アバン


まぁ、オリジナルキャラが人気投票で1000票ももらえる事って、とっても貴重よね。
でも本当にアキ祭なんてやったら筆者が一番苦しむと思うのは私だけでしょうか?

それはともかく、何でもこなすスーパーレディーのアキさんもやっぱり人の子だったらしく、鬼の霍乱なんかを起こしちゃったりするわけですけど・・・・

皆さん、お見舞いと称してアキさんを困らせなきゃいいんですけどね。

ああ、これって外伝なので黒プリ本編とは何の関係もありませんのでそのつもりで。



ナデシコ・食堂


この日のアキは少し変だった。

「アキさん、お味噌汁ちょっと辛くないですか?」
味見をしたミカコが少し眉をひそめた。
「え?ちゃんと味をみたんだけど・・・」
「でも・・・」
「本当だ」
サユリも味をみるが返ってくる答えは一緒だった。
いつもはパーフェクトなアキだけに失敗したときが際だつ。

こっちでも問題は発生!

「アキさん、これニラじゃなくて長ネギ」
レバニラ炒めを作るつもりのアキトがアキの仕込みを見て言った。
「え?ウソ!?」
「いいッス。ニラは俺が切っておきますから」
慌ててやって来ようとするアキを制するアキト

「おかしいなぁ・・・・」
「珍しいですね、アキさん」
首を傾げるアキにアキトが心配する。
「ジー・・・・・・・・・」
「どうしたの?アキト君。私の顔になんか付いている?」
ジーっと自分の顔を見るアキトに不審気な声を上げるアキ。

「いや、アキさんひょっとして・・・」
ずい!
アキトの顔がアップになる。
ちょっと真剣な顔がカッコイイ

ドキ♪

『え?なに、今の音符付きのドキは!』
少し顔が赤くなるアキ。
こうして意識し出すとドキドキは止まらなかった。
『何考えてるの!これは昔の自分よ!
 自分にトキめくはずないじゃない!
 でもなんで顔が熱くなるの〜〜〜〜!!!』

とアタフタするアキを心配してさらに顔を近づけるアキト。

「アキさん・・・・」
「な、なに?」
声が裏返るアキ。
ドキドキが止まらず・・・
『ああ、もしかして禁断の世界に・・・』
「アキさん、ひょっとして風邪ですか?」
「え?」
何か勘違いしたアキの額に手を当てるアキト

ジュ!!!!
漫画のお約束のように額に当てた手から湯気が出た。

「熱いッスよ」
「ああ、そうだったの・・・・・」

グラ〜〜

「あ、アキさん!大丈夫ですか!?」
勘違いだったのを安心したのか、脱力してダウンするアキであった。



アマガワ・アキ自室


「はい、もういいわ」
「あい・・・」
アキが脇に挟んでいた水銀体温計をとるとイネスに渡す。イネスは水銀の先端をジッと見て温度を測った。

ルリ「なんで水銀体温計なんてレトロなものを?」
メグミ「あれってイヤなんですよねぇ〜〜。ちょっと力を入れると割っちゃいそうで」
ユリカ「私は口に入れてたけど、メグちゃんは脇派なんだ」
アキト「脇派って・・・・」
ラピス「今時、電子体温計で簡単測定だよ」
アキト達が口々に言いたいことを言う。
「バカねぇ。体温は水銀体温計で測るのが病院ドラマのお約束でしょ?」
イネスがそういいながら体温計を振って仕舞うと、今度は簡単な触診を行った。
聴診器を当て、最後に舌を出させて喉の奥も見る。

そして少し考えて・・・・・

「う〜〜〜ん」
「どうしたんですか、イネスさん。まさか・・・・」
ただの風邪ならこんなに悩まない。
もしや何か重病なのかも・・・・
一同少し青ざめるが・・・・

「風邪ね」

ガク!!!!

