アバン


勇気なんてどこにも転がってなく、簡単に誰かから与えられるモノでもない。
怯えるように背を丸めながら、それでも湧いてくるモノ
普段の自分をやるだけやった人にだけ湧いてくるモノ
どうしても譲れないモノがある人にだけ湧いてくるモノ

そういった誰もが持っている当たり前の心だから・・・

ああ、これってSecond Revengeのラストとは何の関係もありませんのでそのつもりで。



昔の夢


夢に見る、懐かしき子供の頃の夢
夕日の沈む土手でうずくまる自分
何も出来ず、ただ悔しさに膝を抱えることしか出来なかった自分・・・

「どうしたの?ぽんぽん痛いの?」
「うるさい!」
やさしくかけられた声にも苛立ち、拒絶してしまう自分
ただの八つ当たりだ。なんて情けないんだろう!
そう思うとますます膝を抱えてしまう自分・・・

でもその声はやさしく語りかける
「元気の出るおまじないをしてあげようか?」
のぞき込むその顔
「んじゃ目をつむって」
微笑む顔が可愛かったから思わず言うとおりに従った。

チュ♪

唇に何か当たる。
恐る恐る目を開けると眼前に彼女の顔があった。
そして彼女が自分に何をしているか拙い知識の中から探り当てる

「だぁぁぁ、お前何をやってるんだよ!!!」
「あははは、元気が出た♪」
そう言って自分に抱きつく彼女

そのあと何回されたかわからないけど・・・あれが自分の初キッスだったのだといまさら気がついた・・・。

「そういや・・・アキト君ってナデシコに乗ってからメグちゃんやユリカの奴とキスしてたっけ?」
久しぶりに昔の夢を見たアキは夢の内容を思い出して冷汗をかいていた。



同刻・アキトの自室


そんな心配をアキにされていたアキトであるが、彼も同じ夢を見ていた。
ただし・・・

「・・・そういえばあの夢の女の子って・・・誰だろう?」
人間、都合の悪い事を思い出したくないモノである。

ましてやこの歴史のアキトは、ユリカとの「キスしてくれてたらもう一度頑張れそうな気がするの」というセリフも聞いていない。メグミとのキスも経験していない。
そういう免疫のないところにあの夢を見たものだから、記憶も結構あやふや。
それをいいことに『火星出身なんだからユリカぐらいしか該当者はいないんじゃないの?』という歴然とした事実を忘れたフリをし、『ユリカなんかとキスした事実』を消し去ろうとするのは心理的に無理からぬ(?)事であろうか。

んで結局夢の中の女の子の顔はひどくボヤけた感じであり、性格や仕草、言動もなぜかアキトの理想像に置き換えられていたりする。

そんなことだから頭を冷やすために顔を洗いに入った際に入ったエリナからの通信でも・・・

「あ、俺あいつ苦手なんでパスっす」
『地球でのナデシコ乗っ取りのことまだ気にしてるの?
 あれは提督もちゃんと謝罪を・・・』
「そういうんじゃないですよ」
『あなたが来ないと艦長がうるさいわよ?』
「俺とユリカはそんなんじゃ・・・」

ない、と言おうとした振り返ったアキトの顔面にエリナのウインドウがドアップになる。

『あら本当に?』
目の前に写るエリナの顔
そしてそのセリフを紡ぎ出す唇
奇麗に口紅をさした唇の優雅な動き
アキトの視線はどうしても唇の動きを追ってしまった。

『・・・・・せい出身よね?』
「え?」
『だから、あなた火星出身よね?』
「え?ええ・・・」
『私、あなたにすごく興味があるの♪』
しばらくぼーっとしていてエリナのセリフを聞いていなかったアキトは急に現実に引き戻された。

じーっと自分を見るエリナ。
当然顔もドアップ、唇もドアップ
『元気の出るおまじないしてあげる♪』
夢の中の女の子のセリフがオーバーラップしたから、さぁ大変!

ドキドキドキドキ!

「・・・あの、エリナさん?」
『なに?』
「エリナさん、火星に・・・」
『火星がなになに?』
「何でもないッス!」
アキトの問いに嬉々とするエリナであるが、慌てて打ち消すアキト。

『火星に住んでいた事ありませんか?』
なんてバカなことを聞こうとしていたんだろう。
エリナさんみたいなエリートが火星に住んでいたわけないじゃないか!

