アバン


大人になると思い知らされる
こんなはずじゃなかったはずなのに
もっと何にでもなれるはずだったのに
子供の頃、想像していた光景とかけ離れた現実が今の自分を苛む

けれど、お気楽に、私らしく
隣の芝は青く見えると笑い飛ばせるぐらいに
今の自分を誉めてあげよう
そうすればきっと見える景色も変わってくるはずだから・・・

ああ、これってSecond Revengeのラストとほんのちょっぴり関係があったりしますのでそのつもりで〜



Yナデシコ・特設会場


さてそこはめくるめく光の洪水!
きらびやかなセットが組まれた一番星コンテストの会場!!!
既に多くの観客が開始を今か今かと待ちわびていた!!!

ウリバタケ「さぁもう間もなく開催ですねぇ、アカツキさん!」
アカツキ「そうですねぇ、ウリバタケさん!」
ウリバタケ「はい、新しい艦長を決める一番星コンテスト!
 なんと優勝者は新艦長就任だけではなく、アイドルデビューも決定!!!
 この大戦が終わった後は輝かしい道が開かれております!!!」
アカツキ「これで戦争終了後の就職先もバッチリ!」
ウリバタケ「いや、そういう言い方はどうかと・・・」
アカツキ「ともかく!ナデシコ中の美少女が勢揃い!
 今から楽しみですね♪」
ウリバタケ「そうですね♪
 もう間もなく開催です。
 チャンネルはそのままで!」
アカツキ「お楽しみに♪」



Yナデシコ・控え室


さてさてここはコンテストに出場する麗しの乙女達の控え室だったりします。
各々、自分の出し物の準備に余念がなかった。

「メグちゃん、一体どんな出し物をするの?」
ミナトは更衣室のカーテンから顔だけを出しながらメグミに質問する。
なぜならメグミの姿が看護婦の衣装だったからだ。
看護婦で何をするつもりなのだ?
イメクラ?

メグミ「これでも声優やる前は看護学校に通っていたこともあるんですよ」
ミナト「声優さんが看護婦?
 んなバカな・・・」
メグミ「ウソじゃありませんよ。
 伝説のCVメグ姉も看護学校に通ってたって話なんですから♪」
ミナト「それは良いとして・・・何をやるの?」
メグミ「静注を♪」
ミナト「静注って静脈注射でしょ?
 出来るの?」
メグミ「はい、左手を出して軽く握って下さいね〜♪
 あらあらお注射は飲むものじゃありませんよ〜♪」

と、手元のお人形相手に注射の練習をするメグミ
それは芸か?という気もするミナトだが、彼女も人のことは言えない。
なぜゆえに着ぐるみ?
ってな感じの物を着ているからである(笑)

と、その横で

ボロ〜ン

ウクレレを持ってチャイナ服姿のイズミ登場

イズミ「ダンダンダン、私の出番は漫談?
 ククク♪」
ミナト&メグミ「・・・・(汗)」
とか、寒いギャグを早速飛ばす少女が一人。
漫談をやるらしい。

まぁそんな人もいるかと思えば・・・

メグミ「あらエリナさん、どうしたんですか?そんな大きな荷物を抱えて」
エリナ「え?えっとこれは・・・」
エリナは大きなバックを抱えて入ってきた。だが、少し腰が引けてる。

エリナ「今日の衣装よ・・・」
メグミ「へぇ、でもそんなに大きなバックにしか入らないような衣装なんですか?」
エリナ「え、ええ・・・」
ミナト「ふぅ〜ん。でも何やるの?」
エリナ「い、いいでしょ!私の勝手でしょ!!!」
ミナト「別に怒らなくったって・・・」
なぜか聞かれただけでキレるエリナ。
少し恥ずかしいらしいけど・・・そんな芸をするなよと言いたい(笑)

はたまたこんな人もいたみたいで・・・

ミナト「あれ?ホウメイさん」
ホウメイ「選手の控え室はここでいいのかい?」
ミナト「そうですけど・・・ホウメイさんも出るんですか?」
ホウメイ「まぁ、強敵がいないんでね。記念にと思って」

入ってきたのはホウメイだった。
だが、入ってきた彼女を見て一同驚いた。
なぜなら手に持っていたのはバニーのレオタードであったからだ。



・・・・・ホウメイさん、何をするつもり?


ホウメイ「ふふふ〜ん♪」
一同「・・・」
恐ろしい考えが浮かんだが、それを本人に聞くのを必死の思いで思いとどまる一同であった(笑)



Yナデシコ・訓練施設


「ねぇ、アキさん・・・本当にコンテストに出ませんか?」
「出ません。訓練がありますから・・・」
「そうですか・・・」
プロスがまだアキの参加を要請していたりするが、本人は出るつもりはないようだ。



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第19話 明日の「艦長」はあなただ!<後編>



Yナデシコ・特設会場


ウリバタケ「さて、とうとうやってきました、ナデシコの新艦長はあなただ!一番星コンテストの開幕です!!!
 実況は私、ウリバタケ・セイヤと解説は元大関スケコマシさんでお送りします♪」
アカツキ「誰が元大関だって?」
ウリバタケ「自覚があるのか、スケコマシというところは無視されましたか・・・」
アカツキ「ほっとけ!それより、ルールの説明はいいのかな?」
ウリバタケ「そうでした。本コンテストは出場者にナデシコクルーへのアピールを行っていただきます。
 アピールの方法は自由演技及び水着披露の二つからなります。
 自由演技はなんでも結構。自分の魅力を存分に引き出す出し物をお願いします。
 また水着審査は自らの健康美、お色気、爽やかさなどなど女性としての魅力を存分にアピールしていただけますようお願いします。」
アカツキ「投票は各クルー1票の無記名投票にて行うので、周りの目を気にせずお目当ての女の子にじゃんじゃん投票してくれ!
 もちろん、アピールを見ずに本命の女の子へ一途に投票するも良し、
 アピールを見て浮気するも良し!」
プロス「では、トップバッターはこの方!
 眼鏡がキュートな整備班の皆さんの密かなアイドル!
 アマノ・ヒカルさんで歌は『勝利のVだ! ゲキガンガーV』をどうぞ!!!」



アマノ・ヒカル:コスプレ&歌唱


ヒカルはゲキガンガーに出てくる海燕ジョーのコスプレをしてステージにあがった。
そして歌う歌は当然、ゲキガンガーの挿入歌だ(笑)

