アバン


もし、・・・・・・だったら。

 

人は誰しも可能性について考える。

 

 あの時○○だったら。

 あそこで△△の時、あいつではなく自分がそうだったら。

 

所詮有りもしなかったことを考えるのは無意味という人もいるだろう。
しかし可能性を考えることは決して無意味ではない。
可能性を考えることで自分を見つめ直し、明日に歩き出せるのだから。

 

ああ、この話はEXZSさんの「黒プリ」の、私が勝手に書いた外伝ですのでそのつもりで。



ナデシコ プリンセス オブ ダークネス
勝手に外伝 可能性のジャンク・ショー



目覚めるとそこは・・・・・・

 

 

「おおっ??」

 

 

アキが目覚めたら、そこは知らない部屋だった。

妙に少女趣味な部屋。
あちこちにある、同じキャラのぬいぐるみ、ポスター。

 

「・・・・・えっと、確かこのキャラは・・・・・・じゃなくて!
ここってどこよ〜〜!!」

 

あまりにもファンシーだが、なぜだか懐かしさもあった。
とりあえず寝間着ではなくいつもの格好であったので、その部屋を出てみる。

 

「・・・・・・うーむ(汗)」

 

廊下に出ても相変わらずであった。
あちこちに貼られたポスター、ピンクの色彩、サイケな光景。
常人なら途方に暮れそうなその空間で、しかしアキの脳裏には進むべき方向が浮かんだ。

 

「なんか、こっちに行けば良い気がするわね。」

 

途中等身大の「そのキャラ」の人形などにいきなり出くわし、かなり精神の平衡を欠きそうになったが、それでもアキは進んだ。



悲しき少女


そして、ある扉の前に立ったとき。
アキはここがどこなのか、信じたくはないが解った気がした。

 

 プシュッ

 

ドアが開くと、相変わらずエキセントリックな光景ではあるが部屋の配置に見覚えがあった。
そして、静かにそこに居る少女。

 

「・・・・・・ラピス?」

 

「だれ?」

 

少女は振り向き、そして訪ねた。

その少女は確かにラピスだった。
白磁の肌、艶やかな薄桃色の髪、そして黄金色の瞳。

 

 

しかし何かが違う。

年齢は自分が火星の後継者と戦っていた頃のラピスだが、このラピスではない。
アキはそう気が付いた。

 

 なぜ?

 

子細にわたって観察し、理由が解った。
このラピスはアキの知っているラピスとはまるで雰囲気が違った。
大人びた、どことなく疲れを感じさせる表情。
このラピスは自分の知っているラピスよりも遙かに苦労をしているのだとアキは思った。

 

「あなたは、だれ?」

 

何も言わずに自分をじっと見つめるアキに、ラピスは再び訊ねた。
胸中複雑な物を抱えながらも、このまま黙っているわけにはいかないと判断したアキは答えることとした。

 

「私はアキ。アマガワ・アキって言うの。
今は女の体だけど・・・・・・

・・・・・・あなたはテンカワ・アキトって知ってる?」



残酷な告白


その名前を聞いたとき、ラピスはぴくっと反応した。
それを知っているという返事と解釈して・・・・・・ただラピスの反応が気にはなったが・・・・・・アキは続けた。
ラピスなら・・・・・解ってくれるはずだから。

 

「この世界とは違う世界の未来にアキトは事故で女になったの。
それが私。」

 

言いながら、ラピスの頭を抱えるように撫でる。

 

「この世界でも私はあなたに辛い思いをさせているのね・・・・・・
ごめんなさい!」

 

そう言いながら、アキは精一杯の優しさでラピスを撫で続けた。

 

 

 

はじめはビックリしているだけのラピスだったが、やがて撫でられる内に安心したのか、アキに抱きつき、その胸に顔を埋めた。

 

「ごめんなさい、ラピス・・・・・」

 

「違うの・・・・・・」

 

「・・・・・・え?」

 

「違うの、アキトじゃないの、私がサポートしてるのは。」

 

落ち着いたのか、ラピスはポツリポツリと話し始めた。

 

 

 

 

「私がサポートしてるのはユリカなの。」

 

 

 

そう、ラピスは話し始めた。

・・・・・・この、「ぷりんせす・おぶ・だーくねす」の世界のことを。

 

 

 

話を聞いていく内にアキのラピスを撫でる手はいつの間にか止まり、びっしょりと汗を流し、顔には無数の縦線が走った。

 

「・・・・・・えーと・・・・・・?(滝汗)」

 

アキにはもうラピスにかける言葉が見つからない。
というか、その前に自分がどうにかなってしまいそうだった。

その時。

 

 

 

 

 

 

 

「らっぴすちゃ〜〜ん♪ たっだいま〜〜♪」

声が聞こえた。

 

 

 ああ、確かにユリカの声だ。
 間違いなくユリカの声だ。
 でも・・・・・・
 神様、そんなに私のことが嫌いですか?(泣)

 

 

 

 

アキはだんだん意識までが遠くなってきた。

 

 



現実って素晴らしい・・・・・・


「ををっ!?」

 

アキが目覚めると、そこは自分の部屋だった。
ナデシコAの、自分の部屋。

 

「・・・・・・嫌な夢だった・・・・・・」

 

全身にびっしょりとなま暖かい汗をかいていた。
いつもの起床時間にはまだ30分ある。
アキは隣に寝ているラピスを起こさないようにそっとベッドを抜け出し、シャワーを浴びることにした。

 

熱めのシャワーを浴びながら考えようとする。
今まで見ていた夢のことを。

 

 

しかしどうしても考えるのが苦痛で・・・・・・(涙)

 

「うん! ラピスには、幸せになって貰わなきゃ♪」

 

それで考えを打ち切った。

 

 そう言えばラピスにおねだりされていたデザートを作ってあげようかな?

 

唐突にそんなことも思ったとか。

 

 

 

とにかくそれで、その夢のことはアキの心の奥深くにしっかりと封印されたという。



ポストスクリプト


テーマは「ぷりんせす おぶ だーくねす」世界にアキがさまよい込んだら・・・・・
というものですが、発想の原点はもう一つ。
EXZSさんが第1回の「一番星コンテスト」の小説掲示板に初投稿された「疼く夢」と(ある意味)対にしようかな、と(笑)

あの作品を読んでこの作品を思い浮かべた自分が不思議です。

作中の「キャラクター」というのはおわかりですね?もちろんヒ○○ンです。
あと、最後の「デザート」というのは・・・・・・

というわけで、逃げるように失礼します〜〜