2/29 携帯片手に車を運転してはいけない「ゴシカ」を観てくる。

 女性刑務所で精神科医師として働くミランダは、悪魔に操られて殺人を犯したと主張するクロエに手を焼いていた。しかし、とある雨の夜、彼女は帰宅途中に奇妙な少女に出会うのだが、それから後の記憶が失われてしまう。夫の殺害容疑者として自身の勤める刑務所に収容され、何が現実で何が妄想なのかに戸惑うミランダであったが、彼女の前に再び少女が現れた。ミランダを襲う暴力的な怪奇現象は彼女の命さえ危ういものにしていくかに見えたが、その裏には異常な事件が隠されていたのだった。

 ゴシック風ホラーとしての映像作りは雰囲気たっぷりではあるものの、ストーリーの起伏が少なすぎてずっと一本調子。おまけに、本編に絡むのかどうか説明不足で投げっぱなしになってしまったクロエのサイドストーリーや、自力じゃ処理できない事故の事後処理に大量噴出の可燃性ガス、ラストのミランダとクロエのツーショットといった明らかに不自然なシチュエーションが目につき、しかもそういったつまずいている展開を何もなかったように進めてしまったのが残念な、いかにもダークキャッスルらしい作品。しかし、B級ホラーにありがちなこの粗を目立たせてしまっているのが、実は主演であるミランダを演じたハル・ベリー。最初から最後まで見た目も中身も大した変化がないというのは、おそらく満足なメイクや演出がなされてないからなのだろうとは思うものの、彼女自身のキャラクターがあまりに気丈すぎて、オカルト現象による狂気を演じ切れていないからなのでしょう。何しろ、超常現象に巻き込まれても病院に収監されてもその顔色は健康そのもの、彼女が暴れたり活躍したりするシーンではホラーではなくアクション映画になってしまっているのですから。また、主演とはいえずっとハル・ベリーばかりがスクリーンに映し出され、カメラワークがほとんど同じというのも退屈な映像に拍車をかけています。これならば、中途半端な役回りになってしまったにもかかわらず、いかにも病んでますといった雰囲気を出していた、クロエを演じたペネロペ・クルスを主演にしたほうがよかったんじゃないかな。

 幽霊少女の復讐にその発端となる事件は想像がついてしまうものの、話のベースとしては実に重みのあるものであり、それに絡む人物相関も途中までは意外性を十分に発揮していたので、オカルトホラーとしても猟奇ミステリーとしても、もっと面白く仕上がる可能性があったはず。それにもかかわらずまるでハル・ベリーのプロモーションのような仕上がりになってしまったのは、構成や演出が平坦だったからだけではなく、興業の成功をハル・ベリーの知名度に頼ろうとしてしまったからじゃないかと勘ぐってしまいます。ひょっとして、予算のほとんどがギャラに消えちゃったのかな。だってミランダ以外のキャラクターがほとんど活かされていないんだもん。これじゃ映画の中に入り込みたくっても、敢然と立ちはだかるハル・ベリーに邪魔されて入り込むのは難しいですよ。いくら雰囲気が素晴らしいとはいえ、金太郎飴みたいにどこを切り取っても同じような映像も相まって、途中何度もうとうとしてしまいました。余談ながらラストの一節、まさか続編なんか考えていないよね。「ハル・ベリーのオカルトセラピー、少年の霊は真実をささやく」みたいなの。

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