アバン


人一人の力はちっぽけだ。
一人で歴史の流れを変えようとしたって変わらない。
どんなに足掻いたって変わらない。

変わらないから・・・絶望する。
変わらないからと自ら壁を作り、やがてその壁に挑むことすら止めてしまう。

そうして歴史は可能性の道を閉ざす・・・

けれど歴史を変えるのもやはり人の力
いえ、それは人の覚悟、人の意志、人の足掻いた跡
それが多くの人の心を打つモノなら、人々の心もきっと変わる。

歴史はそうやって変わる。
なぜなら歴史は人の足掻いた軌跡なのだから・・・

ああ、これってSecond Revengeのラストとほんのちょっぴり関係があったりしますのでそのつもりで〜



ゲキガンガー3・オープニング


夢が明日を呼んでる〜♪
魂の叫びさ、レッツゴーパッション♪
いつの日か、平和を〜♪
取り戻せこの手に♪
レッツゴーゲキガンガー3〜♪



火星極冠遺跡・地上


それは紛れもなく原寸大のゲキガンガーである。
どこからどう見てもゲキガンガーである。
曲がりそうもない関節とか、5分で描けそうなディテールの甘さとか、ポーズ重視のパースとか、どこから見てもゲキガンガーである。

みんなの注目が集まっている隙を逃さず、ゲキガンガーはお約束の決めポーズを繰り出した。

『天が嘆く、地が嘆く、人が嘆く!
 悪を許すなと私を嘆く!!!
 世界を滅ぼそうと言う怪物さんは火星に代わって折檻よ!』
ゲキガンガーが某美少女戦士の決めポーズを取る(笑)

『愛と熱血と友情の人、ゲキガンガー3
 たとえ隊長がいなくても、たとえ提督がいなくても、
 一人でも正義のために私は戦います!』

ドーンと7色の爆炎がバックを飾った(←戦隊モノの登場シーンを想像して下さい)



火星極冠周辺


パイロット達もその光景を呆れた表情で眺めていた。

アカツキ「アレは何だ!?」
リョーコ「鳥か!?」
ヒカル「飛行機か!?」
イズミ「梅干し食べてスッパマンだ・・・ククク」
アキト「イズミちゃん、ゲキガンガーって言うよりも原典に近いけどそれはどうかと・・・」

余裕あるなぁ〜と思いつつも、お約束どうもです(笑)

秋山「げ、ゲキガンガー・・・か?」
三郎太「ほ、本物ですか!?」
アララギ「い、いや、さすがにそれはないと思うが・・・」

しかし、既に大蛇を見ている以上、何が現れてもおかしくないと思い悩む一同であった。



火星極冠遺跡・地上


さて、周りの注目が集まる中、ゲキガンガーは一通り戦闘ポーズをやり終えたのか、すっくと立って大蛇の首の一つに向かって攻撃を始めた。

もちろん先ほどカキツバタの自爆を喰らった首である。首の皮一枚になったのを必死に復元しようしているところを狙ってである。

「復元する前に殲滅します!!!」
そう宣言した彼女の攻撃はえげつなかった。

博愛主義者クラッシュ!!!

ゲキガンシュートみたいなパンチで触手達を薙ぎ倒す!

ラブアンドピースキック!!!

ゲキガンキックみたいなキックで首の皮を切断する!

罪を憎んで人を憎まずスラッシュ!

ゲキガンソードで残っている首を切り刻む!

愛は地球を救うボンバー!!!

ゲキガンフレアみたいなディストーションフィールドによる高速機動攻撃で既に絶命寸前な大蛇の首を完膚無きまでに滅殺した!!!

ドオォォォォォン

それを見ていた人々はというと・・・

リョーコ「・・・は、博愛主義者か?」
ヒカル「よ、容赦なしだよねぇ」
イズミ「快く同意・・・よっしゃ・・・なんちって」
アカツキ「弱り目に祟り目って奴かな?」
秋山「それは意味が違うだろう・・・」
アララギ「まさに・・・」
ラピス『問答無用』
ルリ『一片の同情もなし・・・ですね』
アキト「い、いいのか、あれで!?」

再生途中でほとんど抵抗らしき抵抗が出来なかった大蛇の首をこれっぽっちの容赦もなく殲滅したゲキガンガーを見て漏らしたみんなの感想である。

最後に残った触手をプチリと握りつぶした後、ゲキガンガーはアキの方を振り向いてその手を差しだし、朗らかな声でこう言った。

イツキ『アキさん、大丈夫ですか?』
アキ「あ、あなたは・・・」
イツキ『お久しぶりです、イツキです。イツキ・カザマです』
アキ「い、イツキちゃん!?生きてたの!?」
イツキ『ええ♪(ニッコリ)』
アキ「あ、アハ、アハハハハ・・・はぁ・・・」←既に半泣き
イツキ『隊長に代わって私がお力をお貸しします。
 さぁ、一緒に正義を成しましょう♪』
アキ「せ、正義ッスか・・・」
イツキ『さぁ、愛と平和の為に♪』
アキ「えっと・・・」
イツキ『さぁ、ご唱和を!』
アキ「え?言わないとダメ?」
イツキ『ダメです!(キッパリ)』
アキ「・・・」

というわけで

イツキ『レッツ!』
アキ「ゲキガイン
イツキ『声が小さいです!レッツ!
アキ「ゲキガイン〜〜」

もう、どうにでもしてと泣きながらイツキと共に叫ぶアキであった(笑)



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第二十八話 囚われぬ者達のテーゼ<後編>



八岐大蛇・頭上


東郷はまだ涼しげな顔でその様子を眺めていた。

「なるほど・・・まさかこの時代の文明で大蛇の首を潰すとは・・・
 けれど、ここまでだ。
 いくらそんなおもちゃを持ち出そうと、自らがドンキホーテであることを思い知らせてやる」

彼は彫像になっているアイちゃんを愛でながらそう呟いた。
彼には勝利の女神が着いている。
不可侵の存在
変わらぬ事を約束された存在が・・・



火星極冠遺跡上空


「そんなこと、関係ありません!!!」
イツキは叫ぶ。

「正義の炎はそんなことでは潰えません!」
ゲキガンガーは新たなる大蛇の首に挑みかかっていた。

アキ「ちょ、ちょっと、一人じゃ無茶よ!」
イツキ「心配いりません!熱血の力は無限大です!」
アキ「んなわけないでしょう〜〜」

今度は止めに入る側になるアキさん。
・・・初めて周りの人が自分に使っていた気苦労を知った気がするのであった(笑)

イツキ「い!な!ず!ま!キ〜ック!!!

