ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
Appendix:クロニクル



はじめに


このページは今更ですが、プリンセス オブ ダークネスに関する様々な情報を載せていきたいと思います。
いつの間にかこっそりと増えちゃうかもしれませんが、ご了承下さい。



アキスペシャルに関して


アキスペシャルはゼロG戦フレーム・アカツキ・ナガレ専用機の試作機がベースになっています。実働1ヶ月ちょい・・・短い活躍でした(笑)
それにしてもリョーコ達のゼロG戦フレームの配備とほぼ同時にロールアップしているのが不思議に思われるかもしれませんが、それには理由があります。

実際の車などもそうなのですがこの手の制御系を持った機器は実際に設計がFIXした後、そこからチューニングが始まります。
例えばIFSで思い浮かべたイメージと重力波推進と整合性を取る場合、イメージ通りに移動をするためのもっとも効率の良い方法でチューニングされるようにします。
これは過去の蓄積があれば比較的スムーズに行きますが、なければ試行錯誤が始まります。
大枠は変わりません。このぐらいのモーターを使い、出力系はこれだけのW数、そう言った諸々の基本的なスペックは決まっているのですが、その後それらを微調整する作業がどうしても発生します。
でも微調整はあくまでも微調整。
そこから設計図が大幅に書き変わることはありません。
部品を変更すると調整も一からやり直しになるので最終段階になって機械的に変更されるところは少なく、大体はソフトでのパラメータ調整が主となります。

だからパラメータの調整がほぼ終わった時点で完成となり、ナデシコに引き渡されたのが4話の時点での話ですね。

でも設計自体はその前からとっくに終わっていた。
当然、ネルガルは設計が終わった時点で基本フォーマットであるゼロG戦フレームから二つの方向を目指した。
より量産に向く機体、そしてエースパイロットが乗るスペシャル機・・・
機体としては当然のバリエーションである。

量産機の設計は置いておくとして、その後引き続き行われたのはスペシャル機の設計である。これは会長用であるアカツキ専用機の開発がスタートするわけである。
別段アカツキの為だけでもなかったのだが、使う顧客がいなければ開発できないのも事実(笑)

で、結局はゼロG戦フレームが設計終了の時点で新たにアカツキ専用機の開発が始まり、4話の時点で試作機と言える物がロールアップしていたのである。現実にはこの設計を元に数ヶ月の間、パラメータ調整が行われて8話でのアカツキ専用機の登場と相成るわけである。

で、そもそもこの試作機がアキスペシャルとして生まれ変わるかであるが、1話の時点でアキからエリナへの要望にハイスペックな機体の要求があった。
そのリクエストはそのままアカツキ専用機を設計したサリナの元に届いた。
実際の要求スペックはかなり高いものであったが、サリナにとってそれを扱える人間がいるとも思えなかったのも事実である。
で、現状に照らし合わせて一番要求に近いものを探したところ、既に試作機が出来上がっていたアカツキ専用機ということになったのである。

でも、その時点の試作機は非常にバランスの悪いものであった。

例えば電車を例に取ろう。
電車でGOなどをやるとよくわかると思うのだが、停止線できっちり止まろうとするとかなり手前から減速しなければいけない。
急ブレーキを乗客に感じさせない・・・というのもあるのだが、直前になって急ブレーキをして停止線ぴったりに止まるのはかなりタイミングを計らなければいけないからだ。

だからエステはIFSから停止のイメージが来た場合、予備減速が発生するのだ。ある程度減速しておいて速度が緩やかになった時点でスムーズに距離計算をして停止する。
これはブレーキの性能にも関わってくるし、それを制御する制御系にも影響を及ぼす。

つまりこの時点での試作機はある程度強力な推進装置とそれを押さえ込めるブレーキングシステムを備えていたけど、じゃ、誰が操縦しても苦もなく止まれるほどのブレーキ制御のパラメータが組まれていたのか?といえばそうじゃなかったわけである。

予備減速をどこまで切りつめられるか?
予備減速を早めに行えば後の制御は楽になるが、それはせっかく強力にした推進装置が無駄になるし何よりも運動性能が落ちる。
ほとんど予備減速を無くしたとしても停止は出来るが、これはパイロットがタイミングを誤ればほとんど思った場所に止まれなくなってしまう。
このギリギリを見極めるのがパラメータ調整である。

