アバン


日時と場所は深く追究しないで。
未来からやってきた自分の赤ちゃんの世話をすることになったアキさん。

とりあえず、お迎えが来るまで無用の混乱を避けるべく秘密裏に育てよう・・・って事になったのはいいのですが・・・
本当に大丈夫なんですか?

ああ、これって外伝なので黒プリ本編とは何の関係もありませんのでそのつもりで。



秘密作戦会議


古来より密航という行為は大変難しく、また発見される可能性が非常に高いものだ。
なぜ?と問われると説明が長くなる。

一番重要なのは物資の流れ・・・とりわけ糧食の問題であろう。

長い航海の中、物資の補給はきわめて計画的に行われる。
たとえば200人の乗員が乗り込む戦艦が2ヶ月間、補給もなしに航行しようとすれば計3万6千食の糧食が必要だ。
仮に一人増えただけで2ヶ月分180食が余計に消費されてしまうのである。
誰かが大食漢だからといって二人分食べると言い出していたら、糧食はあっという間になくなってしまう。
とはいえ、糧食を予め計画日数の倍ほど用意できるかといえば、そんなことは出来ない。
余剰な食料を購入する予算を確保することから始まり、物資の手配、賞味期限の吟味、格納スペースの確保、増えた積み荷分の燃料の確保、etc.・・・

ともかく、航海で遅れる日数まで正確に計算されて物資は補給される。
もちろん、これは予算、物資の補給が全て潤沢に用意されている場合の話だ。
それが適わぬ場合はかなり程度の低いレーションなどで我慢させられることがある。

つまりだ。
余剰をある程度確保してあるにしても、それは厳格に管理されていて、おいそれと人員を増やすわけにはいかないのだ。

まぁ、仮にここまで状況が厳しくないにしてもだ。
航行中の戦艦では物資の調達がことのほか難しい。
気軽に市街地に出かけてポケットマネーでお買い物・・・というわけにはいかない。
購入窓口は全て事務方を通さないといけない。
ここで各部からの申請に対し、何が必要で何が不要で、どのぐらい供給し、どのぐらい消費したかを把握し、帳簿上で収支がチェックされている。
たとえ私物の持ち込みでもチェックされ、その存在は常に把握される。

整備班長ウリバタケ・セイヤの使い込みなど、とっくの昔にばれていたが、単にお目こぼしを受けていただけの話だ。

・・・つまり、何が言いたいかというとだ。
人間は生きていく以上、糧食を含めた物資を消費する。
物資を消費するということは、その人数分だけ余分に物資が減るということだ。
そして航海中の戦艦は物資の流れを事務方が把握しているのだから、余分な物資の減少はたちどころに事務方の知ることとなる。
彼らに知られないようにするためには物資を消費しなければ良いのであるが、そんなこと出来るはずもない。
最低限、食わねば死んでしまう。大概の密航者は餓死すれすれの状態に陥る。
だから密航は極めてリスクの多い手法なのである。

で・・・・
「ここに一人、密航者を匿っているわけだけど、この子に必要な補給物資を如何に確保するかが今回の作戦内容よ。」
『内容って・・・どうするんですか?』
「だから、ラピedがこれから読み上げる物資の伝票を偽装して・・・」
『でもいくら私でも裏付けのない資金は捻出できませんよ?』
「たとえば大根を1割多めに発注したことにしてその金額で買うとか・・・」
『それはダメでしょう。ホウメイさんが伝票と入荷量を必ずチェックします。第一請求がきた時点で金額が合わないって大騒ぎになります。』
「・・・んじゃセイヤさんの使い込みに便乗して紛れ込ませるというのは?」
『それでもいいですけど、所望の物資を手に入れる方法はどうします?』
「そ、それは・・・」
『あんなもの、どこの補給部隊でも扱ってませんよ。
 正規ルートに伝票を発行した時点で犯行が露呈します。』
「・・・やっぱり?
 じゃどこかに寄港した時にまとめ買いするしかないのか・・・」
『でもどうやってこの部屋まで運ぶんです?
 通路をそんなの抱えて歩いていたら思いっきり目立ちますよ?』
「確かに。ならジャンプを使うしかないのか・・・」
『CC、あと何個持ってます?』
「3個」
『一往復したら終わりですね。何日分買ってこれます?』
「・・・さぁ」
『第一、排泄物とかゴミを収集しにきた人が怪しみません?』
「かもしれない。」

