アバン


ただいま帰りました、地球さんの皆さん。一日で帰ってきたのも凄いのですが、なんと地球時間で8ヶ月経過。年齢を気にする乙女達は置いとくとして、お給料の計算ってどうなるんでしょうね?

それはともかく、アキさんとユリカさんの怪しい関係とか、キザ男とメカフェチ女と新しいエステとかいろいろ慌ただしいんですが、そんな中でアキトさんがちょっぴりスランプ状態。

どうなることやら・・・

ああ、これってSecond Revengeのラストとは何の関係もありませんのでそのつもりで。



テンカワ・アキトの自室


夢が明日を呼んでる♪

テレビから流れるオープニングテーマを聞きながら、アキトはぼーっとテレビを見る。
かかってるのはオープニングの通り、ゲキガンガー3

ただ繰り返し繰り返し同じシーンを見ていた。
『ゴメン、ナナコさん・・・・海には行けそうに・・・』
『ジョー!!!!!!!!!』

海燕ジョーが死ぬシーン
仲間を助けて自分は犠牲になる
アキトの目に焼き付くそのシーン

火星での出来事
自分たちを助けるためにクロッカスで盾になったフクベ提督
それと同調するかのようにクロッカスと運命を共にしたガイ
彼らの犠牲の元に今の自分たちはいる。

でも・・・

『ゴメン、ナナコさん・・・・海には行けそうに・・・』
『ジョー!!!!!!!!!』
こんなアニメを何度見たって死にたがる者たちの気持ちなんてわかるはずがない。
死はもっと怖いものだ。
勇気を出して他人のために戦おうとしたって、本当にあの死の恐怖を味わったらそんなこと出来やしない。
もし自己犠牲のために簡単に命を投げ出せるとしたら、それは死を知らない愚か者だ!

アキトはそう思い込もうとした。
だが、それはただ怖くて身を竦ませることしか出来なかった自分を誤魔化すための虚勢でしかなかった。

「クスクス」
そんなアキトを心情を笑うかのような声が部屋の外から聞こえる。
「だ、誰だ!!」
「失敬、失敬。」
シュタ!と手を挙げて部屋に入ってきたのはアカツキ・ナガレであった。

「君、そういう趣味があったんだ。クスクス」
「なんだよ!笑うぐらいなら見るなよ!」
小馬鹿にされたような気がして怒るアキト。

「いや、そういうつもりじゃないんだ。」
「じゃ、どういうつもりなんだよ。」
「君、あのアマガワ・アキさんに目をかけられてるんだって?」
「な!?」
アカツキの質問にドキッとするアキト。
まぁ、端から見ればそう見えるのかもしれない。

「地球じゃ既にアキさんの武勇伝は有名だからさぁ、そのアキさんが目をかけているテンカワ君ってどんな奴だろうと期待してきたんだけど・・・・どうも想像と違ってるみたいなんで。」
「想像ってなんだよ?」
「なにって、戦闘好きなのかと思えば、アニメ好きで・・・・ねぇ?」
アカツキは言葉の続きをあえて言わなかった。それがアキトにはさっきの戦闘を指しているのだとすぐにわかった。

臆病者でアニメオタク
そいつがなんで『漆黒の戦乙女』とまで呼ばれてる女性にひいきにされているのか?
そういう好奇心ありありの目で眺められているのだ。
さすがにアキトもカチンときた。

「それ、ケンカ売ってるんっスか?」
「そうじゃないさ。
 ただ、艦長や他の女の子からも好かれてるみたいだし、やっかみだよ。
 ただ君が買ってくれると言うならいくらでも売るよ♪
 僕だって彼女とはお近づきになりたいし。」
「・・・・いいっスよ。買います!」

バチバチ火花が散る。
男と男の意地がぶつかり合った。



テンカワ・アキトの自室前


「これってつまり・・・二人が私をめぐって争ってるんですか?」
「め、メグミちゃん、それは私でしょ?」
入りそびれたユリカとメグミは二人のやりとりを見ていらん妄想を繰り広げていた。



ナデシコ・食堂


そんなことになってるとは知らないアキはただひたすらスープをかき混ぜていた。

ことこと
くるくる
まぜまぜ
ひたすらかき混ぜる・・・

「アキさん、お鍋のスープをただかき混ぜてて楽しいですか?」
「楽しいよ♪」
サユリの質問にアキは即答する。ホワワンな顔でスープを混ぜる事に喜びを感じてそうなアキ。

