アバン


もうすぐ火星だっていうのに、葬式だ、お料理だ、反乱だ、ってバカ騒ぎして緊張感がないったらありゃしない。

そんな中、さすがに銃を突きつけられたアキさんが怒ったの何のって、大の大人がマジちびるぐらい。
わたしたちは彼女が何に喜び、何に怒るのか真剣に考えてみる必要があるかもしれません。

ああ、これってSecond Revengeのラストとは何の関係もありませんのでそのつもりで。



火星衛星軌道上・戦闘空域


火星目前のところに木星蜥蜴達の艦隊がナデシコを迎え撃ちに現れた。
それをナデシコのエステバリス隊が迎撃に出た。

アキ「スバル、アマノ、マキ機はバッタの掃討を。
 テンカワ、ヤマダ機はあたしに着いてきて。戦艦を落とすよ!!」
エステバリス隊の隊長であるアマガワ・アキは各機に指示を伝えた。

だが、そこで全員が「了解」とハモるほどチームワークが良くないのが今のナデシコ。

ガイ「ヤマダは仮の名前!!ガイと呼べ!!!!!!」
リョーコ「なんでエースの俺達がバッタで、新米コックが戦艦なんだ!!
 普通は逆だろう!!」

すぐにわけのわからない抗議のウインドウがアキのコックピットに展開する。

ダダダダダダ!!!!!!!!!!!!!!!!!

ガイとリョーコエステのすぐ数センチ左をライフルの弾丸が通り過ぎる。

ガイ、リョーコ「・・・・」
アキ「隊長の指示に『なぜ』なんて考えるな!!
 理由をいちいち説明しなきゃ行動できないほどガキか、あんたらは!!」
ガイ、リョーコ「了解・・・」

アキは辟易する。
こんなチームワークバラバラの状態で一周目はよく木星蜥蜴の艦隊を撃破できたよな〜と思う。今はまだチームワーク云々は出来ないので頭ごなしに命令するより仕方ない。
別にリョーコ達に活躍させたくないのではなく、アキト達に多数のバッタに気を配りながら戦うのは無理と判断したからだ。

「ったく!行くぞ、ヒカル!イズミ!!」
「「あいよ!!!!」」
まるで鬱憤をバッタたちに晴らすかのごとく、盛大なお花畑が全域に広がっていった。

「スバルさん達凄い。さすがエースパイロット・・・」
「アキト君、変に感心してない。
 今度はわたし達が戦艦を落とす番よ。」
「あ、はい!」
リョーコ達の活躍を眺めて惚けるアキトをアキは叱咤する。
今度はアキトの番だ。
パイロットとしてやっていけるということを証明するために。

だが!!!

「ここはこのガイ様の出番!!!!!!!!!!!!!!!!」
一人勝手に盛り上がって敵戦艦に突っ込むガイだが・・・・

『敵戦艦フィールド増大』
無論、そんなルリの報告をガイが聞いているわけもなく・・・

ボヨヨヨーーーーーーーーン!!!!!!!!
「にょええええええ!!!!!!」
ガイのエステは敵戦艦のフィールドに阻まれて宇宙の彼方に弾き返された・・・。

「どうするんだよ、おい・・・」
リョーコ達は敵戦艦のフィールドの強さに戸惑った。戦艦を落とせなければバッタばかり潰していても仕方ない。



ナデシコ・ブリッジ


それに呼応するかのように敵戦艦から多数のビームが発射され、ナデシコを襲う!
「艦長!エステバリス隊を回収したまえ!!」
「必要ありません。アキト、ファイト!!」
忘れられがちな提督フクベが焦ったように言うが、ユリカはきっぱりと答えた。
「しかし!」
「その為のディストーションフィールド、
 その為の相転移エンジン
 その為のグラビティブラスト。
 お気楽にお気楽に。」
プロスは自社の製品に絶対の自信をもって答える。
フクベはそんなプロスに何ともいえない複雑な表情をした・・・。



火星衛星軌道上・戦闘空域


「ガイの馬鹿野郎・・・」
「さて、アキト君はどうする?」
アキトに対してアキはそう面白そうに尋ねる。『今度は君の番だ』とでも言いたげだ。
「それは・・・・そうか!!!」
アキトはしばらく悩む。そして何か閃いたようだ。

「ちょっと特攻!?」
ヒカルたちは驚く。
何を思ったか、アキトのエステはイミディエットナイフを取り出して戦艦に突っ込んだからだ。
「違うよ!入射角さえ計算して突入すれば・・・・」
アキトは敵戦艦フィールドの斥力計算をして進入軌道を決めていたのだ。

「ウォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!」
ガイのように真っ正面から突っ込めば加速力を全てフィールドに受け止められてしまうが、アキトみたいにフィールドを滑るように進入し、ナイフで接触面を狭めれば加速力を殺されることはない。そのうえでフィールドを一旦歪ませてから再加速すればフィールドを破れるはずだ!!