ズギュルルルルルルルルルル!!!

必殺のキックが決まり、大蛇の胴体に貫通するほどの穴が開いた。

イツキ「熱血ボンバー!!!

ドドドドドドドド!!!

肘から先がマシンガンに変わり、それを乱射するゲキガンガー
たちまち大蛇の胴体が蜂の巣になる。

イツキ「必殺!示念流真空幹竹割り!!!

スンバラリン!!!

肩に背負ったゲキガンソードを振りかぶるように振るうと、大蛇の胴体を縦に真っ二つにした!

「どうですか!これが正義の力です!!!」
ゲキガンガーはコテンパンにした大蛇の首に足をかけて見得を切った。



Yナデシコ・ブリッジ


さて、その光景を見た方々はというと・・・

ラピス「なんか、この前見たのより強い」
サリナ「あら、本当」←脱出艇がナデシコに回収されたのでブリッジに上がってきた
ユリカ「アレを知ってるんですか!?」
ラピス「実は月面でこっそり現れていた」
ルリ「そんな記録なかったですよ?」
ラピス「そりゃ関係者一同記憶の片隅からも消去したい思い出だったから」
サリナ「まぁこの前見たときは仲違いをした両手両足・・・って感じだったけどね」
ラピス「そうそう、そんな感じ」
メグミ「仲違いした両手両足って一体・・・(汗)」

そりゃ、今回は一人で操縦しているのだからまともだ(笑)

エリナ「・・・あれってあんたが作ったんじゃないでしょうね!」←同じく脱出艇から救出された人
サリナ「私の美意識を馬鹿にしてない?」
エリナ「いや、合体ロボットとか好きそうだし・・・」
サリナ「ZZはダメ!やっぱりSガンじゃないと!!!」
エリナ「わけわからないわよ!」

エリナにはどちらにも同じアニメにしか見えないみたいだが、マニアとしては大きな差があるのであろう。

ともあれ・・・

「なんか、ああもあっさり倒されちゃうと私達の決死の覚悟もなんか大したことなかったって思えてきちゃうわね」
「あんたねぇ、人のカキツバタ潰しておいてそういうこと言うか!」

ミナトは溜息をついて言う。
確かに、決死の覚悟で突入してカキツバタを犠牲にしてようやく首一つを倒したのに、後から現れたゲキガンガーが非常識な技を繰り出して同じ事をして見せたのだから無理もない。
そしてそう言われてしまえばエリナの方も立つ瀬がない。
だが、それで大蛇の首を倒したと思うのは軽率だった。

「いえ、そう簡単に行かないようですよ」
「え?」
ルリの指さす方を振り向いたミナトが見たものとは・・・



火星極冠遺跡上空


ルリと同時にアキもその様子に気づいた。

アキ「イツキちゃん、早く逃げなさい!」
イツキ「え?」

アキが叫んだときには遅かった。
真っ二つにされたと思われた大蛇の胴体が突如左右から鎌首を持ち上げるかのように起きあがってきたからだ!

アキ「危ない!」
イツキ「きゃぁぁぁぁぁ!!!」

それはあまりにも非常識であった。
真っ二つになったはずの大蛇の胴体はイツキのゲキガンガーを巻き込む形で引っ付こうとしていたからだ!!!

バッタン!

まるで本を畳むように真っ二つになったはずの胴体は元に戻った。
そして大蛇の首はすぐに復活したかのように咆哮をあげる。

オォォォォォォォォン!!!

それは今までいたぶってくれた相手を葬った勝ち鬨のようでもあった。



Yナデシコ・ブリッジ


ウリバタケ『ああああ、ゲキガンガーが〜〜!!!』
プロス「唯一の希望が潰えましたねぇ〜」
ゴート「アレは唯一の希望だったのか!?」
ルリ「ヒーロー薄命とはこの事ですね」
メグミ「ルリちゃん、それ違うわよ」

あっさりと大蛇の胴体合体に巻き込まれたゲキガンガーへの感想を口々に述べた。
しかしそんな感想を述べたルリ達に腹を立てたのか、少女の声はナデシコ中に響きわたった。

だがしかし、正義はこんな事で挫けたりはしないのです!!!

その声に目を丸くしてよく見ると、大蛇の胴体が異様な形に膨れ上がっていた。



火星極冠遺跡上空


グゴゴゴゴゴゴゴォォォォ・・・

大蛇が苦しげにうめき声を上げる。
ちょうど先ほどゲキガンガーが取り込まれたところ辺りが異様に膨れ上がってきた。

グゴウゥゥゥゥ・・・

斬!!!

お腹(?)を切り裂いて飛び出してきたのはゲキガンガーであった。

アキ「い、イツキちゃん・・・大丈夫?」
イツキ「大丈夫です!勇者はこんなところでは屈しません!」
アキ「いや、一部溶けかかってるし・・・」
イツキ「大丈夫です!正義は不滅です!」
アキ「いや、だから・・・」

なんとか無事に脱出してきたイツキのゲキガンガー
ちょっぴり塗装とか剥がれかかっていたりするが(苦笑)

けれど、敵は今度こそ容赦してくれなかった!

オォォォォォォン!!!

眼前に恐ろしい勢いで襲いかかってくる大蛇の首!
目標は完全にイツキのゲキガンガーであった。

アキ「イツキちゃん、危ない!」
イツキ「なんの!ゲキガンパン・・・」
アキ「だから危ないって言ってるでしょ!」

ゲシ!

サイズ的にはダイマジンサイズの巨体であるゲキガンガーをキックで押しのけるPOD
とそこに大蛇の巨大な口が襲いかかってきた!

イツキ「アキさん!?」
アキ「くそ!!!」

あまりにも大きな口なのでイツキを庇ったPODにはどこに逃げても食べられるのは免れないように思えた。
だが、彼女は諦めない!

「バニシングフレア!!!」
フィールドランサーを突き立てながらディストーションフィールドを最強にして大蛇の口にあえて飛び込むPOD!

「アキさん!」
それを見ていたアキト達が悲鳴を上げるが・・・

ドゴォゥゥゥゥ!!!

