1/9 陰湿チキチキデスレース「ミシェル・ヴァイヨン」を観てくる。

 耐久レースの最高峰ル・マン制覇を狙うチーム・リーダーのオーナー、ウォンだったが、宿敵チーム・ヴァイヨンに勝つことができず、無念のままこの世を去った。彼の死と共にチーム・リーダーも解散したのだが、娘のルースが父の意を継ぎ、チーム・ヴァイヨン打倒を目指してサーキットに戻ってくる。だが、マシンの性能、ドライバーの腕のどちらもヴァイヨンのトップ、ミシェルにはかなわず、業を煮やした彼女はあの手この手と非道な妨害工作に乗り出すのだった。※このあらすじは本来の視点とは逆です。

 リアルモータースポーツとしてはやりすぎ、荒唐無稽なクライムアクションとしてはやらなさすぎの中途半端な作品。レースシーンが本物だけに、どうしてもフィクションとして割り切ることが出来ず、嘘八百どころか常識で考えても失格、ともすればチームそのものの存続も危ぶまれるようなレース内外の妨害工作と八百長が目に余り、腹立たしいことこの上ない。特にクライマックスとなるル・マン24時間レースの最終ラップ、怪我をおしてそこまでやるかとちょっと感動しかけたのに、なんってこったいそりゃないよ。そうでなくてもスカッとした気分になるゴールじゃないんだから。せっかく久々に意味なく機嫌がよかったのに、一気に不機嫌になってしまった。モータースポーツものはわりと無条件に楽しめるのになぁ。何しろ、どいつもこいつも自業自得なので、どのキャラにも感情移入どころかばっかじゃないのとしか思えなかったしね。かえって、悪役に位置する、リサ・バルブシャ演じるルース・ウォンを応援しちゃうね。形どおりの逆恨みだし、何よりもいい女だしね。だから、こういう意地っ張りで強がりな女性がふと見せるかわいげや弱さに、僕は弱いんだって。というわけで、ルースに肩入れするようになってからは違う意味で楽しめましたね。悲劇のヒロインはジュリーだって? 冗談じゃない。彼女の旦那でヴァイヨンのドライバー、デビッドの死はある意味自業自得なんだよ。塩分を含んだ氷が割れやすいってのがろくな伏線になっていなかったり、命に関わるミスをしたナビゲーターがへらへら笑っていたり、誰が見たってたちの悪すぎる妨害をチーム・ヴァイヨンがやらかしている時点で、この作品の本質はモータースポーツじゃないんだよ。どうにも善と悪の2極化にしたそうにも見えますが、結構どっちもどっちなんですね。そんな作品なので、レースのカタはサーキットで返すべしと思ってしまう正統派にはまったくお薦めできませんが、おそらくリアルなレースにこだわるあまり中途半端になっていると思われる原作が、荒唐無稽なコミックスだからと割り切れれば結構楽しめるんじゃないかな。

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