「エクセレント♪」

ゴウ!!!!!!!!!!!!

アキの誉め言葉と同時に敵戦艦が爆発した。
「ってことで、今のアキト君の方法を見習って敵戦艦を撃破していきます。
 ガイ君、わかった?」
「わ、わかったよ!」

その後、アキ、アキト、ガイ達は次々と敵戦艦を撃破していった。
火星衛星軌道上での対戦はナデシコ側に軍配が上がった。



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第6話 「運命への抵抗」みたいな<前編>



ナデシコ・ブリッジ


「航路クリア。降下軌道取れます」
ルリは素早く計算して降下軌道の軌道図をミナトに送った。
「サンキュー、ルリルリ」
オペレータと操舵士は着々と火星降下の準備を進めていく。

「なに・・・あのキラキラしたの」
「ナノマシーンですよ」
ラピスの疑問にプロスが答えた。

「かつて火星を人類の居住できる星にするために行なったテラフォーミング施策の一環です。大気組成を地球のそれと近づけるためと有害な紫外線、放射線を防ぐために成層圏に散布されたものです。」
ルリは淡々と当時の資料を検索して読み上げる。
「ええ、その恩恵を受ける人達がいなくなっても、彼等はああやっていつ主たちが帰ってきてもいいように働き続けているんですよ・・・」
プロスは少し感慨深げに答えた・・・。

「ナノマシーン第一層を通過しま〜す」
ミナトのかけ声とともにナデシコはきらめくナノマシーンの層を通過する。衝撃はないのだが何かがぶつかる音がする。
「ナノマシーンがナデシコに入っちゃいますけどいいんですか?」
メグミが不安げに尋ねた。
「心配いりません。火星の人達はその空気を吸っていたんです。
 基本的に無害です。
 おトイレで出ちゃいます。あ・・・」
ユリカも自分で言って恥ずかしがってりゃ世話がない。
「ああ、艦長は火星出身でしたなぁ」

「・・・そっか、艦長も火星で・・・」
「アキトさんもこの赤い大地を・・・」
プロスの言葉にメグミとルリは軽い嫉妬を覚えるのであった。



ナデシコ・格納庫


「テンカワ、見直したぜ」
「ホントホント」
「・・・・・・・・」
三人娘はアキトのところにやってきて次々とジュースをプレゼントしてくれた。
後ろでガイが『お、オレの分は?』と言っていたが、みんな無視だった。

「アキト君、良くやったね。」
「あ、ありがとうございます。飲みます?」
アキトは照れて貰ったジュースをアキに差し出したが、彼女は苦笑する。
「そういうものは人にあげるものじゃないわよ。
 特に貰った人がすぐ後ろにいる場合は・・・」

ガルルルルル
差し出されたジュースをくれた主、リョーコが歯ぎしりしていた。

「・・・・すみません。」
「別に私に謝らなくても・・・」
「そういえばアキさん・・・」
「なに?」
アキトは言いにくそうにアキに尋ねた。
「やっと火星ですよね・・・」
「ん?」
「いえ、アキさんは火星に来たかったって・・・言ってたじゃないですか」
「ああ、そのこと?」
「ええ。まだ教えてもらえないんですか?アキさんが火星に来たかった理由・・・」
アキトはぼそりと呟く。

『ナデシコはネルガルの所有物よ。彼らの目的は別のところにある。
 それはアキト君の目的と近しところにあっても決してイコールじゃないわ。』
『そして、私が火星に行く理由も火星の人達を救う為じゃない』
『それは言えないわ。言えることは私は私の目的のために火星に行くということよ』
以前、アキの言った言葉を思い出していた。

