12/21 変遷の狭間で…「ラスト サムライ」を観てくる。

 南北戦争を生き延び英雄と呼ばれたネイサン・オールグレン大尉。しかし、ウィンチェスター社のしがない宣伝劇で食いつなぎ、酒におぼれる日々を過ごしていた。かつての戦友は、そんな彼に日本での兵員育成の仕事を持ち込む。明治政府軍の教官となったオールグレンだったが、あまりに急造で経験不足の兵士たちを率いたことが仇となり、勝元盛次率いる侍たちにとらえられてしまった。だが、勝元たちのもとで過ごした一冬、純朴な村人たちと、オールグレンが殺した侍の妻、たかによって、かつての南北戦争で負った心の傷を癒され、天皇に忠義を尽くす勝元、勝元に忠義を尽くす侍たちの生き様に自分の生きる意味と道を見いだしてゆく。そして翌春、天皇の命により明治政府に呼び戻された勝元と共に東京に戻り、帰国の途に付こうとするオールグレンであったが、政府の実勢を握る大村に事実上の切腹を迫られた勝元を助け出し、彼と共に勝てぬとわかっている政府軍との戦に身を投じてゆくのであった・・・。

 ニュージーランドで行われたロケのおかげでパームツリー(?)が目立つという奇妙なロケーション、セットそのものは素晴らしいもののあまりに綺麗すぎて生活臭のしてこない農村、不勉強で恐縮ですが明治政府軍の密偵が本当に忍者であったのかなど、気に掛かるところは多々ありますが、話そのものは男臭い精神的ヒロイズムの漂う見事なもの。侍と新政府の対立という本筋に、オールグレンの心の傷である罪もないインディアンとの戦いを上手に交え反映させ、男たちが何のために生き、何のために死んでゆくのかをストレートに描いています。確かにベタなネタですし、リアルであるとか時代考証なんて視点で見たらおかしなことだらけでしょう。ですがこの手の話は万国共通であることですし、何よりもハリウッド映画でありながらとっぴょうしもない修飾をせずにきちんと、そして堂々と日本の侍を映し出していることに、素直に感嘆の拍手を送ります。殺陣も剣劇も、細かいカット割りにアップの多用、派手な立ち回りと今時のものではありますが、なかなかの見応え。渡辺謙と真田広之の重厚な存在感、オールグレンを見張りながらも守る、知っている人は知っている名斬られ役、福本清三の寡黙でちょっとユニークな存在感がスクリーンからひしひしと感じられます。何よりも、主演でありコメディーリリーフでもあるトム・クルーズが、きちんと東洋の剣士になりきっていることが、この作品の説得力のひとつとなっています。ラストの政府軍との戦いは、まるで運動会みたいでちょっといただけませんでしたけどね。それまで胸にこみ上げていたものが、へこっとなってしまいました。

 とまああれやこれやと言い回しては見たものの、途中泣けて泣けてたまりませんでした。オールグレンと勝元の対話、オールグレンと飛源の会話、決して虚勢や虚飾などではなく、この映画の、人間の本音なんじゃないかと。僕がちょっと道を見失ってしまったというか自信を失ってしまったというか、そんな心境だからかもしれませんが。何かのため、誰かのために、生きて死んでゆく人生。そしてその人生を生き抜く力を見つけ得ないと、本当の意味で最期に笑えないでしょうからね。でも、それには僕があまりにも小さいような気が…へこっ。

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