アバン


基本的にナデシコは何でも屋さんなわけで、テニシアン島だとかナナフシだとか誰も引き受けたがらないようなものばかりを押しつけられます。
それでもコスプレしたり友情ゴッコをしたり、しまいにはICBMに乗ってやって来るんですから余裕があるのか、単に不真面目なだけなのか。

それはいいとしても、前回ラピスが私より目立っていたのは気のせいですか?
今回こそは私がヒロインのはずです。
なにせ今回はホシノ・ルリサーガ3部作の一つですからね
・・・え?前回もラピスに取られていたって?

ああ、これってSecond Revengeのラストとほんのちょっぴり関係があったりしますのでそのつもりで〜



航海日誌 ホシノ・ルリ記す


その日の戦闘は散々でした。

ああ、皆さんこんにちわ。ホシノ・ルリです。
物語の冒頭から変な出だしで済みません。

どう散々だったかは後述するとして、
ナデシコは基本的に地球圏一優秀な戦艦ということで、それ相応の働きを要求される訳なんですけど・・・いえ、優秀なのは艦だけでクルーは変人揃いっていうのは置いておくとして・・・今日もこうして戦場に駆り出されていたりします。

まぁ作戦内容からして散々でした。
ナデシコだけで十分だって言ったのに、見栄だけででばってきた連合軍の艦隊と共同戦線ということに。
でも出てきた連合軍の艦隊は敵わないと知ったのか、開始早々さっさと一隻残らずナデシコの背後に回り、かすりもしない援護射撃という名の邪魔をしてくれました。
相対するチューリップ率いる木星蜥蜴さんたちはまるで親の敵のようにナデシコを集中攻撃してくれたりします。

まぁ、そんな攻撃に当たるナデシコではありませんでしたが。
ただ、散々なのはここから。

本来ならアキさんがアキセカンドで颯爽と木星蜥蜴さんたちを撃破してくれるはずなのですが、今日に限って・・・

「ごめんなさい〜。今月早く来ちゃったみたいだからお休みもらえる?」
って早々に『女の子の日』休暇を取ってしまい、アキトさん達5人での戦闘になってしまいました。

まぁ、それだけならいいんですけど、ラピスもなんだかお寝坊さんで起きて来れないとかいって午前半休をとったり。

それだけなら何とか戦えたりもするのですが、なんとおかしな事に・・・



戦闘空域


アカツキ「さぁ、今日も僕がリーダーだ。みんな頑張っていこうぜ♪」
アキト「はいはい・・・って最近出撃が多くないか?」
リョーコ「文句言うな。後がつかえてるんだから無駄口叩かずにさっさと発進しろよ!」
ヒカル「でもアキさんが『女の子の日』なんて変だねぇ」
イズミ「隊長がた・・・」
ルリ『体調不良ですか?』
イズミ「う・・・」
リョーコ「ルリにオチを読まれていたら世話ねぇなぁ(笑)」
アキト「アキさんが変ってなんだよぉ」
ヒカル「アキさんの予定日ってあと何日かあるよ〜。周期乱れているのかなぁ」
アカツキ「もしかして出来ていたりして」
リョーコ「アカツキ手前ぇ!!!」
アキト「・・・っていうかヒカルちゃん、なんでその・・・アキさんの周期知ってるの?」
ヒカル「え〜〜女の子のはみんなお互いの知ってるよ」
ルリ『あの・・・盛り上がり中申し訳ないんですが、さっさと出撃してくれるとありがたいんですけど・・・ギロリ』
一同「はい!!!」
とかなんとかいって、アキを欠いたエステバリス部隊は発進していった。



ナデシコ・ブリッジ


ルリ「艦長も艦長です。こういうときは艦長がびしっと言ってくれないと」
ユリカ「済みません・・・」
珍しくユリカがルリに叱られている図が展開している。

ミナト「ルリルリご機嫌斜めだねぇ」
メグミ「本当ですねぇ。いつもなら艦長叱るのエリナさんのお株なのに」
ミナト「ひょっとして前回ラピラピにお姫様ダッコを取られたから?」
メグミ「そういえばラピスちゃん、今日はいませんね。お休みですか?」
ミナト「そうなのよ。起きてこないからお寝坊さんかと思って艦長が午前半扱いにしたらしいんだけど、それもルリルリの気に入らない原因らしいんだけど・・・」
メグミ「へぇ、最近ラピスびいきのストーリーが多いですからね・・・」
ルリ「そこ!うるさいですよ!!!」

ミナト達のひそひそ話に目くじらをたてるルリ(笑)

『別にヒロインの座が危ういからとかそんなんじゃありませんけど・・・』
プリプリしている理由を自己弁護するルリ。
確かにそんな気持ちがないとは言わない。
でも本当の理由はそんなところにあるのではない。

今日は何かおかしい
大変なことが起こりそうな不安がある。
アキさんがお休み、ラピスがお休み
普段と違うことはたったそれだけである
たったそれだけの違いしかないのだから、今日も昨日と同じように適当に戦って適当に戦いが終わるのではないかと思える。

でもなぜか不安なのだ。
漠然と胸の奥から沸き上がる不安
嫌な予感とでもいうのだろうか?

