アバン


まぁ、ラピスがどんな日記を書いているか知りませんが、あんまり私達の失態は書かないで下さいね?

それはともかくとして、火星に向かう暇な間にお葬式とかやっちゃおうっていうのはわかるんですが、それで騒動になっちゃうあたり私達らしいといおうかなんといおうか。

後半はお料理大戦らしいんですが・・・

え?アキさんがマジで怒るんですか?

ああ、これってSecond Revengeのラストとは何の関係もありませんのでそのつもりで。



○月#日晴れのち曇り・ラピス記す


こんにちわ。私ラピスラズリ

日記を書き始めて既に10日
・・・え?航海日誌じゃないのかって?
そういう細かいこと言わないの。

ともかく、日記なんて3日で飽きるかと思ってたんだけど、そうでもないらしい。
ナデシコはとにかく書くことが多すぎる。

たとえばこの頃アキトが悩んでいたりするようだ・・・



ナデシコ食堂・厨房


今日もナデシコ食堂は葬式料理を作るので大忙し。
「さぁ、今日の仏さんを確認するよ!
 日本に韓国、ベトナムにタイ・・・」
厨房を仕切るホウメイは張り切って指示を出していた。
現場に目を光らせるのはさすが一流シェフ。
アキトがトムヤムクンに醤油を入れようとしたのを匂いで嗅ぎ取った。

「テンカワ!トムヤムクンには醤油じゃなくてナンプラー!!」
「え?す、済みません!!」
アキトは大急ぎでナンプラーを探しに行った。

ちなみに調理は二班に分かれている。
ホウメイはアキト、サユリ、エリを率いて和洋を
アキはミカコ、ジュンコ、ハルミを率いて中華を作っていた。
アキは一人でも大丈夫なので、ホウメイも任せっきりにしている。

「ナンプラーやーい」
「おいおい、テンカワ。いつまで探してるんだい?」
何時までもうろうろナンプラーを探し回るアキトにあきれるホウメイ
「いえ、それが・・・・」
「料理人たるもの調味料の位置なんて仕事前に覚えておく!
 ほらあそこの棚だよ!」
「あ、はい!ありがとうございます!」
脱兎のごとく取りに行くアキトにホウメイはクスリと笑った。



営業終了後のナデシコ食堂


「お先です」
「お疲れさまでした!」
アキとホウメイガールズ達はホウメイに挨拶をしてアップした。
にしても・・・アキトがいなかった。
「ちょっと、エリちゃん。テンカワは?」
「棚の前で調味料とにらめっこしてましたよ?」

エリの言う通り、アキトは調味料の棚を熱心に眺めていた。
「そんなに珍しいかい?」
「ああ、シェフ。」
アキトに声をかけたのはホウメイだった。
「ええ!こんなにいっぱい調味料があるなんて!
 火星じゃろくな調味料がなかったですから、珍しくて」
「あははは、これだけはわがままを言わせてもらってさ。
 世界中の調味料が揃ってて、どんな料理でも作れる。
 それがナデシコ食堂の自慢さ!」
「でも高級レストランでもないのにこんなに?
 しかも戦艦のレストランで・・・」
「戦艦だからだよ・・・」
アキトの問いにホウメイは少し遠い目で答えた。

少し昔、月との間で小競り合いがあった。
駆け出しのホウメイも戦艦のコックとして働いていた。
何気ない日常・・・でもそれはある日突然起こった。
一人の兵士が重体で運び込まれる。既に手の施しようがない状態であった。
そんな兵士をおもんばかってか、何故かホウメイが呼ばれた。
その兵士はホウメイにこう告げた。

「最後にパエリア食べたい・・・てね」

そのとき、ホウメイはパエリアがなんなのか?
サフランの香りが味の決め手になることすら知らなかった。
中華料理しか作ったことのないホウメイは大急ぎでレシピを引っぱり出し、悪戦苦闘しながらチャーハンの出来損ないみたいなものを差し出した。
その兵士はそれをおいしそうに食べた。
でも・・・食べ終わった後で・・・

