アバン


猪突猛進娘に、コミケ娘、んでもってダジャレ娘、まぁパイロットはアキさん一人でも十分って話もあるんですが、史実のごとく三人娘も合流したわけで。
まぁ、どこぞの会長秘書さんや女ガイさんが着いてこなかっただけでもマシなんでしょうけど・・・。

ともかく、アキトさんの悩みもとりあえずは解消した模様
だって本当の居場所なんてどこにもない。
みんな「そこ」に必死にしがみついているだけなのですから。

ああ、これってSecond Revengeのラストとは何の関係もありませんのでそのつもりで。



○月×日晴れ・ラピス記す


こんにちは。私はラピス・ラズリ。
ネルガルの研究所で生まれた
私はアキの目、
私はアキの手・・・・・・

え?なに?そんなところはいらない?
ごめん、アキ。私、日記なんて書いたことないから。

んじゃ、最初から。

こんにちは。私はラピス・ラズリ。
本来航海日誌は艦長が書くモノで、今は忙しいらしく代わりになぜかルリ姉が書いてる。
でもそのルリ姉もなんだか忙しそうなのでラピスが書くことになった。

え?なんで宇宙で晴れなんだって?
日記って晴れって書くのが決まりじゃないの?
そうじゃない?
でも天気なんてわかんないもん。
だからラピスがその日の気分で決める!

でもやっぱり机に向かったら何を書いたらいいのかわからないんでアキに相談したら
「やっぱり日記は日記帳に鉛筆で書くのがいいよね」
とか言われて日記帳と鉛筆をもらった。
日記帳は鍵付きの赤くてかわいいやつ、鉛筆はオモイカネマーク入りのかわいい(?)やつだ。

なんか違う気がするけど・・・まぁいいか。

「うう、なんかミミズがのたうったような文字・・・・」

なにアキ、おかしい?

「ラピスちゃん・・・ひょっとして字を書いたことないの?」

そんなことないけど、普段はオモイカネ使ってるし、どっちかというとそっちを教わった。

「しかたない。今晩から私が寝る前に字を教えてあげましょう・・・」

お泊まりしていい??

「いいよ」

やった!!



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
第5話 ラピスちゃん「航海日誌」<前編>



ブリッジ・夜班


「へぇ、ラピラピはアキさんのお部屋にお泊まりしに行くんだ♪」
「いや・・・本当は字を教えてもらいに行くだけなんだけど・・・」
「そうか、そうか、んじゃおめかししないとね♪」
「・・・・・・ミナト、なんか変なこと考えてない?」
ラピスの報告に一人ミナトは悦には入っていろんな考えを巡らしている。

あ、ちなみにただいまブリッジは夜。
宇宙なんで夜って実感はないけど、日本時間では今は夜らしい。
ブリッジは3交代。
朝班(6:00〜15:00)
夜班(15:00〜23:00)
深夜班(23:00〜6:00)
他は通常勤務。(9:00〜18:00)
ちなみに深夜班は別名【当直班】、皆持ち回りでやるので嫌がられている。・・・どこかのファーストフードの勤務シフトみたいだけど気にしないで。

ここ最近のブリッジのローテーションは
朝班はユリカ、メグミ、ルリ姉
夜班はジュン、ミナト、あたしとなっている。
理由は単純。
朝の出前はアキトが、夜の出前はアキがやってるから。
食堂はアキトが朝班、アキが夜班のローテーションらしい。

ちなみに朝の光景は・・・

アキト「へい!お待ち!!」
ユリカ「アキト♪やっぱり私に会いに来てくれたのね♪」
メグミ「何言ってるんですか!アキトさんは私に会いに来てくれたんですよ!
 ね〜〜アキトさん♪」
アキト「何言ってるんだよ、お前ら。それよりもご飯冷めるぞ!
 はい、ルリちゃんはチキンライスだよね?」
ルリ「ええ」
ルリはアキトの手をしっかり握ってチキンライスのお皿を受け取った。

ユリカ「ああ!!ルリちゃん抜け駆けしたぁ〜〜!!」
メグミ「ああん!!私もその手をギュってしたい〜〜!!」
アキト「お、お前らなぁ・・・
 冷めるからトットと食っちまえ!!!!」
ユリカ&メグミ「はい!!」
ルリ「バカばっか・・・」
そういいながら半歩リードで嬉しそうなルリであったりする・・・