アキト「何なんですか、今の間は!!!」
イネス「だって、鬼の霍乱っていうじゃない!」
ルリ「にしたって気を持たせすぎです。」
ユリカ「そっか、アキさんも人の子だったってワケですね・・・」
アキ「艦長、あなたは今まで私の事を何だと・・・」
ラピス「別の意味でユリカは風邪引かなそう」
メグミ「そうですね、何とかは風邪を引かないっていいますしね」
ユリカ「ラピスちゃんにメグちゃんひどい!それじゃまるでアキさんがバカみたいだって言ってるようなもんじゃないですか!!」
一同「いや、アキさんじゃなくって・・・」

イネス「とにかく39度あるんだから今日一日休養することね」
アキ「でも厨房もあるし、パイロットの訓練も・・・」
ユリカ「艦長命令です。風邪を治すのもパイロットの義務です。」
アキ「・・・・・はい」

アキはおとなしく布団に潜ることとなった・・・。



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
外伝 第8.5話 「アキさん風邪をひく」



ナデシコ・艦内


『アマガワ・アキ風邪を引く!!!』
の報は瞬く間に艦内に広まった。

「鬼の霍乱」という単語が飛び交ったとか、
「誰かと裸で一晩中過ごしたから」という妄想とか、
「実は不治の病を患っている」という無責任な憶測とか、
いろいろ流言飛語が飛び出したりしたのだが・・・・

「ただの風邪よ。私の見立てが信じられない?」とのイネスの睨み一閃で噂は霧散した(笑)

まぁ、それはいいとして元がお祭り好きなナデシコクルーなだけになにやら騒ぎ出すのは当たり前なわけで・・・・・



ナデシコ食堂


「ルンルン〜〜♪」
鼻歌混じり料理を作るのは我らが艦長ミスマル・ユリカである。

何をしてるかって?
無論、アキのための雑炊作りである。病気の時には消化がよく、滋養強壮の付くものがいい。普段ナデシコのために頑張ってくれているアキのための心尽くしである。
その精神は立派だ。

しかし・・・

ガシ!
バサ!!

「おい、ユリカ。
 今、塩を無造作に掴んでドバっと入れなかったか?」
「病人なんですもの、このくらい塩気がないと♪」
アキトの指摘に根拠もなく主張するユリカ。
しかし・・・・土鍋の中でまだ塩が全部溶けていない・・・

あんなものを食わされるアキが可哀想で必死にユリカの料理を軌道調整しようとするアキト。
それを目論んだのかどうかしらないが、ユリカとしてはアキの料理を作ってあげたいという殊勝な動機よりも、こうやってアキトに料理の手ほどきをしてもらえるという下心の方が強いようだ(笑)

当然、そんなことになったらユリカだけで済むわけもなく・・・・

「アキトさん〜〜卵ってどうやって割るんですか?」
隣では小さな鍋を煮ているメグミの姿があった。
「メグミちゃん、これ何作っているの?」
アキトが恐る恐る聞くと・・・
「卵酒です♪」

自信満々に答えるメグミ。確かにお酒の匂いはする。
しかし・・・・

「何入れたの?メグミちゃん・・・」
「スッポンの生き血でしょ?ハブ酒に黒蜥蜴に山椒にニンニクに・・・」
そう、既に色がこの世のものとは思えない。
「あ、そ、そう・・・・・
 卵はこうやって割るんだよ」
お茶を濁して卵の割り方を教えるアキト
しかし・・・

グシャ!

「め、メグミちゃん・・・殻が・・・」
「えい♪」
卵の殻が混じったまま鍋にぶち込むメグミ。
どんなのが出来るのだろう・・・・

だが、二度あることは三度あるで・・・

「アキトさん・・・・これからどうすれば・・・・」
少しうつむき加減でやってきたのはルリであった。
「ああ、ルリちゃんが作るのはホットレモネードだったね」
「はい・・・」
たぶんに漏れず、ルリもアキのお見舞い用に料理を作っていた。

『ああ、ルリちゃんだけはまともなんだ〜』
アキトが喜ぼうとしたその瞬間・・・

「やっぱり、ブランデーですね」
「え?」

ドボドボドボ〜〜〜

「ルリちゃん・・・」
「はい?」
「レモネード・・・・だよね?」
「ええ?」
「なんでブランデーを?」
「何かの小説で読みました。
 風邪を引いた提督が被保護者の作ったブランデー入り紅茶を飲んで風邪が治るというのを」
「・・・・・」

