アバン


本当に自分の目的のために火星に訪れたのはアキさんとフクベ提督だけだったのかもしれません。
そんな私達が火星を木星蜥蜴の手から取り戻すなんて出来るわけもなく、人の死と己の力のなさを思い知らされて逃げ出すことしか出来ませんでした。

でもアキさんはこう言いました。
もう一度火星に来よう
ネルガルや他の誰のためでもなく、『僕らの大切なモノ』の為に
フクベ提督が失ったものを取り戻そうとしたように
いつか僕らが『歌う詩』の為に・・・

ああ、これってSecond Revengeのラストとは何の関係もありませんのでそのつもりで。



ナデシコ・ブリッジ


「ええ〜っと、私達はチューリップに入った後、急激に眠くなり、地球時間で1日ほど眠っていたようです。んで、まだ通常空間には脱出していないようです。
 最初に目を覚ましたのは私ホシノ・ルリだけのようで、クルーの皆さんはまだ眠っているようですね。」

・・・・・ルリちゃん、独り言?

「失礼な。航海日誌をつけてるだけです。
 あと就業時間内なので仕事をしている事を記録しておかないと、後でお給料から減額されますので。」

・・・・・そりゃ、すみません。

「皆さん、起きて下さい〜〜」
聞いていると眠くなる声でルリはみんなに話しかける。

ク〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
みんな寝息で返事をする。
低血圧の自分がいやにお目々パッチリなのでなんか腹の立つルリ
のんきに寝言をしゃべる人達にちょっかいをかけてみる。

ミナト「むにゃむにゃ、アキさんのご飯最高♪・・・・・・」
ルリ「それ、アキトさんの作ったチャーハンですよ」
ミナト「う、いまいち・・・・」
ルリ「失礼な!
 間違えました。それ艦長の作ったカレーでした。」
ミナト「う、うぎゃーーーーーー」
苦悶するミナト(笑)

メグミ「むにゃむにゃ、アキトさん、どうです?私の水着♪・・・」
ルリ「・・・・・・・・・貧乳」
メグミ「貧乳はルリちゃんですぅ。私は美乳・・・・」
ルリ「!!!!!!(怒)
 あ、パットが落ちましたよ」
メグミ「え?どこどこ???」
焦って手をさまよわせるメグミ(笑)

「なんでこの人達はこれで起きないのでしょうか?」
ひとり突っ込むルリであるが、仕方がないので一番の責任者であるユリカを捜す。
だが、いつもの席にはいなかった。

「オモイカネ、艦長を検索」
『・・・・・・・・・・・検索完了
 展望室にいるよ。
 四人一緒に』
「四人一緒?」
オモイカネの思いがけない回答に驚くルリ。
さっそくその光景をコンソールに映し出すと・・・

「!!!!!」(真っ赤)
お子さまのルリには直視できないような大人の光景が広がっていた。



ナデシコ・展望室


クーーーーーーーーーー

微笑ましい寝息が四人分
彼らは仲良く川の字で寝ていた。
左からイネス・フレサンジュ
 テンカワ・アキト
 ミスマル・ユリカ
 そしてアマガワ・アキである。

イネスとアキトが仲良く向き合って手を握って寝ている姿だ。
ルリは少し青筋をたてたが、これはぎりぎり微笑ましいと笑って許せなくもない。
まぁ、これは良しとしよう。

問題はもう一組である。

アキとユリカの格好にルリは『少女がこんなものを見てはいけません!』と目を手で覆いながら、こっそり指の隙間から二人の様子を盗み見するのを止められなかった。

その姿とは・・・

腕枕。
しかもアキがユリカを腕枕しているのだ。
まるで情事が終わった男女のように・・・いやちゃんと服は着てるのだが(笑)

ユリカは気持ちよさそうにアキの胸に顔を埋めていた
アキはまるでいつもしているかのように、ユリカの頭を撫でていた。
実に自然で、一見微笑ましいのだが、いろんな意味でやばい光景であった。



