ!』

彼は叫ぶ。

「Snow White・ラブラブ・ストライク!!!」
「違います。Blue Fairy・エクセレント・ハレーションって決めたはずです」
「だってBlue Fairyちゃんはウインドウボールでクルクルしてるんでしょ?
 だったらその間は良いじゃないのよ〜〜」
「・・・何でも良いですから、攻撃して下さい」
「やった♪じゃ、行くよ〜!」

ホワイトサレナは強力なディストーションフィールドを展開する。超高速機動と相まって近寄る触手を薙ぎ倒すように突進していった。
そのままホワイトサレナを大蛇の胴体に押しつけた。

ボコン!

戦艦並の時空歪曲場が周りの空間を排斥する。その結果、相対的に押しつけられた大蛇の表皮が陥没する。
だがホワイトサレナはまったくスピードを緩めない。そのまま大蛇の表皮を擦り付けるように飛ぶ。

ズズズズズ!!!

ギャァァァァアアアア!

抉られる様に傷つけられた痛みで大蛇は悲鳴を上げる。



『何故だ!何故、不可侵の存在たるこの私が傷つけられる!』

彼はその理不尽さに悶え苦しんだ。

1号「行くぞ!みんな!」
イツキ&2号「オー!!!」
三人「超熱血切り!!!」

ゴッドゲキガンガーはゲキガンソードを大蛇の皮膚に突きつける。

ズサァァァァァァァ!!!

大蛇の皮膚に真一文字の傷が走る!

ギャァァァァアアアア!

切り裂かれる痛みに悶える大蛇



『何故だ!私は人類の文明の最初から最後まで全て見てきた!そして記録してきた!
 なのに何故だ!』

彼には何故自分が切り刻まれるのか理解不能だった。

北辰「偽伝・獅子身中!」

不知火は錫杖を構え猛スピンで大蛇の体の中に突っ込んだ。
抉るように体内に潜り込み中身をかき回す!

グチャグチャグチャ!

表皮はまるでミミズ腫れのようになり、幾筋も走らせた。

ウオォォォォォ!



『こんな事記録にはなかった!起こる可能性は1%もなかった!なのに何故だ!』

何度計算してもそんな結果は計算できなかった。だから彼はますますわからなくなっていた。

ユリカ「ゴラァビティーブラスト、撃てぃ!」
メグミ「艦長、グラビティーブラストですよ」
ユリカ「あ、そうだった(汗)
 ということで改めてグラビティーブラスト、撃てぃ!」
ミナト「ルリルリの代わりに了解〜♪」

ゴォォォォォォォ!

ナデシコから、そしてユーチャリスから絶え間ないグラビティーブラストが撃ち込まれる。なまじ大きいだけになかなか本体を焼き尽くすとまでは行かないのだが、それでも八岐大蛇の表皮の20%ぐらいは何らかの傷を負っていた。

そして傷を受ける度に大蛇は悲鳴を上げる。

ギャァァァァァ!!!



『こんな事あり得ない!我は『時の記述』だ!
 歴史はなる様にしかならなかった!』

八岐大蛇は、いや『始まりの人』はそう叫ぶ。呪詛に満ちた言葉で

「歴史は変わるさ!変えようと思う人の意志がある限り!」
アキはブラックサレナで肉薄しながら彼の言葉を否定する。
けれど始まりの人は嘲笑する。

『歴史を変えられる?
 何を馬鹿なことを言っている!
 歴史は変えられない!定められた歴史を何度でもなぞる』

始まりの人は憎しみのこもった声で叫ぶ。

「希望さえあれば、自らを変えようと思いさえすれば変えられるわ!」
『ならば聞く!貴様はこれまで過去を変えようと藻掻いた。
 なれど過去は変わったか?』
「・・・」

始まりの人は叫ぶ。
確かにアキは今まで自らの過去を変えようと足掻き続けた。
けれど、火星ではユートピアコロニーを失い、フクベを失った。
地球ではオモイカネは暴走し、カワサキシティは火の海になり、アキトは月に跳んだ。
月では食堂の女将さんが殺され、シャクヤクは破壊された。
そして和平会談では九十九が殺された。

何一つ歴史は変わっていない。

その言葉は痛いほどアキにもわかっていた。

「変えられないから変えないの?
 違う!変えたいから変えようと足掻くの!
 歴史は人の足掻いた足跡!
 足掻くのを止めたあなたに歴史を変えられるはずはない!」

その言葉に大蛇が一瞬戸惑った。

『我に歴史を変えられないだと?』
「そうよ!あなたは自己矛盾に陥っている」
『我のどこが・・・』
「あなたは歴史を変えたいの?それとも変えたくないの?」

今度こそ大蛇は動揺をみせた。

『なにを馬鹿な・・・』
「あなたは単に絶望しているだけよ。
 本当は変えたいのよ。やり直したいのよ。
 大切な人を失ってそれを取り戻したくて、
 けれど歴史は変わらなかった。
 変えようとしているのに。
 たった一人の少女を手に入れようとしても手に入れられなくて悶えているだけよ!」
『違う!!!』

大蛇はアキの言葉を拒絶した。

でも今のアキにはわかる。
始まりの人のジレンマが。
変えようと思う度に変わらない現実が彼を打ちのめした。

『そんなことはない!我は時の記述だ!歴史の深淵を知る者だ!』
「ならば何故666回も歴史を変えようとしたのよ。
 何度やっても望む歴史にならなかったからでしょ!」
『違う!』
「なのに何故歴史を変えようとしているの?
 全てを破壊してまで何故歴史を変えようとするの?
 その可能性に縋っているからでしょ!」
『お前に何がわかる!!!』

大蛇は咆哮をあげる!

ゴォォォォォォォ!

体全身での拒絶
それは火星の大地すら揺るがした!