ちょうど大蛇の後頭部らしきところから突き破るようにPODが脱出してきた。
しかし・・・

アキト「アキさん、大丈夫ですか!?」
アキ「あんま大丈夫じゃないかも・・・」

さすがに無理をさせすぎた。
バニシングフレアは戦艦並のディストーションフィールドを超高機動で敵にぶつけて初めて威力を発揮する。それはブラックサレナやホワイトサレナといった未来のスペシャル機だからこそ可能な技で、今のPODにはかなり性能不足だった。
ジェネレータの負荷を酷使したおかげでかなり不安定になっている。

イツキ「す、済みません、私のせいで・・・」
アキ「そんなことを気にする暇があるなら目の前の敵に注視しなさい!
 次が来るわよ!」
イツキ「はい!」

お腹を破られ、後頭部を破られた大蛇の首の一つであるがあっという間に再生して既にアキ達に襲いかかった!

「ゲキガンソード!!!」
ゲキガンガーが大蛇に向かってゲキガンソードを振りかぶるが・・・

オオオオオオオオオオ

直前で大きく胴体を揺する!
そのあまりの素早さにあっという前に巨体は振りかぶったゲキガンガーの眼前まで迫った!

ドン!!!

「キャァ!」
「イツキちゃん!」
ゲキガンガーとはいっても中身はテツジンの改造品なのでそれほど機動性が良くない。
おまけに現在はボソンジャンプも封じられている。
よけ損なったゲキガンガーはそのまま大地に叩きつけられた!

ドスン!

「あいたたた・・・」
大地に尻餅を付いたゲキガンガーだがその痛みを噛みしめている暇もなかった。

ズウゥゥゥン・・・

衝撃の痛みをこらえて頭上を見るとまるで夜のような日陰にいた。
そう、大蛇の巨体が悠然と構えていたのだ。
イツキは初めて感じた。
絶望という名の恐怖を・・・

「やらせるか!!!」

アキはフィールドランサーを振りかぶって斬りかかる!
しかし!!!

オオオオオオオオオオ

またも胴体を振るわす!
ただ胴体を振るわせるだけでソニックウェーブが発生し、衝撃波はPODの突進力を抑えた!
スピードが落ちるのを待っていたかのように触手が何本も襲いかかる!

「くそ!!!」
一撃!二撃!
斬撃で触手達を切り落とすものの、あまりの数に間に合わなくなる。
そして・・・

バキ!!!

「アキさん!」
誰もが悲鳴が上がる。
PODの左腕が吹き飛んだのだ!

「くぅぅぅぅ!!!
 まだまだだ!」
ここで怯んでは大蛇の巨体がそのままゲキガンガーにのし掛かる!
アキは渾身の力を込めて大蛇の頭に斬りかかった。

うぉぉぉぉぉりゃ!!!

バキーーーン!!!

フィールドランサーが砕ける音と共に大蛇の首が傾いだ!
そのチャンスをアキは見逃さなかった。

「イツキちゃん、グラビティーブラスト!
 そいつには有効よ!」
「あ、はい!
 ゲキガンビーム!」

呆気にとられていたイツキだが、正気に戻って逃げながらグラビティーブラストを撃った。

グオオオオオオオ!!!

グラビティーブラストの痛みに悶える大蛇
そのおかげで胴体落下のタイミングが若干ずれた。
イツキはそのチャンスを逃さず、何とか逃げ出すことが出来た。



Yナデシコ・ブリッジ


一同、その様子にほっとする。
しかし、助かったという以外に状況は全然好転していない。
いや、むしろ追いつめられていっていると言っても良かった。

メグミ「なんかこう・・・」
プロス「せっかくの助っ人も時間の問題って感じですねぇ」
ゴート「確かに」
エリナ「やっぱりあの首一つにカキツバタ一隻を犠牲にしなければいけないほどの価値があったってことね」
ユリカ「って、そんなこと言っている場合ですか!!!」

いかにも敗戦ムード一色のブリッジで人々に否を唱えるユリカ

ユリカ「アキさんがまだ戦ってるんですよ!見捨てるんですか!?」
ウリバタケ『そんなこと言われても・・・なぁ』
ユリカ「アキト、リョーコちゃん、アキさん達の援護を!」
アキト『お、俺達が行ったって足手まといになりそうだし・・・』
リョーコ『ちょっとレベルが違いすぎるぜ・・・』
アカツキ『同感』

周りの人間は口々に諦めの声を挙げる。
やはり『始まりの人』の運命操作からは脱し切れていないのだ

見る間にピンチになっているアキ達を見て、それらを見ても一向に怯んだまま何も行動を起こさないクルー達を見てユリカはついにキレた。

ユリカ「わかりました・・・
 ミナトさん、ルリちゃん、ナデシコがアキさん達の援護に入ります!」
ミナト「入りますって・・・」
ルリ「それってつまり・・・」
ラピス「カキツバタと同じ事をするってこと?」
一同「ええええええ!!!!」

お姫様ご乱心に一同は大慌てとなった。

プロス「か、艦長、正気ですか!?」
ユリカ「正気です!近くで相転移エンジンを暴走させる戦法が有効だっていうのは立証済みです」
ゴート「だが、所詮落とせても首一つだ。まだ6つも残っている!」
ユリカ「ナデシコはYユニットも含めて4基の相転移エンジンを持っています。
 場所さえ間違えなければ地中に埋まっている胴体部分を根こそぎ潰せるはずです!」
ウリバタケ『しかし、ナデシコがなくなったら誰がPODへ重力波ビームを送るんだ?』
ユリカ「そ、それは・・・木連の人達のゲキガンタイプが・・・」

必死にご乱心した姫様にみんなが翻意を促す。
しかしキレたお姫様の決意は固い。

けれどきつい一言を言った人物がいた。

エリナ「自爆は良いけど、みんなを道連れにするつもり?ミスマル・ユリカ」
ユリカ「え?」
エリナ「だから、クルー全員を道連れに自爆する気か?って聞いてるの」
ユリカ「いえ、もちろん皆さん降りてもらって・・・」
エリナ「それが甘いって言うのよ!」

エリナはユリカにびしっと指さす。

「攻撃はさっきの比じゃない。それこそ、無人操縦で・・・ってわけには行かないわよ。誰かがナデシコに乗って最後まで操縦しなければいけない。
 彼女達にそれを強制するの?」

エリナにそういわれてユリカはハッとする。
さっきはナデシコがカキツバタに随伴して攻撃を引き受けながらコントロールした。
だから途中でカキツバタを無人にすることが出来た。
しかし今度はナデシコのみだからそうはいかない。
まさか木連の戦艦を同じ様なことには使えない。木連の戦艦はナデシコのような機動性能はない。
誰かが最後まで残って操縦しなければ途中で破壊されるのは目に見えている。
ただ艦を失うだけの愚挙だ。

