7/17 「姑獲鳥の夏」を観てくる。

原作はあまりに読み慣れない漢字の多さと回りくどい理屈の多さのため早々に挫折したのですが、てっきり妖怪物の怪モノと思いきや、「陰陽師」を絡めた犯罪ミステリーでした。

が、怪奇色がかなり濃く、横溝正史、特に石坂浩二と古谷一行の金田一耕助シリーズに似た雰囲気を持ちつつ、不安感をあおるカメラワークに舞台劇の効果をふんだんに取り入れて、独特の雰囲気に仕上がっています。

毛色としてはテレビドラマ「横溝正史シリーズ」にかなり近く、それでいてきちんと映画の体をなしていました。

すでにストーリーを知っている観客はともかく、すべてをわかっていながらいっこうに真相を伝えない京極堂と榎木津が、物語に深く絡んでいるのになにが起こっているのか全くわかっていない主人公、関口と同じ状態に観客を追い込む手法は、いらつきと混乱を招かせつつも耳を傾けざるを得ずにはいられなくさせる見事さです。

これは原作にいえる事でしょうが、主眼はあくまで人間同士のミステリーであり、魑魅魍魎が跳梁跋扈する平安時代や、大きな変化が怪異な時代だった明治から大正ではなく、強い光が差しつつも混沌とした闇に包まれていた大戦後の昭和が舞台であった事が、あまたある同系統の物語から一歩ぬきんでていたのでしょう。

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