アバン


高がプリン、されどプリン
マンゴープリンをめぐり、かくもおもしろくかくも驚愕な事件が起ころうとはその時誰も気づきませんでした。
真実は容易に覆い尽くされねじ曲げられます。
そして歴史の裏に隠されて、決して開かれてはいけない禁断の事件だったのです。

でも、今回はそれを紐解いてみましょう・・・

ああ、これって外伝なので黒プリ本編とは何の関係もありませんのでそのつもりで。



事の始まりは・・・


それは些細な出来事から始まった。

アキ「アキト君、後でデザートの味見をしてあげるから♪」
アキト「本当ですか?ありがとうございます!」
アキ「何が良いかしら・・・マンゴープリンなんかどう?」
アキト「ええ、お願いします」
と、安請け合いしてしまったことから始まった。

で、何にしようかと思ったアキトであったが、たまたま冷蔵庫に残っていたマンゴープリンに目を付けた。

「これ、アキさんが作ったプリンなんだ・・・」
そう思ってアキトは何気なくスプーンで掬って食べた。
アキさんがどんな味付けであるのか知りたくて食べてみたのだ。
だがしかし、これが騒動の発端だった。

ラピス「あ!!!!!!!!!
 私のプリン!!!!!!!!」
アキト「え?」
ラピス「私が大事に大事にとっておいたマンゴープリンなのに!!!」
アキト「アレってアキさんが俺に味見用に置いてくれてた奴じゃ・・・」
ラピス「違う!!!私が昨日、アキに頼んで作ってもらってたの!!!」

あちゃ〜
アキトはラピスが好物として大事に大事に残しておいたマンゴープリンを勘違いして食べてしまったのだ(苦笑)

「私のプリン!私のプリン!私のプリン!私のプリン!」
泣いて暴れるラピス
仕方がなく宥め賺せようとするアキト

アキト「悪かった。俺が代わりにマンゴープリンを作るからそれで許してよ」
ラピス「アキのプリンじゃなきゃ嫌」
アキト「これでもアキさんにはだいぶ上手くなったって褒められたんだよ」
ラピス「・・・本当?」
アキト「本当、本当♪」

冷や汗が如実に真実を物語っているが、そうでも言わなければ泣きやまないだろう、この少女は・・・と思うとアキトは必死に演技をした。

だが、騒動はそれだけでは終わらなかった・・・



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
外伝 第17.5話 マンゴープリン殺人事件



ミスマル・ユリカの場合


そこに飛び出してきたのは一人に女性だった。

ユリカ「アキトの危機は私の危機!
 恋人たる私がアキトを救うのよ!!!」
アキト「ゆ、ユリカ!?」

ラピスを宥め賺していたところに現れたのは暴走艦長ミスマル・ユリカであった。

ユリカ「アキト、待ってて♪私がマンゴープリンを作ってあげるから♪」
アキト「い、いや、気持ちだけはありがたく受け取っておくから・・・」

ユリカのありがた迷惑・・・というかどこまでも迷惑な善意をアキトは拒絶した。
しかしそんなに聞き分けが良いならアキトはこの幼なじみに苦労などかけられはしなかっただろう。

ユリカ「遠慮しちゃダメだよ♪」
アキト「誰も遠慮なんかしてない!」
ユリカ「照れくさいからそんな事言うのね♪」
アキト「照れてなんかいないって!」
ユリカ「何でそんなに嫌がるの?」
アキト「自分の胸に手を当てて考えろ!!!」
ユリカ「そうか、アキトは私とラブラブだって噂がたつのが嫌なのね?
 まぁ秘めた恋っていうのもそれはそれで良いかも♪」
アキト「違うわ!
 料理の腕だよ!いい加減気づけよ!」
ユリカ「遠慮しちゃダメだよ♪」
アキト「誰も遠慮なんかしてない!」
ユリカ「照れくさいからそんな事言うのね♪」
アキト「会話をループさせるな!
 っていうか、俺の台詞を無視するな!!!」

ユリカはなぜかアキトの言葉を無視するかのようにラピスの元にやってきてニッコリ微笑んだ。

ユリカ「ラピスちゃん♪」
ラピス「なに?」
ユリカ「ちょっと待っててね。今、美味しいマンゴープリン作ってあげるから」

ユリカの微笑みはまさに天使の微笑みであった。
しかし、微笑みかけられた少女の瞳にはどのように映っていたかというと・・・

ラピス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 死ぬのは嫌〜〜!
 だって私が死んでも代わりはいないもの!!!」
アキト「ら、ラピスちゃん!?」

ラピスはあまりの恐ろしさに脱兎のごとく逃げ出すのであった。

アキト「おいユリカ、早まってプリンなんか作ろうとするなよ?」

アキトはそう言うとラピスを追って食堂を飛び出した。
後に残ったユリカはというと・・・

「アキト待ってて♪
 腕によりをかけて美味しいプリンを作ってあげるから♪」

やる気満々であった(笑)




しばらくの後・・・・



アキト「・・・作っちゃったのか?」
ユリカ「作っちゃいました♪」

気になってアキトがすぐ戻ってきたとき、既に何もかも手遅れであった。
がっくりうなだれるアキト(笑)

ユリカ「ささ、味見をしてみて♪」
アキト「やだ!」
ユリカ「何で〜〜」
アキト「死にたくない!!!」
ユリカ「やだ〜アキトったら♪
 私のプリンが死ぬほど美味しいなんて誉めすぎだよ♪」
アキト「誉めてねぇ!
 っていうか味見ぐらいしたのかよ!」
ユリカ「してないよ?」
アキト「してないのに何で美味しいってわかるんだよ!」
ユリカ「だって、こんなに美味しそうに出来ているのに〜〜」
アキト「見栄えだけは誉めても良い。
 けど、厨房にあるあの材料は何だ!!!」