色々考えたが八方塞がりだ。

「なんで紙おむつと粉ミルクを買うだけでこんなに苦労しなきゃいけないんだ・・・」
アキは溜息をつく。
そりゃ、戦艦にベビー用品を持ち込もうという方がおかしい(笑)



ママプリ
ママはプリンセス オブ ダークネス<策謀編>



ナデシコ・食堂


「・・・どうしたんですか?」
「なにが?」
エリに呼び止められるアキ。

「なにって・・・ずいぶんお疲れですね」
「そ、そんなことないわよ。」
「そうですか?目の下に隈が出来てますよ。
 寝不足ですか?」
「あははは、ちょっとゲームを徹夜でやりすぎちゃって〜〜
 ゼ○サーガ、おもしろいわよねぇ♪」
「・・・・ジロ」
「あはははは(汗)」
エリの疑惑の眼差しをなんとか笑って誤魔化そうとするアキ。

だが、周りからそれとわかるほどアキはくたびれている。
育児をしながら通常の業務をこなそうなど無謀以外の何物でもない。
夜は寝入った頃にたたき起こされ満足に熟睡できず、昼間もシオンのことを気にしながらラピedからの警告が来る度に「ちょっとお化粧直しに♪」とかいいながら自室との往復を繰り返す。
既に1、2日でアップアップの状態である。

一人でこんな事を繰り返すのは非常に無理があった。



再び秘密作戦会議


「・・・とりあえず一人と一AIだけで戦況を維持するのは無理という結論に達しました」
『賢明です』
いろいろロジックがループにはまりかけていたけど、なんとか脱出した二人。
しかしこの間に消費した労力により脱力する。

「外部に協力者を求めましょう」
『それは正しい判断だと思いますが・・・誰を仲間に引き入れます?』
「う〜ん。秘密厳守を守ってくれそうで、誠実で、帳簿関係を融通してくれそうな人。
 プロスさんあたりなら最高なんだけど・・・」
『確かに、あの人が味方になってくれれば鬼に金棒ですけど・・・
 無理だと思います』
「やっぱり?」
『ええ、なんせ「交際は手を繋ぐ以上は禁止」とか「ナデシコは保育園ではありませんので。ハイ♪」って言っておられますので』
「うにゅ〜〜」
プロスペクター氏勧誘断念

「ホウメイさんなんてどう?
 あの人なら理解示してくれそうよ。
 子育ての経験とか・・・」
『そういって実は独身だったらはり倒されますよ?』
「う・・・確かに」
ホウメイさん勧誘保留

「セイヤさんなんてどう?
 唯一の妻帯者だし、子育ての経験とかありそうよ」
『あの人が子育てですか?
 発明にかまけていて家庭を省みていなかった気がします』
「・・・そうなんだよなぁ。でも結構子煩悩かもしれないよ?」
『そうかもしれませんが・・・
 シオンさんのフィギュアとか作られたらどうします?』
「・・・」
ウリバタケ・セイヤ勧誘却下

「ミナトさんなんてどう?包容力あるし」
『可愛いものには目がなさそうですけど・・・
 なんか色々着せ替え人形させられそうですよね。』
「着せ替え?」
『ええ。
 ほら、ベビー服でコアラとかレッサーパンダとか猫スーツとか、そういう可愛いのがあるじゃないですか。』
「う・・・」
ハルカ・ミナト勧誘躊躇

「ユリカなんてどう?艦長権限で何でも出来そう・・・」
『それって火中の栗を拾うって言いません?』
「言いそうだね・・・」
二人の頭の中で積極的に助力してくれようとして墓穴を掘りまくるユリカの姿が浮かんでいた。
ミスマル・ユリカ勧誘破棄

結局ナデシコ内を見回しても育児に精通してそうな人物を見いだせなかった。



ナデシコ・ブリッジ


それはお昼の出前の時である。
「ねぇ、アキ?」
「なに、ラピスちゃん?」
「今晩、お泊まりしていい?」
ラピスはアキのそばに近づいてきてスカートの裾をギュッと握り、上目遣いでお願いした。

