DVDタイトル |
THE LORD OF THE RINGS / THE RETURN OF THE KING |
ジャンル |
ファンタジー・アドベンチャー |
原題 |
THE LORD OF THE RINGS / THE RETURN OF THE KING |
制作国 |
ニュージーランド/アメリカ |
邦題 |
ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 |
出演 |
イライジャ・ウッド |
制作年 |
2003年 |
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制作社 |
NEW LINE |
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監督 |
ピーター・ジャクソン |
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制作・総指揮 |
ピーター・ジャクソン他 |
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原作・原案 |
J.R.R.トールキン |
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脚本 |
ピーター・ジャクソン他 |
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映像情報 |
カラー/200分(SEE/250分) |
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DVD情報 |
LEW LINE HOME ENTERTAINMENT/リージョンコード1/各種メイキング収録 LEW LINE HOME ENTERTAINMENT/リージョンコード1/メイキング、コメンタリー多数収録、交響楽コンサート収録、5枚組、ミナス・ティリスの小物入れフィギュア |
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サルマンとの戦いに勝利したアラゴルンたちは、エントともにサルマンを封じ込めたメリーとピピンに合流する。一時の平和をローハンで楽しむ彼らだったが、サルマンの魔法の玉に触れたピピンがゴンドールの危機を予見してしまう。アラゴルンの故国を救うため、ガンダルフとピピンは一足早くゴンドールに駆けつけるのだが、時の執政デネソールは息子ボロミアを失った悲しみに明け暮れていた。一方、滅びの山に向かうフロドは、指輪の重みと旅の疲れにその足取りが重くなり、心配するサムをよそに指輪を取り返そうとするゴラムの画策にはまりつつあった。そして、それぞれの旅はいよいよ佳境を迎えるのだが…。 物語はスメアゴルから始まるのですが、これがゴラムの夢なのか回想なのかはっきりせず、とってつけたようになっています。せっかくゴラムの動きを演じているアンディー・サーキスがCGI無しで出ているだけに、これは残念。これならゴラムをCGIにする必要はなかったんじゃないかと思うくらい、彼のスメアゴルがユニークだったというのはさておき、この後の展開からゴラムの夢じゃないかと思うのですが、それならば目を覚ましたゴラムのカットを入れてワンクッションおけばつながりも良くなるし、ゴラムの心情がより強く表現できたはずです。また、オルサンクの塔の戦闘後にメリーとピピンのとっている行動が、スペシャル・エクステンデッド・エディション(SEE)とつながっているのはおかしい。さらに、ここでのサルマンのシーンが全てカットされたのは誠に残念ですが、確かに中途半端に入れるよりは思い切ってカットした方が良い仕上がりになってたのはまあ良しとしましょう。しかし、こんなことなら2作目できちんと片を付けておくべきでした。そして、カットした分の尺を終わりそうで終わらない長い長いラストに持ってきたような気もしますが、ここはもうちょっと短めにまとめてほしいところ。観客は劇場の中で余韻に浸ってしまい、劇場を後にしてから残るものが細くなってしまいます。ここまで後を引く作りにするのなら、少しぐらいサルマンのシーンを残しておいてもバチは当たらないと思うぞ。せめて、クリストファー・リーに敬意を表して、エンドロールに登場させてほしかったな。