アキの要求スペックは試作機にとってこの予備減速が限りなくゼロでないと実現不可能な物だったのだ。
当然タイミングさえ合えばぴったり止まれるけど、少しでもタイミングを外せば大幅なオーバーランをしてします。
それだけならいい。引き返そうとして逆制動をかけたら逆に行きすぎる、さらに戻そうとするが失敗して・・・
こういうことを延々と繰り返すわけである。

4話でリョーコがアキスペシャルに乗ったのは良いけど、機体に振り回されたのはこういった理由だったのだ。まぁ通常のエステと同じ感覚で操縦したリョーコも悪いのだが。

機体そのものは化け物じみた性能というわけではない。
調整の終わったアカツキ専用機はそれなりの性能に収まった。
さっき言った予備減速などはほどほどに加えられ、アカツキレベルのパイロットに扱えるようになった。

でも、ギリギリまで性能を追求し、そして乗り手を選んでしまった機体・・・それがアキスペシャルの系譜だと思います。



アキセカンドに関して


さて、設計的にアキセカンドはアカツキ専用機からブランチしたモノとなっております。その意味で性能的にはあまり変わりないように見えるのですが、やはりチューニングが辛すぎるために普通のパイロットには操縦しづらいモノになっています。
しかしアカツキ専用機との最大の相違点はレールカノン用の補機「ウイングユニット」の装着までを睨んだ機体になっているという事です。

元々は開発中の月面フレームに標準装備されるレールカノンのテスト用の機体としてプランニングされていました。ただ、その機体自身は通常のゼロG戦フレームをベースにしていたわけですが、これが色々問題があり頓挫してしまいます。
問題は二つ、一つはエクスバリスと同じく既存のエステがジェネレータの出力不足と出力系統がレールカノンに必要なエネルギー系を吸収しきれない事。
もう一つがレールカノンの細かい調整にエステのコンピュータがほぼ手一杯になってしまうことでした。

このことの解決策は二つ
まずは強力な重力波アンテナを装備し、それをエステとは個別のジェネレータシステムでレールカノンのエネルギー供給を行うこと
もう一つがエステの通常の制御系とは別のAIを実装することである。
レールカノン用の補機はその大型化が如何ともしづらく、少しでも高性能な機体に装着しなければならない・・・ということでアカツキ専用機をベースに再設計されることになりました。
試作として5機作られたアカツキ専用機(というかゼロGスペシャル)の二号機と三号機がそれに割り当てられることになります。
※ちなみに零号機がアキスペシャル、初号機アカツキ用、四号機欠番、五号機予備となっている)

これらが当初アマガワ・アキ用の機体として回される予定はありませんでした。なにぶんナデシコ自身が7ヶ月もの間行方不明になっていたという事があります。
しかしこの2機を操縦したテストパイロットがあまりにも機体を制御しきれないという事態が発生します。あまりにもレールカノンの制御が難しかったのである。

このため、二号機をアキ専用機に変更しようという動きがネルガル上層部の方から挙がりました。彼女が火星から最後に送ったアキスペシャルのデータがあまりにも良かったためです。
行方不明者のために機体を調整するということに周りは反対しましたが、それは何故か行われました。そのタイミングはとっても良すぎて、調整し終え黒色に機体を塗装し終えたと同時にナデシコは月軌道に出現、そのままコスモスにて二号機はアキの元に運ばれることになります。

その後、アキセカンドの叩き出したデータは月面フレーム用の制御アルゴリズムとして組み込まれます。また同時にその制御AIをエステのAIと統合する為のう礎となりました。
もたらされたデータは様々な副産物を生み、やがて数ヶ月後のアキサード用のレールカノンとしてフィードバックされます。

その後、アキがアキサード・・・PODに乗り換えた後もこの機体はテンカワ・アキトに使用され大戦末期まで現存することに成功します。そういう意味で非常に有用に活用され、なおかつ幸せな機体であったと言えるでしょう。



アキサードまたはPOD


アキサードはともかく謎の多い機体である。
この機体はアキセカンドをナデシコに引き渡した直後から新規に作成されていることになっている。そしてその約5ヶ月後にはもう完成していることになっている。
新しいテクノロジー満載なのに?
彼女専用に調整されているにも関わらず?

機体そのものはアカツキ専用機・・・つまりゼロGスペシャルの予備機とされていた5号機が使われている。でも、実際の所、オーバーホールされ、パーツも入れ替えが行われほとんど新設計に近い改修が行われている。
それでも圧倒的な短期間でなされたのは過去からのデータの蓄積のおかげなのか、サリナ・ウォンのセンスの良さ故なのか?

