アバン


開けちゃいけないパンドラの箱
開けるなと言われても興味本位で開けたりするわけで
勇気を出して赤いクスリを呑んだものの、見せられた現実に恐れおののき、青いクスリを飲めば良かったと夢の世界を恋しがる。

倒すべき敵が同じ人間だったと知らされたとき
変えるべき未来が変わらないと知ったとき
変わったと思っていても単に心の奥底に封じ込めていただけだと知らされたとき
心の闇はまだどす黒くくすぶり続けていたと思い知らされていたとき

あなたは知らなかった頃の自分に戻りたいですか?

ああ、これってSecond Revengeのラストとほんのちょっぴり関係があったりしますのでそのつもりで〜



ナデシコ・格納庫


ここでは現在関係者以外立入禁止で喧喧諤諤の議論が成されていた。

ウリバタケ「確かにこれに人が乗っていた形跡があるのはわかる。
 だが、木星蜥蜴は無人兵器のはずだろ?」
ジュン「そうですよ。イネスさんも言ってましたけど、生命体はチューリップを通れないって」
班員「でも、無人兵器がゲキガンガーのCDは聞かないでしょう」
ウリバタケ「でもなぁ〜。木星蜥蜴だから蜥蜴が聞いてたりして・・・」
班員「タコさんだったりして。」
ウリバタケ「ローウェルの小説じゃあるまいし」
ムネタケ「んなことどうでもいいのよ!!!!」

議論に割ってはいるムネタケ

ウリバタケ「なんだよ、うるさいなぁ」
ムネタケ「うるさいな、じゃないわよ。
 艦内に侵入者がいる可能性があるのよ!
 あんた達、うだうだ言ってないで探しなさいよ!」
ウリバタケ「なんで俺達が探さなきゃいけないんだ?
 探すなら保安部の役目だろう!」
ムネタケ「んなことしたらみんなバレちゃうじゃない!
 上からも内密に調査しろって言われているのよ!!!」
ウリバタケ「・・・・まさかこれって連合軍の秘密兵器とか言わないだろうな?」
ムネタケ「え?・・・そうなの?」

間の抜けた返答にウリバタケはムネタケが誤った事情しか知らされていないのか、本当に知らないのかどちらかということを悟った。

まぁ正体不明なら不明で仕方がない

ウリバタケ「まぁ捕まえてみた方が早いか。
 俺達の艦は俺達で守れってか!」
整備班「おう!!!」
彼らは早速捜索を開始した。



アマガワ・アキの部屋


アキは怪我を理由に自分の部屋で閉じこもっていた。
閉じこもって色々なことを考えていた。

アキトのこと
イツキのこと
そして変わらなかった歴史のこと
北辰のこと
北辰の語った『時の記述』という言葉のこと

何も変わらなかった現実
やはり以前のアキトの様に同じ時間を生きた者はやり直すことは出来ないのか?
この心の奥底にくすぶる憎悪の炎は消すことが出来ないのか?

そう考えれば過去を変えて男の体に戻って・・・
一体何が変わるのだ?

段々自分でも何をどうすればいいのかわからなくなってきた・・・

アキは一人思い悩む。

悶々と蹲り、猛る心を諫めようと必死だった。
いま人に会えば憎悪の炎を誰彼かまわずぶつけかねない。

そんな自分を持て余すのは久しぶりだった。

そう、彼女がまだ黒百合と呼ばれていた時代・・・
あれからほんの少し笑えるようになった。
だが、自分の心の中で何かが納得していないんじゃないか?

アキの思考はループにハマりかけていた。

歴史を変えるって・・・・

「あ!」
アキはそこで思い出した。
そういえばアキの記憶ではこの後白鳥九十九がミナトとメグミと共にナデシコを脱走するはずだったのだ。

でも・・・

「白鳥ってどうやってナデシコに乗ってたの?」
1周目は月に跳ばされていたためにそこら辺の事情にとんと疎い事に今頃気づくアキであった(苦笑)



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第15話 遠い星からきた「アイツ」<前編>



ナデシコ・ブリッジ


さてさて、謎の機動兵器にいたと思われるパイロットをおびき出すべく作戦行動に出る整備班とその他の人々。
残っていた物証からたぶんゲキガンマニアだということを察したメンバーはゲキガンガーグッズをばらまいておびき寄せようとする始末。
とりあえずジュンが巻き込まれてゲキガンガーのコスプレをやらされていたりするけど、今回は省略するとして

ジュン「って、ただでさえ出番が少ないのに、そんな〜〜」

いや、本当に尺が足りないので・・・

で、ミナトは目の前のゲキガンガーのデフォルメぬいぐるみを見て溜息をつく。
いや、溜息をつく本当の理由はもっと他のところにあったりするのだが。

ミナト「私、この艦降りないも〜ん」
ゴート「ミナト!オレはお前の身を案じて言っているんだ!」
ミナト「いっそ、オレのため!とか言えないの?」
ゴート「オレは仕事に恋愛を持ち込むつもりはない!」

ミナトはゴートの言いようにカチンとくる。
彼女にとって仕事も恋愛も切り離せないものだ。感情は心の一部だから。
心と理性は切り離せない。
切り離せる事が出来るのが大人なのかどうかはわからない。
だけど、切り離すのは社長秘書の時で十分堪能した。
それを捨ててきた自分が今更そんな生活に戻る気はなかった。