ナデシコ・ブリッジ


『これはつまりお二人はそういう関係なのでしょうか!?』
ルリは珍しくパニックになる。
知識だけは豊富なのでその後の展開なんかも想像していたりした。

「ユリカさんなだけに実は百合?」
なんてくだらないダジャレを言ってパニくっている間にもう一人の人物が目を覚ました。

「う〜〜ん、どうかしたの?ルリ姉」
起きてきたのはラピスです。

『まずい!!!!!』
ルリはとっさに判断した。
アキラブなラピスのことである。
今のアキとユリカのあられもない姿をラピスが見たら・・・・・・

『グラビティーブラストを連発した後、サードインパクトを起こしかねません!!』
そう思ったルリはとっさにポケットから注射器を取り出し、ラピスの首にあてた。

プシュ!

「はう・・・・」
一撃で眠りにつくラピス。
「危ないところでした・・・。
 もしもの時のためにと思って『象さんもいちころ♪イネス印の睡眠薬快眠くん(注射器タイプ)』を携帯していて助かりました」

ルリ君・・・っていうか、何で君はそんなもの常備してるの?

「こんなことしている場合じゃありません。艦長を起こさないと・・・」
ルリは本来の職分を思い出してユリカを起こした。

「やっほ〜〜〜起きて下さい、艦長〜〜〜」
『むにゃむにゃ・・・・・』
「お〜い、やっほ、やっほやっほ、やっほ!」
『もう食べれないよ♪』
「起きて下さい、艦長。」
『ひゃははは、そんなところくすぐっちゃダメ♪』
「艦長、艦長艦長艦長艦長艦長艦長艦長艦長」
『ユリカ、間諜じゃないもん・・・』
完全に寝ぼけているユリカを必死に起こすルリ。

その甲斐あってか・・・・

『うにゅ〜〜〜
 ぷにゅぷにょ、柔らかい・・・・・・
 私のほうが大きいにょ・・・・・・
 って、なんでアキさんが私に腕枕を!!!!?????
 ってアキト、何でイネスさんと手を握って寝てるの!!!!?????
 ってルリちゃんが何で分裂してるの!!!!!!??????』
『え?何してるって?
 あははははははははは、何もしてないよぉ♪』
『え?通常空間に復帰した?
 状況を表示して・・・・・』
『ひえ〜〜バッタさん達と交戦中!?
 グラビティーブラスト広域放射!その後はフィールドを張りつつ後退!!!』

ってなことで宇宙軍第二艦隊を巻き添えにしたグラビティーブラストを発射するのであった(笑)



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第8話 ゆるめの「冷たい方程式」<前編>



再びナデシコ・ブリッジ


『何考えてるんだ、貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
包帯を巻いた第二艦隊の司令官様は完全にお冠であった。
ユリカはそれをまるで叱られた子犬のように拝聴する。
『幸い、狙いが逸れたから死人こそ出なかったが、そちらがそのつもりならグラジオラス以下第二艦隊の名誉をかけてナデシコを迎撃する!
 以上だ!!!!!!!』
大音響と共に宇宙軍司令官からの通信が切れてしまった。

ルリ「まぁ、気持ちは分からないではないですね」
ユリカ「グサ!」
メグミ「敵さんと一緒にかすめて撃っちゃったのは事実ですし」
ユリカ「グサグサ!!」
ミナト「本当なら軍人さん達に助けてもらえてたかもしれないのにねぇ〜〜」
ユリカ「グサグサグサ!!!」
身内に次々痛いところを指摘されるユリカ。

「わざとじゃないのに・・・・」
「ゴメンで済めば戦争も楽だよ・・・」
「死人が出なかったのは、不幸中の幸いです。死亡事故の慰謝料だけはなかなか値切れませんからねぇ。」
「せめてブリッジにいてくれれば状況も把握できたはずなのだが・・・」
そうプロスやジュンやゴートに責められても理由はよくわからないユリカ。
覚えていることと言えば・・・・

・・・・・・・・・・・腕枕

ポ!!!