「ありがとう。おいしかった。
 でもママの味とは違う・・・」

それがその兵士の最後の言葉となった。
ホウメイは自分の力不足を心の底から悔しがった・・・

「戦艦だからこそ、死ぬときはお袋の味、そしてサフランの香り・・・
 その想いがその棚の調味料さ!」
それがホウメイが戦艦のシェフを志した理由だった。

「俺!もっと上手なコックになります!!」
アキトは感銘してそう叫んだ。自分もホウメイのようなコックになりたかった。
でもホウメイの表情は険しかった。
「お前さんにはもっと大事なことがあるだろう!!」
ホウメイは知っている。
アキトのもう一つの仕事、パイロットという職業は生き残るだけでも大変だということを。
それこそ生き残る術を心血注いで訓練したとしても、不運なだけで死ぬという過酷なものだ。今のアキトには将来コックになろうがなるまいが、パイロットとして生き残ることが最も重要な仕事なのだ。

でも悲しいかなアキトにはその真意が伝わらない。
ただコックとしての自分を否定されたとしか受け取れなかった・・・。



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第5話 ラピスちゃん「航海日誌」<後編>



トレーニングルーム


リョーコ「だりゃ!!!!」
ガイ「うおりゃぁぁぁぁぁ!!!」
アキ「えい・・・」
リョーコ、ガイ「にょええぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜」
ガイ、リョーコの善戦むなしく、アキの前には全く歯が立たなかった。

ちなみにパイロットは総勢6名になったので、現在はフォーメーションの練習をしている。
FWはガイとリョーコ
MFはアキトとヒカル
DFはイズミ
リベロはアキだ。
・・・・サッカーみたいっていうなかれ。

ともかくフォーメーションもくそもFWからしてリベロのアキにおちょくられる現状では組織攻撃はまだまだ無理のようだ。

「しかし・・・またアキト君はへこんでるんですか?」
「あははは・・・」
ヒカルが落ち込んでるアキトのことを機敏に察した。
アキは苦笑する。



トレーニングルーム・訓練後


「どうした?少年」
「アキさん・・・」
落ち込んで黄昏てるアキトにアキが声をかけた。

「やっぱ、俺って中途半端なんすかねぇ・・・」
アキトは思い悩む。
コックになりたい自分
でもパイロットとして火星の人達を助けたい自分
どちらも本当の気持ちだから、余計にどちらも未熟な自分に苛立ちをおぼえるのだ。

「う〜ん。私としちゃ、どっちもがんばれ!としか言い様がないけど」
アキトの悩みにアキはあっさりと答える。
「そ、そんな単純なことなんですか!?」
「そうだと思うけど?」
「でも・・・どっちも半人前だし・・・」
「それはそうだけど・・・どっちも諦めたい?」
「いや・・・それは・・・」
口ごもるアキトに対してアキは優しく諭した。

「どちらかしか出来ない・・・って思いこむのは簡単よ?
 でもね。片っ方を捨てていい事なんて何にもなかった。
 そうやってもう一方を実現させたとしても、切り捨てた方が痛み出すのよ。
 そうした古傷を一生抱えて生きて行かないといけないのよ・・・」
アキは少し悲しげな眼差しを見せた。
「アキさん・・・それって」
「まぁ・・・昔話よ。」
「ごめんなさい・・・」
「それよりも、両方とも切り捨てたくなければ両方頑張ること!
 切り捨てるのはどうしても出来なくなった時でいいんじゃない?」
「・・・・はい!」
「まぁ、差し当たって料理の方をしごいてあげますか」
「よろしくお願いします!」
こうして二人の特訓は始まった。

