アバン


ま、落ち込んだユリカさんを励ますのにバーチャルルームが良かったかどうかはともかく、
未来の人達の介入もあり人畜無害ながらも、なぜか演じるタイトルが「おねがい先生!」なんて安易すぎません?

ともあれ、とりあえずアキトさんのファーストキスを守れたような、既に手遅れのような・・・どうなんでしょう?(笑)

ああ、これってSecond Revengeのラストとほんのちょっぴり関係があったりしますのでそのつもりで〜



テニシアン島


その日、成層圏あたりでの宇宙軍の抗戦も空しく一つのチューリップが太平洋上のテニシアン島に落下した。

海岸には、それを見守る男が一人と伝令を伝えに来た部下。
部下の報告を聞いて男は忌々しげに呟く。

「西條め、我にあの出来損ないの性能レポートをあげろだと?」
「は!クリムゾンには話をつけたと・・・」
「で、誰に話をつけたと?」
「アクア・クリムゾンです・・・」
「・・・アクアだ!?」
伝令の男は、上官の驚きの顔を終生忘れないだろう。
それ程までに爬虫類のような普段の冷酷な顔から逸脱するほど間抜け顔になっている。

「・・・東郷のバカはどんな話の付け方をしたんだ?」
「ですが、もうじきこの島はクリムゾン家の所有になり、バリアシステムも運び込まれてくるそうです。連合軍へのリークも完了しているようです」
「・・・まぁいい。だが、なぜ我なのだ!?」
「近くにいるから働け・・・とのことです」
「わかってるわ!」
「はい!!」

男はとっても苛立っていた。
それはそうだろう。
いくらポリシーとはいえ、年がら年中三度笠にマントを羽織って地球の各地を駆け回り、各地の調査とチューリップの点検に走り回っていて、たまに休暇を取ろうと南国にバカンスに来てみれば、近くにいるからという理由で呼び出されたのだ。

「まぁいい。火星で暴れた戦乙女が来るか・・・
 手合わせしてみたいものよ」

ククク、と舌なめずりして笑う男
だが・・・

『赤ふん一丁に浮き袋、海中眼鏡にシュノーケルと完全武装で舌なめずりされても・・・』
と部下はツッコミたい衝動と己の命とを天秤に掛けてどうにか我慢するのであった(笑)



ナデシコ・ブリッジ


「先日、太平洋赤道直下のテニシアン島に地球の防衛ラインを突破して1機のチューリップが落下した。
 その調査に私と、私のナデシコが選ばれた。
 エリートであるこのあたし達が!」
ムネタケは優越感に浸りながら演説をぶっこく。
だが・・・

「ふわぁぁぁ〜〜」
「なのに誰も私の話を聞きに来ないのはなぜ!!!!」
ごく一名のあくびともとれる気のない返事に態度を一転させるムネタケ。

『現地作戦時間で午前2時。日本で言うところの丑三つ時ってやつね。
 当直以外は普通みんな夢の中・・・って所かしら?』
ねむけ眼でそれでも解説する見上げた根性の解説師イネス・フレサンジュ(笑)

すると唯一拝聴していたミナトは終わったことを確認するとさっさと席を立った。
ナイトキャップにネグリジェ、それに愛用のマクラを抱えながらさっさとブリッジを後にしようとする。
「こら、あんた!操舵士がブリッジ離れてどうするの!!」
「だって交代の時間だもん〜」
ムネタケの叫びにミナトが答えるとちょうど同時に時間に几帳面なのか、エリナ・キンジョウ・ウォンが入ってきた。

「タッチ〜」
「タッチ」
「こら、あんた達!!!」

ムネタケは叫ぶが、女性達は粛々と業務をこなしていった。
とりあえずうるさい提督は無視してエリナは進路をテニシアン島に向ける。
そして一人学級委員長の血が騒ぐのか・・・
「テニシアン島・・・例のものを用意しておく必要がありそうね」
と呟きながらなにやらワープロを打ち出すのであった。



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第10話 「女らしく」てもアブナイ<前編>



ナデシコ・食堂


「ふんふんふん♪」
ミスマル・ユリカは鼻歌混じりに厨房の一角で料理をしていた。
「いきなり厨房を貸してくれっていうから何かと思えば」
「愛するアキトの為にお夜食を作るのは恋人である私の役目ですから♪」
ホウメイの問いにも軽快に答えるユリカ。