「ガンガンガガン、ガンガガン♪見上げる空に♪」

と調子よく歌いながら熱唱するヒカル
しかもマイクスタンドを握りしめながらである。

プロス「えっとバックダンサーはこの方達、整備班ヒカルラブリンズです」

その後ろで踊るのはキョアック星人に扮した整備班員その1〜その4である。
その1「キー」
その2「キキー」
その3「キキキー」
その4「キキキのキー」
なぜかノリノリである(笑)

ウリバタケ「お、お前らいつの間に・・・」
アカツキ「なんか、キョアック星人というよりはショッカーみたいですねぇ」

とかなんとか言っている間に、曲はもうすぐ最後のパートです。

ヒカル「勝利のVだ、ガンガーV♪」
ヒカルはコスチュームを引き剥がすと中からはビキニにパレオという出で立ちが現れた。

ウリバタケ「おお、見事な水着チェンジですね♪」
アカツキ「まさに爽やかなお色気でキュートですねぇ♪」
ウリバタケ「しかし後ろで鼻の下を伸ばしているあいつらが・・・」
アカツキ「おっと、票も順調に入っているようですね」

まぁ、トップバッターとしては順調なスタートを切った(笑)



マキ・イズミ:ウクレレ漫談


チャイナ服姿にウクレレを持ってイズミ登場(笑)
で、飛び出した漫談だが・・・

「一番の帽子、見つけた・・・一番星なんちって」

ヒューーーーーーー

「狐の試験・・・コン、テストなんちって」

ヒューーーーーーー

「ハワイで着る水着は?ビキニ・・・・
 って実はビキニってビキニ諸島で核実験を行ったことに抗議するために着られたのが事の発端で・・・」

ヒューーーーーーー

ウリバタケ「相変わらず寒いギャグを飛ばしておりますねぇ、イズミちゃん」
 しかも最後には真面目に解説らしきことをしていたようですが、いまいちオチがわからなかったですねぇ・・・」
アカツキ「実はビキニじゃなくてワイキキって言おうとしてさらにオチていないことに気づいたとか(苦笑)」
ウリバタケ「案の定、得点も伸びていないようですので次ぎ行きましょうか?」
アカツキ「そうですね」

本人のやる気とは裏腹にさっさとフェードアウトさせられるイズミであった。

イズミ「コンテストに当選した?当然だ・・・なんちって(笑)」
水着はワンピでしたが、誰も見てやしない(苦笑)



メグミ・レイナード:看護婦のコスプレ


「メグミ・レイナード、採血しま〜す」
と現れたのはピンクのナース服姿で現れたメグミであった。
セットとして用意されたのが献血用のテーブルに椅子、そして何故か献血終了後のお楽しみとして牛乳パックが置かれていた。

「さて、良い子の皆さん〜誰か献血しませんか?」
「むぅ・・・」
何故かゴート氏、採血に登場(笑)

ウリバタケ「畜生、ゴートの旦那、このむっつりスケベ!
 彼女に言いつけるぞ!」
ゴート「だ、黙れ!オレは純粋に献血をだなぁ・・・」
メグミ「はい、では左の袖をまくって下さいね♪」
外野の野次に真っ赤になるゴートを後目にメグミはテキパキと作業を進めていった。

メグミ「はい、親指を中に入れて軽く握って下さいね」
ゴート「むぅ」
メグミはゴートの腕をアルコールをしみ込ませた脱脂綿で軽く拭くと上腕部を黒いゴムで絞めた。ここまでは普通の採血の方法だ。

だが、ここからがメグミ流だ。

メグミ「はい、力を抜いてリラックスして下さいね」
ゴート「ああ・・・・!?」
前屈みになってゴートをのぞき込むメグミ。
だがゴートの目には少しナース服の前が開いてメグミの胸の谷間がチラリと飛び込んできた!

ゴート「お、おい・・・あの・・・」
メグミ「何ですか?」
ウリバタケ『黙ってろ!!!』
見えていることを教えようとしたがメグミに気づく様子はない。
しかもゴートの後ろで鼻を伸ばし、彼の行動を阻止しようと睨みを利かせる男子クルー多数(笑)

・・・っていうか、わざと見せてるだろう、この女(笑)
本人はその下に水着を着ているので別に見えても痛痒を感じていないかもしれない。
まさにナース服が見せるマジックである。

男性クルーの視線が釘付けなことを悟るとメグミは次の作戦に出る。

グイ・・・
ぷにょ

ゴート「おい・・・」
メグミ「ダメですよ、ジッとしてないと。
 針が逸れたらどうするつもりですか?」
ゴート「だが・・・」
ウリバタケ『あああ!!!』

グイグイ・・・
ぷにょぷにょ

ゴート「おい・・・」
メグミ「いい子ですからもう少しジッとして下さいね♪」
ゴート「だが・・・」
ウリバタケ『羨ましいぞ、畜生!!!』

ゴート氏の採血するために差し出した左手がメグミのどこかに当たっていますが、
『おいたはダメよ。でも今回だけは黙っててあげる♪
 でもどこに当たっているかは想像してね♪』
ってな感じで採血を行うメグミであった(笑)

メグミ「はい、他に献血したい人はいますか?」
男子クルー「はいはいはいはい!!!!」

と希望者が殺到したが時間の都合、後二人が採血されてお終いでした(笑)

ちなみに水着チェンジは大胆なビキニだったようです。

ルリ「貧乳なのにですか?」
メグミ「人のこと言えないでしょう!!!」



ハルカ・ミナト:土俵入り


一同、目が点になる。

ウリバタケ「あの・・・これはどう評価したらいいのでしょうか?」
アカツキ「さ、さぁ・・・」
ミナトの着ぐるみはとっても不思議なものであった。
肉襦袢の上に天使の羽、金太郎の前掛けに回し・・・

もしかしてこの時代の力士ってこんな格好なの?
しかも何をやるかといえば・・・

ミナト「どすこい!」
そう言って四股を踏むとにじり寄りながら両腕をあげていった。

ウリバタケ「これは雲竜型でしょうか?元大関のスケコマシさん?」
アカツキ「だから元大関じゃないって。
 にしても、ミナトさん微妙に土俵入りの型が違うような・・・」

意外にマニアックですねぇ、ミナトさんもそうだけど、あなた達も

それはともかく、みんなはその瞬間を待っていた。
ちゃんとした土俵入りの作法を全てやり終えた後、ミナトは肉襦袢に手をかけた。

ウリバタケ「おっと、いよいよ待望の水着チェンジですよ!」
アカツキ「ヒャッホー♪」

バサ!
肉襦袢を取り去った後に姿を現したミナトの水着姿はそれはそれはセクシーだった。



どこかで中継を見ているガイ「ドバァ!!!!」
どこかで中継を見ているイツキ「た、隊長大丈夫ですか?」
どこかで中継を見ているPink Fairy「鼻血ブーってお約束かつ古いリアクションね」