『なんで私、アキさんに腕枕されてたの?
 でも気持ちよかったな〜〜
 安心出来るっていうか・・・
 ってダメダメ!!私にはアキトという将来を誓い合った大事な人がいるのよ!
 しかもアキさんは女の人じゃない!!!
 でも・・・・・』
一人で真っ赤になって悶え、イヤンイヤンするユリカ。
端で見ていて気持ち悪い。
でも一同の疑惑の視線を感じて慌てて話題を変える。

「そうそう、アキトは何でイネスさんと展望室にいたの?」
『えええええ!!!???』
いきなり話題を振られて驚くアキト。



アキトのエステ・コックピット


「いや、俺も何がなんだか・・・・」
出撃前のパイロットに何てことを聞くんだ!と驚きながらアキトはしどろもどろになりながら答えた。でもそれで女性陣の追求から逃れられるわけもなく・・・。

ユリカ『アキトは知ってるよね?』
アキト「いや、俺も・・・・」
メグミ『二人とも不純です』
ルリ『そうです!』
アキト「いや、なんにもしてないって・・・」
ヒカル『あやしいなぁ』
イズミ『あやしい・・・』
アキトの乗るエステのコックピットには追究のウインドウが際限なく開いてアキトを追いつめていった。

メグミ「まぁ、イネスさんもいたことだし、過ちはないにしても・・・」
ミナト「過ちって?」
メグミ「あっ(真っ赤)」
ルリ「大人って不潔です」
ヒカル『不潔ぅ♪』
イズミ『不潔ぅ♪』

たちまちコックピットは不潔コールの大合唱

『だぁぁぁぁぁ!!!!!
 うるさい!!!!!!』
群がるウインドウを蹴散らすように現れたのはリョーコのウインドウであった。
『いいじゃねぇか、誰とどこにいようと!!!
 俺は隊長を信じるぜ!』
そう照れながら宣言するリョーコ。

だが、みんなの頭にクエスチョンマークが一杯つく。

『隊長?』
『隊長?』
『隊長?』
『隊長?』
『隊長?』
『ギク!!!!!』
リョーコはようやく自分の失言に気がついたらしい。

『隊長ぅ♪隊長ぅ♪隊長ぅ♪隊長ぅ♪隊長ぅ♪隊長ぅ♪』
『ば、バカ!そうじゃねぇって!!!!!!』
時既に遅く、次のおもちゃはリョーコに決定であった・・・(笑)



再びナデシコ・ブリッジ


で、その隊長であるアキはというと・・・・

「セイヤさん、私のエステは・・・」
『何いってるんだよ、アキちゃんのはこの間壊しちゃったじゃないか!
 それでなくったって、ヤマダの奴がエステを勝手に乗り逃げしちまうし!』
「でもスペアのアサルトピットだってあるし、ガイ君の0G戦フレームだって残ってるんでしょ?」
『ダメダメ!ヤマダの奴を念のため黒色に塗り替えてるけど、まだ半分も塗れてないし。』
「別に私は塗り終わってなくてもいいし、なんなら半乾きでもいいんだけど・・・・」
『ダメダメ!漆黒の戦乙女、アマガワ・アキの愛機をんなへなちょこエステで送り出したとあっちゃ、俺達ナデシコ整備班末代までの名折れだぜ!!
 たとえお天道様が許したとしても、このアマガワ・アキ親衛隊(非公認)隊長の俺が許さなねぇ!!!』
「いや、いくらでも許すし・・・って、親衛隊って何時の間に?」
『第一、アキちゃん、どノーマルのエステなんてすぐ乗り潰しちゃうだろ?
 この前の戦闘データ見たけど、敵の攻撃による破損より、アキちゃんの操縦に追いつけずに自滅してたみたいだし。』
「えっと、それは・・・」
『そんな人にノーマルのエステを与えた日にゃすぐ壊して帰ってくるのがオチさ。
 今回は我慢しな!』
「あ・・・」

ガチャリ!
ウリバタケとの通信は一方的に切られてしまった。

ミカコ「・・・・・ってことで出撃はなくなったんですよね?」
アキ「いや、一応戦闘待機しないと」
ジュンコ「大丈夫です。アキトさん達がやっつけてくれます」
アキ「そうそう、お昼の仕込みをしないと♪」
ハルミ「それなら私達がさっきやりました!」
アキ「でも・・・・」
三人「これで時間がたっぷり出来ましたから展望室での経緯を詳しく聞かせていただけますよね?」
ラピス「なんならまた首輪する?」
アキ「お願い、もう首輪だけは勘弁して〜〜!!!!!!」
こちらはこちらで厳しい追及にあってたりする。