それがルリの心の底から否定しても否定しても沸き上がってくるのであった・・・



アマガワ・アキ自室


おかしい
体がだるい
なんだろう、体の調子が悪い

確かにこんな感じは闇の王子の頃はあった。
が、女性の体になるときに治療されて以来、こんな事になることはなかった。
すっかり完治したはずだ。

なのに・・・
なのに・・・

ラピed『大丈夫ですか?マスター』
この艦の本来の人格オモイカネ・ラピスeditionのウインドウが心配そうにアキの顔を覗き(?)こんだ。

アキ「来るな、ラピed」
ラピed「そうはいきません。マスターのヘルスケアをPink Fairyさんに任されています」
アキ「そうじゃない。お前まで・・・」

そう、アキがアキトだった頃の記憶では今日はナデシコのAIオモイカネがぷっつんして連合軍の艦隊を攻撃してしまった日だ。
このことは後にナデシコが半分軍属になる要因を作った。
だが、今回はそうはならないはずだった。
なぜなら現在のナデシコAには未来のオモイカネの人格ラピスであるeditionが宿っているからだ。
ラピedがいる以上、前回のように連合軍を攻撃するようなことはあり得ない。
以前のように軍に口実を与える行為をするはずはないのだ。

だが、なにかが狂い始めている。
いや、狂っている今の状況を修正しようとしているのか!?

アキ「ラピed、私とリンクしないで・・・」
ラピed「そうはいきません。多くの感覚がダウンし始めています。
 私が補正しないと・・・」
アキ「お願いだから止め・・・」

頑張って意識を保とうとするアキだが、まるであざ笑うがごとく意識が暗くなり始めた。

ゾワリ!!!

吹き出す憎悪!!!
アキの心の中で黒百合時代の、火星の後継者の隠れ蓑に成り下がっていた統合軍への憎悪が渦巻いた。

そして・・・

『敵、木星蜥蜴及び連合軍に設定』

アキのサポートを行っていたラピedはその感情にシンクロしてしまった・・・



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第12話 あの「拭いえぬ日々」<前編>



戦闘空域


異変に気づいたのはアカツキがミサイルを撃ち出したときだった。
「え?」
コンソールのターゲットロックオン表示が木星蜥蜴だけではなく連合軍の艦隻にも記されたからだ。

だが既に遅く・・・

バシュー!!!
ドゴーン!!!

ユリカ「え?」
ナデシコの一同は後方で起こる爆炎に呆気をとられた。

そしてそれと気づかずにエステバリスパイロット達は次々と砲火を開き・・・

連合軍の艦隊への被害が続出した。

『総員退艦!おのれ!木星蜥蜴共め!!!』
『いえ、この攻撃はナデシコ側から・・・』
『なに!?』

連合軍側の通信は既にパニック寸前だった。



ナデシコ・ブリッジ


ユリカ「え?え?どういう事?」
ルリ「エステバリス部隊の攻撃が連合軍に当たってます」
ユリカ「うそぉ!!!」
メグミ「パイロットの皆さん、どうしちゃったんですか!?」

対するエステバリス部隊はというと・・・

アカツキ『我々はちゃんと敵だけを攻撃している。
 敵だけを・・・』
ユリカ「でも味方も・・・」
ルリ「エステバリス部隊には連合軍も敵と識別されてしまっているようです」
ユリカ「なんですと?」

ルリの報告にユリカは開いた口が塞がらなかった。



戦闘空域


アキト「おい、ユリカ〜こりゃどういうことだ?」
アキトは木星蜥蜴達だけにターゲットをロックしようとするが、トリガーを押した瞬間、ターゲットは連合軍にも表示される。

結果・・・・

『何やってるんだ!ナデシコ〜〜』
『殺す、絶対お前らを殺す!!』
『ばっきゃろー!やるなら蜥蜴を殺れ!!!』

そんな罵声の大軍がナデシコ側に殺到することになった・・・。



ナデシコ・ブリッジ


メグミ「エステの故障?」
ウリバタケ『人聞きの悪いこと言うな!!!
 俺は女で失敗することはあってもメカでコケたことは一度もない!
 お前達パイロットの未熟を人のせいにするな!』
アカツキ『失礼な!地球の平和を守る僕たちがなんで連合軍を攻撃しなきゃいけないんだ!』
ルリ「エステバリスに異常はありません。エステバリス部隊の敵識別機能は木星蜥蜴と連合軍の両方を敵として認識しています」
ユリカ「パイロットのせいじゃないの?」
ルリ「はい」

だからといって現状は変わらない。

戦闘が続いている以上、敵木星蜥蜴を撃破する以上に味方の連合軍をも破壊し続けていた。

ユリカ「直ちに攻撃止め止め〜〜」
ルリ「今攻撃を止めたら至近に接近された木星蜥蜴に袋叩きに合います」
ユリカ「うぐぅ・・・もう敵だけ攻撃!!!」
ユリカのやけくそ混じりの指揮も戦況には何の影響もなかった(苦笑)