ウリバタケ「ミナトさんの票がここに来て躍進中!!!」
アカツキ「そうですね。僕も席を立てません・・・」
やはりダイナマイトセクシーポーズ(古い!)が炸裂したミナトさんであった。



Yナデシコ・ブリッジ


ブリッジでコンテストを見ているのはアキトにルリ、ラピス、そしてリョーコであった。
彼らは仲良くスクリーンに映るコンテストの内容を見ていた。

プロス『13番水野亜美さん(仮名)で水芸です!』
アキト「懐かしいなぁ」
ラピス「って、火星にもあったの?水芸」
ルリ「それとも某セーラー服美少女戦士の事ですか?」
アキト「そ、それは・・・(汗)」

とか、

プロス『14番麻宮サキさん(仮名)で、ずいずいずっころばしです』
ラピス「ずいずい・・・ってなに!?」
アキト「童謡だけど・・・」
ルリ「っていうか、内容よりも名前の方が微妙に引っかかるんですけど・・・」

とか、

プロス『15番ララァ・スンさん(仮名)でエレキギター演奏』
アキト「止めてくれ!ヘビメタを弾くなんてイメージが壊れる〜」
ルリ「アキトさん、あくまでも仮名です。仮名」
アキト「え?そうだっけ?」

とか、

プロス『16番綾波レイさん(仮名)で白坊主』
アキト「うわぁ!セカンドインパクトが!!!」
ラピス「私と一つになりましょう・・・とか」
アキト「うわぁ!サードインパクトが!!!」
ラピス「碇君が待っている・・・」
アキト「逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ・・・」
ルリ「落ち着いて下さい!大きくなったりしませんから!
 ってラピスも止めなさい!」
ラピス「意味が分からない人は劇エヴァを見ましょう」

などなど、楽しく観戦してました(笑)

でも、その隣でリョーコは始終塞ぎ込んだままであった。
もちろん、アキト達がそんな彼女の様子に気づくはずもなかった。

プロス『17番ホウメイガールズさんで歌うは・・・』
アキト「あ、サユリちゃん達だ」
ルリ「歌、うまいですね」
ラピス「踊りもうまい」

スクリーンに映るホウメイガールズ達の歌って踊る姿はキラキラ輝いていた。

だからアキトは思わず当たり前の感想を呟いてしまう。
アキト「やっぱり彼女達ってキラキラ輝いているよなぁ。」
リョーコ「そうか?」
アキト「そうだよ。戦うことしか頭にない木連の奴らとは大違いだよなぁ」
リョーコ「・・・そうかぁ」
アキト「そうだよ。いいよなぁ・・・ってリョーコちゃん?」

気が付くと隣で相槌を打っていたリョーコの姿が見えなくなっていた。

アキト「あれ?リョーコちゃんは?」
ルリ「ブリッジを出て行かれましたが・・・」
アキト「俺、なんか変なこと言った?」
ルリ「さぁ・・・」
そんなリョーコの複雑な感情に彼らが気づくはずもなかった。



ホウメイ:バニーさんで・・・


プロス「20番!なんとあのホウメイさんがバニーガールで登場!!!」
ウリバタケ「なにぃ!!!」
アカツキ「なんですと!?」
ホウメイ「あんたら、あたしに喧嘩売ってるのかい?」
一同「いえいえ・・・」

と、司会者達を恫喝するホウメイさん
でも・・・クルー一同いろんな意味で注目するでしょう。

さてステージの奥からホウメイさんが現れた!
・・・・本当にバニーガール姿です(笑)
どんな姿かはみんなで想像力を働かせよう♪

一同「・・・・・・・・」←なんとも言えない表情
ホウメイ「おいおい、ちゃんとそれ以外の所も見ておくれよ」
アカツキ「そう言えば・・・」

バニーのレオタード以外には手にはシルクハットとステッキを持っていた。

ウリバタケ「あの・・・一体何をされるのですか?」
ホウメイ「何ってマジックに決まってるだろう、マジックに」
ウリバタケ「マジックですか?・・・バニーで?」
ホウメイ「おかしいかい?」
ウリバタケ「いや、おかしくはないんですけど・・・」
ホウメイ「この前テンカワの持っていたDVDになんだっけ、マジ○ル・エミだっけ?
 こんな格好でやってから」
ウリバタケ「・・・・・・・(汗)」

なんとも言えないウリバタケは説明することを諦めてマジックをしてもらうことにした。

肝心のネタのマジックは帽子から鳩を出したり、ステッキが花束に変わったり、手の中からスポンジが飛び出したり、カードマジックをしたりとありきたりなものに終始した。

で、水着チェンジですが・・・

ウリバタケ「もう、バニー姿だけで十分です(汗)」
ホウメイ「でも大胆でこれもんな際どいのを用意してきたんだけど・・・」
ウリバタケ「大丈夫です。十分アピール出来ています。いろんな意味で・・・」
ホウメイ「そうかい?残念だねぇ・・・」
アカツキ「いろんな意味でみんなお腹一杯だよねぇ(苦笑)」

失礼な、アカツキ君。ひょっとしたら脱いでも凄いかもしれないよ?



エリナ・キンジョウ・ウォン:コスプレ?


プロス「23番エリナ・ウォンさん・・・えっとコメントが届いております。
 『アピールはまだ秘密、打倒ミスマル・ユリカ、私が艦長になってナデシコに革新をもたらします!!!』だそうです」
ウリバタケ「おお、本人はなにやらやる気になっておりますね!」
アカツキ「っていうか、本気で艦長になりたがっているのはユリカ嬢を除くと彼女だけでは?」
ウリバタケ「まぁそうでしょうけど・・・彼女が艦長になっても堅苦しくなるだけのような気もしますねぇ」
アカツキ「まったく」
エリナ「あんた達!!!なんですって!!!」
ウリバタケ「そう仰るならステージの裏に隠れないでさっさと出てきて下さいよ」
エリナ「そ、それは・・・」

ウリバタケの催促にも関わらず、エリナは隠れてステージにあがってこなかった。
恥ずかしいらしい(笑)

ウリバタケ「どうしたんですか?」
エリナ「それは・・・その・・・」
ウリバタケ「早くしないとアピール時間が終わっちゃいますよ」
エリナ「・・・かけ声をお願い」
ウリバタケ「かけ声ですか?なんと?」
エリナ「すみれ、出番やで・・・と」
ウリバタケ「・・・いいですけど、
 すみれ、出番やで!」

訝しがりながらウリバタケはかけ声をかけると!!!

