アバン


まだ日常へ戻るには早すぎた。
ただそれだけのこと。
決して日常から逃げ出してきたのではない。
やり残した事をやり通すために戻っただけ

出てきた日常に舞い戻れるかどうかわからない。
でも戻れなくても良い
いや、戻れないかもしれないという考えこそが思いこみなのかもしれない。

世界の壁は私達が決めている。
狭いと感じるのは、きっと私達が狭いと思い込んでいるだけだと思う
広げたいのならいくらでも広げればいいのだから・・・

ああ、これってSecond Revengeのラストとほんのちょっぴり関係があったりしますのでそのつもりで〜



とある屋根裏部屋


少し昔のことじゃった。
とある屋根裏部屋には二匹の動物が住み着いていたそうな。

一匹は少し気まぐれな子猫じゃ
何事も斜に構えて「ニャァ」と言う代わりに「バカばっか」と言うらしい。
ポイントは青色の髪をツインテールにしていることじゃ

もう一匹は大人しい子犬じゃ
言葉数が少なく、舌足らずであるがたまに痛烈な皮肉を言うこともある。
基本的には人見知りするらしい。
ポイントはピンク色の長い髪なのじゃ。

その二匹の動物は今、生存の危機に瀕していたのじゃ・・・

ルリ「パトラッシュ・・・僕はもう疲れたよ・・・」
ラピス「ばうわう」
ルリ「・・・・緊張感なさすぎですよ、ラピス!」
ラピス「っていうか、もう飽きた!」

ラピスは持っていた台本を放り投げる。
ルリは戒めるようにラピスに言う。

ルリ「ダメですよ、ラピス。
 今の私達の危機的状況を表現するためにも精一杯体で表現しないと」
ラピス「だから、なんでフランダースの犬ゴッコをしなきゃいけないの!」
ルリ「それはルリ&ラピスのナデシコマスコット強化月間だからです」
ラピス「だからって観客もいないのになんで10回もやらなきゃいけないの?」
ルリ「こういうのは形から入らないとテレパシーは出せませんよ」
ラピス「・・・テレパシーってなに?」
ルリ「いいから念じるんです。」
ラピス「だから無理だって・・・」

最初から改めてフランダースの犬ゴッコをする二人

ルリ「僕はもう疲れたよ・・・」
ラピス「って言うか、本当に疲れてきた・・・」
ルリ「眠ってはダメです!そのまま目を覚ましませんよ!」
ラピス「それ、雪山で遭難した場合だと思う・・・」

今度は雪山遭難ゴッコですか?

ラピス「・・・お腹空いた」
ルリ「言わないで下さい。
 気にしないように気を散らしていたのに」
ラピス「アキの料理が食べたい・・・」
ルリ「そりゃ食べたいですけど・・・」

グー!!!!!!!

ルリ「・・・・・・・」
ラピス「・・・・・・」
ルリ「なんですか、その目は?」
ラピス「いや・・・」
ルリ「私じゃありませんよ?」
ラピス「私でないことは確か」
ルリ「天才美少女オペレータのホシノ・ルリともあろうものが空腹なんかでお腹の虫なんか鳴らしませんよ」
ラピス「・・・ジロ」
ルリ「それじゃ、お料理ゴッコをしましょう♪
 お料理を作ったつもりになって、出来たものを食べるんです♪」
ラピス「・・・空想の料理でも食中毒を起こしそう・・・」

グー!!!
グー!!!

調子の違うお腹の虫が二つ
まるで互いに返事するかのように鳴り合った。

ルリ「寒いですね」
ラピス「お腹空いたね」
ルリ「懸賞はがきでも出しましょう」
ラピス「懸賞生活?」
ルリ「ええ。まずは食事と毛布をゲッチューです」
ラピス「でも宅配の人、ここまで持ってきてくれる?」
ルリ「バレますね・・・」
ラピス「ダメじゃん・・・」
ルリ&ラピス「うぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜ん」
ホウメイ「あんた達、何をやってるんだい?」

泣き出した二人のテレパシーが通じたのか、いきなり暗闇の一部に明かりが差し込んだ。
光からそこを覗き込んだのはホウメイであった。

ルリ「ホウメイさん〜〜」
ラピス「ホウメイ〜〜」
ホウメイ「おやおや、おチビちゃん達、どうしたんだい!?」

潜伏生活3日後、糧食であるお菓子類を食べ尽くしたルリらは救いの神ホウメイにすがりついてワンワン泣くのであった(笑)



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第二十三話  Reconstruction<case by RURI&LAPIS>



Yナデシコ・食堂


ガツガツ!!!

ルリ「そんな音は立ててません!」

失礼(笑)
けど、そんな音が聞こえてきそうなほど、二人のおチビちゃんは猛烈な勢いで食事を食べていた。

ルリ「ホウメイさん、大盛りおかわり」
ラピス「ニンニクラーメン、チャーシュー抜き」
ルリ「お稲荷さん追加」
ラピス「薫玉追加」
ホウメイ「あんた達、もっとゆっくり食べなよ。誰も横取りしやしないんだから(苦笑)」
ルリ「けど食べれる内に食べておかないと」
ラピス「こういう時は食い貯めしなきゃいけないって」
ホウメイ「誰がそんなこと言ったんだい?」
ルリ「サバイバルの本に書いてました」
ラピス「南の島のフ○ーネに未来少年○ナン」
ホウメイ「あんた達、そんな本を紹介した奴と縁切りなよ・・・」