「ん・・・もうすぐわかるわよ。もうすぐ」
「もうすぐ?」
「そう、もうすぐ・・・」
そういうアキの物憂げな顔をアキトは一抹の不安を感じながら眺めていた・・・。



ナデシコ・ブリッジ


「艦首を地上へ向けてください。待ち受ける敵地上部隊を撃破します!!」
ユリカの指示がとんだ。



ナデシコ・格納庫


「こら!ユリカ!!
 ちゃんと重力制御しろ!!!!!!!!!!!!」
天地が90度ひっくり返った格納庫では各人が色んなものに必死にしがみ付いていた。

リョーコはアキに、
ヒカルはガイに、
イズミはアキトに、
それぞれしがみ付いていたらしい・・・

ウリバタケ「いいなぁあいつら。恋なんか芽生えたりしないだろうなぁ・・・・」
本当になるからやめて!ウリバタケ君。



ナデシコ・ブリッジ


「周囲30キロ圏内、敵影なし」
ルリの報告に安堵する一同。
そこでこれからの行動を検討することと相成った。

「んで、どこに行くんだ?上空から眺めている範囲じゃ生き残っているコロニーはなさそうだけど・・・」
リョーコは開口一番そう発言する。
確かにその通りだ。しかし・・・

「まずはネルガルの施設ですね。あそこは一種のシェルターになってますから」
プロスがそう提案する。
それは予定通りの提案。
今更どこのコロニーも生き残っているはずはない。その上でネルガルの施設に行けと言っている。最初からネルガルの計算尽くの行動だ。

ネルガルの目的ははじめから火星に残した自社の研究資料を引き上げることなのだ。
そんなこと、最初からわかっていたはずじゃないか。
でも、確かめもせずにコロニーは絶望だといわれて見向きもされないのがアキトにはたまらなくいやだった。
だからこう切り出したのだ。

アキト「あの・・・・エステ貸して欲しいんですけど」
ゴート「なに?」
アキト「生まれ故郷がどうなっているか見に行きたいんです。」
ユリカ「ああ、ユートピアコロニーね。」
プロス「あそこにはもう何も・・・」
アキト「それでも見ておきたいんです」

アキトは真摯な目で訴える。でも誰も危険な徒労は歓迎しなかった。生まれ故郷であるユリカでさえ。
でもアキトは一年前まであそこにいて生活していたのだ。
あそこで笑って泣いて、
アイちゃんにミカンを渡して
それで・・・
それで・・・炎に包まれるコロニー・・・
ユリカにとっては過去の存在でもアキトにとっては現在進行形なのである。

アキトのそんな思いに救いの手を差し伸べたのは意外な人物であった。
「行きたまえ!」
「フクベ提督、いやしかし・・・」
「ゴート君、お飾りだが指揮権は私にあるのだったよね?」
昼行灯のフクベがイヤにキッパリした口調で話すのでゴートプロスは気圧された。
「故郷を見る権利は誰にだってある。若者ならなおさらだ。
 行きたまえ!」
「ありがとうございます!!」
アキトはフクベの言葉に会釈をして感謝した。

「礼を言われるようなことはしておらん・・・」
フクベはアキトに聞こえないような声で呟いた・・・。

「私も故郷なんですけど一緒に行って良いですか?」
ユリカはにこやかにそう尋ねたが・・・
「艦長が艦を離れてどうする!」
「びぇぇぇぇぇぇ!いじわるぅぅぅぅぅ!!!」
一喝されてユリカは泣き出した。



ナデシコ・格納庫


アキトの乗った砲戦フレームはハンガーから出されて、ノーマルのカタパルトのほうに運ばれた。重力カタパルトで射出する必要がないからだ。

と、そこにタタタと走り寄ってくる少女がいた。

「おい、メグミちゃん、危ないよ!!」
出発しようとするアキトの砲戦フレームに乗り込もうとしたのはメグミである。

「アキトさん♪」
「め、メグミちゃん!?」
アキトは自分のエステにメグミが乗り込んできたのに驚いた。
「私も連れてってください♪」
「な、なんで?」
「私もアキトさんの故郷、見てみたいな♪」
メグミは用意しておいた飛びっきりの笑顔でお願いした。



ナデシコ・ブリッジ


「問題ですよねぇ?ねぇ!!」
「そうです!問題です!」
ユリカとルリが通信士不在の問題を盛んに訴えていたが賛同者は彼女達自身しかいなかった。同業者のミナトにいたっては・・・
「敵さんもいないことですし、いいんじゃないですか?通信士ぐらいいなくても」
「「うううう・・・・」」
ユリカとルリはうなりをあげて机に不貞腐れた。