エリナ「わかったわ!!!」
一同「おおおおおおお!!!!!!!!!!」

飛び出してきたエリナを見た一同は大層驚いた。
それはそうだろう。
なにやらフワフワのヒラヒラの可愛い系のドレスにリボンをいっぱい付けた格好で現れれば(笑)
そして手には不思議な杖みたいなものを持っていた。
その杖みたいなものを振り回してなにやら呪文を唱え始めた。

エリナ「封印の鍵よ、その力を示せ!
 契約の元、すみれが命じる!
 レリーズ!!!」
一同「おおおお・・・」
するとスポットライトのせいなのか、地面にはなにやら魔法陣のような文字が浮かび上がった!!!

エリナ「クロウの作りしカードよ、汝のあるべき姿に戻れ!
 ウッド!!!」
一同「おおおお!!!!」
なにやら杖がピカピカ光って何かを吸い込むような動作をし出した。

エリナ「これでまたカードが一枚封印されたわ。
 これからも何かあったらこのカードキャプチャーすみれにお任せ♪」
と、ポーズを取って決めた!!!

・・・・一同声も出ない(笑)

ウリバタケ「この某国営放送局で放映されたアニメのぱちもんみたいな扮装はなんなんですかねぇ?」
アカツキ「いやぁ、僕に言われても・・・(苦笑)」
ジュン「つまりあれなんじゃないですか?
 ガミガミのイメージが強すぎるのでユリカみたいに親しまれるようにイメチェンをしようと・・・」
ヒカル「それでこれなのか・・・でも恥ずかしくないのかなぁ」
メグミ「ですよねぇ。それに桃色じゃなくすみれ色ってところがどことなくプライドを捨てきれていないって気もしますが・・・」
イズミ「っていうか、桃色なんて恥ずかしくて着れなかった方に1万ペソ」
ミナト「あの年でよくあんなのやれるわねぇ」
エリナ「黙りなさい!!!」

その後、早々に水着チェンジをしたが、最初のコスチュームの印象が強すぎて誰も覚えていなかったりする。

ウリバタケ「でも意外に票が伸びてますね」
アカツキ「キツイ性格の女性が時折見せる可愛らしさが琴線に触れたのでしょう」
ウリバタケ「そうですか?」

筆者も大いに疑問です(笑)



遠くのユーチャリス


イツキ「すみれちゃん、さすが素晴らしいですわ♪」
Secretary「待ちなさい!あなたはビデオカメラ片手にいきなり何を言い出すの!」
イツキ「いえ、何となくこういう台詞を期待されている方がいらっしゃるかなぁ〜と思いまして」
Secretary「思いましてって・・・あなたねぇ!」
イツキ「だって他に流れるような黒髪で上品そうな女性キャラと言えば私しかいないかと・・・」
Secretary「なんですって!!!」
イツキ「可愛らしいですわ〜♪・・・って痛いです!!!」
Secretary「まだ言うか!この口は!!!」

昔の自分を茶化されて怒るSecretaryさんであった(笑)



Yナデシコ・ブリッジ


さてさて、エリナのアピールを見ていたアキト達であるが・・・

ルリ「これはナデシコの危機です!」
アキト「え?」
ラピス「そうよ、危機よ!」
アキト「え?なにがなにが???」

アキトが唖然とする中、何故か燃え上がる二人

ルリ「このままではエリナさんが艦長になってしまいます」
ラピス「その通り!」
アキト「い、いや・・・それはいくらなんでも・・・」
ルリ「あまつさえマスコットの座さえ危うくなります!」
ラピス「その通り!」
アキト「エリナさんの場合、マスコットになるには年が・・・(汗)」
ルリ「仕方がありません、最終兵器の発動です!」
ラピス「発動!」
アキト「発動って一体何を・・・」
ルリ「アキトさんは向こうを向いていて下さい」
ラピス「・・・エッチ!」
アキト「だからなんなんだって言うんだ!!!」

まるで着替えを覗く出歯亀を見るような視線を浴びせられて訳も分からぬ内に退散させられるアキトであった。



Yナデシコ・訓練施設


リョーコは居たたまれなくなってこの場所に来ていた。
汗を流そう・・・そう思ったからだ。
だが、そこには既に先客がいた。

「隊長だ・・・」

そう、先客とはアキである。

彼女は黒のインナースーツの姿で道場の真ん中に立っていた。
何もせず、ただ立っているだけ。
しかし張りつめるほどの雰囲気が辺りを支配していた。

何もしていないわけではない。
精神を集中しているのである。
何もせずにただ立っているだけ・・・それが彼女の自然体であり、彼女の流派で言うところの全ての起点となる構えであった。
もし剣術で例えるなら、居合い抜きで構えているのと同じ意味を持つ。
安定しているようでいて、まるで片足一本で立っているような不安定さ
それはとりもなおさず、ほんのわずかな攻撃でも如何様な対処を出来る事を意味する。

もし、今殴りかかれば間違いなく殺されるだろう。

そんな雰囲気が漂っていた。

「とてもじゃないけど適わないよなぁ・・・」
改めて実力の違いを知らされるのであった。

だからリョーコはその場を離れてエステバリスの格納庫に向かった。
そこだけがリョーコの居場所だったからだ。
そこだけがリョーコのプライドを支える最後の砦だったからだ・・・



ミスマル・ユリカ:歌唱「私らしく」


ジュン「さぁ、皆さんお待たせいたしました!!!
 1184番、番号はイイワヨ!」
ウリバタケ「1184人もいないよ・・・」
ジュン「皆さんの艦長、可憐で優しく爽やかなお色気♪
 才気あふれるこの人が今日は可憐な歌を熱唱します!」
ウリバタケ「贔屓しすぎだよ・・・っていうか紹介長いし」
ジュン「ミスマル・ユリカさん、どうぞ!」

ジュンの贔屓の引き倒しでは?と思わせるほどの過剰演出の中、ユリカはやはり正統派アイドルの出で立ちでステージに現れた。

でもよく考えればまともな出し物は初めてではないだろうか?