1号「くそ!手が付けられないぜ!」
Blue Fairy「相転移砲で一気にけりを付けましょう!」
アキ「でも、座標を干渉されない?」
Blue Fairy「大丈夫です。クラスタリングシステム掌握が機能しています」
アキ「わかった。お願い」
Blue Fairy「それじゃ行きます!」



ユーチャリス・ブリッジ


Secretary「胴体の尻尾を一気に消し去るわよ!」
Actress「総員、相転移砲の衝撃に備えて下さい」
Pink Fairy「相転移エンジン全開、座標軸固定
 いつでもどうぞ!」
Secretary「よし、撃てぃ!!!」

号令の下、ユーチャリスから相転移砲が発射された!

ヒギィィィィィィ!

何かが割れる音とともに大蛇の尻尾部分の空間が相転移を開始した!



古代火星極冠地上


巻き起こる爆風をエステの影に隠れて見ていたリョーコ達はその威力を目の当たりにした。

ヒカル「凄い〜〜」
リョーコ「けどあんなに凄い攻撃でも尻尾だけかよ」
イズミ「大きすぎる」
アカツキ「むしろ尻尾だけでも消えてくれることに感謝しなきゃ。
 あんな調子でいたらあいつを倒すのに何日かかるかわかりゃしない」

でも、これで胴体の3分の1は消し去ることが出来るはずだ。

誰もがそう思い、空間の相転移が終わるのを待った。

その光景を最初に見たのはアキトである。

月臣「凄い威力だなぁ。月で見たときの数倍はある」
アキト「ああ、これであの大蛇も幾分は・・・」
そう言おうとした矢先であった。

何かがおかしい。

アキトのカンがそう告げていた。
その感覚は間違っていなかった。

『我は滅びぬ・・・』

初めは小さな呻きであった。けれど・・・

『歴史を変える歴史を変える歴史を変える
 歴史を変える歴史を変える歴史を変える
 歴史を変える歴史を変える歴史を変える
 歴史を変える歴史を変える歴史を変える
 歴史を変える歴史を変える歴史を変える
 歴史を変える歴史を変える歴史を変える
 歴史を変える歴史を変える歴史を変える
 歴史を変える歴史を変える歴史を変える』

それは強烈な自己保存本能である。
いや、執念と言っても良い。
自身が滅びるかもしれない、その絶望が、恐怖が、彼の全てを剥き出しにさせた。

それはやがて姿を変える・・・

1号「なんだ!?何が起こった!?」
イツキ「隊長、あれ!」
1号「おい、冗談だろ!?」
2号「あれは・・・白い巨人?」

そう、それは形を変える。

アキ「どういうことだ」
Pink Fairy『自らの姿をイメージできなくなっている』
Snow White「それってどういうこと?」
Blue Fairy「まずいですね、自我が剥き出しになります」
アキ「それってどういう・・・」
Blue Fairy「窮鼠猫を噛む・・・もうアレは人の純粋な防衛本能だけの存在」
アキ「それがアレか?」

それは白い巨人
人の形をした醜悪な何か
自らをイメージ出来なくなった人間がぎりぎり自らを形作る事の出来た姿
白くて大きいだけの木偶人形
のっぺらとした巨大な物体は肢体を持つだけの存在だった。

けれど強烈な本能だけは存在していた!

『我は滅びぬ!』

ブォーーーーーン!

巨人は大きな手を振り払った。
それは駄々っ子のそれに近い。ただ嫌々しただけだ。
だがあまりにも巨大なその手はまともにゴッドゲキガンガーにぶつかった!

グワシィィィィン!!!

三人「ウワァァァァ!!!」
アキ「ゲキガンガー!」

しかし、彼女に他人の心配をしている暇はなかった!
ただ藻掻いて手を振りかぶるその行為がアキ達を次々と襲った!
ぶつかれば機体がバラバラにされそうであった。



Yナデシコ・ブリッジ


いい加減、非常識には慣れたと思っていたけど、ここまで非常識だと呆れるしかなかった。

ウリバタケ「今度は巨神兵か!?」
サリナ「いや、リリスって感じじゃない?」
ウリバタケ「あはは♪その通りだ」
ユリカ「笑っている場合じゃありません!
 あんなのどうするんですか!?」

ユリカは巨人を指さして慌てた。
口からグラビティーブラストを吐き出して、まるで本当に巨神兵みたいだ。

なにより・・・

ミナト「何となく回復してない?」
ユリカ「やっぱりそう思います〜」

ユリカは想像したくなかった事実を言い当てられて頭を抱えた。

メグミ「こちらの砲撃は効いているみたいですけど・・・」
イネス「でも、徐々にではあるけれど傷口が塞がっているわね」
ユリカ「ルリちゃん、ラピスちゃん、どうなってるの?」
ルリ「まずいです。強烈な彼の意志が逆流しかけてます」
一同「え〜〜!?」

そう、今ルリ達は必死だった。
爆発する敵の意志がこちらに流れ込みそうになっている。
どうにか4人で堰き止めているが、それに手一杯で相手の再生能力への干渉が徐々に間に合わなくなっている。

ユリカ「大丈夫なの!?」
ルリ「全然大丈夫じゃありません」
ラピス「くそ!くそ!」

スクリーンにはハッキングの攻防を表す図が映し出されていた。
緑はナデシコ側、赤が始まりの人側であるがさっきまでほぼ緑一色なのが現在は半分以上が赤に染まっていた。

「ルリちゃん達、本当にお願い、頑張って・・・」

ユリカは呻くように言う。
巨人はさらなる変化を遂げていたからだ・・・



火星極冠遺跡上空


巨人はさらに変化していた。
のっぺりとしていた白い皮膚にデスマスクが浮かび始めたからだ。

幾つも、幾つも、体中に隈無く現れた。

三郎太「ひぃ!なんだ、ありゃ!?」
秋山「苦悶、憎悪、執念、後悔・・・そんなところだな」
アララギ「さながら死霊の集合体といったところか・・・」

彼らの感想は的を射ていた。

体中に広がるデスマスクは口々に呪詛を述べていた。

『歴史を変える』『歴史を変える』『歴史を変える』
『歴史を変える』『歴史を変える』『歴史を変える』
『歴史を変える』『歴史を変える』『歴史を変える』
『歴史を変える』『歴史を変える』『歴史を変える』
『歴史を変える』『歴史を変える』『歴史を変える』
『歴史を変える』『歴史を変える』『歴史を変える』
『歴史を変える』『歴史を変える』『歴史を変える』
『歴史を変える』『歴史を変える』『歴史を変える』

