ホラー映画史Vol.4
ユニヴァーサル篇2
「君たちがいて僕がいた」

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フランケンシュタインと狼男(1943)
Frankenstein Meets The Wolfman

これまでモンスターは常に単独で出演していたが、この作品で初めて怪物と狼男の共演が実現される。この共演のために、フランケンシュタインモンスターは時代を超えて狼男の現代に登場することになったが、結果的にはささかな設定変更に過ぎなかった。

フランケンシュタインの怪物にベラ・ルゴシ、狼男にロン・チャニーJR。脚本は推理作家でもあるカート・シオドマーク。監督はロイ・ウイリアム・ニール。制作はジョージ・ワーグナー。

この作品にはフランケンシュタイン男爵は登場せず、男爵の娘エルザが登場する。「フランケンシュタインの復活」、「フランケンシュタインの幽霊」でイゴールを演じたルゴシは、この作品でフランケンシュタインを演じているが、当時61才のルゴシに重量級モンスターの扮装はハードであった。しばしば体調を崩したルゴシに変わって、アクションシーンではスタントマンのエディー・パーカーが代役を務めていた。ルゴシのモンスターはアクション以外のシーンとクローズ・アップを演じたが、「年老いたモンスター」はあまり見られたものではない。

狼男ローレンス・タルボットは、ジプシーの老女に「フランケンシュタイン博士の著書によって狼の呪いから救われるのではないか」と言われ、フランケンシュタイン城跡から凍結されていた怪物を発見する。科学者はフランケンシュタインモンスターとローレンスをつなぎ、狼男化を防ぐ実験を始めるが、ローレンスの力を弱めるとモンスターの力も弱まるということに気づき、かつてのフランケンシュタイン博士と同じ心境に変わっていく。そしてフランケンシュタインモンスターがより強力になるよう、二人をつなぐコードをつなぎ換えてしまうのだった。暴れだしたモンスターは、月光を浴びて狼男になったローレンスと格闘になるが、村人たちが仕掛けたダムの濁流に、実験室のある古城ごと飲み込まれてしまう。

ユニヴァーサル社は、原題の「Meet」を気に入り、この後好んで使っている。

フランケンシュタインの館(1944)
House of Frankenstein

この作品は、当時舞台に専念していたボリス・カーロフを再び銀幕に迎えた、いわば古巣に戻した作品である。さすがにモンスターを演じるには歳であり、今回はフランケンシュタイン男爵の研究記録をもとに、実験を模倣しようとするニーマン博士を演じている。

前作「フランケンシュタインと狼男」で怪物の共演が好評だったため、今回はドラキュラ伯爵もキャスティングに加えられた。ドラキュラ伯爵にジョン・キャラダイン、狼男にロン・チャニーJR、フランケンシュタイン・モンスターには活劇出身で体格の良いグレン・ストレンジが扮した。

しかし、ドラキュラは映画が始まって早々に姿を消し、モンスターはほとんど手術台に寝かされたままで活動するのも狼男が死んでからという、怪物同士が絡むシーンはほとんどないものであった。それでも映画はヒットし、赤字を抱えていたユニヴァーサル社はこの後しばらく同じ趣向の作品を作ることになる。

物語は、邪悪な科学者ニーマン博士(ボリス・カーロフ)と、彼を虐待すると彼が信じている連中を殺そうとする強迫観念によるものである。

ヨーロッパの田舎を回りって客に言語に絶する恐怖を味あわせるというズッコの巡業サーカスを、ニーマン博士が引き継いだところから始まる。目玉はドラキュラであるが、ドラキュラをわずかの間自由にしたときに陽光にあてて死なせてしまう。ニーマン博士はドラキュラを片付けると、永遠の命の秘密を会得しようとフランケンシュタインの日記を求めて旅立つ。しかし、日記の代わりに保存されたフランケンシュタインの怪物と狼男の死体を見つけ、生き返らせて使役しようとするが・・・。