周りの者が羨むぐらいに。
当然、その事を聞きつけた者が約三名ほどいた事は言うまでもないだろう。



○月%日晴れのち曇り・ラピス記す


死人続出・・・
私も一度天国が見えました・・・
二度とルリ姉の料理は食べません



翌日のナデシコ食堂


その日から仲睦まじく料理の特訓に勤しむアキトとアキの姿を厨房で見ることができた。
当然、その事に反応するのは例の三名であろう。

ユリカ「なんかいい雰囲気よね」
メグミ「確かに・・・お似合いですね」
ルリ「そうですか?」
そうは言いながらもルリもあの二人が羨ましかった。

とはいえ、イチャイチャしていると茶化すことができないくらい二人は料理に真剣だった。
こうして傍目で見ているとそれはヒシヒシと伝わってくる。

メグミ「なんか悔しいけど入り込む余地なし・・・って気が・・・」
ルリ「確かに・・・」
ユリカ「だめよ、あきらめちゃ!!
 私達も料理の似合う女の子になればきっと!!」

三人は思い浮かべる。

『ふふふ、アキトさんたら、やっぱりお料理がお上手ですね』
『そういう○○ちゃんこそ、僕のパートナーにぴったりだよ』
『そんなことありませんよ』
『○○ちゃん、僕と一緒にお店を開かないかい?もちろん、一生・・・』
『え?それって・・・・』

三人ともそれぞれ○○のところに自分の名前を入れて悶えていた。

「よし!お料理の上手な女の子になろう!!」
「おお!!」
かなり安直な理由であるがこうしてお料理大戦が勃発するのであった・・・。



最初のお題・カレーライス


ユリカ「まず最初は簡単なカレーから行きましょう。」
材料のご紹介です。
レトルトパックのカレー、厨房からひったくってきたお釜・・・以上

ジュン「これを調理とはいわないだろうけど・・・まぁ変なものを食わされるよりマシでしょう。」
試食兼審査員(あるいは毒味役)として呼ばれたジュンはテーブルで苦笑した

調理開始!
んであっという間に終了

最初はメグミのお皿
ジュン「う・・・げ、激甘・・・・・・」
メグミ「リンゴと蜂蜜をトローリと入れてみました♪」
ジュン「メグミさん・・・そのカレーって既にリンゴ入ってるんじゃ・・・・」
確かにバー○ンドカレーには入ってたような・・・

次にルリのお皿
ジュン「か、辛い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ルリ「はい、なにせ辛さ5万倍ですから!!」
ジュン「水!!!水!!!」
ルリ「ええっと、通は辛ければ辛いほどおいしいそうです。ですので今回は究極の辛さを追求してみました。」
ジュン「うんちくはいいから・・・・水をくれ・・・」
ルリ「ジュンさん、水を飲むとよけいノドが渇きますよ?」
ジュン「グフ・・・・」

最後にユリカのお皿
ユリカ「どうぞ、召し上がれ♪」
ジュン「召し上がれったって・・・」
そこにあるのはご飯にかかった緑の物体・・・
ジュン「なにこれ?」
ユリカ「なにって・・・カレーだよ」
ジュン「何で緑色なの?」
ユリカ「体のことを考えて緑黄色野菜をふんだんに入れてみました♪」

嘘だ!
絶対に嘘だ!

ジュンがスプーンで緑色の物体を突っつくとプルるんと動いた。まるでスライムみたい・・・。
ユリカ「さぁ食べて食べて♪」
ジュン「う・・・・・ん」
ユリカの悪意のない天真爛漫な瞳で見つめられれるとユリカ服従回路を埋め込まれたジュンには逆らえなかった・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

メグミ「審査する前に気絶されましたね」
ユリカ「よっぽどユリカのお料理がおいしかったんだね♪」
ルリ「いや、そうじゃないと思うんですが・・・」
メグミ「スペアを用意しましたから、次行きましょう」
ユリカ、ルリ「うん」

さっさと次行くなよ・・・あんたら・・・



次のお題・肉じゃが


ユリカ「んじゃ次は家庭料理ということで」
ウリバタケ「いやぁ、美女三人に手作り料理を食べさせてもらえるなんてうれしいねぇ」
知らぬが仏
何も知らないウリバタケは無邪気に出来上がってくる料理を待ちわびていた。

調理終了・・・

最初はルリのお皿
ウリバタケ「ルリちゃん・・・・白いね・・・」
ルリ「でも肉は入ってますけど」
ウリバタケ「スープがたっぷり入ってるんけど・・・」
ルリ「でもジャガイモも入ってますから・・・」
ウリバタケ「タマネギも入ってるねぇ・・・」
ルリ「基本だと伺いました」
ウリバタケ「でもこれって『シチュー』って言うんじゃない?」
ルリ「え?肉じゃがって和風シチューじゃないんですか?」