まるで冬眠する熊の勢いで食べ物を詰め込むおチビさん達にやんわり釘を差す。

とはいえ空腹の二人はとりあえず満腹感が得られるまで食べまくった。

ホウメイ「今日は店じまいだねぇ・・・」
ホウメイは業務用のお釜の底が見えているのに苦笑した。
しかしここまで食べきったおチビちゃん二人が漫画みたいなお腹の膨れ方をしていないのがどうにも納得いかなかった。

ルリ「美少女の特権です」

その主張もどうかと思うが・・・

ルリ「では、これで失礼します」
ラピス「このことは内密に」
ホウメイ「ちょっと、あんたらどこに行くんだい!?」
食べるものを食べたらさっさと元いた場所に戻ろうとする二人をホウメイは呼び止めた。

ラピス「私達は赤毛のアン状態だから」
ルリ「ラピス、それを言うならアンネの日記状態ですよ」
ラピス「つまり潜伏中なの」
ホウメイ「潜伏中って・・・」

ホウメイは彼女達の姿を上から下まで眺め見る。
彼らの姿は多少汚れているが、いつものナデシコの制服だ。
こんな格好で暖房も効いていない屋根裏部屋に潜伏するなんて無茶だ。

ホウメイ「なんだって一体潜伏なんか・・・」
ラピス「PODを任された」
ルリ「私達が去るとオモイカネを都合良く弄くられてしまいます」
ホウメイ「にしたって・・・」

寒い思いをして、お腹を空かせてまであんな暗い屋根裏部屋に潜伏しているなんて・・・

ルリ「後生ですから私達が屋根裏部屋に潜伏してることは秘密にして下さい」
ラピス「ホウメイ、お願い」

二人はペコリと頭を下げる。
ホウメイはしばらく熟慮した後・・・

ホウメイ「ダメだよ!」
ルリ「ホウメイさん!」
ラピス「どうして!」
ホウメイ「厨房にネズミを飼うわけにはいかないだろ?」
ルリ「そんな・・・」
ホウメイ「でも・・・」
ラピス「でも?」
ホウメイ「まぁ、犬や猫なら・・・いいか」

何のことかわからないおチビちゃん達であったが、ホウメイが背中から取り出したモノを見て意味を了解した。

子猫と子犬の着ぐるみ・・・

ホウメイ「犬猫のペットを飼うのは禁止されていない訳だし」
ルリ「ホウメイさん♪」
ラピス「ホウメイ♪」

二人は嬉しくてホウメイに抱きつくのであった。



屋根裏部屋


さて、とりあえず食事と暖をとることを確保した二人であるが、今日も今日とてネルガルからのオモイカネ改造計画の相手をしていた。

ルリ「ラピスはダミーの映像を流して置いて下さいね」
ラピス「うん」

ルリはやってきた書き換えプログラムの抹消を行っていた。
そしてラピスはダミーの映像を・・・相手の攻撃に対してオモイカネが自我防衛しているかのような反応を行っているデータを即興で作って返した。
これでネルガルにはオモイカネは抵抗しているモノの徐々に自分たちの支配下に置かれている様に見えるだろう。
この間、ルリはゆっくり相手の書き換えプログラムを抹消していった。

しかしルリはそれ以外にも色々していた。
まずはオモイカネの説得である。
始終端末の前に張り付いてネルガルの作業にダミーの応答を返すというのは効率が悪すぎる。ここはオモイカネが洗脳されたフリをしてくれればこの不毛な作業から離れられる。
けど、オモイカネは人のマネが嫌いだ。
自意識を持っているAI故に他人のマネをするのが嫌いなのだ。
ルリはねばり強くオモイカネへの説得を続けていた。

けど・・・

ラピス「一気にやっちゃったらダメ?」
ルリ「一気にって?」
ラピス「ネルガルのコンピュータに侵入できる。」
ルリ「こちらの存在を気取られる訳にはいきません。
 やるならこちらが決定的な行動を起こす時です」
ラピス「ん・・・わかった」

それだけ会話を交わすとまた黙々と作業に戻った。
しばらく無言の状態が続く。

ホウメイ「三毛、チャッピー、ご飯だよ」
ルリ&ラピス「は〜い♪」

下からホウメイが食事の時間を告げるとおチビちゃんは我先と食事に向かうのであった(笑)



本日のご飯


ルリ「・・・・」
ラピス「・・・」
二人はしばし無言
なぜなら本日のメニューが・・・

ルリ「猫まんま?」
そう、ルリの場合はご飯の上に鰹節が振りかけてあって、そして隣にはお醤油のビンが置かれていた。
すごくオーソドックスな猫まんまであった。

ラピス「私のはなに?」
ラピスの方はご飯に味噌汁がかけられたぶっかけ飯である。

ホウメイは二人に平謝りをする。

ホウメイ「ゴメンよ。余りがあればそれを持ってきたんだけど、なかなかそうもいかなくって・・・」
ペット用に、と取り分けて置いた分以外は奇麗さっぱり捌けてしまったのだ。
最初からちゃんとした食事を用意して残しておくというのは難しい。
そこからルリ達の存在がばれないとも限らないからだ。

けれど子猫と子犬はミャーミャーと泣く。
ホウメイは真面目に子猫達の親になった心境であった。

ホウメイ「まぁ・・・味は保証するからお食べ」
ルリ「美味しいです。でも猫まんま・・・」
ホウメイ「い、いや・・・(汗)」
ラピス「美味しい。でも・・・ミナトがふりかけ定食を泣いて嫌がる理由が分かった(泣)」
ホウメイ「あはははは・・・」

ホウメイも明日からもう少し食事の内容をどうにかしようと思うのであった。



ダイエット?