アキトは指さす。そこには・・・

青汁、アスパラガス、寒天
ゴーヤ、ココナッツ、フルーチェなどなど

ユリカ「彩りを添えてみました♪」
アキト「っつうか、マンゴーが全然ないじゃないか!!!」

ごもっとも。
それでどうしてマンゴープリンの色をしているのか不思議である(苦笑)

ユリカ「途中経過は気にしない、気にしない♪」
アキト「気にするわ!」
ユリカ「そんな食べても見ないくせに〜」
アキト「ならお前が食べて見ろよ!」
ユリカ「アキトの分がなくなっちゃうじゃない〜」
アキト「だからいらないって言ってるだろ!」

堂々巡りの押し問答が続くが、そんな論争に終止符を打つ人物が現れた!

ジュン「テンカワ!貴様ユリカになんて酷いことを言うんだ!」
ユリカ「ジュン君♪」
アキト「お前、いつの間に!」
ジュン「ユリカがまるでいつも料理が下手みたいに言うな!
 彼女だってたまには美味しい料理を作ることだってあるんだぞ!」
ユリカ「うんうん、その通り♪」
アキト「お前も結構酷い事言ってるぞ?
 っていうか、ユリカも嬉しそうに頷くなよ・・・」
ジュン「お前なんかにユリカの真心のこもった手料理を食べさせるなんてもったいなさすぎる!!!
 そんなに嫌なら僕が味見をする!」
アキト「・・・正気か?命捨てる気か?」
ジュン「失礼な!ユリカの愛情がこもっていれば!」
ユリカ「ありがとう、ジュン君」
アキト「っていうか、お前それで死にかけたことないって言うのか?」
ジュン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 愛があればどんな障害だって!」

説得は無駄だと悟ったのか、アキトはやらせたいようにした。

結果は・・・

ユリカ「ジュン君、大丈夫!?」
ジュン「ユリカ、ぼ、僕は愛に殉じたよ・・・・」
ユリカ「ジュン君、何を食べてお腹を壊したの!?」
ジュン「・・・・・・・・・・ルルル〜」
アキト「お前も学習しろよ・・・」

全然自分のせいと思っていないユリカに報われないジュンであった。
仕方がないのでアキトはジュンを医務室に連れて行き、ユリカも付き添うのであった(笑)



スバル・リョーコとメグミ・レイナードの場合


さてさて、第一の犠牲者を出しただけで事件は終わるかに思えた。
しかし、運命はそれほど甘くなかった(苦笑)

リョーコ「マンゴープリンを作れたらアキトの妻になれるって本当なのかよ?」
メグミ「きっとそうよ!
 だって艦長があんなに張り切ってたんですもの!」

いや・・・伝言ゲームだってそこまで変な伝わり方はしない。
どこでそんな噂を聞きつけてきたのか・・・

リョーコ「っていうか、何でオレまで巻き込むんだよ〜!」
メグミ「まぁまぁ良いじゃないですか♪
 アキさんもデザート作りの上手い女の子は大好きだと思いますよ?」
リョーコ「・・・・・・・・・・・・・・・ポッ♪」

あ・・・二人とも変な妄想に浸って頬が緩んだようだ。

リョーコ「し、仕方がねぇなぁ(テレ)」
メグミ「そうね♪」

そして彼女たちが取り出したのは・・・

リョーコ「お、おい、メグミ、
 プリン作るのに蒟蒻芋はないんじゃないのか?」
メグミ「そういうリョーコさんこそ、
 プリン作るんだから、片栗粉はないんじゃないんですか?」
リョーコ「え?プリンって片栗粉で固めて作るんじゃないのか?」
メグミ「作らないですよ〜リョーコさんってやっぱり食べるのが専門なんですね(笑)」
リョーコ「(ムカッ!)そういうお前だって変わらないじゃないか。
 まぁダイエットが必要な奴にはピッタリの食材だし」
メグミ「(ムカッ!)艦長じゃあるまいし、私はダイエットなんて必要ないです!
 リョーコさんは良いですよねぇ〜〜
 脂肪の代わりに筋肉しか付かないんですから(失笑)」
リョーコ「・・・・・・・・・・・・・・・(怒)」
メグミ「・・・・・・・・・・・・・・(怒)」

既に当初の目的から外れて睨み合いを続ける両者

と、そこにやってきたのは厨房の主、ホウメイであった。

ホウメイ「あんたた達!」
メグミ&リョーコ「ギク!」
ホウメイ「そこで何をやってるんだい?」
メグミ&リョーコ「デザート作りを(汗)」
ホウメイ「・・・デザート?
 それがかい?」

ホウメイはテーブルに用意された食材を見て首を傾げた。
二人はようやく自分たちが誤っていることに気が付いたようだ。
さすが常識人、説得力がある(笑)

数分後・・・

ホウメイ「というわけだ。簡単だろ?」
メグミ&リョーコ「はい♪」

あまりの簡単さに驚く二人
まぁそりゃそうだろう。市販のプッチンプリンの素を渡されたのだから。
牛乳と混ぜて冷蔵庫で冷やせばいいのである。
いくら手作り派にして妥協しない料理人とはいえ、彼らに厨房を荒らされるぐらいならインスタントで遊んでもらっていた方が助かる。

