アバン


真実の歴史
もしもそんなものが存在するというのなら、
遙か未来の果てまで誰かが見ていたとしたら、
そしてその通りにしか時間は流れないとしたら、
今こうして足掻いている私達の行動は全て決められた結果に帰着するのでしょうか?

彼らの足掻きは全てが無力なのでしょうか?
誰かが見た未来の光景を変えることは出来ないのでしょうか?
私達は誰かの敷いたレールの上を走らなければいけないのでしょうか?

全てはあなたの気持ち次第
世界に壁はない
壁を決めているのはあなたなのだから・・・

ああ、これってSecond Revengeのラストとほんのちょっぴり関係があったりしますのでそのつもりで〜



火星極冠遺跡上空


1号「そうだ!今度こそ、我らは全てが揃う!」
2号「正義!」
イツキ「友情!」
1号「そして熱血!
 全てが合わされば無敵の勇者が誕生する!
 今こそ我ら三人ゲキガンチームは心を合わせる時!!!」
2号&イツキ「おう!!!」
一同「レッツ!超ゲキガイン!!!」

三人の叫び声は奇麗にシンクロした!

三機のガンガーロボは空中に舞う!
そして合体のテーマ曲が流れる中、何がどうなったかわからないがフウジンガーとライジンガーはゲキガンガーの肢体に取り付くように合体した!

1号「疾風迅雷!」
2号「絶対正義!」
イツキ「素敵に無敵!」
一同「究極合体!ゴットゲキガンガー降臨!!!」

なんか出てくる番組を間違えたかのような巨大ロボットが誕生した(笑)

「道化が・・・何をしようと未来は変わらぬ」
東郷は吐き捨てるように言う。
たった3人に、たった1機の機動兵器に何が出来るというのだ。
笑わせてくれる。

しかし、そんな東郷に1号はわかっちゃいないなぁと手を振って言う。

1号「だからわかっていないんだよ、悪役君は〜」
東郷「なんだと?」
1号「悪は必ず滅びる。それは何故かわかるか?」
東郷「悪は滅びるなどという言葉は物語だ。ファンタジーの中にしか存在しない」
1号「いや、違うね。なぜ悪は滅びるのか。
 それは簡単だ。誰も望まないからだ」
東郷「なに?」
1号「『全てを滅ぼして自分の望む未来に作り替える』だ?
 そんなことされてもみんな迷惑なだけさ。
 お前一人に都合のいい世界なんて誰が望むか!
 誰も望んじゃいない。
 そんなものに誰も手を貸さない。
 だから悪は滅びるのさ」
東郷「戯れ言を!」

1号の台詞を東郷は侮蔑する。
けれど2号も、そしてイツキもこう言う。

2号「確かに俺達はたったの3人だ。
 しかし俺達は足掻く者の背を見て立ち上がった。
 人一人の力など無力だ。
 けれど、人の覚悟は伝わる。
 人の歩いた軌跡は続く者たちを勇気づける。
 人は歴史という荒波に飲み込まれることもある。
 けれど時代を動かす波を作り出すこともある!」
イツキ「時に歴史は誤った方向に流れます。
 それは独りよがりの夢であったり、互いのエゴのぶつかり合いであったりします。
 けれど歴史を動かすのも人、
 誤った歴史なら変えようとするのも人!
 願うことで変わったりはしない。
 代償なしに変わったりはしない。
 誰かが・・・いえ、自らが変えようと血と汗を流さない限り変わったりはしない!」

それでも東郷は彼らの言葉をあざ笑う。

東郷「だから誤った歴史を変えようとしてる。
 本来あるべき真の歴史に」
1号「だからわかっちゃいない。
 お前は変えようとしているんじゃない。
 ただ自分の知っている歴史の型にハメようとしているだけさ!」
東郷「ぬかすわ!」
1号「何度でも言ってやる。
 お前の知っている歴史を実現しようとして満足するのはお前だけってことさ!」
2号「だからこそ正義は勝ち、悪は滅びる。
 人は本能的に光を求めるからさ!」
イツキ「そして誰かが光を求めて動き出します。
 そうやって人々は遅々たる歩みでも望む歴史を歩んでいくのです!」

ゴッドゲキガンガーはスーパーゲキガンソードを振りかぶって大蛇に向かっていった。
それはまさにアニメの一場面の様な息詰まる熱闘であった。



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第二十九話 時の記述<前編>



火星極冠周辺


少しであるが変化は現れていた。

それはかんなづきから始まった。

秋山「おもしろい!」
三郎太「・・・艦長?」
秋山「俺はあのゲキガンガーに加勢する!」
三郎太「か、艦長!何を馬鹿なことを!」
秋山「馬鹿じゃあるまい。あのゲキガンガーこそ俺達の憧れたものだったはずだ。
 ならば共に戦うのは武人の誉れ!」
三郎太「しかし撫子の戦乙女ですら屈したのですよ?
 我らの機動兵器ではとても・・・」

三郎太は必死に上官を止めようとした。
さっきからの戦闘をずっと見ていた。
だからこそ断言できる。
この戦闘は蟻が象に向かっていくようなものだ。
テツジンやデンジン程度では歯が立たない。
なぶり殺しにされに行くようなものだ。

しかし秋山はサバサバとした表情で言う。

秋山「どこに逃げる場所もない。
 黙っていても死ぬというのなら万に一つの勝機に賭けるしかあるまい?」
三郎太「そうですが・・・」
秋山「それになんというか・・・あいつらは他人のような気がしない」
三郎太「そ、そうですか?」
秋山「義を見てせざるは勇無きなり
 本懐を目の前にして逃げ出すは武人か?」
三郎太「そ、それはそうですが・・・」
秋山「ならば俺は行く!」

秋山はテツジンを操って戦場に向かおうとした。
戦乙女が行動で示した。立ち向かうことを。
それに応じて撫子が動いた。大蛇の首一つを潰した。
それらがゲキガンガーを呼んだ。彼らが忘れていた勇気と憧れていたものを思い出させてくれた。

今この時に変えずして何を変える!