アキ&アキト「『なんでこういう時にあの説明好きが現れないんだ!イネスさん!!!』」

イネス『ただいま熟睡中・・・・・』

頼みの綱、イネスも役に立たなかった・・・(笑)



戦闘宙域


ルリ『敵第二陣来ます!』
ユリカ『ナデシコはフィールドを維持しつつグラビティーブラストのチャージも忘れずに。
 エステバリス部隊はただちに出撃してください!』
ルリ、リョーコ『「了解!!」』

リョーコ「いくぞ、野郎ども!!!」
ヒカル「いやぁ〜〜野郎はアキト君しかいないんですけど・・・・」
リョーコ「だぁ!!!つべこべ言ってるんじゃねぇ」
イズミ「隊長ぅ♪の代理を任されたからって張り切っちゃって〜〜」
リョーコ「う、うるせぇ!!そ、そんなんじゃねぇ!!!!!!!」
アキト「んで作戦は?」
リョーコ「各自散開、以降は高度に柔軟性を持ちつつ、目標に対して効果的な戦法で当たれ!」
ヒカル「・・・それってようは『お前ら適当にやれ』って言わない?」
イズミ「言う言う♪」
リョーコ「うるせえぞ、お前ら!さっさと出撃しやがれ!!!!!」
ヒカル、イズミ「了解!!隊長ぅ♪代理殿!!!」
リョーコ「!!!!!!!!!!!」

とかなんとか言いながらかしまし三人娘とアキトはエステで出撃していった。

だが、楽観して飛び出した彼らには意外な結果が待っていた。

「えい♪」
ヒカルはバッタ達にラピットライフルの掃射を行う。
10機にヒット!!!
しかし・・・

ボン!ボン!ボン!

「え〜〜え!?10機中3機だけ!?」
射撃の腕に自信を持っていたヒカルだが、今までほとんどそれで全機撃沈できていた攻撃がほとんど通用しなくなっていることを見せつけられた。
「どうやらバッタくん達もフィールドが強化されている様ね」
「進化するメカ!?」
イズミの推測に驚くヒカルであった。

しかし、この人はそんなことお構いなしであった。
「進化するメカ上等!どつき合いならこっちが有利だ!!!!」
さすが直球思考のリョーコは気持ちの切り替えも早かった。
ハードナックルでバッタのフィールドごと殴りつけていった。

三人娘達は戦い方を即座に切り替えていって着実に敵機を減らしていった。
しかし、もう一方でそれどころの騒ぎではない人物がいた。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
バッタ達にいいように翻弄されているアキトであった。



エステバリスアキト機・コックピット


『おい、どうしたんだ、テンカワ!!』

はぁはぁはぁ・・・・

「この!この!
 なんで墜ちないんだよ!!!」
ラピットライフルを掃射するが角度が悪いのか、ほとんどはフィールドに阻まれてバッタ達を落とせないでいる。
それがよけいアキトを混乱させた。
そうなると当たるものも当たらなくなってくる。

はぁはぁはぁ・・・・

『どうしたのか話せ、テンカワ!!』
「どうしちゃったんだ、俺・・・・・
 怖くなくなったのに・・・・
 もう怖くなくなったはずなのに・・・」
手が上手く動かない。
膝ががくがく震えている。
さっきまで、出撃するまでは大丈夫だったのに・・・

でも、バッタ達の姿を見たら・・・

沈むクロッカス
フクベ提督の顔
そして炎に包まれるクロッカスに突っ込む空戦フレーム
ガイの顔
人が死ぬという現実

アキが修羅のごとく戦う様
爆発と共に消えるアキの愛機
自分だったら死ぬかもしれないという仮定

それらが忘れていたものを呼び起こした。
いや忘れていたフリをして心の奥底に押し込んでいたものを思い出させた。
あの日の光景を

つかの間の平穏
アイちゃんにあげたミカン
バッタ達に囲まれる
逃げ延びた人達のコロニーが火の海に飲まれる
現前に迫るバッタ達の顔
死の恐怖!!!!!!!!