「そうだ、ジュン君。代わりやっててくれない?」
「そうだ、ラピス。代わりやっててくれませんか?」
そうにこやかにお願いする二人であったが・・・

「ダメに決まってるだろ!」
「ダメ!」
ジュンとラピスに即答される二人。

しかしそれでめげない二人。

ゲキガンガーぬいぐるみ(艦長代理タスキつき)
リクガンガーぬいぐるみ(オペレータ代理タスキつき)

「じゃ、そういうことで。あは♪」
「じゃ、そういうことで・・・・」
「「ダぁメぇ!!!!」」
結局ユリカとルリはナデシコでお留守番をすることとなったのであった・・・。



ナデシコ・食堂


「そろそろ・・・・かな?」
「何がです?アキさん」
ミカコはアキの独り言をなんとはなく聞き咎める。
「ん・・・・先に上がるってホウメイさんに伝えといて。」
「それはいいですけど・・・」
「他の皆にもよろしくね。」
アキはそういうとウインクして食堂を出ていった。

「変なアキさん。」
何をよろしく言えばよいのかわからないミカコであった・・・。



ユートピアコロニ


「へぇ、ここが艦長とアキトさんの思い出の地ですか。」
「まぁ、見る影もないけどね・・・」
メグミの言葉にアキトは苦笑する。
きれいさっぱり赤い大地になってしまっている。

「聞いていいですか?」
「ん?」
「アキトさんと艦長って仲良かったんですよねぇ」
「そうはいっても向こうは派遣軍人で、ウチは唯の学者だから・・・」
「でも子供だったら関係ないですよね」
「まぁね・・・」
関係ない。確かに子供同士は仲がよかった。
でもそれは時が経てばもろくも崩れ去る淡い関係・・・

アキトはふと、スクラップになった作業用のショベルカーを見た。
今は懐かしき思い出・・・

『発進!!』
『こら!勝手に乗っちゃ怒られるんだぞ!!』
『平気だよ♪それ、発進!!』

たわいのない、子供の秘密の遊び
でも、ショベルカーなど子供の手におえるおもちゃではなかった・・・。

『うえぇぇぇぇぇん!!!』
スイッチの押しどころが悪くてユリカを乗せたまま暴走を始めた。
幼いアキトは彼なりにショベルカーに乗り込み必死に暴走を止めようとした。しかし子供の彼に止められるわけもなく・・・

バン!!!

結局は大人たちが来て、助け出された。
アキトは父親に平手を食らって倒れた。ただ、ユリカの泣く声を聞いた瞬間、悔し涙が流れて止まらなかった・・・。

「別に親父に殴られたのが悔しかったんじゃなくて、自分が何にもできない子供だってのが悔しかったんだ。
 だからかな・・・こいつを付けたのは・・・」
アキトは自分の右手のIFSをじっと眺める。

自分はヒーローじゃない。
かっこよく誰かを助けることなんて出来なかった。
ユリカも助けられなかった。
IFSを付けたって誰も助けられなかった。
両親も
そしてアイちゃんも・・・

そんな切ない顔をするアキトにメグミは好意を感じた。
「コックさんは?」
「え?」
「なんでコックさんになりたいと思ったんですか?」
メグミはもっとアキトのことが知りたいと思った。

アキトはしゃがんで大地の土を一掴みしてメグミに見せる。
「うえぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜
 ってなんです?これ?」
まるでミミズみたいなのがのたうっている。
「ナノマシーンだよ」
「ってお空の上のあれですか?」
「うん。こいつらのおかげで空気はよくなったんだけど、土までよくなるわけじゃないからさ。実際、野菜とかまずいんだよ。
 でもコックさんの手にかかるとまるで魔法のようにおいしくなる」
「それで『僕もコックさんになるぞ!』ですか?」
「まぁ・・・」
照れるアキトの言葉に聞いているメグミもうれしくなってくる。

「でも今はパイロットなんですよね。」
「ああ。でもどっちも中途半端だけど」
「そんなことない!そんなことないですよ。
 アキトさん頑張ってるじゃないですか!」

頑張ってるだけじゃダメなんだ・・・。

アキトのそんな心を見透かしたようにメグミは言葉を続けた。
「私、ナデシコに来るの楽しみにしてたんですよ。
 口先だけじゃない。一生懸命生きている人に出会えるのかもしれないって」
「え?」
メグミはそれがまるであなたです!ってな顔をしてアキトの瞳をじっと見つめる。

何となく良くなる雰囲気・・・

でも・・・

ボコ!!!!!!!!

