ファンタジ−王国PART2

チェコの幻想師カレル・ゼーマンの世界

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前世紀探検(1954年/チェコ)

 歴史博物館にやってきた少年たちが公園のボートに乗って奇妙な洞窟をくぐると、そこは時代を遙かにさかのぼった未知の世界だった。恐竜少年たちが古生代のほ乳類から恐竜の時代を探検する物語。

 とても普段から持ち歩いているとは思えない用意周到なキャンプ用品はさておき、先史時台の動物たちの人形アニメはなかなかのでき。恐竜を動かしたアニメーターたちは大勢いますが、原始ほ乳類を動かしているのは珍しいですね。「ジュラシック・パーク」シリーズとそっくりなシーンがあるのも見所の一つ、もちろんこちらが先。だたし、ミニチュアに比べて実物大のセットはさすがにチープ、いかにもオモチャですといわんばかりの小型恐竜(大型は虫類?)に、死んだ恐竜が幼稚園の滑り台に見えたりするのはご愛敬。夢落ちのようなラストですが、少年の一人がつけていた日記がそのまま残っているという、ひょっとして?と終わるのもファンタジーらしくてユニークでした。

悪魔の発明(1957年/チェコ)

 潜水艦を使って海賊行為を働く富豪は、誘拐してきた天才科学者をそそのかして強力な兵器を作らせて世界征服を企む。囚われの身となった科学者の助手は研究をやめさせようと苦心するが、研究のことしか頭にない科学者はついに兵器を完成させてしまう。しかし、ようやく事の真相に気づいた科学者は、自らの手でその兵器を破壊してしまうのだった。

 主要なセットのほとんどが強いパースのつけられた書き割りという、巨大な紙芝居のような作品。エッチング風の線を多用した背景画は、真っ平らでありながら意外なほどの奥行きと立体感を出しています。トリック映画の祖ジョルジュ・メリエスの技法ここに極まれりといった趣ですが、メリエスとの違いはちゃんとロケをしていることでしょう。水中自転車や奇妙な魚などがユーモラスですが、使い回しされるクラゲだかイソギンチャクだかがチャーミング。原作はジュール・ヴェルヌ。

ほら男爵の冒険(1961年/チェコ)

 科学も発達した20世紀、月へ行ったらなんと先客が。1865年、大砲の弾に乗ってやってきたミュンヒハウゼン男爵とシラノ・ド・ベルジュラックたちが月に住み着いていたのだった。そして、再び地球に戻ってきた男爵たち、トルコの王宮では並み居る敵軍を蹴散らして美女を救い出し、航海に出ては魚に飲まれて世界一周、戦場においては砲弾に乗って敵情視察、そして再び月に戻ってきた彼らは、平和な余生を過ごすのだった。

 ほら男爵ことミュンヒハウゼンの奇想天外な物語、月面での下りはゼーマンらしくジュール・ヴェルヌ風に描いています。相変わらず本編とは関係ないところで小ネタ連発ですが、男爵の奇天烈な冒険譚にマッチしていてさほど気をそがれることはありません。そして、海中のシーンでクラゲだかイソギンチャクがやっぱりキュートなのでした。

彗星に乗って(1970年/チェコスロバキア)

 フランスとスペインの戦火の絶えないアフリカの国境の町。フランス軍の将校が崖から落っこち、気がつくと目の前に果てにしたポートレートとそっくりの美女が立っていた。彼女を連れ帰った将校だったが、折しも急接近してきた彗星に敵味方すべてが町とともに吸い上げられてしまう。そんな状況でも戦争をしようとする両国軍だったが、やがて彗星は火星向かって突き進んでいることを知り、終末のほんのひとときを平和に暮らすことになる。しかし衝突は避けられ、再び接近した地球に戻ってきた彼らはまた戦火の火蓋を切る。そんな中、またまた崖から落っこちた将校が目覚めると、そこに美女の姿はなく、心配そうに見守る部下が立っていたのだった。

 彗星に吸い上げられるときに粉々になった建物が、彗星上でしっかりと組み立て直されるシーンが愉快な作品。シュールなテーマの中にちりばめられたユーモアが、いかにも東欧といった雰囲気ですね。これまたジュール・ヴェルヌの空想小説を元にした作品。

盗まれた飛行船(1966年/チェコ)

 気球ブーム花開く中、思わぬアクシデントで旅客飛行船のデモンストレーションに失敗した飛行船に乗り込んだ子供たちは、そのまま冒険の旅に出てしまう。その飛行船に使われているといわれる燃えないガスをめぐって軍や警察に追われたり、ネモ船長に出会ったりと、危険で愉快な冒険を続ける。

 飛行船の愉快な旅そのものもさることながら、子供たちをめぐる裁判や小粋な新聞記者なども見所。金権欲望渦巻く大人たちの世界の中で、純粋な子供たちが光って見えます。ゼーマンといえばヴェルヌ、ヴェルヌといえばネモ船長というわけで、ネモ船長とノーチラス号が出てきます。

ドラゴンスレイヤー(1981年/アメリカ)

 魔法使いの弟子がドラゴン退治に行ったはいいが力及ばず、師匠の遺灰を沼に巻いたらなんと師匠復活、魔法の石を砕いたら師匠大爆発でめでたくドラゴン退治してしまう。ところが、手柄は横取りされて弟子は恋人を連れて新天地へと旅立つのだったというなんだかなぁなお話。

 これはカレル・ゼーマンではなく、前回上映できなかった分のおまけ。モーターを仕込んだスムーズな動きの人形アニメ、ゴーモーションと、炎との見事な合成が見所。ディズニーとILMが作った映像は秀逸で、CGに頼らない映像は一見の価値あり。

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