まるで壊れたテープレコーダーのように・・・

アキ「ヤマサキだけじゃなく、今まで奴が憑依してきた人々の意識か」
Blue Fairy「そうですね。結局憑依された人達も歴史を変えたいと願いながらも叶えられなかったんでしょうね」

その成れの果てがアレだ。
変わらぬ歴史に絶望しつつも、捨てられぬ想いのために滅びることの出来ぬ怨念

アキは目を背けたくなる。
アレはいつかの自分
甘いだけの過去を捨て、
復讐人に堕ちながらも、
追憶の日々に戻りたいと悶えていた。

ひょっとしたら、自分もあのデスマスクの一つになっていたかもしれない・・・

けれど哀れむにはあの巨人は危険な存在だった。
溢れる怨念は彼女達のハッキングすら押し戻そうとしている。
もし押し切られたら・・・

Snow White「ねぇ、どうにかならないの?」
Blue Fairy「やってます!けど苦しいです」
Snow White「Blue Fairyちゃんでも?」
Blue Fairy「自我兵力が足りません。
 せめてもう一人いれば私が攻勢にまわるんですけど・・・」

あとほんの少しの差なのだ。
せめてあと一人が、いやこの時代のルリやラピスにもう少し能力があれば、自分が攻撃的なハッキングにまわれる。そうすれば彼の思念を寸断することだって可能だが、今の情勢ではそれも難しい。
逆にもし押し切られたら・・・

アキ「もし押し切られたら?」
Blue Fairy「考えたくないですけど、彼が既に暴走していることを考えると・・・
 無限に増殖ってのもあり得るかもしれませんね」
アキ「考えたくないわねぇ」

火星すら覆い尽くす巨人の姿・・・
本当に考えたくない想像であった。



火星極冠遺跡地上


「おい、貴様何をする!」
「悪い、途中下車してくれ!」

アキトはナデシコに向かわずに秋山らがいる辺りにアキセカンドを着陸させ、コックピットから月臣と気絶していた東郷を叩き降ろした。

「貴様、こんなところで俺達を降ろしてどうするつもりだ!」
「何って決まってるだろう!」
「まさか!」

まさかも何も、アキトが見つめている方向を見れば明らかだった。
彼の視線の先には暴れる巨人と必死に戦っているブラックサレナの姿があった。
むちゃくちゃに振り回される巨人の手を紙一重で躱していたが、ほとんど神業に近く、いつ叩き落とされるか心臓に悪い展開が続いていた。

「止めておけ!そんな機動兵器で向かって行ってどうなるものでもないだろう!」

月臣はアキトを止めようとする。
こんな機動兵器であの巨人に向かって行ってどうするというのだ?
月臣にすらその行為は無謀に思えた。

「ならあんたはあの人を助けに行きたくないのか?」
「何を言う!ダイマジンがあれば俺だって!」
「気が合うな。俺もそうだよ」

月臣の言葉に我が意を得たりとアキトはウインクした。

助けたいと思う事に理由などいらない。

こんな簡単なことなのに今まで回り道してやらなかったのだ。
色々なもっともらしい理由で誤魔化しながら諦めていたのだ。
一度ダメだったからと二度目もダメだろうと絶望していたのだ。

失いたくなければ何回でもぶつかれば良かったのに・・・

「後は仲間に拾ってもらってくれ」

アキトはチラリと見ると向こうの方から秋山らがこちらに向かってくるのが見えた。
それを確認してからアキセカンドを発進させようとする。
月臣は思わずアキトに声をかけた。

「・・・貴様、名は何という?」
「テンカワ・アキト」
「俺は月臣・元一朗だ。今度稽古を付けてやろう」
「師匠なら間に合ってるよ」

月臣の申し出にアキトは苦笑してコックピットに乗り込んだ。
そのままアキセカンドは飛び去った。
月臣は飛び立てる翼がまだある彼を羨ましそうに見送った。



火星極冠遺跡上空


ブゥン!
ブゥン!
ブゥン!

繰り出される巨大な張り手は彼らを徐々に追いつめていった。
それだけじゃない。

デスマスクはさらに盛り上がり、さらなる人型になっていった。
まるで巨人から湧き出る亡者である。
過去を変えることに憑り付かれた無数の亡者達・・・

2号「なんと醜悪な・・・」
イツキ「ぐ、グロテスクです・・・」
1号「だがしかし熱血の前には・・・」

ゴッドゲキガンガーが超熱血切りをしようとするとまるで亡者が群がるようにそれらのデスマスク・・・いや人間にも似た触手が襲いかかってくる。
まるで死神が彼らを抱きしめようとするかのように、無数に!

グワシィィィィ!

1号「しまった!」

とうとうゲキガンガーが捕まった!
それだけではなかった。

北辰「く!!!」

ベチン!!!

群がる亡霊達を躱す隙を狙って巨人の手が不知火を地面に叩きつけた!

ドスン!!!

アキ「北辰!!!・・・って別に死んでもいいか」
北辰「何を失礼な、生きているぞ」
アキ「ちぃ!」
北辰「ちぃとはなんだ」

生きているのを心底残念がったアキだが、不知火はもう動きそうになかった。
その分、亡者や巨人の攻撃はブラックサレナとホワイトサレナに集中した。

Snow White「システム掌握は?」
Blue Fairy「ダメです!まだ押されてます!」
Snow White「もう保たない〜〜」
Blue Fairy「わかってます!せめて・・・」

ホワイトサレナはディストーションフィールド全開で飛び回り、何とか亡霊達を振り切っていたが、これではじり貧だった。

そして・・・

「ならば、あいつのコアを破壊する!」
アキはブラックサレナを駆って巨人の顔に向かった。多分あそこに演算装置とともに『始まりの人』の意識もあるはずである。それを直接倒せば束ねられていた亡者達も分解するだろう。

けれど!!!