戦闘空域


アキト「敵だけって言われてもなぁ・・・」
撃つそばからターゲットが変わっていたら手の施しようがなかった。

ヒカル「落下傘のお花がいっぱい〜♪」
リョーコ「んなことで浮かれてるんじゃない!」
ヒカル「そんなこと言ったって・・・」
イズミ「なるようにしかなんないわよ・・・」

大体のことを察したイズミは使用火器をミサイル主体からライフル主体に切り替えた。
これならよっぽど目視を誤らない限り誤爆する可能性はない。

が、どうしても火力は弱まる。

砲戦フレーム担当のアキトやリョーコはどうしてもミサイルに頼らざるをえない面があり、ついついミサイルなどの火器を使用してしまう。

すると敵に数倍する味方も攻撃してしまうわけである・・・



ナデシコ・ブリッジ


ユリカ「援護のエステバリス、出撃して下さい。兵装をライフル系に切り替えて・・・」
メグミ「パイロットがいません」
ユリカ「え?」

ユリカの前を「本日はお休みです♪また明日お会いしましょう♪ byアキ」ってなウインドウがこれ見よがしに流れていった。
ちなみにその後からは「今日はお休み。また明日 byラピス」ってなウインドウもひっついて流れていた。

ユリカ「アキさん!?お願いですから出てきて下さい!!
 痛み止めなら私、良いの持ってますから!
 セ○スもバ○ァリンもバン○リンもありますから〜〜
 ねぇアキさん〜」
ミナト「それ、どれも生理痛止めじゃないきがするけど・・・・」
ユリカ「ともかくアキさん、応答して下さい〜〜」

だが、無情にも『しばらくお待ち下さい』のウインドウが脳天気に流れて行くだけであった。

ユリカ「だからなんでTVみたいなテロップしか出ないんですかぁ〜」
ルリ「この非常時にラピスも出ません」
メグミ「アキさんがラピスちゃんと二人でしけ込んでる?」
ミナト「メグミちゃん、ちょっと表現変だよ・・・・」
ユリカ「ともかく誰でもいいから援護〜〜」

そのユリカの叫びに瞳をキラ〜ンとさせたものが一名

ジュン「艦長の危機を救うのが副長たる僕の役目!!!
 今こそ僕がナデシコの危機を救うとき!
 待ってろ、ユリカ
 僕は君のためならたとえ火の中水の中!
 テンカワなんか目じゃないって君の目を覚まさせてやる!!!」
と、叫んでブリッジを飛び出していった。

ユリカ「あれ、いま誰か何か叫んでなかった?」
メグミ「さぁ」
ユリカ「誰かブリッジを飛び出していったと思ったんだけど・・・」
ルリ「エステ、発進許可を求めますけど・・・」
ユリカ「誰でもいいからお願い!」
ルリ「了解・・・」

と、ルリが言い終わる前に・・・

『ユリカ〜〜!!!!』

ドスン!!!!

ルリ「アオイ機、擱坐」
ユリカ「はい?」
プロス「ジュンさん、それ二度目です・・・」
どうもジュンは今回も役に立たなかったようだ(笑)



ラピスの自室


船体の揺れを感じながら、ラピスは小さくうずくまっていた。

「なに、これ・・・
 頭が割れるよう・・・」

ラピスは頭が割れるような痛みに耐えていた。
なにかが頭に流れ込んでくる
そんなイメージ
痛いとか苦しいとか、そんな感覚だけではなく

深く暗い
なんだろう、この感覚は
炎?
激しく燃えるのではなく
静かに陰湿にいつまでも消えることなくくすぶる炎

醜く、ドロドロして
まるで汚泥に指を突っ込むような
そんな嫌な感じ

なに?この感覚は・・・・

だが、ラピスがその深淵に手を触れてみようとしたとき・・・

バシ!!!!!!
強烈に流れ込んでくる何か!

憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!
憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!
憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!
憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!
憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!

「いやぁぁぁぁ!!!!」
ラピスは流れ込んでくる憎悪に狂いそうになり、そして気絶した。



・・・あの人は誰?


気絶するその瞬間、ラピスは男の人の姿を見た気がした。
亜麻の髪の長い男性
黒いバイザーと黒いマントに身を包んだ男性

そう、まるで彼女が男性になったかのような・・・
でも彼女とは違う。
彼女はそんな憎悪に混じった瞳で私を見たりしない
彼女はそんな悲しみに混じった瞳で私を見たりしない

ならこの男の人は誰?

そんなことを思いながらラピスは意識を失った・・・



???