前回のバーチャルルームの一件で刺激されたのかどうか知らないが、積極的な攻めの姿勢をとることにしたユリカ。

やはり「アキさんに追いつけ追い越せ」らしい(苦笑)

材料はばっちり!千切りも出来た!・・・千個には切ってる、千個には(汗)
フライパンへの油もちゃんとなじませた・・・ちょっと入れすぎだけど(苦笑)
フライパンは・・・大丈夫。熱している。少し煙が出かけだけれど(困)
食材はフライパンにいっぱい入れた・・・ユリカの腕力じゃ鍋を振れないほどに(笑)
そして味付けの塩はひとつまみ、ぱらっとふった。そりゃ一流の料理人のように・・・ただし別の人が見れば力士の土俵入りに見えたかもしれない(笑)

え?どんな料理が出来るか不安だって?

「心配入りません♪
 こんなに格好良く調理できてるんですもの♪
 絶対美味しいに決まってるよ♪」

格好良く調理できているのは普段のイメージトレーニングの賜物かもしれない。
・・・・あくまでも本人の脳内イメージだけの話で、実物との乖離ははなはだ激しいが(汗)

「それに料理は愛情っていうし♪」

愛情でカバーできる味にも限界が・・・

「あ、こぼれちゃった」

あ〜〜そんな地面にこぼした具を無造作に鍋に戻すなんて!!!

「フランベしましょう♪」

おい、火柱があがってるけど大丈夫か!?

「・・・・明日営業できるのかい?」
ホウメイさん、そんなこと思うぐらいなら最初から貸さなきゃいいのに・・・



ナデシコ・通路


ナデシコは福利厚生施設が充実している。
特に充実しているのは自動販売機
たとえば女性コーナーには下着が各種取り揃えてある。
・・・たとえ、あまりにも取り扱い品目が少ないとか、下着の種類が可愛くないとか、標準サイズに収まらない人(H.Mさんとか、M.Yさんとか、E.K.Wさんとか、M.IさんとかI.Fさんとか)が多いとか、標準以下のサイズの人(H.RさんとかL.Lさんとか、M.Rさんとか)が多いとか(笑)。

まぁパンストが伝線した時ぐらいしか利用者もいないのだが、唯一A.Aさんが使用しているという理由で存続していたりする。
ちなみになぜA.Aさんがほとんど誰も使わない自販機を使っているかというと・・・
やっぱりお店で買うのが恥ずかしいらしい(笑)

えっと大幅に話が外れましたが(汗)

男性側の自販機施設も充実しています。それがたとえ侘びしい独身男性用のカップラーメン自動販売機(お湯注ぎ機能付き)だろうと(笑)

んでそんなわけで、独身男性の友であるカップラーメンをすすっているアオイ・ジュン君(彼女いない歴15年)。
ユリカのことあきらめりゃそれなりに彼女も出来るだろうに・・・

と、そこに

「ルルルのルン♪」
料理をのせたお盆を持って鼻歌混じりに近づいてくるユリカ。
その光景を見たら誰だって間違うだろう。
「ユリカ・・・僕のために夜食を?」
「ルンルン♪」
「ユリカ、ありがとう!僕は・・・」
「ジュン君、カップラーメンおいしそうね。じゃ、お休みなさい〜♪」
「え?」
ジュンの受け取ろうと差し出した両手も空しく通り過ぎていくユリカ。

まぁ当然だわなぁ(笑)



ナデシコ・アキトの部屋


アキトは今日も何気なくゲキガンガーを見ていた。
「聖少女アクアマリンの微笑み」の回である。

『うまい♪』
『ありがとう』
『俺、結婚するなら料理の上手い子って決めてるんだ!』
『ポッ』
「そうそう」
アクアマリンの作った料理を食べて喜ぶ天空ケン。そして物語の主人公の意見に甚く同調するアキト。
まぁ物語だからある程度共感できるように演出しているのだが、それでも料理の出来る彼女は男にとっての理想の一つであろう。

特に成功例と失敗例がすぐそばに存在するアキトにとっては余計そう感じるのである。

「料理の上手い女の子か・・・そんな子が彼女だったらなぁ」
そこでなぜかアキを思い浮かべるアキト。
そして一人で赤くなる(笑)

と、そこに・・・
「料理の上手な女の子がいいのよね?」
「え?」
絶妙のタイミングで入ってくるのはもちろん我らが艦長ミスマル・ユリカ嬢である(笑)

「料理の上手な女の子は好き?」
「・・・そ、そりゃ好きだけど・・・」
「じゃぁじゃぁお夜食作ってきたんだ。
 食べて♪食べて♪」

無邪気に料理の乗ったお盆を差し出すユリカ。
差し出される料理を一瞥するアキト

・・・・これは人の食べ物か?