ホウメイ「んじゃ、厨房を汚すんじゃないよ」
メグミ&リョーコ「は〜い♪」
そう言って去っていくホウメイ

後はプリンが冷えるまで待つだけなのだが・・・

ヒカル「やっほ〜おひさ〜」
イズミ「ま」
訳の分からないギャグをかましながら残りの三人娘がやってきた。

リョーコ「ヒカルにイズミ」
メグミ「どうしたんですか?」
ヒカル「いやぁ、デザート作ってるって聞いてきたから」
イズミ「和尚が碁盤・・・ご相伴・・・なんちって」
リョーコ「ちぇ、目聡い奴らだなぁ?まぁいいけど」

どうも隠れていたらしいが、ホウメイが指導したというのと、インスタントで失敗しようがないという理由で出てきたらしい(笑)

で、出てきたデザートは至って平凡なプッチンプリンであった。
予定通り、胸を撫で下ろすヒカル達。
だが、その考えは甘かった!

リョーコ「最後の仕上げだぜ!!!」
メグミ「やっぱりこれだけじゃ芸がないですよね♪」
ヒカル&イズミ「え!?」

メグミ達はやおらプリンにデコレーションを付け始めた。
いわゆるプリンアラモードってやつである。

リョーコ「ここは生クリームだろう♪」
ヒカル「いや、それは泡立てた卵白・・・って何でそんなものを用意してるよ!」
メグミ「苺とバナナですよ♪」
イズミ「それ・・・唐辛子にタクアン・・・」
リョーコ「ブラッドベリーなんていいんじゃないか?」
ヒカル「だからそれはキャビアだって〜〜」
メグミ「メロンも♪」
イズミ「それは熟していない西瓜・・・」
リョーコ「細かいこたぁ気にするな♪」
ヒカル「するわよ!!!」

でも出来上がった盛りつけはどう考えても美味しそうには見えなかった。

リョーコ「さぁ食え♪」
ヒカル「・・・・・・・・・・・」
メグミ「さぁどうぞ♪」
イズミ「・・・・・・・・・・・」
『美味しくできたかな、ドキドキ♪』ってちょっぴり不安を抱えた笑顔と
『まさかお呼ばれしておいて食べないっていうんじゃないんでしょうね!』っていう視線を向けられるとスプーンを手にとってプリンアラモードに手を着けざるを得ない二人・・・

で、結果はというと

ヒカル「パトラッシュ、僕はもうお腹一杯だよ・・・」
イズミ「機動警察パトラッシュ・・・パタ!」
リョーコ「おいヒカル、イズミ、大丈夫か!?」

第二、第三の犠牲者発生(笑)

メグミ「とりあえず医務室に運びましょう・・・」
リョーコ「でも二人とも泡を吹いてるぜ(オロオロ)」
メグミ「今はそんなことより二人の体の心配する方が先です!」
リョーコ「・・・そうだな」

とりあえず原因追究を避け、保身に走る二人であった(苦笑)



エリナ・キンジョウ・ウォンの場合


さてさて、出来損ないのプリンが厨房に次々出来ていく中、どんな噂を聞きつけたのか、この人がやってきた。

エリナ「ふん!デザート対決で艦長の座を争うなんていい度胸じゃないの!」

おい、誰から聞いたんだ?そんな話(苦笑)

エリナ「私にかかればマンゴープリンの一つや二つ!」

取り出したるは高級食材の山
高級牛乳に、高級なマンゴー、高級な砂糖に高級な食器
そして鉄人坂井シェフのデザートレシピ本
材料だけは至れり尽くせりだった。

エリナ「何々、まずは・・・」
???「グラニュー糖25g」
エリナ「グラム?・・・まぁいいわ・・・このぐらいか・・・」
???「ダメダメ!ちゃんと天秤を使って計って!」
エリナ「え?」

振り返ると誰もおらず、ただ天秤が置かれていた。
仕方がないので声の通りに天秤できっちり25gの砂糖を取り分けるエリナ

エリナ「まぁいいわ。次は・・・」
???「フラスコに牛乳を200cc」
エリナ「フラスコに・・・って何で料理にフラスコなのよ!!!」

今度こそ声の方に振り返った。
そこには・・・

エリナ「ゲ!説明おば・・・」
イネス「お姉さんよ!!!」
エリナ「う・・・」

ドアップのイネス・フレサンジュ登場(笑)

エリナ「・・・・・・・・」
イネス「どうしてここにいるのか聞かないの?」
エリナ「聞くと、『説明しましょう♪』って小一時間ぐらい説明しだすから止めておくわ」
イネス「・・・鋭いわね」

ということで、彼女がなぜこの場にいるかは永遠に闇のままだ(苦笑)

エリナ「しかし何だって私のデザート作りに茶々を入れるのよ」
イネス「茶々を入れているのではないわ。あなたを導いてあげようと言ってるの」
エリナ「余計なお世話よ。第一あんた、料理が上手いの?」
イネス「失礼ね。服部料理学校にこの人ありって言われているのよ?」
エリナ「あんた、火星出身じゃ・・・」
イネス「そうまでいうなら食べてみなさいよ」

ドン!
ポッケから取り出したデザートをエリナの前に突きつける。
しかしエリナの表情は間抜けなままだった。

エリナ「・・・これなに?」
イネス「マンゴープリンよ」
エリナ「・・・良かった。サルモネラ菌じゃないのね」
イネス「失礼ねぇ。いくら私でもそんなもの持ち歩かないわよ」
エリナ「だから何で『シャーレ』にマンゴープリンを入れてるのよ!!!」

そう、細菌を培養するときなんかに使用するシャーレにプリンを入れて冷やしたようなのだ(爆)

