アバン


開けちゃいけないパンドラの箱
そこにあったのは知らなくても良い真実
被害者は一瞬にして加害者になり、
自らの正義を一瞬にして見失う

でも戦う理由を見失ってはいけない
たとえそれが誰かが唱えた正義であったとしても
選んだのはあなた
それが正しいのか、間違っているのか選ぶのはあなた

だけど、憎しみは真実を見る目を曇らせる・・・

ああ、これってSecond Revengeのラストとほんのちょっぴり関係があったりしますのでそのつもりで〜



月面・連絡艇


アキは所在なげに窓の外を眺めていた。
ここは月面上を低空飛行する連絡艇の中。
操縦しているのはサリナ・キンジョウ・ウォンであり、彼女に半ば拉致された形で搭乗している。他にもラピスがニコニコ顔で付いてきていた。

「アキト君、大丈夫かしら・・・」
アキは消えてしまったコミュニケを恨みがましく見る。
さっきまでエリナとアカツキの木連の真実を語るシーンが映っていたが、さすがにナデシコから離れすぎてコミュニケの通信範囲から外れたようだ。

さてさて、あの真相を知ってアキトはどう思ったろう。
かつての自分のように木連に対して憎しみを燃やしたのだろうか?
それとも・・・・

と、アキが物思いに耽っていると、こちらでは別のことで盛り上がっていた。

サリナ「ラピス、ちゃんとアキセカンドのデータ持ってきた?」
ラピス「問題ない。ちゃんと持ってきた」
サリナ「レイの方のデータも?」
ラピス「レールカノン制御用のAIでしょ?持ってきたよ」
サリナ「んじゃ、時間がないからデータを転送して。
 2研のサーバーへのパスコードを送るわ。
 もう通信が繋がるはずよ」
ラピス「了解。・・・・ログイン完了。
 セキュリティーシェル起動。直ちにデータ転送を開始する」
サリナ「転送が終わったらさっそくデータコンバートを開始して。
 リモートでバッチを流せばいいから。
 ここの端末でやるより万倍早いし、リソースは開けさせておいたから」
ラピス「了解。今から作り始める。5分で出来る」
サリナ「マニュアル読むだけでフィルタースクリプト作れる?」
ラピス「サリナ、私をなめてない?」
サリナ「なめてないけど、アクチュエータとかジェネレータの特性とかかなり違うから気を付けて。一応変換パラメータは実験データで出ているけどあまりあてにしないで。
 気持ちそのデータよりかはピーキーに出来ていて調整しづらいから。
 まぁ最終的には本人乗せて実機で微調整しないといけないんだけどね。
 調整しやすいようにしといてよ」
ラピス「大丈夫。お母さんは私♪」

なにやら訳のわからない専門用語をバンバン飛び交わせて乙女達は打ち合わせに盛り上がっていた。
アキはなにやら触れてはいけないモノに引き込まれそうな気がして不安げに感じた。

アキ「二人とも・・・何をやっているの?」
ラピス「アキのドレス作ってるの♪」
アキ「ドレス!?」
サリナ「比喩よ。でもまぁその表現はぴったりね。
 まだ未完成だけど・・・」
アキ「未完成!?」

アキはその言葉に不安を感じる。
未完成って一体何!?

サリナ「まぁ未完成って言っても、もうほとんど組み上がっているわよ。
 動作チェックだってやってるわ。
 いきなり爆発なんかしないから心配しないで」
アキ「心配って・・・でも未完成だって」
サリナ「オーダーメイドの服はたとえ標準サイズで出来上がっていても実際着る人のサイズに合わせて調整しなきゃ完成品とは言わないでしょ?」
アキ「ああ、そういう完成していないって意味ね(汗)」
サリナ「まぁでも全部最新デバイスだから本当に問題なく動くかどうかはやっぱり実機評価しないとね♪」
アキ「おい・・・」

だんだんイヤな予感がする。
が、この二人は一体何を作っているのだ?
聞くのは恐ろしいがアキは恐る恐る尋ねることにした。

アキ「あなた達は一体何を作っているの?」
サリナ「この世に1機だけ、アマガワ・アキの為に、アマガワ・アキの能力を100%引き出すことを目的に作成された黒水晶の乙女・・・」
アキ「黒水晶の乙女?」
サリナ「そう、開発コードネームは『Princess of Darkness』・・・闇の姫よ」

サリナはニッコリ笑い、ラピスは向こうで親指を立てた。
だが、一人アキだけは何が起こるのかさっぱり理解できないでいた(笑)

サリナ「それよりも・・・着いたわよ、2研に」
アキ「あれは!?」
アキは連絡艇の窓から見える光景に驚いた。

アキ「なに、あれ!?」
サリナ「私達は九頭竜と呼んでいるわ。」
アキ「九頭竜?」

そう上空から見たらまるで頭が9つある竜のような建造物が放射状に発生している。

サリナ「それっぽいでしょ?工場は1研の縄張りだから2研はこんなに離れた今は使っていない施設にラボを構えることになったの。
 まぁ今回はどうしても月面じゃないと精錬できないパーツがあったんでわざわざこっちで最終の組み立てを行ったんだけど、普段は地球のラボで作っているのよ」
アキ「・・・こんなところで一体何をしようって言うの?」
サリナ「だ・か・ら、PODのデビュー戦♪
 ド派手に行くわよ♪」

サリナはうれしそうに笑うがアキは絶対自分が大変なことに巻き込まれるであろう事を予感せざるを得なかった。



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第16話 「僕たちの戦争」を始めよう<inverse編>



ユーチャリス・ブリッジ


さてさて、ところは変わってここは奥さん'sの住まう機動戦艦ユーチャリス。
なぜか月面にステルスフィールドを張って隠れていた。

Blue Fairy「やられましたね。敵は直接アキトさんに干渉してきました!」
Snow White「え?アキさんじゃなく?」
Blue Fairy「ええ。ここです」