そう思うほどの出来映えである(苦笑)

『こ、これ本当にユリカが作ったのか?
 っていうか、なんでこの材料でこんな色を出せるんだ?
 粘土で作った方がまだ美味しく見えるぞ?
 っていうか、これを食べるぐらいなら、まだ粘土か砂場の砂で作ったおままごとの料理の方が食べられそうだ。
 そういや昔、究極の選択とかいって、○○○味のカレーとカレー味の○○○のどちらかを必ず選ばないといけないってのがあったよなぁ。あれと良い勝負?
 いやいや・・・』
とか、アキトは一人心の中で葛藤していた。

しかし、『まずそうだから食べない!』とはとても言える状態じゃない。
なぜって

「ワクワク♪ワクワク♪」
アキトがその料理に箸をつけてくれるのを・・・いや、スプーンか・・・を目をキラキラ輝かせながら今か今かと期待の眼差しで待っているユリカが真正面にいる。

もし手にしたスプーンをちょっとでも下げようものなら、途端に涙目ウルウルになって引くに引けない。
今ここで
「お前の料理は食えたもんじゃないわぁぁぁぁぁ!!!」
とか言ってちゃぶ台をひっくり返そうものなら、前回以上に大ショックを受けてナデシコ中の食材をヤケ食いするのは目に見えていた。

そうなったら前回以上にあの恥ずかしい「おねがい先生!」の続きをしなければいけなくなり・・・
・・・ちょっと続きをしても良いかな?
もとい、そんな状況になったらたまらないということで、アキトは恐る恐る料理をスプーンですくって、口に運ぶ。

『今日死んでもいいから、明日生きてますように!!!』
と心の中で念仏のように唱えながら、清水の舞台から飛び降りる気持ちで料理を口にした。

「・・・・美味すぅいぃぃぃ!!!(by.中居風)」
「うん、アキトに喜んでもらえてユリカうれしい♪」
なんてユリカの予想とは全くかけ離れていて・・・

「ぐはぁ!!!」
ナデシコが揺れるほどの大きな悲鳴!!!
バタン!!!
予想通り倒れるアキト(笑)

「え?どうしたの?アキト!!!」
「み、水・・・」
真っ赤な顔をして苦しそうにのたうちまわるアキト

「な、なんなんですか?この変な煙は!!
 ゴホゴホ!」
と、そこにタイミング良くアキトの部屋に入ってきたのはメグミ・レイナードであった。

メグミ「艦長、アキトさんに一体何を食べさせたんですか?」
ユリカ「いや、その・・・」
アキト「み、水・・・」
メグミ「はい、これ飲んで下さい」
苦しがって水を求めるアキトにメグミはいつの間にか持ってきていたコップを差し出す。
アキトは藁にも縋る勢いでそのコップの中身を飲み干した。
もちろん、アキトも気が動転していなければ一目見てそんなもの飲みはしなかっただろうが(笑)

数秒後

「ぬうぉぁぁ!!!」
またしてもナデシコが揺れるほどの大きな悲鳴!!!

「う・・・」
赤かった顔が一気に青ざめてしまったアキト。

ユリカ「メグちゃん、一体何入れたの?」
メグミ「ドクダミ、山椒、生姜に生卵の黄身でしょ
 まむしの生き血に朝鮮人参、あと漢方に各種スタミナドリンクを混ぜ合わせたメグミ特製ドリンクです♪」
ユリカ「・・・なんでそんなに滋養強壮がつくものばっかり?」
メグミ「そりゃ、夜のお務めを頑張ってもらわないと・・・
 キャ♪恥ずかしい♪」

何が恥ずかしいんだ?メグミ君(苦笑)

で、どうなったかというと・・・

「お前ら出ていけ!!!!」
「「ごめんなさい〜〜〜!!!」」
アキトに叩き出される二人であった。



数刻後、アキトの部屋


やっと食べた物を吐いて生きた心地がしたアキト。
もう一度ゲキガンガーの続きを見なおす。

『アクアマリ〜ン♪』
『ケ〜ン♪』
「・・・まぁ現実にはこんな子いないよなぁ」

さっきのこともあり、ますます女性に料理の腕と慎ましさと優しさを求めてしまうアキト。

「やっぱりアキトさんって料理の出来る女の子が良いんですか?」
「まぁ、出来ないより出来た方が・・・」

と答えて、『え?』と驚くアキト。

振り返るとそこには・・・
「る、ルリちゃん!?」
「お夜食、作ってみたんですけど・・・」

ギク!!!