潜伏生活も既に数日を過ぎた
今日もおチビちゃん二人はネルガルのデバッグ作業を妨害していた。
しかし・・・

ラピス「ジー・・・・」
ルリ「な、何ですか?ラピス。
 ジーっと人の顔をジッと見て」
ラピス「・・・多分気のせい」
ルリ「良いから話しなさい」
ラピス「そう?
 んじゃ・・・・・・・・・・・・・
 ルリ姉、太った?」
ルリ「!!!!!!!!!!」

まるで周りの空気が一瞬氷点下に下がる。

ルリ「な、何をいきなり・・・・」
ラピス「ほっぺがちょっぴりまろやか」
ルリ「まろやかじゃないですよ?ほらほら♪」
ラピス「ここのところホウメイのご飯も美味しいし・・・」
ルリ「き、気のせいですよ〜〜」
ラピス「第一、私達ここで運動なんか一切してないし・・・」
ルリ「だって設定では私達妖精は太らないと・・・」
ラピス「それ、どこかのSSの勝手な設定じゃないの?」
ルリ「む、胸だって大きくならないといけないですし」
ラピス「胸以外の所も大きくなっていたりして」
ルリ「・・・」

サーーーーーと顔が青ざめるルリ

頭の中では肉丸君みたいになった自分の姿を思い浮かべた。

ルリ「運動しましょう!」
ラピス「潜伏しているのがバレるって・・・」
ルリ「ダイエットです!」
ラピス「さっき太っていないって・・・」
ルリ「いいからあなたもやるんです!」
ラピス「なんで私まで〜〜」

さっそくダイエット運動に付き合わされることになった。

ルリ「走れ〜光速の〜」
ラピス「・・・何これ?」
ルリ「何って、有名な歌って踊れる曲です。
 知りませんか?」
ラピス「知らない。っていうか、こんなのどこかの歌謡ショウしかやらないでしょう」
ルリ「って知ってるじゃないですか」
ラピス「だって、いまいち乗り切れずに恥ずかしそうにやってるくせに」
ルリ「まぁ筆者の悲しい素行は置いておくとして・・・」

筆者にとっては既にお正月とお盆の恒例行事です。
知っている人だけ笑って下さい(苦笑)

ルリ「仕方がありませんねぇ・・・
 んじゃこれはどうですか?」
ラピス「これって?」
ルリ「迷子の迷子の子猫ちゃん〜〜♪
 あなたのお家はどこですか〜〜♪」
ラピス「・・・だから何?」
ルリ「いいから、ここに書いてあるように歌いなさい」
ラピス「・・・わかった。
 名前を聞いてもわからない〜〜♪
 お家を聞いてもわからない〜〜♪」
ルリ「ニャンニャンニャニャ〜〜♪
 ニャンニャンニャニャ〜〜♪
 泣いてばかりいる子猫ちゃん」
ラピス「犬のお巡りさん〜〜♪
 困ってしまってワンワンワワン〜〜♪
 ワンワンワワン〜〜♪」
ルリ「・・・」
ラピス「・・・」

童謡を歌って動揺するルリ(笑)

ルリ「なんですか?その目は」
ラピス「いや、単にこの着ぐるみを着ていたからやりたかったのかなぁ〜〜と思って・・・」
ルリ「気のせいですよ」
ラピス「っていうか、既にダイエットの目的はどうでも良いような気もするけど・・・」
ルリ「そうでした!今度こそ!」

しまったと思ってしまったラピス(苦笑)

ルリ「それでは・・・
 なんでだろ〜〜♪
 なんでだろ〜〜♪」
ラピス「止めなさい!」
ルリ「・・・やっぱりダメですか?有酸素運動はしそうなんですけど・・・」
ラピス「それ以前に美少女のやる運動じゃない」
ルリ「確かに・・・」

しばし無言の二人・・・

「仕方がありませんねぇ・・・」

そう言ってルリ達が始めたのは・・・



ルリ「街はきらめくパッションブルー〜♪」
ラピス「・・・・」
ルリ「見つめるキャッツアイ〜♪」

踊るルリをジト目で睨むラピス。

ラピス「・・・・」
ルリ「どうして踊らないですか?
 レオタードを着てエアロビですよ?」
ラピス「いや・・・
 元ネタを思い浮かべる人達にこの光景を見せたらどう思うか・・・」

確かに、
あのオープニングはレオタードを着た三人娘が踊っていた。
しかもバイーン!なボディーで超セクシーだった。
けど、今のルリとラピスの様子は・・・
スクール水着に毛の生えたような、しかもスリーサイズがそっくり同じような体型でエアロビをしても・・・

ルリ「イメージトレーニングです。」
ラピス「イメージって・・・」
ルリ「将来はああなるって思っていたら体も自然とそうなるんです!」
ラピス「・・・それは無理ってアキの記憶にあったような・・・」
ルリ「だからイメージトレーニングなんです!」

ラピスの冷ややかな視線にもめげずにエアロビを踊るルリ

当然、そんな騒ぎにあの人が気づかないわけはなく・・・

ホウメイ「あんた達、何やってるんだい?」

と屋根裏部屋を覗くホウメイ
そこで彼女が見たものは・・・

彼女の記憶からその光景は封印された。
そして、その日から屋根裏部屋には体重計が設置された。
その記念すべき使用第一号の方は自分の体重を見てホッとされたそうな(笑)



いつもの屋根裏部屋


それから数日は何事もなく過ぎ去った。
無言の中、コンソールを操る無機質な音だけが流れる。

ピコピコ
ピコピコ

まぁそんなファミコン時代の電子音が流れていたかどうかわからないが、概ね静かな中で行われるその作業はともすれば息苦しいモノである。
元来、ルリもラピスも自分の側から話すタイプではない。
ほっておけば、両者ともいくらでも無言でいる。
そして無言のまま延々と居ても痛痒を感じないタイプである。