それを試したかったからなのかわからないがブランデーの量からするに、それはブランデー入りレモネードというよりはレモン入りブランデーという様相を呈してきた。

三人の料理を絶対アキに食べさせてはならないとアキトは心に誓うのであった。



ナデシコ・アキの自室


「ゴホゴホ・・・・・うう情けない〜〜」
一人自室でおとなしく寝ているアキ。

「しかし・・・・」
暇である。はっきり言って暇である。
ゆっくり何もしないで寝ているなんて、もう何年ぶりだろう?
今まで風邪を引く暇もなく戦い続けてきたから、過去に戻って温かい雰囲気の中で気が緩んだのかもしれない。

「まぁ、たまにはいいかな・・・・」
風邪で寝込むのは不本意だが、たまのお休みなら悪くないか・・・とも思い出すアキ。

しかしナデシコがそんなに甘いわけもなく・・・

トントン!

「誰ですか?」
最初のお見舞いの来訪者である。騒動の始まりであった。



お見舞い・ウリバタケの場合


「いよっ! アキちゃん元気か?」
ドアをノックして入ってきたのはウリバタケであった。

「な、何ですか?」
「なにって、お見舞いだろう?」
「す、済みません。気を使わせてしまって」
「いいって事よ!」
アキのパジャマ姿に照れるウリバタケ。
しかし部屋を見回して一言。

「殺風景だな・・・」
「え?いや、まぁ・・・・」
「やっぱりここら辺に欲しいな」
「な、何を?」
「何って掘炬燵に決まってるだろ?」
「へ?」
「いるだろ?こたつ」
「いや、その・・・・」
「遠慮するんじゃないって、野郎ども!!」

そう言うと入ってきたのは整備班の面々

「いや、別に私は・・・・」
アキの呼びかけも聞かずに作業を続ける整備班の面々。

もうもうと立ち上がるホコリの渦!

「ゴホ・・・いや、セイヤさん
 ゴホゴホ・・・こたつなんて・・・いいですから・・・」
そもそも布団でおとなしく寝ている自分にはこたつなんて必要ない・・・と言おうとするたんびにホコリで咳き込むアキの言葉は彼らに通じるわけもなく・・・

「よし、アキちゃん出来たぞ・・・・」
ウリバタケが振り向くと、ホコリにやられてノックダウンしたアキの姿があった。



お見舞い・ヒカルの場合


「おハロー、アキさんお元気〜♪」
「あまり元気じゃないです・・・」
整備班一同を残った気力で叩き出したアキであるが、そんなことお構いなしにヒカルは入ってくる。

「あら、こたつじゃない♪」
ヒカルはこたつを見て嬉しそうに言った。
「いや、セイヤさん達が・・・」
今更撤収させてまたホコリがたってもなんなので、掘炬燵はそのままである。

「いやぁ、ちょうど良かった。こたつにぴったりのお見舞い品を持ってきたの♪」
「はい?」
「ジャジャーン」

数秒後・・・

「うんうん似合うよ♪」
「いや・・・」
「やっぱりこたつにどてらは似合うねぇ〜〜♪」
現在、猫背気味のアキには本当にどてらがよく似合っていた。

「これ・・・」
「締め切りの時、よくこれ着てお仕事するんだ〜」
同人誌書くときにヒカルが使っていたお下がりらしい。
「これで暖かくして休んでね♪」

布団で寝る自分にこのどてらをどうしろと?とツッこめないアキであった。



お見舞い・イネスの場合


「あら、アキ君、そのどてら似合ってるわね♪」
「・・・・・どうもです」
早速役に立って嬉しいとも言えないアキであった。

「ちゃんと養生している?」
「お、おかげさまで・・・」
全然おかげさまじゃないのだが、とりあえずそう言っておくアキ。
が、イネスはそんなアキの複雑な心境を気づきもしなかった。

「はい、お見舞い」
「え?」
アキはドキドキしながら手渡されたビニール袋を受け取る。
イネスのことだ、どんなとんでもないものが・・・・

・・・・・・・

「ミカン?」
「そうよ。風邪を引いたときにはビタミンを摂るのがいいのよ♪」
アイちゃんの頃の記憶からなのか、ミカン好きのイネスであった。

それだけなら『ああ、イネスさんがまともで良かった♪』で済むのだが・・・・

「あ!イネスさん♪」
奥から声をかけるのはこたつに入ったヒカルである。
いつの間にか居着いていた(笑)