あまりのバカな思いこみに、
「ブリッジには行きます。着替えますから通信切りますよ」
と言ってその場を誤魔化すアキトであった。



ナデシコ・格納庫


「セイヤさん、アレ・・・・」
アキは格納庫にある「アレ」を見て呆然としていた。

「アレかい?
 ありゃ、メカフェチ女が置いていったんだ」
押しつけられたウリバタケもウンザリして言う。
「でもアレってこの前欠陥品だってわかったじゃない!」
「まぁ、アレを使いたくないアキちゃんの気持ちもわからなくはないが・・・
 アレのテスト費用も整備予算の中に組み込まれているから、そう簡単に突っ返せないんだ。まぁ、我慢して使うんだな。」
「だってアレですよ!?」
「仕方ないだろ?
 上の方だってレールカノンの製品化に張り切ってるし、何よりあの威力はナデシコにとっても貴重だろ?」
「そりゃそうだけど・・・」
「まぁ、俺がなんとか改良してやるから・・・」
ウリバタケの諦めにも似た慰めも今のアキには全然嬉しくなかった。

格納庫の一角に占められたでっかいコンテナ、しかも複数
それは紛れもなくあのウイングシステム「ゴッドフェニックス」であった。

『二度と合体変形シーンがありませんように』
心の中で滝のような涙を流しながら祈るアキであった(笑)



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
11万ヒット記念特別企画
第9話 無敵の作戦「キスか?」<前編>



ナデシコ・ブリッジ


「あんた達、喜びなさい。仕事よ♪」
ムネタケはふんぞり返って一発ぶちかました。
そんなセリフを拝聴させられるために集まったクルー達はもちろんいい気がしない。

「お言葉ですが、提督。我々ネルガルは協力関係にあるとはいえ、作戦に対する拒否権が与えられております。」
「一応はね」
「クルーの生命を危険に晒すような作戦にはこのミスマル・ユリカが艦長として断固反対いたしますのでご了承下さい!」
ユリカが毅然とした態度でムネタケに立ち向かった。
だが、ムキーーーと怒るのかと思っていたムネタケであったが、その返事は意外なものだった。
「お生憎様。誰もあんた達に木星蜥蜴と戦えなんて言うわけじゃないわ」
「へ?」

ムネタケの言う仕事とはこうだった。
某国の親善大使が北極海のベーリング海峡を視察中、木星蜥蜴に襲われてウチャツラワトツクス島で遭難したらしい。
元々地球にはかなりの数のチューリップが飛来しており、北極海域もその密集地の一つなのだそうだ。
ということで救出しに行こうにも木星蜥蜴と北極海のブリザードに阻まれ思うように行かず、そこでナデシコの派遣が要請されたというわけだ。

「というか、何でまた親善大使がそんな北極海なんて辺鄙で危険なところに?」
「大使は好奇心旺盛な方でね、ぜひ北極海の気象データを観測なさりたいと仰って。
 可哀想な大使様、オヨヨ・・・」
メグミがもっともらしい疑問を述べるが、ムネタケは芝居がかった仕草で誤魔化す。

「ということで、あなた達の大好きな人助けよ。断るの?」
「はい、やりましょう!」
ムネタケの言葉に釣られて同意してしまうユリカ。

「胡散臭いですねぇ」
「ほんとほんと」
「あんた達、うるさいわよ!!!」
ルリとラピスの鋭いツッコミにようやくムッキーになるムネタケであった。

が、ムネタケが本気で怒り出す寸前に・・・

「やぁムネちゃん、偉くなったわねぇ♪」
「!!!!!!」
後ろから声をかけられて飛び上がらんばかりに驚くムネタケ。

ギギギギギ

油の切れたブリキ人形のようにゆっくりと首を後ろに向けるとムネタケにとってトラウマの原因になりかけた人物の顔があった。

「あ、アマガワ・アキ!」
「どうも〜〜♪」
そこにはニッコリと・・・ただし小悪魔のような笑顔を浮かべるアキがいた。
「あ、あんたいつの間に後ろに・・・」
「ねぇムネちゃん」
「む、ムネちゃんって・・・」
「ちょっと内緒話があるからこちらにいらっしゃい♪」
「いらっしゃいって、あんた・・・」
「いいからいらっしゃい♪」
「ひ!!!」
『何で提督の自分が!』と言おうとしたムネタケであるが、アキの笑顔を見て全身を震わせる。第2話でアキに脅されてからというもの、表情が笑顔なのに全然声が笑っていないアキのセリフを聞くと逃げ出したいような恐怖に駆られるようになっていた(笑)

