12/30 お父さんといっしょ「チャーリーと14人のキッズ」を観てくる。

 広告会社に勤めるチャーリーは、その忙しさゆえにあまり家庭を顧みない男。しかし子供向け野菜シリアルの売り出しに失敗した彼は、プロジェクトの消滅によって300人の部下と共に解雇されてしまう。復職を気楽に考えていたチャーリーだったがそれもままならず、収入に困った一家は息子ベンのエリート保育園入園を取りやめ、妻のキムが仕事に出ることに。日がな一日家にいることになったチャーリーは、ベンを連れていった公園でまともな保育園がないことを知り、ともにリストラされた友人フィルと自宅を改装して保育園を始める。当初は気楽に大もうけできるつもりでいたチャーリーだったが、経営はままならず、子供たちの扱いにも手を焼く始末。しかし、個性的な子供たちと接し、仲間の助けを得ているうちに、彼の心はときほぐされ、しだいにほんとうの育児に興味を引かれてゆく。そして軌道に乗りはじめた彼の保育園にエリート保育園の邪魔が入りはじめるもおかまいなしのチャーリーだったが、彼にとって千載一遇のもう一つのチャンスが舞い込んでくる…。

 アメリカの教育といえば実におおらかでユニークというイメージがあるので、この作品の幼児教育が実情なのかどうかはわかりません。まあそれはともかくとして、お子様ジャンクフードの宣伝という、ある意味子供たちを食い物にしている業界からリストラされたエディー・マーフィーが、動機は少々方向が違うものの、ほんとうの教育という意味での育児に目覚めていくという、本筋そのものがアットホーム・コメディーとなっています。これに絡んでくる、エディーの保育園の人気を妬む知識教育重視の保育園がまたユニーク。びしっと決まった制服で軍隊のような制度を持ち、子供たちを大人扱いする、というよりも自分達が育てるものとして数ヶ国語からフロイトなんてモノまで教えこんでいるのです。しかし、確かにあり得なさそうなほどに極端ではあるものの、ここの学園長の言葉の中に理にかなったものを織り込んでいるあたりが、単に敵愾心をあおるばかりではありません。もちろん、この作品が子供向け、家族連れ向けということを考えてのことでしょう。そんな事も含めて、特別な問題児がいないといった甘さはあるものの、実は教育者向けにもなっているのではないかと深読みしてしまいます。なんてかたいことはさておき、エディーたち3人の保育士がそれぞれの小技と持ち味を発揮し、それを上回りそうなほどの子供たちの勢いを、軽快なサウンドとテンポのいい展開で一気に見せてくれます。フィル役のジェフ・ガーリンのギターと、合わせて踊る子供たちなんか、ありがちなシチュエーションながら秀逸でした。さすがに14人の子供たち全員を取り上げることはできませんが、個性的な子供たちは見事なコメディーリリーフとして、暖かい笑いを巻き起こしてくれるのです。アメコミヒーローやスタートレックネタが多いのは作り手の趣味が出過ぎているんじゃないかとは想いますが、まあそこはそれ、子供を持つお父さんの年代もターゲットでしょうということで。アメコミヒーロー「フラッシュ」の衣装を脱がない子に、一度だけVFXを使っているのが面白すぎでしたね。ほのぼのさわやかな秀作です。

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