アバン


まぁ、変形合体はロボットモノのお約束としても、ぴちぴちの二十歳のユリカさんがなんで科学忍法を知ってるんですか?

みんななんでそんなに熱中したのか、アキトさんほっといてどんちゃん騒ぎ。
悪のりした報いなのか、アキさんとアキトさんが遭難してしまったから、さぁ大変

今度こそ真面目に助け出すんでしょうねぇ、皆さん?

ああ、これってSecond Revengeのラストとは何の関係もありませんのでそのつもりで。



ナデシコ・ブリッジ


コチョコチョ!!!!!!!!!
サリナ「にゃははははははぁぁぁ♪♪♪♪♪♪♪
 お願い、くすぐるのは止めてぇぇぇぇ!!!!!!」
ラピス「ダメ!反省の色がない」
サリナ「反省したから・・・・・にゃぁぁぁぁぁぁ♪♪♪♪♪」
プロス「まぁ、彼女も反省されているようですし・・・」
メグミ「ダメです、こういう人はとことんまでお灸を据えないと懲りません!」
プロス「とはいえ、そろそろアキさんたちの救出の方法を考えませんと・・・」
ユリカ「とりあえず、気は晴れたからいいんじゃないですか?」
ルリ「そうですね。じゃ、皆さん一巡したら終わりましょう」
サリナ「え!?」
ルリの後ろにはアキファンクラブ及びアキト連合の老若男女合わせて50人ほどが孔雀の羽をもって待ちかまえていた。

「♪!♪!♪!♪!♪!♪!♪!♪!♪!♪!♪!♪!♪!」
哀れお仕置きで笑い死に寸前の世田谷区限定美少女アーキテクトであった。

合掌・・・



しばし後、ナデシコ・ブリッジ


「いい加減にこの縄ときなさいよぉ〜〜」
さてさて、二人の遭難の原因を作ったサリナを一通りイジメ終わった後、一同は事の次第を検討しだした。
ルリが状況をスクリーンに映し出す。

「アマガワ機、テンカワ機共にナデシコのエネルギー範囲を離脱。
 現在は月裏側を漂流している模様です」
「最悪だな」
ゴートが当たり前だが身も蓋もない感想を述べる。

ユリカ「で、自力で生還する可能性は?」
ウリバタケ「ダメダメ!エネルギー供給がねえんだ。
 内蔵バッテリーなんて5分も飛んで終わりだ」
サリナ「でもアキセカンドのウイングはソーラパネルも兼ねるから充電は出来るわよ」
ウリバタケ「容量はどのぐらいだ?」
サリナ「50Wぐらい・・・・」
ウリバタケ「バカヤロー!!!んなもん生命維持に使って終わりだろぉ!!!!」

とか言っているグループもあれば・・・

イネス「ということはナデシコ側から彼らに近づくしかないようね・・・」
ジュン「それは無理ですよ。ナデシコは今コスモスによる改修作業を受けていてそれどころじゃありません。のこのこ出かけていったら蜥蜴達の格好の的です!」

とかなんとか喧喧諤諤

メグミ「そんな、アキトさん達は!!!」
ミナト「心配いらないよ、メグちゃん。遭難したときは一ヶ所でじっとしてた方がいいって言うし、アキさんが付いてるんだからそのぐらいちゃんとやってるわよ!」
動揺するメグミを励ますミナトだが・・・

アカツキ「ま、内蔵バッテリーを全て生命維持に回しても、酸素が先に数時間で切れちゃうかな〜〜」
ルリ「アキトさん・・・」
ラピス「アキ・・・」
リョーコ「てめぇ!!!!幼い子供達を不安がらせてどうするつもりだ!!!こらぁぁぁぁ!!!」
アカツキ「いや、僕はただ事実を・・・」
ヒカル「そうだ!やっちゃえ隊長ぅ♪代理!!」
イズミ「そうだ!体調リョーコー♪代理!!」
リョーコ「てめえらぁぁぁぁ!!!!!」

とか無責任に煽る者たちもいる。

んで、我らが妄想女王ミスマル・ユリカ嬢はというと・・・
ジュン「とりあえずはアキさんも一緒にいるんだ。無茶なマネだけはしないと思うから安心して・・・・」
ユリカ「ふたりっきりよね」
ジュン「え?」
ユリカ「だからアキトとアキさんが」
ジュン「そりゃそうだけど」
ユリカ「遭難したんだよねぇ・・・・」
ジュン「?」
ユリカ「ほら、雪山で遭難したら、凍死しないようにお互い肌と肌で暖め合うってあるじゃない」
ジュン「え?」

二人してその光景を想像してみるユリカとジュン

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ジュンさん、鼻血鼻血」
「ユリカ、ヨダレヨダレ」
ルリとラピスがツッこむがそんなこと聞いちゃいない。

ユリカ「ダメダメダメダメ!!!!!!!!!!!
 アキトとアキさんがそんなくんずほぐれつなんて!!!!!!!!」
イネス「あ、あんたはオヤジか?」
ユリカ「そんな、アキさんの胸に顔を埋めるなんて羨ましいことしちゃダメ!!」
ミナト「艦長が止めたいのはアキト君?アキさん?」
ユリカ「生まれたままの姿でアキさんに腕枕されるなんてアキトの浮気者!!!」
リョーコ「普通は逆だろ・・・っつか、あんたは自分がしてもらってまだ足りねぇのか?」

「それでもって二人が夜明けのモーニングコーヒーなんか飲んだりしたら・・・・・」
「アキトさんはそんな浮気者じゃありません!!!!!!!!」

バシュゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!