仮にフレーム自身はスペシャル機という母体があったかもしれないが、CC組成の外装はほとんど試作段階のモノを無理矢理使ったに近いレベルに違いない。
CC組成そのものの研究はボソンジャンプの研究とは別に行われていたとは思う。
けれどそれがこの時点で実用化出来たのであろうか?

もし元の歴史を知る者がいればこう叫んだであろう。

「早い!あまりにも早すぎる!」

後にこの発想はブラックサレナ(の内部のアキトSP)やアルストロメリアに結びついてくるのだが、フレーム全てをCC組成で組み上げるという難易度の違いはあっても、その3年前にこれだけの技術が出来上がっていることには疑問が大きい。

もしかして未来から来た者の技術供与でもあるのであろうか?

おもしろいのはサリナ・ウォンがクリムゾングループをしきりに気にしている点だ。
17話ではムネタケを利用してまでその動向を探っている。
そう考えると何か技術競争が元の歴史にはないファクターで行われているのではないか?と考えるのも一つの見方かもしれない。

まぁそんな疑問はともかく、それ以外のところでアキサードを解説するとしよう。

この機体はかなり実験的な機能が盛り込まれている。
その最たるものが、ナノマシーン構成のウイングバインダーであろう。
これはコットン状に金属を織り込んだ布を展開し、その表面をナノマシーンでコーティングしたモノである。ナノマシーンそのものはパイロットスーツのそれを応用したモノであり、それ自身が重力波を効率よくアンテナに導く役割を持つ。
またナノマシーンの結合を変化させることによりある程度の形に変形させることが可能で常に重力波をベストの状態で受信できる。

とはいえ、なぜこんな試作段階のパーツを使ったかと言えば、可能な限りレールカノンに必要な重力波を得るためだ。その為にはアンテナの面積を広くしなければいけない。広くしても機体の運動性を失ってはなんにもならない。だから採用した。
そうサリナ・ウォン自身は抗弁しているが・・・

結構この理論も怪しいモノかもしれない(笑)

一部の噂ではどうせなら試せる技術は全部ぶち込んでしまえ!という号令が流されている噂があり、アキサードのウイングバインダーが天使の翼風なのが本人の趣味であると噂されています。
(実際はあの翼のデザインはラピスであるが、それをサリナがそそのかした・・・という証言もありますが(笑))

この翼は単なる見せかけだけではなく、後々レーダーに補足されにくくするためのステルス加工がされる予定になっています。
ストライク(強襲)モードは紡錘形になってレーダーの反射を極力抑える形を狙っていました。そのためかなり接近しても気づかれなかったというのは作中の通りです。



木連式武術


さてさて、黒プリの世界では木連式武術の始祖は日本古来の古武術・・・って事になってます(もちろん、公式の設定ではなく独自の設定です。)

とはいえ、日本人っぽい人が多い木連ではあながち外れな設定とは思えません。

で、アキが17話から20話までアキトに教えていた理論は私の創作ではなく、ちゃんと古武術の甲野善紀氏の「武術の新・人間学」(PHP文庫)から引用したものです。
もちろん、そこからある程度の創作などが入っているのですが、体を捻らない、タメを作らないってのは本当です。

最近では漫画などにも引用されていて、週刊マガジンの「Cross Over」でも出てきました。
あと桑田真澄も甲野善紀氏に師授を受けていたらしいです(その事も漫画になってましたね)

で、その本の趣旨とは、日本の明治以前の「柔術」、「剣術」と呼ばれていたものが仙人のような技を持っていたにもかかわらず広まりにくいものであったということ。
それを明治維新以後、「柔道」や「剣道」といった確立した練習方法によりある程度の訓練によってある程度までの格闘能力に引き上げる手法が広まってしまったということです。
当時は超人よりも使える戦士を大量生産したいという事を考えれば仕方のないことでもあり、「柔術」や「剣術」が廃れていってしまったのは仕方のないことのようです。

で、色々余談が過ぎましたが(汗)

この黒プリでは日本の古武術が木連式武術の元になっています。
武術としては柔、抜刀術、槍術、投擲術などがあり、木連の男子はこれらのいずれかを学校教育などで学びます。
もちろん現在の柔道や剣道の様に礼節を学ぶ・・・っていう訳ではありません。
木連人達が最終的な決戦に対して白兵戦を念頭に置いているという事です。
良い意味で作用した場合、それは九十九や月臣の様なヒロイックな感情(つまり熱血な主人公は拳も強くなければいけない(笑))になるわけですが、悪い方向に作用すると北辰みたいな暗殺タイプになってしまうわけです。