改めてユリカはエリナが促した方を見る。
ミナトやルリ達がいた。

ミナトはやや仕方がないという顔をしながらも言われればやるよ、みたいな顔をしている。
ルリやラピスに至っては無表情だった。
けれど彼女達もやるとなれば死ぬことが確実の作戦で恐怖がないとも思えない。
それを表に出していないだけだ。

『最後まで残ってナデシコを大蛇にぶつけて』
それは彼女達に死ねと言っているのと同義だった。
エリナの言わんとしていることに気づいてうなだれるユリカ。

ユリカ「わぁぁぁぁん〜〜」
ラピス「あ、逃げた」

彼女は泣きながらブリッジを飛び出していった。

メグミ「なんだか、ちょっと可哀想ですね」
ジュン「いや、自爆なんてやっぱりよくないよ」
プロス「そうですとも。勇気と無謀をはき違えてはいけません」

可哀想だが、とりあえず説得が上手くいったと思って一安心するクルー一同。

しかしその考えはとっても甘かった!

ダダダダダ!

ラピス「あ、帰ってきた」
ユリカ「ハァハァハァ・・・」

出ていったときと同じ騒々しさで帰ってきたユリカはみんなに手の中のモノを見せてこう宣言した。

ユリカ「私がやりますから、総員退避して下さい!」
ジュン「そ、それは・・・」

そう言って見せたモノとは注射器であった。
しかしその中身がなんなのかジュンも馴染みのあるモノであった。

ジュン「それ、IFSのナノマシーン・・・」
ユリカ「本気なんだからね!」
ジュン「ああああ!!!ユリカ、止めろ・・・」

プシューーーー

メグミ「打っちゃいましたね・・・」
プロス「つまり、これは・・・」
ユリカ「私が最後まで残るもん!」

手をかざしたユリカの左手の甲にはIFSのコネクターが浮かび上がった。
つまり・・・ルリの代わりにナデシコを操るつもり満々である。
誰もがさすがにこの光景には目を覆った。

しかし、一人の少女は冷静なツッコミを入れる。

ルリ「それ、機動兵器用のコネクターです」
ユリカ「え?」
ルリ「ですから、オモイカネ用はこっちです」

ルリはユリカに自分の両手の甲を見せる。
同じくラピスも両手の甲を見せる。
それを見てユリカはしげしげと自分の手の甲を見る。

・・・紋様の形が違う。

ルリ達は両手に紋様があり、その形も丸っこい。
戦艦オペレーション用のIFSコネクターである。
対するユリカが付けたのはパイロット用のコネクターである。

ユリカ「・・・これじゃオモイカネを操れないの?」
ルリ「出来なくはないですけど、専用じゃないので手こずりますよ?」
ユリカ「えっと・・・」

・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・

一瞬すきま風が吹いた気がするのは気のせいではないだろう。

ユリカ「とにかく、私がやるんです!
 皆さん退艦して下さい〜!!!」
ジュン「落ち着け、ユリカ〜」

ヤケになって暴れるユリカ。
必死になってそれを止めようとするジュン達。
しかしそれを諫める者がいた。それはとても意外な人物であった。

「やめとけ、やめとけ自殺など。
 そんなもの化け物には無駄じゃ」
「無駄じゃないもん!・・・・って、ええ!?」

ユリカは無駄だと言った相手の声に気が付いてびっくりした。

プロス「あ、あなたは!」
ゴート「まさか、生きておられたとは・・・」
ユリカ「・・・幽霊?」
フクベ「生きとるわい」
ユキナ「さっきそこで道に迷っているところをブリッジまで案内してって言われたんだけど・・・誰?この人」
ジュン「フクベ提督!!!」
ルリ「呂蒙曰く、士、別るること三日、まさに刮目して相待つべし・・・ですね」
ラピス「っていうか、変わりすぎ」

みんなが我が目を疑うのも無理もない。
火星で死んだと思われていた思われていたフクベ提督が目の前に現れたのだから。
しかもユキナに案内されてきた彼の姿がまた異様だった。

アロハシャツにウクレレ・・・それにバッタの背中に乗っての登場だから余計だ(笑)



遠くのユーチャリス


Secretary「爺さん、あんな所にいたんかい!」
Actress「なんか、元の歴史と変わらないですね」
Snow White「熱血を通り越したら今度は植木等になったわねぇ〜」
Blue Fairy「スーダラ節ですか?古いですね、Snow Whiteさんも」
Snow White「ふ、古くないもん!」
Blue Fairy「まぁ年齢詐称疑惑を再燃させても仕方がないのですが」
Snow White「い、意地悪〜」

とお約束はここまでとして

Secretary「やっぱりイツキさんが出ていっても敵わなかったわねぇ」
Snow White「三人揃わないと熱血パワーを発揮しないのかしら?」
Actress「いや、それは違うんじゃないかと・・・(苦笑)」
Blue Fairy「そういえば、あの子は?」
Snow White「Pink Fairyちゃん?確かヤマダさん達の術後を・・・」
Pink Fairy「ただいま・・・」
Actress「お帰りなさい。すごく疲れた様子ね」
Pink Fairy「って言うか、実際疲れた」
Snow White「ご苦労様♪」
Blue Fairy「で、あの人達は?」
Pink Fairy「さっそく妖怪レーダーが反応したとかいって出ていった」
一同「・・・はぁ」

5人は何故か深い溜息をついた。
これから起こるおもしろおかしいくも頭の痛い状況を想像して。



再びYナデシコ・ブリッジ


プロス「フクベ提督!生きておられたのですか!?」
フクベ「うむ」

すっかり性格が変わったのか、以前の威厳のかけらもなく明るく・・・ある意味で軽薄になっていた。

エリナ「でもいつからこの艦に乗っていたの?」
フクベ「お主らが火星に着いた辺りからかな?」
メグミ「じゃ、今までこの騒ぎの中をどうしてたんですか!」
ユキナ「だから迷子になっていたのよ」
フクベ「面目ない(テレ)」
ジュン「いや、照れてもらっても困るんですが・・・」
ミナト「以前乗っていたときと間取りは変わってないけど?」
ルリ「呆けたんじゃないですか?年ですし」
ゴート「生きておられたのならどうして教えてくれなかったのですか!」
フクベ「話せば長くなる。どのぐらい長いかというと、朝の連続TVドラマよりも長く、NHKの大河ドラマよりも短いぐらい波瀾万丈があったのじゃ・・・」
ラピス「なんか、長いのか短いのかよくわからない例え」
ユリカ「そんなことはどうでも良いんです!
 私達があの化け物に勝てないってどういうことですか!!!」