アララギ「おもしろい、それに乗った!」
三郎太「あなたまで〜〜」
秋山「お前も物好きだな(苦笑)」
アララギ「貴様こそ、人のことは言えまい」
三郎太「あ〜〜もう!自分も付いて行きます!」
秋山「いや、俺達に付き合うだけなら止めておけ」
三郎太「しかし・・・」
秋山「勝てないと思っているのに戦って勝てる相手じゃない。
 いや、気合いだけで勝てると言っているわけじゃない。
 これは臆し、後悔して足を止めた瞬間に身を滅ぼす、そういう戦いだ。
 物好きに付き合う必要は無いぞ?」
三郎太「後悔なんてしません!
 俺も結構ゲキガンガー好きッスから!」
秋山「よく言った!それじゃこれから加勢する!」

秋山、アララギ、それに三郎太のゲキガンタイプは大蛇たちに戦いを挑んだ。
たった三機の機動兵器が加わっただけのこと

けれどそうやって歴史は徐々に変わっていく。
それを望む者達が連なりさえすれば・・・



ある少女が見た夢


夢・・・

夢に見た・・・

こことは違うどこか・・・

お兄ちゃんからミカンを貰った後・・・

何事もなく日常は過ぎていく夢・・・

数年後、私は少女になる・・・

あの人は火星一の素敵なコックさん・・・
私はあの人のお店でウエイトレスになるの
小さくても繁盛しているお店・・・

あの人は年の差を気にするというか、いつまでも子供扱いする・・・
もう結婚してもいい年頃なのに、失礼しちゃうわ!
そのくせ、たまに何か言いたそうに赤くなったと思ったら、そっぽ向いてどっかにいってしまうの。
何を言いたいかはわかってるけど、言葉にして欲しいから知らんぷりしていたわ。
でもこのままだと何年経つかわからないのよねぇ
だから今度は私から言ってあげるの

「結婚しましょう♪」

その日はちょうど終戦記念日

あれから9年が経過した。
9年前、木連と地球連合がアステロイドベルトで戦争を始めた。
戦争の中で私達は出会った。
最前線基地である火星が戦場になるんじゃないかと心配だったけど、結局そうはならなかった。
そして火星に戦火が及ぶことなく戦争は終わった。
地球と木連は和平をしてから8年目の記念日
あれから8年、ゴタゴタしたけど、ずっと平和だった。
そして幸せだった。
だからこんな幸せがこれからも続くものと思っていた。

ずっと続くものとばかり思っていた・・・

それは夢・・・

醒めないで、と願う夢・・・



八岐大蛇・頭上


「アイネス、それは夢ではない。
 真実の歴史だ。
 だからこそ、『時の記述』を真の姿に戻そう。
 その為に力を貸しておくれ・・・」

東郷・・・いや別の何者かの口調で男はアイちゃんの彫像を撫でた。
愛おしそうに・・・

そして・・・

オォォォォォォォン

大蛇は咆哮をあげる。
まるで東郷の言葉に応えるように・・・



Yナデシコ・医療室


「お兄ちゃん・・・助けて・・・」
「イネスさん・・・」

うわごとのように呟くイネスを介抱するサユリ達ホウメイガールズらは居たたまれなかった。それ程までに今のイネスの姿は痛々しかった。

もう一人の自分
自らの半身を遺跡に吸収されてどんな気分で居るのだろうか?

そして、どんな夢を見ているのか・・・



火星極冠遺跡上空


1号「超熱血切り!!!」

ゴッドゲキガンガーの斬撃は大蛇の胴体を薙いだ。
しかし、切ったそばからすぐに引っ付く。
まるでダメージを感じていないかのようだ。

2号「ならばゲキガンビーム!」

ゴッドゲキガンガーはグラビティーブラストを放つ!
敵の胴体に穴を空けるほどの威力だ。
しかし、開いた穴はたちまち塞がる。

しかも気を抜けば別の大蛇からの攻撃を受ける。

イツキ「全然効きませんね・・・」
1号「仕方がない。大技にはタメの時間が必要だ。
 この攻撃の嵐じゃおちおちポーズを取ることもままならない」
2号「いや、そういう問題じゃない気が・・・」

確かに今はゴッドゲキガンガーだけで戦っている状態である。
そんな中で全ての大蛇の相手をしようというのはかなり厳しい。

1号「だが俺達は負けられない!
 俺達を信じて立ち上がってくれる者たちのために!」
2号「よく言った!その通りだ!」
イツキ「わかりました、隊長!
 どこまでも付いていきます!」

ものすごい攻撃をマトリックス並のSFXで避けていくゴッドゲキガンガー(笑)



火星極冠地上


プシュルルルルル〜〜

そこではとうとうPODが擱坐してしまった。
さすがに先ほどの無理が祟ったのだろう。
アキセカンドがPODをゆっくりと地上に降ろす。

アキ「くそ!これからって時に!」
アキト「何を言ってるんですか。そのダメージ、命がある方が不思議なんですから」
アキ「今まで何度も死にかけてるのよ。このぐらいどうって事無いわ」
アキト「そんなに威張れる事じゃないですよ」

アキトは苦笑する。
しかしアキには歯がゆかった。
アキトやユリカ達が『始まりの人』の支配を振りほどくことが出来た。
今がチャンスなのに!
この好機にPODは半壊、戦場では非常識で愉快な存在であるゲキガンガーが戦っているだけだ。

このままでは・・・
本人達は真剣なのだが、端から見ていると半分滑稽に見えるゲキガンガーの戦いっぷりにアキは臍を噛んだ。

アキ「くそ!何とかしなきゃ・・・」
アキト「アキさん、あれ・・・」
アキ「あれは!?」

アキトの指さす方を見るとそこには・・・

秋山「加勢に来たぜ!」
アララギ「妖精の為に戦うはナイトの誇り」
三郎太「逃げたいさ、けれど逃げられない一戦もある!」

テツジンとマジンそれにデンジンの三機だ。

僅かだが何かが変わってきた気がする。
確かに、何かが・・・



木連戦艦・きさらぎ


眼前には草壁春樹がいる。
呆けたような顔をしてへたり込んでいた。
北辰は思う。
これは望んだ結果なのか?