だが男は感情と理性を切り離した。
あるいはそうしなければ勤まらない仕事をしすぎていたのかもしれない。

「あ、そう・・・」
ミナトはなにか急に醒めた気がした。
嫌いではない。
自分を大事にしてくれているのもわかる。
でも戦争の中で出会って戦争をしながら好き合うようになって
それなのにその戦争をしている最中に「仕事に恋愛を持ち込むつもりはない」と言われてしまえば「それは違うんじゃない?」と思ってしまう。
自分の半分しか見てもらえていなかったみたいでたまらなくイヤだった。

ゴート「ミナト、オレは・・・」
ミナト「とにかく私降りないから!」
ゴート「ミナト・・・」
ルリ「大人って大変ですね」
ラピス「そうなの?」
ミナト「え?」
ゴート「うぉ!」

ゴートとミナトが声の方を見るといつの間にかルリとラピスがそこにいた。

ラピス「ゴートとミナトって仲良しさんじゃなくなったの?」
ルリ「まぁ複雑な大人の事情ってやつです。少女の私達にはうかがいしれないことです」
ラピス「ふぅ〜ん」
ミナト「あ、あの・・・私、汗流してくるわ。
 ふたりとも良かったら後で一緒に行こうね♪」
ルリ「ええ」
ラピス「わかった」

ばつが悪いのかミナトはそそくさとブリッジを退散した。

ゴート「お、お前達・・・いつからそこに・・・」
ルリ「最初からです」
ゴート「全部聞いていたのか?」
ルリ「『ゴートとミナトの愛と破局の記録』・・・って1冊の本が書けるくらい以前から・・・」
ラピス「私達透明人間じゃないのになぜか眼中にないし・・・」
ゴート「いや、それは・・・」
ルリ「いえ、私達だけではありませんよ・・・」

そう言ってルリは指さす先には・・・

ヒカル「みつかっちゃった♪」
リョーコ「ば、ばか、オレを前面に押し出すなよ!」
ゴート「お、お前らいつから・・・」
リョーコ「い、いや、盗み聞きしていたわけじゃないぞ!
 俺達はただ戦闘待機をしてたらだなぁ・・・」
ヒカル「勝手に逢い引き始めちゃうんだもんねぇ」
イズミ「四角いピアノで踊る柔道家、格子近ど〜です・・・なんちって、ククク」
ヒカル「ずばり公私混同ですねぇ」
リョーコ「まぁ少なくとも『仕事に恋愛は持ち込まない』って言葉にゃ説得力はないよなぁ」
ゴート「・・・いや、だから・・・」
ルリ&ラピス「バカばっか」
ゴート「ぐふぅ・・・」

三人娘どころかルリ&ラピスのダブル「バカばっか」に撃沈するゴートであった。



ナデシコ・遊戯室


そこではプロスがシャドウ卓球をするのをエリナはなぜか見学していた。
いや、付き合わされていたといっていいかもしれない。

プロス「しかし、よく上は月に行く許可を出しましたなぁ。
 しばらくは軍に歩調を合わせる・・・というお話で身売りまでされましたのに」
エリナ「なに、いじけてるの?」
プロス「いえいえ、どういう吹き回しなのかよくわかりませんが、テンカワさん一人を迎えに行くために気前の良いことですねぇ」
エリナ「まぁ月で極秘裏に建造中のナデシコ4番艦を守りたいんでしょ。
 月の連合軍艦隊も感づいてか、あまり協力的ではないらしいし。」
プロス「その割には私の耳に入ってくるのは某会長秘書が軍属を反対したとか、テンカワ・アキトを迎えに行くべきだと主張したとか、なんですけどねぇ・・・」
エリナ「・・・そりゃテンカワ・アキトはボソンジャンプに関する重要な研究材料よ。ネルガルが何を置いても確保すべきモノでしょう!」
プロス「そうですかねぇ〜。
 その割にはテンカワさんに入れ込んでいるように見えるのは私だけでしょうか・・・」
エリナ「あのねぇ!何でも色恋沙汰に結びつけるのはこの艦の悪い癖よ!
 私は純粋に研究対象として・・・」
プロス「それなら別にイネス博士でもアキさんでも艦長でもかまわないわけで、何故テンカワさんにだけこだわるのか・・・」
エリナ「どうでもいいでしょ!!!」

問いつめられて逆ギレしかけるエリナ。
だが・・・

「良くありません!」
なぜか会話を盗み聞きしていたのかエリナに突っかかるユリカであった。

ユリカ「アキトを誘惑してどうするつもりですか!!」
エリナ「だ、誰が誘惑してるって言うのよ!!!」
ユリカ「エリナさんです!」
エリナ「違うって言ってるでしょう!」
プロス「そうです。どちらかというとアキさんへの当てつけですよ、艦長」
ユリカ「へぇ、そうなんですか〜」
エリナ「そうなの・・・って違う!!!」

思わず同意しそうになって赤面するエリナ

だが、そこは会長秘書
少し気を落ち着けてポーカーフェイスに戻った。
(いや、それ以前に感情を表に出しすぎるような気もするが・・・)

「わかったわ。ちゃんと説明してあげるから」
エリナはこれ以上恋愛ネタに巻き込まれるのはイヤだったので二人にそう告げた。



ナデシコ・通路


「説・・・明?」
イネスはどこかで呼ばれたような気がした。
・・・・って誰も呼んでないって

でもさぁ、そのうち
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ
 説明してと私を呼ぶ!」
とか叫び出しそうで怖い(汗)