まるでアキに首根っこでも掴まれたように部屋の隅に連れて行かれるムネタケ。
そしてアキはムネタケに耳元で二言三言何かを呟く。

すると・・・

「や、やめて!!あたしはオカマじゃないんだから〜〜」
とか言いながら、必死に股間を押さえながらブリッジを出ていった。

「アキさん、なんて脅したんですか?」
「ちょっとはしたなかったかしら、オホホホホ〜〜」
メグミが尋ねるとアキは高笑いで誤魔化した。

ひょっとしたらナデシコで一番権力を持っているのはアキかもしれないと思う一同であった。

「どういうこと?ミナト」
「男にしかわかんないことよ、ラピラピ。
 もう少し大きくなったら護身術を教えてあげる。」
ラピスの質問にミナトはウインクして答える。

「・・・私は今教えて欲しいです」
「ルリルリ?」
「最近、某整備班長や某提督の変な視線を感じますので(怒)」
「そういうときはね・・・」
とか言ってミナトは鋭いニーキックをルリに教えた。目標用に立たされたジュンが必死に股間をガードしていたが。

まぁ、そんな冗談はさておき、我らが主人公アキト君はというと、なぜかきょろきょろいろんな女性に視線を向ける。なぜか顔を赤らめて。
あの夢の中の女の子がこの中にいるとは限らないのに、ついつい女の子達の唇を眺めていたのだ。
唇の形でその女の子がわかるはずもないのだが。

やがてユリカと視線が合うのだが・・・

プイ!

思わず視線を逸らしてしまうアキト。
『ユリカじゃない!ユリカのじゃない!!』
なぜそこまで力説するのかわからないが、そう思ってしまった気まずさかもしれない。

ユリカはユリカで、この前の遭難騒ぎの一件でアキトとメグミがしばらく同じエステにいたことが気になっているらしい。
そして今も自分を見た後、露骨にそっぽを向かれたことである妄想が駆けめぐっていた。

『やっぱりアキトが私を避けてるのって、展望室のことがあったからかな?
 でもでも私は浮気した訳じゃないんだよ!
 アキさんに腕枕してもらっていたのはなんというか不可抗力で、
 でも気持ちよかったなんてこれっぽっちも・・・ちょっと良かったけど・・・ううん、そんなことはないんだから!
 私はアキト一筋なんだから!
 それにアキトだってイネスさんと手を握ってたんだからおあいこよ!
 でも・・・・』
とか妄想しながら悶えていたりしていて、作戦のことはあんまりよく聞いていなかったりした(笑)



ナデシコ・食堂


「暇だねぇ〜〜」
その言葉と共にリョーコや三人娘やアキト、それにウリバタケ達は食堂でだらけていた。

ウリバタケ「まぁ、今の水道なら航路も比較的まっすぐだし、
 低空飛行で進んでも座礁する心配もないし、
 おまけにレーダーはこのブリザードで効かないから木星蜥蜴に見つかる心配もほとんどない。」
ヒカル「んじゃオートパイロットでも問題ないわけだ。
 私達パイロットも英気を養えってか?」
イズミ「英気を養ってえい気分・・・なんちって(笑)」

とかなんとか、状況確認の説明台詞をしゃべりながらだらける彼ら。

そんな中でアキトはというとやっぱり三人娘達の唇を眺めていたりする。
『リョーコちゃん達・・・でもないよなぁ〜〜』
とかリョーコを眺めていると思わず視線が合う。

「なんだよ、テンカワ」
「いや、何でもないよ」
リョーコの詰問に赤くなって視線を逸らすアキト

それをヒカル達が見逃すはずはなかった。

ヒカル「お?アキト君、今度はリョーコ?」
アキト「え?ち、違うよ!!」
ヒカル「あ、動揺してる♪動揺してる♪」
イズミ「してる♪してる♪」
アキト「そんなんじゃないよ!」
ヒカル「でもダメだよ、アキト君。リョーコはアキさんにぞっこんなんだから、攻略するのは難しいよ♪」
リョーコ「ば、バカヤロウ!!!てめえら、なに言ってやがる!!!」