「ええ、いいわ・・・・」
そう答えそうになってハタと気づく。

まずい。
今、自分の部屋に来られたらはなはだまずい!
だって今、部屋にはシオンちゃんがいる。そんな姿を見せようものなら・・・

「ど、どうしてお泊まりしたいのかなぁ〜〜?」
「だって最近アキがお泊まりさせてくれないし・・・」
「ギク」
「お泊まりしちゃダメなの?」
上目遣いで尋ねるラピスの顔は凶悪なまでの威力を誇る。
ダメ!なんて言おうものなら、まるで幼児虐待でもしているような気分にさせられること請け合いであった。
でもここでうんと言うわけにはいかない。

アキは心を鬼にして言った。
「・・・・ゴメン」
「私はもう用済みなのね・・・」
「そ、そんなんじゃないって・・・」
「私よりもっと若い子がいいのね」
「ギク!」←当たらずとも遠からず(笑)
「私は弄ばれるだけの女だったのね」
「どこでそんな言葉を・・・って利用なんてしてないでしょ・・・」
「いいもん!」
ラピスはダー!!!と走り去り、ミナトの胸に飛び込んだ。

メグミ「アキさん、ラピスちゃん泣かしたらしいよ」
ユリカ「アキさんが珍しいですねぇ」
ルリ「何でももっと若い子に乗り換えたとか」
ヒカル「さんざん弄んでってやつ?」
リョーコ「お、俺は信じないぜ。隊長がそんなことするわけないじゃないか。」
イズミ「フフフ、若いわね」
ミナト「よしよし、泣かない、泣かない。
 アキさん酷いよねぇ。今夜は私が添い寝してあげるから」
みんなの陰口に居たたまれないアキ。

『たかがお泊まりを断っただけで何故ここまで極悪人扱いされねばならんのだ?』
世の不条理に痛めつけられるアキであった。

そして・・・

「アキさん、どうしてラピスちゃんにあんな酷いことしたんですか?」
アキトのその不用意な一言がアキをキレさせたのは言うまでもなかった。



アマガワ・アキ自室


シオンちゃんがスゥスゥ眠っている横でアキのイライラはマックスに達していた。

「っていうか、なんで私だけこんなに苦労しなきゃならないの?」
『ならないのって・・・あなたの子供・・・』
ラピedは下手にツッコミを入れるが、、それはやぶ蛇であった。
「ほう、確かに未来のとはいえ私の子供だから、私が世話するのは良しとしましょう。
 でも、もう一人保護責任があるくせに他人事のように『どうしてラピスちゃんにあんな酷いことしたんですか?』なんて人の事情も知らずにのほほんと他人を責める奴がいるのをどう思うよ?」
『思うよ?って言われても・・・』
「大体私の子供って事はあいつの子供でもある訳よねぇ?
 なら私だけが育てるなんてナンセンスだと思わない?
 思うわよね?
 思うっしょ?」
『・・・・・・・・否定はしませんが最良の改善策かどうかは』
「いや、最良の策だと認定しました」
『ちょ、ちょっと・・・』
アキはよほどキレていたのか、ラピedが制止するまもなく、コミュニケを操作してアキトを呼びだした。

ピポパ

「あ、アキト君♪
 これから私の部屋に来ない?
 なにって、用がなきゃ呼んじゃダメなの?
 仕込みなんか後で手伝ってあげるから・・・
 なぜって?
 それは来てのお・た・の・し・み♪
 もちろん、君一人でよ♪
 みんなには秘密だからお忍びでやってきてね♪
 じゃ〜♪」

ブチ!