ナデシコ・プロスの部屋


「まぁこれをご覧なさい」
エリナはこたつにあたる二人にとある映像を見せた。

ユリカ「あ、アキト・・・」
プロス「ほう・・・」

そう、それはナデシコが火星から脱出したとき、アキトが自室から展望室へ瞬間移動する光景であった。
まるでアキトがユリカ達のすぐそばにやってきたみたいだ。

エリナ「どう、これでわかった?
 彼には不思議な力が・・・」
ユリカ「つまりこれはアキトの私に対する愛が起こした奇跡って訳ですね♪」
エリナ「違う!!!ドクターとアマガワ・アキがいる理由をどうするの!!!」
ユリカ「イネスさんとアキさんはさしずめ恋のお邪魔虫・・・」
イネス「誰がお邪魔虫か!!!」

スパコ〜ン!!!

スリッパでイネスに頭を叩かれるユリカ

エリナ「来たわね、説明屋さん」
ユリカ「イタタタ・・・イネスさん、どこから」
イネス「説明あるところに私あり。まぁそれはともかく、アキト君に特別な力があることだけは確かね」
ユリカ「だから愛の奇跡ですってば・・・」
エリナ&イネス「違う!」

もう一度叩かれて、改めてイネスは言う

イネス「本人曰く、彼はかつて火星から地球へボソンジャンプしたそうよ」
プロス「まぁそれ以外に1年前まで火星にいた彼が地球に来れる道理がありませんからねぇ」
イネス「だとすれば、ナデシコが火星から月にジャンプできたのは彼の能力の為とこの秘書さんは考えているみたい」
ユリカ「でも・・・」
エリナ「木星蜥蜴はボソンジャンプで無人兵器を大量に送り込んでいる。
 つまりボソンジャンプを解明して有人兵器を奴らの母星に送り込めるようになれば戦況は一変する。
 彼は地球を救う切り札になり得るの!
 そのためには・・・」
ユリカ「でも・・・」
イネス「そう上手く行くかしらねぇ・・・」

三者三様、当人の意見を無視した議論だけは続くようだとプロスはアキトをこっそり哀れに思った。



ナデシコ・メグミの部屋


メグミもあれ以来、部屋に籠もっていた。
アキトが生きていたのは嬉しいがフラれたことには違いない。

・・・フラれたというよりかは自分を一番に選んでもらえなかったと言うべきか?

アキトは目の前の女の子を愛するよりも味方を助けるヒーローになることを選んだ。
もちろんそこに価値の差はないのだが、だからといって目の前で見事に自分以外を選ばれてしまえば自分の立つ瀬はないではないか!

まるでいまTVに映し出しているゲキガンガーの様だ。

『やめて!あの人は六郎兄さんなの!』
『だが今は暗黒戦士シックスだ!』
『お願い、やめて!あなた達が戦う理由なんてないわ!』
『ゴメン、ナナコさん・・・』
『お願い、行かないで、ケン!!!』

「行かないで・・・か」
メグミは思う。

感情に訴える女の方が愚かなのか
女の願いを振り払っても正義を行う男の方が正しいのか
こんなものがヒーローとしてのあるべき姿なのか
それとも男を引き留められないほど女の演技が稚拙だったからなのか

「お願い、行かないで!!!
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 私の方が上手じゃない・・・」
メグミは登場人物の台詞を真似てみる。
自分は元声優なのだから真似ることなど造作もない。
そしてついこの前、男に切実に訴えかけたのだ。迫真の演技が出来て当然。

・・・でも劇と同じように自分も男を説得できなかった。

「まぁ女の涙が100万の武器にも勝るなんて嘘よねぇ・・・」
メグミはこれ以上ゲキガンガーを見たくなくなったのかTVの電源を切ろうとした。

だが・・・

???「電源を切るな!」
メグミ「え?」
声にびっくりして振り返ると、声優を辞めるときにもらったうさたんからなにやら声が発せられていたのだ。
そしてそれは短い手足を突き破りTVにかぶりつくように襲いかかった。

???「これは幻と言われた第13話聖夜の悲劇、サタンクロックM!
 まさか実在していようとは・・・」
メグミ「う、うさたん!?」
動き出したうさたんに困惑するメグミであった・・・



ナデシコ・アキの部屋


一方そのころ、アキの部屋ではひと騒動になっていた。

ミナト「行きましょうよぅ♪」
アキ「イヤですってばぁ!!!」
ミナト「今日こそは一緒にお風呂に入るんだから。
 女の子が何日もお風呂に入らないって不潔だよぉ」
アキ「ダメですってば!第一お腹を怪我しているからお風呂はダメなんですってば〜〜」
ミナト「大丈夫、大丈夫♪
 入るっていってもサウナだからお腹の傷には障らないって。
 それにちゃんとイネスさんから許可はもらってきてるだから♪」
アキ「勝手に許可を取らないで下さい〜〜」
ミナト「どうしてそんなにお風呂がイヤなの?
 たまには裸の付き合いをしないと団結は生まれないわよ?」
アキ「その裸の付き合いってなんですか〜〜」
ミナト「だからお互いの発育具合を見たり、女湯でしか喋れないような女の子特有の悩みとかを話し合ったりとか、どこまで彼と進んだとか・・・」
アキ「だからそれがイヤなんですってば・・」

