1/25 鮭「river」を観てくる。

 パトロール中に連続通り魔と遭遇した警察官の佐々木は、応援を待たずに一人説得に当たった。しかし、そのまま取り逃がしたばかりか、通り魔が盾にしていた人質の女性は、翌日死体となって発見される。2ヶ月前に婚約者を通り魔の手によって失った藤沢は、犯人以上に婚約者を守りきれなかった警察を憎み、通り魔を取り逃がした警察官を探し出して法の裁きを下そうと考えていた。二人はお互いの事情を知ることなく小学校の同窓会で顔を合わせ、製薬会社に勤める横井に誘われて行ったバーでマスターを務める同級生、九重と出会う。オリンピックを約束されていた九重は、交通事故にあってその夢を断たれるという過去を持っていた。そんな彼らが愚痴を言い合っていると、偶然そこに居合わせた男から記憶を消す薬品があることを知らされる。決して出回ることのないその薬品を盗み出すように誘われるのだが、偶然に思えたこの出来事はひとつの線となって彼らを過去に引き戻していくのだった。

 ええっと、なんですかこの絵は。荒く、暗く、かろうじて昼夜の区別が付く程度にまで落とされたトーン、キャストの視点という落ち着きのないカメラワークとカット割りの多用、遠近感のない平板な構図。これ、劇場にかける作品ではなく、テレビドラマとして撮影されたんじゃないのかな。おそらく低予算のビデオ撮りで、満足な絵が作れなかったことは察しがつきますが、それにしてもひどすぎます。こういうミステリーはもっと役者とストーリーで雰囲気を出すべきであって、極端に画質をいじらない方が良いですよ。無駄にチープになります。また、トラウマを利用したストーリーはなかなか面白かったんですが、やたらと説明的な自己ナレーションが多すぎて観客に考えさせることをやめさせてしまい、謎の提示や伏線としてほとんど機能していません。スクリーンにはポイントがしっかり映し出されているのだし、役者も肩の力が抜けてわかりやすい演技をしていますし、何よりもミステリーなのですから、ごちゃごちゃした説明は不用です。それと、いかにもテレビの2時間枠を狙ったような、薄くて遅い構成と演出では、劇場で観ると実際の尺以上に時間を感じてしまいます。中盤をもうすこしじっくり描き、ラストはたたみかけるぐらいのテンポだったらよかったのに。それに加え、あちこちにちりばめられた回想シーンが多すぎて、時間経過をややこしくさせるばかりか無駄に時間を費やしています。行動原理が不明な部分や、全く意味のないカットもいくつかありますしね。そのくせ、ラストはご想像におまかせしますというつまらないオチだったのもどうかと思うよ。そうそう、エンディングテーマが異常なほど大音量で、耳が痛くなりました。さっさと帰れってことなのか。エンドロール中にもうワンカットあるんだから、少し気をつかってほしいぞ。

 不自然すぎる探偵と、いかにも友情出演のおかまは北海道ご当地作品でしょうからご愛敬として、メインキャストの演技が不自然にも自然にもなりすぎていなかったのが救いでした。川が意味するものもはっきりしていてわかりやすく、アクセントにもなっています。素材は決して悪くはなく、役者の演技はへたな劇場映画よりもいいと思うので、目も当てられない絵作りと、凝ったつもりらしいカメラワーク、手を入れすぎた編集構成がじつにもったいない作品でした。

 さて、記憶を消去する薬品とは結局・・・なんですが、誰にでも消したい記憶はきっとあることでしょう。仮にそういう薬品があったとして選択的に記憶を消去できるとしても、できる事なら僕は使いたくありませんね。できれば、あきらめの悪さを解消して、善かれ悪しかれ思い出の一言にできる薬が欲しいものです。とかなんとか強がりつつ、使っちゃうかも。

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