新たなる秩序を手に入れる。

確かに古代火星人のテクノロジーは手に入れたかもしれない。
しかし、それは東郷のみが独占し、そして支配しようとした世界そのものを消去しようとする勢いである。
そして盟主草壁春樹のこの状況・・・

これが望んだ結果なのか?

手に入れて、歴史を自らの有利なものに変える。
そう思って動いてきたこれが結果なのか・・・

さすがの北辰も迷いがあった。

と、そこに・・・

「レッツ!ゲキガイン!」

後ろから声がする。
北辰が振り返ると、そこには木連の戦闘服・・・というか、海燕ジョーのコスプレをしたゲキガンスーツ姿の月臣元一朗が立っていた。

月臣「久しぶりの気がするな、北辰」
北辰「元一朗か・・・まともな顔になったな」

北辰には一目でわかった。
さっきまでのような腑抜けの顔ではない。
目を背けていたことから克服し、立ち直った男の顔だ。

北辰「それでどうする?決着でも付けるか?」
月臣「そんな顔のお前と決着を付けても意味がない」
北辰「言うわ!」
月臣「それよりも友が呼んでいる・・・
 親友らしきことを何一つ出来なかった俺をあいつは呼んでいる
 そんな気がする」
北辰「それはただの亡霊が地獄に誘っているだけかもしれんぞ?」
月臣「だとしてもだ」

なぜこの男はあの心神喪失の状態から抜け出せたのだろう?
北辰はそれが不思議でならなかった。

そんなことを考えていた北辰へ月臣が逆に尋ねた。

月臣「これがお前の望んだ結果か?」
北辰「なに?」
月臣「これがお前の望んだ結果か?と聞いている」

確かシャロンにも同じ台詞を聞かれた。
けれど我らは新たなる秩序を成し遂げる。その為には古代火星人の英知を手に入れなくてはいけない。
だからこそ、その全てを知っている東郷に・・・いや『始まりの人』などという訳の分からない存在に手を貸した。

奴が言うには我らは「新たなる秩序」を成し遂げる。
そう『時の記述』に書いてある。
けれど彼らのせいでそれは成し遂げられなかったらしい。
妖精と闇の王子の物語・・・
時空跳躍を操る彼らのせいで歴史はねじ曲げられた。

東郷は元の歴史に正すために手を貸せという。
本来の歴史を見せられた。
それは変えるべき未来であり、本来我々が栄華する歴史なのだと知った。

だから力を貸したのだ。
草壁閣下に真実を告げずに・・・

けれど・・・本当にこれはあの時見た真実の歴史なのか?
新たなる秩序が結実する歴史に繋がる光景なのか?

月臣「望む未来なのなら、そこで立ち竦めばいい。
 俺は・・・進む」
北辰「友に嫉妬し、友を殺め、それでも何を求めるという。
 亡霊に取り付かれて死に急いでいるだけだ」
月臣「たとえ亡霊でも・・・友の助けになるなら・・・」

月臣はそれだけを言うと部屋を出ていく。
後に残された北辰はただ黙って草壁春樹を眺めるだけであった・・・



火星極冠遺跡上空


現在、7匹の大蛇に4機の機動兵器。
戦力差でいえば7対4だ・・・
とはいえ、大蛇の巨大さに比べたら同じ比率で比べて良いものか?と悩んでしまう。
新たに加勢に来た3機のゲキガンタイプであるが、ハッキリ言って役に立っていなかった。

秋山「うわぉっと!」
アララギ「アマガワ嬢は本当にこれを一人で避けていたのか!?」
三郎太「艦長、これじゃおちおち攻撃できません!」

彼が悲鳴に近い声をあげるのも無理はない。
ゲキガンタイプの様な機動力の低い機体でこんな大蛇から攻撃が乱れ飛んでくる空間で満足に戦えるはずがない。
ゲキガンビームを撃とうとすると触手や重力波砲を浴びせられ、回避を余儀なくされる。おちおち発射態勢になることも出来ない。

けれど、目下大蛇に有効な攻撃はグラビティーブラストだけであり、それ以外はたちまち修復されてしまう。

三郎太「艦長、ここは俺が!」
秋山「馬鹿、逸るな!」
三郎太「ゲキガンビー・・・」

体勢も整わないのに無理矢理グラビティーブラストを撃とうとする三郎太のデンジン!
しかしその攻撃は見透かされていた。

ズゥゥゥゥゥン

頭上にのし掛かるような大蛇の首があった!

秋山「三郎太、危ない!」
三郎太「え?うわぁ!」

そのまま押しつぶされようとするデンジン!
しかし!!!

ダダダダダ!

ミサイルや砲撃が大蛇の顔を撫でる。
大した攻撃ではなかったのだが、その存在に驚いた大蛇は一瞬そちらを振り向く。

ヒカル「やっぱり恐いよ〜」
イズミ「おろちだけにおそろちい〜なんちって」

ビクビクしながらも砲撃をしたのはヒカルとイズミであった。
怒った大蛇は思わず彼女達を攻撃しようとしたが、攻撃はさらに別の所から現れた。

リョーコ「隊長に出来て!」
アカツキ「僕たちに出来ないはずがない!」
リョーコ&アカツキ「くたばれ化け物!」

頭上からやってきたのはフィールド全開で突進してきたエステバリス・リョーコ機とアカツキ機であった。
そしてハードナックルで殴る瞬間、拳にディストーションフィールドを集中させた。

バコン!!!
二機のハードナックルは見事同時に大蛇の頭に強烈な一撃を喰らわせた。

リョーコ「今だ!撃て!」
三郎太「お前ら・・・」
アカツキ「早くしろ!」

二人は三郎太達に振り返って言う。
彼らはグラビティーブラストを撃つタイミングを決死の行動で作ったのだ。
それを悟った三郎太はこのチャンスを逃すことはしなかった。

三郎太「ゲキガンビーム!!!」
秋山「撃て!」
アララギ「ファイア!!!」

三機のゲキガンタイプが共にグラビティーブラストを掃射した。

ドゴォゥウウウウ!