ナデシコ・ブリッジ


『うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』
アキトの絶叫がブリッジにこだました。

「どうしたんですか?アキトさん!
 返事をして下さい、アキトさん!!!」
メグミが必死に呼びかけるが、一度パニックを起こしかけた人間を静めるのは難しい。

『まずい!』
アキはその様子を見てアキトに何が起きたか察した。
それはかつて彼女が体験した事だから。

『手が、手が動かないんだよ。
 なんでだよ・・・』
「アキト、どうしたの!?」
「テンカワ機、完全に囲まれました!
 艦長、早く!!」
アキトのエステの周りをバッタ達が取り囲んでおり、なぶりかかっていた。
アキトの様子に驚いたユリカも少しパニック気味だ。ルリもアキトの状況を理解出来ていたが、冷静に対処できないでいる。

「アキト君、落ち着いて!
 リョーコちゃん、アキト君のフォローへ!」
アキが代わりに冷静な指示を出す。

『向かってるよ!』
リョーコは即答した。



戦闘宙域


「向かってるさ!
 言われなくても向かってるよ!!!!」

リョーコはエステのフィールドを最大限にまで引き上げた。

「ずりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
高出力フィールドによる高速移動攻撃
ガイがその場にいたら「ゲキガンフレア」とか言っていたであろうが、リョーコは雑魚にかまわず一点突破していった。

とにかくアキトを助けるため!

だがその間もアキトは容赦なくバッタ達の攻撃に晒されていた。
距離からすればとても間に合いそうにない。
誰もが絶望した。

『やられる!』
アキトがそう思った瞬間、救いは別のところから現れた。

ビュン!!!!

何者かがアキトをバッタの群から救い出したのだ。
青いエステバリス。
それがその正体であった。

「な!」
驚いたリョーコにその青いエステは通信を送ってきた。
『彼は無事だ。』
「お、お前は何者だ!」
『そんなことよりここは危ない。
 下がりたまえ!』
青いエステからの通信に面食らうリョーコ達。

だが、その理由はすぐにわかった。

ゴウ!!!!!!!!!!

どこからか放たれるグラビティーブラスト
その威力たるや、たった一撃で敵艦隊に大きな穴があいたのだ。



ナデシコ・ブリッジ


「敵艦隊2割消失」
ルリの言葉に唖然とするクルー一同
なぜならフィールドが強化された木星蜥蜴の艦隊を一撃であれだけ沈めるなどナデシコでも出来ない芸当だったからだ。

地球連合の中でナデシコが最強の戦艦だったはず
なのに・・・・

「第二波来ます!」
ルリの報告に一同注視する。
今度こそ見えたはずだ。
「多連装のグラビティーブラストだと!?」
「それじゃ・・・・」
ゴートの言葉にジュンも驚く。

そう、ナデシコが火星に出発する前に建造計画だけはあった戦艦
ナデシコ二番艦「コスモス」
でもまだ建造の開始すらされてなかったはずだが・・・

結局その戦いはコスモスの応援により無事木星蜥蜴を撃退させることが出来た。



ナデシコ・格納庫


アキトのエステを抱えた青いエステはナデシコに着艦した。

「なんだなんだ!!」
ウリバタケは物珍しそうに駆け寄ってくる。

が・・・・

「なんでぃ、新型かと思ったらアキちゃんのお古じゃないか・・・・」
青いエステを見てがっかりするウリバタケ。
『僕のピカピカの新型のどこがお古なんだ!!!』
青いエステのパイロットはスピーカー越しに文句を言う。