・・・てな感じ。オモイカネが教えてくれた。

「でもさぁ、ウチのブリッジ要員ってみんなからどう呼ばれているか知ってる?」
ジュンがやおら話しかけてきた。
ミナトとわたしが相手だからそんな話題しかないらしい。
「なにが?」
「朝班は別名『色気班』、夜班は別名『食い気班』・・・なんだって」
「言い得て妙よねぇ〜」
「ミナトさん・・・それ、誉められてないですよ〜〜」
「バカみたい」

私は溜め息をついた。私がアキを好きなのは別に食べ物に釣られたわけじゃ・・・

「ちわ〜出前よん♪」

あ、アキだ♪
ジュル・・・・

「そういうラピラピだって、ヨダレ垂れてるよ♪」

う、うそ!!!

「うそピョン♪
 う〜ん!ラピラピ可愛い♪」
ギュ!!!!
「ミナト苦しい・・・」
ミナトに抱きしめられる私・・・
勘弁して。



○月□日曇り・ラピス記す


ナデシコはただいま暇。

火星への航海軌道に乗ったものの、1ヶ月もの間そのまま直進らしい。
たまに蜥蜴さん達がご挨拶程度に攻撃をかけてくるが、ディストーションフィールドで簡単に弾いてしまう。ルリ姉曰く「自分たちの制空権内である火星に到着するまでは挨拶程度の攻撃しかしてこないので特に迎撃の必要はない」そうだ。
結局オペレータのやる事なんて皆無に等しい。

んで、その間にナデシコでは「お葬式」なるものをやってしまおうということになったらしい。

でもお葬式ってなに?



ブリッジ・朝班


ユリカ「う〜ん♪
 今日もアキトの愛情いっぱいの紅鮭定食(納豆付き)はおいしそう♪」
メグミ「私のアキトさんお手製ブレックファースト(ホットケーキセット)の方がもっとおいしいですよ!」

ビビビビビ!!!

火花を飛び散らせながら張り合う二人

ルリ「ああ、アキトさんはチャーハン専任なので、たぶんホウメイさんが作ったんだと思いますよ、それ」
ユリカ、メグミ「え?」
と、ちゃっかりチャーハンを食するルリ。

・・・・シクシク泣きながら朝食を食べる二人であった。
と、そこにウインドウが開く。

『艦長、まだそんなところにおられたのですか?』
ウインドウの送り主はプロスペクターであった。
ユリカ「え?もうそんな時間?」
プロス「本日は頑張って10件はこなしますので。お早めに。」
ユリカ「ううう〜〜」
メグミ、ルリ「頑張ってきて下さい〜〜♪」

とぼとぼブリッジを出ていくユリカ。
何でナデシコの艦長がコロニーL2サツキミドリ2号の死者のお葬式を取り仕切らなければいけないの?と疑問を払拭できないままの退室であった。

ユリカが退出したところを見計らって、メグミとルリはにんまりと笑った。

ルリ「メグミさんも結構ワルですね?」
メグミ「何のこと?ルリちゃん。」
ルリ「無宗派の人達が多かったんですから、別に合同葬儀にすればお葬式の数なんて半分に減らせるのに・・・」
メグミ「でも、経歴を見たらそれらしい宗教をやってたみたいだから、それなりにかなえてあげないとね♪」
ルリ「浄土真宗や日蓮宗なんてのはいいとして・・・なんです?このボンゴボンゴ教って?」
メグミ「・・・・さぁ?(笑)」

ライバルユリカのアキト遭遇の時間を削るために葬式の希望を無理矢理掘り起こしている二人であった・・・。



告別式会場


さて、サツキミドリの人達を何人かは救えたとはいえ、圧倒的に死んでしまった人が多かったりする。
まぁ、ご遺体全員分が宇宙の藻屑に消える・・・って事もなかったので、ご遺体のある分は地球で葬儀を行おうということになった。
んで、遺体のない分はなぜかナデシコで葬儀を執り行うことになるのだが・・・。