「私なんて10分で飽きちゃいそう」
サユリは『何がそんなに楽しいんだろう?』とため息をつく。
自分だけじゃない。この前ユリカやルリやラピスやリョーコらが手伝おうとしたがあまりの退屈さと地道な作業にモノの5分で逃げ出してしまった。

「火加減を見ながらスープが出来上がっていく過程を眺めるのが至福の時間なのよねぇ〜〜」
本当に幸せそうに言うアキ
「そんなもんですかねぇ・・・」
「そうなのよ〜〜」
あの普段は凛々しいアキがこのときばかりは緩みきった顔でスープを混ぜている。
サユリはそんなアキを見ていて、ふと感じたことを口にしてみた。

「ひょっとして、艦長達から解放されるから?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 そ、そんなことないザマスわよ、オホホホホ♪(汗)」
『本当に?』と心の中でツッこむサユリ。
最近弄ばれ気味のアキにはスープをかき混ぜる時の静寂さえもがかけがえのない安息の時間なのかも・・・と同情するサユリであった。

それも刹那・・・・

「「アキさん!!!!!!!!!!!」」
騒がしい二人が入ってきたのを見て、アキの幸せそうな笑顔が一瞬で吹き飛ぶのであった。



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第8話 ゆるめの「冷たい方程式」<中編>



ナデシコ・レクリエーションルーム


「まぁ、ケンカなんて野蛮なことはしないよ。
 お互いスポーツで正々堂々って事で」
「ああ、いいとも!!!」
アカツキはアキトをバスケットに誘った。

しかし・・・・・・・・

「って、勝負始めたいんだけど、練習終わったかな?」
「うるせえ!!少し待ってろ!!!」
アカツキは呆れたように言うがアキトはそれどころではなかった。

ビューーーーーン(→→→→→→→)

ビューーーーーン(←←←←←←←)

そう、ここは無重力。
レクリエーションはパイロットの身体訓練施設も兼ねているので重力の発生を調整出来たりする。特に無重力での球技は宇宙空間での実戦感覚を掴むのに有効である。
だが・・・・アキトは無重力空間での動きをマスターできずに右往左往していた。

「やれやれ、こりゃ不戦勝かな?」
「うるせい!!!」
呆れるアカツキ。
そんな彼の態度にますます怒りで冷静さをなくすアキト。
結果、慣れるモノも慣れなくなる。

と、そこに・・・・・

「とにかく大変なんですよ!」
「そうなんです、アキさん早く来て下さい!!」
「だから、なんなのよ〜〜」
「アキトとアカツキさんが私を争ってケンカを・・・」
「違います!艦長とじゃなくってアタシを争って・・・」
「艦長にメグミちゃん、落ち着いて(汗)」
「だから二人がケンカを・・・・」
「どこで?」
「え?」
ユリカとメグミにぴっぱられて入ってきたアキ。
しかし彼女達が見たものは、ご覧の通り、無重力下でジタバタするアキトとそれを呆れて眺めるアカツキの姿だけであった。
ケンカ以前の話である。

「「私を争ってたんじゃ?」」

そんなわけありません。

「へぇ、バスケやってるの?
 私も入れて♪入れて♪」
アキトとアカツキの思惑を無視してアキは純粋に目の前のスポーツに飛びついた。
体を動かしたくて仕方なかったみたいだ。

「ほら、いくよ♪」
アキはボールを掴むと無重力の中へ軽やかに飛び出した。

妖精の舞・・・・そんな言葉が彼女には相応しかった。
まるで踊るようにバスケのコート内を軽やかに移動するアキ。
それはアキトやアカツキだけではなく、同性のユリカ達ですら魅了した。

「どうしたの、アキト君。バスケやるんでしょ?」
「え?・・・ああ、はい!!」
アキトはアキの言葉に釣られて無重力のコートに飛び出した。

ただ、アキの後を付いていくだけしか出来なかった。
でも、最初は全然近づくことも出来なかったアキトだが、時間が経つにしたがってアキに追いつくようになっていた。

当然だ。
アキの動きから目を離せない。
アキの姿を全霊をもって追いかける。
自分もああやって軽やかに動きたい。
そうやって知らず知らずの内にアキの動きを真似ようとしていたのだから。