違います(笑)

次はユリカのお皿
ウリバタケ「・・・・・・・」
ユリカ「どうしました?ウリバタケさん」
ウリバタケ「・・・いやぁジャガイモはどこに行ったのかと・・・」
ユリカ「いっぱい入れましたけど・・・ありませんか?」
ウリバタケ「・・・・・艦長、あんたどのぐらいジャガイモを煮たの?」
ユリカ「味がしみるとおいしいから一昼夜煮込みました♪」
ウリバタケ「・・・・・・」
ジャガイモは形が崩れてどろどろに溶けてしまいましたとさ。

最後はメグミのお皿
ウリバタケ「ほう、今度はやっとまともな見栄えのものが出てきたねぇ♪」
メグミ「でしょ?味も良いはずですよ♪」
ウリバタケ「ほう、ジャガイモも歯ごたえを失わない程度にほっこりしていて、よく味もしみてるね」
メグミ「でしょでしょ♪♪」
ウリバタケ「これは文句なくメグミちゃんが一番おいし・・・・ガリ!」

ガリ?

ウリバタケ「今、なんか変なものをかじった気がするんだけど・・・」
変な触感のジャガイモを口から取り出してまじまじと見るウリバタケ。
ウリバタケ「・・・・・メグミちゃん。」
メグミ「なんです?」
ウリバタケ「つかぬ事聞くけど・・・ジャガイモの芽って取った?」
メグミ「めんどくさいのでやりませんでした♪」
ウリバタケ「・・・・・・・・」

しばらくお待ち下さい・・・・

メグミ「何で吐き出すんですか!!!」
ウリバタケ、お腹を抱えて退場・・・

ジャガイモの芽はちゃんと取ってから食べさせてあげましょう。



最後のお題・マカロニグラタン


ルリ「仕方ありません。最後の試食人を連れてきました」
ラピス「なに?」
ユリカ「ラピスちゃんは何が食べたい?」
ラピス「マカロニグラタン」
メグミ「んじゃ、それ作りましょう♪」
知らぬが仏、哀れラピスの運命や如何に!!(笑)

調理終了・・・

最初はユリカのお皿
ラピス「ハグ・・・・・ガリ!!!!」
ユリカ「どう?おいしい?」
ラピス「・・・・ユリカ、マカロニを煮た?」
ユリカ「なにが?」
ラピス「知らないならいい・・・・ボリボリ!ガリガリ!」
パスタはちゃんと茹でましょう、ユリカさん

次はメグミのお皿
ラピス「ハグ・・・・モグモグ」
メグミ「どう?ラピスちゃん」
ラピス「モグモグモグモグ・・・・・」
メグミ「で?」
ラピス「モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ・・・・・」
メグミ「で、おいしいかな?」
ラピス「・・・・・・・・・・噛み切れない・・・・」
メグミ「そうそう、虫歯にならないようにキシリトールとコシを出すためにガ・・・」
ラピス「言わなくていい。だいたい想像がつくから・・・」
ラピスはとっとと口の中のものを吐き出した。

あんたは○ッテの回し者か!!

最後はルリのお皿
ラピス「ルリ姉・・・・」
ルリ「何ですか?」
ラピス「これ・・・・本当にマカロニ?」
ルリ「本当も何もれっきとしたマカロニですよ」
ラピス「でも・・・・動いてるよ?マカロニ・・・」
ルリ「アツアツですから」
ラピス「でも・・・なんか口がパクパク動いてるみたいなんだけど・・・」
ルリ「出来立てですからね、動きもしますよ」
ラピス「でも後ろに蛔虫のホルマリン漬けが入ってたみたいなシリンダーがあるのは気のせい?」
ルリ「気のせいですよ。それよりも冷めないうちに召し上がれ♪」
ラピス「う・・・・うん・・・」

パク!