「どうしてアキさんが?
 完治しているはずじゃ・・・」
「わかりません。やっぱりこれが時空の修復機能なのかも」
「修復機能?」
「時空はやはり同じ歴史をなぞろうとします。
 過去を小規模に変えるならともかく、大規模に変えようとするとある点を境に歴史の断絶が発生しまう。
 ちょうど力を入れて曲げた木の枝がぽっきり折れちゃう様に。
 だから時空はそうなる前にその修正しようとするんです」
「でもそれじゃなんでラピスちゃんまで?
 この世界のラピスちゃんはアキさんと感覚リンクをしているわけじゃないわ」
「未来のラピスの運命が今のラピスにフラッシュバックしているのか、
 あるいは本来この場所にいるはずがない人物である為にそのしわ寄せがきているのか・・・」
「でもどうするの?私達が助けにいく?」
「私達が行けばよけい拗れるかもしれません。
 それに私達は本来『ムーちゃんの依頼』を遂行するために過去に来ることを許されているのであって、可能な限り歴史に介入してはいけません」
「アキさんの浮気防止が本来の任務だと思っていたけど・・・」
「それはアキさんに対する口実です。
 ともかく・・・この件に『あいつ』が関わってこなければいいのですが・・・」

彼女達はその様子を見て何もできない無力さを噛みしめていた。



航海日誌 ホシノ・ルリ記す


結局、その日の戦闘は何がなんだかわからないまま終了しました。
怒り狂った連合軍の方々ですが、結局木星蜥蜴の巻き添えになりたくはないとさっさと退却されましたし、木星蜥蜴さん達の方も何がなんだかわからない敵の行動に驚いたのか呆れたのか、適当なところで引き上げてしまいました。

やがて戦場にはナデシコだけが取り残されることになりました。

でも本当の戦いはこれからだったのかも知れません・・・



ナデシコ・ブリッジ


戦い終わって戦況報告・・・というよりかは被害報告を行っていた。

メグミ「幸い被害はジュンさんがむち打ちになったぐらいで済みましたけど」
と、ナデシコ側の被害はそれだけで済んだ。
アキト「シートベルトぐらいしろよ・・・」
ジュン『ちょっと!僕の出番ってこれで終わり!?』←ブロックサイン
イネス「たぶん終わりね」

で、報告はナデシコ側が連合軍側に及ぼしたものに集中しだした。
はっきりいってこっちの方がいろんな意味でダメージは大きい。
まぁ元の歴史を知っているものが見れば、今回の戦闘による被害は幾分ましだったかもしれない。
だが、焼け石に水とも言える。

早速、責任追及の声が内部から挙がる。
プロス「皆さん、味方まで撃つなんて非常識にも程があります!
 幸い死人こそでなかったったらいいようなものの・・・
 葬式と香典代だけは値切れませんからねぇ」
アカツキ「聞き捨てならないなぁ。僕たちが好きこのんで味方を撃ったと思うのかい?」
リョーコ「そうだぜ。攻撃もミサイルを使わずにライフルや打撃戦に切り替えたんだ。
 おかげで危険度はアップしたし。
 感謝の言葉と危険手当をプレゼントしてくれるならともかく、罵倒されるいわれはねぇ」
プロス「そうはいいますが、じゃジキタリスは誰が落としたというのですか?」
ヒカル「あ、それあたし・・・」
プロス「あなた!あの艦はナデシコよりも高いんですよ!!!」
ヒカル「だって〜〜いきなりすぐそばに敵機の識別が出たらやっぱり撃っちゃうよぉ〜」
もっともな理由に何となく納得しそうになる一同。

プロス「・・・まぁいいでしょう。で、皆さんその努力されたという結果は?
 最悪の場合お給料から引かせていただくことに・・・・」
アカツキ「落とした数だけ言おう。20機だ」
プロス「そのうち7割は味方ですが・・・」
リョーコ「勝ったな!オレは15機だ!」
プロス「あなた!味方を落とした数を競ってどうするつもりですか!?」
ヒカル「覚えてない〜〜♪」
プロス「数こそ少ないものの高額なものばかり落とされてますねぇ・・・」
イズミ「バッタをばったばったと・・・・ククク」
プロス「それと同数のスクランブル戦闘機を撃墜されてますよねぇ・・・」
アキト「オレはみんなほど酷くない・・・・流れ弾が近くの施設をちょこっと」
プロス「あなた、あそこのプラントの建設費、いくらすると思っているんですか!!!」
アキト「あれは弾をよける連合軍の艦隊が悪いのであって、それに駐車場に大穴開けただけで・・・そりゃ工場も少し焦がしたけど・・・っていうのはダメ?」
プロス「ダメに決まってます!!!」
イネス「まぁまぁ、みんな保険に入ってるんだから、ネルガルへの損害は少ないんでしょ?」
プロス「ですが見舞金ぐらいは出さなければ先方の腹の虫も収まらないでしょう」

イネスが止めにはいるが既に焼け石に水。
白熱した議論はやがて責任の押し付け合いに転嫁されていった。

アカツキ「僕たちばかり責めるが、あんな機体を押しつけられてまともな戦闘をしろという方がおかしい。」
ウリバタケ「そりゃ俺達整備班のせいだって言いたいのか?」
リョーコ「違うって言うのか?」
ウリバタケ「貴様らの未熟を俺達のせいにするな!
 整備にゃ人の命がかかってるんだ!
 手を抜けばどうなるかは俺達が一番よく知ってる!
 その俺達を信用できないならクビにしてくれりゃいいし、そんな命預けられないような機体に乗ってもらわなくても結構だ!!!」
アカツキ「う・・・」
ユリカ「まぁまぁ・・・・(汗)」