『我は神の力を手に入れた!MARTIAN SUCCESSORを越えたんだ!』

亡者の一つが襲いかかってきた!
それは未来の東郷の姿をしていた!
始まりの人に取り込まれていた彼の思念、
アキトに勝ちたいと願って止まなかった怨念
過去の東郷は彼の作る未来は違うと思っていたが、未来の彼はそれでも力に縋りたかったのだ!

グワシィィィ!

「しまった!」
『過去を変えようとしたものの末路だ!
 ともに死ねぇ!!!』

残念ながらホワイトサレナも亡霊に阻まれて助けに行けなかった。
東郷の形をした死霊はブラックサレナを抱きしめると口からグラビティーブラストを放とうとした。目の前で収束する重力波から逃れられないように思えた。

誰もが悲鳴を上げる!

その時!

「一人で死ぬのが寂しいだけだろ!甘えるんじゃねぇ!!」

バキィィィ!!!

東郷の亡霊を殴ったのは彼方から飛んできたアキトのアキセカンドであった。

『違う、違う、恐いわけじゃ・・・・』

その一撃で怨念の核を打ち砕かれたのか、未来の東郷であった亡霊は霧散した。

アキ「あ、アキト君・・・なんで・・・」
アキト「俺、あなたみたいに最後まで足掻きます!
 決して自分から逃げずに!」

アキトの姿を見てアキはようやくわかった。

そうか・・・変わるのは歴史じゃない・・・自分なんだ・・・

それがわかったからこそ、奇跡は起きた!



Yナデシコ・ブリッジ


ユリカ「ルリちゃん〜ラピスちゃん〜頑張って〜〜」
ルリ「頑張ってます。けど・・・」
ラピス「だ、ダメかもしれない」
ユリカ「そんな〜」

誰もが頭を抱える。
けれどその時、誰もが奇跡を目の当たりにした。
ちょっぴり騒がしい奇跡であるが

メグミ「ボース粒子増大!何者かがボソンジャンプしてきます!」
一同「なにぃ!?」

メグミの報告とともにスクリーンには何かがボース粒子とともに実体化される様子が映し出されていた。
しかも大きい!戦艦クラスみたいだ!!!

ジュン「また!?」
ユリカ「戦艦なの?」
メグミ「そのようです」
ゴート「敵か?味方か?」
メグミ「えっと・・・識別コードは地球連合、木連のどれにも一致しませんが・・・どうも味方のようです」
ジュン「ようですってどういう・・・」
メグミ「船籍が地球連合宇宙軍」
一同「連合軍!?」

連合軍の戦艦にあんな形のものはいない。
メグミは疑問を明らかにする船籍データをさらに読み上げる。

「制式番号UE SPACY NC996C ナデ・・・」

だが最後にその艦の名前をメグミは言えなかった。
なぜなら・・・

『ルリすわぁぁぁぁ〜ん!どうか僕を見捨てないで下すわぁぁぁ〜〜い』

これ以上はないという大音量の泣き声と情けない男の子が映ったウインドウによって遮られてしまったからだ(笑)



ユーチャリス


現れた戦艦を見たものの反応は様々だった。
特にここにはその艦をとても良く知っている人達がいた。

Secretary「ナデシコC!?」
Actress「でも、時空を越えてのボソンジャンプなんて・・・」

ナセルを開きながら出現する戦艦に彼女達は当然見覚えがあった。
ナデシコC、なにせほんの1年前まではナデシコ艦隊の旗艦だった艦である
もちろん彼女達もナデシコ艦隊で働いていたから知っていて当たり前だった。

けれど時空を越えてのボソンジャンプなどSnow White以外には誰にも出来ないはずじゃ・・・

Secretary「偽物?」
Pink Faiyr「いや、多分本物」
そう言ってPink Fairyは指を指す。それはスクリーン一杯に映し出された涙、鼻水にまみれた情けない男の子の顔であった。

『酷いじゃないですか〜よろしくって置き手紙だけで駆け落ちするなんて〜
 せっかくプロポーズするつもりだったのに酷いですよぉ〜
 給料の3ヶ月分のこれも買ったんですよ〜
 それなのに〜それなのに〜』

Pink Faiyr「あのヘタレ具合は本物のハーリーにしか醸し出せない」
Secretary「確かに(苦笑)」

確かにあんな情けない姿をわざわざ晒すために過去に戻ってくるなんて本人以外にはあり得ないだろう。

Actress「それだけじゃないですよ。ほら皆さんが」

どアップのハーリーに邪魔されて見えにくいが、ウインドウの端には我先にと映りたがるナデシコCのクルー達の姿があった。声から察すれば他にもたくさんいそうである。

ケン『ルリ君、なぜ相談してくれなかったんだ!僕はいつでも君の力になるのに!』
コウイチロウ『ユリくわぁぁぁぁ!なんだかよくわからないが、父さんが悪かった!帰ってきておくれ〜〜!!!
リョーコ『俺達をおいてパーティーやろうなんて水くさいんだよ!』
ミナト『ルリルリ♪九十九ちゃんの歯が生えたのよ〜見て見て♪』
ユキナ『ミナトさん、身重なんだからはしゃがないの!』
ヒカル『お盛んですねぇ、早速二人目ですか?』
ゴート『・・・むぅ』
イズミ『左官がお盛ん・・・なんちって』
ジュン『ユリカ、いくら何でも仕事押しつけすぎだよ〜〜』