「フフフ、道連れにしてやるから・・・・」
『アキさん・・・とうとう女の武器を使い始めましたね・・・』
「緊急かつ非常事態ではあらゆる非合法手段が許されるのよ♪」
開き直ったアキに何を言っても無駄であった(苦笑)



しばし後、アキの自室


男の顔でどんな表情が間抜けかと問われれば、身に覚えのない女性から
「この子はあなたの子供よ」
と宣告された時の表情ほど間抜けなものはないだろう。

今、テンカワ・アキトはその状態に陥っていた。
アキから直々のお誘い。
しかも女性の自室に招待されたとあっては、たとえ相手にその気がないとはいえ、ほんのちょっぴりは期待してしまう。
で、あり得ないとは思いつつも、下着を新品に替えてみたり、歯磨きをしてみたり、シャワーを浴びたり、バカだなと思いつつも準備だけはしてみたりするのは男の性であろう。
で、逸る気持ちを抑えつつ、過剰な期待はしまいと心がけながら、心のどこかでそわそわしてしまう。
だが、そんな幸せな気分もアキの部屋のドアを開けるまでであった。

「やぁ、いらっしゃい♪」
と笑顔で出迎えられて、部屋に入ったその数秒後、冒頭の台詞である。
アキトの顔がどれだけ間抜けか想像がつくだろうか?

「・・・俺の・・・子供ッスか?」
「ほらほら目元とかそっくりでしょ?」
シオンをアキトのそばに近づけ鏡をかざす。
確かにスモール版アキトといった所である。

「・・・」
まだ信じられないのか、唖然とするアキト。
そりゃそうだろう。
いきなりこの子はお前の子供だといわれて平然と出来る男はそうはいない。
ましてや身の覚えが全然なければ・・・

しばしの沈黙の後、アキトが導き出した答えが
「アキさん、いつの間に・・・」
「え?」
アキトは自分とアキを交互に指さし、そして最後にシオンを指さしてこう言った。
「俺とアキさんがいつの間に・・・・」
「なんでアタシとあんたの子供なのよ!!!」
「いや、知らない間に押し倒されたのかと・・・」
「誰が誰を押し倒すですって!!!」
「ひぃぃぃ、冗談です!!!」
銃を突きつけるアキに本気でおびえるアキト

だが・・・

「う・・・・」
『し、シオンさんが起きてしまいます!』
「「シーーーー」」
ラピedの警告にようやく気づく!
起きて泣き出しそうになるシオンを見て互いの口を塞ぐ二人。

「ふにゅ・・・・スヤスヤ」

なんとかシオンちゃんを起こさずに済んだようだ。
思わず小声で話し出す二人。

『大体なんで私とあんたの子供なのよ。
 この子は生後数ヶ月よ。あたしがいつ産んだって言うのよ』
『数ヶ月前と言えばナデシコに乗る前・・・・
 もしかして未婚の母?』
『いっぺん地獄を見したろうかぁ?』
『じょ、冗談です〜〜
 第一俺だって身に覚えがないですよ。
 その・・・・経験だって・・・』
『だ・か・ら!
 この子は未来から来たんだって!』

突拍子もないことを言われて目を丸くするアキト。

『・・・未来?』
『そう、一昨日の雷で・・・』
『またまた冗談を〜〜
 いくら何でもそんな非常識な話、漫画でもありませんよ〜』
『いや、アニメにはあるわよ』

そういってアキは「ママ4」と題されたアニメのDVDを見せる

一時間後・・・・

『・・・フィクションじゃないですか!
 こんなので信じろっていう方が無理ですよ』
『往生際が悪いわねぇ。男らしく認知しなさい』
『・・・アキさん、それってなんか、イヤ〜ンな感じです』
『んじゃ、証拠を見せてあげるわよ』
『証拠?』

次にアキが見せたのはこの前の雷の夜のシオンママとアキとの会話であった。
ただしアキに不利な会話は編集されていたが(笑)

『良くできた合成ですね。』
『合成じゃない〜〜』
それでも信用しようとしないアキト。
そりゃそうだ。いくらゲキガンガー好きとはいえ、漫画の世界が現実的に起こるなんてすぐに受け入れられる方がおかしい。

と、そこに・・・

「びえぇぇぇぇ〜〜」
シオンちゃんが起き出した。

「お、起こしちゃった?」
『どうやらお腹が空いたようです』
「えっと、ミルクミルク・・・アキト君、ちょっとそれまであやしてて」
「え?俺がッスか?」
「そうよ。高い高いが好きだからやってあげて」
どさっとシオンをアキトに押しつけると彼女はミルクを作りに台所の方に向かった。