イネス「細かいことは気にしないの」
エリナ「するわよ!」
イネス「じゃぁ、なぜかを説明するわよ?」
エリナ「・・・・・・・・・・・・・・」
イネス「いいから騙されたと思って食べなさい」
エリナ「騙されるから嫌よ!」
イネス「艦長に勝ちたくないの?」
エリナ「今の実力で艦長に負けたら女を止めるわよ!!!」
イネス「アマガワ・アキに勝ちたくないの?」
エリナ「う・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・ポッ♪」

いま、エリナの頭でどういう光景が思い浮かんでいるかご想像にお任せします

エリナ「わかったわ。食べるわよ。
 でも美味しくなかったらその時は・・・」
イネス「わかってるわ」

エリナはシャーレに入ったマンゴープリンを掬って食べる。

イネス「どう?」
エリナ「く、悔しいけど美味しい・・・」
イネス「でしょ?」

エリナが誉めるのだ。マジで美味しかったらしい(苦笑)

エリナ「でもなんであんたがこんなに料理が上手いのよ」
イネス「料理を極めて数値化すれば自ずとどんな味も再現可能よ。
 その為の天秤であり、フラスコであり、シャーレよ」
エリナ「せ、説得力があるような、ないような・・・」

悔しいながらも、美味しいマンゴープリンを食べるエリナ

エリナ「でも、本当に美味しいわね。調理方法を習おうかしら・・・」
イネス「ああ、でも待って。機材の準備が出来てないから」
エリナ「機材の準備?」
イネス「そうよ。いまシャーレは実験で全部塞がってるから」
エリナ「実験って?」
イネス「サルモネラ菌の培養♪」
エリナ「さ・・・・・・・」

エリナ卒倒(笑)

イネス「ちょっと、ちゃんと滅菌作業はしてるから・・・
 って聞いてないわね、これは」

確かにさっきまでサルモネラ菌を培養していたシャーレでプリンを食べさせられたら気絶するだろう(笑)



ゴート・ホーリーの場合


さてさて、イネスがエリナを医務室に運んでいた頃、この男がひょっこり食堂に現れた。

ゴート「・・・誰もいないのか」

そう、巨躯の持ち主ゴート・ホーリーである。

ゴート「デザートでもと思ったのだが・・・
 仕方がない、自分で作るか」

ゴートは厨房の隅にある色とりどりの怪しげなマンゴープリンの群を一瞥すると、エリナが残していったプリンの材料に手をかけ始めた。
自分でプリンを作るつもりである。

???「でもゴートさんって料理できたんですか?」
ゴート「実は甘いものが好きだ。だがこの顔で喫茶店に入ってパフェを頼むと必ず警察を呼ばれるんだ・・・」
???「大変ですね」
ゴート「そうなんだ・・・って?」

ゴートは自分の愚痴に相打ちを打つ人物がいるのに初めて気が付いた。
振り向くとそこにはルリがいた。

ゴート「る、ルリ君!?」
ルリ「どうも」
ゴート「いつから居たんだ?」
ルリ「さっきからいました。
 もう少し詳細に言うならゴートさんがその熊さんのアップリケの付いたMyエプロンを付けた辺りからです」
ゴート「い、いや、これは・・・」
ルリ「ミナトさんの趣味ですか?可愛いですね(クス)」
ゴート「えっと・・・なんだ・・・」

さすがにいつもの背広に可愛いエプロンはゴート的に恥ずかしかったのか真っ赤になっていた。ちょっぴりミナトの気持ちが分かるルリであった。

ゴート「えっと・・・ルリ君、なんだ・・・」
ルリ「心配しないで下さい。私、これでも口が堅い方なんです」
ゴート「そ、それは助かる・・・」
ルリ「ゴートさんってお菓子作りの腕って良いんですか?」
ゴート「アマガワやテンカワ程じゃない。だが自分で食べて嫌気はささない程度には上手くなった」
ルリ「じゃ、それで手を打ちましょう。口止め料」
ゴート「・・・むぅ」

契約成立である。

しばし後・・・

マンゴープリンを作るゴートの手つきは意外に良かった。そんなゴートを眺めながらルリは尋ねた。

ルリ「料理はいつも自分でされるんですか?」
ゴート「それなりにな。軍隊では新兵が料理当番をやらされる」
ルリ「男の料理って奴ですか?」
ゴート「食えればいいからな」
ルリ「・・・料理は出来た方が良いんですか?」
ゴート「ん?」
ルリ「男性でも料理が出来るんですよねぇ・・・」
ゴート「なんだ、女性は料理が出来なきゃいけないって?」
ルリ「そんなんじゃないんですけど・・・」

ルリは自分の理想の将来設計を語った。

ルリ「朝起きたら味噌汁の匂いと包丁のトントントンっていう音がして
 旦那さんの寝ぼけ眼に『もうすぐ朝御飯ですよ、顔を洗ってきて下さい♪』って割烹着姿で言うのが夢なんです」
ゴート「夢なのか・・・」
ルリ「ええ・・・・・・・・・・・
 夢なんです・・・・
 夢なのに・・・・・
 ううぃ(泣)」
ゴート「待て、なぜ泣く!?」

しばし無言の後、泣き出したルリに戸惑うゴート
彼女の現状認識ではかなり厳しいのだろう(苦笑)

宥め賺すこと数分後・・・
出来たマンゴープリンを与えることで何とか落ち着いた(笑)