大蛇の土手っ腹に大穴が空いた。
しばらくは復活しないだろう。
秋山達は慌てて参戦した相手を振り返る。

「君たちは・・・」

そこにいたのはナデシコのエステバリス隊の面々であった。
格好良く騎兵隊登場か!?と思われたのだが・・・

アカツキ「こ、恐かったよぉ〜〜
 ちびりそうだったよぉ〜〜」
リョーコ「こら!折角カッコつけて助けに来たんだから情けない顔するな!」
アカツキ「そういうリョーコ君だって涙目になってるじゃないか〜」

二人とも格好を付けて出てきた割には引きつった泣き顔でボロボロだった(笑)

三郎太「そんな顔をするなら来なきゃ良いのに・・・」
リョーコ「馬鹿野郎!んな危なっかしい戦い方する奴らを見捨てられるかよ!」
三郎太「お前達に言われたくない」
リョーコ「何だと!」

怒ってみせるリョーコであるが、もちろん平気なわけはない。
今も膝はガクガクしている。
恐くて恐くて、逃げ出したくて仕方がない。
勝てるつもりなんて更々ない。

でも・・・

何のためにわざわざ負けるとわかっている戦いに戻ってきたのか?
みんな言葉にしなくてもわかっている。

変えるために何かをしなければいけない
たとえ絶望的でも
最後の瞬間まで足掻かなければ
それをあの人は背中で語って見せたから
その姿に憧れるからこそ、その背中に付いていこうとする・・・

それはごく当たり前のことなのだ。

1号「お前ら、よくぞ言った!」
2号「よし!共に正義のために戦おう!」
イツキ「これぞ熱血、これぞ友情ですね!感動しました!」
アカツキ「いや、別に正義や友情のために戦う訳じゃないんだけど・・・」
ヒカル「まぁまぁ、折角盛り上がっているんだし♪」
イズミ「水を差すいい男・・・なんちって」
三郎太「それをいうなら水も滴るいい男じゃないかと」
秋山「たとえ信じる正義は違えど、望む事はただ一つ!」
アララギ「俺達は俺達の信念のために動き、足掻く。
 それは断じて奴の言う歴史に従う為じゃない!」
リョーコ「よっしゃ!んじゃ最後の最後まで粘ってみせるぜ!!!」
一同「おーーーーーー!!!」

火星に反撃の凱歌が響きわたった。



火星極冠地上


その光景を見ていたアキは静かに泣いていた。
アキトもその光景を喜んでみていた。

「アキさん、みんなが♪」
「うん、わかっている・・・わかってる」

みんなの気持ちに感謝するとアキは俄然やる気を取り戻した。

「アキト君、そっちに乗り移るわ!ハッチを開けて」
「え!?」
「私達も参戦するわよ!」

アキはウインクして言う。
アキトは彼女の意図をすぐに理解した。
擱坐したPODを乗り捨てて、アキセカンドでアキトと一緒に戦おうというのである。

すぐさまアキセカンドのハッチを開くと、アキは飛び込むようの乗り移ってきた。

アキ「アキト君は前!」
アキト「えぇぇ!」

アキは有無も言わさず自分がシートに真深く座り、その前に抱きかかえるようにアキトを座らせた。
さながらナデシコ発進の時にエステで囮をしたときの再現だった。

あの時と一緒で背中に当たる感触を戸惑いながらアキトは抗議の声をあげるが、アキはかまわずPODから持ち込んだAIレイの戦闘データをインポートしていた。
たまりかねたアキトが必死に訴える。

アキト「アキさん、お、俺が後ろに座りますから・・・」
アキ「いいからいいから♪」
アキト「良くないです!Gで体重がかかったらアキさん押しつぶれて・・・」
アキ「私はそんなにやわじゃないわよ」
アキト「いや、何というか・・・」

アキトはモジモジしながらも言う。
もうあの時の自分じゃないと。
彼女にサポートしながら路上講習をして貰わなくても一人前に操縦できると。

アキ「生意気言ってるんじゃないわよ、はなたれ小僧が」
アキト「小僧じゃありません!」
アキ「さっきまで勝てない勝てない言っていたのに?」
アキト「いや、それは・・・」

子供扱いされて怒るアキトであるが、意地悪っぽく小突くアキの前ではやはり子供のままだった。
だが、今度こそ大切なものを守るという決意を秘めたアキトの目を見てアキはニッコリ笑った。そして・・・

アキトがIFSのコンソールに手を置く。
そしてその上からまるで握手するように手を重ねるアキ。

アキ「さぁ、囚われのお姫様を・・・アイちゃんを助けに行くわよ!」
アキト「はい!」

アキセカンドは再び大空に飛翔した。
二人のアキトを乗せて再び戦う為に・・・



ある少女が見た夢


2205年、私は大学に通っている。
これでも飛び級なの。
エッヘン!

でもそうやって自慢するとあの人は・・・

「アイちゃん、頭が良いから当然だよ」

と言って頭を撫でる。でもそれってとても誉められている気がしないんだけど!