なんか、オールスターキャストといった感があるが・・・

Secretary「これはつまりどういう事?」
イネス『オホホホ♪このクイーンイネス様が説明しましょう♪』
アカツキ『つまり君達の活躍を物見遊山しようかと』
ウリバタケ『ご都合主義と笑わば笑え!ワッハハハハ!』
イネス『こら!それは私の台詞でしょ〜!』

Actress「よくわかりませんけど、アイちゃんが混じって変になったイネスさんの力って事ですか?」
Secretary「いや、違うと思うけど・・・それにしてもこの映像をそのまま過去の人達に見せるのはまずいでしょ(汗)」
Pink Faiyr「大丈夫、向こうの通信には最初からモザイクとピーーを入れておいた」

確かにそれが賢明でしょう(笑)



火星極冠遺跡上空


『ルリすわぁぁぁぁ〜〜ん〜〜どうして駆け落ちなんか〜〜』

情けない顔で現れたハーリーであるが、Blue Fairyにとっては救いの神であった。

Blue Fairy「ハーリー君、ちょうど良いところに来ました!
 クラスタリングに参加しなさい!」
ハーリー『え?』
Blue Fairy「システム掌握に参加するんです!いいから早くしなさい!」
ハーリー『は、はい!』

昔の癖からか、ハーリーは慌ててBlue Fairyの指示に従った。

Blue Fairy「私の処理を引き継ぎなさい!状況は理解しましたね?」
ハーリー『あ、はい!』
Blue Fairy「背中は任せますから。しっかり守って下さいよ」
ハーリー『わかりました♪』

頼られているのがわかったのか、さっき泣いていた子供がもう笑ったとはこの事である。ハーリーは急にしゃきっとした男の子の顔になる。

ここに役者が全て揃った。
三隻のナデシコ、三人のオモイカネ、三人の妖精
そして二人の見習い妖精

本来のクラスタリングシステム掌握の威力を発揮するときが来た!

押され気味だった緑と赤の勢力マップが急速に緑一色に書き変わっていった。
それと同時に巨人も苦しみ始めた。

ウオォォォォォォォォォォ!

Snow White「亡者達が消えていく・・・」
Blue Fairy「始まりの人の記憶をパージしています。
 まぁ一種の増設に増設を重ねた記憶装置みたいな構造ですから」

残りの者達を防壁へ専念をさせた後、Blue Fairyは単身で始まりの人の心の中にハッキングしていった。人々の意識を渡り歩いた彼はいわば人の記憶を通して歴史を記録する存在でもあった。
人の人生・・・それは喜怒哀楽といった幾万の記憶の集合体であり、その一つ一つが亡霊として現れている。だから彼女はその一つ一つを丁寧に始まりの人から切り離していった。

切り離された亡霊はナノマシーンの霧となって霧散した。
それとともに巨人は薄皮を剥がれたタマネギのように段々小さくなっていく。

Blue Fairy「アキさん、今です!」
アキ「わかった!」

アキは今度こそ終わりにすべく、ブラックサレナを巨人の核に向けた。

薄皮を剥いでいった巨人の中心、
そこにいるのは・・・膝を抱えた人の姿であった。

『どうして歴史は変わらない
 何をやっても変わらなかった
 変えようと思ってボソンジャンプを編み出したはずなのに、そのおかげであの頃のアイネスはいなくなってしまった。
 なぜ歴史は変わらない
 なぜ・・・』

アキがそこに見たものはそれだけを繰り返す存在
全てに目を瞑り閉じこもる、まるで幼子のよう。
まるで囚われた心・・・

「もう十分じゃないか」

アキはそう言う。
でも彼は拒否した。

『ダメだ!私には歴史を変える力がある、資格がある!
 貴様だって歴史を変えるために過去へ来たんだろ!
 変えられる力があれば変えたいと思うだろ!』
「・・・」
『そうだ!お前の精神に憑り移らせてくれ!
 そうすれば歴史はお前の望むとおりだ!
 貴様の後悔して止まなかった歴史を書き換えてやるぞ!』

始まりの人は一つの提案をした。
それは以前の彼女には魅力的な提案だったかもしれない。
心が弱いままの彼女なら引き受けていたかもしれない。
けれど・・・

「もう良いんだよ」
『何故だ!昔の甘いままの自分が嫌いなんだろ!
 守りたい者をことごとく守れなかった自分を変えたかったんだろ!
 愛する者を奪われた自分の甘さを許せないんだろ!
 復讐人として生きてきて大切な娘らを裏切ってきた自分を許せないんだろ!』
「そうだね。今でも昔の自分は嫌いかもしれない」
『そらみろ!ならば変えたいだろう!
 変える力を得たいだろう!』

昔の自分は嫌いだ。けれどアキは首を振った。

「歴史は変わらないかもしれない。
 これから先、私が味わった惨劇はまたこの時代のアキト君に襲いかかるかもしれない。
 けれどわかったの」
『わかったとは?』
「彼はもうあの頃の私とは違う。
 たとえどれだけの絶望を味わっても顔を上げて立ち向かう・・・そんな気がするの」

アキは振り返ってアキトの姿を見る。
『俺?』って顔をするアキトであるが、彼女はそれを見て確信している。
たとえ同じ事が起こってもへこたれはしない。そう思えるから・・・

『ならば貴様はどうなのだ!
 後悔しているだろう!』
「後悔はしているわよ。でも・・・」
『でもなんだ!』
「変わらなければいけないのは私だって気づいたから。
 昔の自分を少しだけ愛せるようになったから。
 昔の自分を見て、歯がゆくてもどかしかったけど、それでも悪くはないと思えるようになったから
 何よりも、過去が変わらないと、過去を変えたいと願う自分自身が実は過去を変えないように縛り付けているんだとわかったから。
 だから・・・」