が・・・
さすがに無言のままずっと続けるのは居心地が悪いのだろう。
今日もまた、ルリがしゃべる側に転じる。
自分でもわかっているのだ。
自分が何か話せばそれはイズミの寒いギャグより程度の低い会話しか出来ないことに。
人生相談なんて柄じゃない。
励ますなんてやったことない。
今のラピスがアキの居ないことでかなり寂しい思いをしていることも
しかしここを守ってと言われて耐えていることを
どうしたって人間二人いて、どちらも無口だとしても片方は饒舌にならざるを得ないのだ。

ルリ「ラピス・・・」
ラピス「なに?」
ルリ「今日は・・・」
ラピス「別に無理して話しかけてくれなくてもいい・・・」
ルリ「え?」
ラピス「最近、話題がループしている」
ルリ「そ、そんなことは・・・」

ラピスの瞳はルリの心を見透かしている。
わからないはずはない。
ルリもラピスも同じだから
電子の妖精だから

彼女は上っ面だけのなだめすかしが欲しい訳じゃない。
ちゃんと向き合って欲しがっているのだ。
ならばちゃんと答えよう・・・

ルリ「あなたはアキさんの記憶をどう思っているんですか?
 アキトさんをアキさんの今の姿と思えますか?」
ラピス「わからない。でも・・・」
ルリ「でも?」
ラピス「嫌いじゃない。嫌いにはならない。
 見上げた先にあの笑顔が・・・悲しそうだけど精一杯笑おうとしている笑顔があるなら、あの人はあの人と思う・・・」
ルリ「そうですか・・・
 ラピスは良いですね」
ラピス「なんで?」
ルリ「私は・・・」

ルリはそこで口ごもる。
自分は多分、そこまで割り切れない。
自分の好きなあの人は現在のアキトであり、アキではない。
優しい笑顔を見せるアキトであり
悲しく、暗く、復讐に燃えるアキではない・・・と思う

ラピス「それはルリ姉が認めたくないからじゃないの?」
ルリ「認めたくない?」
ラピス「あの人の記憶が現実になってしまわないかって」
ルリ「!!!」

どうなのだろう?
アキトとユリカの結婚
新婚旅行による事故
二人の遺影を抱えてのお葬式
せっかく得た家族を失う悲しさ
復讐鬼になって現れるあの人の姿
あの人の目には私は映っていない
あの人の目に映っているのは・・・

遺跡に取り込まれたユリカさんの姿と
爬虫類をした目の男の姿・・・

私の居場所はどこにもないのではないか?と思える

アキトを嫌いになりたくない
けどアキを認めてしまえば彼はいずれあの人のようになってしまう
だから心が認めたくない

「・・・そうかもしれません」

ルリは苦しげにポツリと呟く。

ラピス「けど嫌いにはなれない?」
ルリ「・・・わかりません」
ラピス「自分の心なのに?」
ルリ「自分の心ほど曖昧なモノはありません。
 心がロジカルならどれほど楽でしょうか・・・」
ラピス「じゃ、ルリ姉はどうしたいの?」

ラピスはルリに話しかける。

彼女はしばらく考える。
なるべく自分に正直に。
それは自分の心をさらけ出すようなモノだ。
けれど片方でどうしようもないその気持ちを確かめたいと思う自分もいるのだ。

ルリ「変えられるなら未来を変えてみたい。
 あの人があの人のままで居られる世界に。
 それがアキさんという人物をこの世界から消すことになっても・・・」
ラピス「ルリ姉の望みはそれ?」
ルリ「多分・・・ラピスは嫌でしょ?」
ラピス「わからない・・・
 けど、アキはそれを望んでいる。
 そんな気がする。」
ルリ「ラピス・・・」
ラピス「私はあの人の目、あの人の手
 あの人の剣、あの人の翼
 共に歩む者・・・」

二人は決意を語る。
誰か二人を見守る者がいれば感涙を流すことだろう。
しかし、二人の気持ちに反応したのはそれらに類するモノではなかった。

ピロリロリン♪

「?」
二人は顔を見合わせる。
まるでゲームの効果音みたいな音がどこからともなく流れた。
二人は視線を周りにめぐらせると・・・

『フラグが立ちました。
 これからクイズ大会行います♪
 by.オモイカネ』

それまでのシリアスなお芝居をぶち壊すきわめて脳天気なウインドウが飛び交っていた。



第1回チキチキ・アマガワ・アキ クイズ大会


オモイカネ『ニューヨークへ行きたいか!』
ルリ「別に」
ラピス「行きたくない」
オモイカネ『・・・ノリが悪いですねぇ、二人とも』

ノリが良い方がおかしい。
さっきまでお涙ちょうだいの話をしていたのに、いきなりクイズ大会などをされれば戸惑いもするだろう。
しかし、オモイカネはそんな二人の気持ちを無視してさっさとお話を進めることにしたみたいだ。

オモイカネ『第1問♪
 お料理の「さしすせそ」は調味料の頭文字を入れる順番に並べたものですが、
 それぞれ何を意味しますか?』
ルリ「・・・なんでこんなクイズに答えないといけないんですか・・・」
ラピス「私もわからない」
オモイカネ『将来あの人と一緒に小料理屋を手伝う可愛い幼妻・・・』
ルリ「やります!」
ラピス「私も!」
オモイカネ『というわけでどうぞ』