拳銃とか当たり前の時代でアナクロと思われるかもしれませんが、元々は月の独立派の人々の集団ですから、近代兵器ゴテゴテって恵まれた環境にはなく、武器も少なくて場合によっては徒手空拳にならざるを得なかったのが彼らの100年前ですから、仕方がないかもしれません。

で、九十九とか月臣は主に柔術が得意です。
で、北辰達は抜刀術とかが好みです。
この辺りはまぁいわゆる順当な奴です。

一応アキは黒アキトの時代に月臣から木連式柔術を中心に指南を受けています。腕前としては皆伝ぐらいです。主に北辰と対決する為に力を身につけていますので抜刀術に対応する技を磨いていました。
とはいえ拳銃を使うのは・・・やはり一対多の戦いでは拳銃の方が有利だからでしょう(笑)

さてさてアキの使う武術が本当に木連式柔とイコールかというとそんなことはありません。古武術はある意味自分で体得していく武術であるので人それぞれの悟り方が違えば体現する技も違ってきます。
ある程度アキの使いやすい技が誇張されているかもしれません。
(北辰と戦っているうちにその方面だけ先鋭化されているかもしれませんしね)

アキトに現状どのぐらい教えているかといえば・・・
ほんの入り口です。
だからいきなり北辰と戦うのはとっても危険です(苦笑)



黒プリにおける時間、記憶の概念


さてさて時間を逆行する以上つきまとう、改変された歴史と記憶の概念ですが(苦笑)

時間の概念は作品の順番、つまり"Princess of White"→"Second Revenge"→"プリンセス オブ ダークネス"の順に流れていると思って下さい。
え?逆行なのに黒プリの方が時間が逆なの?と思われるかもしれませんが、それには理由があります。

これは観察する系の問題です。
例えば時間が変わるということを知覚するためにはどうするのでしょうか?
まずCase1という歴史をまず見る、次にCase2という歴史を見る。
二つを比べて初めて歴史は変わったとわかるわけですが、これを観察していた人間にとっての時間の流れはどうなのでしょうか?
つまり、Case1→Case2という時間の流れをしていたということですよね。

仮にルリの視点から歴史を俯瞰した場合
白プリとしての経験→リベ2としての経験→黒プリの奥さん'sとしての経験という様に時間が流れているわけです。

ですが、ややこしいのはルリが歴史を俯瞰する立場であると同時に歴史を生きる立場にもあるという点です。

ルリ自身の記憶は白プリ最終話までの記憶は確かに実体験のものでした。
しかし白プリ最終話でユリカが新婚旅行当時に逆行して介入することにより歴史が変わってしまった。このためルリの歴史は劇ナデと同じ流れに移ってしまいました。
でも観察者である白プリ最終話のルリにとっては今まで見てきた歴史からいきなり劇ナデに切り替わってしまった様に見えたのです。

で、リベ2のルリの記憶はどうなっているかというと、実体験は劇ナデになってしまっています。これは歴史の連続から言えば当たり前ですね?
でも観察者としてのルリはやはり白プリとしての記憶も存在している。
けれどよくよく考えれば感情論で考えた場合、どちらが優先されるのでしょうか?

やはり実体験をした方の記憶・・・つまり劇ナデの感情がある程度優先されるのは仕方がないと思います。

さてさて、次は改編した歴史に置いて二つの歴史の同一人物達はどの時点で記憶を共有するのでしょうか?

それはまさに白プリ最終話の時点で共有されることになります。
不思議ですか?
これは今までの論法の応用になりますが、
白プリのルリにおいて、歴史は白プリの世界は一つでした。
ではいつの時点で二つに分かれたのでしょうか?
それは白プリ最終話の時点でユリカが新婚旅行時点に介入したからです。
であれば、二種類の記憶が生まれるのもユリカが過去に跳んだ最終話の時点でしょ?ってことになります。

ですので新婚旅行から白プリ終了時点まで二種類の記憶がある事にはなっていません。
ただし、可能性のジャンクション付近では近い可能性の世界を垣間見るということは可能のようです。

また、このことはアキト、ユリカ、ラピスにも当てはまります。
リベ2以降の彼らは一応白プリと劇ナデ二つの記憶がありますが、現状の実体験は劇ナデの方ですのでそちらに引きずられたりします。