「だが、まだ甘いよ。テンカワ君!」
アカツキが乱入してアキトの進路を遮り、アキとツーショットになろうとして押しのけた。
「ワンオンワン、受けてもらいますよ!」
「10年早いね♪」
アキは両手を広げてボールを取りに来ようとしたアカツキをあっさりかわした。
「くそ、まだまだ!」
「はいはい、いくらでもかかっておいで♪」
アキトとアカツキは無謀にもアキのボールを奪いに行こうとするが、アキはじゃれる子犬をあしらうがごとくかわしていった。

そんな光景を見ていた乙女達二人は・・・
「なんか・・・・青春ドラマに出てくる麗しき男達の友情ってな感じだよね・・・」
「っていうか、私達アウトオブ眼中?」
微笑ましい光景を少し寂しい気分で見つめる二人であった。

しかし、楽しい時間は続かない。

ビーーーーーーーー

警報が鳴る。
『敵襲です』
ルリの声がレクリエーションルームに響いた。



戦闘宙域


敵のバッタの集団がコスモスとそこに係留中のナデシコ目掛けて襲いかかってきた。
修理中のナデシコはもちろんだが、ナデシコを修理中のコスモス自身も戦闘は出来ない。
バッタたちを近づけないために、さっそくナデシコからエステバリス隊が発進した。

「各自散開!
 各個に敵を迎撃する!」
「「「「「了解!」」」」」
アキの号令以下、アキト、リョーコ、ヒカル、イズミそれにアカツキが返事した。
『うう〜〜隊長の威厳復活〜〜♪』
アキがその揃った返事に心の中で喜びの涙を流すが、それはここだけの話。

ピッカピカの新品、アキセカンドをアキは軽く操ってみる。
操縦感覚は悪くない。
先代のアキスペシャルを全体的に2割り増しにしたみたいな感じだった。
それどころか、アキスペシャルみたいな不安定さがないのが嬉しい。
しかし、それだけではただアカツキ専用機よりちょっと性能がいいだけの機体に他ならない。
そんな機体をわざわざあのメカフェチ サリナ嬢が直々にナデシコに運んでくるはずがない。

「・・・・・やっぱりあのコンテナ?」
アキは同時に運び込まれた『秘密兵器』とかかれたコンテナが気になって仕方なかった。



ナデシコ・格納庫


同じ頃、とうのサリナ・キンジョウ・ウォンは『秘密兵器』とかかれたコンテナを撫でながら不敵に笑っていた。

「アマガワ・アキ。
 私のエステちゃんを軽々と乗りこなした・・・って話だけど、あんな残業の片手間に姉さんに頼み込まれて作ったようなエステを使いこなしたからって、いい気にならないでよね♪」

サリナは天才だった。それを示すこんな逸話がある。

エステバリスの開発当初は難航を極めた。スキャパレリプロジェクトから要求された機動兵器のスペックは当時としては困難を極める内容だったからである。
「無人兵器と戦うなら少なくとも全高6mに納めなければあの動きには付いていけない!」
「無茶を言うな!そんな機体に積めるエンジンなど大した出力もでないぞ!」
「だが、それ以上大きくなれば重量が増え、途端にアクチュエータの負担が増える。モータは自重にトルクを食われて瞬発力が出せなくなる!」
「無茶を言うな!他にどれだけのエネルギーを食うと思ってる!
 無重力下では重力推進を使うんだぞ?そんな大きさじゃ既存のエンジンをどれだけコンパクトにしてもそんな消費電力はまかないきれん!!」
設計者達が喧喧諤諤と議論を重ねていたが一向に埒があかなかった。

そんな時、末席に座っていた新入りの設計者が一言こう言った。
「エンジンが邪魔ならはずせばいいじゃないですか」
サリナ・キンジョウ・ウォンの台詞である。

みんな、最初はバカにした。
荒唐無稽な提案だし、なにより会長秘書の妹というコネだけでこの高邁な設計チームに潜り込んだ新入社員という認識しかなかった。

しかし、その後の彼女のプレゼンテーションを聞いて、全員閉口したという。

重力波によるエネルギー供給
これならアンテナと若干のジェネレータがあれば6mの機動兵器にも搭載できる。
エネルギーは母艦から供給されるので作戦時間は無限に近い。
取り出せるエネルギーはほぼ無制限だ。重力波推進やディストーションフィールドを使ってもまだお釣りが来る。
サリナはそれらが現在の技術ですぐに実現できること、それらの具体的な試算をプレゼンしてみせた。