「ネルガルには社員特典として福利厚生に力を入れておりまして、はい!」
とはプロスの言葉だが、それでナデシコが葬儀をやる理由にはならない。

理由はたぶん単純なのだろう。

「だって、ナデシコって火星に着くまでやることないんでしょ?
 だったら給料をただ払うのももったいないからお葬式ぐらいやってもらえば?」
って某会長の一言で白羽の矢がユリカに当たったようだ。

どうでもいいけど、いい加減な理由・・・

当然、当の本人にやる気があるはずもなく

「一枚だ、二枚だ、三枚だ、お終いだ〜・・・・・・」
お経も適当に唱えるユリカであった。

「お終いじゃありませんよ!艦長」
グイ!!とユリカの手を引くプロス。

さっそく次の会場に引っ張られていった・・・



ブリッジ・朝班


ユリカ「ふぇぇぇぇ〜〜疲れたよ」
ルリ「艦長、頭、頭・・・」
ユリカのかぶり物がゴトン!と床に落ちた。

ユリカ「ルリちゃん・・・お葬式ってあとどれだけやるんだろうね?」
ルリ「こんだけです」

ピ!

ユリカ「ゲゲゲゲゲ!!!!」
山ほど開くウインドウに驚くユリカ。
そのそれぞれが個別の葬式希望者であった。

ユリカ「こんなにいっぱい?」
ルリ「ええ、こんなにいっぱい」
ユリカ「こんなに?」
ルリ「ええ、それだけいっぱい亡くなったんですね・・・」
しみじみ言うルリだが、ユリカは目に涙を溜めていた。
ユリカ「こんなにいっぱい、こんなにいっぱい・・・・」

メグミ「あと10日はお葬式しないと終わりませんね」

ピキーン!!!!

ユリカ「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!」
ユリカは泣き叫びながらブリッジを飛び出して行った。

ルリ「メグミさん・・・やっぱり・・・」
メグミ「なに?」
ルリ「かわいそうですよ」
メグミ「そうかなぁ・・・」
ルリ「かわいそうですよ」
メグミ「そうかなぁ・・・」
ルリ「かわいそうですよ」
メグミ「そうかなぁ・・・」
ルリ「かわいそうですよ」
メグミ「そっか」
メグミはため息をついてつぶやいた。
「・・・・・仕方ないじゃない。あっちには幼なじみって武器があるんだから・・・」

二人ともさすがに良心の呵責があるらしい。
でも後程因果応報が自分達にもめぐってくるとは思ってもいなかった・・・。



夜・アキの自室


ピンポン!!
『アキ・・・来たよ』
「ああ、入っておいで」
インターホンからはラピスの声が聞こえたので、アキはラピスに部屋へ入るように促した。

「今日は遅かったね・・・・って、ゲ!!!」
しかし扉が開いた瞬間にアキは絶句した。

「アキ・・・・可愛い?」

ピンク・・・いや紫?
て、適度に透けている・・・
フリルをふんだんに使ったゴージャスなネグリジェ姿・・・・
無論、ラピスの姿である・・・
その姿で小首を傾げて悩ましげに見上げるラピス
大抵の男なら一発でノックアウトだろう。

・・・ちょっと鼻血が出そうになるアキ。

アキ「ラピスちゃん・・・その格好は一体・・・」
ラピス「ミナトがおめかしして行けって貸してくれた」
ミナト「そうなのよ♪かわいいでしょ?」
そういいながら乱入してくるミナト!!

アキ「ミナトさん・・・あなたって人は・・・」
ミナト「どうどう?いいでしょ♪
 妖精をイメージしてみたの!ぴったりでしょ♪
 私のお古を夜なべして手直しして良かったわ♪」
呆れるアキに構わずミナトはラピスがいかに可愛いかを力説し出した。

ミナト「そうなのよ♪どう?ティンカーベルみたいでしょ♪
 結構苦労したのよ。
 可愛さを残しながらも、ラピラピの幼い妖艶さを保つ為にネグリジェの寸法直しは細心の注意を払ったわ。
 今ね、天使の羽も作ってるのよ。これをつけるとさらに可愛さが倍増するのよ・・・」
アキ「・・・・ミナトさん」
アキが俯いたまま、ミナトの言葉を遮った。少し怒り心頭である。
ミナト「なに?」
アキ「すぐに着替えさせて下さい・・・」
ミナト「なんで!?可愛いでしょう?」
アキ「・・・・・・・おかずカット(ボソ)」

ガーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!