リョーコ「お古だよなぁ」
ヒカル「お古だよねぇ」
イズミ「雪はお古・・・あなたは来ない〜〜♪」
青いエステ『誰がお古だ!!!』

メグミ「少し色の趣味が悪いですよね」
ミナト「確かに。胸に星のマークなんてアメリカナイズされすぎって感じ〜かな?」
ルリ「確かに、アキさんのつや消しブラックの方が渋かったですよね」
ラピス「うん」
アキトを心配になってやってきたブリッジクルーも次々そう言う。ルリなどは実寸大アキスペシャルのウインドウ映像を隣に重ねて悦に浸っていた。

『・・・・・・・・コホン』
雑言を無視するつもりになったのか、青いエステの中のパイロットはハッチを開けて颯爽と登場することに決めた。
「君たちが火星に消えてから8ヶ月、地球も新たな力を入れたというわけさ!」
片膝たててカッコをつけるキザ男が中から登場した。

メグミ「アキトさん、大丈夫ですか?」
ルリ「テンカワさん、大丈夫ですか?」
ラピス「アキト、平気?」

「こら!!!僕を無視するな!!!」
「・・・・うるさい奴だな」
無視されて怒る青いエステのパイロット。仕方がないのでウリバタケがおつき合いでかけ声をかけた。
「んじゃ・・・お前は誰だ・・・・」
「僕の名前はアカツキ・ナガレ。コスモスから来た助っ人さ♪」

決まった!
アカツキは格好良くポーズも決めゼリフも決まったので自分に酔いしれていた。
しかし・・・

???「退いた退いた!!!」
ウリバタケ「なんだなんだ」
???「エステのハンガーが通るんだから、そこ邪魔しない!!」
ウリバタケ「し、新型か?」
アキ「ああ、やっと私のエステが届いたのね!これで隊長の威厳が保てる〜〜(感涙)」
アカツキ「・・・・・・・」
既にみんなの興味はアカツキとそのエステから、新たに搬入されてきた新型エステへと移ってたりした(笑)

「あんたがアマガワ・アキ?」
新型のエステを運んできた女性はアキを見つけると大声で近寄ってきた。
「そうですけど、ってエリナさんですか?」
そう、顔はネルガルの会長秘書エリナ・キンジョウ・ウォンにそっくり。
でも、口元のほくろが左右逆だとか、スーツではなく繋ぎの上に白衣を羽織ってるとか、明らかに会長秘書とは異質だった。

「ノンノン♪それは姉」
「姉って、んじゃあなたは・・・」
「そう、私があの有名な天才美少女エステバリスアーキテクト!
 サリナ・キンジョウ・ウォンよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
胸を誇示するように無意味にふんぞり返るサリナであった。

「その世田谷区限定のアーキテクトさん・・・」
「誰が世田谷区限定よ!!!」
「それはいいんだけど、あれって私のエステよね?」
「よかないけど・・・・いいわ、たっぷり説明してあげる」
アキのいらぬツッコミから気を取り直したのか、サリナは持ってきたエステのシートを剥がしてお披露目をした。

サリナ「これがゼロG戦フレーム アマガワ・アキスペシャルSecond Edition
 通称アキセカンドよ!」
一同「おおおおおお」
サリナ「前回のアキスペシャルは試作機をベースにしていたけど、今回のアキセカンドはその完成版アカツキ・ナガレ専用機をさらにブラッシュアップさせた機体なのよ!!」

リョーコ「なんだぁ、んじゃやっぱりあの青いエステってアキさんのお古なんじゃない。」
ヒカル「お古だ♪お古だ♪」
イズミ「お古だ、ち 一郎・・・なんちって」
ルリ「お古ですね、やっぱり」
ラピス「お古お古」
アカツキ「お古じゃないといっとろうが!!!!」
必死に否定するアカツキであったが既にみんなの心の中ではお古の烙印を押されてたりした(笑)

「でも見た目あんまりアキスペと変わらないみたいね・・・」
アキがポツリと感想を漏らす。
「アキセカンドはファーストに比べて極端に性能が上がってる訳じゃないわ。でもアキセカンドの最大の特徴はオプションパーツにより性能を飛躍的にUP出来るのよ!!!」
サリナはそう力説する。
「ひょっとして・・・・あれ?」
そう、サリナの後ろには『秘密兵器につき触るな!』とデカデカとかかれたコンテナが鎮座してたりする。古今東西、秘密兵器と言われてろくなものが出てきた試しがない。例に漏れずアレもそんな雰囲気を醸し出していた。