Blue Fairyは画像を一時停止させて現象を見せる。
ダイマジンがボソンジャンプして再び現れるシーンである。

Actress「これが?」
Pink Fairy「あ、ダイマジン、入れ替わっている」
Actress「え?本当!?」
Secretary「・・・よくわからないわよ?」
Blue Fairy「入れ替わったのは太刀筋からみて・・・多分北辰!」
一同「え!?」
Blue Fairy「こんな事なら無理矢理ホワイトサレナでつっこんで助けるんでした!」
ガイ『だから俺達に出撃させろって言ったんだ!!!』
Blue Fairy「外野はうるさい!!!せめてそのゲキガンガーを上手に歩かせられるようになってから大きな口を叩きなさい!!!」
ガイ『・・・・済みません』

画面の向こうであんよは上手をしているガイは叱られてしょげる。

Actress「でもなんでアキさんじゃなくてアキトさんなの?」
Blue Fairy「都合が悪いからですよ」
Actress「都合が悪い?」
Blue Fairy「『始まりの人』は『時の記述』通りに元の歴史をなぞろうとします。
 もしここでアキトさんの心がアキさんに鍛えられて闇の王子様になる要素を失った場合、後の歴史は狂います。
 最終的に『始まりの人』がどんな歴史に染め上げたいのかわかりませんが、彼にとってアキトさんとアキさんは表裏一体、どちらかが光に近づけばもう一方を闇に染めようとします。」
Secretary「確かに、っていうか余計悪くなっていない?」
Pink Fairy「かもしれない。このままだとアキト、木連の存在そのものを容認しなくなってしまう」
Blue Fairy「・・・そうなんです。頭の痛い話です」
彼女達は頭を抱えた。

イツキ『でも、何でしたっけ?ボソンジャンプでしたっけ?
 あれを使って私を助けたようにあの女将さんを救えなかったんですか?』
Blue Fariy「死ぬ予定の人は救えません。」
イツキ『でも私も死ぬ予定の人間じゃ・・・』
Snow White「そうなんだけど、あの人はボソンジャンプに耐えられる体じゃないの」
イツキ『あ・・・』

そう、イツキを救えたのはイツキがジャンパー体質だったためである。
殺される瞬間、ボソンジャンプでキャッチアップすれば救える。
でも、ジャンパー体質でない人を同じ方法で救うことは不可能だ。
敵はそれを逆手にとってわざわざ一番影響の大きい殺し方をした。
相対としての歴史に影響はない。
だがアキト個人に与えた心的ダメージは計り知れない。

Secretary「でも、そんなに奇麗にダイマジンをボソンジャンプの瞬間にすり替えられるなんて芸当が出来るの?」
Blue Fairy「出来ると思いますよ。
 何せ『始まりの人』はボソンジャンプを作り上げた人です。
 遺跡装置への抜け道はいくらでも用意していたでしょう。
 それよりも・・・」
Snow White「それよりも?」
Blue Fairy「北辰を配下に入れてます。草壁もクラックされているか不明ですが・・・これからどんどんこの歴史に干渉してきます。こちらも本腰を入れないと・・・」
Secretary「じゃ、次は誰がターゲットに?」
Blue Fairy「多分、アキさんでしょう・・・」

彼女はそう答えた。
折角闇に染まりつつあるアキト
それを元に戻せるとしたらアキの存在しかないからだ・・・

Blue Fairy「あの三人が使い物になればやりようはあるんですが・・・」
ガイ『心配するな!この俺様の華麗な技を見ろ!
 ガ〜イ・スーパー・・・・・・・ドンガラガッシャン!!!』
Blue Fairy「何とかして」
一同「あはは・・・(汗)」

彼女達は横目で本日3回目の「ガイ・スーパーナッパー」の失敗を見て溜息をついた(笑)



???


「で、次はどうすればいい?」
「アマガワ・アキが九頭竜に向かったそうだ」
「ほう、我が生涯の伴侶がか。そこを襲えと?」
「足止めは出せ。だが、お前自身は別の仕事をしてもらう」
「ん?」
「テンカワ・アキト。ヤツにもう一押しする」
「そんなこと、お前がすればいいだろう」
「俺には表の顔がある。今もこのディスクをダビングして艦長に持っていかなければいけない」

彼はそう言って笑う。
不敵な笑いだ。
その顔を見ると北辰は忌々しげな表情をしたが、作戦行動を取るために姿を消した。

「全ては在りし日に戻るため・・・」
彼は呟くとダビングし終わったディスクを取り出し、次のディスクを差し込む。次のディスクには『ゲキガンガー3第13話『聖夜の悲劇、サタンクロックM』と書かれていた・・・。



ネルガル・開発部第2研究課・月面ラボラトリー「九頭竜」


アキ「マスドライバー!?」

研究所を案内される道すがら、アキはこの研究所の元々の役割を聞いて驚いた。

サリナ「あらやだ、知らないの?」
アキ「面目ない・・・」
ラピス「マスドライバー、質量射出装置。
 その昔、宇宙コロニー建設ラッシュの際、鉱石などの質量物を宇宙にあげるコストを削減するために月の重力が地球の6分1と低いことに着目して建造された。
 原理はレールカノンとほぼ同じで当初は電磁誘導の加速装置が、現在では重力加速装置により高速に質量物を射出できる施設である。
 月に設置されたそれは月の重力圏を脱出できるほどの初速で発射でき、ラグランジュポイントへの月鉱石の搬送を低コストで実現させることに成功した・・・」
サリナ「このくらい常識でしょ?」
アキ「いやぁ、そっち方面に疎くて(汗)」

やれやれとサリナは説明を続ける。

サリナ「やがて宇宙のあらゆる場所へ鉱石を送れるように発射口は一つ増え、二つ増え、最終的には9つの射出口を持つことになった。
 故に人々からは九頭竜と呼ばれているわ。」
アキ「へぇ・・・」
サリナ「でも、やがて小惑星帯へ航行が可能になると直接小惑星を引っ張ってきた方が安上がりって事になって、この施設もほとんど稼働することは無くなったの。」
アキ「ああ、サツキミドリ2号とかがそれなのね」
サリナ「だからネルガルはその跡地を2研のラボにしたの。
 巨大な加速装置もあるし、いざとなれば九頭竜を使って月面の全域、あるいはそのまま宇宙に物資を送れるしね。」
アキ「ふう〜ん」

