アバン


ナデシコは火星へと順調に航行中。
これはその時に起こった事件のお話です。
時期とか人物関係とか設定とか・・・を深く考えちゃ駄目ですのでそのつもりで。

ああ、これって黒プリの三次創作だけど本編とは全く関係ないの でそのつもりで〜






機動戦艦ナデシコSS 黒プリ勝手に外伝


策謀


written by k-siki






ナデシコのメインクルーはエンジンルームに集まっていた。
「何で誰も今まで気付かなかったんだ!」
少し語気を荒くしてゴート=ホーリが周りに向かって当り散らす。

「まあまあ。それも今後大事ですが、今はこれを何とかする方が
先決ですよ。」

プロスペクターは怒るゴートに対し宥める様に相転移エンジンの一角を指差して言った。
『警備の責任者はあなたなのですよ、ゴートさん。これは減俸ですね。』

なんて心の中でつぶやきつつ表情はにこやかなまま。
哀れゴートはこの後大幅に減額された給料に涙するのであった。


さて、プロス指差した先、其処にあるのはちょっと変わったバッタ。
何処が変わってるかと言うとそのお腹。何かを飲み込んだ様に膨らんでいて、
その中からなにやら”カチ、カチ、カチ”と時計の様な音が聞こえている。
バッタ自身は凍り付いた様にその場で動かない。
人が寄っても襲ってくる様子は見られない。

「それで何かわかりましたか?ウリバタケさん。」

もしもの為に、銃を構えたアキトらパイロットに囲まれながらバッタを調べていた
ウリバタケが立ち上がるのを見計らい、プロスが彼に問いかける。

「う〜ん、やっぱ爆弾に間違いないな。
 しかも、下手に止めようとしたりこいつを破壊しようとしたら・・・・」

腕を組んで顔をしかめながら応えるウリバタケ。

「「「・・・したら?」」」

その場に居た全員が声をそろえてウリバタケの次の言葉を促す。

「・・・BOMB!」

手を開いて爆発のジェスチャーをするウリバタケ。その顔は神妙だ。
「相転移エンジンごと爆発、ナデシコは宇宙の塵と化すよ。」

「「「・・・」」」

続いたウリバタケの言葉にその場に居た全員が絶句する。
メグミ=レイナードなどは顔面蒼白になっている。


最初に立ち直ったのはさすが艦長と言うべきか、ミスマル=ユリカだった。
同じくバッタを調べていたホシノ=ルリに尋ねる。

「そ、そうだ、ルリちゃんの方はどう?これのプログラムを外部から止められない?」
「先ほどから調べてはいるんですが・・・。」
「「「ですが?」」」

口ごもるルリに全員が嫌な予感を覚える。

「ですが、やっぱり強制的に止めると爆発するみたいです。」

その言葉を聞いて全員落ち込んだ。
こんなところで避難なんて不可能。最寄の星なんて無いし、火星行きを諦めて雛菊で
脱出するにしても無事地球に帰れる保証も無い。
バッタのくっついてる部分は相転移エンジンのメインシャフトだからエンジンごと
廃棄すれば最悪爆破は防げるが、こんなところで漂流してしまっては救助の見込みも
無いまま宇宙を彷徨う事になってしまう。
全員がパニックになりかけた頃、ルリがぼそりとつぶやいた。