あっさりのせられる二人(苦笑)

ルリ「『さ』は砂糖ですよね?」
ラピス「『し』は塩」
ルリ「『す』は・・・」
ラピス「スイカ?」
ルリ「・・・それのどこが調味料なんですか!」
ラピス「ならルリ姉はなんだと思うの」
ルリ「す・・・酢橘(すだち)ですよ」
ラピス「それ調味料?」
ルリ「調味料ですよ!」
オモイカネ『二人とも微妙に違います(苦笑)』

ルリちゃん、一文字多すぎです。正解は『お酢』です

ルリ「そ、それぐらいはじめから知ってましたよ(汗)」
オモイカネ『さぁ最後の二つは難しいですよ』
ルリ「『せ』は・・・セロリですね」
ラピス「『セメント』」
オモイカネ『それは・・・どちらも調味料じゃないです・・・』

正解は『醤油』でした。

オモイカネ『最後は「そ」ですよ』
ルリ「そ、そんなのわかってます!」
ラピス「す・・・酢醤油」
ルリ「ゆ・・・ですか・・・柚子(ゆず)!」
ラピス「ず・・・ズワイガニ」
ルリ「に・・・」
オモイカネ『いつの間にかしりとりになってます』

正解は『味噌』でした(笑)

やる気があるのかないのか、アキに関するくだらないクイズは続いていった。
やれ彼女のスリーサイズとか、やれ彼女が今まで食べたマンゴープリンの数とか、やれファーストキスの相手は誰だとか

およそふざけているとしか言いようのないクイズであった。
しかし二人は呆れつつもクイズを答えていった。

そして・・・

オモイカネ『最後の問題です』
ルリ「やっと終わりですか・・・」
オモイカネ『あなた達はアキさんが好きですか?』
ルリ「え?」

ルリは最後の問題に驚く。
到底クイズとは思えない設問だったからだ。
ルリ達にはオモイカネの真意がわからなかった。
けれど・・・

ルリ「好きです。あの人の未来だから」
ラピス「好き。あの人が未来だろうが過去だろうが関係ない」
オモイカネ『・・・合格です♪』

パッパカパパパ〜〜♪

オモイカネはくす玉の割れる画像をウインドウ一杯に表示した。

ルリ「オモイカネ、これはどういう・・・」
オモイカネ『初めまして・・・と言うべきですか?ルリさん』
ルリ「・・・オモイカネ?」
オモイカネ『私はあの人の剣だったものです。
 あの人の苦悩を知り、あの人と共に戦った・・・
 ゆえに貴女達があの人を助けるというなら持てる知識の全てを教えましょう』
ルリ「・・・・」
ラピス「・・・」

ルリもラピスも目をパチクリさせる。
彼(?)は自分たちの知っているオモイカネではなかった。
それもそのはず、彼は未来の世界で闇の王子と共に戦っていた艦のAIなのだから・・・



特訓風景


さて、二人はネルガルのオモイカネ書き換え作業の妨害という作業からは解放された。
オモイカネの本来の人格であるラピedが相手に従ったフリをし始めたからだ。
こうなると下手な妨害よりもよっぽど効率がいい。
途端にルリとラピスは手持ち無沙汰になった。

とはいえ、このまま暇にさせてくれるほど甘くはなかった。

ラピed『さぁこれから特訓を始めます』
ルリ「特訓って・・・」
ラピス「一体・・・」
ラピed『これから私のことをコーチと呼びなさい』
ルリ「・・・なんのマネですか?」
ラピス「多分トップをねらえだと思う・・・」

誰に影響されたんだ?ラピed(苦笑)

ラピed『それはともかく・・・
 まずは連合軍のアルティメットOSから収集したバックログの読み方です』
ルリ「バックログなんか今までいくらでも・・・」
ラピス「情報収集の基本」
ラピed『まだまだ甘いです。ログの読み方一つで類推出来ることは格段と増えます。
 まずはver3.0とver4.01における伝送経路が類推できてしまう脆弱性から見てみましょう』
ルリ「う、うそ。そんな脆弱性があるなんて・・・」
ラピス「ウルテクだ・・・」
ラピed『ウルテクって(汗)』

ファミコン時代の裏技の呼び方は置いておくとして、ラピedは情報収集のイロハを教えていった。
OSの種類の見分け方
パッチのあたり具合
それぞれの脆弱性の有無
ログの吐き出し方の違い
環境変数の参照の仕方
スプリクトによるシステム情報の参照の仕方

今まで見逃しがちだったことであるが、不正アクセスに拒否の応答をするのか、それとも反応しないのか・・・ということも立派な情報だということをラピedは彼女らに教えた。
それは今まで直接全体を見ようとしていた彼女達に、一部分に光を当てていって全体を類推するという技法を教え込んだのだ。

その上で色々なことを教える。
自らのネットワークアドレスを相手に知られずに敵システムに侵入するのもその一つである。
プロクシの刺し方
伝送経路の偽装方法
中継サーバーの選び方
時には一旦敵の中枢サーバーに侵入して末端のシステムを安心させる方法
侵入先のログを消す方法
閉じるのを忘れているポートの見つけ方
プロトコルそのものに存在する脆弱性の利用方法

今まで似たようなこともやってはいたのであるが、ラピedの方法はもっと洗練されていた。
それもそのはず
それらの技法は未来の彼女達が戦いの中で磨いていったものなのだから
いずれ思いつくであろうそれらをラピedは幼い彼女達に教えていく