もう一つ、白プリの記憶を持っているはずのアキことアキトが21話で色々過去のことにうなされていたりしますが、それはやはり人間の弱さということでしょうか?
いくら誓いを立てていても、白プリの方のアキトは直接酷いことをされた訳じゃありません。
酷いことをされて、それでも意志をねじ曲げられない程まっすぐで居れるか・・・
私には自信がありません(苦笑)
それほど人は強くはない、環境によって簡単に変わる。
だからこそ自分の居場所を守らなければならない。
そんな意味も込めてアキトはリベ2であんな言動をしています。
あるいはそれがある程度修練された歴史を人に歩ませてしまう強制力という奴なのかもしれないのでは?と思います。

そういう事を考えながら再度リベ2の34話辺りを読んでいただくとおもしろいかもしれません。

なお、黒プリにおけるルリ(奥さん'sではない方)はBlue Fairyと違ってリベ2などの記憶はないと思って下さい。
もちろん、奥さん'sらの介入などである程度記憶のフラッシュバックはあるかもしれませんが、彼女自身はこれから歴史を観察するのであり、変わっているであろうはずのもう一つの歴史を見ているわけでありません。
彼女の歴史は彼女が切り開くのであり、それはBlue Fairyの体験とは無関係という事です。

もっとも、歴史の確率論から言えばかなりの所まで元の歴史を歩むかもしれませんが。

最後に、可能性のジャンクションって歴史を変えられないのか?
という考察ですが、これはモロ黒プリのラストにかぶるので多くは語りません。
でも因果として、歴史を変えようと思い立ったBlue Fairyがこの時代のルリの記憶を持っていないということは変わってないんじゃないの?と言えるかもしれません。

でも可能性のジャンクションとは、
「大筋として起こる歴史は変わらない」
「あるいは変えたと思っていても、役者が変わっただけで実は変わっていない」
「そういう可能性もあり得るので相対としての歴史は変わらないよ」
「でも、違う可能性を選んだ人達は相変わらず不幸なままなの?」
っていうのが命題なので、その観点からも黒プリのラストを見守っていただけると嬉しいです。



二十三話以降のアキの行動


さて、今ひとつわからない二十三話以降のアキさんの行動ですが(笑)

大まかに書くと次のようになります。

(1)22話終了時、ボソンジャンプにてサセボに向かう
 (エリナから奪った1個目のCCを使用)
(2)サセボにて火星生存者にインタビューを行う
 注:ちなみに彼らの抑留地は後にナデシコクルーが抑留される通称ナデシコ長屋と呼ばれます。
(3)その直後、サセボのとある中華料理屋に行き倒れになったところを拾われる
 注:二十四話エリナ編とアキト編の冒頭部分に当たります。
(4)その後、東京に帰ったところを再び行き倒れて、メグミに拾われます(笑)
 注:しかし、実際には奥さん'sあたりにサセボのインタビューデータを渡す為だと思われます。
(5)しばらく滞在した後、そのまま国際線にてヨーロッパに移動
(6)ヨーロッパでステルンベルギアと不知火のテストを視察した後、ボソンジャンプで木連へ跳躍した
 (エリナから奪った2個目のCCを使用、手持ちゼロ)
(7)そして二十四話九十九編ラストで九十九のベットに潜り込む

って事になります。それぞれ二十四話本編でどのあたりになるかは調べて下さい。
大体時間軸は合うように書いているつもりです(苦笑)

で、その後なのですが・・・

(8)和平会談時に北辰と交戦、そのままアキト達を逃がす為に踏みとどまる。
 その後、きさらぎの中を逃げ回る。
(9)きさらぎが市民艦れいげつに帰るのに合わせてそのままれいげつに密航する
(10)れいげつで九十九の国葬に乱入する。
 その際に落下した九十九を辛くも救出するが、重傷の九十九を抱えてれいげつの中を逃げ回る。数時間後に九十九は出血多量により死亡
(11)九十九が死亡した数分後、Snow Whiteが九十九の遺体を回収
 この時、Snow WhiteよりCCを貰う
(12)ボソンジャンプにて火星で戦闘状態のナデシコにボソンジャンプ

という具合になります。



二十三話以降のガイの行動


これは敢えて説明する必要はないかもしれません(笑)