「おや、アマノ・ヒカル君じゃない。
 それに掘炬燵があるのね?」
「え、ええ・・・・セイヤさん達整備班の人が・・・」
「風情があっていいわね〜」
とか言ってさっき手渡したミカンの袋を奪い取ってさっそくこたつに潜り込むイネス。

そしてさも当然かのようにミカンを剥いて食べ出すイネスとヒカル。

「これで番茶があったりすると最高なんだけどなぁ〜」
「あ、アタシも〜〜」
「・・・じゃ、煎れてきます・・・」

既にこたつに入って美味しそうにミカンを頬張り、幸せそうにヌクヌクしているイネスとヒカルを見てると
『そのミカンは私にお見舞いでくれたんじゃないの?』
とか
『病人の私が何でお茶の支度を?』
とか言い出せなくなるアキであった(笑)



お見舞い・イズミの場合


「アマガワ・アキがグれた。隊長(体調)不良」
「・・・・・・・・」
アキは開けた扉をいきなり閉めた。

すると扉の向こう側でドンドン叩くイズミ
再び開けると・・・

「閉めないで(絞めないで)、サバじゃないんだから・・・」
4話で言えなかったギャグをここぞとばかりにかますイズミ
あまりの寒いギャグに凍るアキ。

だが、もっとアキを凍らせていたのはその服装であった。
「それで・・・・いかような御用で?」
「お見舞い・・・・・」
「・・・・そうかとは思ったんだけど、念のため・・・」

イズミはなぜか今流行の陰陽師ルックである。

「やぁイズミ、どうしたの?その格好」
「厄払い」
「厄払いって・・・」
ヒカルの言葉にすたすた中に入るイズミ。
アキには止める暇もなかった。

「・・・・・・風水が悪い」
と言い出していきなり方角を調べだす。

北の方角には『植木等CD全集』
南の方角には『林家ペーパー子』の写真集
東の方角には『山崎VS.モリマン』DVD全集
西の方角には『Mrオクレ』の詩集

それぞれの方向においてウンウン頷き、満足気に納得するイズミ

アキ「あの・・・あれってどんな意味が?」
ヒカル「う〜ん、イズミの尊敬する芸人を四方においてアキさんを守護してもらうつもりじゃないかなぁ・・・・」
イネス「っていうか既に風水とも陰陽道とも違うような・・・」

あまりにも悦に浸るイズミに誰もそのことを指摘できなかった・・・。



お見舞い・アカツキの場合


「やぁ、アキさん♪お加減はどう?」
「あんたの顔見たから最悪・・・」
「またまた〜ご冗談を〜〜」
冗談なのではないのだが、わざと真剣に受け取ろうとしないアカツキ。
露骨に嫌がるアキの様子を見てそういうのだから、さすがにナンパ師なのか厚顔無恥なのかよくわからなかった。

「ってことでお見舞いの花だよ♪」
アカツキが取り出したのは大きな花束

でも

「なにゆえ黒薔薇?」
「いやぁ、アキさんには黒薔薇がよく似合うよね♪」
そう自分に陶酔するアカツキであるが・・・

「ゴメン、それ持って帰ってくれる?」
「どうして?」
「今の私にはその匂い、きつすぎる・・・」
薔薇の匂いにダウン寸前のアキ。
風邪引きさんには薔薇の香りさえ刺激臭である。

「え?
 じゃ、じゃぁこっちなんてどう?
 黒百合なんて君にぴったりだと・・・・」
慌てて別の花束を差し出すアカツキだが・・・・

「ゴメン、それも匂いきつすぎ・・・」
「じゃぁ、シクラメンなんか・・・・」
「・・・・」
「じゃぁ、じゃぁ椿なんかは・・・・」
「あなたはそんなに私に死んで欲しいの?」
「え?」
「さっさと花持って帰れ!!!」

木連式柔炸裂!!!!!!!