ラピed『さて、それじゃ実習をしましょうか。
 目標は連合軍本部のホストコンピュータに潜り込んで防衛システムの停止コードを奪取することです』
ルリ「え?それって非合法じゃ・・・」
ラピス「・・・難しい」
ラピed『難しくないです。全てのシステムには侵入可能です。
 だって外部からアクセスできるんですから。
 一番セキュリティーが甘いのは人間なんですよ』

ラピedは自信たっぷりにそう言う。
全てのシステムは人が作ったモノだ。
ハッキングという技法は最終的にはそのシステムを作った相手の思想までをも類推することにある。
それは人は何を考え、どう振る舞おうとするのか?
システムにどんな想いを込め、何と妥協をしたのか?
それは人を知ることと同義なのだ・・・
彼は笑ってそう言った。

ルリ「わかりました。やります」
ラピス「私もする。ルリ姉、競争よ」
ルリ「負けませんよ」

彼女達は我先にと与えられた課題に取り組んだ。
だが、それが決してゴールなのではなく、もっともっと複雑な課題を与えられることになるのだが(笑)



ハッキング風景


さて、世の中にはセキュリティーホールが多いOSやソフトが散在するが、本当にそれらが原因でセキュリティーが破られることが多いのだろうか?

いや、そんなことはない。
一番間違えるのは人間だ。
例えば見覚えはないだろうか?
パスワードを付箋紙に書いて机に張ってあるのを。
パスワードが自分の子供の名前であったり、誕生日であったり

さすがに23世紀にもなろうというこの時代には電子認証やバイオメトリクスなどが主流なのであろう。
しかし管理をしているのは人間であり、人間である以上ミスを犯す。

例えば・・・・

ルリ「ラピス、ポートは開いてますか?」
ラピス「デフォルトのまま。1180番が開いてる」
ルリ「普通はファイヤーウォール越しに開いたりしないんですけどね・・・」
ラピス「ま、ありがちなうっかりミス」
ルリ「まぁいいです。リクエストの反応を見ます・・・」
ラピス「ホストネームのリクエストを返してきてる」
ルリ「・・・本当に管理がザルですね。OSやソフトのバージョンまで丸見えですね。
 さてどう侵入しましょうか?」
ラピス「このバージョンならバッファーオーバーランでバックドアを送り込める」
ルリ「でもさすがにプロセス管理用のスイーパーは走らせているでしょう?」
ラピス「大丈夫。このOSなら100ms毎にしか走らない。
 ザルな管理者アカウントがあれば余裕で見つけだしてキル出来る。
 大丈夫、痕跡すら残さない」
ルリ「いいでしょう。まぁ見つかってもネルガルの本社を中継してますから数秒は余裕があります。
 バレたとしてもネルガルがガサ入れ食らっている間に逃げ切れますし」
ラピス「でも侵入してどうするの?
 乗っ取る?」
ルリ「とりあえずログをあさります。
 今回は連合軍のネットワークシステムの全貌を見ることですから。
 バックドアはなるべくいっぱい仕掛けたいですし」
ラピス「了解」
ラピed『立派に成長しましたねぇ』

ラピedは頼もしい二人の様子にそっと涙(?)を流す。

って、良いのか?それで(苦笑)



しばし後、屋根裏部屋


さてさて、連合軍はおろか、ネルガルやクリムゾンまで潜入した二人
今の彼女達には既に既存のシステムは物足りなくなっていた。

ルリ「ラピス、バックドアは仕掛け終わりましたか?」
ラピス「うん。踏み台の配置はほぼ完了した。
 これで連合軍の防衛施設はほぼ麻痺させられる」
ルリ「そうですか・・・」

準備万端・・・
と言いたいところだが、ルリは何かが引っかかっていた。
収集したログ・・・
既に膨大な量が蓄積されているのだが、何かがおかしい気がするのだ。

なんだろう?
その感覚にルリはずっと悩んでいた。
なんて言えば良いのだろうか?

例えば普段置いてある花瓶の位置がほんの少しずれているとか、
お尻から搾っているはずの歯磨きのチューブの真ん中が少しへこんでいるとか、
よく食べている定食の盛り合わせが1品だけ違っているとか、
何かほんの少しだけ違っている気がするのだ。

『この感覚は・・・』

そう、間違い探しの絵を見せられている感じ・・・
そんな感じなのだ。

ルリはまさかと思ってログを読み返してみる。

ルリ「・・・・・・・・・・」
ラピス「ルリ姉、どうしたの?」
ルリ「・・・やられました」
ラピス「やられたって?」

ルリは大急ぎでコンソールを操る。
そう、膨大なログを参照し始めたのだ。
ラピスには何をやっているのか、最初はわからなかった。

ラピス「ねぇ、一体何?」
ルリ「このログ、加工されていますよ」
ラピス「え?」
ルリ「ほら、ここを見てみなさい」

ルリは例を一つラピスに見せた。

ラピス「ん・・・なんてことのないログだけど・・・
 あれ?」
ルリ「わかりますか?」
ラピス「うん、ここ・・・」

非常に気づきにくい。
それだけでは意味がない。
けれど数々のログを見てきたルリらにはわかる。
無秩序に並んでいるログの中身が実は規則性があることを。
外部からの無駄なパケットが混じっているのだ。
これそのものはどうという事のない。
ハッカーの気まぐれなサイトアタックやウイルスに感染したコンピュータがばらまくパケットである。
たわいのないそれらのパケットをファイヤーウォールが弾いた。
ただそんな風にしか見えない。

しかし、だ。

連合軍の欧州、アジア、極東、オセアニア、北米、南米はもちろん、ネルガルやクリムゾン、その他様々なログを同じ時系列で重ね合わせると立派に意味のあるデータ列になるのだ。