アキはこの施設の生い立ちになるほどと感心した。
だが、疑問は残る。

アキ「でも1研、2研ってなんのこと?
 研究するなら別にここでなくても向こうの月工場でもいいじゃないの」
サリナ「1研と2研は犬猿の仲なのよ!!!」
アキ「犬猿?」
なにか触れてはいけないモノに触れてしまったのか、サリナは突如として声を荒げる。

サリナ「第1研究課は主に戦艦を、第2研究課は機動兵器を開発しているの。
 けど、ネルガルは元々重船工業で発展してきた会社だから造船関係・・・つまり1研のエリート意識が強いの。2研をいつもおまけ扱い!
 機動兵器は我々の作った戦艦のおまけ、付属物だ。せいぜい戦艦が売れるようなオプションを作ってくれよ・・・っていうのよ!?
 もう嫌みったらしいったらありゃしない!
 おまけにもう工場には場所がないから、この廃墟を使えですって!
 頭にくる!!!!」
アキ「あ・・・・・そういうこと」

なんとなくアキにもわかった、会社内の勢力争いって奴である(笑)

サリナ「まぁそれでも今までは専門が違うから表面上はぶつかることはなかったけど、あいつら、なんと機動兵器に手を出し始めたの」
アキ「機動兵器って・・・エステバリス?」
サリナ「そう、あの月面フレームよ。
 相転移エンジンをつけんが為にサイズがべらぼうに大きくなってしまった。
 しかも私達に何の相談もなしにエステバリスブランドをつけるの!!!」
アキ「なんでまた・・・」
サリナ「相転移エンジンは奴らのテリトリーだからね。その開発は自分たちでやるって譲らないの!!!
 『お前達には相転移エンジンなんて未知のテクノロジーは扱えないだろう(笑)』って蔑んで・・・むかつく!!!!」
アキ「あ・・・そう・・・」
サリナ「まぁ独自ブランドを作るならまだしも、開発期間が少ないとか理由を付けてエステバリスのアサルトピットや制御システムを寄越せっていうのよ?
 あれ、絶対に人型機動兵器の制御システムを作る自信がないから私達からかっぱらっていっただけなのよ。
 なのに相転移エンジンにレールカノンが付いていて最高の機動兵器でございって言うのよ?むかつくでしょ!!!」
アキ「あはは・・・そりゃむかつきますねぇ・・・」

捲し立てるサリナに促されるように同意するアキ
だが、大体理由はわかった。

アキ「つまり月面フレームがアキト君の力で初披露され、敵の新型機動兵器を曲がりなりにも撃退してその真価を問うた。
 当然相対評価により2研の存在意義も危うくなる。
 だから対抗策として2研でも新しいエステバリスのお披露目をやりたいと・・・」
サリナ「ご明察♪
 話がわかるようになったじゃない♪」
アキ「あはははは・・・・はぁ〜」

とんだことに巻き込まれたものだと溜息をつくアキ。
だが、サリナはウインクする。

サリナ「大丈夫。たとえ理由は何であろうとも、
 作られたモノは正真正銘あなたの為のものよ」
アキ「で、それで私に大活躍しろと・・・」
サリナ「後悔はさせないわ。あなたもあの子を見れば考えが変わるわよ」
アキ「そうですか?」
サリナ「まぁいいわ。自分の目でご覧なさい」

サリナは怪しがるアキに実物を見せるべく、到着した格納庫への扉を開いた。



九頭竜・格納庫


アキは目に飛び込んだ光景に驚いた。

アキ「・・・・え?
 えぇ!!!!!!」
ラピス「奇麗♪アキにピッタリ♪」
サリナ「でしょ?」

そう、目の前にあったのはまるで宝石でもちりばめたようにキラキラ光るエステバリスであった。それはまるで黒水晶で出来ているのでは?と思わせる仕上がりである。
そして機体そのものは無粋さや無骨さを感じさせない、機体の装甲ライン一つ一つに気品と柔らかさを備えた美しい仕上がりだ。
芸術品と言っても良い。
黒水晶の乙女とはよく言ったモノだ。

アキ「これが?」
サリナ「そう、チューリップクリスタルの装甲化にはじめて成功した機体。
 エステバリス・ゼロG戦フレーム・アマガワアキスペシャル Third Edition 通称『アキサード』
 だけどラボのみんなは『Princess of Darkness』って呼んでいるわ。
 月面フレームなんて目じゃないわよ♪」

アキはその機体を見上げて感嘆の声を上げるしか出来なかった・・・



月面・九頭竜付近


だが、アキ達が新型エステバリスで浮かれている頃、近くを巨大な機動兵器が飛行していた。
その機動兵器はまるで頭部を三度笠のようなもので覆われたマジンタイプの改造機のようであった。
総計4機
それが九頭竜に迫りつつある。

もうすぐ九頭竜の警戒システムに警報が入るのは必至だった。



ユーチャリス・ブリッジ


異変はユーチャリスにも届いていた。

Blue Fairy「先手を打たれました。敵はもうアキさんを狙うつもりです」
Snow White「うそ!?」
Blue Fairy「ホワイトサレナを出します!Pink Fairy、準備を」
Pinik Fairy「了解」
Secretary「待ちなさい!」
Blue Fairy「なんですか!」
Secretary「こっちの人間に私達が手を出せないって言ったのはあなた自身よ!
 介入できないどころか、歴史を最悪の方向に動かしたらどうするつもり」
Blue Fairy「でも襲われるのはアキさん・・・アキトさんですよ。
 あの三人組が当てにならない以上、私達がやらないでどうするんですか!」
Secretary「だから頭を冷やして考えろって言ってるのよ」
Blue Fairy「考えている内にアキさんが・・・」
Snow White「二人とも争うのは止めて・・・」

