12/29 神様と人間のポルカ「ブルース・オールマイティ」を観てくる。

 テレビ局のニュースキャスター、ブルースは、あくの強いコミカルなレポートが持ち味の野心家。キャスターのトップであるアンカーマンの交代をひかえて自信満々の彼だったが、ちょっと嫌みで真面目一筋のライバル、エヴァンに奪われてしまう。その上、視聴率がかかった生中継中、彼が考えたネタをエヴァンに使われたことを知り、キレたブルースは生中継を台無しにしてしまった。会社を首になり、恋人グレースとの仲もこじれ、何もかもうまくいかないと感じたブルースは、神様に向かって職務怠慢だと悪態をつく始末。しかしその翌日から、ブルースのポケベルに同じ電話番号から何度も呼び出しがかかりはじめ、いらついた彼が壊したてしまったにもかかわらず呼び出しつづけることから、電話をかけてみると自分にぴったりの仕事があるという言葉が返ってきた。興味を持ったブルースがたずねていくと、そこには自分は神だという男がおり、神の力を授けるからしばらく神様をやってみろといわれる。半信半疑のブルースだったが、何でも自分の思い通りになることを知ったときから、一気に出世の道を歩みはじめるのだが、あまりに自分勝手な欲望のために神の力を使いすぎ、とんでもないことを引き起こしてしまうのだった。

 ぱっと見にはジム・キャリーの独り芝居に見えますが、それは脇を固める役者たちが、彼に振り回され、彼を翻弄する役に見事に徹しているから。実直で小粋な神様を演じるモーガン・フリーマンもさる事ながら、嫌みな堅物役のスティーブン・カレルが実にユニーク。両極端の対比をきちんと押えているからこそ、ジム・キャリーの個人芸が引き立っています。それでいて、全知全能の神様をかつぎだしたファンタジーであり、芸人ジム・キャリーを起用しておきながらも、意外なほどリアリティーを重視。ジム・キャリーを含めた役者本人の持ちネタを、VFXを使いつつも無理に誇張することなく披露しているいったところでしょう。といっても、ダーティー・ハリーや十戒のパロディなどを交え、ありえないシチュエーションをそれなりに飛ばしているので、爆笑ネタには事欠かきません。そのため、出世欲に溺れた男のラブコメという本筋はオーソドックスにまとめられ、それとなく先が読めてしまうものの、決してがっかりさせられるようなものにはなっていません。むしろ、自己中心的なブルースがどこで転機を迎えるか、これがテンポのいい展開のなかで最後の最後まで引っ張られ、思いのほか気が抜けない仕上がりになっています。しかも、笑って笑って涙してだけではなく、怒らせたり安心させたりと喜怒哀楽のツボをちょこちょことくすぐってくれます。極端に突き抜けている部分が無いためか小品として見られてしまうことでしょうけど、少し軌道を外れたハートウォーミングなコメディーとして、十分に楽しめる作品。神様だからできないこと、人間だからできること、ちょっと皮肉っぽいけど活かされています。すべてはブルースのわがままが発端だろうと見るのは簡単ですが、人間なんてみんなわがままなのですよ。それを優しくとがめ、優しく受け止めてくれているこの作品の神様は、いつもみんなの中で小さな看板を掲げているのですね。ほんとにいないかな、いやいや、たった一つだけでいいから願いをかなえてくれないかな、神様。それとも、これが運命で変えられないのか、僕のやり方が間違っているのか…。

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