当然その斬新なアイデアにすぐ全員が反発したが、それはことごとく論破された。
「重力波照射などという高エネルギー出力を持つ母艦など現存しない!」
「あら、スキャパレリ用に建造している戦艦は相転移エンジンを搭載するんでしょ?」
「母艦との間に遮蔽物が入ったらどうするつもりだ!」
「バッテリーを積めば5分ぐらいは戦闘できます。それで十分では?」
「作戦範囲が母艦周辺に限られる!」
「元々スキャパレリ用の機体でしょ?なら母艦と共に行動するんですからなにか支障がありますか?」
「・・・・・・・・」

そんなわけで設計されたのがエステバリスである。
彼女にとってエステバリスは絶対の自信作なのだ。
その自信作のゼロG戦フレームを「能力が足りないからカスタマイズして♪」と姉を通じて要求してきたのである。
たかが一兵卒が!
怒ったサリナは作りかけのアカツキ専用機を無茶なチューニングにして引き渡した。
使えるモノなら使ってみろ!と。
だが、後の報告で相手はそれを難なく使いこなしたらしい。

ナデシコはその後火星で消息を絶ったが、その前に送られてきた戦闘データを見る限り、機体がパイロットに追いついていない。
私がカスタムに調整した機体を!?
それは技術者としてのプライドを傷つけたのと同時にワクワクもした。
このパイロットなら人間側が追いつけないだろうから諦めた技術をいくらでも試すことが出来るのではないか?

「ま、アキセカンドぐらいは操れるでしょうけど・・・・『秘密兵器』はそうはいかないわよ♪」
サリナはアキをとことんモルモットにするつもりだった。



戦闘宙域


戦場ではあっという間にナデシコ側の優勢になっていた。

アキは今までのうっぷんを晴らすかのように獅子奮迅の活躍をみせた。
アキセカンドもすぐに使いこなしたようだ。

それと、アカツキ・ナガレもなかなかの腕だ。
うぬぼれるだけの事はある。
冷静であり、視野も広い。特に不得手もなく、遠近両方で活躍するオールラウンドプレイヤーだろう。

とはいえ、強さでいえばリョーコのちょっと上か?
しかしそれはリョーコが先の先をとって相手の攻撃力を奪うことにより全体の被害を減らすことを重視するのに対し、アカツキは後の先をとって相手の行動を見極めてから効果的な対処法を選ぼうとする傾向があるぐらいの違いしかない。

アキはどちらかといえば先の先が好みだ。
相手が攻撃を開始するその瞬間を押さえ込む。相手が本当の実力を出す前に倒すのが一番被害が少ないからだ。
しかし一度自分の先手の攻撃を受けきられてしまえば、後の先の方が優位になる。逆に被害が大きくなる可能性がある。

『やっぱりアカツキはMFあたりに据えて置いた方がいいかもしれない。
 んじゃアキト君はリョーコちゃんとツートップかな・・・・』
そんなことを考えながら戦闘しているアキであったが、そのアキトの方に注意を向けると戦況が困ったことになっていた。

「くそ!くそ!!」
アキトが防戦一方に陥っていた。
「なんで震えるんだよ!止まれよ、この!!」
恐怖に震える体を必死に押さえ込みながらアキトは必死にエステを操っていた。
先ほどの無重力バスケのおかげで動きのぎこちなさはなくなっている。
だが、それに心が追いついていっていない。
敵が攻撃を仕掛けようとすると一瞬身が引いてしまう。そこを敵につけ込まれる。
気が付くと防戦一方になっているのだ。

「どうしたの?訓練だけじゃなく、実戦でもだめなのかな?」
「うるせぇぇぇぇ!!」
アカツキの嘲笑に怒鳴るアキトだが、体が上手く動かないのだ。

どうしてもちらつくあの惨劇のシーン
フクベが、ガイが、そしてアイちゃんが戦火に飲み込まれるシーンが頭から離れなかった。
体の震えが止まらないのだ!