なんか普段とは抑える方と逸る方が逆転しているなぁ・・・と思いながら、Actressは思い出したように報告をする。

Actress「あ・・・その三人組ですけど・・・」
Blue Fairy&Secretary「あいつらが何!!」
Actress「え〜ん、怖い〜」
Snow White「あの三人がなんなの?」
Actress「置き手紙を残してます」
一同「置き手紙!?」

『俺の妖怪レーダーにビンビン反応がきた・・・
 もとい、俺の正義のハートに弱き者の助けを求める悲鳴が響いた。
 今から助けに行って来る!
    by.ダイゴウジ・ガイとゲキガンチーム』

Actressの報告に青筋の二、三本がぶち切れそうになるBlue Fairyさん(笑)

Blue Fairy「満足に歩けないくせに!!」
Actress「え〜追伸です」
一同「追伸?」

『追伸:心配するな。
 ヒーローは普段どんなに失敗していても、ぶっつけ本番で成功させるものさ。かの天空ケンもゲキガンフレアーをそうやって完成させ・・・』

Blue Fairy「キュウ〜〜パタン!!!」
Snow White「ちょっと、Blue Fairyちゃん!?大丈夫!?」
Actress「そりゃ卒倒しますよねぇ」
Secretary&Pink Fairy「確かに・・・」

一同の思いとは裏腹に、ガイ達はアキを救いに行ったのであった(笑)



九頭竜・格納庫


格納庫ではPOD(Princess of Darknessの略)の起動作業に奔走していた。

サリナ「起動シーケンスは?」
整備員「正常です」
サリナ「アキセカンドからの制御データの変換は?」
ラピス「大丈夫。もうすぐ終わる」
サリナ「あんた、ちょっとこっちに来なさい!」
アキ「あ、あたし!?」
サリナ「そうよ。IFSの調整とあんたのイメージングの応答速度を測定するわ」
アキ「測定するって!?」
サリナ「いいから来なさい!」

アキはサリナに引っ張られるとむき出しのパイロットシートのコンソールに手を突っ込まされた。

アキ「なにやってるの?」
サリナ「だから、PODをあなた専用に調整してるんじゃない」
アキ「私専用?」
サリナ「そう。本当はね、汎用性を求めるなら万人に扱いやすいように調整するのよ。IFSとかイメージ変換用のデータベースとか。
 でもそれだとどうしても細かいニュアンス、繊細なタッチ、微妙なコントロールが出来なくなってしまう。
 既製品の洋服は誰にでも着れるけど、必ずしも着心地のいいモノじゃないでしょ?
 だからオーダーメイドの服はその本人の体型をきっちり計って作る。
 でもあつらえた当人にしか着れないの。
 今やっているのはそういう採寸をしていることと同じなの。」
アキ「そ、そうなの?」
サリナ「あのねぇ。
 たとえばあなたが無意識にやっている歩くときの筋肉の使い方と、走るときの筋肉の使い方は違うでしょ?」
アキ「まぁ・・・」
サリナ「全力疾走をして一瞬で止まり反転する。その一連の動きによって上手い下手が発生する。
 基本的にエステバリスは標準的な理想値で制御されるようになっているけど、それはあなたにとっての理想値じゃない。仮にあなたの走り方は一瞬も止まらずに右左に動ける走り方かもしれない。でも他人にとってはそれは走りにくいだけかもしれない。」
アキ「ほ〜お・・・」
サリナ「本来そういうのは機体の性能を上げて個人の特質を吸収していくように調整するんだけど、あなたの場合はそうはいかない。
 私達の技術水準を凌駕している」
アキ「んな大げさな」
サリナ「大げさじゃないわよ。
 それが証拠に・・・・
 ラピス、パラメータは脈動してもいいからもっと絞って。この人、IFSの反応速度に追いつかない方が問題らしいから。」
ラピス「この制御系でもぶれちゃうよ」
サリナ「大丈夫。この人はそんなの力でねじ伏せちゃうから。
 それよりもっとアグレッシブに反応するように調整して」
ラピス「・・・了解」
サリナ「わかった?」
アキ「わかったようなわかんないような・・・」
サリナ「わからないなら、そこのシートに座ってシミュレーションやって」

やっぱり専門用語乱発の説明でわからなかったのか、百聞は一件にしかず、IFSの調整も兼ねてシミュレーションをやらされた。

アキが少し触ると、違いが実感できた。

アキ「なにこれ?まるで手足の延長みたい!」
サリナ「どう?本当に正しく調整するとエステバリスはそこまで追従するの。ただ汎用性をなくすのを恐れてそこまでしないだけ」
アキ「ふぅ〜ん。でもはじめて操縦する割にはやけにしっくり来るわね。
 普通初物はこう、違和感とかあるんだけど・・・」
サリナ「ああ、それはアキセカンドのデータを移植しているからよ」
アキ「え?いつの間に!?」
サリナ「さっきラピスが連絡艇の中でデータ変換してたでしょ?」
アキ「あの・・・ログオンがどうとか、リモートでパッチがどうとか?」
サリナ「そうよ。あとはマニュアル見ておいて。とりあえずスペックと兵装のところだけでいいから」

アキはシートから降ろされるとマニュアルを渡される。
それを見たアキは驚く。

アキ「スタンドアローンの駆動時間がノーマルのゼロG戦フレームの三倍?
 この細さで?」
サリナ「そうよ。新開発のCC組成の装甲のおかげね。あのキラキラ光る装甲がそうよ」
アキ「あれって趣味だったんじゃないのね」
サリナ「当たり前じゃない。装甲自体がバッテリーになっているの。おかげでレールカノンの装備が可能よ」
アキ「うわぁ、本当!しかもコンパクト!」
サリナ「威力は月面フレームのモノより落ちるけど命中精度は抜群!
 おまけにフィールドランサーを砲身の所に装備してるわ」
アキ「ふぃ、フィールドランサー!?」
サリナ「あなたの所の整備班長が遊びで作っていたのを設計図もらって追加してみたの。ディストーションフィールドに負荷をかけてショートさせられるわ」
アキ「すごい・・・」

アキは正直驚いた。この時代にこれだけの機体が作られようとは。
残念ながらボソンジャンプが可能な機体になるのはまだまだ先だろうが、着眼点は悪くない。ブラックサレナの原型となる機体と言ってもいい。
だが、気になる点が一つ・・・