ミナト「すみませんでした。許して下さい・・・」
ミナトは土下座してアキに謝った。アキの料理には絶対服従のミナトであった・・・。

だが、時は既に遅く・・・

ミカコ「アキさん!!聞きましたよ♪
 ラピスちゃんがお泊りするんですよね♪
 私達も一緒に泊めて下さい♪
 女の子同士でパジャマパーティーしましょう♪♪♪♪」
と、ホウメイガールズのミカコとジュンコとハルミがアキの部屋の扉を開けて入ってきた。

しかし・・・・・
彼女達の見たものは・・・

ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!

ジュンコ「・・・ぴ、ピンクのおネグ・・・・」
ハルミ「ま、負けた・・・」
ミカコ「大丈夫よ!たしかサユリちゃんのお部屋にアレに負けないぐらいのスケスケのおネグがあったわ!!!」
ミカコ、ジュンコ、ハルミ「待ってて下さい、アキさん!!!ラピスちゃんに負けないように着飾ってきます!!!!!!!!」
アキ「頼むから止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

その後、ホウメイガールズ達がおネグであらわれたかどうかは定かではない(笑)



○月△日雨・ラピス記す


今日もお葬式は続く。
何かよくわからないけど、頭数だからといわれて黒い服を着て式に出席した。
最前列でユリカが何かしているけど、仮装大会?コスプレ?

なんか面白い格好をしてはしゃいでいた。

ルリ姉曰く「ヤケですね・・・あれは」
・・・だそうだ。
そういえばどことなく目が空ろだ。

まぁ、ユリカは見ていて飽きないし、葬式料理はおいしいから良しとしよう。



通路


ジュン「今日はあと5件はこなすよ!!」
ユリカ「ええええええええ!!」
既にヘロヘロのユリカはたまらず声をあげる。
プロス「このままでは火星につくまでに全ての方のお葬式が終わりませんので、はい」
プロスに淡々といわれても、ユリカのモチベーションが上がる訳もなかった。
ユリカ「最近、アキトとあってないし、お話ししてないし・・・」
モチベーションは下がる一方であった。

と、そこに・・・

アキト「おら!退け退け!!」
ユリカ「あ!アキトだ!
 アキト!アキト!アキト!!」
アキト「退けっていってるだろう!!!」

ベシ・・・・・
あ、ユリカがアキトの押しているカーゴに轢かれた・・・。

ユリカ「・・・・・ひどいよアキト・・・」
ユリカは轢かれた当たりをさすりながらグシグシ泣き出した。
だが、立ち直りが早いのもユリカであった。

ジュン「おいユリカ、大丈夫かい・・・」
ユリカ「そうよ!アレはアキトの激励なんだわ!!」
ジュン「ゆ、ユリカ?」
ユリカ「『ユリカ、しっかりやれ!!』という彼なりの励ましなんだわ!!
 うん、私頑張る!!そして晴れてアキトとお話しするのよ!!!」
ジュン「ゆ、ユリカ・・・・」
慰めてポイントをあげる機会すら与えてもらえないジュンであった・・・。



ブリッジ・夜班


ユリカ「やっぱり疲れたよ〜〜」
ラピス「ユリカ・・・頭、頭」
ユリカのかぶり物がゴトン!と床に落ちた。

ユリカ「やっぱりひとめ見ただけじゃ、アキトパワーは半日しか持たないよ〜〜」
ラピス「・・・疲れたなら帰って寝れば?」
ユリカの愚痴を一刀両断で切り去るラピス。

「ちわ〜〜出前です」
そこにそう言って出前に来たのはアキトであった。
「え?」
意外な事に驚くユリカ。
アキトは朝の出前のはずだ。
なのに夜に出前にくるなんて・・・

「やっぱりアキトは私に会いに来てくれたのね♪」
「んなわけないだろ!!
 だぁぁぁぁぁ!!抱きつくな!!」
途端に元気になったユリカはアキトに抱きついた。

「でもアキト君がなんで出前に?いつもはアキさんじゃ・・・」
ミナトは不思議そうに尋ねた。
「いや、アキさんが用事があるからって・・・」
「アキト、私のグラタン♪」
「はい、ラピスちゃん」
「♪」
アキトはオカモチからラピスのマカロニグラタンを取り出してあげながら答えた。