のほほんとした漫才を阻止すべく割って入ったのは当然ユリカであった。
自分のやろうとしたことを無駄と言われ、そしてあの怪物には勝てないと言われてしまったのだ。訳を聞かなければ収まりが付かない。

しかし、じっちゃんは呆けたのか、話をはぐらかした。

フクベ「そうそう、こいつの紹介がまだじゃったな。
 このバッタはワシが火星でひとりぼっちになったときに世話をしてくれたナインティーン君じゃ」
ナインティーン「ピピピピ」

フクベが乗っているバッタは自己紹介をされるや、器用に片足をあげて挨拶をした。

ユリカ「じゃなくて!」
フクベ「ちなみにファーストからエイティーンはワシを庇って殉職してしもうた。
 可愛い奴らじゃったのに・・・」
ユリカ「誰もそんなこと聞いていません!」
フクベ「ちなみにナインティーン君の特技は編み物じゃ!」
ナインティーン「ピピピピピ!」

チャカチャカチャカ!

バッタはどこからか編み棒と毛糸玉を取り出すと器用にマフラーを編み始めた。
あっと言う間に『I love Fukube!』という柄の入ったマフラーが編み上がった。
まるで機械で編み上げたかのように正確な仕事である。
いや、実際に機械が編み上げたんだけど(笑)

一同「おおおおお〜すごい」
フクベ「これで寒い火星の大地でもヌクヌクじゃったんじゃ。
 教え込むのに苦労したぞい」
一同「パチパチパチ!」
ユリカ「だから質問に答えて下さい!
 ってみんなも拍手なんかしないで〜〜」

ユリカが思わず割って入る。
話が全然先に進まない。

フクベ「まぁそんな冗談はさておくとしてじゃ。
 アレには敵わんわい。アレは運命を操作しよる」
ユリカ「運命を・・・操作する?」
フクベ「人は運命を曲げる事も出来る。しかし多くの者は逆らえん。
 人が激流に逆らえぬように、運命にも逆らえぬ。
 そして奴はその運命のもっともあり得べき姿を知っている」
ユリカ「運命を・・・知っている?」
フクベ「それは予測でもあり、予知でもある。
 が、人がその予知を信じれば、人はその未来を描こうと動くものじゃ。
 奴はそうやって運命を操作している。
 それに抗う事など出来はせんのじゃ」
ユリカ「そんな・・・」

フクベの言葉にユリカ達はショックを受ける。
誰も抗う事が出来ないなんて!

ユリカ「それじゃ大蛇には勝てないんですか!?」
フクベ「そうは言っとらん。
 奴の操れる運命はあくまでも奴が知っている範囲での事じゃ。
 その輪の中から外れた者の手ならあるいは・・・」
ユリカ「運命の輪から外れた者?」
フクベ「そうじゃ、艦長も知っているだろう?
 あり得べき歴史から外れた存在、
 存在しないはずの者達、
 運命に縛られない者達、
 未来を無限の可能性と思っている者達・・・
 それはすなわち奴の知っている運命の計算外の存在じゃ」

そのフクベの言葉に皆一斉にある人物を見る。

メグミ「あ・・・」
ジュン「あ・・・」
ゴート「あ・・・」
ユリカ「あ・・・って何で私をじろじろ見るんですか〜」
ラピス「運命もまたいで通る」
ルリ「それを言うなら運命も避けて通るじゃないんですか?」
ユリカ「みんな酷い!私をなんだと・・・
 提督の言ってるのってあの人達の事でしょ!」

ユリカは指を指す。
もちろん今、大蛇と戦っているアキとあのゲキガンガーの事である。

フクベ「異物(イレギュラー)ゆえに因果に囚われん。
 つまり奴の計算外の存在だ。
 それは誤差を産み、奴の強いた運命を覆す可能性を有するじゃろう。
 しかし、それだけでは勝てぬよ」
ユリカ「なぜですか?」
フクベ「奴がアイちゃんを取り込んでいるからじゃよ」
ユリカ「アイちゃんを?」
フクベ「そうじゃ。大蛇はボソンジャンプの演算装置じゃ。
 その演算装置が人の運命を取り込んだ。
 少なくとも彼女が後のイネス・フレサンジュになるというのなら演算装置自身がその運命を取り込んだ事になる。つまり不可侵の存在になっているのじゃ」
ユリカ「そんな・・・それじゃどうすれば・・・」
フクベ「まずは彼女を大蛇から分離することじゃが・・・」
ユリカ「それはどうやって?」
フクベ「そんな事、ワシにもわからんよ」
ユリカ「そんなぁ〜」

全然解決になっていないフクベの言葉にユリカは頭を抱える。

『だが・・・』
フクベは心の中で呟く。
たとえアイちゃんを大蛇から引き離したところで倒せるかどうかは怪しい。
なぜなら『始まりの人』は現代の東郷和正に取り憑いている。
しかし、アマガワ・アキが元いた世界・・・つまり西暦2203年まで東郷和正は生きていた。その歴史を生きていたアキがこの世界にいるという事は東郷が後の世まで生き残る事を肯定する事になる。
その東郷を倒そうというのは大いなる矛盾だ。

『因果か・・・やっかいじゃのぉ・・・』

フクベは軽薄そうな態度の下にそんな複雑な表情を隠していた。



火星極冠遺跡上空


とかなんとかナデシコで騒いでいる間にもこっちで戦ってるPODとゲキガンガーは追いつめられていた。

「くそ!そろそろ限界か・・・」
『アキさん、大丈夫ですか!?』
「ちょっちやばいかも・・・」

イツキがこっちの様子を心配してくれているが、正直それにかまっている余裕すらない。
コックピットはアラームでいっぱい。
左手は破損、右足は既にサスペンションの調子がおかしい。
武器のフィールドランサーは壊れて存在しない。
イミディエットナイフは既に2本とも刃が欠けてしまった。
ワイヤーフィストは既に使用不能だ。
ハードナックルぐらいしか使えない。

ふと周りを見る。
大蛇たちにはあまり攻撃が効いていないようだ。
イツキのゲキガンガーも首一つと戦うのに精一杯の様子。
アキト達エステバリスのパイロットは・・・相変わらず大蛇の運命操作にかかったままだ。
もっとも、エステバリスが加勢に来ても近づいた瞬間バラバラにされるだろうが・・・

アキは毒づく。
ゲキガンガーでいいから、もう少し大蛇の攻撃を分散してくれるだけの機動兵器があればアイちゃんを助けられるのに・・・
いや、せめてブラックサレナでもあれば何とかなるのに・・・

しかしここにない物を憂いても仕方がない。

現状維持しかできないが、
死を先延ばしにする事しか出来ないが、
足掻くだけ足掻いてみせる!!!