ユリカ「ずっと、探してた〜♪こんな〜エモーション♪
 ピュアな気持ち〜眠っていたのね♪」

あ、結構上手い。
誰ですか?下手バージョンの「私らしく」が聞きたいと思った人は(笑)

ユリカ「夢を〜追いかけたら〜♪笑顔と涙の数〜♪
 段々増えていくこと〜♪知って〜いるけど♪
 時にはもっと私らしく〜♪風を感じたい〜♪
 太陽もスコールも〜♪みんな受け止めるから〜♪」

結構上手いユリカの熱唱にみんなノリノリ、中にはリズムを取る者もいた。
そう考えると結構アイドル性があるのかもしれない。



Yナデシコ・エステバリスのコックピット


リョーコは制服を脱いでラフな格好で自分のエステのコックピットに座っていた。
端っこにはコンテストの様子を小さいウインドウに出して表示させて置いた。
流れてくるのはユリカの歌う「私らしく」である。

やっぱりここが一番落ち着く。
・・・いや、ここしか落ち着けなかったと言う方が正しい。
特にユリカの歌唱など直視できなかった。

「いいよなぁ・・・戦う以外に輝けるものを持つ奴は・・・」
リョーコは呟く。

『そうだよ。戦うことしか頭にない木連の奴らとは大違いだよなぁ』

さっきのアキトの言葉が心に突き刺さる。
確かに戦うこと以外に輝ける何かを持っている奴の方がすばらしいのかもしれない。
でも、あたしはそんなこと言わせないだけの一番星を持っているつもりだった。

エステバリスを使わせたら一番強い!
そう自負してきたつもりだし、その為の努力もしてきた。

だけど・・・

生身の戦闘でも機動兵器の戦闘でもそう誇れなくなってしまってきた。

アマガワ・アキ・・・彼女の隊長だ。
彼女は自分よりも強い。呆れるぐらい強い。
いや、劣等感を感じているわけじゃない。
初めは反発していたが、今では尊敬すらしている。

でも、彼女は戦闘だけではない。
料理の腕だって凄い
別に戦争が終わってナデシコを降りても立派に輝いていけるだろう
とはいえ、彼女に負けても悔しいとは思わない。

けれど・・・

自分はいつアキトに追い抜かれるのだろう?
最初は宇宙の戦闘もできないほどの素人だったのに・・・
ひよっこで頼りなかったはずなのに・・・
いつの間にか力を付けてきた。

わかっている。
アキトがどれだけ頑張っているか。
あまつさえ、自分が憧れるだけで適わないと諦めた高見に辿り着こうとしているのだ。
憧れ、諦めた自分だからこそわかる。
それがどれほど困難なのか!
アマガワ・アキの領域に辿り着こうとするのはそれほど熟練のパイロットにも恐怖なのだ。
なのにアキトはそこに辿り着こうとしている。

もし、アキトに負けてしまったら!!!

戦うことだけを誇りにしてきたのに・・・
アキトにすら負けてしまったら・・・
アキトには料理という別に輝けるものがあるというのに・・・
この戦争が終わってしまったら・・・
戦うものすらなくなってしまったら・・・

・・・自分はただのガラクタになってしまう

リョーコはそんな考えを振り払おうとしていたが、それは後から後から心の中から湧いて出てくるのであった。

「私らしくか・・・
 私らしいって一体なんだよ・・・」
リョーコはそう呟きながら宇宙の星を眺めた。
とてもユリカの姿など直視できなかった。

ぼんやり何も考えないようにつとめながら星空を見る。

キラ・・・

何かが瞬いた気がした。

「おい、ブリッジ!!!」
リョーコは思わず叫んだ。



Yナデシコ・特設会場


ユリカ「私の未来を〜♪見つけたくて〜♪」
ジュン「はい、皆さん拍手!!!!!!」
一同「パチパチ」
ユリカ「ありがとうございました〜♪」

ウィーン!ウィーン!ウィーン!

ユリカが歌い終えたちょうどその時、警報が鳴った!!!

だが、それはリョーコの放った警告ではなかった。
リョーコの放った警告はルリのオートパイロットに阻まれた。
警告は状況をチェックされ、問題なしと判断されてしまったようだ。

んで、問題の警報の内容とは・・・

ルリ『突然ですが』
ラピス『歌います』
ユリカ「ルリちゃんにラピスちゃん!?」
驚いたのも無理はない。
警報とともに開いたウインドウに現れたのはルリとラピスの姿だったからだ。
しかもドレスはお揃い。

ゴート「おお、こまどり姉妹みたいだなぁ」
ウリバタケ「旦那・・・そりゃ古いよ・・・」
ユリカ「そうよねぇ。せめてWinkって言ってあげた方が良いと思うわ」
メグミ「ユリカさん、それも古い・・・」
ユリカ「え?そうなの!?」
ミナト「艦長って微妙に年齢不詳だよねぇ」
ユリカ「そんなことないもん!ピチピチだもん!」
イズミ「ピチピチちゃぷちゃぷランランラン♪」

と、外野の漫才は置いておくとして・・・

ウリバタケ「おっと!出場しないと思っていた本命二人が参戦か!?」
アカツキ「いえいえ、そう単純なものではないですよ!
 ほら!」
ウリバタケ「な、なんと!!!」

二人が驚いたのは無理もない。
二人が現れたウインドウのテロップに書かれた文字
『演舞:アマガワ・アキ
 挿入歌:ROSE BUD(Vocal:ホシノ・ルリ、ラピス・ラズリ)』
とある。

絶対出ないと思っていたアキが出るというのだ!!!

みんながぶり寄りでウインドウの画像にかぶりつくのであった・・・



宇宙空間・エステバリスのコックピット


「やっぱり気になる・・・」
ブリッジから何も言ってこないということは気のせいだったのだろう。
そう思おうとしたが、胸騒ぎがしてエステを発進させた。

だが、宇宙に出た直後、アキオンステージが始まったのだからたまらない。

ルリ『突然ですが』
ラピス『歌います』
リョーコ「なに!?」

宇宙に出た瞬間、リョーコも画面にがぶり寄りになってしまった(笑)



アマガワ・アキ:演舞、助演ルリ&ラピス


真っ暗な中から、スポットライトに当たったアキ登場。
・・・いや、本人は訓練施設にいるのだが、もちろんルリ達のCG合成による演出の賜物である。

本人はただ訓練しているだけだが、それに歌の伴奏と演出を加えようというのがルリ達の意図である(笑)

精神統一を行った後に型の稽古に移るアキ
ちょうどそこに「チャララララー♪」というイントロが被さった。

ルリ「紫にけむる都市(まち)はsmoky day's〜♪
 いい事なんてめったにな〜いよ〜♪」

「紫に♪」の曲にかぶりながらうつむき加減のアキがカッと目を見開き、正面を見据える!