「でも、外部から強制解除しなくても幾つかパスワードを入れれば
止まるみたいですよ、これ。」

敵の意図が何処にあるのか?ともかくバッタ内のプログラムに提示されたパスワードを
入力すれば爆発は免れるらしい。その場の全員がほっと一安心した。

「で、るりちゃん。どんなパスワードを入れれば良いの?」

ユリカがルリに聞く。

「一つ入れると次のパスワードが出ます。条件にしたがって入れていけば良い
 みたいです。」

ルリがそう言い終えた時、バッタが何処からかプラカードを出して掲げた。



第一のパスワードは・・・




ごくっ
誰かの息をのむ音があたりに大きく響く。

「「「え〜〜〜〜っ!!なによこれ!!」」」

そのウインドウを見て、ますますこれを仕掛けた敵の意図がわからず
その場に居た女性陣は困惑した。
ルリの顔は引き攣った。

「「「うをおおおおおぉ〜!!」」

男性陣は対照的に置かれた立場を忘れて喜びの声を上げる。



ホシノ=ルリがバッタに向かい
次の台詞を感情を込めて言う事。




「な、何なんですか!これは!!
 こんな恥ずかしい台詞いえません!!」

じ〜〜〜〜〜っ

当然のように拒否するルリ。
しかし、皆に見つめられ言葉に詰まる。

「そ、そりゃやらなきゃ爆発するみたいですが、それとこれとは
 話が別です!!だいたい、なんで私なんですか!?
 却下、却下、大却下です!!」

ルリのツインテールが大きく左右にゆれて、激しい拒絶を表している。

「・・・ルリちゃん・・・。」

激しくイヤイヤするルリにユリカが優しく語り掛ける。

「確かに嫌な気持ちは私にも解るよ。
 ・・・でも、こんなところで皆死んじゃうなんて、もっと嫌でしょう?」

真剣なユリカの目にルリはそれ以上嫌とは言えなかった。
最も、言い終わった後に、ユリカの口元がニヤリとつり上がったのを見ていれば
また違う意見もあっただろうが・・・。






バッタの前に立つルリ。
その表情は盛大に引きつってる。

「何時始めれば良いんでしょう?」



スタート




ルリがそう言った途端、バッタがプラカードを取り出した。

『始めろって事ですか・・・』

「おにいちゃん、またねぼーしちゃって
 遅刻しちゃうよ
 早く起きないと目玉焼きが冷めちゃうぞー
 もう〜           (棒読み)」



NG




すかさずプラカードをあげるバッタ。
バッタがそれをくるりと裏返すと次のように書かれていた。



もっと感情込めて




「やっぱり駄目か〜」
「もっと萌萌〜って感じじゃないと駄目って事?」
「・・・藻の絵・・・藻絵・・・なんちゃって・・・」

パイロット三人娘が勝手な事を言う。

「私の出番ですね!!」

メグミ=レイナード登場(笑)

演技指導:メグミ=レイナード
出演:ホシノ=ルリ

ドガッ!

バシッッ!!

「違うでしょ!!」

「何やってるの!」

奥のほう、目に付かないところで繰り広げられる怒号と打撃音。






やがて二人が皆の前に現れた時、ルリの目は燃えていた。
まるでガ○スの仮面の主人公の様だ。
メグミは教える事はもうないとばかりに、ルリに優しく声を掛ける。

「行って来なさい。自分の全てを出すのよ。」

「はい!先生!!」

元気に返事をして駆け出すルリ。

『『『何があったんだ?』』』

それを見ていた全員が心の中で感じた疑問に答えるものはいなかった。



テイク2、スタート




「おにいちゃん、またねぼ〜しちゃって♪
 遅刻しちゃうよ♪
 早く起きないと目玉焼きが冷めちゃうぞ〜〜
 もう〜♪」


少し頬を膨らませながらも、かわいらしく微笑むルリ。
遠くでウリバタケが涙を流して喜んでる。
ゴートが鼻血を出してるのは何故だろうか?

だがバッタの答えは・・・



NG




その場に崩れ落ちるルリ。メグミも悔しそうにうつむく。

「「「なんで〜??」」」

全員が疑問を声に出した時、すかさずバッタがプラカードを裏返す。
其処には



もっと可愛い服で




と書いてあった。

「私の出番ね♪」

ハルカ=ミナト登場(笑)

すかさずミナトの部屋に連れ去られるルリ。
しばらくすると普段着っぽくも可愛らしい水色のワンピースに黄色のエプロンを
着けたルリとニコニコしたミナトが帰ってくる。

「ホントはもっとフリフリなのを着せたかったんだけどさっきの台詞に合わないから。
 朝食の準備中の妹っぽくしてみました〜。どう?」
ただでさえ大きな胸をはって自慢げに語るミナト。

「「「うん、うん」」」

皆が肯くのを満足げに見て微笑む。
ルリは皆に見つめられて恥ずかしげにうつむいてる。
やがて視線に耐えられなくなったのか、真っ赤な顔をしたまま駆け出して
バッタの前に立つ。
それを待ってたかのようにバッタが