ユリカの妄想に耐えかねたメグミの右ストレートが炸裂するのであった(笑)



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第8話 ゆるめの「冷たい方程式」<後編>



漂流中のエステバリス・コックピット


まぁ、ユリカの妄想もあながちはずれでもない。
「どうしたの?アキト君」
「いえ、何でもありません(赤)」
真っ赤になって恥ずかしがっているアキトに気づかないアキ。

それもそのはず、現在二人はアキト機のコックピットに仲良く座っていた。
しかもアキトの膝の上にアキがお姫様抱っこされる形で座っているという(爆)
まぁ、純情うぶのアキトからすれば緊張するなと言う方が難しい。

事の始まりは少し時間を遡る。
原因はサリナの持ってきた秘密兵器ことウイングユニットである。
アキセカンドに装着してレールカノンにてアキトを救ったまでは良かった。
しかしアキト救出の直前でユニットの一部でショートが発生、そのおかげで重力波推進装置が暴走、アキセカンドはそのままアキト機を巻き込んでナデシコのエネルギーラインから著しく離脱した。
その後、アキセカンドの内蔵バッテリーが尽きるまで暴走を続け、月の裏側あたりでようやくバッテリーが切れて止まり、あたりを漂流しているのである。

いくらウイングユニットの翼がソーラー発電できるとはいえ、一度バッテリ容量がゼロになったアキセカンドでは生命維持(主に温度調整)もままならないので、比較的バッテリーが残っているアキト機に避難してきたのだ。

ちなみにアキセカンドはサスペンド状態にしてアキト機にワイヤーフィストで結んでいる。

「窮屈にさせてゴメンね。とりあえずサスペンドを抜けるぐらいまで充電出来たらあっちに戻るから」
「いえ、いいんです。元は俺が悪いんッスから・・・・」
場を和まそうと言葉をかけたアキだが、逆にアキトは萎縮した。

さっきの戦闘も震えて動けなかった・・・
そのせいでアキさんまで巻き込んで!
アキトの心の中は自分を責める言葉で一杯だった。

アキトの様子にアキは困り果てる。
彼の気持ちは自分が一番よくわかる。それはかつての自分自身だからだ。
でもそれは越えなければならない壁なのだ。

「ねぇ、アキト君」
「はい?」
「やっぱり怖い?」
「え?」
心の狼狽を見透かされてアキトは口をつぐんでしまった・・・



ナデシコ・ブリッジ


「いやぁ、どうもお騒がせしました〜〜♪」
やっとあっちの世界から戻ってきたユリカはテレながらみんなに謝る。

「それはどうでもいいんですが、早くアキトさん達を助け出す方策を考えないと・・・」
「「「「「う〜〜ん・・・・」」」」」
ルリのツッこみに一同はまた考え込む。
結局八方塞がりな状況は全然変わってないのだ。

「!」
ユリカがなにか閃いたようだ。
「アカツキさん、コスモスにノーマルの戦闘機ってあります?」
「あるけど・・・・まさか!?」
「ええ、迎えに行こうと思います♪」

『だれが?』
みんな異口同音に疑問を持つ。が、次の言葉を待つまでもなくみんな答えを悟った。

ジュン「まさか・・・ユリカが?」
ユリカ「もちろん♪」
アカツキ「艦長・・・・戦闘機の操縦は・・・」
ユリカ「出来ますよ♪士官学校じゃ、学科の一つですし」

アカツキは無言でジュンを見つめる。ジュンは沈痛な面もちでうなずく。

ゴート「艦長が艦を離れて危険地帯に行くなど!!」
ユリカ「でもナデシコは動かないし・・・」
プロス「危険です。リョーコさん達パイロットの方々に行ってもらう方が・・・」
ユリカ「ナデシコが動けない以上、エステバリス隊だけがナデシコ防衛の砦ですし」
ヒカル「リョーコはそれでいいの?」
リョーコ「な、なにがだよ!?」
イズミ「隊長ぅ♪を助けに行かなくて」
リョーコ「!!!!!!!!」
ヒカル「行きたいんでしょ♪」
リョーコ「・・・・・・・隊長に後を頼まれたんだ。ナデシコを守って・・・って」
ヒカル「じゃぁ、アタシが行こうかな♪」
アカツキ「僕も行きたい♪」
リョーコ「だぁぁぁぁぁ!!!てめえらもナデシコに残るんだ!!!」
イズミ「及川光博、実は女色家。ミッチー ズーレー、道連れ・・・ククククク!」
リョーコ「うるせぇ!!!隊長代理命令だ!!!」
ヒカル、イズミ「わかりました、隊長ぅ♪代理!」
リョーコ「てめえら!!!!!!!」

そんなこんなでパイロット達は行かなくなってしまった。
このままではユリカが抜け駆けしてしまう!!
そんな危惧を感じた乙女達が参戦を申し出た(笑)

ルリ「わたし行きます!」
ラピス「アキを助けるのは私!」
ジュン「オペレータが二人も抜けたら、いざというときナデシコが動けないよ」
ラピス「私サブだから私の方が相応しい」
ルリ「何を言うんですか、ラピス。妹は姉の言うことを聞くものです!」
ラピス「イヤ!第一、いつからルリの妹になったの?」
ルリ「そういうこというならアキさんの部屋に付いてる監視カメラのハッキングコードを取り上げますよ?」
ラピス「そんなこというならオモイカネに保存しているアキトの秘蔵写真をデリートしてやる!」

ビビビビビ!!!!!!!