アキは慈愛を込めた声で彼に言った。
同じ、過去に囚われた者として・・・

「もう、過去を変えなくても良いのよ。
 アイちゃんは過去に戻っても幸せになったのだから」
『!!!
 そんなことはない!』

彼は頭を振った。
それは罪の意識
愛する女性を自らのエゴで消し去った事への贖罪

『過去を変えなければ彼女が彼女が彼女が・・・』

それが彼を捉え続けていた想いだ。
けれどもう一度彼女は優しく言う。

「もう良いのよ、もう変えなくて良いの」
『本当か?』
「ええ」
『そ、そうか・・・』

誰かにそう言って欲しかった。
もう良いのだと。
そう言ってくれるだけで良かったのだ。
囚われ続けていた念から解き放たれた『始まりの人』は静かに霧散していった。

「・・・お休みなさい」

巨人は静かに霧散していった。
そしてたった一つだけそれは残った。
薔薇の花の形をしたモノ、
ボソンジャンプの演算装置・・・
彼が八岐大蛇、そして巨人のナノマシーンのコントロール装置としていたものだ。
ブラックサレナは演算装置を受け取った。



The End of Future


「ん・・・そうか、良かったわね」
「どうした?」

イネス(仮)は在らぬ方向を向いて呟いた。

「何でもないわけないじゃないか!
 始まりの人が逃げ出したんだぞ!
 歴史が破壊されるかもしれないじゃないか」
「ん・・・その心配はもうないと思うわ」
「え?なんで・・・」
「数ちゃんが心配する必要はないわよ」
「数ちゃんって言うな!」

嫌がる彼をなだめながらイネス(仮)は思った。
自分の墓守としての役目の終わりと、自らも彼から解放されたことを・・・

『お兄ちゃん、今度こそバイバイ・・・』

「何か言ったか?」
「何でもないわよ」

彼女はその姿を解いて元のボソンの光に戻った。
遙か悠久の昔、自分でも忘れるほど昔の自分の姿を捨てることが出来た・・・



古代火星極冠遺跡・地上


ナデシコクルー達は地上に降ろされていた。
そして上空を見上げる。
そこには自分たちが乗員であったはずのYナデシコが浮かんでいたからだ。
ナデシコは今まさに離陸しようとしている。
乗員であるはずの自分たちを置いて

メグミ「でも本当に良いんですか?」
アカツキ「良くないぞ!せっかくの演算装置を!」
ホウメイ「まぁ私達にはまだ過ぎた代物だってことだよ」
アカツキ「しかし!」
エリナ「仕方がないでしょ、私達役立たずだったんだから」
アカツキ「く!」

ヒカル「プロスさん、ソロバンは?」
イズミ「ナデシコ一隻まるまるあの三人にあげるなんて」
プロス「私は守銭奴ではありません。第一無粋でしょう」
ゴート「無粋・・・ねぇ」
プロス「ええ、そしてナデシコは古代火星文明の英知を乗せた箱船となる・・・
 ロマンじゃないですか♪」
ウリバタケ「そんなもんかねぇ・・・」

リョーコとアキトのエステバリスがナデシコに遺跡演算装置を積み込むのをプロスは優しい眼差しで眺めた。

ユリカ「バイバイ、ナデシコ・・・」
ルリ「と、これでユリカさんは艦長からただの人に逆戻りですね」
ラピス「艦長、艦がなければただの人」
ユリカ「え!?そ、それは困るよ〜ナデシコ、カムバック〜〜!!!」

人の手の届かないところに捨てると決めたはずなのに、ようやく気づいたその事実にオロオロするユリカ(笑)

そして・・・

ユキナ「ミナトさん、どうしたの?」
ミナト「何でもないわよ・・・」

ミナトは空を見つめていた。
その先にあるナデシコを・・・
別にナデシコが恋しかったわけじゃない。
けれど目に焼き付けておきたかった。
まるで恋人と別れるかのように・・・



Yナデシコ・ブリッジ


ナデシコにはゲキガンライダー1号、2号、そしてイツキしか乗っていなかった。
ウインドウの向こうからBlue Fairyが別れの挨拶をした。

Blue Fairy『本当に良いんですか?』
1号「ああ、適当なところに捨ててくれば良いんだろ?」
Blue Fairy『そうですけど、これからナデシコと遺跡は狙われます。
 ずっと闇の社会を生きることになりますよ?』
1号「それこそ向かうところだ!
 悪の手先から究極兵器を守るなんざぁ勇者の務めだ!」
Blue Fairy『ハイハイ・・・けどイツキさんも良いんですか?』

一人盛り上がっているゲキガンライダー1号ことダイゴウジ・ガイに着いていくと言ったイツキを最後にもう一度慰留する。

イツキ「気にしなくていいですよ。どうせ私達は死んだことになっている人間ですし。
 それに隊長と一緒ですから♪」
Blue Fairy『・・・わかりました。あと、九十九さんは?』
2号「僕もかまいませんよ」

聞かれたゲキガンライダー2号こと白鳥九十九はキッパリした表情で答えた。

Blue Fairy『でもせめてミナトさんに生きていることを・・・』
2号「彼女の知っている九十九は死にました。ここにいるのはゲキガンライダー2号です。だから教える必要はないですよ」

彼は自分の体を見て言う。
体のほとんどを古代火星人のテクノロジーで作り出された機械の体だ。
そんな自分が彼女を抱きしめても因果な運命に巻き込むだけであろう。
ならば死んだ人間のままで良いではないか。

Blue Fairy『それじゃ、遺跡の演算装置はよろしくお願いします』
1号「ああ、任せとけ!」
イツキ「はい」
2号「ああ!」

通信が切れると三人は念じた。
Yナデシコがジャンプフィールドで包まれる。

イツキ「でも、演算装置を捨てた後はどうします?」
1号「海賊でもするか♪」
2号「海賊?」
1号「ああ、そうさ!名前も決めてある!
 海賊ガヴァメント!
 我が征くは星界の海・・・なんてな」
イツキ「それ良いですね♪」
2号「そうだな」

彼らは死んではいない。
確かに彼らの人生は我々の歴史に刻まれないかもしれない。
けれど歴史は一つじゃない。
ただ我々の認識している歴史の外側に行くだけだ。
ボース粒子に包まれた彼らは次なる冒険に出かけるのであった・・・