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

悲鳴を上げるジェネレータを酷使してフィールドを搾り出し、その力をそのままハードナックルで大蛇の胴体にぶつける!!!

ドゴォォォォォォォ!!!

大蛇の胴体がくの字に曲がる!

「これでどうよ!」
『アキさん危ない!』
「え!?」

一瞬の気の緩みだ。ここまで余裕なく戦い続けたツケが回ってきた。
その一瞬の隙を狙って別の首が突進してきた。

ドスン!!!

「ぐはぁ!」
『アキさん!』
ぎりぎりフィールドを張れたものの、強力なタックルで吹き飛ばされるPOD!

その光景を見て誰もが悲鳴を上げた。
そしてこの男も!

「アキさん!」
「止めるんだ、テンカワ君!」
「放せ、アカツキ!」

アキトのアキセカンドをアカツキは必死に押さえる。
あのあまりにも激しく非常識なまでに異常な戦闘には自分たちはついて行けない。
助けに行ったところで足手まといにしかならない。
良くても瞬殺されてお終いだろう。
だから先ほどから逸るアキトを押さえていた。
しかし、この時ばかりはアキトは我慢できなかった!

「助けるって誓ったんだ!
 そのために力を身につけたんだ!
 今助けないでいつ使うんだ!!!」
「バカ!止めろ!」

アキセカンドはアカツキ機を振り払うとPODを救おうと大蛇の群に飛び込んだ。

「おおおおおおおお!!!」
アキトはディストーションフィールドを全開にするとそのまま触手の群がる中に突進していった!!!

ズガガガガガガ!!!

そして今まさにPODを狙おうとする大蛇の首に向かって拳をぶつけた。

ゲキガンシュート!!!

バキィィィ!!!

さっきアキが見せたパンチよりは威力は弱いものの、それでも大蛇を怯ませるのに十分だった。
アキトは大蛇が怯んでいる隙に動けないPODを救いに行った。
まさかアキセカンドがやってくるとは思わなかったアキは驚いた。

「あ、アキト君!?」
「アキさん、大丈夫ですか?」
「何で来た!」
「だって、助けるって決めたから!」
「アキト君・・・」
「今でもちびりそうなくらい恐いけど・・・
 でも助けるって決めたから!」

アキトは迷いのない顔をしていた。
それは囚われざる者の顔だった。

しかし・・・

『所詮は道化!逆らえぬ運命もあるのだよ』

頭上から誰かの声がする。

慌てて二人が振り返ると頭上には大蛇が大きな口を開けてまさに重力波を放とうとしていた。

「まずい!イツキちゃん・・・」
「キャァ!」
「間に合わないか!」
イツキの方も体当たりを喰らい、動きが止まったところを別の首の重力波が狙っていた。
共に回避は間に合わない!

「アキト君、あなただけでも逃げなさい!」
「嫌です!」
「あなたはこの先も生きる人間よ。私はこの歴史には不要の人間。
 だからあなただけでも生き残りなさい!」
「嫌です!最後まで足掻くって言ったのはあなたじゃないですか!
 それにあなたは不要な人間じゃありません!
 守るべき大切な人です!」
「でも、アキト君・・・私は・・・」
「例えあなたが俺の未来の姿だとしても!」

アキトは動かないPODを引きずるように飛ぼうとする。
もちろんそんなことで敵の重力波砲から逃げ切れるわけはないが、最後まで諦めたくなかった。

その時!

よくぞ言った!

良く通る声が辺り一面に響きわたった。



ほぼ同刻・Yナデシコブリッジ


PODが擱坐し、アキトが救いに行ったことに誰もが悲鳴を上げた!

ルリ「アキトさん!」
ラピス「アキ!」
ユリカ「やっぱり突入します!」
フクベ「待て!」

飛び込もうとするクルー達をフクベが止めた。

ユリカ「どうしてですか、提督!
 彼らを見殺しにするつもりですか!?」
フクベ「ピンチの時こそ、叫ぶのじゃ」
ユリカ「はぁ?」
フクベ「じゃから、呼ぶのじゃよ。正義のヒーローを」
ユリカ「提督、一体何を・・・」
フクベ「ほれ、早く言わんと手遅れになるぞい」
ユリカ「いやしかし・・・なんと言えば・・・」
フクベ「『助けて、ゲキガンライダー!』じゃ」
ユリカ「はい?」
フクベ「はやくせんか!」

叱咤されてユリカは渋々叫ぶ。

ユリカ「『助けて、ゲキガンライダー!』・・・ってこれで良いんですか?」
フクベ「声が小さい!そんなことでヒーローに伝わるか!
 その後ろで傍観者を決め込んでいる奴!お前らもじゃ!」
メグミ「私達も・・・ですか?」
フクベ「そうじゃ、彼らを助けたくないのか!」
ミナト「そんなことはないけど・・・」
フクベ「なら魂を込めて叫ぶのじゃ!」
一同「『助けて、ゲキガンライダー!』

一同は恥ずかしがりながらも叫んだ。
しかし彼女達を助けたいという気持ちは一緒だった。

だからこそ、その気持ちは彼らに伝わった。
もちろん『そんなこと叫ばさなくても助けに来いよ』というみんなの気持ちは丁重に無視して。

確かに彼らにその思いは伝わった。

よっしゃ!俺達に任せとけ!!!
暑苦しい、どこかで聞き慣れた声が辺りに響きわたった



火星極冠遺跡上空


アキ達の頭上に重力波が放たれようとしたまさにその時!
大蛇の頭上のさらに上からまるで流星のような光が飛来してきた!
それも二つである。

「我が熱血の炎に砕けぬ物なし!」
「我が正義の心に折れぬ物なし!」
「我が拳は疾風の如し!」
「我が蹴りは雷光の如し!」
「我が熱血は無敵なり!」
「我が正義は神速なり!」
「「破裏拳流奥義!」」
「ハリケーンパンチ!」
「サンダーキック!!!」

グワシィィィィィィ!!!