そんな彼女を見て、
『なんか、お母さんみたいだなぁ』
という感想を持ったアキトであるが、高い高いしながら、ふとシオンに目をやると・・・

「キャ♪キャ♪キャ♪
 パ〜〜♪パ〜〜♪」
「・・・・バカにされてる?」
「あら、ご機嫌いいみたいよ?
 ほら、やっぱりパパだから安心してるのよ」
台所のアキがそう言った。
普通は赤の他人に赤ちゃんはなかなか懐かないものだ。
ちょっと母親が離れても泣き出す子が多い。
ましてや赤の他人がいきなり抱き上げたら、まず泣き出す。
なのに、泣き出しもせず嬉々として喜んでいる。

『・・・本当に俺の子?』
アキトはふとそんなことを思う。
仮に自分の子ではなくても、この子の世話をしているのが苦じゃないことに気づく。
まぁ他人に言わせれば子供好きになるのであろうか?
そういえばなにげにルリやラピスに好かれている。

でも・・・
いま漂うこの幸せな家庭生活みたいな雰囲気が何となく気恥ずかしくもあり、心地よかったりするのに気づいた。

「本当かどうかわからないけど・・・・この子が俺とアキさんの子供だったら良いかなぁ・・・なんちゃって(テレ)」
と、思わず口に出してみたりするアキト。
だが、
「あ、それだけはないね。絶対!」
とアキは速攻で否定する。

「な、何でですか?未来の事なんてわからないんじゃないですか!」
「たとえ未来のことでもそれだけは絶対にあり得ない。
 天地がひっくり返ってもあり得ない!」
「・・・・何もそんな力の限り否定しなくてもいいじゃないですか」
「それが乙女の事情ってやつよ」
「事情・・・ですか。しょぼん」

アキト君、どんなにいい雰囲気になってもそれだけは適わないんだよ(苦笑)

と、そこでアキは重大なことを事実に気がついた。
「あ〜〜〜!!!」
「どうしたんですか、アキさん!?」
「ミルク切れてる・・・」
「ミ・・・」
「そういえば紙おむつも・・・」
「紙おむつもって・・・」

そう、残り少なかった粉ミルクはもうなくなっていました。

「アキト君、買ってきて」
「買ってきてって・・・そんなのどこに行って買うんですか?
 いま海の上ですよ?」
「成せばなる!」
「出来ませんよ!第一そんなの艦内にどうやって持ち込むんですか!
 一発でバレますよ!!!」
「それを昨日から悩んでるのよ。
 アキト君、ほらなんとかジャンプでバーっと買って来れない?」
「なんとかジャンプってなんッスか!そんな漫画みたいな事出来ませんよ」
「貴様、それでもゲキガンガーのファンか!気合いと根性とガッツでなんとかしなさいよ!」
「そんなもんじゃ何ともなりませんよ、ってどれもほとんど同じ意味でしょ!
 そういうときは知恵と勇気とかそういう・・・」
「男のくせに甲斐性なし!」
「甲斐性の問題じゃなくってですねぇ・・・」
「マ〜〜」

大人達が言い争い・・・またの名を責任の擦り付け合い・・・に興じているそのとき、シオンはなにやらあらぬ方向に向かって叫んでいた。

「マ〜〜マ〜〜マ〜〜」
「「・・・・?」」
その声につられて二人がそちらの方に向くと・・・・

どっさり・・・

「アキト君、あれ何に見える?」
「なにって・・・粉ミルクの缶に見えます」
そう、いつの間にか床の上には10缶もの粉ミルクが置かれていた。
それだけなかった。

ボワワワン

『ゲェ!ボソンジャンプ!?』
アキは内心驚いたがアキトの手前、声に出すわけにも行かない。
だからそれを見ていたアキトはまるで誰かが魔法の呪文でも唱えたかのように思った。