ゴートとの件で少しむしゃくしゃしていたミナトはなにを考えたか、アキをお風呂に誘おうとしていた(笑)
さすがにこういう方面に弱いのかミナトの押しの強さにアキさんタジタジであった。

ミナト「案外手強いわねぇ・・・
 じゃ、奥の手!お願いシスターズ、カモ〜ン♪」
ルリ「がってん」
ラピス「承知の助」
アキ「ルリちゃんにラピスちゃん!?」
ミナト「必殺!美少女ダブル上目遣いで少しもじもじしながら精一杯のお願い攻撃よ♪」
ルリ「アキさん、アキさん、一緒にサウナに行きましょう?」
ラピス「お願い、アキ」
アキ「う・・・」
ルリ「私と一緒じゃイヤですか?」
ラピス「私と一緒じゃイヤ?」
アキ「う・・・」
ルリ「私は一緒にお風呂へ行く価値もない女なんですね・・・」
ラピス「私はもういらない女・・・」
アキ「う・・・」
ルリ「ジー・・・・」
ラピス「ジー・・・・」
アキ「・・・・わかりました(泣)」
ミナト「やったぁ♪」
ルリ&ラピス「♪」

三人の強引な勧誘により、アキさんはじめての女湯デビューとなるのであった(笑)



ナデシコ・大浴場の脱衣所


なぜかユリカ達と鉢合わせしたミナトらは一緒にサウナにはいることにした。
で、結果的にはエリナの愚痴をみんなで聞くことになった。

ミナト「いいんじゃない?女の子らしく自分に正直に生きているんでしょ?」
エリナ「でもこの人この艦の艦長でしょ?」
ユリカ「はい♪艦長で〜す♪」
エリナ「艦長には責任と自覚を感じて欲しいわ」
アキ「それで自分を押し殺して冷徹になれって?
 そりゃ無理な相談ねぇ」
エリナ「なによ、アマガワ・アキ!」
アキ「別に。
 でもこれだけは忠告。
 かぶったペルソナ(仮面)はいつの間にか心の一部になる。
 ウソの自分はやがて本当になる。
 人の心は両方演じきれるほど器用じゃないからね。
 でも、そのうち耐えきれなくなる。
 ウソの自分と本当の自分に身を引き裂かれる。」
エリナ「ど、どういう意味よ・・・」
アキ「無理するなってことよ。
 それより・・・」

まじめな顔はそれだけにして、彼女は急に困った顔をする。

アキ「あの・・・あんた達、私の話聞いてます?」
ミナト「それはどうでもいいんだけど、アキさん。
 どうしてそんなに隅っこでお着替えしてるの?」
アキ「いや、どうでもよくないというか・・・
 いや、いろんな理由があって・・・」

端っこの方でこそこそ着替えているアキをつんつん触るミナト。
まぁそりゃ元男だから女湯なんてパラダイスかもしれないが、
なにせ免疫のない所にくわえて元男がバレないように必死だから無理からぬ事だ。
でも、恥ずかしがっているのはそれだけじゃない!
そこにユリカやルリにラピスが加わる(笑)

ユリカ「ほらほら、アキさんのウエスト細いでしょ♪
 私もあとお腹さえ細ければパーフェクトなんだけどなぁ」
アキ「つつかないで〜〜」
ルリ「ジー・・・・・・・・・・・・
 どうすればそうなりますか?
 やっぱり朝一本の牛乳ですか?」
アキ「いや、何をどうすればいいかって私も知らないから(汗)」
ラピス「ふかふか♪」
アキ「だから触らないで〜〜」
ミナト「いいなぁ〜私も格闘技とかやったら細くなるかしら?」
ユリカ「いいですねぇ。一緒にやりましょうか?ボクササイズとか♪」
ミナト「そうねぇ。ウップン晴らしにはちょうどいいかも♪」
ルリ「やっぱり牛乳ですか・・・」
アキ「だから私を取り囲まないで〜〜」
ラピス「アキはラピスが守る!
 任せて、アキ!
 みんな離れて、離れて!」
アキ『ラピスちゃん・・・』
ラピス『アキの体の傷は誰にもバラさないから安心して!』
ミナト「え〜〜ずるい〜」
ラピス「アキは私のもの!誰にも渡さない!」
アキ「庇ってくれるのはありがたいんだけど・・・(汗)」
アキを庇うラピスに群がる少女達であった。

エリナ「だからあんた達は真面目な話をせんか!!!!」
一人シリアスモードだったエリナさんが怒りを爆発させたのは言うまでもなかった(笑)



ナデシコ・大サウナ室


さてさてメンバーはいつの間にかリョーコ達三人娘まで加わって悩める乙女の討論大会に発展した。
もちろん、一人偽乙女(?)のアキは居場所がないかのように小さく縮こまっていた(笑)
いや、最初は端っこでうずくまっていたのだけれど、ミナトに中央に引っ張ってこられた。
それでも肩身は狭い。
まぁせっかくの広いサウナでもさすがに9人も入れば狭かろうが。