凄まじい一撃が今まさにアキ達に襲いかからんとする大蛇達の頭上に炸裂した。

「な、なに!?」

誰かが問いかけたのを待っていたとばかりに二つの人影はどこかの崖のてっぺんでポーズをしながらこう叫んだ。とりあえず二人いるので1号、2号と呼ぼう(笑)

1号「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ
 悪を倒せと俺を呼ぶ!」
赤いマントをヒラヒラとなびかせ顔は大きなバイザーで隠しているが、その髪型といい、その声といい、どこかで見たような人物の気が・・・

そしてもう一人も負けずに叫ぶ。

2号「天が知る、地が知る、人が知る!
 悪を裁けと俺を知る!」

2号も同じく赤いマントをなびかせ、顔には大きなバイザー、なぜか髪型も声も前者と同様だったりする(笑)

1号「熱血の炎を瞳に宿し、唸る拳が悪を撃つ!
 熱血とパワーの人!ゲキガンライダー1号!」
2号「正義の炎を胸に宿し、闇に漂う悪を斬る!
 正義と技の人!ゲキガンライダー2号」
1,2号「弱き者の助けに答え、ただいま推参!」

ドーンと7色の爆炎がバックで彼らを飾った(←戦隊モノの登場シーンを想像して下さい)



Yナデシコ・ブリッジ


その派手な登場シーンに一同は・・・

「なんじゃありゃ!」

と叫び声をあげていた(笑)



遠くのユーチャリス


Pink Fairy「やったね♪」
Secretary「やったのはあんたか!!!」

スパコーン

ほれぼれと眺めていたPink FairyをハリセンでひっぱたくSecretary

Snow White「いくら命を助けるためとはいえ改造人間なんて・・・
 しかも二人とも・・・」
Actress「ヤマダさんはともかく九十九さんまでなんてやりすぎじゃ・・・」
Blue Fairy「というよりもジャンルがごちゃ混ぜです」
Secretary「そんなことよりも既にナデシコの世界観じゃないことを問題にしなさいよ・・・」
Pink Fairy「いいじゃない。本人達も正義のヒーローになりたかったんだから」
Secretary「良くないわよ!」

スパコーン

またも気持ちのいいハリセンの音が響いた(笑)



火星極冠遺跡上空


1号とゲキガンガーは何故か見つめ合っていた。

イツキ「た、隊長?」
1号「俺に名はない!だが、熱血の炎はたった一つ!
 お前と同じものがこの心に灯っている!」
イツキ「隊長・・・」

なぜかラブラブチックな雰囲気が(笑)
そしてこちらの方では・・・

アキ「あ、あなたって一体・・・」
2号「ここは俺達で引き受けます。
 あなたは体勢を立て直して下さい」
アキ「もしかしてあなたは・・・」
2号「正義を成す者に名など不要です」

あまりの非常識な光景に唖然とするアキ。
しかし人間サイズで大蛇を殴り飛ばした男達はそう彼女達に促した。

「大蛇ども!俺達が相手だ!!!」
二人は再び大蛇に殴りかかった。
しかし、呆れた東郷は・・・

「道化が」

ペチ!

東郷の一言で動いた大蛇のボディープレスで潰されてしまった。

アキ「・・・つぶれた?」
イツキ「隊長〜!!!」

威勢良く現れてあっさりやられた・・・誰もがそう思ったが、それは軽率だった。

ボコン!

1号「まだまだやられん!」
2号「その通り!」

穴を掘って別の所から飛び出してきたゲキガンライダー達(笑)

1号「どうした、2号!もうへばったか?」
2号「しかし、いくら正義が不滅とはいえ、あの相手に生身はきついぞ」
1号「そうだな。ガンガーマシンを呼ぶか」
2号「おうとも!」
1号&2号「セーット!ガンガークロス!!!」

二人は手を組み合わせる!
すると遠い彼方から二つの光がやってきた!

1号&2号「フェードイン!!!」

彼方からやってくる物体から発する光に導かれて二人が宙に舞った!
近づいてくる光、それはゲキガンガーよりも少しこざっぱりしている巨大ロボットだった。二人はそのロボットの額のところに吸い込まれていった。

そして・・・

1号「駆けろ疾風!フウジンガー!!!」
2号「轟け稲妻!ライジンガー!!!」
1&2号「ここに見参!!!」

ロボットは大地にすっくと立ち、そして決めポーズを行った!



Yナデシコ・ブリッジ


フクベ「見事じゃ」
ゴート「また変なのが増えた・・・」
ルリ「70年代から90年代の巨大ロボットになった・・・って感じですね」
ユリカ「なんか、もう何でもありね・・・」

あまりの状況の変化についていけないナデシコクルーであった。



遠くのユーチャリス


Pink Fairy「うっとり♪」
Secretary「あれもあんたの仕業か!!!」

スパコーン

Snow White「改造人間に巨大ロボット・・・」
Actress「しかもトラクタービームなんて・・・」
Blue Fariy「技術考証無視しまくりですね」
Pink Fairy「心配いらない。ワイヤーで吊っただけだから」
Secretary「そういう問題かぁ!」
Blue Fariy「改造人間にロボット2台も作ったらそりゃ疲れるでしょう」
Pink Fairy「これだけじゃない!」
一同「え?」

頭の痛い出来事はこの後さらに起きた。



火星極冠遺跡上空


1号「風神スラッシュ!!!」
2号「雷神サンダー!!!」

2体の巨大ロボットはアキ達を逃がすために果敢に戦った。
しかし・・・

1号「風神スラッシュ!!!」
2号「雷神サンダー!!!」
1号「風神スラッシュ!!!」
2号「雷神サンダー!!!」
1号「風神スラッシュ!!!」
2号「雷神サンダー!!!」
1号「風神スラッシュ!!!」
2号「雷神サンダー!!!」
1号「風神スラッシュ!!!」
2号「雷神サンダー!!!」
1号「風神スラッシュ!!!」
2号「雷神サンダー!!!」
1号「風神スラッシュ!!!」
2号「雷神サンダー!!!」

・・・・全然効いていない(笑)

「今更道化が二人増えたところで」
東郷はまだ余裕の表情を崩していなかった。
さっきのイツキの様に造作もない相手だ。
実際、実力は先ほどのゲキガンガーとさほど変わらなかった。

オォォォォォォォン!!!

ドゲシャ!