悪い予感がする。
絶対悪い予感がする!
この話の流れからすれば絶対美味しいわけがない。
それなのに断固断れない雰囲気が辺りを漂う。

少し恥ずかしげにお盆を後ろ手に隠すルリ
少しはにかみながらそれを差しだそうとするルリ
自分の料理が美味しいと言ってもらえるかどうか不安で不安で仕方がない・・・って表情を浮かべるルリ
たとえば恥ずかしくて今にも消え入りそうだとか、真っ赤になって顔を上げられない様子だとか、今にも泣き出しそうなその表情だとか、

『そんなもの不味そうで食べられない』
なんて言おうものなら、世界中のルリファンや美少女愛好家のみならず、下はご家庭の奥様方から上は子煩悩なおじさま方まで敵に回し、週刊誌やワイドショーには幼児虐待者のごとく扱われるのは必定のように思われた。

「わ、わかった。喜んでいただくよ」
「本当ですか♪」
アキトが断腸の思いで搾り出す言葉にパッと嬉しそうに微笑むルリ。

裏切れない。
この笑顔は裏切れない。

だけど・・・

差し出された料理を見ると・・・

原型はスパゲッティーだったのだろう。
いや、今もスパゲッティーの面影を留めている。
いやいや、そこまで酷くない。静止している姿を見ればどう見てもスパゲッティーだ。

そう、静止さえしていれば・・・

『どうやったら動くんだ?スパゲッティーが???』
アキトはモソモソ回虫の様に動くそのスパゲッティー(?)を見て猛烈に疑問を募らせた。

「さぁ、アキトさん♪」
ずいっと差し出すルリ。
汗を垂らしながら恐る恐るフォークを近づけるアキト。
ある意味、罪悪感を持たなくて済む分、ユリカの方が気が楽だったもしれない。

パク

十数秒後・・・

「ずうぉぉぉ!!!」
三度、ナデシコが揺れるほどの大きな悲鳴が沸き上がったのは言うまでもなかった(笑)



ナデシコ・アキの部屋


ちなみにアキの部屋では・・・

ミカコ「お姉さま、ポッキーでゲームしません?」
ジュンコ「アキさん、ケーキをあーんさせて下さい♪」
ハルミ「私は・・・あーんをしてもらいたいかな(ポッ)」
ラピス「ダメ、アキのあーんは私のモノ!」
アキ「いや・・・出来ればもう寝たいんですけど・・・」

という具合に捕まっていたらしい(笑)



おまけ ナデシコ・食堂


「ぐはぁ!!!」
「うげろぉ!!!」
泡を吹いてひっくり返るジュンとウリバタケ。

「ゆ、ユリカ・・・」
「る、ルリルリ・・・」
「この部屋を徹底的に消毒して!
 その鍋とフライパンは焼却処分にして!!」
担架で二人が運び出される最中、イネスは医療班を率いて二人を食中毒に追い込んだ原因の消毒と駆除、それに原因解明の指揮を執っていた。

「なんなの、このNBC兵器にも近い毒性は!
 致死量には至らないから良いようなモノの・・・
 木星蜥蜴の新しい生物兵器?」
「まぁ恋の劇薬というか、調味料が利きすぎたって奴じゃないかい」
事情を知っているだけにホウメイは苦笑する。

後日、ユリカとルリの給料からこの日の被害金額が天引きされていたのは言うまでもなかった(笑)



テニシアン島


さてさて翌日、ナデシコは無事テニシアン島に到着。

たとえそれが任務のために訪れたとはいえ、
青い空
照りつける太陽
白い砂浜
透き通るエメラルドグリーンの海
水平線の彼方までまっすぐな水平線

これで心騒がずにどうする!!!ってなバカンス日和

早くもクルー達の心はバカンス気分一色♪
既にみんなビーチに繰り出す服装になっている。もちろんパーカーの下はもう水着だ。
ヒカルらは既に浮き袋やシャチやイルカやゴムボートに空気を入れている。