火花散る両者の対決を止めたのは意外にもウリバタケであった。
ウリバタケ「・・・・・・・二人とも身長が足りねぇよ」
ルリ、ラピス「え?」
ウリバタケ「届かねぇだろ?ペダルに足が・・・」
ルリ、ラピス「ガーーーーーーーーン!!!!!!」

☆良い子の為のノーマル戦闘機講座
 ノーマルの戦闘機はレバーとペダルで操縦します。
 従って身長150cm以下の人は乗れません。

「どうせ遊園地のジェットコースターにも乗れませんよぉぉぉぉ!!!」
とか言って走り去る二人であった(笑)

さてさてこの後も何人か立候補したのだが・・・

ホウメイガールズ「私達も行きたいで〜〜す♪」
ホウメイ「晩飯の仕込みがまだだよ!!」
ホウメイガールズ「え〜〜!」
ホウメイ「あの二人の穴を誰が埋めるんだい?もたもたしてるとナデシコのクルーが飢え死にしちまうよ!」
ホウメイガールズ「は〜〜い・・・・・・・」

とか、

ウリバタケ「お、俺が行っちゃおうかな〜♪」
ヒカル「・・・・・・・鼻の下伸びてる」
イズミ「下心見え見え」
イネス「この人に行かせたら絶対アキくんしか助けないと思うわ」
ウリバタケ「『あぁセイヤさん、助けに来てくれたのね♪』『当たり前さ』『かっこいい!』『ダメだよ俺にゃ妻子が・・・』なんちゃってな♪」
リョーコ「天誅!!!!!!!!」
ウリバタケ「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

とか

ミナト「シャトルの免許なら持ってるんだけど、戦闘機か・・・・」
ゴート「ダメだ。操舵士が艦を離れるなんて!俺が行こう」
ミナト「それってヤキモチ?」
ゴート「な、何がだ!?」
イズミ「ひょっとして?」
ヒカル「ひょっとするかも♪」
ゴート「違う!オフィスラブなどとは断じて違う!!」
ミナト「バカ・・・」
とか自らドツボにハマっている人達もいたりする。

んで結局どうなったかというと・・・・



コスモス・カタパルト


「ってことでジュンくん、あとお願い♪」
『わかったよ。友達だからね』
パイロットスーツを着たユリカがナデシコのジュンに留守番をお願いする。
ジュンもやんちゃなユリカに少し困り気味ながらも、そういうユリカに惚れたところもあって艦長代理を引き受けることにした。

『艦長自ら救出に向かうとは意外だよ。君はもっと賢い人かと思っていたけど』
「今時の艦長なものですから♪」
アカツキの言葉をどう捉えたか知らないが、ユリカは単純明快に答えた。案外そういうところがクルーに信頼されている理由なのだが、彼女が人心掌握術として意識的に行っているかどうかは不明である。(「ユリカさんのは天然ですよ」ホシノ・ルリ談)

「それより、メグちゃんは戦闘機操縦できるの?」
ユリカは隣のカタパルトの戦闘機に乗り込んだメグミに声をかける。
「ナデシコに乗る前に訓練所で講習を受けました。
 それに・・・私もアキトさん助けたいし・・・」
「うん、一緒に助けようね♪」
ライバルの反応に少し毒気を抜かれるメグミであった。

ともあれ、無難な(というよりは一周目と同じ)人選に落ち着いて、二人はアキとアキトの救出に戦闘機で出発したのであった。



漂流中のエステバリス・コックピット


「それは・・・・・・・・・」
しばらくの沈黙の後、アキトは怖ず怖ずと答え始めた。

「怖いんです。どうしても火星でのことが頭から離れなくて。
 それで・・・・」
「怖いと思うことは大事な事よ。健全な心の働きだわ。」
「でも、アキさんは・・・・」
「あら、私だって怖いわよ」
「ええ!?」
アキトは彼女の言葉に驚いた。彼女に怖いモノなんて少しもないように思えたからだ。

「私だけじゃない。リョーコちゃんだってヒカルちゃんだって、イズミちゃんだって、アカツキ君だってみんな恐怖を抱えているわ」
「み、みんなが・・・?」
みんなそんなそぶりなんて見せてない。自分よりずっと勇敢に戦っている。

「勇敢だからって恐怖に震えていないって事にはならないわ。
 みんな戦っているの。
 恐怖に。
 ただそれを必死に押さえつけているだけ。
 ひたすら訓練して自分に自信をつけることで克服したり、
 普段はリラックスして心を落ち着けたり、
 別の自分を装って自らの心を偽ったり、
 野望を追い求めるためと自分に言い聞かせたり・・・
 そうやって恐怖と向かい合ったり、誤魔化そうとしてるだけ。」
「・・・・」
「恐怖は誰の心にもあるのよ」
「でも・・・・」
アキの言葉は理屈ではわかる。わかるのだが、心が追いつかないのだ・・・