「アキト君!しっかりしなさい!!」
アキが呼びかけるが、アキトは答える余裕がなかった。
「リョーコちゃん、ここはお願い!
 私はアキト君のフォローにまわるわ」
「わかった!!」
リョーコに現場を任せてアキセカンドをアキトの方に向けるアキであった。



ナデシコ・ブリッジ


「アキト!」
ユリカが状況を見て悲鳴を上げる。メグミやルリも気が気でなかった。
孤立し、徐々に敵に囲まれつつあるアキト機

そんな状況を見透かしてか、ある人物がウインドウ通信を開いてきた。
『どうやらピンチのようね?』
「あ、エリナさん」
『それは姉さんじゃぁぁぁ!!!』
ユリカのツッコミに怒鳴る少女・・・そう、天才美少女アーキテクト(自称)サリナ・キンジョウ・ウォンである。

『ピンチよね?』
「ええ・・・・まぁ・・」
『こういうときには秘密兵器が必要よね?』
「いや、それは・・・・・・・」
『必要よね!!!!!!!』
「はい!!!」
サリナの勢いに気圧されるユリカ。
ユリカが納得したと勝手に判断すると別のウインドウを開いて見せた。
『んじゃ、これを読んで秘密兵器の発進許可を』
「げ!・・・・これはちょっとまずいんじゃないでしょうか!?」
『なにをいうの!由緒正しき秘密兵器とは指揮官の号令で発進するものよ!』
「でも・・・・この台詞はさすがにまずいのでは・・・」
『ぐだぐだ言わない!!テンカワ君を助けたくないの!?』
「・・・・・・はい、わかりました(泣)」
ユリカはサリナに押し切られて泣く泣くその台詞を言うことになった。

その台詞とは・・・・

サリナ『ファイナルフ○ージョン要請!!!!!!』
ユリカ「ファイナルフ○ージョン承認〜〜〜」
サリナはどこからともなく取り出したマスターキーを秘密兵器のコンテナに差し込み、
ユリカはなぜかいつの間にか出来たカバー付きの承認ボタンをカバーを叩き割りながら押した。

コンテナは重力カタパルトをものすごい勢いで飛び出していった。

ルリ「ロボットアニメオタク?」
ラピス「ヤマダみたい・・・」
君たちの感想はたぶん正しい(笑)

まぁガイがその場にいれば
『俺のはマニアっていうんだぁぁぁぁ!!!』
とか怒鳴って80年代と90年代のロボットアニメの特色とその違いをマニアとオタクという文化論を交えながら懇切丁寧に説明し出すだろうが(苦笑)



戦闘宙域


そんなことが行われていることとは露知らず、アキはアキトの元に向かっていた。
しかし、またしてもルリにオタク呼ばわりされたあの少女が通信を送ってきた。

『アマガワ・アキ!』
「にょわぁぁぁぁぁ!!!
 なんですか!エリナさん、いきなり!」
『サリナよ!!!
 それはいいから、すぐ右下のダブルゼットボタンを押しなさい』
「はい?」
『だから右下』
アキはサリナに言われて右下に視線を移す。

「ZZ」とかかれたボタン・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・・・押すんですか?」
『押すの!』
気圧されるアキは恐る恐るボタンを押す。

ポチ!

すると射出されたコンテナが展開し、中の秘密兵器が露になった。

うぉぉぉぉぉぉぉんんんんんんんんんん!!!!!

そんなSEがどこかで聞こえたのはアキだけではないだろう。
そしてなにやら勇ましいテーマ曲が流れながらコンテナから現れたものは・・・

リョーコ「なんだ、ありゃ?」
メグミ『・・・・・鳥?』
ミナト『羽生えてるしねぇ』
ルリ『頭も付いてますよ』
ラピス『足もある』
ヒカル「鳳○丸だ♪」
イズミ「鳳凰みたいだってねぇ、ほぅおぅ」
誰もが口々にするその形・・・・

つまり、翼の生えた鳥型兵器、その実体は・・・・・・・・

『これがアキセカンドの追加オプション装備
 ゴッドフェニックスよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!』
「やっぱりぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」
サリナが高らかに行う宣言に頭を抱えるアキ。

『すごいですサリナさん!!
 ということは科学忍法火○鳥も出来るんですね♪』
歓喜に満ちあふれた声でユリカは尋ねるのだが・・・

サリナ『・・・・・・・・・・出来ないわよ』
ユリカ『ええ〜〜、出来ないんですか?』
サリナ『出来ないわよ。っていうか、知らないわよ、そんなアニメ・・・・』
ユリカ『ガーン!!!!!!!!!』
ルリ『・・・・・・ユリカさん、本当は何歳なんですか?』
ユリカ『・・・・・・・・再放送で見ただけだもん!』
イネス『私の記憶が確かなら、私の年齢でも再放送を見れたかどうか・・・』
ラピス『・・・・・経歴詐称?』
ユリカ『わたし、ピチピチの二十歳だもん!!!!』