アカツキ「・・・・・・なんで?」
ヒカル「まぁ、病人のお見舞いに匂いの強い花は喜ばれないよねぇ」
イズミ「『死』『苦』らめん・・・なんちって」
イネス「椿は花が落ちる姿が打ち首の時の様に似ているから病人には喜ばれないのよね〜〜」
ノビたアカツキを肴にこたつでお茶をすするイネス達であった。



お見舞い・リョーコの場合


「お、オッス!」
「今度はリョーコちゃんか・・・」
「今度は、って・・・」
言う前にリョーコは気づいた。
奥でヒカルにイズミにイネスが手を振っている。

ヒカルらがいて『しまった!』と思ったリョーコであったが、今更、まわれ右して帰るわけにもいかない。
勇気を搾り出して手の中のお見舞い品を差し出すことにした。

「た、隊長の風邪が早く治るように・・・持ってきたんだ・・・」
「あら、ありがとう」
と言ってリョーコの差し出した袋を受け取ろうとした。

しかし・・・・・

目が点になるアキ

「・・・・・・・ネギ?
 お見舞いの品が?」
ネギである。しかも太い長ネギである。
「お、おかしいか?」
「あはははは・・・・おかしくないよ〜〜」
赤くなって必死に聞くリョーコをがっかりさせまいと、渇いた笑いながら肯定するアキ。

確かに風邪の時にネギを食べれば良くなるって聞いたことが・・・

しかし、さらにリョーコは真っ赤になって・・・
「あの・・・それで隊長さえイヤじゃなければ、オレが入れて・・・」
「入れるって・・・どこに?」
アキの疑問にリョーコはさらに真っ赤にしかも悶えながら小声でしゃべる。

「・しり・・・」
「え?」
「だからお・り・・・」
「はい?」
アキが何度も聞き直すたびに悶えるように答えるリョーコ

だが、それを見て吹き出したのは奥にいたヒカルにイズミだった。

「あはははははははは♪♪♪♪♪♪♪♪」
そのバカ笑いを聞いた瞬間、リョーコは自分がハメられた事に気が付いた!

「てめぇら!!!!」
「いやぁん♪リョーコが隊長のお尻にネ・・・」
「言うな、この野郎!!!」
「リョーコがネギ持って〜〜♪」
「ただじゃおかねぇ!!!」
アキの部屋を逃げたり追ったり走り回る三人。

「・・・・どういうことです?イネスさん」
「いわゆる民間療法ね。恥ずかしいからやめておいた方がいいわよ。
 効果も疑わしいし(笑)」
「はぁ・・・」
イネスの言葉をいまいちよくわかっていないアキであった。



お見舞い・エリナの場合


「アマガワ・アキ、お見舞い持ってきてあげたわよ!」
「・・・何怒ってるんですか?」
プイとそっぽを向いたまま真っ赤になって言い訳がましくそういうエリナ。

「怒ってないわよ!
 それよりお見舞いよ!受け取りなさい!!」

アキは恐る恐る包みを受け取る。
最初がこたつで次がミカンで、どてらにギャグ一式、貰って嬉しくない花束に長ネギと来たら、誰だって次は何が来るかと構えるだろう。

でもエリナが差し出したのは意外や意外・・・

「フルーツ盛り合わせ?」
「そうよ!目玉はマスクメロンよ!
 マスクメロンなんて高級なもの食べたことないでしょ?」
やたらと高級なところを強調するエリナ。

「いや、食べたことはありますけど・・・」
「まぁ、庶民には高嶺の花よね。これを機会に私とネルガルに感謝しながら味わうことね。オホホホホーーーー」
キャラが変わったように高飛車になるエリナ

胸を反らして自分の財力を誇示するのだが・・・

「これに恩を着て、もっと私の言うことを・・・」
「お、メロンか!?」
「え?」
アキ以外の声が室内からするのに驚くエリナ。

中からはリョーコを筆頭にヒカルやイズミやイネスやなぜかアカツキまでいた。

「旨そう♪」
「食べちゃっていい?」
「いや、それは・・・」
「頂きま〜〜す」
とかいってあっさり奪われるお見舞いのフルーツ。

彼らは病人そっちのけでお見舞いのフルーツをあっと言う間に平らげていった。

「あ・・・・・・」
「あの人達、なぜか居着いちゃったんですよねぇ〜。
 でもこれって借りには・・・ならないですよね?」
「知らないわよ、バカ!!!」

何がバカなのかわからないが乙女の純情(?)を踏みにじられてエリナは泣きながら帰っていった(笑)