ゴート「どうだ?」
ルリ「・・・いまいち」
ゴート「だろうな(苦笑)」
ルリ「す、済みません・・・」
ゴート「かまわん。アマガワの味を食べ慣れていれば仕方がない。
 オレだって滅多には作らんし」
ルリ「済みません」

ゴートは話題を変えてみることにした。

ゴート「意外にルリ君も古風なんだな」
ルリ「・・・今時流行りませんか?」
ゴート「いや、俺は良いと思うぞ?
 オレのお袋もそんな感じだったからな」
ルリ「ゴートさんのお母さんも・・・ですか?」
ゴート「ああ」
ルリ「えっと・・・和服の上に割烹着を着て?」
ゴート「そうだ」
ルリ「・・・頭に三角巾かなんか巻いてます?」
ゴート「してたな」
ルリ「・・・ゴートさんってお母さん似ですか?」
ゴート「ふむ・・・そういえば良くそう言われる。
 生き写しとか言われるが・・・どうした?」

ゴートの回答を全て聞き終わる前にルリはうつむいて肩をふるわせていた。

台所から聞こえる包丁の音
そして『もう朝御飯の準備は済んでますよ』という優しい声
しかし振り向くとゴートそっくりの顔が和服に割烹着に三角巾で・・・




CG:ゴート母・・・・

『朝ご飯ですよ、早く起きて下さい、あなた♪』
  

ゴート「どうした、おい!何があったんだ!?」
ルリ「わ、私の夢が・・・・・・・・・・・・」

さすがの鉄面皮なルリもこの時ばかりは精神汚染のために悶絶していたとか、していなかったとか(笑)



そして事件は起きた


さてさて、ルリもゴートに医務室に運ばれ、無人になった食堂にアキが帰ってきた。

アキ「あれ?アキト君はいないのかぁ〜〜」
てっきり課題のマンゴープリンを作っているものとばかり思っていたアキはヤレヤレと厨房の中に入る。

しかし、そこには・・・

アキ「なんだアキト君、作ってるじゃない♪」

そう、厨房にはマンゴープリンが置いてあった。
しかも複数個
微妙に色合いが違う。
中には・・・

アキ「なにゆえシャーレにマンゴープリンが入ってるの?」
同じ器の中にシャーレが混じっているのに気づくアキ(笑)

そう、今まで読んでこられた読者さんにはわかると思いますが、今までこの厨房でマンゴープリンを作ったのが残っているのである。

アキ「でもアキト君もちゃんと色々作って練習したんだ♪」

しかし、アキはこれを全てアキトがやったものと思ったのだ。

アキ「さってと、早速味見してみようかな・・・」
その内のひとつをとって食べようとするアキだが・・・

アキト「ったく、ユリカってどうやったらあんなプリンを作れるんだよぉ〜」
ユリカ「え〜〜ユリカのプリンは美味しいわよ〜〜」
アキト「その自信はどこから来るんだ?」
とか言いながら入ってきたのはアキトとユリカだった。

しかし、アキトは厨房の中で行われている出来事を見て仰天した。

アキ「ああ、アキト君、さっそく味見させて見て頂いてるわよ」
アキト「あ、アキさん・・・・それ食べたの?」
アキ「ん?食べたけど・・・どうかした?」

アキトはワナワナと青ざめた声でアキに聞く。
その様子を見ると逆にアキの方が何か悪いことでもしたような錯覚に陥ってしまう。

アキ「た、食べちゃ・・・いけなかった?」
アキト「そうじゃないんですけど・・・変な味しませんでした?」
アキ「いや、でもアキト君らしくなく味はイマイチだったけど・・・
 それがどうかしたの?」

アキのその答えにアキトは青ざめる。
そしてブロックサインを送る

『それ俺のじゃないッス』
『俺のじゃないって?』
『・・・・チラ』
『チラってなによ?』
『だから、チラですよ』
『だから横向いて何よ・・・』
『だから・・・』
『・・・・・・・・・・ユリカちゃん?』
『コク!』
『・・・』

二人ともユリカの顔をまじまじと眺める。
・・・どうやら意志が通じたようだ(笑)

アキ「どうしよう〜食べちゃった〜食べちゃった〜」
アキト「早く医務室へ!胃の洗浄を!!!」
アキ「わぁぁぁぁぁ!!!!どうしよう〜〜どうしよう〜〜」
アキト「気を確かに!俺に掴まって!!!」

ドタドタドタ!!!

二人は大慌てで出て行った。

ユリカ「プンプン!私のマンゴープリンってそんなに酷くないもん!」
ユリカは少し怒ってアキの食べかけたプリンに口を付けた。

ユリカ「・・・関節キッス♪
 ってそうじゃなくって、最高♪ってほどじゃないけど
 悪くないじゃないの〜〜」

そりゃそうだ。
ユリカやアキが食べたマンゴープリンはユリカ自身が作ったものではない。
さっきゴートが作ったマンゴープリンだから
しかし、ロシアンルーレットとはいえ、よく一番まともなマンゴープリンを引いたなぁ、アキさん(笑)

と、そこに・・・

ムネタケ「ちょっとあんた」
ユリカ「あやや、提督じゃないですか」

ムネタケ提督登場
彼は何も知らずに部屋に入ってきて無謀にもこんな台詞を宣われた。

ムネタケ「あら、美味しそうなデザートを食べてるのね。
 あたしにもちょうだいよ」
ユリカ「良いですよ、はい♪」

ユリカは無造作に近くにあったマンゴープリンをとってムネタケに渡した。
さて、そのプリンは誰が作ったのか・・・

少なくとも安全パイであるゴートのプリンでないことだけは確かだった・・・(笑)



