1/4 母の背中「あたしンち」を観てくる。

 切らせてしまった砂糖を買いに出たタチバナ家のお母さんは、帰り道で嵐に遭ってしまった。雷も雨も苦手なお母さんは娘のみかんに迎えを頼むのだが、雷に驚いて転んでしまったひょうしに、みかんとぶつかってしまう。しかし、この瞬間に二人の魂が入れ替わってしまい、悲喜劇の幕が切って落とされた。みかんの修学旅行、お母さんの同窓会、二人はこの苦難を乗り切れるのか?

 「おれがあいつであいつがおれで」の映画化作品「転校生」以来、思い出したように何度も使われる入れ替わりネタ。この、先の読みやすいスラップ・スティックなポイントをどうひねるのかが期待されますが、思ったよりもオーソドックスなストーリー。それでも、話を飛躍させることなく歯ブラシはどっちを使うか、家事はどっちがやるかといった生活感があふれているのがいいですね。アニメーションならではのオーバーアクションによって笑いのツボは押さえられていますし、修学旅行と同窓会それぞれのエピソードは、お母さんの過去という意外に語られない部分に焦点を当ててなかなかユニーク。ハトの田中さんはちょっと蛇足気味でしたが、観客を母娘が入れ替わった状況に慣れさせないアクセントにはなっていますね。惜しむらくは、同窓会のお知らせに落ち込むのがお母さんであること。修学旅行のパートで、この体じゃ行けないと落ち込むみかんを励ましているのですから、立場を変えてもう一度同じことをしたって説得力がありません。何よりも、話のつながりをとぎれさせてしまっています。それぞれのエピソードは十分いい話に仕上がっているのですから、このつながりをスムーズにしてほしかったですね。修学旅行とは逆に、自分が人前に出なければならない同窓会に、またまた怖じ気づくみかんを励ますお母さんは、やっぱり豪快だったなんてのもいいかもしれません。それとも、修学旅行で味をしめた母娘に、同窓会でおかしなピンチが迫るとか。まあ、暴走するお母さんとみかん、地味ながら決めるところは決めるお父さん、冷静に状況分析する弟、入れ替わってしまったみかんとお母さんを支える友達ときちんと役割分担させて、笑わせるところは笑わせる、泣かせるところは泣かせると、うまくまとめた作品でした。対象年齢は特に定めてない作りのようですし、小さな子供たちも爆笑していましたが、話のポイントはお母さんの過去です。エンドロールの後にもうワンカットあるので、ネタにしたい向きは席を立たないように。というかこの手の作品の観客って、ほとんどエンドロール中に席を立たないのね。ところで、みかんの目が普段真っ白というのは気持ち悪かったぞ。

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