「・・・今度は紙おむつみたいね」
「そうですね。」
「マ〜〜♪マ〜〜♪マ〜〜♪」
「・・・・これはつまり・・・未来からの贈り物か!」
「未来からって・・・シオンちゃんのママからって事ですか?」
「そうよ♪そうに違いないわ♪」
諸手をあげて喜ぶアキ。
・・・あまりにも物資の調達に頭を痛めていたのと育児疲れの為に、深く考えるのを止めてしまったようだった(笑)
アキは早速粉ミルクを抱えてキッチンに向かいミルクを作ろうとする。
アキトはその光景を見て、シオンが未来から来たのではないかと信じるようになってきた・・・

そしてひょっとしてこの子が自分の未来の子供なのかな?と思い始めていた・・・

だが、この時の彼らの想像はいささか甘かった。
こんなピンポイントで未来から過去に物資を送れるくらいなら、
いや、こんなに正確にシオンのいる場所を知っているくらいなら、はなっから本人がシオンを迎えに来てもおかしくない。

となると、誰がこんな事をしたのか・・・
想像力をめぐらせる必要があったかもしれない。



ミスマル・ユリカの自室


「折り入ってお話が」
「はぁ・・・」
ユリカはプロスから内緒の相談を受けていた。

部屋に引き入れると早速プロスはあるものを取り出す。
「なんですか?それは」
「伝票です。」
「伝票?」
「ええ、しかも粉ミルクと紙おむつの」
「粉ミルクと紙おむつの?
 なぜそんなものが?」
意外なものの伝票に驚くユリカであるが、プロスが両手を広げてお手上げのポーズを取った。

「わたくしも見落としなどしないと自負しておったのですが、今日まるで降って湧いたかのように書類の隙間に挟まっておったのです。」
「それはまた・・・」
ユリカは驚く。
プロスが事務関係で見落としをするなんて考えられないことだからだ。
でも驚きはまだまだ続く。

「しかも、この伝票、発行が1ヶ月前なのですよ。こんなイレギュラーな品物、発注してもすぐに入らないですからねぇ」
「ずいぶん計画的ですねぇ」
「そうなんです。しかも・・・」
「しかもって・・・まだ何かあるんですか?」
「ええ、さっき現物を調べに行ったのですが、搬入されている半年分の粉ミルクのうち、10缶ほどがなくなっているのですよ。紙おむつも」
「全部じゃなくって?」
「ええ。まるで必要な分だけ持ち去ったかのように・・・」
「・・・・それはつまりこのナデシコに粉ミルクと紙おむつを必要とする人物が乗り込んでるって事ですか?」
「そうなりますです。はい」
ようやくユリカはプロスが自室まで来てわざわざ相談した理由がわかった。

ナデシコに赤ちゃんが・・・

さっそく二人は調査を開始することにした。



アマガワ・アキの自室


「こくこくこく」
シオンちゃんは幸せそうに見事な飲みっぷりでミルクを飲んでいた。

まさか
シオンちゃんが1ヶ月前の過去のオモイカネとネルガルの帳簿に介入して粉ミルクと紙おむつを発注して、歴史が変わって現在に粉ミルクが現れた瞬間、自分の手元に必要な数だけをボソンジャンプさせた・・・なんて想像もできなかっただろう。
なにせCCも使わないのだから、わかる方が難しい。

そして子供がほとんど無意識に行った行為が「大人にばれないように」なんて小細工をしているはずもなく・・・

シオンちゃんの捜索隊の足音はひたひたとアキ達のそばに忍び寄っていた。

そうとは知らず
「シオンちゃん、よく飲みますねぇ」
「でしょ♪」
アキとアキトは子煩悩な親バカのパパぶりを発揮していた(笑)



ポストスプリクト


ということで人気投票用応援イベント用の黒プリ外伝その2をお届けしました。

鬼の引き(爆)
さぁこれは応援期間中になんらかの締めが出来るのでしょうか?
それとも鬼の引きのまま8月までお預けを食らわすのか!?(苦笑)

ともあれ、シオンちゃんの能力が徐々に明らかになってきましたね(笑)
・・・本当に誰の子供やねん。
Snow White? Blue Fairy?
さぁそれはみなさまのリクエスト次第・・・かも(笑)

ってことでおもしろかったなら感想をいただけると幸いです。

では!

Special Thanks!
・北の国から 様
・闇影 様
・桑ジュン 様
・kakikaki 様