それは地面の陥没という現象で阻まれた。



ナデシコ・ブリッジ


「そうよ♪艦長が艦を離れちゃいけないなら、艦ごとアキトのところに近づけば良いんだわ♪」
「そうですね♪オペレータが艦を離れちゃいけないなら、艦ごとメグミさんのところに近づけばいいんですよ♪」
「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」
艦長とオペレータが結託したら、その行動を阻めるものは誰もいなかった・・・。

プシューーーー

「出前っす」
「あ、アキさん♪」
そこにブリッジに入ってきたのはアマガワ・アキであった。
「はい、天津飯と杏仁豆腐よ」
「ありがとう♪」
ユリカは差し入れられた食事を喜んで受け取る。そのときを見逃さず、アキはあるお願いをした。
「艦長、ちょっとお願いがあるんですけど」
「何ですか?」
「あたしもちょっちエステ使いたいんだけど・・・」
「何に使うんですか?」
「乙女の秘密♪」
「う・・・・・・・・・」
「デザートにプリンアラモードも付けちゃう♪」
「許可します♪」
あっさりエステの使用許可を出す艦長であった・・・。

「もう、仕方ないんだからぁ〜」
ミナトはユリカの子供っぽさを笑ったが、今度は自分の番だということに気が付いていない。
「ミナトさん、はい。ミックスフライ定食」
「わぁい♪」
「んで、ちょっとお願いがあるんだけど・・・・」
「なに?アキさん」
「内緒なんだけど、目的地についても着陸しないでもらえる?」
「・・・・・・・意味がよくわからないんですけど・・・」
「まぁ、蜥蜴さん達が来ても逃げやすいように、万が一ってことで」
「でも艦長がなんて言うか・・・」
「海老フライ1本追加♪」
「やる〜〜♪」
・・・・・ミナトも結局食べ物に釣られるのであった・・・。

「はい、ラピスちゃん。ドリア」
「♪」
ラピスはアツアツのドリアを受け取った。
ほくほくしながらドリアを食べるラピスを見てアキはぽつりと呟いた。
「ラピスちゃん・・・」
「なに、アキ?」
「ちゃんとルリちゃんの言うことを聞いて良い子にするんだよ。」
「ラピス良い子。アキ、なんか言ってること変!」
「そうだね、ハハハ・・・」
怪訝な顔をするラピスに誤魔化し笑いするアキであった。

「はい、ルリちゃん。チキンライス」
「私へのお願いは『ラピスをよろしく』・・・ですか?」
お皿を差し出したアキにルリはムスゥーーとして尋ねた。
「どうしてそう思う?」
「あれだけ此見よがしにお願いしてれば想像はつきます。」
「あはははは・・・・」
「・・・・一体何を企んでるんですか?」
ルリは小声でアキに尋ねる。
「気にしなくていいから。」
「気にするなっていう方が無理です!」
ルリはきっぱり言う。

『聡い子だねぇ・・・・』
アキは少し困った。これからやろうとしていることをバカ正直に話せるわけもない。

だから一言、こう言って誤魔化した。

「運命に逆らってみようかな・・・・って」
「・・・・その答えを私にどう受け取れと?」
「ご随意に」
「・・・・まぁ、いいですけど。無茶だけはしないで下さいね?」
「無茶はしないよ。無茶は・・・」
アキのその言葉にルリは不満ながらも何とか納得した。

「それで?私へのお願いは何ですか?」
「ちょっとこれから私がすることをみんなに内緒にしておいてて欲しいんだ♪」
アキはそういってウインクしてみせた。



コロニー地下・生き残り達の隠れ家


「痛たたた・・・・・」
メグミ達は地面の陥没に巻き込まれて地下室のようなところに落っこちていた。
「アキトさ〜ん、アキトさ〜ん」
「メグ・・・・」
尻に敷いたアキトに気づかず辺りを見回すメグミ。
そんな彼女の前にマントとフードをかぶった人物が現れた。

「ようこそ火星へ
 歓迎するべきか、せざるべきか。
 救いの神か、はたまた疫病神か。
 まぁコーヒーぐらいはご馳走しよう。
 それと彼、苦しそうだから退いてあげれば?」
メグミは指摘されて初めてアキトを尻に敷いていることに気がついた。