アキト「熱いから気をつけてね」
ラピス「うん♪」
ミナト「ねぇ、アキト君・・・・・あ、あたしのは?」
アキト「大丈夫ですよ。おかずはちゃんとありますから」
ミナト「良かった〜〜♪
 本当におかず抜きだったらどうしようかと思っちゃった♪」
アキト「はい、ふりかけ」

ミナトのテーブルには山盛りの御飯とふりかけだけが置かれた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ミナト「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!
 私が悪かった!悪かったから許して!!!
 ふりかけ定食なんていや!!!」
アキト「じょ、冗談ですよ〜〜アキさんがやれって!!!」
泣き叫ぶミナトを必死になだめるアキト。
ミナトの気持ちもわからんではないが、
アキの恐さを思い知るミナトであった・・・。

ユリカ「ねぇ、アキト・・・・私のは?」
物欲しそうに取り出されたミナトの本当のおかずをじっと見つめるユリカ。
アキト「っうか、お前注文したのか?」
ユリカ「・・・・・・・ううん」
アキトの言葉に途端にがっかりするユリカ。
アキトパワーがエンプティー状態のユリカには結構きつい言葉だった。

「・・・・・ほらよ」
しょぼくれるユリカに、アキトは少し照れながら小さな包みをユリカに差し出した。
ユリカ「なに、これ?」
アキト「開けりゃわかるよ」

開けてみると、それは可愛いお弁当箱だった。
ユリカ「アキト・・・・」
アキト「言っとくけど、アキさんに言われたから作っただけだからな!
 ユリカが働きづくめでお腹ペコペコだって言うから・・・
 それ以上の他意はないからな!!」
ユリカ「・・・・」
少し照れてアキトは続ける。

アキト「その・・・・なんだ・・・・
 これぐらいしかしてやれないけど・・・
 頑張れよ」
ユリカ「アキト・・・・・うん!頑張る!!!」

その話を聞いたルリとメグミは泣いて口惜しがったらしい・・・(笑)



アキの自室・バスルーム


アキ「ふう、極楽極楽♪」
ラピス「極楽極楽♪」
ワケもわからずアキのセリフを繰り返すラピス。
アキとラピスは二人一緒にお風呂に入っていた。
お泊りに来たラピスの楽しみの一つである。

ラピス「そう言えばミナトが泣いて謝ってたよ」
アキ「ははは・・・すこし厳しかったかな?」
ラピス「それで、ユリカが元気になってアキトにしがみついていた」
アキ「ははは、それは良かったね。ちゃんと日記につけておかないと」
ラピスは今日一日の事を事細かにアキに話そうとする。アキもニコニコしながら話を聞いてくれるのでラピスは余計嬉しくなって話してしまうのだ。

でも、ラピスはふといつも気になっている事を尋ねた。
「ねぇ、アキ・・・」
「なに?ラピスちゃん」
「アキはなんでお風呂の中までバイザーをかけてるの?」
「・・・・・」
途端にアキは暗い表情になる。ラピスは機敏にそれを察知した。
「なにか私イヤな事聞いた?」
「ううん、そうじゃないのよ。」

アキはちょっとだけバイザーを外してラピスに素顔を見せた。
「あ・・・・目が・・・」
少し白濁とした瞳
開ききった瞳孔
焦点の定まっていない瞳・・・
ラピスの表情が変わるとすぐにバイザーをかけなおす。
「うん、実はね、私の目ってあんまりよく見えないんだ・・・」
「・・・ごめん」
「気にしなくて良いのよ。バイザーをかけてる分には普通の人と同じように見えるから」
少し微笑んで答えるアキ。だが、やはりその声はどこか切ない。

「んじゃ・・・やっぱりこの体の傷は・・・」
ラピスはアキの肌を指で撫でる。
そこにはもう消えないであろう、無数の傷・・・。
多分、アキがいつも全身を覆うようなインナースーツを着ているのはこの傷を隠す為。
まだ幸福な世界しか知らないラピスにとって、その傷がどんな風にして付いたか想像することすら出来なかったが、痛々しい事だけは実感できた。