アキ「けど、この背中に付いているのはなに?」
サリナ「あ、いいところに気が付いたわね♪」

それはPODの背中から生えてる二つのユニットである。この位置に取り付くパーツの意味が分からない。武器ではなさそうなのだが・・・

サリナ「教えてあげるわ。ラピス!」
ラピス「あいよ」
サリナが指を鳴らすとラピスはコンソールを操作する。
すると・・・

スルスル・・・
バサ!!!
フサァ・・・

アキ「は、羽!?」
サリナ「どう、まるで天使の羽みたいでしょ♪」
ラピス「アキにピッタリ♪」

そう、PODからはまるで天使の羽のような白いヒラヒラの物体が現れた。
アキはおよそ機動兵器らしからぬモノが現れてあんぐり口を開けているが、女性二名は大層喜んでいるようだ。

アキ「待てぃ!!!アレは何なの!?」
サリナ「何って、重力波アンテナ」
アキ「重力波アンテナが何であんな形状なの!!!」
サリナ「まぁパイロットスーツに使っているナノマシーンの応用ね。コットン状のシートをナノマシーンで覆っているの。自在に変形でき、常に最適な状態で重力波をキャッチできるわ♪」
アキ「にしたって!!!」
サリナ「大丈夫、パイロットのイメージ次第でいろんな形に変化するわ。あれはラピスの趣味でデフォルト指定にしたみたいね」
アキ「なんですと!?」
ラピス「削除したらラピス泣いちゃう」
アキ「・・・・(泣)」
どうやら常に天使の羽をつけて戦わなくてはいけなくなったらしいアキであった(笑)

と、のほほんとした空気はここまでだった。

整備員「主任、敵機動兵器接近!!!」
サリナ「なに!?」

その報告で正面スクリーンに映像を映すと、そこには三度笠を頭部に着けたマジンタイプが接近していた。

アキ「ち、六人衆か!!!
 PODは出撃出来そう?
 出来るならこのまま出撃を・・・」
サリナ「ちょっと待った!」
そのまま出撃しようとするアキを押しとどめてサリナは指示を出し始めた。

アキ「なによ・・・一体」
サリナ「ビンゴ!予想通り♪
 ねぇ、加速チャンバーの加圧は順調?」
整備員「はい、OKです。」
サリナ「ルート算出、目標は1研のある月ネルガル工場よ」
整備員「了解!」
サリナ「ラピス、PODはストライクモードに移行」
ラピス「了解」
するとPODのウイングは紡錘形に変化して機体そのものを覆った。

アキ「何をしてるの、敵が来ているのよ?」
サリナ「残念、月のネルガルドックにも敵が現れたようよ」
アキ「え?もう!?」
サリナはまるで競馬中継を聞いているおじさんのように耳のイヤホンを指さした。どっかで盗聴していたらしい。

アキ「こら待て、何をするつもり?」
サリナ「向こうでは月面フレームが迎撃に当たるけど、苦戦は必死!
 そこに私のPODが彗星のように現れて敵をバッタバッタ薙ぎ倒す♪
 どう、しびれる展開でしょ?
 まぁこっちに敵が来るってのは予想外だけど・・・モウマンタイ!
 これで来年度の予算はばっちり♪」
アキ「待たんか!!!目の前の敵はどうするのよ!!!」

無責任にヒロイックな活躍を求められても、襲われているこの施設はどうするつもりなのだ!?

サリナ「大丈夫、防衛システムもバリアもある。
 5分保てばPODを射出できるわ。
 PODさえ活躍すればこんな施設なんてポポポイのポイよ」
アキ「っていうか、そう言う問題じゃないでしょ!!!
 ・・・って射出って何?」

アキはふと嫌な単語がサリナの口から出たことに気づく。

サリナ「ヒント、ここはどこでしょう」
アキ「九頭竜・・・・
 ま、まさか!?」
サリナ「たぶん、そのまさか♪」
アキ「ちょっと待て!!!
 さっきからルート計算とかってまさか、使う気なの?
 『マスドライバー』を!!!」
サリナ「ピンポンピンポン♪」
アキ「しかも紡錘形ってPODを打ち出すつもりか?」
サリナ「ご名答♪なんだ、わかってるじゃない〜♪」
アキ「う、うっそ!!!!」
アキが絶叫するのは無理もなかった。

マスドライバーは月の鉱石を宇宙空間に加速度をつけて射出するモノだ。逆を言えば、スピードを抑えれば宇宙空間には出ない。
軌道計算さえ合えば、直線上のどの地点にでも任意の物質を打ち込める。
しかも九頭竜のあだ名の由来のように射出口は9つが放射状に配置され、事実上月のどこにでも物資を打ち込める事になっている。
それでここから直接月ドックまでPODを打ち込もうと言うのである。

アキ「待ってよ、別にマスドライバーなんか使わなくても飛んでいけるじゃない。
 ゲインはゼロG戦より3倍もあるんでしょ?」
サリナ「飛んで行くだけならね。でもそのころにはエネルギーゼロでしょ?
 たとえ着いたところで戦えないわよ。」
アキ「発射の衝撃に機体が耐えられないかもしれないし・・・」
サリナ「大丈夫、そんなに初速はきつくないし、強度計算も十分」
アキ「PODまだ動ける状態じゃないし・・・」
サリナ「ラピス、そっちはどう?」
ラピス「いつでも出撃OK♪」
アキ「あの・・・ほら私は脇腹に怪我をしているから・・・」
サリナ「ICBMに乗ってマイクロブラックホール砲に向かっていった女が何を今更・・・」
アキ「だから人間大砲とは訳が違うわよぉぉぉぉぉ!!!」
サリナ「似たようなもんじゃない」
アキ「っていうか、あんたはじめっからそれが目的だったんでしょ!!!」
サリナ「あたぼうよ!じゃなきゃ最初っからナデシコにPODを搬入してるわよ♪」
アキ「射出されるのはイヤ!!!お願いだから許して〜!!!!」
サリナ「いいから乗るのよ!!!」

嫌がるアキと、乗せようとするサリナ
押し問答を繰り返すが・・・

ガッシャン!!!