ナデシコ・通路


「リョーコちゃんにヒカルちゃん」
「なんだい、『隊長』さん」
アキに呼び止められてリョーコは棘のある返事をした。
リョーコはまだアキのことが苦手のようだ。

「お願いがあるんだけど・・・」
「なんだよ」
「ヤマダ君をふん縛っといてくんない?」
「なんでぇ?」
そりゃ、いきなり誰かを縛れなんて言われれば誰でも不審がる。

「私のマネされても困るのよね・・・・(ボソ)」
「何だって?」
「いやぁ、ヤマダ君があなたの下着を持ってたみたいだから」
「なに!?」
「クマさん柄、あなたのでしょ?」
「あんにゃろめぇ!!!!!!!!
 行くぞ!ヒカル!!!!!」
「あいよ♪」
リョーコはいきり立ってガイの元へすっ飛んでいった。

アキは心の中でガイに詫びるのだった。



コロニー地下・生き残り達の隠れ家


「こんなに・・・・」
アキトは驚きの声を上げる。絶望かと思われていた火星の人々がこんなにも生き残っていたのだ。
だが、ここに活気はない。
いつ、バッタたちがやって来るかと恐怖に震え
明日ともしれない恐怖に疲弊し
この先乏しい食料などの物資に不安を覚え
終焉が来るのを静かに待つ・・・
ただそれだけの場所・・・

「基本的にこの付近にあるコロニーの生き残りの人々は全て集まっているわ。
 んで・・・」
そんなマントの女性の解説も聞かず、アキトはこれだけの人が生き残っているのに感動して叫んだ。
「良かったな!これで地球に帰れる!!
 俺達助けに来たんだよ!!!
 みんな俺達の艦に・・・・」
「乗らないよ」
アキトの声をマントの女性が阻む。

「なんでです?」
「よし、説明しよう!」
「頼んでませんけど。」
「戦艦一隻でこの火星から逃げられないわよ。敵はまだまだいるのよ?」
「私達は現実に勝ってきたんです!!
 あなたはナデシコの力を知らないから・・・」
「相転移エンジンか?」
メグミの茶々をマントの女性は嘲笑する。
そしてマントとバイザーをはずして素顔を顕す。金髪の妙齢の美女であった。
「私はその相転移エンジンとディストーションフィールドを開発したイネス・フレサンジュだ。
 んで平たく言うと・・・」
「ネルガルの人?」
アキトの疑問にイネスが答える前に・・・

ゴゴゴゴゴ!!!!!!
何か地上に現れた音だった。



ユートピアコロニー・地上


デ〜〜ン!

アキト達のいる場所の直上にはなぜかナデシコが浮遊していたのだ。
「やっほ♪心配だから来ちゃった♪」
ユリカの拡声器いっぱいの無邪気な大声に地下から這い出たアキト達は呆れてものが言えなかった・・・。

しかし、イネスだけはナデシコを複雑な思いで見上げるのだった・・・。



ナデシコ・ブリッジ


「何が心配だったの?」
乙女心を知るにはちょっと若いラピスの感想に、ルリは苦笑して仕事を続けた。
「アキトさん達確認。
 ズームします。」

ルリの操作でメインパネルには地上に立っているアキト、メグミ、イネスを映し出す。

『アイちゃん、こんにちわ。そして・・・・・・・』
それを見たアキは少し憂い気味な顔をしてぽつりと呟く。
幸いにも彼女の呟きを聞いたものは誰もいなかった・・・。

ってことで後編に続きます。



ポストスプリクト


取り敢えず前編ですので前回と同様にポストスプリクトは女アキトことアマガワ・アキさんへのインタビューという形式に変えさせていただきます。

−前編はほとんどTV版と変わりませんねぇ?

アキ「ええ、ほぼ一緒です」

−でもいろいろ企んでそうですけど?

アキ「そうですか?何も企んでませんけど・・・・」

−ひょっとして・・・・・駆け落ちですか?

アキ「はぁ?」

−ここで火星の大地にその身を散らすよりかは、少年の手を携えて共に逃避行を・・・

アキ「こらこら!!」

−アキさんが火星に来たのもアキト君と一緒に火星で生活するためなんですね?

アキ「違うわい!!!」

−新婚旅行はやはりエステに乗って火星極冠巡りですかね♪

アキ「違うっていっとろうが!!!!(木連式柔炸裂!!)」

−・・・・・・というわけで後編をどうぞ。

Special Thanks!
・みゅとす様
・梟 様
・ふぇるみおん様
・dekia様
・kakikaki 様