ミナト「ルリルリ、ラピラピ、あんた達は色白いんだからちゃんと日焼け止めしなきゃいけないよ」
メグミ「そうそう♪」
ルリ「・・・ありがとうございます」
ラピス「・・・ありがとう」
ルリ「私、海初めてなんです」
ラピス「私も・・・」
ルリ「ちょっと、うれしいかも」
ラピス「コクコク」
バカばっかのルリ達ですら海に期待を募らせて、ナデシコのクルー達はビーチに上陸していった(笑)



テニシアン島・ビーチ


「パラソル部隊急げ!」
エステを浜辺に置くと、すぐ上陸そうそうアカツキ達パイロットは作業に取りかかる。
だが・・・

「ちょっと待ちなさい!」
みんなを呼び止めたのはやっぱり委員長のエリナである。
しかもみんな既に水着状態なのに一人だけ規則正しく制服を着ている(笑)
なに?って顔をしているみんなにエリナは有無を言わせずプリントを配っていく。
「私が作った海のしおりよ。
 それをよく読んで行動するように!」

で、その内容であるが・・・

「ビーチではサンダル着用
 岩場は危ないので近づかないこと
 沖には行かないこと、遠泳禁止
 ゴミはちゃんと持ち帰ること
 サンオイルは自然分解質の物を使用すること
 それからそれから・・・」

そんなことウダウダ読み上げているエリナにみんな付き合うわけもなく・・・

「って、コラあんた達ちゃんと読みなさいよ!!!」
一人制服のままだったエリナも取り残されてはなるまいと、制服を脱ぎ捨てて浜辺へ向かった。
・・・・なんだ、下にちゃんと水着来てるじゃん(笑)



ひとときのバカンス


さてさて、クルーの皆さんはそれぞれに浜辺のバカンスを楽しんでいた。

アカツキや三人娘はビーチバレーを楽しんでいた。

ミナトやイネス、ホウメイ達らは浜辺でゆっくりと日焼けをしていた。

メグミやユリカ、それにホウメイガールズは水辺で水遊びをしたり、イルカやジョーズの浮き袋と戯れていた。

ゴートとプロスは浜辺で碁を指していた。

ムネタケはというと・・・
「あんた達、仕事はどうし・・・ふんぎゃ!」
と言い終わる間もなくクルーの作った落とし穴に落下(笑)
「よし、埋めろ埋めろ♪」
「おう♪」
「わぁ、ちょっと止めなさい!!!」
ってな具合に哀れ首から下を浜辺に埋められることになり(笑)

ルリとラピスはパラソルの下で対戦ゲームに勤しむ(汗)
ラピス「今日こそは勝つ!」
ルリ「十年早いですよ!」
ピコピコ!ピコピコ!ピコピコ!

ユリカ「ルリちゃん、ラピスちゃん、せっかく海に来たんだからゲームなんかしてないで泳ごう?」
ルリ「結構です。それにこれはゲームではなく訓練です!」
ラピス「そう!」
一同「・・・・」

ユリカ「ひょっとして二人とも微妙に怒ってない?」
ルリ「怒ってません!別にアキトさんに置いてきぼりにされたからって!!!」
ラピス「ラピスも怒ってない!別にアキがいないからって!!!」
一同「・・・」

ユリカ「でも海は気持ちいいよ」
ルリ「任務の方が重要です」
ラピス「そう!」
一同「・・・・」

メグミ「ひょっとして・・・二人とも泳げないとか?」
ルリ「ピキーン!・・・・そんなことないですじょ」
ラピス「ピキーン!・・・・そんないことないみょ」
一同「・・・」

その後、「止めて下さい〜〜」「沈む〜」とか騒ぎ声が聞こえたりして(笑)

はたまた、『海が好き!』という看板を掲げた浜茶屋が営業を開始してたり
ウリバタケ「俺は20世紀の伝統、海の浜茶屋を受け継ぐ一子相伝の浜茶屋師なのだ〜〜
 竜之介!!!」
ジュン「誰が竜之介ですか!!!」
とか、三十路越えてなきゃ絶対わからないような会話をしてみたりとか

で・・・
「あれ?アマガワ・アキは?」
焼きそば片手に人捜し中のエリナだが・・・
「あそこあそこ」
ヒカルが指さす先には・・・

真っ黒なウェットスーツに身を包み、サーフボードに乗りながら沖へ泳ぎ出ているアキ。
まさにサーファー、格好だけは決まっている。
陸サーファーでも十分カッコイイ。
だが、彼女が臨むのは本当の波だ。

「ああ、稲村ジェーン級の波が!!!」
誰かが悲鳴を上げる。
そこには超弩級の大波が迫っていたからだ!!