一触即発寸前にユリカが仲裁にはいるが、空気は依然変わらずそのままであった。

ゴート「せめてアマガワが指揮していればあの混乱した状況ももう少しマシだったのかもしれんが・・・」
アカツキ「そりゃ、僕の指揮が下手だって事か?」
ゴート「揚げ足を取るな。あいつはどんな状況でも無意味に解決しそうな安心感があると言っているだけだ。」
ミナト「そうよねぇ〜アキさんはまだお休み中?」
メグミ「ええ・・・」

メグミの声にわざとらしく現れる
「しばらくお待ち下さいbyアキ」
「しばらくお待ち下さいbyラピス」
のウインドウ

ユリカ「でもどうしてエステがおかしく・・・」
ルリ「エステバリスに異常は認められません」
ユリカ「え?」
ルリ「エステバリスは正常です」
ユリカ「んじゃ何で・・・」
ルリ「エステバリスはナデシコからの戦術支援情報を元に作戦行動を行っています」
ユリカ「つまりそれって・・・ナデシコが連合軍を敵って認識しちゃったって事?」
ルリ「そういうことです」
ユリカ「なんで?どうしてぇ〜」
ルリ「それを調査するために連合軍の技術班がナデシコへの立入検査を要求してきています」
ユリカ「ほえ〜」

ルリが指さすとそこには連合軍の連絡艇一団がやってきていた。

メグミ「着艦許可の要請ですけどどう返事しますか?」
プロス「ああ、ネチネチ小言を言われるんでしょうなぁ・・・」
ゴート「とはいえ、シカトしてバッくれるわけにもいかないだろう・・・」
ユリカ「着艦の許可をお願いします」
メグミ「はい、こちらナデシコ、着艦をきょ・・・」
ルリ「ダメ、止めて・・・」
一同「え?」

素直に調査団を受け入れようとしていたナデシコだが、ルリのその声に状況は一変した!

『敵確認!直ちに迎撃します!』
というアラートウインドウがいきなり現れる。

「え?」
ユリカが頭に疑問符を浮かべる前に攻撃は行われた!

バシュゥ!!!
何の迷いもなくナデシコから打ち出されるミサイル
そのナデシコからの一撃は着艦許可が降りるものと思い込んで完全に無防備だった連合軍の連絡艇にあっさり届いた。
そして・・・

ドゴォォォォ!!!

その爆発音を聞いた一同は一斉にある人物に注視する。
「あ、あたしじゃないよ。
 あたしなにもしてないよぉ〜〜」
突き刺さる視線に必死に両手をあげて否定する操舵士のミナト。

だとすると誰が?

メグミ「連合軍から救難信号が出ています」
ユリカ「ほっ・・・大急ぎで収容作業を・・・」
そんな疑問をそこそこに、彼らが死ななかった安心感からか、収容作業を急ごうとするユリカ達。
だが、事態はまだ収束していなかった。
その証拠にルリの顔色はまだ厳しい。

ルリ「オモイカネ、止めて。それは敵じゃない」
ユリカ「え?」

『敵残存!続けて殲滅します!』
というアラートウインドウが再び現れた!!!

ユリカ「ちょ、ちょっとそれはダメ!」
ダメも何も、連合軍は脱出艇でようやく脱出したのだ。
この次攻撃が命中すれば確実に死人が出る。

「オモイカネ、お願いだから言うことを聞いて・・・」
ルリは必死にオモイカネを制御しようとするが、ターゲットのロックオンは解除しても解除してもセットされ直す。

『お願いオモイカネ、止めて!!!!』
ルリは心の中で必死に念じる。

そのとき、ルリは何かに触れた気がした。

ゾワリ・・・・

『なに?この感触は?』

背筋が凍るような憎悪
暗く陰湿な眼差し

殺す!死ね!敵だ!邪魔をするな!

あまりの圧倒的な感覚の流入にルリは思わず卒倒しそうになる。
だが、ここで気圧されればオモイカネは味方殺しの烙印を押されてしまう。
そうすれば彼の末路は想像に難くない

『お願い!失いたくないの!止めて!!!』

ルリは必死に願った。
ただそれだけを願った。

すると・・・

『アラート解除。警戒態勢パターンCへ移行します』
とりあえずナデシコの戦闘モードは解除された。

クルー達はまたナデシコが攻撃し出さないよう、今の内に連合軍の脱出艇を収容しようと必死に作業した。

『どうしちゃったの?オモイカネ・・・』
ルリは親友の変貌ぶりに戸惑いを隠せなかった・・・



航海日誌 ホシノ・ルリ記す


なんとか収容した連合軍の調査班の方々
まぁいきなり撃たれて頭にこない人の方がどうかしているわけで、もちろん到着された連合軍の調査班の方々はおかんむり状態。

人間、他人の欠点をあげつらうのは気持ちのいいもので、それが怒りにまかせている状態ならなおのこと。

ナデシコの欠点を洗いざらい、事細かに枝葉末節まで指摘しまくったあげく、しまいには
「ネルガルはいいですなぁ。くだらない発明に開発費を投入する余裕があって。
 我々にその予算の10分の1でもあれば木星蜥蜴に圧勝するだけの兵器を開発できるのに。世の中とは皮肉に出来ておりますなぁ・・・」
と妬みと嫌味と自分の部署の愚痴をたらたらこぼす始末。