・・・とはいえ、少し悩んでいたりもする。
将来はあの人の料理店を一緒に盛り上げるんだ!って思ってきたんだけど、なんかお勉強もおもしろかったりするんだよねぇ・・・

「そうか、アイちゃんは学者さんになるのも似合っているんじゃないか?」

というあの人の言葉は嬉しい反面、なんか悲しかったりもする。
学者さんと料理店のシェフ・・・なんか不釣り合いな気というか、別世界の住人のような気もする。
ううん!ダメダメ!
学者さんがウェイトレスをしているレストランがあったって良いじゃない!
うん、そう思おう!
第一、アキトさんのご両親だってネルガルだけど研究員をされているし。

まぁそれはともかく、今火星はちょっとした大学ラッシュになっているの。
何故って?
それは戦後に極冠遺跡が公表されたから。
何でも古代火星人が残した遺跡らしい。

木連軍が繰り出した無人兵器も元は同じものらしいの。
ディストーションフィールド
グラビティーブラスト
相転移エンジン
ナノマシーンテクノロジ
そのどれもがその極冠遺跡からもたらされたものらしいのです。

で、火星には科学者達が大挙して訪れ、その研究に躍起になっているっていうわけ。
だからといって、私が易々と飛び級出来たのもそのおかげって訳じゃないのよ。
・・・いや、念のために言って置くけど。

さて、私が大学に入って専攻を取ったのが『超対称性理論』
え?すごい難しそう?
そんなに難しくないのよ。
私達の知ってる陽子、中性子はフェルミオンと呼ばれる物質だけどそれと対称性を持つ物質ボース粒子が存在するって言う理論なの。
その理論が説ければ何が得するかって?
すごいのよ!これまで素粒子理論でどうしても統一できないとされていた4つの力を全て統一できるという・・・

「へぇ〜アイちゃんはすごいなぁ。そんなことわかっちゃうんだ。
 俺なんて学者の息子だっていうのにさっぱりだよ」

あ、すぐそうやって話の腰を折っては逃げようとする〜〜
これからが良い所なのに〜〜ブーブー

「アイちゃんの説明に付き合ってると時間がいくらあっても足らないからね(苦笑)」

あ、お兄ちゃん、ひっどい〜〜

「あれ?そろそろ大学じゃないの?」

そうだった!遅刻しちゃう〜〜

「だからお店に顔を出すのは夕方で良いって言ったのに」

もう!こうでもしなきゃ合う時間ないじゃないの!

「でも勉強忙しいんだろ?」

そんなこと関係ないの!それじゃ行って来る!

「はい、トースト」

あ、サンキュー♪
こうして私はお店のトーストをくわえながらいつものように大学に向かうの。

そして・・・

2時限目、歴史の授業
これはものすごく退屈だ。

「こうして2195年、アステロイドベルトで戦いは始まった。
 一時期は優位だった木連軍は火星に迫る勢いだったものの、徐々に盛り返す地球連合軍に押される形となった。
 戦線は膠着状態に陥り、2196年和平条約を結んで終戦しました」

この先生、教員になる前は軍にいたせいもあってか、退役前のあの頃を懐かしんで良く戦前の話ばかりをする。

つまらない授業だけど、一般教養の単位を取らないといけない。
我慢我慢

大丈夫、午後には良いことがある。
今日から研究室にはいるのだ。
この大学は主に極冠遺跡の研究に従事する教授が多い。
出資企業も色とりどりだ。
中でもネルガルの出資額は半端じゃない。
この大学の理事の一人という噂もある。
まぁそんなこんなで、この大学ではこの極冠遺跡の研究をしている研究室は花形であり、将来の企業就職の覚えもめでたく、倍率も高い。
もちろん、私はあの人の所に永久就職が決まっているから就職はどうでも良いんだけど。

でもやはり研究の質は研究費で決まる。
世の中お金とは思いたくないけど、こと研究に関してはお金がかかる。
そういった意味ではやりがいのある研究は総じて人気が高い。

もっとも、難しすぎて学生が遠慮してしまうという研究室もある。
普通の学生にとってはいくらやりがいがあっても単位をくれない先生は苦手だから。

何ですって?遊びたいから楽できる研究室に群がるんじゃないかって言う人は!
うちの大学に入ろうって人は遊んだりしないわよ
・・・ほんのちょっぴりいたりはするけど

ともかく、私は一番難しくてやりがいのありそうな研究室を選んだ。
やはり興味があったからと思う。
そのかわり、この研究室は競争率は高くない。
難しすぎるらしいとは先輩の弁だ。

「超対称性理論とレトロスペクトの研究」
それだけ聞かされると訳がわからないかもしれない。
まぁ掻い摘んで話すとタイムマシーンを作ろう・・・ってことらしい。

中にはそんなこと出来ないって言う人もいるらしい。
実際、極冠遺跡を調査しているグループの話を聞くと、そういうものを開発していた節はあっても実現された形跡はないそうだ。
つまりは極冠遺跡を作った超高度文明ですらそんなこと不可能らしいの。
相転移エンジンを作り、ディストーションフィールドやグラビティーブラスト、数々の無人兵器を生み出した超高度文明ですら出来なかった。

だからそんなこと出来るはずがないというのがみんなの意見だ。

でも、だからこそおもしろいと思う。
理論としても筋が良さそうだし、チャレンジするのも悪くないと思うの!
なんか学者魂が燃え上がるのよねぇ!

・・・だから私はあの人の所に永久就職するんだって(笑)

友達はあんな研究室止めた方がいいって言うけど、私はあまり気にしていない。
退屈な授業に比べれば万倍楽しいと思う。
だから私は今日を心待ちにしていた。

私は研究所をノックする。

コンコン・・・

あれ?誰もいないのかしら?

「あ〜〜済みません。今からちょうど実験なんですよ〜〜」

部屋の奥から気の抜けた声が聞こえてくるので私はテトテトと部屋の中にはいると・・・

「ちょっと待っていて下さいねぇ〜〜
 これから世紀の大実験が始まるんですよぉ〜」

本当に世紀の大実験が始まるの?っていうぐらい間延びした声が返ってきた。
そ〜っと覗いてみると・・・

ゲキガンガーの超合金!?
仰々しい機械の真ん中にちょこんと乗せられているのはおもちゃだった。
先生は依然私に背を向けながら機械の操作をしていた。
この先生は一体何をしようというのだろうか?

「いやねぇ、なかなか成功しないんですけどねぇ、もう少しなんですよ〜
 でも今日は何故か成功しそうな予感がしますよ〜
 何せ幸運の女神様が来て下さいましたからね〜」

幸運の女神?
その人は後ろ向きに私を指さす・・・
私が幸運の女神!?