なぜか推理ドラマに


アキ「もう、アキトくんったら大げさなんだから」
アキト「いや、つい・・・」
イネス「しかしトドメにあなた達がやっていたときは医務室大繁盛♪とか思っちゃったけど(笑)」

そう言いながらアキ達は食堂に戻ってきた時、彼らはとんでもないものを見てしまった。

アキ「む、ムネタケ提督!」
アキト「た、倒れてる!医務室へ・・・」
イネス「・・・手遅れね」

倒れていたムネタケに近づいたアキ達だが、脈を診たイネスは沈痛な面もちで首を振った。

イネス「毒殺みたいね。口から泡を吐いている・・・」

それはナデシコ内で殺人事件が起こったことを意味していた。

数分後・・・

関係者は集められた。
その場に並ばされたのは・・・

ユリカ「だから私は何もしてないって」
メグミ「私も無実です〜」
リョーコ「オレも無実だ!」
エリナ「私はまだ作ってないでしょ!」
イネス「あらあら、なぜ私もここにいるのかしら?」
ゴート「おい、これは何かの間違いだ」
ルリ「・・・何で私までここにいるんですか?」
ウリバタケ「で、君達が容疑者なわけだが・・・」
リョーコ「っていうか、何でお前が俺達を尋問してるんだよ!」
ウリバタケ「なぜって?それはオレ様がシャーロック・ホームズの生まれ変わりだからさ♪」
メグミ「ホームズって、ただコスしてるだけじゃないですか!!!」

容疑者扱いされ、しかもシャーロック・ホームズのコスプレをしたウリバタケに詰問されたとあれば心中穏やかではない。

ウリバタケ「提督は食堂で倒れていた。毒殺されたとすれば現場にあったマンゴープリンを食べたと考えるのは妥当的だ。
 で、本日マンゴープリンを作ったメンバーが一番怪しい。
 どうだ、オレ様の推理は」
イネス「それ、私がしたんだけど・・・」

ホームズばりに決めたウリバタケであるが、みんなからは不評のようだ。

エリ「どうみてもセイヤさんはホームズよりも金田一耕作ですよねぇ」
ジュンコ「そうそう、頭からフケ飛ばしながら〜」
ミカコ「お風呂とか入ってなさそうだし」
ハルミ「英国紳士ってガラじゃないですよね」
ウリバタケ「お前ら!オレのイメージを勝手に作るな!」
サユリ「どちらかというとアキさんの方がホームズに似合いそうですね」

!!!!

どうやら一同彼女がホームズのコスプレをした光景を思い浮かべたようだ。

にへら〜〜

似合っているみたいだ。

エリ「剥いちゃえ♪」
一同「お〜〜♪」
ウリバタケ「や、止めろ!!!」

ひん剥かれたウリバタケ(笑)

アキ「え〜私が着るの?」
ミカコ「お姉さまの方が似合いますから♪」
アキ「セイヤさんが着てたやつでしょ?それを着るなんて・・・
 第一探偵役なんて・・・」
サユリ「アキさんが裁くなら誰も文句は言いませんから」

とかいいながら渋るアキであるが、やっぱりホームズのコスプレはそれはそれであこがれらしい。

数分後・・・

アキ「ということで実況検分をするよ、ワトソン君」
ラピス「ラジャ!」

アキとラピスは何となくその気になるのであった(笑)

ところが!!!

アカツキ「え〜〜残念ですが、もう犯人の目星はついてしまったんですよ」
アキ「アカツキ君!!!
 ・・・なに?その口調は」

いきなり現れたアカツキは背広姿で現れ、鼻にかかった妙な口調で話し始めていた。

アカツキ「古畑ニャン三郎だよ」
アキ「・・・古畑?」
アカツキ「さて、用意周到な犯人ですが、犯人は重大なミスを犯しました。
 ヒントはマンゴープリンです。
 私はそれを聞いてピーンときました。
 あとはどうやって追いつめるかです。
 答えですか?
 それはCM明けにお知らせしましょう
 古畑ニャン三郎でした」
アキ「だから古畑ニャン三郎ってなに?」
アキト「コロンボ風の推理ドラマですよ。
 でもあれって視聴者にはあらかじめ犯人だけは分かってるんですけど・・・」

さて、世紀の推理対決に発展するのか!?
次回を刮目して待て!



犯人を捜せ!


アカツキ「あなたが犯人ですね?ミスマル・ユリカ」
ユリカ「え〜〜!私じゃないよ!」

おい、もういきなり犯人当てちゃったのかよ(笑)

アカツキ「ですが、この食堂に最後までいたのはあなたです。
 それはここにいるアキさんとテンカワ君が証言しています」
アキ「まぁ胃の洗浄に向かったとき、艦長だけは来なかったし・・・」
アキト「ユリカ・・・お前・・・」
ユリカ「アキト、信じて!」
アキト「信じてって言われても・・・」
ユリカ「最後が私ってだけで何で犯人なんですか!」
アカツキ「じゃぁ聞こう。
 犯人と思われる面々はあの後提督が殺される報を聞くまで全員医務室にいた。
 違うかい?」
ユリカ「う・・・」
アカツキ「仮に彼らが犯人だとしてもどうすれば互いの視線を免れて提督に毒入りマンゴープリンを食べさせられるんだね?」
ユリカ「そ、それは・・・」

追いつめられるユリカ。
その焦った顔は何かを知っている顔だ。
ここぞとばかりに古畑ニャン三郎風のアカツキは畳みかけた。

ユリカ「たまたま提督は毒入りのプリンを食べちゃったんだよ。
 運がなかったんだよ」
アカツキ「あの用心深い提督が放置されているプリンを警戒もせず食べるでしょうか?
 その時誰かが安全であると示したからこそ食べたんじゃないんでしょうか?」
ユリカ「そ、それは・・・」