ラピス「何万光年先のDream land〜♪
 手を伸ばした〜人が〜群がって〜♪」

アキが拳を突き出す瞬間、「群がって〜♪」の曲が被り色々な人の手がアキに向かって群がっていく映像がインポーズされた!

ルリ「何を信じているのかな〜♪でもちょっぴり愛しい〜♪」

「何を〜」にかぶりながらアキの型が始まる。
波陣から始まり、アッパー気味の掌底、エルボー、絡み・・・つまり相手の体を崩す掴みに入る。そのいずれの攻撃も放った後の不安定さがない。
隙を見せない戦い方・・・それが彼女の流派である。
その流れるような型の流れはまるで踊っているようでもあった。

ラピス「私もその中にいる〜♪夢追い人だから〜♪」

「夢追い人〜」の所からカメラはアキの顔にズームアップする。
汗できらきら輝く彼女のドアップに何人の男性及び女性のクルーがノックアウトされたことでしょう(笑)



宇宙空間・エステバリスのコックピット


ラピス『私もその中にいる〜♪夢追い人だから〜♪』

「う・・・き、効いた・・・」
フルフル震えながら鼻の辺りが熱くなるのを抑えきれないリョーコであった(笑)



遠くのユーチャリス


Snow White「キャー♪かっこいい♪」
Blue Fairy「見事な演出です、さすがは昔の私♪」
Pink Fairy「さすが、アキトの手、アキトの・・・」
Actress「これで男の人のままだったら・・・ポッ」
Secretary「ふぅ・・・」←萌えている最中

ガイ「俺の方がかっこいいぞ!」
イツキ「そうです!隊長の方が・・・・格好悪いかも、ポッ♪」
フクベ「ま、当然じゃな」
ガイ「なんだと!!!
 俺様の魅力を見せてやる!!!
 俺の歌を聴け!!!!」

ドゲシィ!!!!

一同「今良い所なんだから、黙って見んかい!!!!!!!!」



どっかの木連某戦艦


通信士「艦長、変な電波が傍受されました!」
アララギ「なに?スクリーンに出せるか?」
通信士「はい!」

そういってスクリーンに映し出された光景に、艦長は一言・・・

アララギ「デカルチャー・・・」

と言ったとか言わなかったとか(笑)



演舞の続き


ルリ「かまわない♪
 失すものは何も持ち合わせてない〜♪」
ラピス「生命(いのち)の光〜♪
 燃え尽きるまで行こう〜♪」

今度は引き気味にアキの全身を映す。
彼女は拳を突き出す!
構えて蹴りを放つ!
そのどれもが流れるように華麗で・・・
そしてどこか物悲しい。
まるでそれは足掻くことしか出来ない迷い人のように・・・

ラピス「あなたへとCarry on♪
 ずっとCarry on♪
 愛を忘れない〜♪」
ルリ「この胸の先にある夢(はな)〜ROSE BUD♪
 I was born to you〜♪」

ここで再びアキの背中を映す姿に映り、その左右から祈るようなルリとラピスのバストアップがオーバーラップする。
切なさ炸裂である!!!

各所でどよめきが起こったことは言うまでもなかった。

ウリバタケ「凄い!凄いです!!!」
アカツキ「おっと、何かが起こるようですよ!」

続いて激しいビートの間奏の間、アキの映像は消え、ルリとラピスだけのステージを映す。
しかし彼女達へのスポットライトはすぐに消え、闇の中、彼女達のシルエットだけが映る。

バサ!!!

ウリバタケ「おっと、これはもしかして!?」
アカツキ「ええ、そのもしかですよ!!!」

二人のシルエットは自分のドレスに手をかけてバサッと剥ぎ取る音がする。
シルエットだけに想像をかき立てられるクルーが続出した!!!

遠くのアララギ『プロトカルチャー!』
いや、そんなこと言ってないって(笑)

そして再びスポットライトが着くと、そこにはなんと!!!

ウリバタケ「おっと、なんと二人はスクール水着にチェンジを!!!」
アカツキ「いや、それはあんたの願望だって(汗)」

もちろんスクール水着などではなく、普通の水玉模様のワンピースである。
ルリが水色、ラピスが薄紅色である。
そして間奏が終わる頃、再びカメラはルリ達ではなく、アキを捉え始めた。



宇宙空間・エステバリスのコックピット


再び映像はアキを映し出す。
だが・・・

遠くのリョーコ「なんだ・・・水着じゃないのか・・・」

当たり前である。ただ稽古をしているだけのアキが水着になるはずはない(笑)

で、歌は引き続き続くのであった・・・

ルリ『傷をなめ合うのもいいかもね〜♪
 自分の痛み和らぐようで〜♪』
リョーコ「傷をなめ合う・・・か。
 確かに和らぐ気はするけど・・・気休めだよなぁ・・・」

リョーコはボソッと呟く。
確かに自分はそんなに劣ってはいないさ、と嘯いてひととき心の平穏を求めても、それは途端に心を蝕む。
そんなことはわかっている。
わかっているんだけど・・・

ラピス『無傷のまま夢は見れないよ〜♪』

無傷のまま?
・・・そうだ。無傷のまま夢を手に入れようなんて虫が良すぎる。
傷つくことを恐れちゃ何もできない。
彼女ならそうしたであろう。
そして彼はそうしている。
その狭間で自分は傷も付かずに夢を見たいと言っているのである・・・

ルリ『カゲキかな♪
 ちょっと無茶なこともやってのけるのは〜♪』
ラピス『弱気な自分、背中を押して行こう〜♪』

リョーコ「背中を押そうったって・・・」
その勇気が出ないのだ。
どうすれば・・・

リョーコはその曲にダブるように藻掻き、そして前へ進もうとする姿を見せるアキの姿を眺めていた・・・



Yナデシコ・ブリッジ


ルリ&ラピス「この胸の先にある夢(はな)〜ROSE BUD♪
 I was born to you〜♪」

と、ここで曲は終わった。
ちょうどアキの演舞も曲と同時に終わる。
そして彼女はまた精神統一のための自然体へと戻った。
その彼女からはズームアウトしながら、ルリとラピスの祈る横顔にカメラがパーンし、そして静かに画面は暗闇にフェイドアウトしていくのであった。