ザザーーーーー!
ではなく
ゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!
という擬音が相応しい程の大波である。

「アキ、危ない!」
ラピスとかみんな口々に叫ぶが、本人に慌てた様子もない。

そして・・・

ドバァァァァン!!!!
叩くつけるように大波がアキを叩きつける!!!

「アキさん!!!」
悲鳴を上げる一同
だが・・・
「あ、あそこ!!」

そこには大波をものともせず、優雅に華麗にそして見事にサーフィンしているアキの姿であった!

「すごいすごい!」
「やんややんや♪」
「ループかましたよ!」
「すっごいプロみたい!」
「ありゃさすがに着いていくのは無理だな・・・」
とか、浜辺のギャラリーを魅了しながら格好良く波乗りしているのだった。

とはいえ、さすがに彼女に着いてサーフィンしようとするのは自殺行為に等しい(笑)
ラピスなどアキに引っ付いていたいメンバーは彼女がサーフィンを止めるまでおとなしく待っているしかなかった(笑)

「仕方ない。もう一方を探すか・・・」
エリナは対象をアキからアキトに変更するのであった。



テニシアン島・林の中


少し島の中に入ったところでアキトは散策をしていた。

はっきり言って逃げ出してきたのだ。
アキトは泳げない。
別に水が嫌いだとかそういうんじゃない。
でも火星育ちのアキトは海とか湖とかに行ったことがないのだ。
火星のフォーミングがいくら優秀とはいえ、右から左に水が作れるわけもない。水はあるにはあるが極冠の氷原とか地下水とかであり、それも生活用水と農業用水などで手一杯だったのだ。
プールなんて贅沢品であり、設置されているコロニーも限られている。

実際問題、そんな環境で育ったのはアキトぐらいのモノである。
同じ火星育ちのユリカでさえ途中で地球に戻ったのだ。水があまりない生活をしていない者にはわからない感覚だろう。
だからなじめなかったのだろうと思う。

・・・まぁそんな理屈付けをしても結局は昨日食べた料理のせいで気分が悪いだけなのであるが(苦笑)

「ちょっと話してもいい?」
「え、エリナさん・・・」
と、そこにやってきたのは焼きそばを持ったエリナである。

『よし、ふたりっきりよ!邪魔者はいないわ!
 この黒のビキニと艦内一のナイスバディー(アマガワ・アキを除く)とで迫れば必ず私にメロメロドキューンになるはずよ!!!
 まぁキスぐらいなら許してあげようかしら(ポッ)
 たとえダメでもこの焼きそばで手なずけてみせる。
 食い気と色気の両面攻撃で必ずボソンジャンプの謎を暴いてみせるわ!!!』

・・・どっちが本音なのかわからない妄想をしながら、エリナはさっそくアキトを籠絡にかかった。

「あなた、火星出身だったわよねぇ?」
「ええ・・・まぁ」
プイ!
アキトはエリナから顔を背ける

「1年前まで火星にいたんだって?」
「・・・そうですけど」
プイ!
別の方向からのぞき込むエリナにまたまたアキトは顔を背ける。

「どうやって火星から地球にやってきたのか興味あるだけどなぁ」
「・・・そんなの、俺が聞きたいぐらいですよ」
プイ!
また顔を背けるアキト。
エリナは最初『このまぶしい私のナイスバディーを直視するのが恥ずかしいのね♪』とか思っていたようだけど、そうでもないようだ。

「・・・・焼きそば食べる?」
そう、嫌がっていたのはどうも焼きそばなのだ。
アキトは夕べの騒ぎで胃はムカムカ、おまけに油っぽい焼きそばを近づけられたら誰だってたまらないだろう。

案の定・・・

「うっぷ・・・
 済みません!!!」
と走って逃げてしまうのであった(笑)

「そんなに不味いかしら・・・
 不味い・・・」
手に持った焼きそばを食べてあらためてその不味さに気づくエリナであった。



テニシアン島・林の奥


少女は彼が来るのをひたすら待っていた。
それなりに準備もしている。
それこそ恋愛小説や少女漫画を何百冊読んだだろうか?