「ええ、そうですよ。君の素粒子の実験レポート、あれは刺激的な内容でした。
 ちょっと盲点を突かれました〜って感じでしてねぇ〜
 まぁ模範解答からいささか離れすぎていたので点数は低くせざるをえませんでしたが・・・
 君のレポートのおかげでインスピレーションが湧きましてね〜」

いや、あのレポートは別に・・・
そんなことを考えていると先生はいきなり機械を操作しだした。
台の上に蒼い輝石を放り込む。

すると台の上の超合金ゲキガンガーがピカピカ光りだした!

ブォォォォン!

あ、消えた!

そして私のすぐ後ろに気配がした!

ブォォォォン!

「あ〜〜やっぱり失敗しましたねぇ〜〜
 やはりここのコンピューターだけじゃ計算し切れませんでしたか〜〜
 でもまぁ一部だけは戻ってきましたから良しとしますか〜〜」

振り返ると、そこには超合金ゲキガンガーの右のパンチだけが転がっていた。

・・・ひょっとしてあそこからここに瞬間移動したの?

「そのパンチだけはね。それ以外はどこに行ったか私にすらわかりません」

で、でも・・・

「そう、人によってはただのマジックだ〜〜トリックがあるだろう〜〜
 って言われるんで成功の内には入らないかもしれませんねぇ」

え?マジで?本当に本当なの?

「信じるか信じないかは任せますよ。
 でもボソン−フェルミオン変換定理により物質をレトロスペクトへ変換する。
 もしこれが可能なら相対性理論なんか崩せると思いませんか?」

先生は相変わらず気の抜けた声で話す。
けれどその発想は悪くない。
私もそういうことちょっとだけ考えてみたことあるの。
遅延波に干渉されない未知の物質があったら・・・
それは先進波の波動にて過去へ行けるのではないのか?
ならば時間と空間の概念そのものが無効化出来ると

「どうですか?アイネス・フランチェスカ君
 僕の研究室に興味を持ちましたか?」

はい!

私は嬉しくてそう返事をした。
手品を見せられたからかな?
タイムマシーン、瞬間移動。
そういったワクワクする未知のテクノロジーを研究できると思ったからかな?
私はたまらなく嬉しかった。

だから気づかなかったの
それが幸せを足下から崩す道に繋がるなんて
気づかずに彼の手を取ってしまった・・・

そう、彼の名前は・・・

「ようこそ、我が研究室へ
 僕はこの研究室の助教授で山崎義男と言います」

出来ることなら夢の中の自分にそれ以上先に進んでは行けないと忠告したかった・・・

それは夢・・・

醒めないでと願う夢・・・



八岐大蛇・頭上


「そうだ。恐れることはない。
 歴史をあるべき姿に戻すのだ。
 この偽りの世界では君の夢は醒めてしまうぞ
 だから私に手を貸しておくれ」

東郷はアイちゃんの彫像を撫でる。
愛おしそうに・・・
まるで東郷という人物とはかけ離れた顔で・・・
愛おしそうに撫でた・・・

すると大蛇は彼の言葉に従った。

オォォォォォォォォン

でもその咆哮がなぜか悲しげに聞こえるのは気のせいだろうか?



火星極冠遺跡上空


その咆哮一つで先ほど穴の開いた大蛇の体はたちまち修復されてしまった。

「なにぃ!」
見違えるように動きの良くなった大蛇に驚くゴッドゲキガンガー達。

オォォォォォォォォン

ゴッドゲキガンガーに襲いかかる大蛇の首!

1号「させるか!2号、お竜!」
2号「おう!」
イツキ「させません!」
三人「ゲキガンバリアー!」

大蛇からの重力波砲を浴びる瞬間、なんとか強力なディストーションフィールドを張ることに成功したゴッドゲキガンガー
しかし大蛇の首はそのままゴッドゲキガンガーに突っ込んできた!!!

イツキ「隊長!」
1号「慌てるな!うっちゃる!」
2号「そうだ!三人の力を合わせれば!」
ゴッドゲキガンガーは両腕にフィールドを集めるとそのまま大蛇のヘッドバットを両手で受け止めた。

・・・受け止めたというか、単に掴まっただけというか(笑)

そのまま暴れる大蛇の首に押されてゴッドゲキガンガーは何kmも引き吊り回された!

2号「うっちゃるんじゃなかったのか!」
イツキ「隊長〜」
1号「俺様の辞書に不可能の文字は1文字しかねぇ」
2号「なぜ1文字?」
1号「気にするな。うりゃぁぁぁぁぁ!!!

ゴッドゲキガンガーは根性と気合いとガッツで大蛇の首の進行方向を上方に向けた。
そしてその勢いでそのまま突進方向に捻りを加えた。

1回転!2回転!3回転!

すると・・・

1号「よし!団子結びだ!」
2号「ウソみたい・・・」
イツキ「さすが隊長!」

大蛇、自分の首に絡まる(笑)
しかし喜んでいられるのもほんのわずかの間だった。

オォォォォォォォォン

本気で怒ったらしく、すぐに団子をほどくと鎌首をもたげてゴッドゲキガンガーに向かってきた。しかも他の大蛇の首も一緒にである(笑)

イツキ「隊長の馬鹿!」
1号「お前だってさっきはさすがって言ったじゃないか〜」
2号「火に油を注いだか・・・」

必死になって逃げまくるゴッドゲキガンガー
しかし他の機動兵器たちはというと・・・

ヒカル「リョーコ、後ろ!」
リョーコ「なに!?」
アカツキ「避けきれない!」
秋山「援護する!ゲキガンビー・・・」
アララギ「よせ!狙われている!」
三郎太「艦長!」
イズミ「連携良すぎ・・・」

こちらでも大蛇達に手を焼いていた。
いくら攻撃しても、
いくら胴体に大きな穴を空けても、
あっと言う間に修復されて襲いかかってくる。
こうなると消耗戦になり、疲弊するのはこちらの方であった。

再び絶望感が辺りを支配し始めた。



Yナデシコ・ブリッジ


ユリカ「あんなのアリですか!?」
ルリ「アリというか、元から非常識な存在ですし」
ラピス「だね」
メグミ「でも撃てども撃てども復活して来るっていうのはきついですよね」
ミナト「せっかく反撃できそうな雰囲気だったのに〜〜」