で、交わされる討論の内容は至極真面目なものだった。

ミナト「自分に正直に女の子する事がそんなに悪いことかなぁ」
エリナ「普通のOLならそれでもいいかもしれないけれど、この艦は戦艦であなたは艦長なのよ?何人ものクルーの命がその戦果に応じて死ぬのよ。
 その自覚はあるの?」
ユリカ「それはありますよ。一応・・・」
エリナ「一応!?
 一応って腰掛けで艦長やってる訳じゃないでしょうねぇ!!」
ユリカ「ち、違いますってば(汗)」
エリナ「男の子のお尻を追いかけるのもいいけど、それはやることをちゃんとやった人だけに許される事よ。
 あなたは今までナデシコでどれ程のことをしてきたの?
 あなたはこの戦争をどうしたいの?
 あなたは最終的にナデシコに何をさせたいの?」
ユリカ「それはその・・・」
ミナト「そう、ぽんぽん言ったって答えられないって!」
エリナに喰いかからんばかりに詰め寄られるユリカをミナトが庇った。

だが、

イネス「でも会長秘書さんは案外重要なことを言ってるんじゃなくって?」
一同「おお、いつの間に!」
ユリカ「説明・・・って誰も言ってないですよ?」
イネス「やかましい!」

さてさて登場したイネスを含めて総勢10名になったサウナ室
狭苦しいながらもユリカは少しずつ考えながら自分の気持ちを言葉にした。

ユリカ「私は戦争の中で育って、戦争の中で艦長になりました。
 この戦争状態がいいとは思わないし、終わらせたいとも思います。
 でも正直何をどうすればいいかなんて思い浮かびません。
 だけど私は請われたからここにいます。
 士官学校では私はミスマルの長女、提督であるお父様の娘としてしか見てもらえませんでした。
 でもここでは私は私のままでいられます。
 ミスマルの長女ではなく、ミスマル・ユリカとしていられます。
 私はこの艦が好きですし、守りたいと思います。
 私の、そしてアキトの居られる場所だから」

ユリカの言葉にアキは少し感心した。
あまりユリカの気持ちというものを聞いたことがなかったのだ。
まぁ、アキトと接するユリカの発言があまりにもトンガリすぎているからかもしれないのだが。

それにしても、何も考えずにお気楽な彼女達に見えたのだが、それはそれなりに色々考え、悩んでいるようであった。

エリナ「ふぅ〜ん。恋も仕事もどっちも大事。
 でもあなたは本当に両立できるの?」
ミナト「そんなに仕事だけにしゃかりきにならないといけないかなぁ」
エリナ「なによ。ちゃらんぽらんで艦長されてもいいって言うの?」
リョーコ「そりゃあんたが艦長やったらさぞかし立派だろうよ」
エリナ「なによ。ひがみ?」
リョーコ「え〜ぇ。どうせあたいはしがないパイロットですよ。
 どんなに優れた戦術を思いついたとしても、命令一つで犬死にしなきゃいけないですよぉ。どうせパイロット風情とか言われて聞いてもくれないですよぉ・・・」

リョーコはそう言う。立派な志を持っている者が偉くてそうじゃない者は愚鈍なのか?
エリナの言いようにリョーコはどうしてもそう思ってしまう。
でもエリナは言い返す。

エリナ「だから指揮官がしっかりしないといけないんでしょ!」
ミナト「でも私はいい艦長だとおもうけどなぁ」
エリナ「良い艦長、良い人が必ずしも優秀な指揮官とは限らないわ。
 この人の下で何人の人が死んだと思っているの?」
ユリカ「・・・」

みんな火星での出来事を思い出す。
フクベ、ヤマダ・ジロウ
ユートピアコロニーの人々

でも珍しくルリが口を開いた。
ルリ「高度にシステマチック化された現代の戦闘において、一艦長の作戦指揮に戦局を一変させる程の力はない。
 現代において天才型の艦長は求められておらず、艦長とはクルーの不平不満を吸収できる存在であればよい。
 昔は安心できる老人タイプが中心だったが、近年では若年化する兵士へ配慮して美少年、美少女タイプの艦長が主流である・・・
 ってのをデータバンクで見たんですか、これってどうなんでしょうねぇ?」
エリナ「そ、それは・・・・」
ラピス「それもある意味フォローになっていないような・・・」
ルリ「第一、一度火星への攻略を失敗しただけで軍への追従を盾に現場の動きを拘束しておいて、最終的にナデシコに何をさせたいの・・・はないと思うんですけど?」
ヒカル「ルリルリ辛辣〜♪」
リョーコ「言うねぇ、ルリ」

ルリの発言で反論を制されるエリナであった。
だが、別の角度から異論は起こる。

イネス「まぁ一度失敗すれば左遷させる理由には十分だけど」
ラピス「・・・イネス、エリナの味方?」
イネス「そうじゃないけど。」
アキ「良い艦長ってなに?」
イネス「なにって・・・」

今度はアキは珍しく口を開く。

アキ「そういえばさぁ、昔の小説にこんな言葉があるんだけど・・・
 名将と愚将の間に優劣は存在しない。
 ただ名将は味方をひとり殺す間に敵を1000人殺し、
 愚将は敵をひとり殺す間に味方を1000人殺す。
 ただそれだけの違いしかないって・・・」
一同「・・・・」
アキ「間違えちゃいけないわ。私達は民間の艦に乗っていようが、戦争をしているんだって。
 戦争をする以上は犠牲がゼロなんてあり得ないんだって。」
エリナ「この際、敵の被害なんてどうでもいいのよ。
 戦争を終わらせるためには敵に打ち勝たなければいけない。
 そのためには明確なビジョン、戦略が必要だわ。
 だから艦長には・・・」
アキ「で、歴史は繰り返す・・・かな?」
エリナ「う・・・」