もぞもぞもぞ!!!!!!!!!!

メグミ「ルリちゃん。マカロニってのは小麦粉から作るのよ」
ルリ「そうだったんですか?てっきりこういう形の生物かと・・・」
ラピス「お、お腹の中で動いてる・・・・」
その後ラピスは腹下しを飲んで事なきを得た・・・。

結局、みんなから厳重注意を受けて三人のお料理大戦は終幕するのであった(苦笑)



○月@日雷雨・ラピス記す


火星も目前
今日は『反乱』なるものが起こった。

ちょっとだけアキが怖かった・・・



ナデシコ・ブリッジ


「艦長、早く来て下さい!反乱です〜〜」
『はい?』
メグミの情けない声にユリカは間抜けに聞き返した・・・。

「我々はネルガルの悪辣なやり方に断固抗議する!!!」
整備班の面々は格納庫でシュプレヒコールをあげていた。
手には鉄パイプなどの武器を構えて臨戦態勢。

ユリカとアキトが慌てて駆けつけると、そこにはメグミやミナト、ゴートにプロス、果てにはルリやラピスに対して銃を突きつけている反乱分子の姿があった。

「責任者出てこい!!」
「メグちゃん、ゴメンね♪」
ウリバタケは気焔をあげ、ヒカルは似つかわしくないほどの朗らかな声でブリッジクルーに銃を突きつけていた。

「何事ですか?」
ユリカは反乱分子の主要人物ウリバタケにリョーコ、ヒカル、イズミらに声をかけた。
ウリバタケ「どうしたもこうしたもない!この契約書を見てみろ!!」
ユリカ「へ?」

差し出された契約書・・・それはクルーがナデシコに搭乗する時にサインさせられたものだった。
ユリカ「え〜っと・・・」
リョーコ「その一番最後の一番小さい文字を読んでみろ!」
ユリカ「・・・・男女間の交際は禁止いたしませんが、風紀維持の為に握手以外の男女の接触は禁止致します・・・・なんですか、これ?」
ヒカル「読んでの通りよ」
ウリバタケ「男と女が恋愛したらおてて繋いでだけで済むと思うか!?」
ユリカ「まぁ・・・」
ウリバタケ「俺達ゃ、管理されたペットじゃないんだ!そんなこと考えてまで恋愛なんか出来るか!!!!!」

まぁ、気持ちもわからないでもない。
しかし・・・

「でもそれがエスカレートしていったらどうします?」
別の方からそう声をかけたのはプロスペクターであった。

ウリバタケ「貴様!!!」
プロス「仮に子供が出来たらどうします?子供を抱えながら戦争しますか?」
ウリバタケ「うるせえ!!そんな去勢された生活するくらいなら、女房の尻の下にいる方がマシだ!!」
プロス「でも契約書にサインされた以上・・・」
ウリバタケ「黙れ!これが見えないか!!」
契約書を突きつけるプロスにウリバタケやリョーコ達が銃を突きつける!!

ギン!!!!

一触即発の空気の中、敏感に反応したのはまだ幼い多感な少女であった。
「・・・」
「ラピス?」
ルリにしがみ付くラピス。
ルリなどはあまりの馬鹿馬鹿しさに呆れる気持ちのほうが強いのだが、この幼い少女にとってそうではなかった・・・。

「はいはい!!もうそのへんにしましょう♪」
「あ、アキさん。いいところに!」
ユリカはホッとした声にみんなの視線がブリッジの入り口に集まった。
タイミングを測ったように朗らかな声でブリッジに入って来たのはアマガワ・アキであった。
彼女はさっそく殺気立ったウリバタケやリョーコ達を説得にかかった。

アキ「はいはい!もう物騒なものは仕舞って♪」
リョーコ「うるせえ!お前は黙ってろ!」
アキ「まぁまぁ興奮しないで。話し合えばわかるから・・・」
ウリバタケ「こんな隅っこに読めもしない文字で書くような奴らが話し合いに応じる訳なかろう!!」
アキ「だからって銃を持ちだして反乱なんて穏やかじゃないよ?」
ヒカル「でもこうしないと話聞いてくれなさそうだし〜」
イズミ「契約も暴力!」
アキ「まぁ、そう言わずに穏便に・・・」
リョーコ「なんだよ!あんたネルガルの回し者か!!」
アキ「そうじゃないけど・・・」
リョーコ「んじゃ口出しすんな!!こちとら頭にきてるんだ!
 撃たれたくなかったらすっこんでろい!!!!」

カチン!