テイク3、スタート




と書かれたプラカードを出した。



「おにいちゃん、またねぼ〜しちゃって♪
 遅刻しちゃうよ♪
 早く起きないと目玉焼きが冷めちゃうぞ〜〜
 もう〜♪」



少し頬を膨らませながらも、かわいらしく微笑むルリ。
くるりと回ってふわりと水色のワンピースの裾がたなびく。
遠くでウリバタケが身悶えながら喜んでる。
ゴートが上を見ながら首の後ろを叩いている。
プロスが腕を組んでうんうん肯いてる。
アオイ=ジュンが真っ赤になってぼ〜っとしてる。



OK




「「「やった〜!!」」」

バッタの出したプラカードに喜ぶ面々。



第二のパスワードは・・・”




がくっ

喜びも束の間、すかさず出されたプラカードに全員がっくりと首を落とす。

「一体いくつあるのかな〜?」

アキトの疑問はもっともだったが、その場の誰も答えることは無かった。
他の面々を見たアキトは、はぁ〜っとため息をつく。
ラピス=ラズリの顔が引き攣った。

「アキ〜〜〜」

思わずアマガワ=アキに抱きつくラピス。

「「「うをおおおおおぉ〜!!」」

男性陣は完全に置かれた立場を忘れて喜びの声を上げ、
女性陣(一部除く)はキラキラと目を輝かせた。



ラピス=ラズリがバッタに向かい
次の台詞を言う事。




先ほどの経験から、すかさずメグミとミナトに連れ去られるラピス。

「何で私まで〜〜〜!」

ついでにしがみついて離れないアキも一緒だ。





戻ってきたラピスは何故かエプロンドレス。
いわゆるメイド服だ。
何故かアキもおそろいだ(笑)

「何で私まで〜」

しくしくと涙目のアキ。でも似合っている(笑)

「仕方ないじゃない。最後までラピラピが嫌がるんだもの。
 アキさんとお揃いって事で何とか納得してもらったんだから。」

ミナトの台詞にいじけるアキ。

『・・・今後一週間の晩御飯はフリカケご飯に決定・・・』

などと、ミナトが聞いたら卒倒してしまう様な事を考えていたりするのは秘密だ。
さすが元復讐人、復讐は忘れない(爆)



テイク1、スタート




いつの間にか始まるラピスの演技(パスワード入力)。



「ご主人様、
 今日から貴方様の身の回りのお世話をさせて頂く事になった、ラピス=ラズリです♪
 何でもお言い付けくださいね♪」
ぺこりと下げた頭に白いカチューシャが映える。わずかに傾けた顔が微笑みを浮かべ
ピンクの髪がさらりと流れた。





OK




「「「やった〜!!!」」」

上がる歓声。
床で転がり続けるウリバタケ。
出血多量で青くなりながらも首の後ろをトントンするゴート。
不気味にニヤリと笑うプロス。(一番怖い(笑))
えへえへしてるジュン(してないよ!!)

だが次の瞬間緊張が走る。



最後のパスワードは・・・




『『『次は一体誰??』』』

最後と書かれて喜ぶよりも、次の犠牲者(?)は誰かの方が全員の関心が高かった。

『電子の妖精、幼き妖精と来て・・・』

「嫌だ〜〜〜!!!」

出された名前と台詞に思わず逃げ出すアキ。

「アキさんだけ逃がすわけには行きません!」
「アキもやるの!」

だがその足はルリとラピスにがっしり捕まれている。

「まぁまぁ、これで最後なんだし・・・」
「さぁ、お着替え、お着替え♪」

両手もしっかりメグミとミナトに抱えられている。

「嫌〜〜〜〜〜っ!!」

4人の女性と少女に抱えられ、引きずられる様に連行されるアキ。

『ドナドナだ・・・』

そんなアキの姿を見てアキトはそんな感想を抱く。自分の未来の姿とはまだ気付いて
ないが、その姿になにやら漠然と将来の不安を感じるアキトであった。






「「「ほ〜〜〜〜っ」」」

やって来たアキにその場の全員が感嘆のため息をついた。
普段の黒い服とは対照的にその服装は純白に輝いていた。
相変わらず黒のバイザーをかけてはいるが、その顔はヴェールに包まれていた。
そう、アキはウエディングドレスを着ていた(爆)
何故ミナトがそんな物までナデシコに持ち込んではいたのかは謎だ(笑)。