熱唱したルリとラピスは少し顔が上気していた。
と、そこに・・・

パチパチパチ

アキト「二人とも凄かったよ♪」
ルリ「アキトさん・・・」
ラピス「・・・ありがとう」
二人は今更ながらに自分のやってしまったことに気づいたみたいだ(笑)
少し真っ赤になってうつむく二人。

アキトはアキの稽古シーンを飾るように演出した二人の心遣いを感じて嬉しくなった。
そして彼女達が何故あの歌を選んだのか、何となくわかった気がした。



Yナデシコ・訓練施設


アキ「あ〜〜いい汗かいた・・・ってなんか忘れている気が・・・
 あああああああ!!!!!
 そういえば襲撃の時間が!!!」

訓練に夢中になって前の世界ではそろそろ木連からの攻撃があるということをすっかり忘れているアキであった。

もっとも気づいていても、ナデシコ中でアキに対するヤンヤヤンヤの声援があって身動きがとれなかったであろうが(笑)



宇宙空間・エステバリスのコックピット


リョーコはしばらく放心状態であった。
もちろん、アキの姿に見惚れていたというのもある。
しかしもっと・・・そう、その抗う姿勢に憧憬の念と同時に目を背けている疚しさを感じていたのだ。

『あたしは一体どうすれば・・・』

そう呆然としていたその時である。

遠い宇宙空間にチカチカ光るモノがある。

「なんだ?」
慌てて目を凝らすリョーコ
よくよく見るとそれは二つのライトらしきモノであった。
それはチカチカと点滅しているのがわかった。

その意味を彼女はしばし呆然とした頭で考える・・・
何かに似ているのだが・・・

「あ!!!!!!!!」

そう、宇宙空間ではクラクションを鳴らしても音は伝わらない。
だからヘッドライトで警告を送っていたのである。
慌ててスクリーンにその光を大写しにする。

「ひ、人!?」
それは大きいロケットのようなモノに簡単なポッドを付けた代物だった。
そのポッドは剥き出しのキャノピーがあり、中の人間が『こっちに気づけ、ぶつかるぞ!』ってな形相で必死に警告を送っていたのだ。

・・・っていうか通信してこいよ、お前ら(苦笑)

「な、なんで!!!」
リョーコは咄嗟にどうしようか方法を思いつかなかった。
ただ、相手のロケットは回避を諦めたのか、ポッドを切り離した。
ロケットの部分がまっすぐリョーコのエステの方へ直進してきた!!!

「んなろぉ!!!」
リョーコは思わず手を出した。
考えたことが素直に動きに現れるIFSである。
エステも同じ動きをし、ミサイルを手で防ごうとした。
もちろん、そんなことでよけられるはずもなく・・・

ドカーーーン!!!!

ミサイルがリョーコ機を直撃した。



Yナデシコ


エステのコンピュータはナデシコに直結している。
当然リョーコ機被弾の知らせはナデシコに届き、そして警報が鳴った。
もちろん一番星コンテストは一時中断し、敵機迎撃に向かった。

アキ「まずはリョーコちゃんの安全確保!その後、敵の陣容を見極める。
 それまで深追いはなしよ!」
一同「了解!」
アキト「なんで気づかなかったんだ!」

エステで出撃するアキ、ヒカル、イズミ、そしてアキト。
アキトはリョーコ一人を哨戒に出させてしまった自分の迂闊さを呪った。

何がみんなを守るために強くなるだ!
リョーコが何か言いたそうにしていたことになぜ気づかなかったんだ!

アキトは思わずリョーコに通信を送った。



宇宙空間・エステバリスのコックピット


「コイツら、ふざけたモノに乗りやがって!!!」
リョーコは片手を失ったエステで襲いかかってくるミサイルを必死に撃破しようとしていた。幸い、最初の直撃は左腕を失っただけで機体そのものは無事だった。

だが、どうしても躊躇う。
なぜなら目の前のロケットには中に乗っている人が見えるポッドが付いている。
彼女の敵が木星蜥蜴などという正体不明のモノではなく、ハッキリと人間とわかるからだ。
そして、今まで人間同士の戦争をしているつもりが毛頭なかったリョーコにとってそれはショックなことだった。

アキトが月面で戦っていたのはこういう感覚なのか・・・

改めてリョーコはその恐怖に戸惑った。
初めはゲームの英雄気取りでエステに乗った。
謎の無人兵器から地球を守る・・・その為に腕を鍛えるのは苦ではなかった。
でも、これはゲームなどではなかった。
目の前の人間を殺すこと・・・それが本当の戦争だった。
月面の出来事からこっち、頭ではわかっていたが、心はわかっていなかった。
それがこの体たらくだ!

アキトはとっくにそんな覚悟をして戦っているというのに・・・

その時である、アキトから通信が入ったのは。

アキト『リョーコちゃん!どうして一人で出撃なんかしたんだ!!!』
リョーコ「うるせぇ!!!」
リョーコはアキトの通信に動揺し、ミサイルを一機見逃してしまった。
慌てて追いかけて破壊する。

乗っていたパイロットは!?
思わず確認する・・・大丈夫、ポッドは離脱したようだ・・・
その安堵が思わずリョーコに本音を語らせた。

リョーコ「あたしには戦うことしかないんだよ!」
アキト『リョーコちゃん・・・』
リョーコ「あたしには艦長やルリや隊長みたいな戦争以外に輝けるものはない!
 やれることと言えばエステに乗ることぐらいだ。
 エステに乗るぐらいしか・・・」
アカツキ『いいじゃないか、それが君の一番星だ!
 胸を張ればいい』
リョーコ「いいわきゃないだろう!
 あいつらだって人間なんだ。
 このまま戦うって事は人殺しをするって事なんだよ・・・」

リョーコは吐き出すように言う。
それはナデシコクルーが考えないようにしていた事実そのものだった。

リョーコ「やっと見つけた一番星も結局は人殺しだった。
 そしてそれすら隊長の背中を眺めているだけ。
 アキトにゃ追いつかれる。
 仕舞いには、人殺しを恐れてブルってる!
 あたしにはなんにも残っちゃいない・・・
 こんな自分なら、なくなったっていいさ!!!」

最悪の気分だった。
何もかも捨ててしまいたい。
このまま戦場で果てるなら、醜く墜ちて行くならいっそこのままの方がいいと思った。

でも・・・アキはこう言う。

アキ『優秀な戦士・・・もしそんなものになろうと思うならより多くの敵兵を殺すしかない。特に私なんかに憧れるならその道を歩かないといけないわよ?』
アキト『アキさん・・・』
リョーコ「隊長、そんな・・・」