空気が一瞬にして変わった。
それを察したのは、この前ムネタケ造反時にブリッジに居合わせた面々
ミナト『地雷・・・・踏んだ?』
メグミ『踏みましたね。思いっきり』
ルリ『はい、バカ4人血祭り決定・・・』

アキの後ろでジュンらが必死にブロックサインを送るがそんなことウリバタケたちは気づくはずもない。必死に止めろとサインを送ってもリョーコ達はアキに対する罵詈雑言を止めようとしなかった。

だが・・・・

「ほう・・・・この私に銃を向けるって?」
ギロ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

爆発的に脹れ上がる殺気!!!!

ウリバタケ「ぐ・・・・」
思わず後ずさるウリバタケ達。だがもう遅い。

「別に私はどうでもいいんだよ。惚れた腫れたなんて。
 反乱騒ぎをするくらいなら、規則やぶって隠れてイチャつきゃいいじゃないの。
 正当な権利として欲しいなら普通に交渉すればいいじゃない。
 それでもどうにもならなきゃこの艦を降りれば済む事じゃない。
 女房の尻の下のほうがマシなんでしょ?」
「い、いや・・・・」
アキの凄むでもないセリフにウリバタケは気圧される。

「でもそれってそんなに重要なの?
 こんな幼い子供たちに銃を突きつけてまで要求しなきゃいけない事なの?
 答えてみな、イズミちゃん。」
「いや・・・それは・・・」
イズミは刺すようなアキの視線をまともに受けて怖じ気づく。

「あんたら、銃で脅されるってどれだけ恐いか知ってる?
 知らないでしょう。
 暴力で脅かされるってどれだけ恐いか知らないから無自覚にそんなことが出来るんだよ」
「それは・・・その・・・」
ヒカルは初めて殺気というものをぶつけられて震え出した。

それはもっともっと未来のお話し
一つの暴力があった。
一人の少女が感情をなくすぐらい・・・
一人の青年が五感を奪われるぐらい・・・
そして彼等に暴力を振るった者たちは決して自覚などない
正義という名の美名の為に払われた些細な犠牲
そんな言葉で片付けられた暴力がどれほど恐ろしいか!!!

ずい・・・
アキはリョーコに歩み寄る。
「く、来るな・・・」
「そうそう、私を撃つつもりなら体は止めた方がいいわよ。
 私のインナースーツは一応防弾機能があるから。とはいっても当たると痛いけどね
 体に当てるつもりなら一撃で動けなくする事。
 でないと、リベンジ食らうわよん♪」
銃を向けられても何でもないように笑って言うアキ。
むしろ嬉しそうだ。
「じ、じゃ・・・あたまを・・・」
「頭を狙うのは良い選択だけど、当てるのって結構難しいのよね。
 ちょっと体を動かすだけでかわされちゃうし。」
「う、うるせえ・・・」
「そうそう、知ってる?
 頭を拳銃で吹き飛ばされるとね、脳味噌が後ろに飛び散ってそれは凄惨なのよ。
 まぁアレも慣れると飛び散る瞬間がなかなか美しいんだけどね」
「て、てめぇ!」
アキのまるで殺人狂のような狂った笑顔を見てリョーコは嫌悪をあらわにする。でもアキにはそれがちゃんちゃらおかしかった。
「あら、銃を人に向ける以上、殺す事を覚悟してるんでしょ?
 お芝居じゃあるまいし、人間を奇麗に殺せるなんて思ってないでしょうね・・・」
「・・・・・・」
ギロリ
アキは鋭い瞳で相手を睨み付ける。
人の心に潜む最も深い闇を見せつけられてリョーコは声も出なかった。