気づいてやりなよ、アキ君・・・エリナの気持ちに。



お見舞い・ミナトとラピスの場合


「あんた達、何してるの!!!!!」
「何してるの!!!!!」
ミナトとラピスの咆哮一閃、室内は一気にしーんとなる。
入り口にはミナトとラピスが仁王立ちで立っていた。背中には『ゴゴゴゴゴ!!!』という擬音をぶら下げて。

二人が乗り込んだとき、そこは既に病人の部屋ではなかった。

こたつの上ではトランプが広げられ、大富豪に興じていたらしい。
そのまわりにはお見舞いの品を食い散らかした後や、いつの間にか持ち込んだ飲み物やお酒のビンが散乱していた。
あまつさえ、既にできあがった数名がアキにお酒を勧めていたりする。

本人達に悪気はない。
でも当の病人であるアキはダウン寸前だった。

「病人の部屋でどんちゃん騒ぎするなんて、なんて非常識な・・・・」
「あの・・・・」
「いや、暗くなりがちな病人を励まそうと・・・・」
怒りに震えるミナトに気圧される一同・・・

「出ていきなさい!!!!!!!」
「「「「「はい!!!!!!!」」」」」

全員脱兎のごとく逃げ出していった(笑)

「アキ、大丈夫?」
「アキさん、たてる?」
「なんとか生きてます〜〜」
いつの間にかコスチュームチェンジしてナース服に着替えている二人であった。

「ふ、二人はなんで・・・」
「アキの看病!」
「こんな事になってるんじゃないかな〜〜と思って」
「あ、ありがとう・・・・」
二人の心遣いに感謝するアキであったが・・・

「添い寝、人肌で暖める・・・・・」
なにやらその後の看病を想像してトリップしているラピス。

「ミナトさん・・・・この子に何を吹き込んだんですか?」
「私は何も!!」
とかいいながら背中にはナースものの漫画がちらほら。
「それよりも早く風邪を治して!
 でないとナデシコの台所が!!!」
「はい?」
ミナトは泣きながらアキに病気を治してくれるように訴えた。



ナデシコ食堂・その後


さてさて、先ほどユリカ、メグミ、ルリが作っていた料理に話題を戻そう。
いよいよ完成した料理を我先にアキのところへ持っていこうとした三人をアキトはどうにか制した。

ユリカ「え〜〜どうしてダメなの?」
アキト「えっと・・・ほら味見、味見をしないと」
メグミ「味見なんていりませんよ。こんなに美味しそうに出来てるんですよ?」

どこが?という台詞をかろうじて飲み込んだアキトはねばり強く彼女らを説得する。

アキト「そう言わずに。それに一度に三人の料理は食べられないと思うよ、アキさんは」
ルリ「それは一理あります」
ユリカ「え〜〜でもどうやって選ぶの?」
アキト「心配するな!既に審査員を用意しておいた!」

アキトが指さす方向には三人の犠牲者・・・もとい審査員が座っていた。

アオイ・ジュン ユリカの手料理ならそれがどんなに猛毒でも喜びを感じる男
「ユリカ、君の手料理が食べられるなんてなんて幸せなんだ〜♪」

ウリバタケ・セイヤ 大きいお友達代表。若い娘ならストライクゾーンは広い
「いやぁ、若い子の手作り料理が食べられるなんて光栄だなぁ♪」

ムネタケ(キノコ) オカマ言葉を使うが、最近ロリの噂が・・・
「あんた達、私に相応しい料理を出すのよ!!」

アキト「三人に試食してもらって点数の一番多い人の料理を採用だよ」
ユリカ、メグミ、ルリ「はい!」





その後・・・・食堂から阿鼻叫喚の叫び声が響いたのは言うまでもなかった。
アキトは地獄シェフらの料理がアキの元に渡るのを無事阻止した(笑)



当然その間、衛生の関係上、ナデシコクルーが食事できなかったのは言うまでもなかった。



数時間後・アキの自室


ピチャ・・・・

ん?