「出来ればアキト君には恐怖と向かい合って欲しいな。」
「・・・・・アキさんは?」
「え?」
「アキさんはどうだったんです?」
聞いてみたかった。
それが心の傷に触れるとわかっていても。
それでも聞いてみたかった。
そこから勇気がもらえるのではないかと思って・・・

でも・・・
「私は・・・・・逃げ出した口かな?」
アキはちょっぴり寂しげに答えた。

「そ、そんな・・・」
「逃げ出したくって仕方なかった。
 鉄の棺桶に閉じこもって、外から出口を塞いでもらって逃げ場をなくして、そうやって自分を追い込んではじめて戦うことが出来たの」
「・・・・」
「復讐のため、愛する人を助けるため
 そのためには自分らしさを捨てるんだ、
 非情になるんだ、
 そんな言葉で自分をだまして、鉄の棺桶に座る恐怖を誤魔化していった。
 ・・・・・・そんなことしても自分は何一つ変わってないのにね。」
「そ、それは・・・・」
「私だってアキト君と同じ。
 昔の、何も出来なかったあの日を怯えながら戦ってるの。」
「・・・・ごめんなさい」
アキトは安易に人の傷に触れようとした事を悔やんだ。
アキの心の底にある悲しみは今の自分ではとても受け止めきれない。
そんな矮小な自分がたまらなく惨めだった。

でもアキはこう言う。

「アキト君
 勇気は他人からわけ与えてもらうモノじゃない。
 人から励まされたりして糧をもらうことがあっても、それは勇気じゃない。
 自分の能力、他人からの信頼、成し遂げたいモノ、守りたいモノ
 そういった心の糧を元に自分の心の奥から搾り出すモノなの。
 わかった?」
「はい!」

本当にわかったのだろうか?
でもアキの言葉にアキトは頷いた。

自分に自信がないのなら怖くて当たり前じゃないか!
なら、なぜ訓練しないんだ?
バッタなど怖くなくなるまで!
アキさんの強さに少しでも近づくために!
彼女を支えられるだけの力を身につけるために!

そして・・・・・

『きゃぁ!!!!!!!!』
『あっちいって〜〜!!!!!!!』
通信ラインから騒がしい音声が聞こえる。レーダーにも何かと何かが戦っている様子が写っていた。声から察するに・・・

「ば、バカ野郎!ユリカとメグミちゃんがなんでこんなところに!!!!」
アキトは事態に気が付くと自然とエステバリスをそちらの方に向けた。

不思議と震えは止まった。
助けたい
ただそれだけの当たり前の気持ち
そのためだけに搾り出される勇気

それは恐怖をも覆す力を発揮するのだから・・・



しばし後、エステバリスのコックピット


結局助けに来たはずのユリカとメグミの戦闘機は途中バッタ達に襲われて大破した。
幸いその前にアキトのエステが駆けつけたので事なきを得た。
アキトはバッタを見事に倒し、彼女達を無事回収した。
ただ、さすがにアキトのエステに4人の人間が乗り込むのは無理があったので、ある程度充電の終わったアキセカンドとアキト機の二台に分乗しようということになったのだが・・・

「ビクトリーです♪」
「ひーーーん、負けちゃった〜〜」
「ユリカ、お前さっきからパーしか出してないからだよ・・・」
じゃんけんに負けたユリカがアキとアキセカンドへ、メグミがアキト機ということになった。



アキセカンド・コックピット


アキは緊張の最中にいた。
アキセカンドのコックピットの中でユリカと二人沈黙して座っていたりする。
実はアキ自身あまり嬉しくない組み合わせだったりする。

実際、アキ自身は積極的にユリカと接触してこなかった。
まぁ、相手にすると疲れる・・・・ってこともあるのだが、ユリカは妙なところで鋭いのだ。恋愛関係では鈍いくせに、人の心の機敏を察したりするのだけは上手い。
アキも自分の正体を気づかれないか結構冷や汗ものだったりする。

そして今もその状態にあった。

まじまじ・・・・
「な、なに?艦長」
ユリカはやたらアキのことをじろじろ見る。

「いえ、なんでも・・・・」
少し赤くなってユリカはそっぽを向く。そしてしばらくしてまたアキの方を盗み見る。
そんな状況が無言のまましばらく繰り返された。

『な、なに?なんか私おかしい?』
『そりゃ胸はユリカの方が大きいけど・・・腰の辺りは悔しいくらい細いなぁ・・・』
『なによ、全身なめるように見て・・・・』
『身長はアキさんの方が高いから、比べられたら私の方が少し横幅太く見られちゃうのよね・・・』
『こ、言葉遣いは・・・大丈夫女の子ぽいよね?
 お化粧はそれなりに薄くしてるし・・・・
 ひょっとして感づかれた!?』

つんつん

「にぁぁぁぁ!!!!!な、なに!?!!!」
「この胸もハリがあっていいなぁ。メグちゃんなんか私の胸を見て『年とったら絶対垂れますよ?』とか言うんですよ?どう思います?」
「いや・・・・私のはただの鳩胸だから・・・」
「そんなことありませんよ。そりゃ、カップは私の方が大きいけど、腕枕したときの感触は抜群ですし、それに・・・」