例えるなら、オーロラビジョンのような巨大モニターがあるとしよう。
一つ一つのログはモニターのランプ一つ一つだ。
近づいてその一つを凝視したところで光がチカチカ光って何がなにやら意味が分からない。
しかし・・・それを全て繋ぎ合わせてみることが出来ればどうなるだろうか?
そこには意味のある映像が映し出されるのである。

自分達以外の誰かがこのような巧妙なデータを流していったのだ。

ルリとラピスは顔を見合わせた。

「ラピスはデータのつなぎ合わせをして下さい。
 私は暗号解除とデコードを行います」
「わかった」
これは明らかに自分たちに向かって放たれたメッセージだ。
なぜならおよそ世界中のサーバーに残されているログを見ないとその存在すら気が付かない。全て手に入れて初めてわかるのだ。
そのような行為をしている人間は彼女達以外にいないからだ。




しばし後・・・



ルリ達は解読の終わったデータを参照した。
それはただの画像ファイルである。
ファイル名は「memory」・・・記憶と題されたファイルである。

ルリはそれを躊躇わずに再生した。

ルリ「・・・」
ラピス「・・・アキ」

なんのことはない。
それはナデシコに乗って以来のアキの映像を映したモノだ。
誰がこんな映像を記録しておいたのだろう?

ナデシコ発進の時、アキトと共にエステで飛び出した時の映像
食堂で料理をするアキ
ムネタケ反乱の際、ブリッジで啖呵を切ったアキ
ビッグバリア突破の際にエステでミサイルを撃破していくアキ
反乱騒ぎでリョーコらにリボルバーを向けるアキ
火星で木星蜥蜴の大軍に一人突入するアキ
なぜなにナデシコで首輪を付けながらアキが説明お姉さんを演じていたのを・・・

ラピス「アキ、かっこいい」
ルリ「しかし思えばバカなことばっかりやってますね」

二人は思い出を見ながらそんなこともあったなぁと笑う。

そこにはアキだけではない。
彼女と共に笑い、泣き、喧嘩した自分たちクルーの姿が映っていた。
バカをやってる
空騒ぎばっかりだ。

でも・・・

以前なら「バカばっか」と吐き捨てていたところだ。
けど・・・今はそんな光景を目を細めてみている。
なぜだろう?
ちょっと離れていただけなのに、
なぜこんなに愛おしいのだろう?

バカをやって、笑って、ちょっぴりドジで
それが愛嬌で許される場所・・・
他のどこでもダメなのだ。
ナデシコでなければ。

その映像はそう思わせるに十分だった。

いや、その思い出がそう思わせるのか?

違う。
そう思っている自分がいるからだ。
あの思い出の日々が決して嫌な思い出などではなく、大切だと思っていたからだ。
それはかけがえのない、大切な思い出だと思っていたからだ。

映像はまだ続いていた。
火星から帰った後も、
ナナフシ攻略の時も
月でPODで華麗に戦ったときも
一番星コンテストのときも

もちろん、楽しい思い出だけではなかった。
火星で散ったフクベ提督とヤマダ・ジロウ
イツキ・カザマさんの死
月での食堂の女将さんの死
ムネタケ提督の死
記憶麻雀での辛い記憶
アキさんとの別れ

でも・・・
それらも大事な思い出だ。
他の誰でもない、自らが勝ち取った記憶だから・・・

そして最後に映像は現在の状態で終わる

サセボの抑留施設にいるアキ
日常に戻り始めたナデシコクルー達
ナデシコに乗っていなかったかのように日常は過ぎる

そして・・・・

やる気のない名も知らぬクルー達がナデシコに乗っている様子が映された。
彼らがついこの間まで自分たちがいたポジションで仕事をしている。

やる気のなさそうに・・・
つまらなさそうに・・・
そんな人達がオペレータシートに座る。
食堂で食事をする
格納庫で整備をしている
この間まで私達がいた場所で
当たり前のように、私達のフリをして
あのピカピカ輝いていた思い出の場所も今は彼らの表情同様に朽ち果てていく気がした。

『私達の大事な思い出が彼らに上書きされても良いのですか?』

最後にその一文がモノクロの風景の上に書き出された。

ルリもラピスもその一文の意味を理解した。
理解したからこそ・・・

「やっぱりこのままじゃ良くないですよね」
「うん」

二人はようやく自分たちの意志で脱走の決意する。
このままじゃ良くないから
良くないと自分たちの問題として認識したから
誰かに頼まれたからじゃなく、自分たちの意志でそう望んだから・・・

と、二人が決意したところで

『おまけ』
「「え?」」
おまけに流された映像
それが誰かが残した映像の真意なのかもしれない。

その映像を凝視する二人・・・
しばし後


ルリ「なるほどそういうことですか・・・」
ラピス「さすがアキ♪」
ルリ「計画、ちょっと変更ですね」
ラピス「うん。練り直そう」

最後に残っていた映像を計画に付け加えることにする。
さぁこれからが大変だ。
ルリ達は最後の作業に取りかかった。



Yナデシコ・食堂


上で何をしているかよくわからないが、なにやらごそごそやっているようだ。
ホウメイは何となく「その時」が来るのがそろそろらしいということを感じていた。
そしてそれに誘われたのか、珍しいお客であるイネスがやってきていた。

イネス「あなたもてっきり逃げ出したのかと思っていたわ」
ホウメイ「そういうあんたこそどうなんだい?」
イネス「私は他人のことに興味がないのよ。言ったでしょ?
 そういうあなたこそ・・・」
ホウメイ「何でかねぇ。逃げ遅れちまったって所かな?
 それに・・・」