ジョン・キャラダインが演じたドラキュラは、これまでの誰ともイメージが異なる。ロン・チャニーJrから受け継いだコールマン髭をたくわえ、ルゴシ以来の燕尾服を着ているが、ケープの襟は立っていない。また、非常に痩せており、ソフト・ヴオイスで優雅に話し、物腰も流麗でお洒落である。藤子不二雄の漫画「怪物くん」に登場するシルクハットをかぶったキザなドラキュラは、このキャラダインのドラキュラがモデルであろう。

ドラキュラとせむし女(1945)
House of Dracula

前作「フランケンシュタインの館」から、ドラキュラ(実際にはラートス男爵)にジョン・キャラダイン、狼男にロン・チャニーJR、フランケンシュタインモンスターにグレン・ストレンジを引き継ぎ、これにオンスロウ・スティーブンスが演じる、ジキル&廃土をほうふつとさせる外科医エデルマン博士が加わった。

物語は、ドラキュラ伯爵がエデルマン博士の古城を訪れ、太陽の下でも活動できる体にしてほしいと申し入れるところから始まる。そこへローレンス・タルボットが狼男の呪いを解いてほしいとやってくる。博士は両方とも受け入れ、吸血鬼化の元は何かの寄生体、狼男は脳への圧力に原因があると治療を始める。その一方で、エデルマンの看護婦は古城の建つ崖下の洞窟で発見したフランケンシュタイン・モンスターを蘇らせようと、怪しげな花を育てている。しかし、エデルマン博士が吸血鬼の血液に感染し、ジキル&ハイドのごとくに変身してしまい、モンスターたちを巻き込んで古城は大騒ぎになってしまう。

今回も怪物同士の大立ち回りはなく、フランケンシュタイン・モンスターにいたっては映画のラストに動きだして火災を招く、いわば幕引き役であった。

ちなみに、この作品が公開された1945年12月7日は、第二次世界大戦終結の年のクリスマス興行であった。日本では本土決戦に向けて竹やり訓練を行っていた時期に、アメリカではユニヴァーサル・ホラーを含む多くの娯楽作品が作られていたのである。

凸凹フランケンシュタインの巻(1948)
Abbott & Costello Meet The Frankenstein

ユニヴァーサル社のクラシックモンスターたちが総統場する最後の作品は、バッド・アボットとルー・コステロが主演するコメディーであった。そのため、登場する怪物の設定や物語はこれまでの作品を引き継いでいない。

フランケンシュタインモンスターにグレン・ストレンジ、狼男にロン・チャニーJR、さらにラストでは透明人間が声だけの登場をしており、ヴィンセント・プライスがこの声をあてていた。

また、ベラ・ルゴシが映画としては生涯2度目にして最後のドラキュラ伯爵を演じている。舞台やテレビではドラキュラを演じているが、映画では2回限りなのである。もっとも、ルゴシが現役の間にユニヴァーサル社以外の映画会社はドラキュラを撮っていない。「魔人ドラキュラ」が大ヒットしたユニヴァーサル社との競合をひかえたのか、著作権を独占されていたのかもしれないが、詳細は不明である。

このコメディーは、欧米の生真面目なホラーファンには、歴代の怪物たちを笑いの対象としたことで評判が悪かった。この、ユニヴァーサル社自身が、偉大なキャラクターを自らの手でパロディーにしたことは、ベラ・ルゴシがたどった自身の末路と似ている。しかし、モンスターたちの魅力と、シチュエーションが産み出す恐怖は、このコメディーでも十分に発揮されていた。

あらすじは、鉄道のポーター、バッド・アボットとルー・コステロが二つの木箱を配達した後、なぜかドラキュラ伯爵に歓迎される。伯爵はフランケンシュタインモンスターを復活させようとしており、そのためにコステロの脳を使うつもりでいたからだ。動きだした狼男とフランケンシュタインに伯爵を交え、アボット&コステロのドタバタは佳境を迎える。

この作品はコメディーとしては出色の出来で、下降気味だったアボット&コステロの人気もこの作品で復活した。この後、透明人間、ジキル&ハイド、ミイラ男たちとの「出会い(Meet)」シリーズが作られた。

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