エリナにはアキの言っている意味がわかって沈黙した。
イネスも何か感づいたようだ。
ネルガルのカワサキ研究所での会話を思い出したからだ。

だが、その三人にしかわからないことにこの少女は気がついた。

ルリ「でも相手は無人兵器なんですよね?
 無人兵器を壊すことになんでそんなに目くじらをたてるんですか?」
アキ「え?」
エリナ「そ、それは・・・その・・・」
ユリカ「そういえばそうですよねぇ」
リョーコ「なんか怪しいなぁ」
エリナ「怪しくないわよ、ねぇドクター」
イネス「そ、そうね。」
ラピス「いや、イネスが言うと怪しい」
イネス「どういう意味かぁ!!!!」

と、冗談はおいておくとして、ミナトは真剣な目でアキに聞く。

ミナト「でもさぁ、それって殺す事を認めた人の方が偉いって事?
 認めたら何をしても良いって事?」
アキ「そうじゃないわよ」
ミナト「そうじゃないって、そういう風にしか・・・」

アキは少し間をおいてから答えた。

アキ「・・・・・・・・
 つまり、覚悟が必要って事」
ミナト「覚悟って・・・人を殺す覚悟?
 覚悟したら殺して良いって事?」
アキ「そうじゃない。」
ミナト「じゃぁ、どういう・・・」
アキ「認めるための覚悟よ」
ミナト「認める・・・覚悟?」
アキ「そう、真実は痛い。
 思わず目を背けたくなる。
 でも一度背けたら容易に戻って来れなくなる。
 自分を偽り、周りを嘘で固めていく。
 心はやがて乖離していき、私らしさを失う。
 ペルソナ(仮面)をかぶり、偽りの自分を演じ続けていかなければならなくなる。
 そうなったら・・・・」
ミナト「・・・・そうなったら?」
アキ「こんな風にしか笑えなくなる」

アキはぎこちなく笑って見せた。
それはいつもの笑顔と違って、どこかもの悲しくもあった。
いつもの笑顔がまるで作られた仮面のように錯覚する者さえいた。
人々は彼女が実際にそれを体験してきたのだと何となく悟るのであった。

そして聡いのはやはりルリであった。

ルリ「でも・・・私達が戦ってる相手って無人兵器じゃ・・・」
ユリカ「だよねぇ?」
ラピス「違うの?」
エリナ「違わない、違わないわよ(汗)」

と聞かれるとエリナは慌てて誤魔化すが、
アキはただ困ったように苦笑した。

真実はもうすぐ知らされる。
だが、もう少しぐらいモラトリアムはあった方がいい。
認める覚悟を少しでも身につけるために
もう少し時間が欲しかった。

だが、そんなアキの感傷とは無関係に・・・

ヒカル「それはいいんだけどさぁ・・・」
イズミ「隊長、バイザーしたまんま・・・」
ヒカル「普通サウナでバイザーをしないよねぇ」
イズミ「っていうか、どうして曇らない?」
アキ「いや・・・曇り止めしてあるから」
ルリ「っていうか、そういう問題じゃないような・・・」

なんて事を言われたりするので、もう少しだけ乙女達の会話は続きます(笑)



ナデシコ・脱衣室


一同「おばちゃん、フルーツ牛乳〜♪」

いや、番台のおばちゃんなんていないって

それはともかく取り出したのはフルーツ牛乳8本と1リットル入りの牛乳2本。
もちろんビン入りである。
まぁ最後の1リットル入りの牛乳は誰が飲むかは言わなくてもわかるだろう。
このメンバーで唯一の貧乳ペアである。

ルリ&ラピス「貧乳じゃない!まだこれから発育するの!」

失礼。

ミナト「ほらほら、アキさん。
 フルーツ牛乳を飲むときは左手は腰にあてて!」
アキ「い、いや、私は別に・・・」
ミナト「スタイル良いんだから、そんなに背中丸めずに堂々と見せびらかせばいいのよぉ」
アキ「いやぁ、私なんてそんな大したもんじゃないッスよ(汗)」
ミナト「そんなこと言ったら傷つく人いっぱいいるよ?」

遠くの某通信士「クシュン!」

ユリカ「アキさんって恥ずかしがり屋さんなんですね」←胸がちょっとだけ勝っているので余裕
エリナ「そうよ。もっと堂々としなさいよ。」←胸とかだいぶ勝っているので余裕
イネス「まぁそのぐらいがちょうど良いのかもしれないわねぇ。
 大きいと肩がこるし・・・」←胸とかだいぶ勝っているので余裕

ちょっと優越感に浸っている数名。
それに腹を立てた少女が振り返ると・・・

ラピス「でも弛み始めた人に言われたくないよねぇ」
ユリカ達「!!!!!」

・・・どうやら図星らしい(笑)