ぷにょぷにょ
アキのお腹の辺りを指で突っつくユリカ

「だから触らないで、艦長!!」
「ほら、余計なお肉もないし。私なんて、ほら!」

ぷにょぷにょ
女同士の気安さだからなのか、ユリカはアキの手を持って自分のお腹を触らせる。
「最近アキトとアキさんの料理が美味しくってついつい食べちゃうんですよ・・・
 アキさんはダイエットでもしてるんですか?」
「い、いやぁ〜〜私は別に。よく食べてよく働いてよく訓練してるだけでこれといってなにも・・・」
「いいなぁ・・・私もコックとパイロットやろうかなぁ〜〜」
「お願いだからそれだけはやめて・・・」
クルーにどれだけ被害者が出るかわからないのでアキは必死に止めた。

『でもまぁ、スタイルのことなら安心だわ。ひょっとしてばれたかと・・・』
「どうしたんですか、鼻なんかおさえて?」
「・・・何でもないわよ」
ちょっと鼻の奥が熱くなったアキ。元は男だから(笑)
と、安心したところで・・・・

「ところで話は変わりますけど、私達なんで展望室にいたんですか?」

ドキ!!!!!!!!!!
いきなり話題を変えるユリカ。しかもこの娘はいきなり核心を突くような疑問が湧いてくるのだ!

「さ、さぁ・・・・なんででしょうねぇ?」
「アキさんにもわかりませんか?」
「ええ、残念だけど・・・・」
必死に誤魔化すアキ。
だが、ユリカの思考回路はまさに三段論法。突拍子もない方向に話を続ける。
「アキさんって以前私と出会っていたことってありません?」

ドキ!!!!!!

「で、出会ってないけど・・・・なぜ?」
「私、枕が変わると眠れないんですけど、なぜかアキさんの腕枕で熟睡できたんですよね〜〜何ででしょう?」
「そ、それは昔お父さんとかにされていたからとか・・・・」
「そんなことありません!昔アキトにしてもらった一度っきりです!
 あのときも熟睡できたんですけど・・・・」
アキは心の中で汗をダクダク流しながら言い訳を必死に考えていた。

「そ、そういえば、向こうじゃアキト君とメグミちゃんはなにを話してるんでしょうね?」
「そうだった!アキさん、じゃんけんに勝つ方法を教えて下さい!!
 次こそは絶対に勝たないといけませんから!!」
『ほっ・・・』
なんとか話題逸らしに成功するアキであった。



エステバリスアキト機・コックピット


さて、こちらも結構神妙な面もちで座っているアキトとメグミ。
「アキトさん・・・・」
「なんだい、メグミちゃん?」
「もう、怖いのなくなったんですか?」
「ああ。二人を助けなくちゃって思ったら・・・」

アキトもそれが不思議だった。
あのときも震えていた。
ナデシコに乗る前、エステバリスに初めて乗ってバッタの群に躍り出た時
でも不思議と震えはすぐに止まった。
初めて自分の居場所が出来た。
美味しいといってくれたルリちゃんやメグミちゃん達
自分を信じてくれたユリカ

そして・・・・ただそばで見守ってくれたアキさん

「勇気なんてそんな何気ない事なんだろうね・・・」
アキトは感慨を込めていう。

そんなアキトを見てメグミは少し悔しかった。
「アキトさんは私のこと好きですか?」
「ええ!?」
「私、アキトさんのこと好きです!ウソじゃありません!」
「いや、それは嬉しいけど、なんというか・・・・」
メグミの告白にシドロモドロになるアキト。しかもここは逃げ場のないコックピットの中。
少し顔を突き出されただけで唇同士が触れそうな距離だ。

「でもそのなんというか、こういうことはお互いをよく知ってから、双方合意の上で・・・・」
情けなくも狼狽するアキト。でも少女は次々核心に切り込んでいった。

「それってやっぱり艦長が好きだからですか?」
「な、なに言ってるんだよ!!!ゆ、ユリカがなんで・・・」
「だって展望室に二人でいたじゃないですぁ!」
「いや、あれは他にイネスさんやアキさんもいたし・・・」
「じゃぁ、アキさんですか?」
「にゃ、にゃんですと!?」
「なんか、最近のアキトさんを見てると、アキさんと一緒の時の方が生き生きしてるんですもの・・・」

そういわれると悩む。
自分はアキの事をどう思ってるんだろう?
しばらく考え込んだ後・・・

「尊敬はしている。アキさんみたいに料理もエステも上手くなりたいと思ってる。
 出来ればあの人を支えられるくらい強くなりたいとも思ってる。
 でも・・・・・」
「でも?」
「アキさんの本当の心はとても深くて暗い・・・」
「アキさんが?」
「そうだよ。この前の反乱の時みたいに」
「あ・・・・」
「今の俺じゃとても受け止めきれない。
 だから・・・」
「だから?」
「今は頑張る。いつかアキさんの背負ってるモノの何分の一でもいいから背負えるぐらいに。
 これが好きっていう感情かわからないけど、木星蜥蜴に怯えているだけだった俺に手を差しのべてくれた初めての人だから・・・・」