「見たい?」
「結構です」
本能が見るなと告げていた。出来れば永遠に封印しておきたいと思うアキであった。



ナデシコ・通信室


『この提案を飲んでくれない場合は、宇宙軍と木星蜥蜴との挟み撃ちという事になるのだがねぇ・・・』
「はぁ、そう申されましても・・・・」
ユリカは困惑しながら相手の提案を拝聴していた。
相手はネルガルの重役さんである。提案の内容はナデシコの帰属問題をどうするか。
提案というか・・・普通はこれを恫喝と呼ぶ。

「ここは一つみんなで相談タイムというのはどうでしょうか?」
プロスが当たり障りのない返事をする。
それで双方なんとなく納得したのか・・・

「それじゃコスモスに収容しよう」
その重役もわかっているのだ。傷ついて浦島太郎状態のナデシコには他に選択肢がないことを。



ナデシコ・ブリッジ


ナデシコが火星で消えたのをうけて、大幅に設計変更され月攻略戦に駆り出されていたりしたコスモスであるが、本来ナデシコ級戦艦用のドッグ艦であったりする。
そのコスモスも本来の職務として傷ついたナデシコを着艦させ、修理を行っていた。

ま、それはともかく

主要クルー一同はブリッジに集められ、ネルガルの提案してきた今後のナデシコの方針を聞かされることとあいなった。

イネス「チューリップを通り抜けると瞬間移動するとは限らないようね。
 私達が火星を出てから地球時間で8ヶ月、単に火星と地球を行き来するだけなら1ヶ月で十分だし、私達の時計は1日程度しか進んでいない。
 って考えると瞬間移動というには明らかに違う現象のようね。」
ルリ「・・・・・って私達本当に浦島太郎ですか?」
イネス「そうね。私達がチューリップを通った間にネルガルと連合軍は和解し、新しい戦艦を建造して月の一部を奪還。
 んでなぜ私達がウラシマ効果を受けたかという私の推測を述べると・・・」
プロス「ああ、詳しい話はまたの機会ということで。」

イネスの説明が長くなりそうなので話の腰を折るプロス。
そしてユリカにこれからのナデシコの方針を説明するように促す。

「ということでナデシコはこれより地球連合海軍極東方面に編入されます。
 以降は極東方面師団の指揮の元で行動することになります。」
ユリカ自身も戸惑いを隠せないながらも、現状を伝えることしか出来なかった。

もちろんこの発表にはブーイングが起こる。
「私達に軍人をやれっていうこと?」
アキが少し冷ややかな声で尋ねる。
「そうじゃないよ♪」
それを遮るようにアカツキが馴れ馴れしく話し始める。
「ただ一時的に協力するだけさ♪」
「なによ、ロン毛1号」
「ロン毛って心外だなぁ〜〜。僕の名前はアカツキ・ナガレ。
 助っ人さ。
 差詰め自由の旗の下に集った海賊・・・ってところかな?」

アキト「・・・・(怒)」
ラピス「・・・・(怒)」
ルリ「・・・・(怒)」
リョーコ「・・・・(怒)」
ウリバタケ「・・・・(怒)」
ミナト「・・・・(怒)」
みんなムカッとする。
いや、ムカッとしたところは「一時的に協力」というところでも「自由の旗の下に集った海賊」というところでもない。アカツキが馴れ馴れしくアキの肩に手を回し、しかもその手がなんとなくお尻にまで伸びそうだったからである。

「手前ぇ、隊長に・・・・」
リョーコが思わずアカツキに掴みかかりそうになる直前、先に行動を起こした者がいた。
「自己紹介は終わり?」
「え?ああ・・・」
無論、アマガワ・アキ本人である。彼女はにっこり笑いながら・・・
「私はアマガワ・アキ。ちなみに男の人にべたべたされるのが虫酸が走るほど嫌いなんで・・・」
と言った次の瞬間、神速の動きをみせて・・・・

ビュン!!!!!!