どんなに攻撃しても復活してくる大蛇を見てみんな意気消沈している。

ユリカ「なんだって、あんなに無限に復活するんですか!
 科学的に考えたらおかしいわよ〜」
ルリ「まぁ化け物ですし、どんな反則技をしていてもおかしくないでしょう」
ユリカ「でも〜〜」
エリナ「確かに、いくら非常識といっても物理現象を無視出来ないはずなんだけど・・・」
ルリ「こういうとき、説明好きのあの人がいればペラペラ解説してくれるんですけどねぇ・・・」
ユリカ「誰か教えて!」

ユリカは思わず叫ぶ。

すると一同の視線はとりあえず一人の人物に集まった。

サリナ「な、なによ・・・」

一同の視線はサリナ・キンジョウ・ウォンに集まった。

ルリ「ですから、さいたま市限定アーキテクトさん」
サリナ「もう東京都でもないんかい!」
ルリ「いえ、それはどうでもいいので・・・」
サリナ「どうでも良くないわよ!」
ルリ「本家説明お姉さんとして、あの大蛇がなぜあんなに復活出来ると思いますか?」
サリナ「あ、あたし!?」

いきなり話をふられて焦るサリナ
人々の集まる視線は見事な解説を期待していた。

サリナ「あ、あたしは・・・その・・・メカ専門だから(汗)」
ユリカ「なんだ〜」
エリナ「本家とか言うからどれだけ偉いのかと思えば」
ラピス「使えない」
ルリ「やっぱりイネスさんの方が役に立ちますね」
サリナ「何だと!」

ここまで言われてしまっては黙ってられないサリナ(笑)

サリナ「わかったわよ!見てなさい、今解説してみせるから」
ルリ「でもメカしか解説できないんじゃないんですか?」
サリナ「だから!
 ・・・あれ?アレって何なの?」
ルリ「なんなの?と言われましても・・・」
サリナ「生物じゃないわよね・・・
 すると・・・」

しばらく考えるサリナ

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・

ポン!

何か思いついたようだ。

「そうか・・・アレはメカだって思えば私にも解説できるじゃない♪」
そう呟くとなにやら端末を叩き出した。

サリナ「やっぱりね」
ユリカ「どうしたんですか?」
サリナ「あれは簡単に言うとナノマシーンの集合体なのよ」
一同「ナノマシーン!?」

サリナの言葉に驚く一同

サリナ「そう、だから結合は自由。それを何かのイメージングで一つの形にしているのよ。だからイメージングが解かれない限りあの形を維持出来るの。
 壊れてもナノマシーンを補充するだけだからね」
ラピス「っていうか、ナノマシーンの集合体でも十分非常識だけど」
ユリカ「でもそのナノマシーンなんてどこから補給されているんですか?
 既に大蛇の首が一つ無くなってもおかしくないくらい消滅させてますけど」
サリナ「火星の大地から供給しているのよ」
ユリカ「大地から供給!?」
サリナ「そう、多分ボソン変換の過程に細工して火星の大地の物質から直接ナノマシーンを生成しているのよ。
 ほら、攻撃を受けて修復しているとき、かすかにボース粒子が観測されているわ」
ユリカ「そ、そんな〜」

非常識である。
しかし一旦物質をボース粒子に変換し、それを再度フェルミオンに変換する際、再変換するデータを細工してやれば元の物質と違ったものが出来上がるはずだ。
それをコントロールできれば石ころからでも黄金が作れる。
さながら錬金術みたいなものだ。
遺跡の演算装置を取り込んでいるからこそ出来る芸当だ。

けれどそれは言い換えれば火星を消し去らないとあの化け物は無限に復活・・・いや、無限に増殖できることを意味していた。

ユリカ「そんなぁ〜〜それじゃ絶対勝てないじゃないですか!」
サリナ「そうでもないわよ」

絶望の悲鳴を上げるユリカをサリナは制する。

ユリカ「そうでもないって、どういうことですか?」
サリナ「ナノマシーンはあくまでもナノマシーンよ。
 それそのものに意志はない。
 でもそれを操っている存在がいるの」
ユリカ「それって・・・」

ユリカにも彼女の言わんとしていることが何となくわかった。
サリナは大雑把な解析結果ではあるが、データを見せた。
ナノマシーンに制御情報を送っているらしい信号ラインである。
それはある一ヶ所から7つの大蛇に分かれていた。
そこは・・・

ユリカ「アイちゃん・・・」
サリナ「そう、あの大蛇を操っているのは彼女ね」
ミナト「そんな馬鹿な〜〜」
サリナ「錬金術でも人の魂は作り出せない・・・といったところかしら」
ジュン「さながら生きたコンピューター・・・って所だね」
メグミ「でも8歳のアイちゃんがあの大蛇を使ってみんなを滅ぼす、なんてことしてるんですか?」
サリナ「それは今眠っている本人に聞いてみないとなんとも言えないけど」

どちらにしてもアイちゃんをあの大蛇から引き剥がさないといけない・・・

ゴート「だが、アイちゃんが生きたコンピューターというのなら・・・」
プロス「ハッキングですか」
エリナ「その手があるわね!」

相手がコンピューターというのならまだ分があるかもしれない。
なにせこちらは地球全体をハッキングしてしまったスーパー少女が二人もいる。
しかし・・・

ルリ「そう思ってやってるんですが・・・」
ユリカ「で、出来そう?」
ラピス「っていうか、どうやってアクセスラインを張るの?」
ユリカ「え?」
ルリ「私達はあんなプロトコルを知りません。どうやって繋げばいいかわかりませんよ」
一同「ダメじゃん〜〜!」

妙案、一瞬にして崩壊(笑)

けれど・・・ユリカは何か閃いたようだ。

ユリカ「あ、そうでもないわよ」
サリナ「え?」
ユリカ「ジュン君、アレアレ」
ジュン「アレ?アレって・・・」
いきなり話をふられて驚くジュン。彼にはすぐピンとこなかった。