「どうでもいいけど、この近づいてくる奴をどうすればいいのよ!!!!!」
アキは思わず叫ぶ。「ゴッドフェニックス」はアキセカンドのすぐ後ろまで追いついていた。

サリナ『「鳳凰の翼よ!我に破壊のいかずちを与えよ!!
 天使よ今こそ光臨せん!ドッキングセンサーON!!!」って叫ぶのよ』
アキ「・・・・・・・・・叫ぶんですか?」
サリナ『叫ぶの』
アキ「マジ?」
サリナ『マジ!』
アキ「っていうか、このZZボタンが付いているレバーを引くんじゃ・・・」
サリナ『いいえ、ドッキングは由緒正しき音声認識方式よ。レバーは分離用』
アキ「叫ばなかったら?」
サリナ『合体しそこねて激突&自爆』
アキ「・・・最後の「ドッキングセンサーON」のところだけじゃダメですか?」
サリナ『ダメ!全部必要なの!!!』

ルリ『語呂悪すぎよね』
ラピス『私なら言わない』
アキ「・・・・・率直なご意見ありがとう(涙)」
アキはるるると泣きながらルリ達のツッコミを拝聴していた。

ゴッドフェニックスがもう間近まで迫ってきたので、アキは仕方なく例の台詞をイヤイヤ叫んだ。
「鳳凰の翼よ!我に破壊のいかずちを与えよ!!
 天使よ今こそ光臨せん!ドッキングセンサーON〜〜〜(泣)」

うぉぉぉぉぉぉぉんんんんんんんんんん!!!!!

アキのかけ声に「ゴッドフェニックス」は雄叫びをもって反応した。

ガシャン!ガシャン!

足はなにやら二本の物干し竿みたいなものをどこからか取り出して合体させた!

ガッコン!!

それは一瞬で長大なレールキャノンに組み上がった!!

シャキーーーン!!!

そのレールカノンはそのまま右足がホールドして振りかぶった。

グイィィィィン!!!!!

頭は変形してスコープになる。

ガシ!!!!!!

最後に鳥だった機体はそのままアキセカンドの背中に取り付いた。

キラーーーン!!!!!!!!

そしてアキセカンドと合体を終わると閃光を放った。
レールカノンを斜に構えポーズを決めるアキセカンド。

『絶!対!無!敵!
 天・使・光・臨!!!!(題字 サリナ・キンジョウ・ウォン)』
その背景にはご丁寧にもテロップまで挿入されたりする

「誰もポーズなんてとってないのにぃ〜〜(泣)」
アキの情けない叫び声がこだまするのであった。



ナデシコ・ブリッジ


一同はその一連の動作をただただ呆れて見ているしかなかった。
メグミ「なんかガン○ムXみたいですね・・・・」
サリナ『何を言うのよ!どう見たってガン○ムWじゃない!!』
ヒカル『私的にはゴッド○イジンオーかな?』
ルリ「○武F2みたい・・・」
リョーコ『てめえら、オタってんじゃねぇ!!!!!』
そんな下世話な感想で盛り上がっている人達もいれば・・・

ラピス「アキ、かっこいい♪」
ミカコ「やっぱりお姉さまには天使の翼よね!」
ホウメイガールズ「ええ♪」
と、萌えに走っている乙女達もいたりするが・・・

メグミ「そんなことよりアキトさんの事はどうするんですか!!」
ユリカ「そうですよ!!!」
一同「あ!」

すっかり本題を忘れている一同であった。



ナデシコ・格納庫


「ふふふふふ!
 さぁ、アマガワ・アキ!
 私のアキセカンド=バスタードモードを使いこなせるかしら?」
「っていうか、最初から使いこなせるものを持って来いよ・・・」
悦に浸って笑うサリナにウリバタケは本末転倒であることをツッこむが本人はそんなこと聞いちゃいない。