とかなんとか盛り上がっている所に・・・・

「おやおや鍛えられていないねぇ〜〜」
入ってきてアキトの顔を覗きこんだのはアカツキ・ナガレだった。

「なんっすか?」
「テンカワ君、ちょっと付き合って欲しいんだけど・・・って」
カッコ良く決めたはいいが、みんなの視線に集まるのに気づく。

「ジロ〜〜♪」
「あの〜〜そういう意味じゃないんだけど(汗)」
みんなの頭の中でアカツキ×アキトの同人誌を想像しているのを必死に打ち消そうとするアカツキであった。



ブリッジ・ブリッジ


ちなみにこの時アキは何をやっていたかというと・・・

「ルリルリ、右足をこう・・・」
シュ!!!
「こうですか、ミナトさん?」
シュ!!!

「アキ、これでいい?」
ゲシゲシ!!
「そうね、うまいうまい」
ゲシゲシ!!

ちなみにアキはなぜかミナトと一緒にルリとラピスに護身術(というか女王様モード)を教えていた(笑)



ナデシコ・トレーニングルーム


さてさて、一部の人達からいかがわしい所へ行くことを期待された二人であるが、行ったところは健全も健全、エステバリスのシミュレータルームである。
二人は早速、シミュレータで戦闘訓練を開始していた。

「なぁ、テンカワ君、君と隊長ってステディなのかい?」
「なんッスか、それ!」
いきなりふられた核心を突く質問
とはいえ、アキトも真っ赤になったりはしない。
どちらかと言えば侮辱されたに近い感覚かもしれない。
「俺とアキさんはそんな関係じゃない!」
「んじゃ、どんな関係なんだい?」
「俺は・・・あの人のようになりたい」
たぶんそれは本当の気持ちだ。
恋愛感情に近いものがないとは言えない。でもアキトにとってそんな感情よりも憧憬の念の方が強いのだ。

「ふぅ〜ん、じゃ、艦長とはどうなんだい?」
「な!」
「図星かな?」
茶化したように言うアカツキ。
「ったく、どいつもこいつも俺とユリカをくっつけたがる!!」
「そうかな?艦長にモーションかけたら
 『私には将来を誓い合った人がいるの♪
  白馬に乗った王子様♪』って言ってたよ。
 まぁ・・・・」
といってアキトをジロジロ見るアカツキ
「アカツキ・・・ユリカみたいなののどこがいいんだ?」
「あとメグミ君やルリ君にも探り入れてみたけど、異口同音なんだよねぇ〜〜」
「見境なしか?」
「いや、女の子を君に独占されてるみたいでイヤなだけさ。
 それも白馬に乗った王子様というよりかは・・・」

ブワァ!!!!!

「なに!」

そう言うとアカツキはいきなりローラーダッシュを空回りさせて足下の砂を巻き上げた。
一瞬アカツキ機の姿が見えなくなる!

慌ててその場所を掃射するアキト!

だが、煙が晴れた後にはアカツキ機の姿はなかった。
「ど、どこだ!!」
「ここだよ!」

その声につられて上を向くが既に時遅し
ラピットライフルを振りかぶったアカツキ機の姿が眼前に迫っていた。

グワァシィィィィィィ!!!!

GAME OVER

「白馬に乗った王子様と言うよりも木馬に乗った王子ちゃまって感じの奴にかっさわれてるのが、ちょっと妬ましいだけさ♪」
「汚いぞ!!ライフルで殴るなんてありかよ」
「実戦で卑怯もクソもないよ。
 使えるものは全て使う。勝負の鉄則だよ」
「わかった!じゃ、接近戦闘ありでもう一度な!!!」

言い争った二人は再びシミュレータに戻って対戦を始めた。

ヒカル「青春だね〜♪」
リョーコ「そうか?」
イズミ「誠意も萎える、せいいしゅん・・・・なんちって(笑)」
外で見ていた三人娘はそれぞれ下世話な感想を漏らしていた。



ナデシコ・アキトの自室


「まったく、どいつもこいつも・・・」
脱力して床に根っころがるアキト。

『何で誰かとくっつけたがるんだ?』
そんなことをアキトは思う
『しかもユリカと!』
と忌々しく呟く。
でも、自覚がないというのは恐ろしい。

彼自身、決して恋愛に興味がない訳じゃないのだ。現に・・・
『それにしても元気が出るおまじないをしてくれたあの優しい女の子は今頃どうしてるんだろう・・・』
などと思っていたりするのがいい証拠だ。