メグミはアキトのまっすぐな瞳を見つめながら
『悔しいな。でも私もこの人にそんな風に思われる存在になりたい』
と思うようになっていた。



ナデシコ・ブリッジ


さてさて、飛び立った戦闘機2機が消息を絶ったという一報はナデシコにも伝わっていた。
動揺するナデシコクルー達であったが、今ナデシコは修理中で動くに動けない。

そんな中、暗躍する人物がいた。

「リョーコさん、リョーコさん」
「なんだ?ルリ」
「アキさん達どうなったかな〜〜と思いまして」
「なにって・・・漂流してるんじゃ・・・」
「ですよね・・・・・・・・・・艦長達も」
「え?」
「たぶん、アキさん達と合流できたと思うんですけど・・・
 きっとラブラブなんでしょうね・・・
 ユリカさんなんか、展望室の続きをやってそうですよね・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!(怒)」

ルリ、まずはリョーコの着火に成功

「ミナトさん、ミナトさん」
「なに、ルリルリ?」
「アキトさんとアキさん、帰ってくるでしょうか・・・」
「ちゃんと帰ってくるわよ。心配しないで♪」
「そう思うんですけど・・・・なにせユリカさん達が・・・・」
「・・・・・まぁ、あの二人はちょっと不安だけど・・・」
「もしアキさんが戻ってこないとなったら、もうあのご飯は食べられないんでしょうか?」
「え?」
「もう、あのチャーハンセットもプリンアラモードも食べられないかもしれません・・・」
「うそ!?そんなのないよぉ!!アキさんのご飯だけが毎日の楽しみなのに・・・」
「でもナデシコが動けないんじゃ助けられませんよね・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!(怒)」

ルリ、続いてミナトの着火に成功

「ジュンさん、ジュンさん」
「なんだい、ルリちゃん」
「艦長達、大丈夫でしょうか?」
「・・・・・・大丈夫だよ。アキさんもいるし」
「でも、狭いコックピットでふたりっきりなんでしょうね・・・」
「え?」
「アキトさんとふたりっきりの艦長・・・・・ああ、アキさんとふたりっきりかもしれませんね。腕枕なんかされてたりして・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!(怒)」

ルリ、最後にジュンの着火に成功

そしてちょうど運良く・・・・

ラピス「敵襲、バッタたちが近づいている」
プロス「どうしましょう、今修理中で動けませ・・・・」
ミナト「どうせ動けないなら発進した方がマシですよね?」
プロス「え?」
ゴート「いや、そういうわけには・・・・」
リョーコ「うるせえなぁ、結局止まってても動いててもあたい達がエステでバッタを近づけなきゃ、それでいいんだろ?違うか?」
プロス「そ、それはそうなのですが・・・・ジュンさんも何とか言って下さ・・・」
ジュン「出撃します!」
一同「ええぇ!!!」
ジュン「『虎穴に入らずんば虎子を得ず』『前門の虎、後門の狼』『火中の栗を拾う』です!!」

『・・・・最初以外は使い方間違ってるよ・・・』とみんな心の中でツッこんだが、ジュンの迫力に押されて何も言えない。

結局、ジュンやミナト、リョーコらの気迫に押されてナデシコは発進してしまうのであった。ルリがこっそりピースサインを出したのは言うまでもない(笑)



アキセカンド・コックピット


「う〜〜ん」
「どうしたんですか、アキさん?」
計器を見つめていたアキが考え込んだのをユリカが不審がった。

「そろそろギリギリか・・・・・」
「なにがです?」
「ゴメン、艦長。悪いけどアキト君のエステに乗ってくれない?」
「いいですけど・・・なぜですか?」
「みんなが助かる方法を実行するの♪」
「はい?」
はてなマークの浮かぶユリカにアキは笑顔で答えた。



エステバリスアキト機・コックピット


「アキト、会いたかったぁ♪」
「バカ!くっつくな!!
 っと、アキさ〜ん、ユリカを収容しましたけど、なにがどうなってるんです?」
ユリカを収納したアキトは戸惑いながらアキに尋ねる。アキト機は三人乗りになったのだが、これでアキが何をしたいのか全然わからなかった。

『説明は後。次はレールカノンの砲身の先を掴んで。決して離さないでね♪』
アキの説明なしの指示は続く。

ガシ!

「持ちました」
そのアキトの言葉と同時にアキセカンドはレールカノンの基部を持つ。
『んじゃ、私が合図したらスラスターをまっすぐに吹かして』
「え?でもそれじゃバッテリーがあっという間に・・・」
『だからきっかり1分間だけ吹かすの。計算ではそれで十分のはずだから』
「計算ってなんの?」
『やればわかるって♪』
アキの言葉に不思議がりながらも従うアキト。

『じゃぁ、いい?1分だけよ。それ以上でも以下でもダメよ♪』
「わかりました〜」
『じゃぁ、行くよ!!!
 ファイア!!!!!!』

アキのかけ声と同時にスラスターを吹かすアキト機とアキセカンド!
ただ、アキトが想像していたのとは少しだけ違っていたのは・・・

グルグルグル!!!!!!!

