4/29 春日部ボディースナッチャー「映画クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!」を観てくる。

 これまでに幾度となく未曾有の危機に見舞われてきた、野原一家の住む春日部。その異変は静かに、ひたひたと足音を忍ばせて春日部の街を飲み込んでいた。隣人が、友人が、家族が、いつもと同じようでどこかが違う、そっくり人間にすり替えられていく。しんのすけのギャグに動じないよしなが先生。まーほー少女もえPに夢中の風間君の背後で、丸鶏を切り刻み飲み込むママ。そしてついに、最近オープンしたショッピングモールにやってきた野原一家の前に、ニセみさえが現れた。ナゾのツンデレのおねいさんに危機を救われたしんのすけだったが、激しい闘いで体が奇怪にねじくれ曲がったニセみさえを目の当たりにしてしまう。翌日、引き止めるみさえを振り切り出社したひろしを、こんな時に限って通園バスに遅れなかったしんのすけを待っていたものは…。世界を、春日部を包み込むサンバのリズム、踊るコンニャクローン人間、国際秘密組織SRIとは、ツンデレのおねいさんジャッキーとは何者なのか、世界サンバ化計画をたくらむアミーゴスズキの狙いはなんなのか!

 予告編からは劇場版の初作「アクション仮面VSハイグレ魔王」が感じられたが、本作の実態は、おそらくクレしんシリーズ初のSFホラー、しかも本格的なボディースナッチャー。物語の冒頭、のれんを仕舞った居酒屋から帰るよしなが先生を襲うそっくり人間を描いたくだりからして、寝静まった商店街といい、唐突に通過する深夜の電車といい、背筋を凍り付かせる雰囲気ばっちり。随所に盛り込まれたいつのもギャグに、恐怖と笑いは紙一重とはまさにこのことかなどと勘違いをしつつ、終盤のアミーゴスズキのアジトまでの道のりは、裏切って欲しい期待を裏切らない恐怖の連続。まさお君のもらす「自分がホンモノなのか自身がないよ」の一言が、実に重くのしかかるのだ。

 しかし、そこはやはりクレしん。それまでのサスペンスが音を立てて崩れ落ちていくほどの、ばかばかしいクライマックスが待っている。惜しむらくは、しんのすけ達のラストバトルの疾走感と爽快感が今ひとつであり、サンバの二人バトルは意外に地味だったこと。サンバカーニバルは大勢だから賑やかできらびやかなものなので致し方ないとして、いつもの疾走感が感じられなかったのは作画の線が細かったところにあるだろう。ここはやはり、やり過ぎの劇画タッチで書き殴って欲しかった。ジャッキーの身に降りかかった、「アッパレ!戦国大合戦」を思わせるシーンに一瞬ビビってしまったが、このストーリーであれをやったら洒落にならないので、うまく大団円に結びつけ、まあ何はともあれなんじゃそりゃの腰砕けのオチは、いつものクレしんでよかったよかった、のであった。

 そうそう、SRIに怪奇大作戦を思い出したクチの人、これがなんの略か知ったらしりこだまが抜けて空に飛んでいってしまいますよ。

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