「大体、何よ月面フレームの奴ら!
 何が相転移エンジンですって?
 レールカノンは相転移エンジン並の出力がないと使えないから、重力波アンテナのエステには使えないだろうですって?
 そのくせ名前だけはエステバリスのブランド名で売り込もうなんて姑息な!
 動きにくくなってバッタにすらやられそうな機体を作っておいて片腹痛いっていうのよ!!!
 エネルギー不足ぐらい重力波アンテナを大きくすれば解決できるわよ。
 それをアキセカンドで証明してみせるから!!!」
「・・・・あんた、アキセカンドを使いこなしてほしいのかほしくないのかどっちなんだよ・・・」
思わず研究所でのうっぷんを吐露するサリナに呆れるウリバタケであった。



戦闘宙域


ともあれ、「秘密兵器」を押しつけられたアキはアキトを救うために早速このレールカノンを使うことにした。
「しかし・・・・このレールカノン、月面フレーム用の試作をそのまま持ってきたわね。追加の重力波アンテナぐらいでゲインが足りるのかしら?」
アキは苦笑する。

確かに登場は趣味以外のなにものでもないが、各部はかなり計算高く設計されている。
一番大きいのは複雑なレールカノンの射撃管制を行うために、アキセカンドにはメインの制御系とは独立したもう一つのAIが組み込まれていることである。
これはまさにレールカノンの制御のために存在しており、発射時のエネルギーバランスコントロールはもちろん、制動動作や弾道計算まで受け持っている。

まさにアキセカンドはこのウイングユニットを装備するためにデザインされているといっても過言ではない。
しかし、短期的にエステバリスを本格的なレールカノン専用機には調整できなかったのだろう。ウイングシステムという別個の機体に主要システムを移すことにより、特にエネルギー系統での逆流を本体に及ぼさないように配慮されている。

惜しむらくはそれでもなお、アキ以外には扱いづらい機体ではあるが・・・。

「仕方がない、やりますか!」
『本当に大丈夫、アマガワ・アキ?
 レールカノンの使い方は・・・・』
「大丈夫ですよ、サリナさん。使い方は大体わかりましたから♪」
『大体って、制動とかエネルギー逆流の抑制とか・・・』
「なんとかします!」
アキはそういってイヤミ半分で忠告してきたサリナの言葉を受け流して、照準を合わせた。

「テスト!」

バシューーーーー!!!

アキは在らぬ方向に一発レールカノンを撃ってみる。
射撃そのものは理想に近い実に美しく優雅に行われた。とても初搭乗、初試射とは思えない仕事だ。

「う〜〜ん、照準が上0.003、右0.001ずれてます。サリナさん、ちゃんと合わせました?」
『・・・・・・・・失礼ね、ちゃんと合わせたわよ・・・・ってやだ本当にずれてる!?』(←少し見ほれていた)
「管制AI、照準修正下方+0.003、左+0.001」
『OKです』
最初の発射で当たり障りのないところを撃っておいて射撃精度を確かめるアキ。
初物をいきなりアキトの方に向けて誤射するほどアキはバカじゃない。

ある程度射撃感覚を掴めたところで、アキはアキトの周りにいるバッタたち目掛けてレールカノンの引き金を引いた。

バシューーーーー!!!
ドン!ドン!ドン!

一同「おおおおお」
たった一発の射撃でまとめて三機のバッタたちを葬った。
長距離から、しかもフィールドの強化されたバッタを3機も貫通して破壊出来る程の威力をレールカノンはまざまざと見せつけるのだった。



ナデシコ・格納庫


「やるじゃない。アマガワ・アキ・・・」
サリナはアキの活躍ぶりに素直に感心した。
はっきりいって社内のテストパイロットにレールカノンの試射を上手く出来た者はいなかった。それだけ試作のレールカノンは扱いがデリケートなのである。
普通のパイロットは制動やらエネルギーコントロールだけで手一杯になるのだ。
それを彼女は軽々とこなしてる。

そんな感心しているサリナにウリバタケが話しかけた。
「なぁ、嬢ちゃんよぉ・・・・」
「嬢ちゃんとは失礼な。サリナ・ウォンかマスターと呼んで!」
「あんたさぁ、今のアキちゃん見ててかわいそうに思わねぇか?」
「かわいそう?」
「あれ」
怪訝そうな顔をするサリナにウリバタケは指さして教えた。