世の中は女性の好みが二分されるという。

一つは普段とても気が強い女性。いわゆる女王様と下僕という奴(笑)
普段きつく当たられるも、時折見せる女らしさや恥じらい、そして何気ない気遣い。
生活不能者でも料理が下手でもたま〜に主人公に対して手料理を作ろうとして手に絆創膏を一杯貼ってたりするとそれまで憎らしいと思っていた気持ちも一発で解消される様である。
代表選手としてはア○カとかリ○ーコとかエ○ナだったり、す○れとか智○(委員長って言った方が通りがいいかも)とからしい。

もう一つは物静かで儚げな女性。保護欲をかき立てるらしい。
ついでに普段感情を見せない少女がはにかんだりすると最高らしい
まぁ、代表選手はレ○だったり、ル○やラ○スだったり、セ○オや琴○や舞(って伏せ字に出来ん!)だったり、最近ではレ○や花○だったりする。

筆者的には「後者の方が嫌いじゃない(某少女風)」らしい。
ってことで、この少女も当初の予定通り後者を選択したようだ(笑)

ちなみに最近では新たに「ドジっ子」というのもその中に割って入るようである。
その開祖はマ○チであり、名○やあ○、最近ではエ○カもこの系統だ。どちらかといえばユ○カやEXZS版ラ○スもこの系列かもしれない(苦笑)

話を戻そう

少女は様々なデータから男性が好きそうな好みの傾向も把握している。
物静かで家庭的で優しくて
少し影があって、天涯孤独だったり記憶喪失であったりするとなお良い。
美味しい手料理なんかを振る舞えれば最高である。

そして最後の仕上げとして劇的な出会いがあれば完璧である。

だから少女は待っていたのである。男が来るのを。
劇的な出会いをし、悲劇のヒロインになるために。

「位置について」

え?

「用意・・・ドン!!!」

と、号令一番最大戦速で目標目掛けて突進する少女!!!

「あ〜〜れ〜〜」
「え?」
その叫び声に似合わぬスピードで突進してくる少女にアキトが気づいたときには既に目の前!

「ぐはぁ!!!!」
その直後、アキトは鳩尾にタックルを食らって失神するのであった(苦笑)



テニシアン島・浜辺


エリナ「はいはい、あなた達、お仕事お仕事」
エリナは手を叩くと、一同は興ざめしたように持ち場に戻った。

ルリ「あれ?アキトさんは?」
ラピス「ユリカとメグミもいない」
辺りを見回すと集合時間になっても彼らは帰ってきてなかった。

ヒカル「あの三人ならほっといて問題ないんじゃない?」
ルリ「おおありです!」
イズミ「隊長もいない・・・」
ラピス「アキを探す!」
ルリ「ダメです。私がアキトさんを捜すんですからあなたは留守番です」
ラピス「正オペレータはルリでしょ!私が探すの!」
と言い争いを始める二人

だけど・・・

ゴート「これ以上サボタージュは認められん」
ルリ「離して下さい〜〜」
ラピス「猫の子じゃないんだから〜!」
ゴートに抱えられてナデシコに連れ戻されるオペレータ二人組であった(笑)



テニシアン島・別の海岸


少し離れた海岸から上陸するアキ。

脱いだウェットスーツの下はいつものインナーウェア。
そして持ってきたバッグの中からジャケットとマントを取り出す。
一見すると闇の王子の頃に似ている。

「しかし・・・もう少しなんとかならないの?アレ・・・」
アキは水平線の彼方を振り返る。
気持ちよさそうに波乗りをしているアキの姿がそこにある。

いや、正確には波乗りロボット「サーファーアキちゃん1号」である。
首の裏には桃色妖精印が入っている。もちろん誰の作品かは想像がつくだろう(笑)

昨日、ラピスやホウメイガールズ達が帰った後、あのロボットと共にメッセージが送りつけられてきたのだ。
『テニシアン島に狂犬が来ている』・・・と。
だからわざわざ囮をたててアキはこっそりと狂犬探しにやってきたのだ。

「こっちの世界に来てまであいつと対面するとは思わなかったけど・・・」
アキは取り出した愛用のリボルバーを念入りにチェックする。
奴が何を考えているかわからないけど、他の者じゃまず敵わない。
なんとかナデシコクルーの前に現れるまでに撃退したいところだけど・・・

「さてさて、昔の北辰と女性の体になったあたしと、どっちが強いかな?」
ちょっと昔を思い出すアキ。

ガチャリ!