ユリカ「だからアレだよ、ほら、ツモにリーチにロン!」
ジュン「わからないよ、何それ?」
ルリ「あ、なるほど、その手がありましたか♪」
ラピス「ユリカ、頭良い♪」
メグミ「え?何のことですか?」
ミナト「麻雀が一体どうしたって言うの?」
ユキナ「麻雀って?」
ゴート「さっぱりわからん」
サリナ「わかりやすく説明しなさいよ!」
エリナ「あ・・・そういうことね」
ユリカ「そう、記憶麻雀♪」

月面攻略戦にナデシコに乗っていたクルーなら知っているはずだ。
あの騒動の原因と顛末を・・・



Yナデシコ・医療室


「お兄ちゃん・・・助けて・・・」
「イネスさん・・・」

相変わらずうわごとのように呟くイネスを彼女達は居たたまれなく見ていた。しかし、途中からちょっと口調が変わった。

「お願い変な装置は付けないで・・・」
「え?」

いや、別に先ほどのユリカ達の会話を聞いて怖がっているわけじゃないので(苦笑)



火星極冠遺跡上空


ユリカ『というわけで、出来るだけ時間稼ぎお願い!』
リョーコ「お願いって言われてもなぁ・・・」
ヒカル「そんな余裕無いよ〜」
1号「なんだお前達、そんな情けないことでどうする!
 熱血はこういう逆境こそ燃えるもんだぜ!!!」

さっきから激しく抵抗する大蛇に手を焼く機動兵器部隊。
それでも一部の暑苦しい連中だけは元気に戦っていた。

1号「ゲキガントルネー・・・」
2号「それは目が回るから却下だ」
1号「なに?ならばゲキガンスープレック・・・」
イツキ「どうやってアレにスープレックスをかけるんですか!」
1号「ごちゃごちゃうるさい奴らだなぁ。
 ならばスーパーデラックスデリシャスデンジャラスハイグレードな必殺技を考えてみろ!」
2号「言われなくても!廬山昇竜波!」
イツキ「ムーンエクセレントハレーション!」

ドゲシャ!

あ、ゴッドゲキガンガー、大蛇に吹っ飛ばされた(笑)

「貴様、卑怯だぞ!不意打ちとは!」
『不意打ちじゃないわよ、隙ありまくりじゃない』
「誰だ!」

ゲキガンライダー1号をあざ笑うかのようにウインドウ通信を入れる者がいた。

アキ『全く、再登場して何をやっているんだか・・・』
1号「おお、鬼百合おラン!」
アキ『おランじゃない!』
アキト「お待たせ!」
アキ「あんた達、何チンタラやってるの!」

彼方からやってくるのはアキセカンドに乗ったアキとアキトであった。

リョーコ「隊長!」
アカツキ「おお!」
イズミ「アチチだ」
ヒカル「隊長とアキト君がアチチだ〜」
秋山「ち、地球軍とはいつもあのように破廉恥なのか?」
三郎太「艦長、今時破廉恥なんて言いませんよ〜」
アララギ「相乗りってやつか、それともラブワゴンか・・・
 どちらにしても・・・」

やってきたアキ達を見て別の意味で驚くパイロット達。
それはそのはず、コックピットで二人仲良く乗っているからである。
いつぞやみたいにアキトを抱きかかえる形で乗っている姿をみんなジロジロ好色の目で眺めていた。
それに気づいたアキ達はというと・・・

アキト「いや、これは深い意味は・・・」
アキ「そうそう、そういうことに全然興味がないから(キッパリ)」
アキト「そんな、キッパリ否定しなくても・・・」
アキ「なに?何か問題でも?」
アキト「いや、別に・・・」

とっても複雑な気持ちになるアキトであった(笑)

アカツキ「妖しいなぁ〜♪」
ヒカル「いつからそんな仲になったんですか?」
アキ「どうもなってないって!
 そんなのどうでも良いから、お姫様を助けるわよ!」
リョーコ「お姫様って?」
アキ「もちろん、囚われのアイちゃん!」

アキセカンドは指を指す。
そこには大蛇の首の上に彫像として張り付いているアイちゃんの姿があった。

『そうはさせん!』

どこからともなく声が聞こえる!
その声に振り向くと恐ろしい勢いで大蛇の首がアキセカンドに襲いかかってきた!

アキ「く!回避!」
アキト「ダメです!間に合いません!」

あまりにもあっと言う間に眼前に迫る大蛇の首!
だが、しかし!

ゴォォォォォォウ!

襲われる直前、大蛇の首に重力波が襲いかかった。

「え?」

大蛇が怯んだ隙に逃げるアキセカンド
しかし誰が彼らを助けたのだろう。
振り返るとそこには・・・

「東郷、これがお前の望んだ結末なのか?」
そこにはダイマジンがグラビティーブラストを放っていた。

「あなたは・・・月臣元一朗くん・・・」

そう、アキを助けに現れたのは月臣であった・・・

ってことで後編に続きます



ポストスプリクト


取り敢えず前編ですので前回と同様にポストスプリクトは女アキトことアマガワ・アキさんへのインタビューという形式に変えさせていただきます。

アキ「ちょっと待て!なんか変な名前のキャラが出なかったか?」

−でも、やっぱりアキ×アキトなんですかね〜〜アベックで戦闘なんて♪

アキ「いや、そこは争点じゃなくて、いただろう、変なキャラが!」

−やはり恋の逃避行ですか?それとも二人で初めての共同作業ですか?

アキ「だからそれはもうええといっとるんじゃ!」

−最後には昔の彼氏が登場!アキさんをめぐってアキトと月臣が対決!

アキ「だ・か・ら!」

−そして最後にはあの北辰までもが参戦し、4角関係が勃発!

アキ「人の話を聞け!っていうか北辰まで混ぜるな!!!(木連式柔炸裂!!)」

−・・・・・・というわけで後編をどうぞ。

ちなみに後編の内容とは全然異なりますので予めご了承下さい(笑)

Special Thanks!!
・三平 様
・k-siki 様
・YOH 様
・龍崎海 様
・tohoo 様
・Chocaholic 様
・kakikaki 様