滅びの山のラストでスクリーンを暗転させたのも、そのまま同じシーンにつながっているため、フロドとサムが意識を失っていたらしいことを意味するにはつながりが悪く、いまいち意図がつかめません。追記:目玉のサウロンはコメディーリリーフ、なーんだ、あんなのに操られちゃうなんて心って弱いもんだな、ぐらいに思ってみてあげましょう。 いきなり批判をしてしまいましたが、気になったのはこれぐらい。核心となる物語は緊張と弛緩、緩急の巧みな構成によって3時間半という長丁場を決して飽きさせず、話が進むほどに引きつけられる魅力にあふれています。ただし、体は正直なので結構疲れました。さて、今回も見せ場である戦闘シーンは、危険なカットがCGIであることは明白なものの、圧倒的なリアリズムとヒロイズムで迫力満点。投石機から放たれる巨岩は今にもスクリーンから飛び出してきそうで、思わずよけてしまいました。敵対するサウロン軍をていねいに描いているのも前作同様で、不敵なオークの大将が実に感情豊かに活躍しています。もちろん、指輪物語の中における戦闘シーンは決して中心となるものではありませんが、やはり映画となると見栄えのするシーンであることは確か。そのため、戦闘シーンを単なるどんちゃん騒ぎにすることなく、キャラクターごとの見せ場を設け、きちんとストーリーを盛り込んでいるため、話がとぎれるだけでなく、これと対比する静かなドラマも引き立っているのです。これは各シーンごとだけではなく、アラゴルンたちとサウロンの戦いという動的なものと、フロドたちと指輪の戦いという静的なものという、作品全体を二分する構成にも現れています。陰と陽、静と動をきちんと描いている、これこそがこの長大なシリーズを引き立てている根本なんですね。どちらか一方だけを長々と見せられても、話が平らになって飽きるのも早いですし、映画そのものが破綻してしまいますから。 DVD版追記 劇場という迫力のマジックを離れてお茶の間で鑑賞してしまうと、やはり編集を力業でやっつけてしまったという印象が強まることを否めません。脚本にあったシチュエーションをできるだけ切りつめて詰め込んでしまったためか、圧倒的な主役、特に悪役側に魅力的な存在が不在のため、ドラマが小さくなってしまいました。オークの大将がユニークですが、彼はあくまでも一部隊の隊長ですし、他の部族にもリーダーはいるのでしょうがまったく取り上げられていません。悪の権化の燃える目玉おやじサウロンは、あくまでもただの象徴、やはりサルマンのような魅力的な敵対権力が不在というのは残念ですね。映像特典もそのほとんどがメイキングであり、同じ映像が使い回しされているのでこちらも今ひとつ盛り上がりませんでした。 SEE版追記 「二つの塔」で後回しにされ、劇場版「王の帰還」でカットされたサルマンの最期ですが、原作同様のグリマの行動も含めて非常に意義のある7分あまりとなっています。しかも、オルサンクの塔から落下したサルマンが串刺しになって水の中に消えてゆくという、ドラキュラ俳優として一時代を築いたクリストファー・リーに敬意を表しているとしか思えない、あっと驚く見事なもの。映画の始まりにふさわしくないなんて理由でカットするシーンじゃありません。オルサンクの塔を絡める以上、どうあがいても「二つの塔」からの続きなのですから、長い長いラストを縮めてこの7分間を入れるべきでしょう。そして、「旅の仲間」の黒の乗り手、「二つの塔」のサルマンと引き継いだ恐怖を、もっといい形でサウロンに引き渡すべきでした。オーク軍の物量にものをいわせた結果、燃える目玉野郎の存在感すら希薄になってしまったのが残念でなりません。 変態ピーター・ジャクソンは決して異形への愛情を失ったわけではありませんが、「指輪物語」における端的な表現としての“善”に感情移入しすぎてしまい、なおかつ“映像”としての派手な見せ場に頼りすぎてしまったのが、劇場版の成功でもあり失敗でもあったのでしょう。ともあれ、非常に空白の多い劇場版でしたが、SEEではそれらのほとんどが埋められ、それなりに満足のいくものに仕上がっています。でも、あくまでも“それなり”としかいえないのがやはり残念です。サルマンをもっと活躍させろとはいいたいけどいわないまでも、せめて黒の乗り手が「旅の仲間」ぐらいの存在感があったらよかったのにね。 ちなみに、ギフトセットのおまけ「ミナス・ティリス」のフィギュアは小物入れになっています。 |