火星極冠遺跡地上


戻ったばかりのアキトはアキの姿を探して走り回っていた。
そして見つけたとき、ちょうど彼女はユリカ達と消え去るナデシコを見つめていた。

「アキさん、ここにいたんですか」
「あ、お疲れさん」

アキトを一別するとアキはまた見上げて名残惜しそうにナデシコが消える眺めた。そしてポツリと呟く。

「行っちゃったね、ナデシコ・・・」
「そうですね」

アキのその声がなんとも寂しげだったのでアキトは聞きそびれた。
けれどアキトが一番聞きたくない言葉をアキは予想通り言った。

「さて、私もそろそろ帰るかなぁ〜」
「アキさん、帰っちゃうんですか!?」

アキトはアキにしがみつく。
彼女はいつかはいなくなるはずの人間、そんなことはわかっていたはずだ。
けれど信じられなかった。

「どうして!」
「まぁ、これ以上私がここにいてもあなた達の創る未来を私が邪魔しちゃいそうだし」
「そんなことありません!そんなこと・・・」
「そんなことあるのよ」

泣きそうに訴えるアキトの頭をポンポンと叩いて慰めるアキ

過去を変えようとするものは、所詮自らの知っている過去に縛られる。
それが今回よくわかったから・・・

ラピス「アキ、帰っちゃうの!?」
ユリカ「アキさん、帰っちゃダメです!」
ルリ「そうです!ダメです!」

ユリカ達がそれを聞きつけてやってきた。
あっという間にナデシコクルー達が彼女を取り囲んだ。

ラピス「どうして?私のこと嫌いになったの!?」
アキ「そうじゃやないけど・・・私の大切な人達が迎えに来てるし」

泣き付いたラピスの涙を拭うとアキは上空を指さす。
空に浮かんでいるのはユーチャリスにナデシコC・・・
そう、彼女の大切な人達だ。

ラピス「大切な人?」
アキ「そう、私の大切な人達だから・・・」
ラピス「私は大切じゃないの?」
アキ「あなたにはもう他にも大切な人が出来たでしょ?」

泣きじゃくるラピスをアキは振り向かせる。
ユリカやアキトにルリ、そしてナデシコクルー達・・・

ユリカ「アキさ〜〜ん、お別れなんて寂しいです〜」
アキ「アキト君のことよろしくね♪」
ルリ「・・・お別れはこの前しましたから、何も言いません」
アキ「ありがとう」
メグミ「アキさん、いつでもお部屋に泊めてあげますから」
アキ「その時はお願いね♪」
エリナ「ふん!こっちはアキト君を鍛えてあんたより良い男にしてみせるからさっさと帰っちゃいなさい!」
アキ「あはははは・・・私は良い男かい」

他にもミナトやユキナ、ジュンにウリバタケ、プロス、ゴート、ホウメイ、ホウメイガールズらが口々にお別れを言った。



そして最後にアキトは・・・


「アキさん、俺・・・」
「大丈夫、あなたはもう一人で歩いていけるでしょ?」
「でも俺はまだまだあなたに教わりたかった・・・」
「君に教えることはもうないわよ」
「でも・・・」
「さぁ、顔を上げて」

アキはアキトの頬を掴んで、その瞳に覗き込んだ。

「あなたはこれからどんな困難にも耐えていけると信じているから私は安心して帰れるの。だから私を失望させるな!」
「は、はい!」
「よろしい♪」

そう言うと彼女は手を振りながらブラックサレナに乗り込んだ。
黒百合の名を持つ機動兵器は仲間を待つ艦に向かって飛んでいった。

その光が交わるとき・・・

ボソンのキラメキが辺りを包む。
そして彼らは消え去った。
彼女が帰るべき自らの世界に向かって

アキト達はただただその光景を眺めていた・・・



少し離れた場所


三郎太「結局あいつら何だったんでしょうね?」
アララギ「そりゃ、正義の味方だろ?」

三郎太の言葉にアララギが笑って答えた。
そしてもう一方ではいつまでも上空を眺める月臣の肩を秋山が叩いた。

秋山「フラれたか?」
月臣「フラれてなどいない!」
秋山「やせ我慢は止せ」
月臣「やせ我慢などではない!」

背中を見せてもその向こうではボロボロ涙を流していることは容易に想像できた。

秋山「ならもう和平は止めるか?」
月臣「それは・・・」

月臣は口ごもる。だがすぐに答えは出た。

月臣「和平は成す。それが友の、そしてナナコさんの願いだ!」
秋山「ならば、撫子の方々を地球に送ってあげよう」
月臣「だが我々は・・・」
秋山「そのぐらいのことが出来ぬようでは和平はおぼつかんと思うぞ?」

秋山は似合わないウインクをする。
しかし彼の言う通りだ。
草壁一派がどう動くかわからない。
現状は何も変わっていない。
和平が成るのか、成らないのか、それはこれからの自分たちの行動次第だ。

だからこそ・・・

まずは一歩進まねばならないのだから・・・



木連戦艦きさらぎ


そこでは騒動の間、ずっと膝を抱えていた草壁春樹の姿があった。
だが彼の頭上に影が差す。

「閣下・・・」

草壁を見下ろしていたのは北辰であった。

「閣下、立ち上がって下さい。仕切直しです」
「・・・」
「腑抜けている場合ではありません。これから和平派がすぐにも動き出します。
 こちらも行動を起こさねば」
「私の理想は・・・」
「あなたの理想はこんなところで朽ちるような代物だったのですか!!!」

北辰は草壁の胸ぐらを掴んで罵声を浴びせた。
その言葉に目を覚ましたのか、草壁は・・・

「・・・そうだな。全ては新たなる秩序のためだ」

草壁は瞳に力を取り戻した。
正義かどうかは別にして、彼は傀儡などではなくカリスマであった。
だからこそ、人は着いてきた。
その信念こそが彼を突き動かした。

「れいげつに戻る!」

草壁はすぐに指導者の顔を取り戻し、今後の政局を掴むべく行動を起こした。



そして・・・


「お前は目を覚ましたらどういう道を歩むか・・・」
北辰は冷たい瞳で眼下の東郷和正を見る。
彼はまた古代火星文明の力のみを求めるのだろうか・・・
それとも自分を討とうとするのだろうか?

