1/19 広がらない都市伝説「着信アリ」を観てくる。

 後輩の葬儀で合コンに遅れてきた陽子の携帯電話が、聞き覚えのない着信音で鳴り響いた。不審に思いながら留守電を確認すると、それは3日後の同じ時刻、自分の携帯電話から発信された女性の叫び声が。なにかの間違いか冗談だろうと気にも留めていなかった陽子だが、それから3日後の同じ時刻、友人の由美にかけていた電話に、留守電とまったく同じ言葉と悲鳴を残して奇怪な死を遂げてしまう。由美となつみは、陽子の後輩から死のメッセージの噂を耳にしたのだが、その噂は現実となって由美の周囲に襲いかかって来るのだった。

 ええと3日後ではなく2日後ではないのかなという勘違いのような疑問はさておき、物語のベースとなるプロットはユニーク。着信があった携帯電話をどう処分するかとか、かかってくる前に処分したらどうなるかという疑問には、一通りの回答がなされています。序盤はくだらない都市伝説に失笑を隠せませんでしたが、さすが業界人の秋元康というべきか、中盤のワイドショーではしっかりと期待に応えてくれます。しかし、伏線とその結果をつなげ合わせるのに必死だったのか、途中途中の結果がその先につなげられず、片づけもされていないのがもったいない。そして終盤に行くにつれ、収集と理屈が付けられなくなり、しまいには気味の悪いものを並べるだけから、むちゃくちゃな力押しになってしまいました。確かに幽霊の仕業だからなんでもありでしょうが、無いはずのものを出してくるのはルール違反です。それでも、児童虐待がうまく逆の伏線になっていた幽霊の正体にはそうきたかと感心したのですが、その先の話をひねりすぎて転がりすぎてしまい、もうどうでもいいよと思ってしまったところで微妙にうやむやのうちにやっと終わる結末が残念。一応納得はできるものの、渦中の少女は劇中で一度も笑っていなかったはずなので、ラストで由美が見せる満面の笑みはどうにも意味不明。せっかく序盤の冗談が本物になったのに、悪い冗談みたいなエンディングになってしまいました。また、せっかくストーリーテラーで怖がらせていたのに、数カ所だけ音響などのびっくり箱で無意味に驚かせていたのも気になりますね。「リング」から始まる都市伝説ホラーになれてしまった観客を意識しすぎたのかもしれませんが、そういう話が好きな観客は結構恐がりだったりするので、無理にひねらずにストレートに見せた方がいいと思いますよ。わざわざ深読みさせなくても、勝手に深読みしますから。

 さてさて、肝心な自分の電話番号からの着信の謎ですが…僕は見逃していないつもりだけど、あれ? そんなのあったっけかな? 陽子の場合はなるほどと思ったんだけど、それ以降はちゃんと死者の携帯から発信されていたし、しまいにゃ全然関係ないはずの携帯に全ての番号がメモリーされていたり。無関係の点をつなぐ線が携帯電話だったのに、一カ所に集約されちゃだめじゃん。それから、警察を出した時点で電話会社の発信記録に考えが及ばないのも不自然だよ。発想は悪くないけど、あちこちで自己矛盾に陥っちゃったのかな。嫌がらせが目につくけど、それなりに怖い仕上がりなんだけどね。吹石一恵演じるなつみのセリフ二つは、あたり前の脚本ではあるけど真に迫っていてなかなか印象的。テレビ局につれていかれるなつみを引き止めようとする由美に向かって「あなたが何をしてくれるっていうの」。しかし、ワイドショーの本番で誰も自分を助けられない事を知ったときに「私ひとりぼっちだ」。うん、そのとおりだね。主演の柴崎コウよりもずっといい演技してたよ。でも、次へと電話が回らないようにできますか? というあたりがまわりの演技がちゃちすぎるのもあって弱かったかな。もっとも、本編とはまるで関係ない深爪しそうな映像が一番印象的だったんだな。

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