整備班その1「バリアシステムやられました!!!」
整備班その2「ボソンジャンプで直接内部に侵入されました!!!」
整備班その3「射出口7番破壊されました!!!」
サリナ「・・・・・」
アキ「・・・・・・どうするのよ」
サリナ「えっと・・・・た、助けてもらおうかなぁ・・・」

いきなりピンチになって弱気になるサリナ

だが!!!

整備班その4「あ、あれは何だ!!!」
整備班その5「鳥だ!!!」
整備班その6「飛行機だ!!!」
整備班その7「ゲキガンガーだ!!!」
アキ&サリナ「え?」

騒ぐ整備班の指さす方を振り向く二人。
そこにはキラリと光る閃光が現れた。
どこからか例のテーマ曲が流れる。

『ここは俺達に任せな!!!』

チャットオンリーのウインドウが開いてそう宣言するのであった(笑)



ゲキガンガー3・オープニング


夢が明日を呼んでる〜♪
魂の叫びさ、レッツゴーパッション♪
取り戻せこの手に平和を〜
レッツゴーゲキガンガー3〜♪



月面・九頭竜付近


すっくと地面に着地する機動兵器。
それは紛れもなく原寸大のゲキガンガーであった。
もちろん暴れていたマジンも呆気にとられて攻撃の手を緩めた。

みんなの注目が集まっている隙を逃さず、ゲキガンガーはお約束の決めポーズを繰り出した。

『天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!
 悪を倒せと俺を呼ぶ!!!
 熱血の炎を瞳に宿し、唸る拳が悪を撃つ!』
そうチャットオンリーのウインドウがみんなの前に表示されるとゲキガンガーはギャ○ンダイナミックみたいな決めポーズを取る。

『天が知る、地が知る、人が知る!
 悪を裁けとワシを知る!!!
 辛抱と忍耐を心に秘め、老獪な知識で悪を切る!』
今度はゲキガンガーが相撲の雲竜型のポーズを取る。

『天が嘆く、地が嘆く、人が嘆く!
 悪を許すなと私を嘆く!!!
 あふれる慈愛を胸に秘め、月に代わってお仕置きよ♪
 PS.ご当地にちなんでポーズを変えてみました♪』
最後はゲキガンガーが某美少女戦士の決めポーズを取る(笑)

『愛と熱血と友情の人、ゲキガンガー3
 緑の地球(と月)を守るため、ただいま推参!!!』

ドーンと7色の爆炎がバックで彼らを飾った(←戦隊モノの登場シーンを想像して下さい)



ユーチャリス・ブリッジ


気絶から復活したてのBlue Fairy「キュウ〜〜パタン!!!」
Snow White「ちょっと、Blue Fairyちゃん!?大丈夫!?」
Actress「そりゃ卒倒しますよねぇ」
Secretary「確かに・・・」
Pink Fairy「っていうか、歩くのもままならないのはあんなポーズの練習をしていたからなのか・・・」

せっかく復活したBlue Fairyちゃんであるが、復帰5秒で再度撃沈しました(笑)
っていうか、Pink Fairyちゃん、その分析もどうかと思うぞ?
ヒーローは何故か第1回放送時にはじめて変身したにも関わらず、決めポーズを取るしなぁ(笑)



月面・九頭竜付近


『ゲキガンパーンチ!!!』
ゲキガンガーは右ストレートを近くのマジンに放とうとするが・・・

へろへろへろ〜〜

ガイ「おい、ちょっと待て!どっちに向いて走ってるんだ!?」
イツキ「そうです!パンチを繰り出す方向に走って下さい!」
フクベ「うるさい!パンチを繰り出すタイミングが悪いからバランスが崩れるのじゃ!」

右ストレート、左ストレート、繰り出すパンチをことごとくマジンにかわされるゲキガンガー。
いや、かわされるというよりは、そもそも当てに行っていないという見方の方が正しい。

まぁさっきまで歩くこともままならなかったのだ。無理もない。

でもその割には敵の反撃がない。
何故かというと・・・

六人衆その1「おい、どうして反撃しない?」
六人衆その2「だって・・・なぁ?」
六人衆その3「そうだよなぁ・・・(困)」
六人衆その4「だって本当のゲキガンガーだったら・・・どうする?」
六人衆その1「本当のゲキガンガーなわけあるか!!!」
六人衆その2「でも、あんな恥ずかしいポーズをわざわざ取るか?」
六人衆その1「確かに・・・」
六人衆その3「それに俺の持っている超合金ゲキガンガーリミテッドモデルにそっくりだ・・・(困)」
六人衆その1「そう言われれば似てるけど・・・」
六人衆その4「何より、あこがれのゲキガンガーに剣を向けられるか?」
六人衆その1「・・・・(困)」

まぁなんだかんだ言って、相手は殺し屋とはいえ木連人
ゲキガンガー魂は骨の髄まで染み込んでいたりした(苦笑)



ユーチャリス・ブリッジ


Snow White「うそみたい・・・」
Pink Fairy「うっし!狙い通り♪」
Actress「すごい!相手が木連人はゲキガンガーに憧れるあまり剣を向けられない。
 そのことまでを見越してあの機体をゲキガンガーそっくりに仕上げたのね?」
Pink Fairy「That's right!」
Secretary「・・・嘘つきなさい、趣味のくせに」
Pink Fairy「・・・・・・・・・・・・・・・・・・計算通り」
Secretary「その間は何だ、その間は!」

計算尽くなのか、それとも単なる偶然なのか、とりあえずゲキガンガー似の機体が役に立ったのだけは確かだった(笑)



九頭竜・格納庫


その呆れるほどのロボット大決戦(?)を目の当たりにして、サリナは一言呟いた。

サリナ「今の内にPODを発射しちゃいましょう(汗)」
アキ「いいのか!?アレに命預けて本当にいいのか!?」
あまりの無謀さに思わず聞き直すアキ
確かにいつやられてもおかしくないほど怪しい動きをしている機動兵器に命を預けるなんて正気の沙汰じゃない。