しかも・・・
『エリナさん・・・な訳ないよな。エリートが火星にいるわけないし、
 メグミちゃんは・・・火星のナノマシーンを驚いてたぐらいだし、
 ルリちゃんは・・・さすがに年齢が合わないか。
 でもそこそこ年上だから・・・アキさんやミナトさんって事はないし・・・』
勝手に彼女達の唇を思い出して夢の中の少女に当てはめてみる。

でも、なぜかそこでユリカの名前が思い浮かばないのか不思議でしょうがない(笑)
無意識に避けているのか・・・

と、そこに・・・・

「ア・キ・トさん♪」
「め、メグミちゃん!?」
アキトの顔を覗きこんで話しかけたのはメグミであった。
わざわざブリッジに詰めているはずの通信士がなぜ自分の部屋に?

「どうしたの、メグミちゃん。ブリッジは?」
「ブリザートがひどいんで通信がほとんど使えないんです。
 だから私もパイロットの人達と一緒で結構暇なんです♪」
用意してきた極上の笑顔でにっこり笑うメグミ。

・・・・さっきから癖になっていて、唇をどうしても見つめてしまうアキト。
『メグミちゃん・・・・なわけないしなぁ・・・』
そう思いながらも考えてしまう夢の中の少女の事

「どうしたんですか?」
「いや、なんでも・・・・」
赤くなってそっぽを向くアキト。
それを都合良く勘違いしたのか・・・

「じゃ、気分転換しに行きません?」
「え?」
アキトが同意する前に強引に引っ張っていくメグミであった。



ナデシコ・バーチャルルーム


「えっと、時代設定は1990年代日本の高校っていう設定でいいですよね」
「なんなの、これ?」
「これがヘルプのはずなんだけど・・・」
バーチャルルームに入った二人はヘッドセットを付けた後、『説明しましょう♪』と書かれた怪しげなボタンを押してしまった。

すると・・・

『説明しましょう!
 このバーチャルルームはクルーの精神的ストレス解消の為のレクリエーション施設です。
 装着したヘッドセットはバーチャルな画像を見せることが出来ます。
 様々な舞台設定を設定することにより擬似的なロールプレイングを体験することが出来ます。
 デフォルトの設定では学園生活、熱血ロボットアニメ、トレンディードラマ、時代劇などなど様々な世界をリアルに疑似体験できるという・・・』

ブチィ!!!

長くなりそうなのでアキトが納得したところで説明をブチ切るメグミ。
実はイネスが向こうの部屋から生中継で説明していたとしたら・・・滝のような涙を流していることであろう(笑)

「じゃ、アキトさん。学園生活へレッツゴー♪」
メグミはスタートボタンを押して、アキトを学園生活へと誘った。

ただし、

メグミが年齢設定を『ちょっぴりアダルト』と呼ぶには目盛りを2、3個多めにしていた事をアキトは知る由もなかった。



学園・美術室


「ここは?」
火星育ちのアキトには1990年代日本の高校は珍しかろう。
「先輩♪」
「ああ、メグミちゃん・・・・ゲ!」

メグミの言葉に振り向いたアキトだが、彼女の姿を見て驚く!

茶髪にガングロ
ラメのアイラインに白い口紅
ブレザーにベストにミニスカート
生足にルーズソックス

いわゆるコギャルルックである(汗)
誰?
んな時代設定を入れたのは?

「どうです?アキトさん♪」
「メグミちゃん・・・・コギャルは・・・既に絶滅していると思うから・・・
 やめた方が・・・」
「え〜〜〜そうですか?
 結構気に入ってたのに・・・」

気に入ってたんかい、メグミ!




・・・・しばし後、一旦リセット


「でもやっぱりスカートは短めなんだね」
「本当ですね♪」
コスチュームはセーラー服に替わったものの、スカートは短く、生足でルーズソックスなのは相変わらずの様だ。
・・・筆者の好みとかいうなかれ、この時代の基本らしいからだ(←偏見)

「先輩♪」
ずい!と唇を近づけるように迫るメグミ
「せ、先輩!?」
「ここじゃ私達美術部の先輩後輩って設定らしいですよ♪」
「ああ、そういうことね・・・」
「そんなに堅くなっちゃ気分転換になりませんよ♪」
あがるアキトにここぞとばかり迫るメグミ。