アキはふと額に冷たい感じがして目を覚ました。
「あ、起こしちゃいました?」
「・・・・あれ、アキト君?」
「ごめんなさい、寝てもらってていいっすよ。」
目の前にいたのはアキトであった。
タオルを水で冷やし、氷嚢を替えていたようだ。

「なんでアキト君が・・・」
「夜食持ってきたんですけど・・・」
そう言いながらアキトは指さす。
そこには看病疲れからなのか、うたた寝をして毛布を掛けられているミナトとラピスの姿があった。
たぶんアキトが毛布を掛けてくれたのだろう

「あ、ありがとう、アキト君」
「いいんですよ、アキさん。それより早く良くなって下さいね」
「・・・・うん」

アキトに優しくされたのが身にしみたのか、みんなに迷惑をかけた(かけられた?)のに恥じ入ったのか、布団に顔まで潜り込みながら消え入るような声で呟く。
「みんなに迷惑かけちゃったなぁ・・・」
「何言ってるんですか、アキさん!」
「え?」
「みんなアキさんにお世話になりっぱなしなんですから、少しは頼りにして欲しいんですよ。
 だから風邪引いたときぐらい俺達を頼って下さい!」
アキトの言葉に目を丸くするアキ。

昔の自分はこんな奴だっけ?
人に迷惑をかけっぱなしで、半端な自分から脱却したいと焦っていた昔
そして誰にも迷惑をかけずに自分の手で何とかしようと焦っていた自分
甘えるよりも利用していると思うことで虚勢を保とうとしたあの頃

・・・・・そうか、甘えてもいいと思える場所にいたから気が揺るんだんだ。

今のアキにはそれがなんとなく心地よいと思えるのであった。

「夜食、食べます?」
「ええ」
「はい」
「おいしそう」
「俺が作ったんじゃないんです。ホウメイさんが仕込んでおいてくれて。
 俺は暖めただけで・・・」
「でも暖かくて美味しいよ♪」
「早く良くなって下さいね」
「ええ」

迷惑をかけてもいい仲間がいること
甘えても支えてくれる仲間がいること
その喜びをかみしめるアキであった。



ナデシコ食堂


翌日、アキトの夜食パワーなのか、驚異の回復をみせたアキ。
イネスもその回復ぶりに太鼓判を押した。

しかし、回復したアキが職場で見た光景は・・・
「いやぁ、アマガワ。早速で悪いんだけど今日の仕事始めは片づけからだよ」

グチャ・・・・・
ずもももも・・・

そこには荒れ果てた食堂があった。

ユリカ「ごめんなさい」
メグミ「すみません」
ルリ「・・・ペコリ」

さんざん、食堂を引っかき回し調理という名の破壊活動を行い、おかげで食堂は立ち入り検査で消毒されるまでに変貌していた。

「なんとかあんたの夜食分ぐらいはキープしておけたんだけど」
ホウメイが惨憺たる状況にポリポリ頭をかいた。

道理でミナトが必死に看病に来るはずだ。

「三人とも当分ふりかけ弁当!」
「「「そ、そんなぁ〜〜〜」」」

三人の情けない叫び声がナデシコに響きわたったのは言うまでもなかった(笑)



ポストスプリクト


あ、ホウメイガールズを忘れた(笑)

ということで黒プリ外伝をお届けしました。
人気投票1000票ありがとうございました!

風邪引きさんへのお見舞いストーリーでしたが、どうでしたでしょうか?
なかなか難しい。
もう少しギャグに走った方がよかったかしら?(十分ギャグですが(汗))
楽しめるものになったかは筆者にもよくわかりません。

こういう何も考えずにギャグだけってのも書いていて楽しいです。
大体黒プリってなまじおもしろくしよう、前後編を書こうとするから肩に力が入っちゃって(苦笑)

ってことでおもしろかったなら感想をいただけると幸いです。

では!

Special Thanks!
・北の国から 様
・Hiro 様
・三平 様
・dekai 様
・導 様
・SINN 様
・TARO 様
・kakikaki 様
・他、人気投票でアキに投票して下さった方々ALL