「まぁ良い。テンカワ・アキト・・・
 いずれ我が伴侶にふさわしい器量を身につけさせてやろう」

北辰は危ない顔をしてほくそ笑んだ(笑)



火星極冠遺跡地上


それはまるで幻のようでもあった。
誰もが彼女が消えた空をいつまでも見上げていた。

ユリカ「アキさん、行っちゃったね・・・」
アキト「ああ・・・」
ユリカ「寂しい?」
アキト「べ、別に・・・」

覗き込むように顔を見たユリカにアキトは強がりを言う。

アキト「だって・・・」
ユリカ「だって、何?」
アキト「託されちゃったし・・・さ」

アキトは思う。
彼女が自分の未来だというのなら、
彼女が自分に想いを託して未来に帰ったというのなら、
彼女が変えたいと願った未来に変えるのはやっぱり自分の責任だから・・・
せめてあの人みたいになれるように精一杯頑張ろう

アキトはそう思った。

そんなアキトを嬉しそうに眺めたユリカは・・・

チュッ♪

アキト「!!!
 お、お前何するんだよ!!!」
ユリカ「元気が出るおまじない♪」
アキト「おまじないって、今自分が何をしたかわかってるのか!」
ユリカ「だって本来ならここで私達がキスをするのがアキさんの知っている歴史なんでしょ♪」
アキト「だからって〜〜」
ユリカ「それにアキさんにもお願いされたし♪
 それに将来わたしがアキトの奥さんになるんだし♪」
アキト「い、いや、それは・・・」

そんなユリカを阻止すべく立ち上がったはもちろんこの方々だ(笑)

ルリ「ユリカさん、勝手にそんな事決めないで下さい!」
ラピス「そうそう、アキトは将来アキになる予定。つまり私のモノ!」
ルリ「ちょっと待ちなさい、ラピス。いつからあなたのモノになったんですか?」
ラピス「ずっと前から」

言い争いを始めたのは彼女達だけではなかった。

メグミ「艦長!アキトさんに馴れ馴れしくしないで下さい!」
ユリカ「メグミちゃん、脱落したんじゃないの?」
メグミ「誰も諦めてません。強力なライバルのアキさんがいなくなるまで戦略的撤退をしていただけです」
ユリカ「戦略的撤退って・・・」

ここでも言い争いが始まった。

アキト「おい、お前たち、止めろよ・・・」
エリナ「ねぇアキト君、あなたこれでプー太郎でしょ?
 ネルガルに入らない?高給優遇で雇ってあげるわよ」
アキト「え!?」
エリナ「坊やっぽいところも抜けてきたみたいだし、もうちょっと頑張れば私にふさわしい男性になるわよ♪」
ユリカ「エリナさん!アキトに触らないで下さい!」
メグミ「そうです!」
ルリ「エリナさんも殲滅ですね」
ラピス「もちろん!」

アキト「いい加減にしろ!」
ユリカ「あ、アキト、待ちなさいよぉ〜」

アキトは逃げ出した。彼女達も追いかける。
周りのクルーはやれやれといつもの光景と呆れかえる。

サリナ「ったく、うちの馬鹿姉様は。
 あたしら姉妹は男運がないって言ってるのにねぇ」
イネス「全くねぇ」
サリナ「あなたは追いかけないの?
 アイちゃん混じってるんでしょ?」
イネス「まぁ焦らないわよ。20年待ったんだから」

イネスはアイちゃんのような表情でお兄ちゃんたちを優しく見守った・・・



エピローグの代わりに


「そういえば・・・結局私達って何の為に過去に来たんだっけ?」
「怪物退治じゃないの?」
「なんか大事な事を忘れているような・・・」
「そうそう、女になったアキさんを元に戻す為じゃなかったっけ?」
「思い出した!結局アキト、男の人に戻ってないじゃないの〜〜」
「そうですね」
「そうですね、じゃないわよ!どうするのこれから〜」
「心配ない。さっきイネスから連絡があって新種のクスリを発見したって」
「それって本当に大丈夫なの?」
「さぁ・・・」
「爆発したりして」
「嫌だ!やっぱり帰るの止める〜〜〜!!!」

彼女達の奮闘はまた別の講釈で(笑)



ポストスプリクト


ということで黒プリ最終話をお届けしました。

あぁ、長かったですねぇ。書き始めてから2〜3年ぐらいですか?
気が付いたら最長の連載になってしまいました。
途中からオリジナル色が強くなり、当初の明るい雰囲気からシリアスにスライドしたみたいに見えますが、テーマは変わっていないと思います。

1話のポストスクリプトで書いた言葉に次のような言葉がありました。

『如何に歴史を変えずにみんなを幸福にできるか?』

ですからお察しの通り、ラストはTV版の状況と何も変えていません。
ひょっとしたらこの後、やっぱり劇ナデの世界に繋がるかも知れません。
ラピスは北辰にさらわれ、アキトとユリカは新婚旅行で襲われ、火星の後継者たちは決起するかも知れません。
でもまぁ、今のアキト達ならそんな事も乗り越えていけるのでは?
あるいは未然に防ぐ事が出来るかも知れない。
そう思えていたらこの作品は成功なのでしょう。

まぁ多分後日談や外伝などしばらく書くと思いますが、本編の方はこれにて終了です。
今までお付き合い下さいましてありがとうございました。

ということでおもしろかったなら感想をお願いします。

では!

Special Thanks!!
・bunbun 様
・あめつち 様
・k-siki 様
・望月 コウ様
・スパイル 様