ミニスカート、生足、ルーズソックスに加えて
あげて寄せての天使のブラ
胸元ちょっぴりゆったりめの制服
つやつやピカピカのルージュ
トドメに勝負○○○(爆)

いかにも「さぁ食べて♪」状態でアキトににじり寄るメグミであった(笑)



ナデシコ・ブリッジ


ブリッジはなぜか意気消沈。
それもそのはず、普段ほっといても脳天気振りまきまくりのミスマル・ユリカが今日に限っては黒雲モクモク雷雨寸前状態にいたからだ。
当然やる気など起こるはずもなく、意気消沈状態

理由は単純
メグミの席のお休みタヌキさんがそれだ。

ルリ「あの・・・メグミさんは?」
ミナト「まぁこのブリザードだから通信士ぐらいいなくても・・・
 興味あるの?」
ルリ「ええ、とっても」
ミナト「そんなに気になるなら、オモイカネでちょちょいと調べちゃえば?」
ルリ「・・・・バーチャルルームのようです。
あ、アキトさんと一緒」

ユリカ「ビクン!」

ルリ「何やってるんですか?二人とも?」
ミナト「まぁ、健全なレクリエーション施設だから間違いは起こらないにしても」

ユリカ「ビクビク!」

ルリ「間違い・・・って?」
ミナト「ルリルリにはまだ早いって」
ルリ「それって・・・大人の男女が二人でする事ですよね?」

ユリカ「ビクビクビク!」

ミナト「へぇ、ルリルリ知ってるの?」
ルリ「ええ、アキト×ルリ以外の同人誌は撲滅キャンペーン中ですから。
 アカツキ×アキトなんて天が許しても私が許しません!!!」
ミナト「ルリルリ・・・(汗)」

ユリカ「どよ〜〜〜ん」

ってな具合で、ユリカにとっては不安大爆発中なのだ。
おまけに気まずさも手伝って八方塞がり状態

んで、当然それを見ていて噛みつく人もいる。

「シャキッとしなさい!ミスマル・ユリカ!!」
副操舵士のエリナ・キンジョウ・ウォンである。
またの名をナデシコ学級委員長(笑)
その彼女に生返事で答えるユリカ。
「はぁ・・・」
「いくら楽勝な作戦だからって艦長のあなたがダラけていたら、他のクルーに示しがつかないでしょ!!!」
「はぁ・・・」
「そんなふにゃふにゃだから彼氏に逃げられるのよ!!」
「ガーーーーン」

『ああ、そんなにはっきり言っちゃ可哀想だよ〜〜』
とか他のクルーは思うが、委員長はお構いなしにずけずけ厳しい叱責をする。

おとなしくエリナに叱られているユリカ。
「ゴメン、ユリカ。下手に助けにはいるとエリナさんにマークされそうなんだ」
そんな彼女を柱の影で見ていたアキは心の中で手を合わせる。
なんとかユリカのヘマを未然に防ごうと思っていたアキであるが、今エリナに疑惑の眼差しターゲットロックオンされると非常にヤバイので卑怯にも隠れていたりしていた(笑)



学園・美術室


「先輩、もうすぐ絵画コンクールですよね♪」
「え?」
「え?じゃないですよ、アキトさん。今の私達は美術部の先輩後輩です」
「ああゴメン」
すっかりメグミの唇に目を奪われて、ストーリー設定を忘れているアキト。

「ああ、そうだねぇ〜〜。
 何を描こうかなぁ〜〜」
誤魔化しついでに適当なセリフをいうアキトだが・・・

キラーン!
メグミの瞳が妖しく光る。

「先輩、何を描くか決まってないんですか?」
「ああ、そりゃ・・・」
決まってるも何も、いましがたこの舞台設定を知ったばかりである。
何を描くとか考える以前の話だったりするのだが、それこそメグミの思惑通りだった。
ターゲットロックオン状態である(笑)

「それじゃ、先輩にお願いがあるんですけど・・・」
「え?」
アキトに背中を向けたメグミは、アキトの返事を聞く前に・・・

シュル・・・・

「!?」

メグミの手からはなれて風に舞うスカーフ・・・
もちろんセーラー服の襟に巻いてたスカーフである。
そして振り向くと・・・



ナデシコ・ブリッジ


「艦長」
「・・・・」
「艦長、艦長」
「え?なにルリちゃん?」
ルリの呼びかけにぼーっとしていたユリカは慌てて答える。

「どうしたんですか?まるで『彼氏に捨てられました』って看板を背負ったみたいな顔をして?」
「グサ!!!
 ルリちゃん、ひどいよぉ〜〜」
ルリの結構きつい言いぐさに傷つくユリカ。