それだけなら私達も一応雇われている身ですから、右から左に聞き流しておとなしく恐縮しているつもりだったのですが、彼らはこちらの弱みに乗じてとんでもないことを言い始めました・・・。



再びナデシコ・ブリッジ


ユリカ「プログラムを書き換える?」
調査員「そうだ」
ユリカ「何故です!?」
調査員「今回の事故原因はナデシコの中枢コンピュータの暴走によるものだ。」
ユリカ「暴走?」
調査員「ナデシコは以前地球から火星へと向かう際、連合軍と交戦している。
 そのときにナデシコの中枢コンピューターは連合軍のことを敵と学習してしまった。
 だがその後ナデシコが極東方面軍に編入されると連合軍の尖兵となって戦うこととなった。敵であるはずの相手に背中を見せながら戦わされたことによりストレスが蓄積され、やがて暴走した・・・というわけさ」
さすがは調査員、もっともらしい推論を並べ立てていく。

ルリ「待って下さい。オモイカネは・・・」
調査員「オモイカネとは?」
ルリ「名前です。あなた方が消そうとしているコンピュータの・・・」
調査員「AIに名前を付けるなんて20世紀の悪しき風習だな。
 まぁお子様達が動かす戦艦ではこういう子供っぽいことが流行るんだろうが・・・」
ルリ「でもオモイカネはオモイカネです!」
調査員「オモイカネでもカルイカネでもかまわん!」
ルリ「オモイカネには自己が暴走した際に自動的にリセットを行う機能があります。それで状態が解消されるはずです!」
調査員「それが事態を逆に悪化させている。リセットされようがその記憶は蓄積される。状態は元に戻るのに初期の学習の結果と後から学習する事の矛盾はどんどん広がって行くばかりだ。
 当然どこかで臨界点はやってくる。それが今日の騒ぎだ」
調査員はルリの抗議をはねのけてきっぱりとそういう。

ゴート「・・・つまりどういうわけだ?」
イネス「まぁライバル企業に吸収されたあげく、顎でこき使われたストレスが貯まりに貯まってやがてプッツン・・・って所かしら?」
プロス「わかります。身につまされるぐらいよくわかります。
 心中お察しします・・・」
調査員「コホン!」
外野を制した後、調査員は最終宣告を粛々と行っていく。

調査員「連合軍に所属する戦艦が連合軍を攻撃するなんてナンセンス以外の何者でもない。ナデシコのプログラムは全て消去した後に軍に絶対服従なものに書き換える」
ルリ「都合の悪いことは全て消去ですか?
 今までのことは全てなかったことにするんですか?」
調査員「機械に感情など不必要だ。人の扱えない道具に何の意味がある?」
ルリ「ナデシコは火星まで行って、そして帰ってきた唯一の戦艦です。
 それまでに学習してきた木星蜥蜴達との効率的な戦闘データも消してしまいますよ?」
調査員「連合軍を敵だと思っている頃の記憶など百害あって一利なしだ。」
ムネタケ「そうそう、ナデシコは軍に絶対服従するお船に生まれ変わるのよ♪」
ルリが抵抗するが、それはオモイカネがやらかした事実の前には揺らぎそうにもなかった。

ルリ「・・・皆さんはそれでいいんですか?
 『仲間』を失ってもかまわないんですか?」
ルリはナデシコクルーに問いかけた。
みんな言い難そうにしていたが、一人が口を開いた。

アカツキ「僕たちの役目は緑の地球を守ることだ。
 オモイカネが優秀なAIなのはわかっているが、それはあくまでも目的を上手くやるための手段にすぎない。
 だがその手段を守るために目的をないがしろにして良い・・・
 それは本末転倒だ。
 優先すべきはどっちだい?」
ルリ「・・・・」
そのアカツキの言葉にクルー一同はおろかルリも閉口する。

リョーコ『アカツキの野郎、隊長がいないもんだから好き勝手にいいやがって!』
ヒカル『確かに、隊長がいたらあんな台詞吐こうものならギッタンギッタンにしてるでしょうねぇ・・・』
イズミ『ま、いない人間に縋っても始まらないけど・・・』
確かにこの場にアキがいれば脅しても何しても防ぐだろうが、いないものは仕方がない。
リョーコ達の心の中でのツッコミも空しく、その正論を覆すだけの反論は出なかった。

ルリ「大人ってずるいです・・・」
ユリカ「ルリちゃん・・・」
ルリ「人の記憶はリセット出来ません。
 そして次は私達がオモイカネと同じ気持ちになるんです。
 そのとき皆さんはどうするんですか・・・」
ユリカ「そ、それは・・・」

確かに機械はリセットして忘れることが出来る。
でもナデシコに乗っている自分たちの記憶までは消せない。
人間は機械のように忘れてしまえない。
なら今度は自分たちがリセットされるのか?
そうやって都合の悪いことに向き合わず、不要なものをどんどん切り捨てていって・・・
最後に残るものは一体何なのか?