アカツキの体が空中を切り揉み回転した!

ドスン!!!

アキはアカツキを奇麗に投げ飛ばし、地面に叩きつけた。そしてそのまま腕固めを決めてアカツキをうつぶせに組み伏せる。

「いだだだだだだだ!!!!!!!!!!!」
「つい癖で変に触られると体が勝手に護身術をかけちゃうのよ。
 今度は手加減出来ないかもしれないから、気をつけてね♪」
「手加減って思いっきり・・・・・・・いででででで!!!!!!!!!」
非常に微笑ましい笑顔で思いっきりアカツキの腕を締め上げるアキ。
『アキさんの手加減なしって一体・・・・』
とか思ってしまう一同であった。

そしてアキはアカツキの腕を締め付けながら言葉を続けた。

アキ「そうそう、艦長にプロスさん。今回はあくまでもナデシコは軍に協力するんであって軍属になるわけじゃないんですよね?」
アカツキ「いででででで!!!!!!!」
プロス「ええ、まぁ・・・・」
アキ「火星はどうします?」
プロス「今すぐ火星に行っても勝てますか?」
アキ「思わない♪」
プロス「スポーツじゃあるまいし、『参加することに意義がある』とか言って勝てもしないのに何度も乗り込んでいって被害を垂れ流すことには賛成しかねますが。」
ジュン「確かに今は軍と協力して戦況を有利にすることの方がいいと思うし・・・」

グチグチと否定的な意見を言うプロス達。
しかしアキは朗らかなのにアカツキを締め付けながら尋ねていく。

アキ「んじゃ、目処がたったらもう一度火星に行くのね?」
プロス「そ、それは・・・・・・」
アカツキ「ち、力入れないで!!!痛い!洒落にならないぐらい痛いから!!!」
アキ「行きますよね?」(アカツキ締め付け5%)
プロス「私の一存では・・・」
アカツキ「ギブ、ギブ!!!!!痛い!痛い!痛い!」
アキ「行きますよね?」(アカツキ締め付け10%)
プロス「ですから私の権限では・・・」
アカツキ「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
アキ「行きますよね?」(アカツキ締め付け25%)
プロス「・・・・・・・・わかりました。上を説得しますです、はい・・・」
アキ「良かった♪」
アキはパッと明るい笑顔でアカツキの手を離して喜んだ。

「いやぁ、ナデシコが軍属になるとかいったらどうしようかと思っちゃったわよ」
『ど、どうするつもりだったの?(汗)』
アキの言葉に一同はツッコミを入れた。なまじ何をしでかすか想像できるだけに一同は背筋を凍らすのであった。

それはともかく、そんな騒ぎとは離れて一人ブルーになっている男がいた。

『どうしちゃったんだよ、俺・・・』
アキトは恐怖に震えて何もできなかった自分がただ歯がゆかった・・・

ってことで中編に続きます。



ポストスプリクト


取り敢えず前編ですので前回と同様にポストスプリクトは女アキトことアマガワ・アキさんへのインタビューという形式に変えさせていただきます。

−ってことで黒プリ8話を当社比30%増量、価格据え置きにてお送りしました♪

アキ「・・・・・だからって後編は当社30%減量しました・・・なんて言うんじゃないでしょうね?」

−ギク!・・・・・・そんなこと、ないですじょ

アキ「そんな誤字だって突っ込まれそうな動揺の仕方して」

−それはともかく!

アキ「ともかくって誤魔化そうとする」

−アキさんって未来じゃユリカさんを腕枕して寝てたんですか?

アキ「え?」

−無意識にしてはやけに手慣れてユリカさんを腕枕なさってたようですが?

アキ「いや、そ、それは・・・・」

−しかも髪を撫でるならまだしも、胸やお尻をまさぐろうと・・・

アキ「証拠隠滅!!!!!!!!!!!!(木連式柔炸裂!!)」

−・・・・・・というわけで後編をどうぞ。

Special Thanks!
・闇影 様
・士心 様
・導 様
・G-177式 様
・HIRO 様
・9R 様
・カバのウィリアム様
・英 貴也 様