リボルバーを点検し終えてホルスターに仕舞うと、マントを翻しながら島内の森へ姿を消した。



テニシアン島・クリムゾン家の別荘


「うふふふふ
 やっと見つけた。私の王子様♪」
少女は嬉しそうに膝枕にしているアキトに塗れタオルをかけてやり、うちわで扇いでやっていた。
アキトが気づくのはしばらく時間がかかるだろう。

と、そこに・・・

「お前か。我に自分の殺しを依頼してきたという女は・・・」
その男は音もなく部屋の片隅に漂っていた。
そして少女はそれに臆することなく答える。
「あら、安全確実、成功率100%というからゴ○ゴ13みたいな方かと思えば・・・少しイメージが違いましたね」
「・・・漫画の読み過ぎだ。
 というか、別の奴とキャラがかぶる。
 第一、我は殺し屋じゃない!」
男はむっつりとして言う。

「殺し屋じゃなければなんですの?」
「ただ人殺しが好きなだけさ。ククク・・・」
男は歪んだ顔で舌なめずりしながらおもしろそうに笑う。
普通の少女がその表情を見たら10人中9人は泣いて逃げ出すだろう。
でも、その少女は自分の殺人を依頼するぐらいだ。
よほど肝が据わっているのか、はたまた人と思考回路が異なるのか、
何事もないように男へある紙の束を差し出した。

「この通りにお願いします」
「・・・なんだ?」
「見ればわかりますよ♪」
男は紙の束を受け取るとその表紙に書いているタイトルに絶句する

『恋の嵐ヶ島』

で、帯にはこんなあおり文句が大きく刻まれていた。
『テニシアン島の戦火に散る恋人達!
 軍を脱走してきた男を匿う天涯孤独の美少女。
 恋に落ちた彼らには暗殺者と戦火が襲う!!!
 今世紀最後にして最高の悲恋!!!
 作、演出は今話題の美少女漫画家クリスティーヌ・綾野』

クリスティーヌって誰?
っていうか、お前日本人じゃねぇだろ!
という疑問を思い浮かべながらページをめくっていくと・・・

それは鉛筆で殴り書きした絵コンテであった。
男は内容を読んでいくうちになにか質の悪いB級スパイ映画でも見せられたような気分になっていった。

「やるのか?」
「ええ♪」
「・・・これを?」
「もちろん♪」
男の再三の確認にも少女はさも当然のように頷いた。

『・・・なぜ我がこんな事に付き合わされなきゃいけないんだ・・・』
と思いつつもなぜその男が頷いたかというと・・・

謎の暗殺者のシーンが格好良かったから・・・

というのはここだけの話である(笑)
彼が快諾したのを確認すると少女は何事もなかったように微笑んだ。

その少女、アクア・クリムゾンは愛しの王子様が目覚めるのを静かに待っていた。
これから起こることに比べればイヤに不釣り合いな笑顔を浮かべて、
王子様が起き、悲劇のストーリーが幕開くのを待っていた・・・



おまけ


ユリカ「アキト〜どこ行っちゃったの、アキト〜」
メグミ「アキトさん、どこですか〜」
ユリカ「ちらり」
メグミ「ちらり」
ユリカ&メグミ「アキト(さん)〜〜!!!!」

本編がシリアス度が加速していく中、この二人だけはラブコメチックな雰囲気を維持しようとしていた(笑)

ってことで後編に続きます。



ポストスプリクト


取り敢えず前編ですので前回と同様にポストスプリクトは女アキトことアマガワ・アキさんへのインタビューという形式に変えさせていただきます。

アキ「・・・今回、珍しくシリアスな予感がするねぇ」

−まぁ、たまにはダークネスなところをやっておかないと忘れられそうですから(笑)

アキ「え?これって全編ギャグかと思っていたけど(苦笑)」

−違います。それが証拠に後編はドシリアスに攻めますよ(萌)

アキ「おい、字が違うって。それよりもあの男をこんなところで出して・・・問題ないのか?」

−問題って?

アキ「いや、あんな反則キャラを今から出して物語が破綻しないの?」

−しないというか・・・強力なライバルが欲しいと思ってたんですよ♪

アキ「ライバルって・・・私の?」

−ううん、アキトの

アキ「アキト君?」

−そう、そろそろアキさんを巡るバトルにライバルがいないと張り合いがないだろうし・・・

アキ「そんなやつをライバルにするな!!!!!!!!!(木連式柔炸裂!!)」

−・・・・・・というわけで後編をどうぞ。

ちなみにこの内容は後編と微妙に違うので信用しないで下さい(笑)

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