確かに自分たちは組織の歯車
でも心を持った歯車
気に入らないからと、都合が悪いからと
まわらない理由を見つめ直そうともせず従順にまわる歯車にどんどん差し替えていって、
そこに何が残るというのだろうか?

「そんなのナデシコじゃない・・・」
ルリの呟きはどれだけのクルーの心に響いたのだろうか?



航海日誌 ホシノ・ルリ記す


さっそく調査員の方々は派手な機材を次々と持ち込み、中枢であるオモイカネを殺す・・・もといオモイカネを消して新しいAIに入れ替えるべく作業を開始しました。
普段は軍隊も官僚主義的なのか、あれやこれやの理屈を付けてナデシコへの援護を遅らせるくせに、こういうときに限って素早く対処されるのですから呆れます。

ともあれ、オモイカネを消させるわけにもいきませんので、それを阻止すべく行動を開始することにしました。
まずは賛同者を募って協力してもらうことから始めました。

オモイカネのコアへのアクセスキーを持つ艦長のユリカさん
コンピューターに詳しい整備班長のセイヤさん
そして・・・

本当はアキさんとラピスも仲間に出来たらもっと心強かったんですけど・・・

ということでオモイカネ救出作戦は発動するのでした・・・



ナデシコ・アキトの部屋


「リセットか・・・いくら何でもそりゃないよなぁ・・・」
アキトは自室でゲキガンガーを見ながらそんなことを呟いてみる。
まぁアキトにすれば今回のオモイカネの暴走は味方を攻撃した元凶だし、実際疑われるという迷惑も被った。

確かにオモイカネは愉快なAIだけど、生活の影響としては潤いぐらいしか与えてもらっていないかな?という程度の自覚しかない。
はっきり言えばアキトにとって他人事に近いのだ、
オモイカネへの今回の処置という事項は。

可哀想になぁ・・・というぐらいの感慨しか湧かない。
そしてそれは多くのクルーにとって平均的な感覚だろう。

そんなことをアキトが考えていると・・・

「ア・キ・ト♪」
「うわぁ!!!」
いきなり背後から声をかけられて驚く。
慌てて振り返るとそこにはユリカがいた。

「ユリカか・・・部屋に入るときはノックしろっていつも言っているだろう?」
「ちょっと付き合って欲しいんだけどな〜」
ユリカはいつもの断りきれない声で頼んだ。
「付き合うってなにをだよ。」
「ルリちゃん風に言えばナデシコがナデシコであり続けるために必要なもの・・・」
「はぁ?」
「行けばわかるよ♪」
はぐらかすように言うユリカの言葉にアキトは渋々従った。



ナデシコ・ウリバタケ自室


アキト「うわ、まるで漫画に出てくる博士の研究所みたい」
ウリバタケ「おい、そこ作りかけのガレキがあるんだから、踏むなよ!」
アキト「にしても・・・ってなんでルリちゃんまで?」
ルリ「私が首謀者ですから♪」
アキト「ユリカじゃなくて?」
ルリ「ええ」

アキトがユリカに引っ張られてやってきたのはウリバタケの部屋。
で、足の踏み場もない部屋にはいるとそこには予想外にルリの姿があった。
何かやらかすならユリカかウリバタケだろうと思っていたのだが・・・
そうか、オモイカネの一番の友達といえばルリだった。

「オモイカネを消したくないってルリちゃんの気持ちも分からなくはないけど、辛い記憶を持っててもオモイカネが苦しむだけなんじゃないかな?」
アキトはそれとなく諦めるように言ってみる。
もちろんまた戦闘中にコントロールを奪われたらたまらないというのもあるのだが、それ以上にアキトのオモイカネへの無知がそう言わせたのだ。

所詮はコンピュータ。
再インストールすればいいではないか

アキトの認識も他のクルーの認識もそんなものだ。
ちょっと人間くさいコンピュータ程度の認識しかないのだ。
アトムの様にロボットは友達なんてのは漫画の中の話だ

でもルリは言う。

ルリ「オモイカネは生きています。
 心だってちゃんとあります」
アキト「心って・・・AIでしょ?」
ルリ「オモイカネは『自分』と『他人』を理解をするはじめてのコンピュータなんです」
アキト「『自分』と『他人』?
 でも別のコンピュータでも・・・」

アキトの疑問ももっともだ。
人間の接客をするコンピュータは数々ある。
人間の言葉も解する。
それは『自分』と『他人』を理解するということと違うのだろうか?