アキの言葉にアキトも、そしてリョーコもショックを受ける。
いや、ナデシコのクルー一同もそうだった。
それは彼女が取りも直さずそうしてきたことの裏返しだ。

でも・・・

続けてアキはこう言う。

アキ『でも、今でもそれ以外の方法で強くなれるんじゃないか・・・
 そう思って足掻いている。
 諦めたら、あの自分らしさに目を背けていた頃に囚われ続けることになるから・・・
 自分らしく強くならなければ意味がないと思うから・・・
 大切なものを守るってそういうことだと思うよ?』

アキの言葉に、先ほどの彼女の演舞がダブる。
いや、ここまでの彼女の行動全てがそれを物語っていたから
だからこそ彼女に憧れたのに・・・

そしてアキトも言う

アキト『俺もだ。俺もナデシコを守りたい。
 強くなることがただ人を殺すことなのかどうかは、まだわからないけど・・・
 でもナデシコは俺の一番大切なものだから!
 アキさんがいて、リョーコちゃんがいて、ユリカやルリちゃんやみんながいる場所だから・・・だからそれを守るために強くなりたいと思っている。
 それだけじゃダメなのかい?』
リョーコ「アキト・・・」
ヒカル『あたしも!』
イズミ『右に同じ』
アカツキ『僕もだ』

仲間達は頷いた。

ヒカル『そりゃ、今は戦うことしか出来ないもん』
アカツキ『何故戦うかと問われれば、他に術を知らないからとしか言えない。
 でもそれで良いとも思わない』
イズミ『みんな迷っている。
 でも我が前に道なく、我が後ろに道なし。
 幸せは歩いてこない、だから歩いて行くんだね』

みんなの励ましにリョーコはようやく気づいた。

『そうだ。他人に誇れるもの、誰にも負けないもの、一番大事なもの
 自分だけの一番星だ』

父が言った言葉・・・あれは何も強くなったり、腕を磨いたりすることだけじゃなかったのだと。

リョーコ「よし!!!!
 招かれざる客をとっとと追い返すぜ!!!」
一同「了解!!!」
リョーコの迷いは吹っ切れるのであった。



木連戦艦・みなづき


こちらの方にもナデシコ側からエステバリスが出てきたのは気づいていた。

通信士「艦長、敵機動兵器が5機に増えました。」
副長「作戦を続行しますか?」
アララギ「いや、続けよう。
 ただし我々の目的はあくまでもデータ収集だ。
 無理はするな。必ず生きてデータを持って帰って来いよ!」
一同「はい!」

アララギの号令でみなづきは引き続き作戦を続行する。

正面に置いたチューリップにポット付きのミサイルを送り込み、任意の地点にミサイルを送り込もうという作戦である。
通常無人兵器はあるチューリップから侵入したら別のチューリップからしかゲートアウトできない。
でも跳躍体質の人間が通ればある程度の距離ならゲートアウトする側のチューリップがなくても跳べることがわかっている。
これがどれだけの距離を跳べるのか、どれだけの精度で跳べるのか、それを実験するのが彼らの目的だった。それが兵器として有用かどうかを検証することも含めて。

だが、レーダーの届かない範囲外から打ち込んでもかなり手前にしかゲートアウトできないところを見ると有用性はあまりないのだろう。

でも、アララギがなぜ作戦を続行したのか・・・

アララギ『データを持って帰るんだ。
 だって・・・あのふたりが優勝したかどうかわからないじゃないか・・・』

まさか、一番星コンテストのデータが欲しいなどとは口が裂けても言えないアララギであった(笑)

ちなみにアララギがホシノ・ルリファンクラブ木連支部会員ナンバー1を勝手に自称し、木連穏健派の秋山と先頭になって活躍するのはまだだいぶ先の話であった。



その後のナデシコ


もちろん、リョーコ達は木連のミサイルを全機撃破出来たことは言うまでもない。
まぁアカツキが椅子からお尻が抜けなくなって戦闘不参加とか、
アキトのエステがリョーコに押されて重力波ビームの圏外に漂流しそうになったとか、四方山話は色々ある。

が、全ては
「一番星、見つけたかな・・・」
という、リョーコの言葉で十分かもしれない。

さてさて、最後に皆さんの一番の関心事、一番星コンテストの優勝者、つまり新艦長が誰になったかというと・・・

プロス「えっと最高得票は!」
一同「得票は?」
プロス「艦内の得票をほぼ全て集めましたアマガワ・アキさん、ホシノ・ルリさん、ラピス・ラズリさんペアです」
一同「おおおお!!!!」

予想通りの結果に艦内は沸き上がった。

が・・・

プロス「ですが・・・・」
一同「ですが?」
プロス「コンテストへエントリーされていない方への投票ということで全て無効票扱いとさせていただきました。」
一同「ええええ!?」
プロス「従いまして、有効投票のみを集計しましたところ、大半が1〜2票と続く中、なんと6票も確保されたミスマル・ユリカさんが艦長に再任されました。
 以上」
一同「なんと!!!!」

大どんでん返しにちゃぶ台をひっくり返すクルー一同であった(笑)

ジュン「さすが、ユリカ!バンザイ!」
アキ「あれ?アキト君も艦長に入れたの?」
アキト「入れたというか、入れないと付きまとわれそうで・・・」
ユリカ「やっぱりアキトは私が好き♪」
ルリ「計算通りですね♪」
ラピス「これでエリナ阻止!」

さて、ユリカに入れた六人が誰かはご想像にお任せします(笑)

えっと、こっそりとinverse編に続きます



ポストスプリクト


ということで黒プリ19話をお届けしました。

なんか、後半は強引にTV版に戻したような、戻していないような・・・
少し暴走気味ですがご容赦を(笑)

しかし、コンテストシーンですが、お正月の隠し芸と被る被る(汗)
あまり極端にTV版から離すことも出来ませんでした。

・・・・え?ホウメイとエリナを出した時点で十分に離れてるって?
しかもアララギ壊し気味だって?
申し訳ございません(大汗)

あと、おまけとしてinverse編も書きたいと思います。
そう、アイツらが艦長の座を争うってヤツです(笑)

ということでおもしろかったなら感想をお願いします。

では!

Special Thanks!!
・Dahlia 様
・AKF-11 様
・望月 コウ 様
・しろくま 様
・さゆりん 様
・三平 様
・kakikaki 様