ユリカ「た、弛んでないわよ!?
 そりゃ最近ご飯が美味しくてちょっぴり重いけど・・・」
エリナ「弛む以前に出るところも出ないお子ちゃまに言われたくないわねぇ(汗)」
ルリ「それって私も含みますか?(ギロリ)」
イネス「考えすぎよ、ルリちゃん(苦笑)」
ルリ「(カチン!)黙ってて下さい!
 弛むどころか垂れてきそうな人に言われたくありません!」
イネス「!!!(怒)」
ミナト「まぁまぁ、ルリルリも大人げない。思っていても言っちゃいけないこともあるんだよ(笑)」
イネス「(カチン!)そうよ。
 ただ大きいだけの人と比べて欲しくないわ」
ミナト「(カチン!)それってあたしのことですか!?」
リョーコ「止めろって!胸のことで言い争うなよ」
イネス&ミナト「筋肉が詰まっているような人が口出ししないで!」
リョーコ「なんだと!!!(激怒)」
脱衣所は乙女達のとても普段では聞けないような赤裸々な罵倒合戦に発展していった。

ヒカル「みんなも必死だねぇ」
イズミ「胸のこと言われてバースト・・・なんちって(笑)」
アキ「ああ〜ここから逃げ出したい〜〜」
他人事のようにしている二人とあまりに赤裸々な罵り合いの応酬に居たたまれなくなるアキが輪の外にいた(笑)




しばし後・・・


ユリカ「では、腰に手を当てて、胸を反らして一気飲みしましょう♪」
一同「おう〜!」
なんか罵倒疲れで止めたらしく、仲良く牛乳を飲むことにしたらしい(笑)

ユリカ「では、いただきます♪」
一同「いただきます♪」

7人の乙女達が腰に手をやって堂々と飲み、一人の偽乙女がいまいち恥ずかしさの抜けないポーズで飲み、二人の乙女がやっぱり1リットルビンが重いのか両手を添えて牛乳を飲んだ。

ゴクゴクゴク・・・

一同「ごちそうさま♪」

タン!
みんな一斉に机にビンを置く

ルリ「ビクトリーです♪」
ラピス「負けた・・・」
・・・一気飲みはルリちゃんが勝利した模様です(笑)

それはともかく、さっき中断されていた乙女達の論議は続いた。

エリナ「えっと、どこまで話したっけ・・・
 そう、つまり私が言いたいのは艦長には明確なビジョンを持っていて欲しいってことよ。」
ユリカ「ビジョン・・・ですか?」
エリナ「そう。あなたは最終的にナデシコをどう導きたいのか。
 戦争をどう終わらせたいのか。
 状況に流されるだけじゃそれこそ連合軍の駒にしかならないわよ」
リョーコ「ビジョンねぇ〜〜」
リョーコはやっぱりエリナの高い理想を求める姿勢に反発を覚えていた。

エリナ「なによ」
リョーコ「いや、そう言うあんたはどうなんだよ。
 高説を垂れる会長秘書さまだから、さぞかし立派なビジョンってやつを持ってるんだろうなぁ」
エリナ「3年以内にネルガルのトップになるわ!」
一同「おお〜!!!」
エリナ「ネルガルのトップに立つということは事実上地球圏の経済を牛耳るに等しい。私は私の手で地球圏の復興を成し遂げたいの!」
ビジョンとしてはこの上ない立派なものだ。
これだけ理想が高ければさぞかし何の問題意識も持たない同僚が歯がゆく見えるだろう。
でもリョーコはやっぱり反発した。

リョーコ「そりゃすげぇ!
 で、会社会社、立身出世、本当にあんたは偉いよ」
エリナ「なによ。文句ある?」
リョーコ「いいや、別に。
 ただ俺達を使い捨てにさえしてくれなきゃ文句なんか言わないさ」
エリナ「そ、そんなことしないわ」
ユリカ「じゃぁじゃぁ、アキトに変なことしないんですね?」
エリナ「それとこれとは・・・」
リョーコ「まぁ、偉いビジョンのある人にとっては、日々の生活で手一杯のあたしら庶民のビジョンなんてゴミみたいなもんだろうけどよぉ」
エリナ「それって被害妄想すぎよ!」
リョーコ「どうせ、被害妄想ですよ!」

リョーコは吐き捨てるように言う。
この中でもそれが痛いほどわかる者もいたみたいだ。

高い志を持て!
そりゃ、そんなものを持った日もある
それは理想だったり、夢だったりする。
でも自分はそれをかなえたか?
自分はそれに近づいたか?
自分の今いる位置と理想の高さに愕然としていないか?
夢を持って、理想を持って進んできたつもりなのに気が付いたらこんなところで妥協した生活を送っていないか?

リョーコらの心の中にある苛立ちがあるとすればそんなものだ。
誰でも望む理想に手をかけられる位置にいるわけじゃない。
そしてそれを半ば諦めてしまっている自分に一番苛立ちを覚えているのだ!!!