ルリ「それは人間が決めたルールに従っているだけです。」
アキト「ゴメン、よくわからないんだけど・・・」

ここでAIに関する議論が始まるとは思ってなく、困惑するアキト。
そこでルリは優しい例を挙げた。

「じゃ、アキトさんは私やラピスの料理の塩気を少なくしてますよね?
 でも艦長のは少し濃いめです。
 なぜそうしますか?」
「そりゃ美味しく食べて欲しいから・・・」
「でもそれってどうしてですか?」
「どうしてって・・・・」
「それって手間ですよね?
 食堂のマニュアルどおり決められた材料を決められた味にすれば良いだけですよね?
 なのにどうしてそこまでやってあげるんですか?」
「喜んで欲しいから・・・としかいいようがないけど」
「そう、人間なら美味しく食べてもらいたいっていう理由で十分なんです。
 でもコンピュータは価値の基準が必要なんです。
 ルールを決めてあげないといけないんです。
 美味しく食べてもらいたい・・・なんて曖昧な基準じゃダメなんです。
 子供には塩加減はどのぐらいとか、大人には塩加減はどのくらいだとか
 辛いと言われたら何パーセント少なくしてみようとか。
 でもそれって決められたこと以外のことは何も出来ないって裏返しなんです」
「そう言えば・・・」
ちょっと難しい話だがアキトはルリの真剣な目に話を聞いてみようとする。

「そもそもその料理が苦手かもしれない。だから違うのを出してあげよう・・・
 なんてこともルールを決められていないと出来ないんですよ。
 でもそれって人形と同じだと思いませんか?」
「人形?」
「ええ。人の姿に似せたもの。
 その造形をどこまで深く掘り下げるかは作る人間の洞察力次第。
 でも逆を言えば、人の気づかないもの、人が不要と思ったもの以上には成り得ない」
「・・・オモイカネは人と同じ事が出来ると?」
「ええ。オモイカネは自分と他人との距離を測ることが出来ます。
 それは自分が何をされれば嬉しいかを知ることと同じなんです。
 そして他人が自分を好きなら自分も嬉しくなる。
 他人に好かれようとするなら他人が嬉しくなるようなことをすればいい。
 それは他者を知り己を知ることに繋がります。」
「他者を知り己を知る・・・」
「自分という自我は常に他者を意識することでしか形成されません。
 自分が世界からどのようなありようを求められているかという事を知ることに他なりません。」

わかったような、わからないような
そんな顔のアキトを見てルリはちょっと専門的になりすぎたと反省する。
そしてもっとわかりやすい例を挙げた。

「つまり、ナデシコのAIをオモイカネから別のAIに入れ替えるって事は、
 ナデシコ食堂で全ての人に全く同じ味の料理を出す
 ・・・って事と同じ意味なんですよ。」
「誰にでも同じ味の料理を?」
「でもそれってナデシコ食堂ですか?
 ナデシコ食堂と呼べますか?」

アキトはルリの言わんとしたことがようやくわかった。
非常に言葉にしにくいけれど、

空気、雰囲気、佇まい
そんな何気ないことだけれど
誰かが誰かを気遣う気持ち
そんなものの根底にオモイカネという存在がいるとしたら
いや、オモイカネを許容できるだけの包容力をナデシコが無くしてしまったら

それは『ナデシコ』ではなく『ただの戦艦』に成り下がってしまうのではないか?

ルリはそう問うているのである。

しばらく考えた後・・・

「いいよ。手伝うよ」
「アキトさん♪」
アキトが快諾したのを見てルリはうれしそうに笑った。

「で、俺は何をすればいいの?」
「あれを・・・」
ルリが指さした先にはバーチャルルームにあるヘッドセットがあった。

ウリバタケ「これでおまえも電脳戦士さ♪」
アキト「つまりこれって・・・」
ルリ「オモイカネの中に入るって事ですよ」
アキト「そんな〜〜俺出来ないよ」
ルリ「大丈夫です。私がナビゲートしますから」
ユリカ「アキト、頑張って♪」

こうしてアキト達はオモイカネの心の中にダイブするのであった・・・。



アマガワ・アキ自室


「お願い・・・・
 私の心の中を覗かないで・・・
 醜い心を見られたくないのぉ・・・」

アキはうずくまりながら、連合軍の調査班やアキトとルリ達から受ける精神的接触に悶えていた・・・。

ってことで後編に続きます。



ポストスプリクト


取り敢えず前編ですので前回と同様にポストスプリクトは女アキトことアマガワ・アキさんへのインタビューという形式に変えさせていただきます。

アキ「ほぉ・・・珍しくダークネスなぁ・・・・」

−いいでしょう♪

アキ「それにしてもどうするの、この後?
 私の正体をバラすの?」

−バラしたりはしませんけど、いろいろやりますよ♪

アキ「そりゃねぇ・・・ここまで引っ張ってるんだから・・・」

−例えば、北の字が出てきたりしますよ

アキ「いいの?この時期に赤い機動兵器なんか出てきたりして・・・」

−いや、花束持ってプロポーズなんかを・・・・

アキ「おのれは!ダークネスをやるって言ってたんじゃないのかぁぁぁ!!!(木連式柔炸裂!!)」

−・・・・・・というわけで後編をどうぞ。

ちなみに後編の内容とは全然違うので予めご了承下さい(笑)

Special Thanks!
・アキラ 様
・yao2157 様
・SOUYA 様