「「きゃぁぁぁぁぁ」」
女の子達が悲鳴を上げる。悲鳴を上げるのは当然だ。
アキセカンドはアキト機と全く正反対の方向にスラスターを吹かしたのだ。
その結果どうなるかと言えば二機が掴んでいるレールカノンを中心にスピンし始めたのだ。

目が回りそうな中、アキトは必死にアキに尋ねた。
「あ、アキさん!!!こ、これは!!!」
『手を離しちゃダメよ!あと50秒の辛抱!』
「でも!」
『アキセカンドはスラスターが故障しててまっすぐ飛べないの』
「そ、そんな!」
『アキセカンドの方がウイングユニットの分だけ重量が重い。だから・・・』

物体は安定する為に重心点を中心に回転するようになる。つまり、アキセカンドが中心になってアキト機を振り回している状態に移行しつつある。

「アキさん、一体何をするつもりなんですか・・・まさか!!」
『アキセカンドはまっすぐ飛べないけど、せっかく充電できたバッテリとアキセカンドの推進力を利用しなきゃもったいないじゃない。』
「ダメです!アキさんだけが残るなんて!」
『文句言わない!ほらカウントダウンするわよ!
 10、9・・・』

アキトが何か言おうにもどんどん時間はなくなり、そして・・・

『ゼロ!!!!』
アキセカンドはレールカノンを放す!
当然、振り回されたアキト機は勢いよく飛び出した。ナデシコがいるはずの方角へ。
遠心力で加速も十分、狙いも方角ドンピシャである。



エステバリスアキト機・コックピット


「アキさん!!!」
『んじゃ、ちゃんと救援呼んできてね〜〜♪』
手を振るアキセカンドだが、その姿は急速に小さくなっていく。作用と反作用の法則でアキト機と同じスピードでアキセカンドは正反対の方向に飛ばされたのだ。

「引き返す!!」
「ダメ!」
思わず引き返そうとしたアキトを止めたのはユリカであった。
「何するんだ、ユリカ!」
「今引き返したら本当に誰も助からなくなるよ!」
「なんで!アキさんを見捨てるのか!!」
「違うよ。でも私も考えたけど、これがギリギリみんなが助かる方法だって・・・」
「どこが!」

アキトを少し落ち着けるようにユリカは間を置いて説明する。

「残りの酸素とバッテリを考えると2台のエステでナデシコに戻るのは不可能だわ。アキセカンドは壊れてるから。
 でもこの射出スピードでナデシコに向かえば20分で到達出来るわ。ぎりぎりエステ1台でも3人は帰れるの。」
「それじゃ、アキさんは自分が犠牲になったっていうのか!?」
「違うの!アキセカンドに残っている酸素ならアキさん一人が残ったとしても1時間は保つわ。なら私達が20分でナデシコに帰って、取って返して40分・・・
 何とかアキさんを助けるだけの時間が残っているのよ」
「だけど・・・」
「1台に4人が乗ったら10分しか保たない。これが一番ベストの方法なの。」
「クソ!!!!!」

アキトは自分の膝を叩きつける。でも・・・

「・・・・まだあきらめちゃダメだ!」
アキトは決意をする。

まだアキさんを失うと決まったわけじゃない。あと一時間、できる限りのことをする!
「ユリカ、メグミちゃん」
「「なに?」」
「少しでもナデシコに近づく為にギリギリまでスラスターを吹かそうと思ってる。いらないパーツも捨てる!」
「え?」
「そうすると先に生命維持が切れちゃうと思うんだ。でもそれであと5分は縮まると思う。
 わがまま言ってすまないんだけど少しでも早く引き返したいんだ。
 ひょっとしたら自滅しちゃうかもしれないけど・・・」
「大丈夫、私はアキトを信じてるよ♪」
「私だって大丈夫ですよ!もし生命維持が切れてもみんなで温め合えば寒くないですし♪」
「いや、それは・・・・(赤)」
「それに・・・」
メグミのセリフに恥ずかしがるアキトにユリカは自信に満ちた声でこう言う。
「それにナデシコだってきっと今ごろ私達を救出に動いてると思うわ。
 大丈夫、何とかなるよ♪」
「・・・・そうだな。じゃ、行くよ!!」

二人に勇気づけられたアキトは残っているバッテリのいくらかを使ってスラスターを噴射した。
少しでも早くアキを助けに戻ってこれるように・・・。



アキセカンド・コックピット


一方、三人を送り出したアキはぼーっとして宇宙を眺めていた。
「ちょっとカッコつけすぎたかな?」
さっきの噴射でせっかく充電したバッテリは再び底をついた。
まぁウイングのソーラーパネルで幾分充電は出来ているが、室温をあげるほどではない。かなり寒かったりする。
「酸素は保って一時間か・・・・
 まぁいざとなればCCでナデシコに跳んじゃえばいいんだけど・・・さすがに今の時点でボソンジャンプの存在を教えるのはまずいよねぇ〜〜」
とか思いながら身を震わせていた。

アキトたちは間に合うだろうか?
ナデシコがこちらに向かっていなければ凍死確実である。

そんなことぼやっと考えているとレーダーに変な機影が写った。
「て、敵!?」
やばい、やばすぎる!
今は手も足も出ない!
こうなったらCCを使うか?