(1)二十三話のポストスクリプトで逃げ出した後、早速覚えたボソンジャンプで木連に行く
(2)ニセ九十九として暗躍(笑)
 というか、九十九として振る舞う為に練習していた。
 (案外バレなかったみたいだから不思議だ(苦笑))
(3)九十九の荷物と一緒にそのままナデシコに同行
(4)九十九がきさらぎに向かう時にトイレに監禁、そのまま九十九としてすり替わる
(5)和平会談で月臣に撃たれる。アキト達の手によってナデシコに輸送される
(6)しばらくの後、死亡。その後Snow Whiteとイツキに遺体を回収される
(7)Pink Fairyにより延命処理される。
 その際、体の大部分をサイボーグにされる。
 サイボーグの技術は夢幻城のエンジェルのテクノロジーが使われている模様
(8)同時刻に九十九の遺体も回収される。ほぼ同時進行の手術であった。
(9)蘇生完了後、先に飛び出したイツキの後を追って大蛇との戦闘に参加

・・・とまぁこんな感じになります(笑)

ちなみにガイも九十九も実際には一度死亡しています。
脳細胞のいくらかは細胞死しているはずです。
体の方は心臓などが停止していて自律生存は出来ない状態でしょう。
ただし、ガイにしても九十九にしてもデジタライズナノマシーンのおかげで脳細胞のシナプシス結合はかなり記録されていました。
この記録を元に、細胞死した脳細胞の代わりをさせる為のナノマシーンの情報再構築作業を行ったのでほとんど元のガイのままです。

つまりナノマシーンが補助脳と同じ役割をしていると思って下さい。
もっとも、処置がかなり早く、シナプシス結合のデジタライズもかなり早い段階で行われた為にこの程度で済んだのであり、やはり脳死=精神の死という図式はあまり変わっていません。



「時の記述」あるいは「始まりの人」


さて、劇中でその正体がヤマサキ博士(初代)となっていますが、より正確に言えば彼の人格をコアにした記憶の集合体と思って下さい。
実体はシナプシス結合を記憶するナノマシーンでおよそありとあらゆる歴史を記録する存在です。

元々はボソンジャンプが存在しなかった頃のヤマサキ・ヨシオの人格がベースであり、彼がアイネスを生体ボソンジャンプで失ってしまった事への執着に囚われたた存在です。
基本的にはナノマシーンに自分の記憶を写し、それを他人に移植することで永遠の命・・・これを命と呼んで良いのなら・・・を得ました。
劇中にもありましたが、今まで彼が憑依した人物の記憶も記録しています。

そして歴史の終焉に到達した人物でもあります。

なぜ「時の記述」と呼ばれるかというと歴史の全てを記録する存在だからです。
そしてその英知を古代火星人に与えました。その為古代火星人の文明では大きなブレイクスルーが起きます。だから「始まりの人」と呼ばれています。
でも結局は彼は彼の欲望のためにそうしたのは劇中の通りです。

一見作中では矛盾するような行動を取っていますが、基本的には火星のアイちゃん出現まで歴史を変えたくないが為の行動でした。
ただ、アキという存在が歴史をよりよい方向へ導こうとした事への反発でマイナス方向に歴史を修正したためそのように見えるかもしれません。
ただし、その思惑はアイちゃん出現の歴史を狂わせたくないからで、そこにはキーパーソンとしてナデシコが再び火星にやってくるという歴史がどうしても必要でした。
そういう観点からもう一度ストーリーを眺めて頂くと何となく意図が理解できるのかなぁ〜とか思います。
もっとも、アイちゃん出現以降は歴史を全く破壊するつもりだったので、善意でやっていた訳じゃなかったのですが。
(つか、この辺りすごい後付の設定に見えるよなぁ(苦笑))

Pink Fairyは彼を自縛霊と称しましたが、すごく正しい表現で後悔の歴史を修正しようと囚われているだけの存在なのかもしれません。

元ネタは昔私が書いた小説からですが最近文庫本になったマップスの影響もあるかもしれません(笑)



ブラックサレナbuild ninety nine


これはブラックサレナの最終形態です。既にエステバリスというカテゴリーに組み込んで良いかわかりません(笑)
一番すごいのは積んである相転移エンジンであり、CC組成の一次フレームにエンジンの出力を受け止めるだけのキャパシティーがあったという点にあります。