カチャ・・・

アキは懐から静かにリボルバーを抜き放つ。

「さぁ、誰からやる?」
アキは銃口をまずウリバタケに向ける。
その矛先はぴったり眉間の中央。
殺気と相まってウリバタケの膝はガクガク震えて、やがてへたり込んだ。

「それともあなたたち?」
次にヒカル、イズミに向けていく。
彼女達も銃を落として手をあげてへたり込んだ。

「あなたはどうする?スバル・リョーコちゃん。
 邪魔したら撃つんでしょ?」
アキは真剣そのものだ。例え味方だろうがなんだろうが、絶対に引金を引く。
そしてどのようにしてかわそうとも必ず打ち抜かれるだろう。絶対に外すことなく。
相手はプロだ。しかも人殺しの!!!

「あ・・・・・ああ・・・・」
震えるように声を絞り出すリョーコ。
でも銃を構えて立つだけで彼女の気力は精一杯だった。

銃を構え合うリョーコとアキ、
そして永遠とも思える幾ばくかの緊迫を伴った静寂・・・・

しかしそれを破ったのは幼い少女の声だった。
「アキ、もういいよ」
「ラピスちゃん・・・」
「もういいから・・・」
ラピスは必死にアキを止めた。自分の好きなあのアキがどこかに行ってしまわないように。

「・・・・・・もう大丈夫だから、安心して」
次の瞬間、殺気は嘘のように消えた。彼女はいつものアキに戻ってラピスの頭を撫でた。

それからアキはやさしくリョーコ達に近づき、彼等の手から銃を取り上げた。
「どう?
 銃を突きつけられるってこのぐらい恐いんだよ。
 ラピスちゃんがどれだけ恐かったか、わかった?」

コクン・・・
彼等は素直に頷いた。

あっけない幕引きであった



そして・・・


この後、すぐに蜥蜴達からの攻撃があって本格的な戦闘があった。
まぁ、リョーコ達もなんとか立ち直り、ちゃんと戦闘に加わったらしい。

出撃前にアキに「嫌いにならないから」っていったら少し苦笑いをして頭を撫でてくれた。
怒ったアキは恐かったけど、撫でてくれた手はとてもやさしかったから、私はアキを絶対に嫌いにならないと思う。

「みんなアキの事嫌いにならないかな?」ってアキトに聞いたら、
「みんなラピスちゃんと一緒だよ。嫌いになんかなったりするもんか。」
って言ってくれた。

それがずっと続くといいな・・・今日はそんな風に感じました。

    ナデシコ航海日誌
          ナデシコ サブオペレータ ラピス・ラズリ記す



ポストスプリクト


ということで黒プリ5話をお届けしました。
なかなかギャグ&シリアスということでおもしろい話になったんじゃないかなと思っております(苦笑)
今回はちょっと趣が変わってアキトの成長記ではなく、アキの素顔が本編に入っているという・・・そんな構成になっております。たぶん次回もこんな感じです(爆)

お葬式は早めにケリを付けました。ラストがあんなんになるので。しかもアキトのパイロットとしての悩みは前回でほとんどケリが付いているのでああいう感じで終わらせました。

ホウメイの昔話の件は尺的には厳しく適当にもじりましたが、ほぼフルサイズいれました。個人的にも好きなエピソードですし、きっとアキトにも重要な話だと思いましたので。

お料理大戦は・・・無理があるのはわかってます。本公開までに良いネタがあったら教えて下さい。(あの虫の方がもっとマカロニに似ているとか、ジャガイモの芽を食べたらどうなるかとか(爆))

最後のアキの件は・・・ダークネスですが黒プリはこういうのも入れていきます。どうも完全なギャグだけにはならないようですが、ナデシコはやっぱりそういうものがバランス良く入っていると思いますので

ということでもしもおもしろかったなら感想をお願いします。
次回は7万ヒット(もしくは自サイト4万ヒット)ぐらいでお会いしましょう。

では!

Special Thanks
・闇影 様
・導 様
・梟 様
・紫焔 様
・DDt 様
・AUTUM 様
・kakikaki 様