自分にこれだけの傷があったら・・・・

考えるだけでもゾッとする。

「恐い?」
アキはそんなラピスの心情を察するかのように尋ねた。
「え?」
「こんなに傷のある女って気味悪いでしょ?」
「ううん!!そんなことない!
 そんなこと・・・」
「無理しなくてもいいのよ。
 実際、こんなの見せられたら恐いだろうし。
 だいたいの人は私の過去を勘繰るでしょうから・・・」

アキは少し悲しい顔をして答えた。
アキのいつもやさしい笑顔
でもどこかつくられた笑顔
多分それは、昔の自分がすごく辛かったから
無理にでも笑わなければ、にじみ出る辛さや悲しさや憎しみで他人を傷つけてしまいかねないから。
だからアキはやさしいんだ。

いや、やさしいフリをするんだ・・・

人懐っこそうに見えていつも他人と距離を取っているアキ
スーパーレディなのに、みんなから愛されているのに、実は誰にも心を開いていないアキ。
考えてみれば誰もアキの素顔は知らない。
どこから来て、何をしにきたのか誰も知らない。

でも、でも・・・

私やアキト、それにルリ姉にはやさしくしてくれる。
それは多分、本当だと思うから・・・

「大丈夫・・・ラピスはアキの事、嫌いにならないから」
「ありがとう」
アキはほんの少しだけ微笑んでくれた・・・。



アキの自室・ベット


そのあと、ラピスはアキの膝枕で眠りについた。
お風呂の後の火照った肌を冷やす為、アキはウチワでラピスを扇ぐ。
「絶対に嫌いにならないから・・・」
「はいはい・・・」
アキはラピスの寝言に嬉しく思う。

ずっと未来の出来事・・・
まだアキが黒百合と呼ばれた頃、
その時もラピスは同じ事を言ってくれた。

だから・・・

願わくばこの子があんなつらい思いをせずにすみますように・・・

アキはそう願いながらラピスの寝顔を眺めていた・・・



○月○日快晴・ラピス記す


ユリカは今日も張り切っていた。
「さぁ!今日もバリバリお葬式やっちゃいますよ♪」
バリバリお葬式をやるなんて・・・へんな表現

それはともかく、その日から変わったことといえば・・・

ルリ「・・・・・(ネコネコ教の服)」
メグミ「・・・・・(クマクマ教の服)」
ユリカ「(イヌイヌ教の服で)皆さん!!今日も一日頑張りましょう♪」
ルリ姉とメグミは数をこなす為にユリカと一緒にお葬式のお手伝いをする事になった。

アキトのお弁当か
お葬式のコスプレか

理性より恋愛の方が勝ったらしい。
私だったら絶対にやらないけど

大人ってよくわからない。
ほんと、バカみたい・・・

ってことで後編に続きます。



ポストスプリクト


取り敢えず前編ですので前回と同様にポストスプリクトは女アキトことアマガワ・アキさんへのインタビューという形式に変えさせていただきます。

−アキさん、今回のお話しで目がよく見えないとか、体に傷があるとかって本当なんですか?

アキ「え?一応は本当みたいだけど・・・ひょっとしたらナンチャッテかもしないよ」

−って言いますと?

アキ「例えばバイザーをずっとかけていないと素顔でアキトと似ているってバレちゃうかもしれないじゃないですか」

−そ、そういうことですか?

アキ「迷ってるんですよ。体に傷があればみんなとお風呂に入らなくても済むじゃないですか。」

−ほう、そうだったんですか。やっぱり、体は女になってもやっぱり恥ずかしいですか?

アキ「そりゃ・・・・ねぇ?」

−その割りにはラピスと一緒にお風呂に入っていましたね。

アキ「ギク!」

−実は黒百合の頃も同じようにやってたんで何の抵抗もないのかと・・・

アキ「いいかげんそのネタはやめんか!!!!(木連式柔炸裂!!)」

−・・・・・・というわけで後編をどうぞ。

Special Thanks!
・ふぇるみおん様
・DDt 様
・AUTUM 様
・AKF-11 様
・英 貴也 様