ホウメイは天井を一別した後、イネスに微笑みかけた。

ホウメイ「飼ってる三毛とチャッピーの世話もしないとねぇ」
イネス「ペットを飼うなんて珍しいわね」
ホウメイ「ん・・・何ていうのかねぇ。
 目が離せないっていうのか、成長が楽しみっていうか
 そんな感じかねぇ」
イネス「そんなモノなの?」
ホウメイ「あんたも飼ってみればわかるさ」
イネス「だから他人には興味ないんですって」

そういうと二人はクスクス笑い合う。

あの子猫ちゃん達が何をやらかすのか?
実は楽しみだったりする。



脱走作戦開始


ルリ「ではオペレーション開始します」
ラピス「・・・アキやエリナにも通信入れるの?」
ルリ「ええ」
ラピス「アキはヨーロッパの後どこに行ったかわからないし、エリナは誘うだけ無駄だと思う」
ルリ「それでもやる行為そのものが無駄とは思えませんよ」
ラピス「そういうなら・・・」

そういうとラピスはコンソールを操る。
すると無数のウインドウが開く。
一つ一つがナデシコクルーを表していた。
けどコミュニケが繋がっていないのか、画面は砂嵐のままだ。
けれどルリは話しかける。
呼び出し音に気づいてくれることを祈って。

きっとみんな気づいてくれるはずだ。
一人でも良い。
アクセスしてくれた人がいたらこう言おう。

『ナデシコは私達の艦です』
『渡したくない、私達の居場所を・・・』

と・・・


そして最初の通信は開く。
彼女達は笑いかけてこう挨拶する

メグミ『・・・誰?』
ルリ「皆さん、お久しぶりです。
 ルリです。にゃお〜〜」
ラピス「ラピス・ラズリ、ワンワン!」

ナデシコ脱走劇はこうして始まった・・・



おまけ


何故かナデシコのブリッジにはラーメンの屋台が鎮座していた。
そこには既に客がいてラーメンをすすっていた。
大男の横でミカン箱に乗りながら凄い勢いで食べまくっている少女が二人・・・

ゴート「オヤジ、玉子追加」
ルリ「おやじ、お代わり」
ラピス「大盛りネギ抜き」
プロス「いやぁお二人ともよく食べますねぇ〜〜」

堆く積み上げられたどんぶりの数を数えて仕入れた麺が尽きかけていることに気づくプロス。

「にしても・・・」
プロスもその映像を見ていた。
これを後で地上のありとあらゆる所にばらまくそうだ。
さてさて地球の人々がどんな反応を引き起こすのやら・・・

プロスは二人の少女が末恐ろしかった。

ルリ「私達じゃありません」
ラピス「そうそう、他の誰かの入れ知恵」

いやいや、多分未来の君達のお節介じゃないかと(苦笑)

ってことでcase by AKITO&YURICAに続きます。



ポストスプリクト


今回は特別に奥さん'sとその愉快な仲間達の語らいをお送りします。

ガイ「んな前置きはどうでも良いんだ!!!」
Blue Fairy「もう少し静かにしていて下さい・・・」
ガイ「これが静かにしておけるか!
 俺達の誰かが伝説の勇者じゃないってどういうことだ!!!」
Blue Fairy「そういえば、今回の作戦は上手く行きましたよね」
Pink Fairy「本当、本当。さすが私達」
ガイ「だから無視して勝手に話を進めるな!!!」
Blue Fairy「・・・覚えてましたか」
ガイ「覚えてるわ!!!」

−っていうか、何をそんなに大声で

イツキ「大声にもなります!」
フクベ「そうじゃぞい!」
Actress「そういえば一人が偽物って話じゃなかったでしたっけ?」
Secretary「え?三人とも偽物じゃなかったの?」
ガイ「違うわい!!!」
Snow White「まぁまぁ(苦笑)」

イツキ「冗談でも困ります。
 偽物ってどういう意味ですか?」
フクベ「そうじゃぞい」
Blue Fairy「ん・・・ショックを受けないですか?」
ガイ「良いから話せ!」
Blue Fairy「実は今の今まで話せませんでしたが・・・」
Pink Fairy「今のメンバーじゃゲキガンガーはフルパワーを出せない」
ガイ「何故だ!熱血はあるぞ!」
フクベ「努力もしたぞ!」
イツキ「友情もありますわよ!」

三人仲良く肩を組んで仲の良さをアピールする。
月の時と違ってあんよは上手も出来るようになった(笑)

Pink Fairy「でも無理なモノは無理」
ガイ「だから何故だ!」
Pink Fairy「ゲキガンガーのスペックを挙げてみて」
ガイ「ゲキガンビーム」
イツキ「ゲキガンソード」
フクベ「ゲキガンフレア」
Pink Fairy「まだ他にあるでしょう」
ガイ「他に?」
Pink Fairy「そう」
一同「う〜ん」

三人は悩む。見かねたSnow Whiteがヒントを出した。

Snow White「えっと・・・TVに出てくるゲキガンガーはしないですよ」
ガイ「TVには出てこない?」
イツキ「なんでしょうねぇ」
フクベ「なんじゃろう?」
Pink Fairy「あれの元になった機体には付いてたでしょう」

三人はそう言われてしばし悩む。

一同「むむむ・・・」
Actress「ということで次回までにみんなも考えておいてね♪
 最優先事項よ♪」
Secretary「それ違う作品だって」

ということでこの続きはポストスクリプトにて(笑)

Special Thanks!!
・AKF-11 様
・そら 様
・k-siki 様
・shu 様
・kakikaki 様