そんな焦りを感じていたアキだが、その機体が近づいてくるにつれ、アキの目が点になった。
そう、その機体があまりにも非現実的なモノだったからだ。

『よう!アマガワ、久しぶりだなぁ!!』
確かに聞き覚えのある声でその機体は通信をかけてきた。



エステバリスアキト機・コックピット


『残念♪バッテリが切れました』
「ごめん!!」
ナデシコに辿り着く前に無情なバッテリー切れの警告表示。
アキトは謝るが・・・

「そんなことないわよ、ほら♪」
『アキトさん、大丈夫ですか!!!』
ルリのコミュニケが開いた。
コミュニケが届くということは・・・・

「ナデシコ!!!」
アキト機の電源が復活した。
そう、ナデシコが駆けつけてくれたのだ。まだ修理途中だというのに。

『皆さん、無事ですか?』
「まだアキさんが漂流してるんだ!早く救出隊を!!!」
だが安心はしていられない。アキトは焦りながらも状況を伝えた・・・。



漂流現場


その後、ナデシコは最大戦速で現場に向かった。
1時間かけてアキが漂流していそうな地点まで向かったのだが・・・

「アキセカンドの機影ありません・・・・」
「そんな・・・」
メグミの言葉にうなだれるアキト。

意外にも加速がついていたのか、レーダーにはどんな機影も見つからなかった。
もうそろそろアキセカンドの酸素は切れる頃だ。

「アキ・・・」
「ラピラピ、泣かないの・・・」
ラピスが泣くのをミナトが慰める。それにつられて、他の者もすすり泣いた。

「冷たい方程式はやっぱり冷たいままだったね・・・」
「アカツキ、てめぇ!!」
アキトはアカツキに掴み掛かる。
「おや?自分のせいで彼女を失ったのに八つ当たりかい?」
「何だと!!」
「喧嘩はやめてください!」
一触即発の二人にユリカが間に入ろうとした、その時!

「機影確認!」
「え?」

ルリの声にみんな顔色が変わる!
レーダーには何者かがナデシコに近づいてくるのが写った。
誰もがある希望を持った。説明する必要もないだろう。

だが、それは・・・希望を裏切ることはなかったが、みんなの予想とはいささか異なっていた。

「・・・・げ、ゲキガンガー?」
誰かがそう言う。
そう、あのテレビアニメからそのまま抜けだしてきたようなロボットがアキセカンドを掴んでやってきたのだ。
未来を知っていたら木連のダイマジンの方がまだかっこよく見えるぐらい、このゲキガンガーはアニメを忠実に再現していた(笑)

そして、ゲキガンガーはアキセカンドをナデシコの重力波ビーム圏内まで連れてくると、スチャ!!と敬礼した後、そのまま引き返していった。

みんな、あまりのことに凍りついたままだ。
しばしの沈黙の後、アキが話しづらそうに通信を入れてきた。

アキ『た、ただいま・・・』
アキト「アキさん、今のは・・・」
アキ『なんだかわからないけど・・・・助けてもらっちゃった。てへ♪』

だがそんなアキのお茶を濁すような照れ笑いをみんなは無視して・・・

ユリカ「アキセカンドに重力波ビームコンタクト」
ルリ「了解」
ミナト「アキセカンド、収容準備お願いしま〜す」
メグミ「アキさん、よく自力で帰って来れましたね♪」
アキ『い、いや・・・あの・・・』
アキト「そうですよ、やっぱりアキさんはすごいや!」
ラピス「今の映像どうする?」
ルリ「抹消してください!!!」
みんな、あの非現実的な機体の存在は無視するつもりのようだ(笑)

ともあれ、アキは無事ナデシコに生還することができた。



おまけ


「なぁんて終わってもらっちゃ困るのよね♪」
「あ、キノコ」
「キノコじゃないわよ!!!」
ラピスのツッこみに激怒するムネタケ。

そんなムネタケを無視して隣の女性は自己紹介を始めた。
「今度副操舵士に配属されました・・・」
「あ、サリナさんだ!」
「誰がサリナよ!!!私はエリナ・キンジョウ・ウォンよ!!!」
アキのボケに思わず怒ってツッこむエリナ。
「何しに来たんですか?」
「な・に・し・に・ですって!?覚えておきなさいっていったでしょうが!!」
「あはは・・・・」
アキに詰め寄るエリナ

「これ以上暑苦しいメンバー増やしてどうするの?」
ルリが密かな呟きに一同は頷いたのである(笑)



ポストスプリクト


ということで黒プリ8話をお届けしました。

当社比150%でお送りしました・・・って増えとるやん!!
お話が膨らみすぎたので泣く泣く中編にわけ、おかげで『後編は300行ぐらいで終わるんじゃないかな?』とか思ってましたが・・・全然終わんねぇでやんの(苦笑)

本来ネタなしで書き始めた8話ですが、気が付いたら悪のりして、いつの間にかこのサイズ・・・次は絶対前後編だけで終わらせます!<って今から誓うなよ

最後にクイズです。最後に出てきたゲキガンガーのパイロットは誰でしょう?(笑)

ということでもしもおもしろかったなら感想をお願いします。
次回は12万ヒットぐらいでお会いしましょう<既に弱気な奴

では!

Special Thanks!
・闇影 様
・士心 様
・導 様
・北の国から 様
・TARO 様
・O2 様
・9R 様
・英 貴也 様