特記すべきエンジェル専用相転移エンジン「十拳剣」ですが、これは本当に一振りの剣の姿をしていてサレナパーツの中に隠されるようにマウントされています。
もしこれを暴走させれば太陽系を消滅させるだけのパワーを持ちます。それもそのはず、ビッグバン宇宙をこちらの世界に引き込むというとんでもない代物だったからです(苦笑)
元々この「十拳剣」は八岐大蛇を倒すために開発された秘密兵器です。もちろん技術的な詳細は筆者にも不明です(苦笑)
唯一「始まりの人」へ対抗できる技術という事でかなり極秘裏に製造されました。もしそれが「始まりの人」に露見してしまえば全てが水泡に帰すからです。
そして「始まりの人」の運命操作に影響されないように無人兵器であるエンジェルに組み込まれました。このエンジンのおかげでエンジェルは八岐大蛇と互角に戦うことが出来、辛くも封印に成功しました。(もっとも代償として火星を焦土にしてしまいましたが)

その後、古代火星人達は二度とボソンジャンプを悪用されないために管制装置である夢幻城を作り、その番人にエンジェルを配置しました。

さて、ここでうんちくなのですが、スサノオが八岐大蛇を倒したとき、その体から出てきたのがあの有名な草薙剣(くさなぎのつるぎ)あるいは天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)と呼ばれる剣です。この剣は三種の神器の一つにも数えられる霊剣です。
と、それはどうでも良くて、この時スサノオが八岐大蛇を倒したときに使用されたのが「十拳剣」という剣です。

ただ、この剣には色々逸話も多かったみたいです。
いろんな名前があり、天蠅斫剣・・・つまり蝿を切る事の出来た剣という意味ですが、そんな名前で呼ばれていたりもします。
また、草薙剣みたいにこれが剣の名称であったかと言われれば、どうもそうではなかったらしく、「十拳剣」という名前はとても長い剣という程度の意味らしいのです。しかも一つの剣ではなく複数の剣みたいで、こういう形式の剣である可能性があるとも推測されます。

エンジンは合計10個製造され、7体のエンジェルに装備されました。残りは予備機になったのですが、Snow Whiteらはそれらを借り受け、ユーチャリスとブラックサレナ、ホワイトサレナに移植します。
もっとも通常はただの相転移エンジン並の出力しか出ません。
これは「出雲」モードと呼ばれる状態で通常のエンジェルもこの状態で使用されます。
そして神話クラスの戦闘を行うときのみ「高天原」モードで動作し、この状態では単独で広範囲の空間相転移を行うことすら可能になります。

#ちなみに各モードの名称は神話の舞台から引用されています
#高天原とはいわゆる天上界、神様のいる場所ってことです
#元ネタはオリオンという漫画です(著者 士朗政宗)

スサノオが八岐大蛇を倒す神話になぞらえていますが、たまたま奇妙な一致と片づけてしまわずに、この物語が紡がれて日本神話になった・・・と考えてみるのもおもしろいかもしれません(笑)

ああ、build ninety nine自身の機能説明がなかったですね。
実際にリベ2の頃から変わったのは相転移エンジンにより装備可能になったグラビティーブラストです。
具体的にはエクスバリスの様な重力波ブレードが両肩と腰の装甲内に隠されてマウントされていて必要時に飛び出します。今更グラビティーブラストと思うかもしれませんが、エステバリスの機動性で懐に潜り込まれ、至近距離から高出力の重力波を浴びる・・・いくらディストーションフィールドとは矛と盾の関係にあるとはいえ、かなり恐ろしい存在です。

場合によっては相転移砲すら撃てるというから驚きです(笑)

ブラックサレナはこの戦闘を最後に戦場から姿を消します。
多分テンカワ・アキトにとって必要で無くなったからと思われます。

なお余談ですが、ホワイトサレナにはグラビティーブラストは装備されていません。
多分美学が許さなかったのでしょう(笑)
ただ、レールカノンは超小型のマイクロブラックホールが弾頭にセットされていたかもしれません。



八岐大蛇


一番ナデシコらしくないキャラクターかもしれません(実際ナデシコからかけ離れていると感想をもらったぐらいだし(苦笑))
まぁ漫画版のナデシコは邪馬台国世界とのパラレルワールドだったのでこのぐらいアリかなぁ〜とか思う今日この頃。

実体は莫大なナノマシーンの集合体に制御装置の演算装置、それに頭脳としてのアイネス・フランチェスカが融合した存在です。

一度古代火星文明時代に大部分を消滅させられ封印させられました。
この時、キーデバイスである演算装置を抜き取られ、何万年もの間、火星の地下で自分の体の増殖作業を費やしていました。
火星でアイちゃんが戻ってくるまで待っていたのですから気の長い話です。