アキ「いいの?本当にアレに守ってもらうのでいいの?」
サリナ「いやぁ、そう言われると・・・」
アキ「悪いことは言わないから、私に出撃させなさい。」
サリナ「ダメよ、初志貫徹、PODを打ち込むわ!
 ぐずぐずしていたらあっちの戦闘が終わってしまう!」
アキ「そんなに来年度の予算が欲しいのか!!!」
サリナ「うるさい!!!彗星のように飛来するのはロボットモノのロマンなのよ!!!」
アキ「んなもんにロマンを求めるな!!!」
サリナ「いいから乗りなさい!!!」

というわけで無理矢理PODに乗せられることになるアキであった(笑)



月面・九頭竜付近


で、こちらはさっきから攻撃が一発も当たっていないゲキガンガー。

フクベ「くそ、敵は手強いのぉ」
ガイ「いや、爺さんがあっちの方向に歩くから・・・」
フクベ「なんじゃと!!!」
イツキ「わかりました!上手く行かない原因が!」

突然イツキが閃いたようだ。

イツキ「つまりフクベ提督が足を担当しているのが間違いだったんですよ」
ガイ「どういうことだ」
イツキ「フクベ提督、ギックリ腰でしたよね?」
フクベ「いや、大丈夫じゃ!!!」
イツキ「それで無意識に腰を庇って・・・」
フクベ「待て、ギックリ腰じゃないと言っておろうが!」
イツキ「それに、腕を担当したかったんですよね?」
フクベ「う!」(←これには密かに心動かされる)
イツキ「ゲキガンパンチもゲキガンシュートもやりたいですよね・・・」
フクベ「いや、そんなことはないが・・・」

確かにフクベは腕の操縦を担当したかった。
だが、自分の役割はガンガーマシーン3号である。
3号といえば、やはりゲキガンガーで足を担当する。
ガンガーマシーン2号機の腕担当、海燕ジョー役にはイツキの方がお似合いだ。
そう思ってずっと我慢していた。

だが、『一度は熱血切りをしたいのぉ・・・』
という願望が心の中で燻って操縦に迷いが生じていたのである。
それをイツキは指摘したのだ。

イツキ「提督、私が足を操縦します。提督は腕をどうぞ♪」
フクベ「・・・すまんのぉ」
フクベはイツキの行為に素直に甘えることにした・・・

操縦交代!!!

するとゲキガンガーの動きが見違えるように変わった!!!

イツキ「行きますわよ!!!」
ガイ「ちょ、ちょっと待て、イツキ!!!」
フクベ「な、なんじゃ!?」

やおらゲキガンガーは走り出すとジャンプをした!

イツキ「ゲキガンキック!!!」
六人衆その1「ぐはぁ!!!」
ゲキガンガーの跳び蹴りに吹っ飛ぶマジンその1

イツキ「百烈脚!!!」
六人衆その2「ぐはぁ!!!」
ゲキガンガーの連続蹴りに吹っ飛ぶマジンその2

イツキ「サマーソルトキック!!!」
六人衆その3「ぐはぁ!!!」
ゲキガンガーの回転蹴りに吹っ飛ぶマジンその3



ユーチャリス・ブリッジ


Snow White「あ・・・いい方法思いついたみたいね」
Actress「確かに腕や頭は足が敵に近づいてくれないとどうしようもないですからね・・・」
Pink Fairy「足なら接近と攻撃、両方出来るか・・・」
Secretary「ていうか、最初からイツキさんだけで良かったんじゃないの?」
Pink Fairy「・・・」
Blue Fairy「そういうことは私が気絶する前に言って欲しかった・・・」(←やっと気絶から復帰した)



月面・九頭竜付近


イツキ嬢によるゲキガンガーの足だけによる活躍は続く。
だが、当然足より上の担当が黙っちゃいない。

イツキ「ここは私だけでも頑張らなければ・・・」
ガイ「ちょっと待て、お前は足だけで戦うつもりなのか!?」
イツキ「足だけなら何とか敵に向かっていって攻撃できます!
 ここは私が踏ん張らなければ緑の地球が・・・」
ガイ「こらぁぁぁ!お前だけ目立とうとするな!!!」
フクベ「そうじゃ、ワシにも活躍させろぃ!!!」
イツキ「ちょ、ちょっと待って下さ・・・」

今度は手と頭が足とは別々に戦い出す。

ガイ「ゲキガンビーム!!!」
フクベ「百烈張り手!!!フンフンフン」
六人衆その4「ぐはぁ!!!」
六人衆その1「ぐはぁ!!!」

イツキ「それなら負けていられません!
 稲妻キック!」
六人衆その2「ぐはぁ!!!」

フクベ「ゲキガンソード!!」
六人衆その3「ぐはぁ!!!」
フクベ「ゲキガンパンチ!!」
六人衆その4「ぐはぁ!!!」

ガイ「ならば、俺も!!!ゲキガンサンダー!」
Pink Fiary『マ○ンガーの機能は入れていない』
ガイ「え?ならばゲキガンハリケーン!!!」
Pink Fiary『だから入れてないって』
ガイ「・・・・頭は目からビーム以外に武装はないのか!?」
Pink Fiary『それで十分でしょう』
ガイ「納得いかん!!!」

ガイの絶叫を横目に次々と必殺技を繰り出す腕と足であった(笑)



九頭竜・格納庫


画面には手足頭全部バラバラになりながらも敵と何とか戦っていた。
端から見れば大変コミカルだが・・・

サリナ「今のうちに飛ばしちゃうわよ!」
整備班「おぅ!!!」
あ、深く考えるのはやめたようだ。

サリナ「加速チャンバーにPOD装填」
整備班その1「了解」
サリナ「カタパルトは1番、5番、7番を経由して射出口5番に接続!」
整備班その2「接続完了です」
サリナ「5番射出口、仰角+0.3度、最終射出速度は+200m/hに補正」
整備班その3「了解!」
サリナ「ラピス、PODの最終調整は?」
ラピス「いい子に育った♪」
サリナ「うっし!アマガワ・アキ、行くわよ」
アキ「・・・もうどうにでもして(汗)」