アカツキは『そして事件は起きた』の章の内容を見てきたようにそう言う。
それに対してユリカは徐々に反論できなくなってきた。

アカツキ「そんなに提督が憎かったんですか?」
ユリカ「た、確かにプリンを勧めたのは私だけど・・・
 殺すつもりなんかなかったのよ〜〜
 たまたま勧めたマンゴープリンに毒が入っていただけなのよ〜〜」

ユリカはよよよ〜〜と泣き崩れる。
誰もが重苦しい雰囲気に包まれる。

『やっぱりなぁ〜〜』
そんな空気が辺りを支配した。

アカツキ「嘘はいけません、嘘は・・・」
ユリカ「嘘じゃないもん〜〜!」
アカツキ「あなたは普段から提督に自分の指揮を邪魔されていましたね。
 殺意を持ったとしても不思議じゃありません」
ユリカ「ユリカ、そんなことで殺意を持ったりしないもん!」

完全に容疑の目をかけられて、泣きそうになるユリカ。
するとユリカはみんなに視線を向ける。

ユリカ「信じてくれるよね?」
メグミ「・・・」
ユリカ「私そんなことしないよね?」
ヒカル「・・・」
ユリカ「アキトは信じてくれるよね?」
アキト「・・・」

誰からも信じて貰えず、大粒の涙を溜めたユリカはアキに抱きついた。

ユリカ「あ、アキさん〜〜」
アキ「艦長・・・」
ユリカ「アキさんは信じてくれますよね?
 アキさんは信じてくれますよね?」
アキ「本当に艦長は提督を殺ってないのね?」
ユリカ「この目を見て下さい!嘘を付いているように見えますか!?」

純真そのものの瞳はまるで嘘を付いているようには思えなかった。

アキ「わかったわ、あなたを信じるわ!」
ユリカ「ありがとう、アキさん♪」
アキト「あの・・・思いっきり騙されてますよ、アキさん・・・」
アキ「わかったわ、私が真犯人を捕まえてみせる。
 じっちゃんの名にかけて!」
ユリカ「お願いします!」
アキト「だからユリカが犯人ですって・・・
 ってあなた、ホームズ役でしょう!キャラ違いますよ!」

アキとユリカは堅く手を握りあった。
しかし・・・
誰がどう考えてもユリカが何の自覚もなしに自分のマンゴープリンをムネタケに手渡したんだろうというのが一同の一致した見解なのだが・・・

アキ「ワトソン君、調べて欲しいことがあるの」
ラピス「ラジャー」
オモイカネを操って瞬く間に調べ上げるラピス
それを見たアキは・・・

アキ「なるほど・・・
 謎は全て解けた!!」
アキト「だからキャラ違うって」

ホームズじゃない探偵の決めゼリフを言ってポーズをとるアキであった(笑)



そして解決編


アキはいきなりホームズ風に真相を話し始めた。

アキ「皆さん、艦長を犯人と決めつけてしまって良いのでしょうか?」
アカツキ「っていうか、状況証拠から行けばそうでしょう」
アキ「でもアカツキ君の言うように艦長が用意周到な犯人なら自分が疑われるような状態でプリンを渡すでしょうか?」
アキト「それはそうだけど・・・」
アカツキ「でも故意だろうが、作為だろうが、艦長が犯人であることには変わりないだろう?」

アカツキは悔し紛れに言う。

ルリ「質問」
アキ「なに?ルリちゃん」
ルリ「っていうか艦長がそこまで計算できていたとは思いませんが?」

でも、ルリは冷静に突っ込んだ。
誰もがルリの意見に頷く。
何も考えずに自分の作った毒入りプリンを渡しただけじゃないのか?
素朴な、ごく当たり前の考え方だ。

しかし、アキは首を振る。

アキ「ここにあるプリンはどれも人を殺すほどの毒性はないわ。
 もし毒性があるならジュン君もヒカルちゃんもエリナさんもルリちゃんも死んでるはずよ」
ルリ「そういえば・・・」
ジュン「いや、僕はまだ・・・」

ジュンはまだ痺れているけど、ユリカの手前平気なフリをする(笑)

アカツキ「しかし後から毒を盛った可能性は・・・」
アキ「だからわざわざ犯人と思われる行動はしないって」
アキト「なら犯人は他のプリンを作った人達ですか?」

一同の視線がメグミやリョーコやイネスやゴートに向く。
彼女たちはフルフルと首を振って己の犯行でないことを示した。

アカツキ「なら犯人は誰だと言うんだい?」
アキ「いつも推理小説では犯人は意外な人物よ。
 そして理由も驚くべきものよ・・・」
アカツキ「いや、意外性を求めればいい訳じゃ・・・」
アキト「で、犯人は誰なんですか?」
アキ「・・・これまでに登場していない人物が一人いるはずよ」
一同「え?」

主要なクルーが食堂に集まっている。
集まっているはずだが・・・

アキ「誰か忘れてない?」
アキト「えっと・・・」
ルリ「あ・・・」
ユリカ「あ!」
アキ「気づいたようね。
 そう、犯人は彼女よ。ワトソン君」
ラピス「うん」

ラピスはそう言うと食堂の入り口に行って陰に隠れていた人物を引っぱり出してきた。

そう、その人物とは意外な人物であった。

アキト「あ、あなたが提督を?」
ルリ「ウソです!ウソだと言って下さい!」
エリナ「まさかあなたが・・・」

そう、扉の影に隠れていたのは今まで登場していなかった人物、ハルカ・ミナトであった。

ミナト「ごめんなさい・・・」
アキ「やっぱり、マンゴープリン騒ぎで食いしん坊のミナトさんが出てこないのは不自然だと思っていたわ・・・」
アキト「でもどうしてミナトさんが犯人だと?」