所詮はナノマシーンの集合体なのでそれ自身に意志はなく、融合したアイちゃんが八岐大蛇を操っていたといえます。
しかもアイちゃんが融合したために、彼女の変えられない運命『イネス・フレサンジュが現在に存在する以上、アイちゃんは生きて20年前にボソンジャンプする』というロジックが八岐大蛇に組み込まれることになります。

このため、アイちゃんを引き離さない限り、八岐大蛇を倒すことは不可能・・・そういう存在になってしまいました。

さて、最終的にはアイちゃんは解放され、「始まりの人」が代わりにその頭脳体となりますが、アイちゃんのように絶対滅ぼされないという運命があるわけでもなくあっさりと滅ぼされます(笑)

なおその性能ですが、劇中の通りに古代火星文明を滅ぼすほどの強さでです。
巨体に物を言わせてナノマシーンによる巨大な相転移エンジンを形成し、大気中での出力不足を数で補っています(だから八岐大蛇はグラビティーブラストを連射できたわけです)
また、ナノマシーンは自己増殖機能を有していて、周りの物質を自分自身にボソンジャンプさせる過程に介入して物質の元素構造をコントロールしていました(これも演算装置を内包した為出来たことです)
このため、ほぼ無限に増殖、活動出来るという兵器単体としてみても非常強力な存在でした。

そしてもっとも恐ろしいのは運命操作デバイスであるという点です。
これは人の運命を狭めるように心を操作するという物です。これは元々「始まりの人」の能力ですが、八岐大蛇はこれを増幅させる力を持っています。
「始まりの人」単独の力ならムネタケや月臣の様に心の弱い者を支配下に置くことが出来ますが非常に限定的な範囲しか適用できませんでした。
けれど八岐大蛇を使うとかなり広範囲に渡って操作できます。
これが最後まで古代火星文明を苦しめた要因でしょう。

最終的に古代火星文明時代には大蛇全体を一度に滅却する他なく、その犠牲が火星の大地の荒廃という結果を生み出しました。



始まりの人の自己矛盾


さて、これも分かりにくい話ですが、始まりの人の目的はアイネス(初代)をボソンジャンプで失った事実を訂正することでした。
その為に古代火星文明に戻り、彼らの文明に技術提供することにより、ボソンジャンプ技術を完成させました。

しかしここで誤算が生じます。
ボソンジャンプ技術が生み出されたことにより歴史が変わりヤマサキとアイネスが出会うというそもそもの歴史がなくなってしまったのです。

最終的にはどうやっても二人が出会わないという歴史を修正できなかったので根本の原因であるボソンジャンプ技術を完成させた古代火星文明を滅ぼすという暴挙に出ました。

これはすごい自己矛盾です(苦笑)

ボソンジャンプ技術が存在する限り、火星会戦で火星が戦場になりヤマサキとアイネスが巡り会うことは全くないという運命は変わらなかった。それは始まりの人が歴史を666回やり直しても修正できないという事からもかなり決定的な事項のようです。

けれど始まりの人はそもそものボソンジャンプ技術を完成させるという歴史を破棄することは出来なかったようです。もし破棄してしまえばボソンジャンプというやり直しのきく能力なしでアイネスのハートを射止めなければならなかったからです。

この二律背反の解決方法として始まりの人は現代の歴史を修復不能なほど破壊してから過去に戻って歴史を修正するという方法で解決しようとしました。
このアプローチはあながち外れた考えではないかもしれません。
時間という概念が

・Aという過去があるからBという現在が出来た

と言えるのなら、

・Bという現在があるからCという未来が予測可能である

というように生み出される未来は現在によって制限されるとも言えます。
ならば、現在は未来によって拘束されているというと始まりの人は考えたかもしれません。

この考えを発展させれば未来が予測不能なら過去も自由に変えられるのではないか?
と考えたのではないでしょうか?

彼にとって歴史の現在とは伸び続ける矢印の先端部分に存在するのではなく、長く張り巡らされた糸の真ん中と考えればある程度納得できるかもしれません。

もちろん、それが本当かどうかを実行しようとしてアキ達に阻止されたわけですから正しいかどうかは定かではありません(苦笑)

・・・続くかもしれない(笑)

Special Thanks!!
・天灯虫(仮) 様