アキセカンドの動きである。
でも上手く操っているようにしか見えない。

「あれがなに?」
「窮屈そうに見えないか?」
「窮屈?」
「そう。俺にはまるでサイズの小さい服を着せられて身を縮めるようにして戦ってる風にしか見えんのだ。」

そういわれれば確かに・・・・

「デザイン優先の洋服を着せられて、キツキツで身動きできないモデルみたいだ。」
「で、デザイン優先ですって!?」
「パリコレとか、ファッションショーならそれでも良いと思う。でもショーの外までデザイナーのマスターベーションに付き合わされちゃ、モデルはかわいそうだよ。」
「ま、マス・・・・!?」
自分の設計を自慰呼ばわりされて憤慨しそうになるサリナにウリバタケは優しく諭す。

「第一、アキちゃんがのびのびと本気を出したらどこまで凄くなるか興味ないか?」
「本気の・・・・アマガワ・アキ?」
「俺達はまだ彼女に子供の服しか与えられちゃいねぇ。メカ屋としちゃ失格だ。
 けど彼女に相応しい服を与える事が出来た時、彼女はどんな活躍をするんだろうなぁ・・・」
ウリバタケはワクワクしながら言う。

サリナも夢想してみる。

『闇のお姫様』
そんな名前で呼ばれる漆黒のエステバリス・・・

途端に彼女の中でデザインの発想が爆発的に膨れ上がった。

「・・・・・・・・・・そうね。
 彼女の為だけに設計してみるのもおもしろいかもね・・・」
後に『Princess of darkness』と呼ばれる機動兵器の構想はこの時から始まった・・・。



戦闘宙域


さてさて、先にレールカノンでほとんどのバッタたちを狙撃したアキ。
それはものの5分もかからなかった。

そして彼を回収するためにアキセカンドがアキト機の元に到着した。
「・・・・あ、アキさん・・・・」
「戦闘は終わったよ、アキト君♪」
「済みません、俺・・・・・」
さっきまで身を竦ませて何もできなかったアキトに優しく声をかけるアキ。
だが、アキトは自分の不甲斐なさが悔しくて悔しくてたまらなかった。

「気にしなくて良いのよ。そんなの慣れていけば・・・」
そう言って落ち込むアキトを慰めようとするアキであったが・・・

プスン・・・

「????」
「????」
二人とも変な音に気が付いたようだ。

バチバチ!!!!

「アキさん、後ろ!!」
「え?」
先に気づいたアキトが指さすが、既にとき遅く・・・

ボン!!!!!!!!!

ウイングパーツの一部でショートが起こる!
その結果、重力波推進スラスターが暴走・・・・

グウィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!

「アキさん!!!」
「近づいちゃダメ!!」
アキが叫ぶ間もなく、アキト機も一緒に巻き込まれて・・・・



ナデシコ・ブリッジ


ルリ「アマガワ機、テンカワ機、共にエネルギーライン圏外に暴走しました!」
一同「うそぉぉぉぉ!!!」
アキト機を巻き込んだまま、アキセカンドは月の裏側まで飛んでいってしまったのである。

サリナ「・・・やっぱり?」
一同「『やっぱり?』じゃねぇだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
サリナがボコられたのは言うまでもなかった(笑)

ってことで後編に続きます。



ポストスプリクト


なぜか今回は中編で終わってしまったので、特別に奥さん'sへのインタビューって事にさせていただきたいと思います。

Blue Fairy「って、なんで当社比30%増でも遭難シーンまで辿り着かなかったんですか?」

−悪のりしすぎました。テヘ♪

Secretary「テヘ♪じゃないでしょうがぁぁぁぁ!!!!!!!!」

−なんか、このまま「数時間後アキト達は無事救出されました」ってテロップつけたら後編として通用しそうだよね

Secretary「そんなことしたら、どこが『冷たい方程式』になるのよぉぉぉぉ!!!」
Actress「Secretaryさん、血管切れますよ?お手当てして欲しいならいいんですけど・・・」
Blue Fairy「でも、今回すごい暴走ですね」

−さぁ、今回のネタは全部わかったかな?

Snow White「はぁい♪私わかった!!!」
Blue Fairy「・・・・本当に経歴詐称?」
Snow White「ちがうもん!本当にぴちぴちの・・・」
Pink Fairy「三十路?」
Snow White「びえええええええ、Secretaryさんじゃないもん〜〜」
Secretary「誰が三十路じゃ!!!イネス女史じゃあるまいし!!!」
Pink Fairy「そんなこといってると後でイネスが何するかわかならいよ?」
一同「う!」

−ってことでよくわからないうちに後編へ続きます!

Special Thanks!
・日和見 様
・闇影 様
・TARO 様
・YSKRB 様