しばしシーンとした後、ユリカが口を開いた。

ユリカ「私にはエリナさん程立派な夢や理想はありません。
 この戦争を何とかしたいと思っていますけど、どうすればいいのか今はまだ思いつきません。ただ戦争は今日も明日も続くし、このナデシコがある以上、勝って守っていきたいと思います。
 だってここが私やアキトやナデシコのクルーのみんなが自分らしくいられる場所だから・・・」

そしてそんなユリカにアキが言葉を贈った。

アキ「昔の映画にこんな台詞があるの。
 『救世主になるということは恋をすることと同じよ。
  他人にはわからないけれど、自分には痛いほどわかる』ってね。
 そのうち艦長にもわかるわよ。
 自分のやっていることが正しいのか間違っているのか。
 自分にだけは痛いほどわかる。
 ただ、みんな間違っていてもそれを間違っていると言う勇気がないだけ。
 間違っていると認めて引き返す勇気がないだけ。
 だからあなたは間違っていると思えば声を上げて違うと言い、引き返せばいい。
 そして正しいと信じる・・・本当に自分の信念に照らし合わせて正しいと信じることが出来れば・・・あとは突っ走ればいいの。」
ユリカ「えっと・・・なんとなくわかったような、わからないような・・・」
アキ「だから、そのうちわかるわよ♪」

そんな二人を見てエリナは溜息をついて・・・そして何か言おうとしたのを止めた。
それはさっきと同じ繰り返しになるからなのかもしれないが、不信感の中にちょっとだけ期待感が芽生えたのかもしれなかった。

そしてアキは改めて思う。
彼女達の心がほんの少しだけどわかったことがとても嬉しかった。
なぜ彼女達はあのささくれ立った心を和らげてくれるのだろう?
でも、1周目のアキト・・・今、月にいるアキトは彼女達の本音を知らない。
もし知っていればあの時芽生えた憎悪の炎も和らいだのだろうか?

と、そこまで考えてアキははたと気づいた。

『そういえば最近アキト君と距離が離れているなぁ・・・』

アキが最近自分のことで手一杯だったのもあるのだが・・・

『まさか・・・ねぇ・・・』
アキは一抹の不安を覚える。
闇の心に苛まれながらも彼女たちに癒される自分
それに対して一人月に居ながら、木星蜥蜴の正体に一人直面するアキト
なんだろう、この温度差は・・・

と、そんな感傷に浸っているアキを余所目に・・・



ナデシコ・大浴場入り口


案の定、どこで聞きつけてきたのか知らないが、木星蜥蜴の捜索と称して女湯を覗き見する整備班の面々。

班員1「いいんですかねぇ、班長。こんな事をして・・・」
ウリバタケ「いや、ここに木星蜥蜴が潜んでいるかもしれん!乙女達に危害が及ぶといけないから極秘裏に探すんだ(ニヤ)」
班員2「ああ、アキさんが、アキさんが!」
班員3「ああ、ルリルリ・・・」
班員4「天国だ・・・」
班員1「誰かビデオ持ってないのか?」
班員2「回しているであります!」
ウリバタケ「グッジョブ!
 ああ、素晴らしすぎて死んでしまいそうだ・・・」
と鼻の下を伸ばすウリバタケとスケベな仲間達。
だが、天罰は下る。

ギュゥ!!!

ウリバタケ「・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ップハァ!!!
 誰だ、鼻と口を塞ぐのは!!!」
ヒカル「だって、死んでしまいそうだって・・・」
ウリバタケ「だからって口を塞ぐヤツが・・・
 ゲェ!ひ、ヒカルちゃん、いつからそこに・・・」
ヒカル「アキさんが〜〜ってあたりから♪」
ウリバタケ「えっと・・・」
ヒカル「それより覚悟した方がいいよ」
ヒカルにバレて驚くウリバタケをもっと青ざめさせたのは乙女達の殺気のこもった視線である。そしてもっと恐ろしかったのは・・・

イズミ「先生、お願いしやす!」
アキ「へぇ、あんた達、地獄を見たいようねぇ、フフフフフ・・・」
ウリバタケ『すまないオリエ、息子達よ。父ちゃんは帰れないかもしれない・・・』

裸をビデオに撮られて怒髪天を衝く状態のアキにウリバタケ達は死を覚悟したのであった。

その後、ムネタケが覗きの首謀者にされて
「提督がルリコンだったって本当ですか?」
「提督が男性の下着を集めてるって本当ですか?」
「提督がアキさんに鞭でビシバシして欲しがっているって本当ですか?」
「提督が・・・」
「エッチ!変態!」
「説明しましょう・・・」
「殺す!」

などなど、セクハラの烙印を押されることになるのはあくまでも余談である(笑)

ってことで後編に続きます。



ポストスプリクト


取り敢えず前編ですので前回と同様にポストスプリクトは女アキトことアマガワ・アキさんへのインタビューという形式に変えさせていただきます。

アキ「・・・ってなんだ、この大浴場のシーンは!!!」

−あれ?本当は乙女達の真面目な話し合いに色々感じ入るアキさん・・・ってシーンのはずだったんですけど

アキ「っていうか、『アキさんのお風呂場デビュー♪』にしかなってないぞ!」

−いいじゃないですか、読者サービスってことで

アキ「読者サービスってなんだ!
 本来の私はこの時点で13話からの流れで闇に心を掻き乱されてるって設定じゃないの!!!」

−そのはずだったんですけど、書いていくうちになんとなく(笑)

アキ「なんとなくで済ますな!!!」

−で、ウリバタケがそのうちコミケットでバスタオル姿のアキさんフィギュアを売り出すという(笑)

アキ「売り出されてたまるかぁぁぁぁぁ!!!!(木連式柔炸裂!!)」

−・・・・・・というわけで後編をどうぞ。

ちなみに後編の内容とは微妙に違うので予めご了承下さい(笑)

Special Thanks!!
・AKF-11 様
・kakikaki 様