しずしずと皆の前をバッタの前まで歩いていくアキ。
ウリバタケはスケッチブックになにやら書き込んでいる。
リョーコは照れている。
ユリカはにへらっと笑っている。
ゴートは出血多量で床でぴくぴく逝ってる。
プロスはうんうんとあふれる涙をハンカチで拭いている。花嫁の父の気分か?
ホウメイガールズはてんとう虫のサンバを歌いだし、
ジュンは神父の格好でなにやら祈り、アキトは何故か緊張していた。
アキの後について回りに花びらをまきながら歩くラピスとルリ。



テイク1、スタート




「貴方を愛してます。
 私と結婚してください。(ぽっ)」

あれだけ嫌がっていたわりに、感情込めて迫真の演技を見せるアキ。



OK




バッタがプラカードを出すが、それを隠すように虹色のきらめきが現れる。

「ボソンジャンプ!?」

突然のことに驚くアキ。他のものも何が起きたのか判らずただ驚いている。

「ふふふふ・・・
 そなたの気持ち、しかと受け止めたぞ。我が生涯の伴侶よ。
 婦女子からの求婚とは我にとっていささか不本意なれど、
 そなたの心が決まっていれば問題ない。早速祝言をあげようではないか!!」

現れる編み笠にタキシード姿(!?)の北辰。

「何であんたが出てくるのよ〜〜〜〜!!」

そんな北辰を見て、アキは慌ててウエディングドレスの裾を掴み、走り出した。

「ふっ、照れおって。
 やはり我に追って来て貰いたいと見える。
 これ、待たぬか。わが生涯の伴侶よ!」
アキの逃げた方へと追いかけていく、北辰。

「嫌〜〜〜〜っ!!!誰が生涯の伴侶か〜〜〜!!」


「行っちゃいましたね。」

ルリがその光景を見てつぶやいた。
ふとバッタの方を見ると、いつの間にか居なくなっていた。
念のためオモイカネを調べると、今の騒ぎに紛れて船外に出て行ったらしい。
 
「一体、敵の目的は何だったんでしょうか?」

敵の目的がまったくわからず、ルリはただ首を捻るだけだった。






某戦艦 艦長室








其処にはあのバッタを前に何人もの男たちが居た。
その前には先ほどナデシコ内で繰り広げられたルリ達の映像が流れている。

「やりましたね、艦長。」

男の一人がその部屋の主に話しかける。

「ああ、とってもいい映像が取れたな。
 ふふふ、早速この記録映像を我が会の特別指定財産にしよう。
 今度の会合では皆の前で大上映会だ!!」

「「「おお!!!」」」

部屋の中には暑苦しい男達による暑苦しい空気で溢れていた。






ナデシコ 通路








「何時まで逃げてりゃ良いのよ〜〜!
 いい加減諦めろ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

「お主が我の物になるまで我は追いかけるのみ!!!」

「ふぇぇぇぇぇえええん。こんなの嫌〜〜〜〜〜っ!!」

「はははは、照れまくりおって。
 そんな所も初々しくてとっても良いぞ!新婚旅行は金星でもどうだ?」

「嫌〜〜〜〜〜っ!!」

繰り広げられるウエディングドレスの女性とタキシードの男の追いかけっこは
男が緊急呼び出しによって、渋々帰るまで続くのであった。



その後、我に返ったプロスが破壊された船内を見て、涙ながらに電卓を叩いていたのは
別の話(笑)
















ポストスプリクト


という訳でEXZSさんのHPの60万HITを記念して
勝手に黒プリ外伝を書かせていただきました。
初めてのナデシコファンフィクションなので物凄くへぼへぼで
訳判らん話で申し訳ありませんm(_ _)m
EXZSさんこれからも頑張ってください。

                   k-siki拝