「それはいいんですけど」
「いや、ルリちゃんが良くても私が・・・」
「皆さん、お昼に出かけましたよ。」
ルリが指差すとブリッジにはほとんどのクルーがいなくなっていた。

唯一残っていたといえば・・・
「ラピスちゃん、わ、私は別に・・・」
「アキ、ご飯ご飯!」
「ちょ、ちょっとひっぱんないで〜〜〜」
とかいってユリカを案じて残っていたアキと、それを無理矢理引っ張っていくラピスぐらいのものであった。

で、結局ブリッジに残ったのはユリカとルリになる。

「艦長はどうなさいます?お昼ご飯は?」
「ん・・・・先行って来ていいよ、ルリちゃん。
 私お留守番しておくし」
「そうですか?
 じゃぁお願いします・・・」
力無く話すユリカに気を使って退出しようとするルリ。

だが・・・

「そうそう、艦長」
「はい?」
「私の机の上に撲滅キャンペーン中の同人誌を置いてあったりしますけど、決して読まないで下さいね。
 特にアキト×メグミの同人誌なんて絶対読まないで下さいね」
「・・・・うん、わかった」
わざわざ念を押してから退出するルリ。




シーーーーン


見るなと言われるとどんなものか見たくなるのが人の性。
ユリカもご多分に漏れず、そーっとルリの席をのぞき見る。
するとこれ見よがしに『メグ姉、愛の体当たりセクシーアタック♪』(著者アマノ・ヒカル)と題された同人誌が机の一番上に置かれていた。

「・・・・・・・」
右確認
左確認
後ろ確認
前確認

誰も見ていないのを確認した後、ユリカは素早い手つきでその同人誌を手に取る。
そしてこっそり中をのぞき見ると・・・



同人誌『メグ姉、愛の体当たりセクシーアタック♪』


それは夕焼け射す美術室の片隅
二人は絵画コンクールに出品しようと遅くまで残っていた。
だが・・・

「ダメだ!こんなモチーフじゃ入賞なんて!!!」
「そんなことありません、アキト先輩!
 アキト先輩の絵、私大好きです」
「お世辞はよしてくれ、メグミちゃん!
 俺の絵なんて所詮誰かの真似事なんだ!」
「そんなことありません、そんなことは・・・・」
「ダメなんだよ、メグミちゃん!
 描きたいものがないんだ!
 どうしてもイメージが湧いてこないんだ!」
「・・・・じゃぁ、私を描いて下さい・・・って言ってもダメですか?」
「え?」
「私・・・先輩のためなら何だって出来ます・・・」

シュル・・・・

「メグミちゃん・・・・」
「そりゃ、確かにルリちゃんみたいに愛らしくないし、ユリカさんみたいにスタイル良くないけど、私は先輩のためなら全てを見せたってかまいません!」

生唾を飲むアキト
彼がそんな躊躇をしているうちにもメグミはするすると制服を脱いで生まれたままの姿になろうとする・・・・

「メグミちゃん、俺のためにそこまで・・・・」
「先輩♪」
「本当のメグミちゃんを描きたいから全てを知りたい・・・」
「ええ、私の全てを見て下さい。身も心も全て♪」

そして夕日に照らされた二人の影は限りなく一つになるのであった・・・



ナデシコ・ブリッジ


「だ、ダメ!!!!!!!!!!」
妄想爆発中のユリカは同人誌の一番やばいページを読んだ途端、思わず叫ぶ。

「そんなところで舌を入れたりしちゃダメェ!!!」
(「いや、そんなところまで描いてないって」筆者談)

「そんなくんずほぐれつなんてダメぇ!!!」
(「誰もくんずほぐれつなんて描いてないって」筆者談)

「そんな揉み心地の悪いのを触るぐらいなら、いっそ私のを触ってぇ!!!」
(「だから、18禁なところまで描いてないって」筆者談)

錯乱したユリカは正面のパネルを思いっきり叩く。
あまつさえ『ネコふんじゃった』のリズムで叩く。
そして器用に『上上下下右左右左セレクトB』の順番でキーボードを叩く
最後には『PPPK』とか叩いてコンボを入れてしまう始末

するとなぜか、
「自動迎撃システム作動♪」
というオモイカネのウインドウが開いてしまった。

「へ?」
とユリカが気づく前に・・・

グラビティーブラスト発射!!!