確かにミナトさんが出ていなかったのは筆者が忘れただけとはとても思えなかった。

ルリ「正直、筆者が忘れていただけでしょ?」

いや、そんなことはないんですが(汗)

アキ「あなたは空白の期間、食堂にやってきてプリンを・・・」
ミナト「その通りよ・・・」
アカツキ「しかし、仮に毒のプリンをミナトさんが細工したところで艦長がどれを提督に渡すかわからないじゃないか。無差別殺人だとでも言うのか?」
アキ「違うわ。みんなプリンに目が行き過ぎだったのよ。
 正確な死因は金的を蹴り上げられた際のショック死よ」
一同「え?」

ムネタケの死体をよく見る。
確かに股間を蹴られてタマタマが見事につぶれていた。

アキ「空白の期間・・・それは艦長が提督に自分のプリンを渡す前じゃなく後だった。
 艦長は提督がプリンを食べてひっくり返ったのを見て動転し、逃げ出してしまった。
 でもその時点で提督は生きていた。
 息を吹き返した提督が最初にしたこと。
 それは・・・
 ワトソン君」
ラピス「はい、これ」
アキ「アキト君にはこれが何かわかるわよね?」
アキト「あ・・・
 アキさんの月一スペシャル定食に付いていたデザートのマンゴープリン・・・」
アキ「そう、後ろにマジックでハルカ・ミナトって名前が書いてある。
 後で楽しみに食べるつもりで厨房の冷蔵庫に保存して置いたのね。
 それを息を吹き返した提督が口直しにって食べてしまった・・・
 そうよね?ミナトさん」
ミナト「ええ・・・・
 楽しみに、楽しみに取って置いたプリンを食べようと厨房に着てみたら、提督が私のプリンを食べていたのを見て、ついカッとなって・・・」

男性クルーは思わず股間を押さえた(苦笑)

ミナト「人にとってはたかがプリンと思うかもしれないけど、食事時に断腸の思いで残しておきオヤツ時に食べようと楽しみにしていたの。
 この気持ちを踏みにじられた瞬間、私は我慢できなかったの・・・」

まるで金曜推理サスペンスの犯人自供のシーンで流れる『マドンナ達のララバイ』の様な曲が流れ、一同は涙ぐんだ。

ルリ「アキさん、ミナトさんはこれからどうなるんですか?」
アキ「・・・残念だけど罪は償わなければ・・・」
ルリ「でも、悪いのはムネタケ提督ですよ!何でミナトさんが・・・」
ミナト「いいのよ、ルリちゃん、その気持ちだけで・・・」

泣き崩れるミナトとルリ

そこでアキがこう提案した。

アキ「実はこのお話って17話付近のお話なのよねぇ」
アキト「どういうことです?」
アキ「だからもうすぐムネタケ提督は死んじゃうらしいの。
 だからみんなが口裏を合わせれば・・・」
一同「・・・・」
アキ「もちろん、ミナトさんを許せればの話だけどね」
ルリ「ムネタケ提督が勝手に発進したって航海日誌に付けます」
ウリバタケ「仕方がない。エクスバリスは欠陥機だし、爆発させるか」
ヒカル「そうだよねぇ、これでうるさい人がいなくなる訳だし」
イズミ「マンゴー〜う!」
エリナ「ちょっと、あなた達、そんなことで良いの!?」
アカツキ「色々詰め腹を切らせるにはちょうど良いんじゃない?」
ゴート「・・・だな」
ユリカ「許可します」
アキト「じゃ、提督をエクスバリスに乗せるか」
ミナト「みんな!」
ラピス「一件落着」

その後、宇宙空間に飛び立ったエクスバリスが爆発して真相は闇に葬られたそうな(苦笑)

ムネタケ「待ちなさい!私はまだ死んでないわよ!!!!」

ちゃんちゃん♪



ポストスクリプト


ってことで外伝の17.5話をお送りしました。
本作品は人気投票応援イベントの小説投稿掲示板に連載したモノを再編集したモノです。
いや、再編集っていっても誤字を直して少し加筆したり、その程度ですが(苦笑)

黒プリ22話後編をほっぽらかして一日1〜2章程度のペースで書き上げていったので思いつき&ノリで書いていたりします。従って細かいところで矛盾などございますが、大目に見て下さい(笑)

しかし、何よりも破壊的だったのは結末のオチではなく、中程のゴート母が登場するところです(笑)
やりたかさんにゴート母を書いていただきました
『そうそう、ルリの頭ではそういう光景を思い浮かべてるんだよ♪』ってな感じで筆者は小躍りして喜びました。
もちろん、人気投票内では大爆笑で汚染は拡大するする・・・って事で、大変楽しかったです。

もしやりたかさんから転載許可をいただければ文中に挿入したいぐらいです(笑)

また、やりたかさんには他にも応援小説を書いていただいて、それがまた全部おもしろかったりします♪
ぜひコミュニケーション広場から人気投票イベントに行っていただいてみてもらいたいです〜♪

ということでおもしろかったなら感想をお願いします。

では!

Special Thanks!!
・やりたか 様
・yuu 様
・神薙真紅郎 様
・kakikaki 様