ビデオタイトル |
MINUSCH |
ジャンル |
ファンタジー |
原題 |
MINOES |
制作国 |
オランダ |
邦題 |
ネコのミヌース |
出演 |
カリス・フォン・ハウテン |
制作年 |
2001年 |
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制作社 |
Bos Bros. |
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監督 |
フィンセント・バル |
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制作・総指揮 |
ミハエル・デ・ルーイ |
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原作・原案 |
アニー・M・G・シュミット |
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脚本 |
タマラ・ボス |
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備考 |
カラ/82分 |
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DVD情報 |
WARNER BROS. FAMILY ENTERTAINMENT/リージョンコード2(PAL)/未公開シーン、メイキング、予告編など収録 |
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とある夜のこと、バラの香りの芳香剤のエキスを満載して走るトラックの前に、一匹のネコが現れた。あぶないところでネコをよけたトラックは、荷台から一本のドラム缶を落としてゆく。そして興味津々にドラム缶に近づいたネコが、ゆるんだフタから漏れ出したバラのエキスをなめてしまった。新聞記者のティベは、内気な性格から満足な記事を書けずにいた。今日も事故現場へと自転車を走らせたものの、現場の誰に声をかけても相手にしてもらえない。取材をあきらめ、馴染みの魚料理スタンドに立ち寄って帰ろうとした時、犬に吠えられて木に登り、降りられなくなってしまった女性を見かける。彼女を助けようとしたティベだったが、自分が転んだひょうしに、女性は身軽に気から飛び降りてしまった。そんなささやかな出来事を記事にしようと思ったティベだったが、テープレコーダーを出している間に女性は立ち去ってしまう。意気消沈してアパートに戻り、大家さんの娘で一番の友達、小さなビビと食事をしたあと、妙な物音に気づいてテーブルの下を覗くと、そこにはなんと先の女性がゴミ箱から魚の骨をあさっていた。そして、彼女から話を聞くと、なんともともとはミヌースと呼ばれるネコだったが、ある日突然人間になってしまったという。町のことをなんでも知っているミヌースと彼女の仲間のネコたちからの情報を元に記事を書き始めたティベは、スクープを連発して町一番の新聞記者となった。最初はティベとミヌースの仲にご機嫌斜めだったビビも、ミヌースの秘密を知ってからは意気投合。しかし、そんな平和なある日、町一番の実業家で功労者、エレメートが起こした事故と彼のいじわるな一面を知ったミヌースは、本当のことをティベに書かせるのだが、誰も信じてくれないその記事が元でティベは会社をクビになってしまった。エレメートを懲らしめ、ティベを助けようと決心したミヌースと町中のネコたち、そしてビビは、ネコ会議を開いて立ち上がるのだが…。 ストーリーもキャラクターたちも、とにかくキュートでほのぼの、それでもドキドキワクワクな小さなファンタジー。ネコの視点に立った演出とカメラワークで描かれる映像は、とても自然で優しいもの。人間になったミヌースの視点であっても、きちんとネコの見ている世界としてとらえられています。これにより、ミヌースを演じるカリス・ファン・ハウテンのネコらしい演技によるものだけではない、人間になってしまったネコのおとぎ話としてのリアリズムが雰囲気たっぷりなものとなりました。そして全ての役者がこの物語への愛情たっぷりに役をこなし、オランダの片隅で起きた小さな事件に説得力を与えています。弱気なティベも元気なビビも、彼等を取り巻く人たちももちろんですが、悪役エレメートを演じるピエール・ボクマの小技の効いた悪そうな演技が、ミヌースのドタバタにほのぼのとしがちな物語を引き締めています。エレメートも偽善者というほど根っからの悪人には見えませんし、ただのネコ嫌いであるようにも思えるのですが、だからといって中途半端に描いてしまうとミヌースたちまでもが引き立たなくなってしまいますからね。なのでネコの虐待シーンが必然になってしまいましたが、決してとんでもないことにはなっていませんのでご安心を。あっと思うシーンであっても、全てがその後のミヌースたちの活躍の、ドキドキハラハラにつながっています。特筆すべきは、全てのネコのシーンが本物のネコだと思われ、多少のフィルム加工は見られるものの決して不自然さや擬人化が見られなかったこと。芸をしにくい彼等の演技指導は並大抵の忍耐ではなかったことでしょう。 また、クライマックスにもひとさじのスパイスがふりかけられており、エレメートを懲らしめる場面にネコどころかミヌースがいないあたりにおや? と思わせておいて、ラストでもう一幕のお話しを演出しているのです。このひとさじの加減は、どうすれば話を面白くできるかをよく判っている脚本のなせる技ですね。ここからエンドロールの出るまでの数分間、いかにも古いフィルムらしい映像によって実に暖かみのあるまとめ方をしています。 そんな感じで物語としても映画としても完成度は高いのですが、83分という短時間に収めるためなのか、説明、描写ともに少々不足している部分が散見されるのが惜しまれます。このDVDにはドイツ語しか入っていないために、私には何を言っているのかほとんどわからなかったというのもありますが、映像として足りないなと思われる部分を感じました。また、特典として未公開シーンが収録されているのですが、そのうちのいくつかは絶対にあった方がいいと思わせられたのも残念。上映時間を、もう7分加えてきりのいい90分にすればよかったのにね。DVD特典といえば、NGシーンやメイキングも実にアットホームな雰囲気でした。そして、やっぱりいうことを聞かないネコたちの演技指導は大変だったんだなと…スタッフたちはとても楽しそうですけどね。 2004年3月現在、日本では今春単館公開予定の上、DVDリリースも未定となっていますが、私の稚拙なレビューでも子供騙しだなどと思わずに、ぜひとも多くの方々に見ていただきたい逸品です。道徳や訓戒、教訓なんて押しつけがましいところが全くないけど、きっと何かが残るというあたりも、お薦めできる理由です。 |