ナデシコ・食堂


「・・・そろそろですね」
「何が?ルリルリ」
「いいえ、何でもありません。
 それよりもヒカルさん、同人誌ありがとうございました。」
「いいけど、珍しいねぇ。ルリルリがアキト×メグミを見たいなんて」
「単に傾向と対策のためです」
そう言って、そしらぬ顔をしてチキンライスを頬張るルリ。
ちなみにルリはそのほかにも実弾としてアキト×ユリカやアキト×エリナやアキト×サユリや、仕舞にはアキト×イネスなんてのもストックしてたりした(笑)

「アキ、あ〜〜ん」
「ラピスちゃん・・・自分で食べれるから・・・」
「ダメ!」
ラピスにあーんさせられて逃げられないアキは結果的にユリカの暴走を止められなかった・・・。



学園・美術室


「先輩、私のこと嫌いですか」
「そうじゃない、そうじゃ・・・」
なんかストーリーに書いてあることを忠実に実行してそうなアキトとメグミ。
ヒカルの描いた同人誌と内容が微妙に似てたりするのは気のせいではない(笑)

「じゃぁ、キスしてくれたこともウソですか?」
「え?」
「じゃぁ、私の体を優しく愛撫してくれたのもウソですか?」
「・・・もしもし?」
「じゃぁ、『胸小さいから恥ずかしい』って言ったら『そんなことない。メグミちゃんのは可愛らしくて好きだよ』って言ってくれたのもウソなんですか!?」
「誰もそんなこと言ってないって・・・」(← 一瞬、素に戻る)
「夜明けのモーニングコーヒーを一緒に飲んだじゃないですか!」
「それはストーリーの設定であって・・・・」
「アキトさんの意気地なし!どうして私を食べてくれないんですか!!」
「メグミちゃん落ち着け!!!!」
必死に(映像上は)下着姿でしがみつくメグミをなんとか払いのけようとするアキト

だが、彼らを隔てたのはアキトの必死な努力のおかげではなく・・・

ドーーーン!!!

船体が大きく揺れ、同時に警報が鳴り始めた。

「もう、これからいいときにもう〜〜」
『良かった、貞操が守られた〜〜』
とか思いながら二人はヘッドセットを外すと急いで持ち場に戻るのであった。



ナデシコ・ブリッジ


「急速後退!」
「弾幕を張れ!!」
「どこまで逃げればいいの?」
「とにかく後退だ!!」
「敵射程距離外まであと50秒・・・」

大急ぎで戻ってきたクルー一同が襲ってくる木星蜥蜴達から必死に逃げようと対策に奔走していた。

で、この事態を引き起こした張本人はというと・・・
「あ、アキトとメグミちゃんが・・・・」
と、自分のやらかした事よりも、さっきの妄想の続きを想像して壊れていたりしていた・・・。

ってことで後編に続きます。



ポストスプリクト


取り敢えず前編ですので前回と同様にポストスプリクトは女アキトことアマガワ・アキさんへのインタビューという形式に変えさせていただきます。

アキ「今回私、出番がないねぇ」

−そうですねぇ・・・

アキ「ってなにしみじみしてるのよ!」

−いいじゃないですか。嵐の前の静けさってことで。

アキ「いや、今までのでも十分騒がしかったと思うけど?」

−こんなのTV版からほとんど変わってないじゃないですか!

アキ「・・・確かに小ネタで笑わせようとしているのがありありだが・・・」

−だから後編はアキさんの魅力炸裂♪ってな感じで行きたいんですよ

アキ「み、魅力炸裂って・・・」

−そりゃ、「最優先事項よ♪」って奴をやるんですよ

アキ「やるんですよって・・・」

−突然現れた黒いバイザーをした美人女教師は実は未来人で・・・

アキ「おい・・」

−それを見られた男性生徒(未来の自分)と口封じの為に結婚して同居するという・・・

アキ「誰がするか!!!!!!!!!!(木連式柔炸裂!!)」

−・・・・・・というわけで後編をどうぞ。

ちなみにこの内容は微妙に後編の内容と違うので信用しないで下さい

Special Thanks!
・カバのウィリアム 様
・SINN 様
・9R 様
・kame 様