1/18 100年戦争・パーク「タイムライン」(日本語吹き替え版)を観てくる。

 物質転送装置の小規模実験に成功したITC社のロバート・ドニガーは、大陸間転送という大規模な実験に着手する。しかし、アメリカ大陸を横断するはずの転送装置は、100年戦争まっただ中の14世紀フランスへとつながってしまった。当時の遺跡を発掘中の古学者ジョンストン教授に目をつけたロバートは、遺跡発掘のスポンサーとなり、転送装置で教授を送り込む。そして同じ頃、遺跡を発掘中のケイトたちは、偶然発見した遺物の中から、ジョンストン教授のメガネと、助けを求める手紙を見つけた。測定の結果この手紙が1357年当時に書かれたものだと判断したケイトたちは、ITC社で事の真相を知り、教授を救出するために転送装置に乗り込む。だが、無事教授を見つけ出したものの戦乱の渦に巻き込まれてしまい、さらには転送装置にまでアクシデントが発生してしまうのだった。

 SF的な考証はそれなりに納得できる範囲ですっ飛ばし、導入となる序盤の現代でのドラマも駆け足で、さっさと14世紀フランスでの冒険活劇が繰り広げられます。そんな展開の速さは気になりますが、巻き込まれ型アドベンチャー、救出劇、人の良さそうなキャラクターの悲劇、思わぬ大活躍、ちょっと都合のいい展開、先が見えるけどがっかりはさせない伏線、現地・当時への思い入れなどなど、冒険活劇のポイントが押さえられ、あまり深く考えずに楽しめる仕上がり。いかにもマイケル・クライトンの映画というストーリーラインには意外性が乏しいものの、クライマックスの城塞戦は規模が小さいものの実に見応え十分。投石機の迫力と、満月をバックにすっ飛んでゆく火のついた石は素晴らしかったですね。しかし、ITC社、あるいはロバート・ドニガーが、転送装置が14世紀フランスにつながったことを何かに利用しようとしていたのか、ジョンストン教授を送り込んだのは単純に調査のためだったのかといった思惑がはっきりとせず、現代のパートでのドラマが薄かったのは残念。14世紀で戦争中の2国にしてもどちらがいい悪いというわけでもありませんし、全体に誰もがちょっといい人といったイメージになっています。これでは、キャラクターの棲み分けが曖昧になってしまいますし、それはかわいそうだよといういつもの手口がすぐに忘れ去られてしまうので、もっと人間の暗い部分を描いても良かったんじゃないかな。でもまあ、序盤で発掘中の棺に関わるドラマには、本人の「俺か!」よりも先に「おまえか!」と思いつつもちょっとホロリときましたね。ジョンストン教授の息子でたぶん主人公のクリスよりも、ヒロインのケイトよりも、その他の誰よりも一番活躍していておいしいところを全て持っていっちゃいましたね、アンドレ・マレク。ベタなネタではありますが何かを得るためには何かを失う、それにしても得た物は大きく暖かいってのがいいですね。こちらもパターンではありますが、棺に刻まれた一文は小粋でユニークです。タイム・トラベル・SFとして見るとかなり期待はずれですが、この作品の方向性はコスチューム・プレイ・アドベンチャーでした。

 さて、時間の都合で吹き替え版を観てきたのですが、クリス役の玉木宏は多少なりとも感情が伝わってくるのでまだしも、クレア役の上原美沙の無感情にもほどがある下手さ加減にはほとほと参っちゃいました。まあ、クリスはどうでもいいし、クレアは出番が少ないのでがっかりするほどではないんですけどね。字幕が苦でなければ字幕版をお薦めしておきます。僕は劇場では一度観りゃぁいいようなものだと思うので、二度も観に行くつもりはないけど。だいたい、フランス語と英語がごっちゃごちゃになっていて、会話がハチャメチャ。フランス語(これは吹き替えでもフランス語)しか話せないと思っていたやつが突然英語(これは日本語)を話し出したり、英語とフランス語でかみ合わない話を同じ英語(これは双方とも日本語)で話していたり、赤いイギリス兵と青いフランス兵以外は誰が何人なんだかわからないんだもん。原語版も多分そうでしょ?

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