既に弾込めされているアキは苦笑混じりに応答する

サリナ「レールカノンだけどスタンドアローン時には3発が限界よ。」
アキ「わかったわ」
サリナ「月面にぶつかる前に制動をかけるのよ。PODなら1秒前でも無理なく止まれるから」
アキ「・・・ご親切にどうも」
サリナ「んじゃ行ってらっしゃい!!!!」
アキ「ええい、南無三!!!!
 アマガワ・アキ、出ます!!!!」

アキの叫びに呼応してPODはマスドライバーのカタパルト内を弾かれるように滑走し始めた。



月面・九頭竜付近


光り出す九頭竜に今までいいようにゲキガンガーに翻弄されていた六人衆たちは本来の責務を思い出したようだ(笑)

六人衆その1「発射を阻止しろ!」
六人衆その2「おう!!!」
ガイ「やらせはしない!!!
 爺ちゃん、イツキ、協力しろ!」
フクベ「え?」
イツキ「なんですか?」
ガイ「ガンガー〜超電磁コマ!!!!」

ガイは叫びと共に友情パワーがみなぎる!
するとゲキガンガーはゲキガンソードを持ったまま両手を広げ、グルングルン回転し始めた!!!

ものすごい勢いで回転し始めるゲキガンガーはそのままマジン達の方に向かっていった。

六人衆その1「と、止めろ!」
六人衆その2「止めろと言っても!!!」

スパスパ!

うっかり近寄ったマジンの腕が奇麗さっぱり切られた!
そしてそのままマジン達にやたら滅多ら切り傷をつける!

六人衆その3「た、たまらん!」
六人衆その4「退却しよう!!!」
六人衆一同「あ、おう!(汗)」

あっさりマジン達を撃退することに成功したガイ達であるが・・・

ガイ「め、目が回った〜〜」
目を回したガイ達は目標を見失ったまま回転し続け、あらぬ方向に向かった。

その進む先にいたのは・・・



九頭竜・マスドライバー内


レイ『警告、進路方向右、大質量物質接近、このままですと射出口出口直前で衝突します』
アキ「なに!?」

制御AIであるレイ(こいつもアキセカンドから移植された)が警告する。
これから飛びだそうという第5射出口に回転したままのゲキガンガーが近づいているというのだ!!!

アキ「誰か、止めて!!!」
レイ『一度発射したら止められないと思います』
アキ「そんなイヤなこと言わないで!!!」
アキは思わず絶叫した。



月面・九頭竜付近


一方、回転しているゲキガンガーであるが・・・
イツキ「ガイ隊長、何とかして下さい〜〜」←目が回っている
フクベ「そうじゃ、お主がやったんじゃろう〜〜」←目が回っている
ガイ「無理だ。諦めよう」←目が回っている
イツキ「そんな無責任な〜〜」
ガイ「正義のための尊い犠牲だ!」
アキ『それはやめて!!!』
どっかでアキらしき絶叫が聞こえる中、諦めてガイがそんなことを言い出したそのとき!!!

Blue Fiary「尊い犠牲で済ますんじゃありません!!!」

どげしぃぃぃぃ!!!!!

ボソンジャンプで現れたホワイトサレナの跳び蹴り一閃!!!
首が変な方向に曲がったが、とりあえずゲキガンガーはあらぬ方向にぶっ飛んでいった。
アキ『た、助かった・・・』
吹っ飛ぶゲキガンガーを横目に眺めて射出口から撃ち出されるPOD
こうしてPODはからくも無事発射することが出来たのであった。



九頭竜・格納庫


その光景を呆然と見ていたのはサリナとラピスであった。
サリナ「・・・ゲキガンガーが回転して?」
ラピス「・・・なにか白いのが蹴り飛ばして?」
サリナ「とりあえず助かったの?」
ラピス「そうみたい・・・」
と、呆けていると、ゲキガンガーをワシっと掴んでフヨフヨ浮いている白い機動兵器がこっちの方を振り向くと、チャットウインドウを送り込んできた。
そこに書かれていた内容とは次のようなモノであった。

『ウチのバカがご迷惑をかけました。
 すぐさま回収致しますので犬に咬まれたとでも思って忘れて下さい。
 オホホホホ♪』

ラピス「ということらしい」
サリナ「・・・・・忘れようか?」
ラピス「そうね・・・」
理解を超えた現実の前にそう思い込もうとした二人であるが、本当に忘れられたかどうかは定かではない(苦笑)

ともかく、アキの乗ったPODは月のネルガル工場へと向かった。
だがそのとき月ネルガル工場ではアキトと九十九が対決をしている最中であった・・・

後編へ続きます



ポストスプリクト


今回はinverse編ということで特別に奥さん'sへのインタビューって事にさせていただきたいと思います。

Bule Fairy「あの〜これまでのシリアスな雰囲気はどうなったんですか!」

−んなもんあるわけないって薄々感づいていたくせに

Pink Fairy「なんかこの書き出し、以前にも見た覚えが・・・」
Snow White「確かに見たねぇ(汗)」
Secretary「っていうか、なんでinverse編ってこんな話ばっかりなの!」
Actress「なんででしょうか?」

−そりゃ、inverse編ってそもそも外伝っぽいお話ですから

Bule Fairy「ですからって・・・」

−ちなみに16話ってアキさんが飛来する理由以外はinverse編を除いて前編と後編だけを読んでも通用するようになっているんですよ♪

Snow White「なってますよって・・・」
Actress「それってつまり・・・」
Pink Fairy「私達っていてもいなくても同じって事?」

−その通りです♪

Secretary「その通りとか言うなぁぁぁぁ!!!!!!」
Bule Fairy「やっておしまい!!!」
ガイ&イツキ&フクベ「ゲキガンフレア!!!」

−ってことで後編をどうぞ

※上記は微妙に後編の内容と異なりますので本気にしないで下さい(笑)

Special Thanks!!
・AKF-11 様
・kakikaki 様