1号&2号「ぐわぁぁぁ!」
一撃で吹き飛ばされるフウジンガーとライジンガー(笑)

1号「さすがにこの状態はきついか・・・」
2号「少し早いが切り札を出すか?」
1号「そうだな」
さすがに攻撃が通じてないのがわかったのか、1号と2号は相談し始めた。
そしてなにやら決意したようだった。

「熱き血潮と!」
「折れぬ信念!」
「重なる心が一つになる時!」
「火と火は炎となる!」
「「シンメトリカルドッキング!!!」」

フウジンガーとライジンガーは空中にジャンプする。
するとどういう変形をしたのかわからないが、フウジンガーは右半身、ライジンガーは左半身だけという形に変形した。
そしてその中央部分で両者は合体した。

そしてよくわからないポーズを取った後、決めポーズを取る!

「超絶合体!フウライガー!参上!!!」
そして一回り大きい巨大ロボが一台出来上がった(笑)



Yナデシコ・ブリッジ


その光景を見ていたナデシコクルーはというと・・・

プロス「ゲキガンガーの次は合体ロボットですか・・・」
メグミ「既にもう何が出てきても驚かないですよね〜」
ユリカ「格好いい〜♪」
ルリ「でも・・・二度あることは三度あるって言いません?」
ミナト「まさか(笑)」
ラピス「あ、またピンチになった」
一同「え?」

戦場を見るとフウジンガーとやらになっても相変わらず大蛇の攻撃を食らって吹き飛ばされていた(苦笑)

ラピス「あ、立ち上がった」
ルリ「全然懲りてないみたいですね・・・」
ユリカ「まさかぁ〜〜
 まだ何かあるっていうの?」
フクベ「熱血と正義だけじゃ敵には勝てん!」
一同「え〜〜!」
ユキナ「おじいちゃん!知っているなら教えなさいよ〜!」

ユキナにヒゲやほっぺを引っ張られるも、フクベはなにやら訳知り気に言う。
思った通り、彼らはまた何かをやらかし始めた(笑)



火星極冠遺跡上空


2号「どうする1号、敵は強大だ!」
1号「心配するな!俺達の力はこんなものじゃない」
2号「だが実力差が・・・」
1号「俺達に欠けている物がある!!!」
2号「・・・そうか!ゲキガンガーの三位一体!」
1号「そうだ!
 今はただ熱血と正義を掛け合わせただけだ!
 だが、ここに友情を掛け合わせたらどうなる?」
2号「おお!炎は真っ赤な轟火となる!」
1号「その通りだ!
 お竜!聞こえているか!」

1号は通信でイツキのゲキガンガーを呼び出した。

イツキ「隊長!私が友情というわけですね!」
1号「そうだ!今度こそ、我らは全てが揃う!」
2号「正義!」
イツキ「友情!」
1号「そして熱血!
 全てが合わされば無敵の勇者が誕生する!
 今こそ我ら三人ゲキガンチームは心を合わせる時!!!」
2号&イツキ「おう!!!」
一同「レッツ!超ゲキガイン!!!」

三人の叫び声は奇麗にシンクロした!

三機のガンガーロボは空中に舞う!
そして合体のテーマ曲が流れる中、何がどうなったかわからないがフウジンガーとライジンガーはゲキガンガーの肢体に取り付くように変形分離した。

ガシン!

ゲキガンガーの両手にパーツがドッキングしていく!

ガシン!

両足にもパーツがドッキングしていく!

そして最後にはゲキガンガーの顔が胴体の中に収容されて代わりにどこからかやってきた真の顔が胴体にひっついた!

そしてロボットの瞳がキラリと光る!

1号「疾風迅雷!」
2号「絶対正義!」
イツキ「素敵に無敵!」
一同「究極合体!ゴットゲキガンガー降臨!!!」

なんか出てくる番組を間違えたかのような巨大ロボットが誕生した(笑)



遠くのユーチャリス


Pink Fairy「ビクトリー♪」
Secretary「やりすぎじゃ!!!」

スパコーン

Actress「言葉もありません・・・」
Blue Fairy「右に同じ・・・」
Snow White「まぁまぁ(汗)」

既に収拾のつかない有様に言葉を無くす4人であった(苦笑)



Yナデシコ・ブリッジ


同じくその光景を見ていたナデシコクルーはというと・・・

ルリ「そりゃ、確かにドラゴンガンガーとゲキガンガーが合体するという設定はあったらしいですが・・・」
ラピス「あれはやりすぎ」
ユリカ「まぁ、どうでもいいから大蛇をやっつけて下さい〜!(ヤケ)」

もうどうでも良くなっていたりする(笑)

フクベ「ワシにはワープも出来なければ、奴に縛られる歴史も残っておった。
 結局ワシは勇者ではなかった。
 残念といえば残念じゃが・・・
 しかしここで三人の勇者はようやく揃った。
 奴のシナリオにいない、死んだはずの三人がここに揃った。
 それが奴の歯車を狂わすじゃろう」
ユキナ「ってバッタに乗ってマジモードに入るんじゃないわよ、おじいちゃん!」

意味深な解説をしておきながらナインティーン君の差し出すチョコパフェを頬張るフクベを思わず締め上げるユキナ。

『じゃが、それだけでは勝てん・・・
 真の歴史を探し出すのじゃ
 でなければ「始まりの人」は倒せんぞ・・・』

「だからにやけてないでちゃんと説明しなさいよ!」
ユキナにヒゲを引っ張られながらそう願うフクベであった。



ポストスプリクト


ということで黒プリ二十八話をお届けしました。

あ・・・長かった(苦笑)
まぁガイだけでなく、九十九も実は命を救われて改造人間になりましたとさ、って事で二人が一緒に現れたらどうなるのだろう?と考えたら、こうなるだろうなと半ば自明の理のように筆が動きました(笑)

実はかなり早い段階から真のゲキガンチームはガイ、イツキ、九十九の三人でフクベはダミーでした。だから二十三話でフクベが逃げ去っていうのはこういう仕掛けを用意していたからなのです。

さてさて、おふざけ半分、黒プリのテーマ性半分の回でしたが、まだまだクライマックスは続きます。
始まりの人の正体とか、あいつとかあいつとかも出てきます。
トドメは彼らが表舞台に現れて・・・

っとここから先は次回をお楽しみして下さい。
(っていうか年内完結するんかいな)

ということでおもしろかったなら感想をお願いします。

では!

Special Thanks!!
・三平 様
・k-siki 様
・神薙真紅郎 様